マッスルと使い魔   作:今夜の山田

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言い訳
1.萌え路線が使い魔にしか見いだせなかった。
2.サイトが食堂でマッスルに囲まれた中、イケメンマッスルギーシュに挑める度胸があると思えない。
3.マッスルの集団に囲まれて、イケメンマッスルギーシュと対峙するサイトに勝ち目がありそうにない。
4.プロット見る→「まさかマッスル殺し……」→マッスル殺しって何だよ、意味わかんねーよ。


使い魔邂逅

「――つまり、サイトは月が一つしか無く、闘士が存在しないチキューという世界の、ニホンという国のトーキョーという街で生まれ育った、コウコウセイと呼ばれる職業なんだな」

「お、おう、わかったのか?」

「いや、全く理解できん」

 

 サイトは腰から崩れ落ちる。ここはルイズに運ばれた女子寮の一室。部屋に着くや否や、ルイズはサイトに説明を要求したのだ。

 そしてサイトは、出来る限り詳しく、丁寧に自分の住んでいた世界の事を話した。結果のこれである。

 

「そう落ち込むな。理解ができんだけで、一先ずそういうものだと納得はした。……ところで、何かそのチキュー出身と証明できるようなものは無いのか」

「んな事言われてもな……。あ、そうだ! あれがあった!」

 

 サイトは突如閃き、自身が持っていた鞄の中を探って、中から筒を取り出した。サイトが筒の側面に着いてあるスイッチを押すと、筒の先端から光が出て、部屋を明るく照らす。

 その光にルイズは咄嗟に身構えるも、無害だと分かると構えを解き、その光景をまじまじと見て、まるで少女のように目を輝かせた。

 

「なんと、《平民》が闘気を……。いや、これはカガクというものだったな。うむ、これなら闘気が無くても人間が生きていけるわけだ」

 

 ルイズは右手で顎の先端を持ち、首を縦に何度も振って未知の知識の習得の余韻を噛みしめる。原理はまったくもって理解不能だったが、一先ずカガクは闘気に劣らぬものであると結論付ける。

 ルイズはトリステインマッスル養成学校では、闘気を操れないと言う欠点を除けば十年に一人の逸材だ。当然の事ながら座学も常に成績上位である。

 しかしそれは闘気を扱えるようになりたかった彼女の努力の矛先にあった自己鍛錬の結果の内の一つに過ぎない。

 

「サイト、他のカガクを教えてくれ。私は頂に立ちたい」

 

 故に、ルイズは知識を学び。筋力を鍛え、技術を磨く。

 その本質にあるのは承認欲求。自分の力を認められたい。ただそれだけを原動力に、貪欲にそれらを求めている。

 しかし、聡明なルイズは気付いた。今、己が最も欲しているのはサイトではない。"サイトの有する知識"だ。

 気付いた時、ルイズは頭を抱えた。額からは汗が滲み出し、顔が痛苦に歪む。

 友と呼び、その友を利用するという行為はなんとも卑劣な行いだろうか。

 ルイズはプライドが高い。名に誇りを持っている。

 だからこそ、今ここで友を利用する自分を許せなかった。心が痛み、心の臓が激しく脈打つ。

 

「ふんッ」

 

 ルイズは壁に勢いよく頭をぶつける。ルイズをもってしても、頭部に加わる一撃には弱い。何より、この部屋の壁は特注の衝撃反射壁だ。衝撃がそのままルイズに跳ね返る。

 ルイズはこの行動が自己満足だと分かっていながらも、その痛みでサイトに贖罪し、自らの弛んだ精神を無理やり張る。

 しかし、ルイズの心は未だに葛藤している。

 このサイトから知識を根こそぎ奪いたいという思いと、サイトと友でありたいと思う気持ちがせめぎ合う。

 

「ル、ルイズ!? 何やってんだよ、急に壁に頭ぶつけて!」

 

 サイトはルイズに駆け寄ろうとするが、ルイズの丸太のような太い腕で静止させられる。

 そのままルイズは部屋の扉の前に行き、サイトの方を振り向かずに淡々と言葉を口にする。

 

「…………サイト、私はしばらく森で頭を冷やしてくる。寝床の心配はせずとも良い、この部屋であればどこで寝ても構わん」

 

 そう言い残し、ルイズは頭から血を垂らしながら部屋を出ていった。

 ルイズが出て行った後、部屋に静寂が訪れる。

 

「お、女の子の部屋に男を一人で残すなんて、俺が何するかわかんないってのに……」

 

 独り言をいうも、返ってくる言葉は無い。

 結局、サイトはソファーで寝た。決して、女の子のベッドで寝るほどの度胸が無かったからというわけではない。

 

 

 

 

 

 

 学園から十キロメートル離れた山中、ルイズは樹齢百年はあると思われる巨木の前で佇んでいる。

 

「……どうしたというのだ。私ともあろう者が、友を蔑ろにするなどと、許されるべきではない」

 

 ルイズは木の幹に拳を打ち付ける。打ち付けられた巨木は中ほどから折れ、地面に倒れ伏す。

 それを見て、ルイズは冷静にこの事態を考え更なる深みへと落ちて行った。

 

「……物にまで当たってしまうとはな……これでは、貴族すら失格だ」

 

 ルイズは空を見上げる。

 そこには二つの月が見える。

 この月が一つの世界は、いったいどうなっているのだろうか。

 そんな考えが、ルイズに湧き上がる。

 

「月が一つで、闘士が存在しない世界、か」

 

 そんな世界に行ってみたい。

 そんな世界であれば、自分も認められたのではないだろうか。

 しかしそんな空想を、ルイズは否定した。

 それでは今の父様、母様は。姉様達は。

 自分が居なくなったとしたら悲しむだろう。闘士として無能な自分にも愛をもって接してくれた家族だ。

 突然、いなくなったら酷く悲しむだろう。

 

「突然いなくなったら……ハッ」

 

 そして、聡明なルイズはまたも気付く。今まさに、サイトの境遇がそれではないかと。

 どうしてそれを失念していた。自分はなんて愚かなのだろうか。ルイズは自身を責めた。

 他でも無い召喚者たるルイズが、使い魔の生活を保障しなくてどうなると言うのだ。使い魔は従者でも、傭兵でも何でもない。

 これから一生涯にかけて続く、大切な相棒なのだ。使い魔の心を癒すのも召喚者の務めではないか。

 今頃サイトは一人で寂しい思いをしているかもしれない。いきなり異世界に放り出されたのだ、よほど楽観的でない限り、精神状態がまともでいるという保証は無い。

 ルイズは急いで女子寮に戻り、自身の部屋の扉を勢いよく開ける。壁に叩きつけられた扉の衝撃は反射されたのだが、ルイズはそれを自身の筋力で相殺する。

 

 そして目の前の、ソファーで気持ちよさそうに眠るサイトの姿を見て、ルイズは安堵の息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、サイトが目覚めて真っ先に目にしたのは、一糸纏わぬ姿で座禅を組むルイズの姿であった。

 

「ル、ルイズ! なんで裸なんだよ!」

 

 サイトは起き上がるや否や咄嗟に手で顔を覆って、ルイズの裸が視界に映らないようにした。

 その言葉に反応したように、ルイズはサイトに背を向けたまま声を出す。

 

「己の心に打ち勝つ修練だ。昨晩はあんな醜態を見せてしまったのだ、今更裸如き、何だと言うのだ」

「シュータイ? な、なんでもいいから早く服を着てくれ!」

 

 そう言いつつも、サイトは指の隙間からルイズの裸体をこっそり見ていた。

 鍛え抜かれた広背筋が、大殿筋が、僧帽筋が目に映る。まるで巨木のようなそれはゆったりと立ち上がり、クローゼットの前に歩みを進める。

 その一歩一歩はまるで芸術品が如く。挙動の一つ一つが美術館に飾れられるように思えた。

 そしてついに、ルイズが着替え終わるまで目を離せなかったのだ。

 

「さて、朝食に行くぞ、サイト。……む、何を呆けておる」

「な、なんでもないよ!」

 

 ルイズとサイトが部屋を出る時、偶然にも隣の部屋の扉も開いた。中から出てきたのはローブの上からでも見て分かるほどに艶めかしい肉体をした少女だ。

 大胸筋、腹筋、上腕二頭筋が推定A級の超筋肉美少女は燃え盛る炎のような赤い髪をなびかせている。その少女は自慢の大胸筋を抱きかかえるかのようにゆったりと部屋を出てきていた。

 彼女はこちらに気が付くと笑みを浮かべて挨拶をしてくる。

 

「グッモーニン、ルイズ」

「グッモーニン、キュルケ」

 

 そのまま、キュルケと呼ばれた少女は優雅にポージング――サイドチェストを決め、サイトに笑いかける。

 その大胸筋の質感たるや、例えるならば解体直後のブロック肉。褐色の肌に実によく似合ったその筋肉はまさに魔性の肉体だ。

 

「サイト。紹介しよう、彼女の名は――」

「ルイズ。それくらい私にさせなさい。私の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。そこのルイズとは一族での仇敵だ」

「キューテキ?」

「ああ、私とルイズの一族は昔から争っていてな、時に拳を交え、時に恋人を奪い合ってきた仲よ」

「キュルケ、後者は君の一族だけだ」

「ところで使い魔君。君の名前は何と言うのだ? よければ、教えてもらえないだろうか」

「あ、ああ。才人だ。一応、平賀って姓もある」

「そうか、姓もあるのか。使い魔に恵まれているな、ルイズ」

 

 互いに微笑を浮かべている光景は、仲の良い幼馴染の会話そのものだ。

 しかしサイトは仇敵という言葉の意味を考え、違和感を覚えた。

 

「キュルケはルイズの仇敵なんだろ? なんでそんなに仲が良いんだ?」

 

 きょとん。そんな擬音が聞こえてきそうな間の抜けた空気の後、キュルケは盛大に笑い出した。

 

「はっはっは、言っただろう。ルイズとはあくまでも一族での仇敵だ。私個人としては、切磋琢磨する好敵手に過ぎんよ」

「言うではないかキュルケ。私個人としても、君は打破すべき目標に過ぎん」

 

 物騒な。と、サイトは思う。

 しかしそう言われたキュルケは微笑を崩すことなく、くつくつと笑って言い返す。

 

「言うではないか。…………とりあえず、まずは言うべき事を言っておこう。進級おめでとう、ルイズ」

「そっちこそ、進級おめでとう、キュルケ」

 

 やっぱり、幼馴染のように軽い雰囲気だ。とサイトは思った。

 そして突然、キュルケの部屋から爆炎が上がった。

 サイトはルイズに抱きかかえられ、一緒に後ずさる。

 その爆炎はキュルケの周囲を旋回した後、キュルケの横に降り立った。

 

「驚かせたようだな、すまない。せっかくだ、紹介しよう。私の使い魔――フレイムドラゴンの、フレイムだ」

 

 そのフレイムと呼ばれた爆炎はその身に纏う炎を解き、その姿を現す。現れたのは身長百五十サントにも満たないほど小柄な少女。

 少女は腹筋が見えるほどに短いタンクトップと、脚の関節部まで露出したホットパンツという、肉体美を見せるのに都合の良い服装をしていた。

 しかし、その体はとても肉付きの良いものとは――マッスルとは言えないようなものだった。

 せいぜい大胸筋が少し、とサイトは思ったがよくみるとそれは脂肪であった。つまるところのおっぱい。偽筋肉である。これはサイトの興味を著しく冷ました。

 顔立ちも整っていて小麦色の肌に金髪と紅い瞳が映えるが、その体躯からはルイズやキュルケとは正反対に戦士としての魅力はほとんど見いだせなかったからだ。

 ドラゴンというのだからと期待した自分が馬鹿だったかとでも言うように、少女の体は貧相であった。

 

「……ヨロシク」

 

 少女はカタコトのハルケギニア語で声を出す。

 

「ほう、韻竜か」

 

 フレイムの姿を見て、ルイズは感嘆の声を漏らし、

 

「貧相な肉体だな」

 

 サイトは落胆の声を漏らした。




とりあえず、使い魔が筋肉質でないと言う伏線は回収できたかな。
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