社畜系TS魔法少女(旧題TS魔法少女と終末世界)   作:無知覚

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12話「危機」

「とりあえず聞いておきますが、あなた方はいったい何が目的ですか?」

 こっそり通信端末を起動させつつそう話を振ってみる。死神のような少女は何も話さず私に攻撃を仕掛けてくるだけだったが、もう片方の狐のお面の少女はどうやらお喋りなようで結界を攻撃しながら口を開いた。

「あたしらは別にあんたらに恨みとかそういうもんはないねんけどな、やることやらなあかんし」

「……」

 つまり、突然魔法少女として覚醒して何かの恨みから襲ってきた訳では無いと。まあ私を狙ってここを襲撃したり人質をとるような作戦をとっていたりと場当たり的な犯行では無いだろうとは思っていたけれど。そうなったら裏にいそうなのは1つだ。

 

「つまりあなた方の裏にはテロ組織がいると」

「……せやね。あぁ、ちなみに言うとくとうちら以外の魔法少女もおるで。あたしらがやられたらそいつらが来るはずや」

 面白くなさそうな雰囲気を出しながら狐のお面の少女が肯定する。テロ組織といったが大体は『アルカ』と名乗っている犯罪集団のことである。他のテロ組織はほとんどない。『アルカ』自体が一枚岩ではないことも関係があるのかもしれないが。魔法少女が現れてから活動を始め、いつしか魔法少女が『アルカ』の構成員にまでなってしまっている。普段はテロへの対策チームで対抗していて私は何もしていないが今回は直接魔法少女管理局に喧嘩を売りに来たのだろうか。今までそんなことは起きたことがないはずだけども。

 

「1時間くらい大人しゅうしてくれるんならそこの魔法少女たちにもあんたにも攻撃せえへんよ。せやったら悪ないんちゃう?」

「なるほど、分かりやすくて助かります」

「ほな交渉成立でええ?」

「いえ、交渉決裂です」

「なんでやねん!」

 目的が時間稼ぎだと分かった以上ここで大人しくする方がリスクが高い。通信が繋がらないのも何か起きているからなのだろう。

「魔法少女フォルテ、対象を制圧します」

 さっさと倒して援軍が来る前に撤退する。そして本部へ戻って状況把握する。それが今できるベストだと思う。

 まずはさっきから無言で私に攻撃し続けていた死神のような少女へとお返しにと攻撃を放ちつつ狐のお面の少女を結界で囲む。最大まで強化してあればさっきまでの様子を考えれば幾つも重ねておけば数分は持つだろう。

 

 死神のような少女へと大量の魔法による攻撃を仕掛ける。あらゆる角度からの攻撃でありこの包囲網から兆候を感じ取り事前に脱出しなかった以上大ダメージを受けてもらおう。大量の魔法で視界が悪くなりつつも死神のような少女の様子を見る。

 しかし次の瞬間私の目に映ったのは予想とは違う光景だった。死神のような少女の体に魔法が直撃したはずが魔法も魔法同士のぶつかり合いによる衝撃も熱も爆発も何もかもが彼女の体にダメージを与えることはなかった。

「どういうこと……!?」

 動揺している間にも彼女は距離を詰めてきており、手に持っている鎌を振るってくる。結界の壁も意味をなさず、慌てて回避すると鎌が髪の1部を切り裂いた。

「幻というわけでもない?」

 こんな魔法聞いたことがない。固有魔法か。それともテロ組織特有の魔法なのか。分からないけど今は対処しないと殺される。

 少なくとも実体は存在しそうだし何らかの絡繰があるのだろう。

 また魔法を放ってみるが効いていないようだ。

「……」

 こんなものがテロ組織で標準だとは思えないし固有魔法の可能性が高いとは思うが。それにしてもここまで凶悪なものがあるとは。

 

「当たらなかった……はやい」

 ポツリとそう呟いた死神のような少女はただこちらを向いているだけだが、それだけでプレッシャーを感じる。

 魔法は効かないし結界を無視して攻撃してきたこともあり防御できないからその分命の危険を感じるのだろう。

 

 相手の固有魔法が分からない以上すぐに片をつけるのは無理そうだ。とりあえず片方封じているうちに訓練生たちを撤退させよう。

「今のうちに退避してください!」

 そう言い結界を解く。一気に訓練生たちが建物へと撤退していく。

 

「フォルテさん! これを」

 そんな声がして何かが手元に投げられた。咄嵯に掴み確認する。それは日本刀のようだった。

「ありがとうございます」

 魔法以外の攻撃手段がちょうど欲しかったところだ。声の主であったセイントにお礼を言いつつ刀を構える。

 

 死神の方の少女の攻撃を警戒していたが私の方しか見ていなかった。訓練生たちへと攻撃する素振りは見えない。こっちの子はあまり作戦を重視していないのか? と思っていたら狐の方の少女を封じていた結界が破壊された。

「せっかくの人質を逃がすわけあれへんってさっきも言うたやろ?」

 出てきたときにはどこからか取り出したのか棒のような武器を持っていて、狐のお面は頭の上に載せられ素顔が見えていた。

 あの棒で結界を破壊したのだろうか。あるいは単に固有魔法を隠しているのかもしれないが。

 

 相手が2人の状況では無事に建物まで訓練生を逃がすのは危険だ。急いで結界を張り直し攻撃を防ぐ。

 

 また振り出しに戻ってしまった。これではさっさと片付けることが難しい。

 

 面倒くさいが全員守りつつこいつら倒すしかなさそうだ。

 魔法が効かない方は無視してもう片方に魔法で攻撃する。これも効かないならそのあとでどうしようか考えよう。

「ちょい危ないって」

 魔法の予兆を感じてか、かわされてしまった。しかしかわしたということはつまりそういうことなのだろう。

 

 攻撃を集中させようとするが死神の方の少女の攻撃が苛烈になってくる。魔法は結界で防ぎ、鎌での攻撃は全てかわし、また狐の方の少女に攻撃を仕掛けると今度はかわしきれなかった攻撃を結界で防いでいる。

 

 攻撃が当たる方から片付けるのが早そうだ。意外と目はいいようなので察知されにくいように魔法を丁寧に使って攻撃を仕掛ける。私の攻撃の数の方が多いから押していくことができる。

「ちっ、思たより厄介やな」

 狐の方の少女は武器を振り回し魔法を弾いている。どうやらあの武器にも秘密がありそうだ。

 ならもっと多くの魔法で攻撃すればいい、そう思った瞬間死神の少女が狐の少女の近くへと全力で後退した。そして狐の少女に触れたかと思うと魔法は全て2人には効果をなさないという結果に終わった。

 

 その後はこちらがいくら攻撃しても効かず、向こうからは一方的に攻撃されるという理不尽な展開だった。攻撃は効いていないというよりはすり抜けのようにそもそも当たっていないかのようだった。しかし、途中なぜかこちらの攻撃を回避するということがあった。それにずっと攻撃をし続けてくるわけではなくとあるタイミングでしか攻撃がされていないことに気づいた。

 攻撃を回避した後攻撃をしてくるというのがセットになっていた。それはつまり、攻撃と回避を同時に行うことができないからそうしているのだろう。

 

 複雑な魔法はそんな簡単に制御できない。まるで無敵かのように見えたが、そんなことはない。ネタが割れたことだしなんとかなりそうだ。

 

 そう思いながら魔法を連続で放つ。さっきまでは効かないのだからと手加減していたがもうそんなことは関係ない。意味のある攻撃だと分かれば徒労感はない。

 どんどん加速していく魔法の嵐。これで死ねと言わんばかりに攻撃を続けていく。

「うわー、めっちゃ怖いやん」

「……」

 案の定効く様子がないがこれでいい。すり抜け状態であれば向こうはそれを解除できない。

 一気に近寄り魔法を解除すると同時に刀を構えるだけ構えて魔法を使う準備をする。

 すり抜けの状態を解除したらそのタイミングで攻撃する。今はそれくらいしか思いつかない。

「もうバレた?」

 死神の少女がそう呟く。

「ホンマに? ほなやるしかあれへんか」

 次の瞬間2人同時に綺麗に攻撃がきた。

 鎌が右から首を刈り取りに、棒は胴を突くように。片方を刀で、もう片方を結界で作った即席の盾で防ぐ。すり抜けることはなく、今回はきっちり防ぐことができた。まともな攻防が初めてできたと感動する間もなく連続で攻撃が来る。しかしこちらも一方的に攻撃されるだけではなく魔法で攻撃を放つ。どちらも結界を巧みに使い防がれるがすり抜けることはない。

 

 この距離なら使えないのだろう。攻撃が当たるなら勝てる。

 

 2人の連携は上手く、回避しにくく防御せざるを得ない状況にばかりなってはいたが、手の数に制限はあっても魔法の数に制限は無い。

 少しずつだがこちらが押している。

 このままいけば確実に倒せるだろう。

「なんでこんな強いねん……」

 焦った様子の狐の少女の声が聞こえる。そりゃそうだろう。今まではずっと一方的な戦いができていたのに急に反撃されているのだから。

 そして、この状況下で時間の経過は私に有利に働いている。2人とも余裕がなく訓練生に攻撃を仕掛けられない。多少攻撃したとしてもそれくらいなら余裕で防げる範疇だ。訓練生たちはもう少しで退避が完了する。そうなれば人質もいなくなるというわけだ。

 

「そろそろ諦めはついた?」

「まだや!」

 狐の少女の叫びと共に棒が少し伸び、横から垂直に短めの棒が生えてきた。そして死神の少女の鎌も更に大きく形を変える。武器の形が変化したことで間合いをズラされ防御が間に合わない。鎌は無理やり刀で抑えたが棒が腹に直撃した。

 

 咄嗟に横へ転がり追撃を防ぐ。

 1発しか喰らっていないがかなりのダメージだ。これ以上喰らうと不味い。

 冷や汗が止まらない。

 

「うせやん。これ喰らって動けるん?」

 狐の少女を見ると驚いているようだがすでに追撃の用意をしている。武器は変形したまま、短い棒の方を握り肘を覆うように構えている。更に棒は2本に増えていて手数が増えたようだ。死神の少女もまた一回り大きくなった鎌を持ったままこちらを窺っている。

 

 先に動いたのは死神の少女であり大きく鎌を振るう。防御しようと刀を構えて受け流しをしようとした瞬間一切手応えがないことで失敗を悟る。

 重心が不安定なまま狐の少女の攻撃を受けることになり結界で片方は防いだがもう片方はうまく結界をかわされ無理やり刀で受けざるを得ない状況に持ち込まれてしまった。魔法での攻撃も決死の覚悟で突っ込まれては勢いを殺すことは出来なかった。

 なんとか刀で衝撃をやわらげることに成功したが後ろから鎌の音が聞こえてくる。結界を張るが当たり前のように切り裂かれていく音が聞こえる。

「これで……終わり」

 慌てて転がるのもできず魔法で鎌ごと吹き飛ばそうとするがその攻撃は止めるには至らなかった。

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