マッスルと使い魔   作:今夜の山田

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SAOWが進まねえ……進まねえよう……
なんでこっちが進むんだ、訳が分からないよ。



使い魔喧嘩

 

「ナ、ナンダト! コノヤロー!」

 

 そのサイトの一言にフレイムは一瞬で燃え盛り、サイトに掴みかかろうと突進する。

 しかし、それをキュルケは咄嗟にフレイムの首根っこを掴んで止める。キュルケに掴まれたフレイムはじたばたと暴れ、キュルケから逃れようとするが、それは叶わない。

 しかしキュルケと言えど、片方の腕では言葉までは止めきれなかった。フレイムの口からはサイトの言葉に対する反論の暴言が噴火するかの如く噴き出た。

 

「オマエコソ、ヒンソージャネーカ!」

「お前よりは背が高いですー。筋肉もありますー」

「ナ、ナニヲー! ワタシダッテ、キンニクアルゾー!」

「へっ、そんな風には見えませんこって」

 

 この様子を見ていたルイズとキュルケはサイトとフレイムの比べ合いを、どんぐりの背比べだと感じていた。

 ルイズらと比べれば、サイトの細腕もフレイムの細腕も変わりようなく、軽く握るだけで潰れてしまうのではないかと思わせるほどに弱々しく見えるのである。

 当事者たちがふざけ合っている今、この場でどちらがより強靭か、どちらがより貧弱かなど、競う他比べようが無い。先にその事に気付いたのは、ルイズではなくキュルケであった。

 キュルケは気付くや否や目を輝かせ、口元には笑みが浮かんでくるが、それを押しとどめた。そして隣に立つルイズに一つ提案を言う。

 

「丁度いい。ルイズ、どちらが優れているか競わないか?」

 

 その言葉に、ルイズは難色を示す。

 傍から見た場合、子供染みた言い争いをしているこの二人が争っても特に問題は無いように見えるだろう。

 しかし実際は人間と竜種、付け加えて人間は《平民》で、竜種は《韻竜》である。《平民》と《韻竜》が闘う。マッスル社会的に考えれば勝敗は火を見るより明らかだ。

 ルイズはサイトの力をある程度見込んでおり、昨晩の内に《カガク》という力についても教わっている。しかしそれを踏まえ、ルイズの主観的に判断しても今のサイトは劣勢である。

 それほどまでに竜種は強く、《韻竜》は恐ろしい存在なのだ。例えそれが子供と言えども、侮れるほどか弱い存在では無い。

 

「……貴族の決闘は禁じられているだろう。大師父の教えに背く気か」

 

 故に、ルイズはどうにか決闘を回避しようと、マッスル養成学校鉄の掟――通称大師父の教え。を持ち出す。"学内でのマッスル同士の死闘・決闘の類を禁ず"、というものだ。

 しかしこれには抜け穴がある。

 

「いやいや、戦うのは私達では無く、使い魔達だ。マッスルの実力を知るには使い魔を見よと言われるではないか」

 

 キュルケの言う事は確かであり、大師父が禁じているのはマッスル同士の死闘・決闘行為の禁止である。

 故に模擬戦の戦績で競おうが、学力で競おうが問題は無く、当然使い魔同士を戦わせるのにも問題は無い。それどころか鍛錬するのと同義であるため賞賛される。

 つまりこれを持ち出したのは、ルイズにとっては悪手でしかなかった。

 

「……あんなものは妄言だと、大師父が言っていたではないか」

「あれは大師父が例外なだけだ」

 

 大師父とは、トリステインマッスル養成学院の学院長、オールド・オスマンの事である。生徒からは親しみを込めてオスマン大師父と呼ばれる。

 オスマン大師父は、鼠を使い魔に持ちながら火、水、風、土の四属性を極めた稀代のマッスルとして、かの言葉を妄言と言い切れる事のできる唯一無二の存在である。

 その御年は百どころか三百とまで噂される。マッスル養成学院の中で最も強いマッスルだ。その拳は炎のように苛烈で水のように柔軟、風のように掴み所が無く岩のように堅牢と称される。

 拳圧で燃え盛る炎を消し飛ばし、一蹴りで荒れ狂う湖面を穏やかに戻し、吹き荒れる暴風を一喝して掻き消し、頭突きで山を砕いたなどその噂には事欠かない。

 

「……サイト、フレイム。どちらが優れているかは、競うまで分からんだろう。だとすれば、決闘しか無いだろう?」

 

 キュルケはあえて尋ねた。

 

「おう! ちびっこに現実ってもんを教えてやるぜ!」

「チビハオマエダ!」

 

 サイトとフレイムは決闘に同意する。これにキュルケは豪快に笑い、ルイズは額を押さえた。

 ルイズは予め、サイトにハルケギニアの知識をある程度は教えていた。闘気の存在、マッスルの誕生秘話、始祖ブリミルの全盛期伝説等々。

 しかしオーク鬼やエルフ等々の亜人種については、サイトを怖がらせるだろうと思ってあえて教えずにいた。学内に居れば安全だろうと高をくくっていたことを今、ルイズは後悔していた。

 無論、使い魔同士での戦闘はあくまでも決闘であるため、使い魔を死なせてしまった場合には学院追放も有り得る。しかし、死なない程度であれば問題は無いのだ。

 この決闘が行われれば、間違いなくサイトに恐怖心を植え付けてしまうだろう。ルイズは覚悟を決め、あがく。

 

「……サイト、気を付けろ。韻竜は筋肉が無くとも闘気を扱う事が出来る種族ぞ」

「え!? マッスルじゃないのに闘気を扱うのか!?」

 

 先日の内に説明された内容と齟齬があることにサイトは困惑する。

 サイトが前日にルイズから聞いた《闘気》は《筋肉》から生み出される力であり、目の前の少女はどう見ても《筋肉》がついているようには見えないのだ。

 サイトが不安げにルイズを見上げると、ルイズは続きを話し出す。これこそがルイズの狙いであり、決闘の同意を撤回させようとしているのだ。

 当然、一度決めた事を取りやめると言うのは経歴に傷が付く。しかしルイズはそれ以上に、サイトが傷付く事を避けようとしている。

 

「うむ。一般に先住闘法と呼ばれるもので、環境を利用する事で高い威力を出せるというものだ」

「それって……どういう事だ?」

「例えば、火韻竜は周囲に焚き木さえあれば鉄の鎧を纏った者をも両断できる炎の刃を作り出せると言われる」

「……マジで?」

 

 ルイズの思惑通り、サイトは弱気になった。このまま言いくるめれば、サイトも発言を撤回するだろう。

 ルイズはその事に安堵した。しかし、現実は非情である。

 

「ドウシタ、ニゲルノカ?」

 

 フレイムはサイトに挑発するように不敵に笑いかける。

 ルイズはこの場に居る第三者の事を、思考から外してしまっていた。

 フレイムは《韻竜》としての強さを自覚していることはまず間違いない。そして児戯に等しいとはいえ、サイトはその強さを「貧相」という言葉で侮辱している。

 ルイズはサイトの同意を撤回させる前に、侮辱を撤回させ、和解させるべきだったとこの時気付いた。

 

「だ、誰が逃げるかよ! お前こそ、俺の強さにびびって漏らすんじゃねーぞ」

 

 しかしルイズの閃きは遅く、声をかける前にサイトは挑発に乗る。もはや撤回など出来ようはずも無い空気だ。ルイズの思惑は瓦解した。

 ルイズは歯を軋ませ、キュルケを睨む。それに対するキュルケは鼻を鳴らしてさも愉快そうに微笑む。ルイズはキュルケに"してやられた"のだ。

 キュルケが同意を求めたりしなければ、ルイズもサイトの侮辱を言い過ぎであると咎め、撤回を促していたであろう。

 しかしキュルケはわざわざ同意を求めた。それによりルイズはサイトの身を案じるあまり"同意の撤回"を優先する事になり、フレイムに対する"侮辱の撤回"を後回しにしてしまったのだ。

 我が使い魔可愛さゆえに招いた結果だった。

 

「ダレガモラスカ!」

 

 フレイムの性格は勝気で短気、更に言えば子供染みている。

 サイトとの口争いを見てフレイムの性格を把握したキュルケは、それを利用する事で進級早々に仇敵ルイズに喧嘩を売る事に成功したのだ。

 人型であれ、子供であれ、《韻竜》は《韻竜》だ。その強さは曇りも無く、マッスル社会に恐れられている。人型の韻竜が国一つ滅ぼしたという神話もあるほどだ。

 キュルケはその韻火竜のフレイムであれば、《平民》相手に何の苦も無く勝つだろうと予想して、余裕綽々に構えている。

 

「ハッハッハ、仲の良い事だな。では、決闘は昼食後、ヴェストリの広場で行うとしよう」

 

 そう言い残して、キュルケはフレイムを肩に乗せて悠々と去っていった。

 それをサイトは舌を出し、目の下を引っ張って見送る。

 その行動をとって十秒。いつまで経ってもルイズから何の注意も来ない事に気付き、振り返ろうとした時、ルイズはサイトの一歩前に出て歩き始めた。

 

「ルイズ、どうかしたのか?」

「……いや、なんでもない。……朝食に行くぞ。腹を満たさねば良い考えも浮かばぬだろう」

 

 ルイズはサイトに顔を見せず、毅然とした態度でサイトに言い放つ。

 その心中は穏やかなものでは無く、《韻竜》相手に闘う事になった自身の使い魔(サイト)の身を案じて酷く焦燥していた。

 後半の言葉は表面上こそサイトに向けてのものだったが、ルイズは自分に言い聞かせるように声を出した。

 サイトにこんな顔を見られまいと、ルイズは表情を悟られないようにサイトの一歩前に出たのだった。

 そのままルイズはサイトに歩調を合わせて案内するように食堂へと向かう。

 

 

 

 歩いて数分経った頃にはルイズも落ち着きを取戻し、サイトに話していなかった亜人種の事を話し出した。

 

「エルフは華奢な体つきをしているが、マッスル百人分の筋肉を内包していると言われていてだな。覚醒時にはその筋肉を開放して闘うという話がある」

「マジで!?」

「真偽は分からんが、サイトもエルフには気を付ける事だ」

「お、おおー。でも会ってみてーな」

「それは危険だ。エルフはまだまだ分からないことが多い、迂闊に近づかないようにな」

「でも中には話が分かる奴もいるかもしれねーじゃん」

「分かる者がいれば当然分からない者もいる。そうと分かるまで、なるべく距離を置くべきだ」

 

 サイトはまだ見ぬ筋肉種族に思いを馳せながら。

 ルイズはそんなサイトに危険性を事細かく説明しながら、食堂への道のりを歩いた。




テンプレ通りに進んで現在食堂前。
エルフについてほのめかしてみたはいいが、エルフ登場までは行かないと思う。
エルフ登場前のワルドとかどうすんだよ、筋肉婚約者で質量のある残像を生み出す風のスクウェアマッスルにサイトが勝てる気がしない。
韻竜のフレイムにすら勝てる気がしないサイトに何か与えないとマズい気がしてならない。
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