社畜系TS魔法少女(旧題TS魔法少女と終末世界) 作:無知覚
いつもの訓練の日。今日も魔力の節約のための訓練なのかなと思っていたら今日からは別の訓練をやることになっていて、いつもよりたくさんの人がいた。
フォルテさんがマイクを使い話し始めようとした瞬間、訓練場の結界は粉々に崩れ去った。
何が起きたのかとみんなが動揺する中、フォルテさんは真っ先に変身して辺りを警戒していた。それを見て周りの人たちも変身しだし、わたしも変身していると、突然結界が張られそこに衝撃が走る。慌ててそちらを見ると、魔法少女のような人が姿を現した。黒い衣装に身を包んでいて大きな鎌を手にしていて。普通、魔法少女は手に何も持たないか、ステッキを持つくらいがせいぜいで武器を持つことはないのになぜそんなものを持っているんだろう。
わたしは固有魔法を活かすために持っているけれど、あの人も同じなのだろうか。
警戒しながら、様子を見ていると
「……特級魔法少女ふぉるて、お前を殺しに来た」
と言った。
その発言の後に撃たれた魔法はフォルテさんの結界を一撃で割ってしまった。あんな強力な魔法を使われたらわたしじゃ結界にほとんどの魔力を使ってしまってすぐに魔力が枯渇してしまいそうだ。
「建物内の設備で安全な場所へと退避してください!」
フォルテさんの指示でやるべきことが分かりみんなで動き出す。建物の中のテレポート装置で逃げないと。
建物へと駆け寄ろうとしていると
「そうは問屋が卸さないってな。足手まといを逃がすわけないやん」
また別の魔法少女がやってきて攻撃をされ、フォルテさんが結界を張ったものの数人は結界の外に取り残されて魔法を受けてしまった。
近くにいた人が助け出していたけれど意識がないみたいだった。
フォルテさんが結界を何重にもすることで攻撃を防いでくれている。結界が破られる度に瞬時に結界が張り直されている。あまりに早く張り直されるため攻撃をしている魔法少女たちも結界を全て破壊できないみたい。
今のうちにと通信機器を使って本部に通信を行ってみたけれど繋がらない。今までそんなことなかったのに。周りの人と一緒にどうしようかと相談していると、突然戦闘が激しくなった。
フォルテさんが攻撃を仕掛けている。死神のような女の子を攻撃している。もう片方の狐のお面の方の女の子は結界で閉じ込められているみたいだ。
しかし、フォルテさんの攻撃は一切のダメージを与えることはなく、むしろ死神のような女の子による攻撃がフォルテさんを襲った。
鎌による攻撃は結界を抵抗なく引き裂き、フォルテさんへと迫ったように見えた。
フォルテさんがギリギリで躱しているけど、もしフォルテさんが武器を持っていれば武器で対応できるかもしれない。
「今のうちに退避してください!」
そう言いながらフォルテさんが結界を解除した。
今なら刀を渡せると思い思いっきり刀を投げる。
「フォルテさん! これを!」
フォルテさんはすぐにこちらに気づき刀を器用に受け取ってくれた。一応固有魔法で耐久力を高めてあるから普通の武器には打ち負けることはないはずだ。
「ありがとうございます」
そんな声を聞きつつわたしも逃げようとしていると、狐のお面の女の子が閉じ込められていた結界が割れた。何か長い棒に短い持ち手を付けたような武器を持っている。あれは固有魔法で作った武器っぽいような気がする。そうだとすると私の魔法が解けるとまずいかも。
狐のお面の女の子が結界から出てすぐにこちらに攻撃をしたけれど、その攻撃はわたしたちに届くことはなかった。
どの攻撃も結界によって全て防御されていて、いつの間にかわたしたちは結界の中に入っていた。
結界の中からフォルテさんの戦いを見ていると、様々な攻撃を全て無視するように動く敵の魔法少女たちはまるで
千日手のような状況の中で、フォルテさんが魔法による包囲を作り、近づく。私たちはその間に撤退を進めた。すると、いままで無敵かのように振舞っていた敵たちがそれに焦ったのかフォルテさんに近接戦闘を仕掛け、初めてまともな攻防が成り立った。
フォルテさんが敵を食い止めてくれている間に魔法少女たちはテレポート装置で転移していく。人の列はなかなか減らない。
待っていると不安になってきて、わたしは扉の隙間から様子を窺っていた。
わたしは直接戦闘に関わると足手まといになってしまうから、日本刀に掛けた
「あれ、セイント?」
名前を呼ばれて振り返るとそこには見知った顔があった。
「あ、ツグミちゃん!」
ツグミちゃんだ。元々同じグループのメンバーだったけど最近会えてなかったからかすごく懐かしい気がする。
「久しぶり。まあ状況が状況だからあんまり感動の再会とは言えないかもだけどね」
周りを見て苦笑いしながらそんなことを言うツグミちゃん。確かにそうかもしれない。
「そうだね……。今は時間もないしあとでゆっくり話そうね!」
「うん、分かった。……って、行かないの?」
「えっと、や、やらないといけないことがあって」
これがフォルテさんに必要なことなのかは分からないけれど、やれることはやっておきたい。
「ここじゃないとできないことなの?」
わたしを心配してくれての言葉だと思う。けれど、わたしにはここに残らなければいけない理由がある。
「う、うん。実は、さっきわたしがフォルテさんに渡した刀に、固有魔法を掛けてるから、あまり離れられなくて」
わたしの固有魔法のことも軽く話すと、少し悩んだような顔をした後
「……そう。なら、仕方ないか。また後でね。それと、これあげる」
と言ってわたしに何かを手渡した。それは小さなお守りのようなものだった。
何が入っているのかは分からないけれど、きっと大事なものだと思う。
渡されたそれを握りしめてからありがとうと伝えるとわたしは何もしてないよと言いながらも少し嬉しそうな表情をしていた。
その後、その場を離れるツグミを見送った。
そして再び視線を戻すと、フォルテさんがちょうど攻撃をされたタイミングだった。
鎌での攻撃を防ごうとするフォルテさんだったが、死神の方の女の子の攻撃はフォルテさんに防がれることはなく、スルりとフォルテさんの後ろへと抜けていった。そのせいでフォルテさんは敵2人に囲まれる形になってしまった。
前方からの攻撃を防ぐことには成功したものの、後方からの攻撃に対しての防御が間に合ってない。
死神の凶刃はフォルテさんの首を狩るように迫る。
「これで……終わり」
その攻撃はフォルテさんの首へと吸い込まれるように進んだ。
「フォルテさんっ!!」
思わず声が出てしまう。
慌てて結界を張ったけれど、それは一瞬で引き裂かれた。
だけど結果的に、その攻撃はフォルテさんに当たることはなかった。
死神の女の子の攻撃が当たる直前に、爆発が起きたのだ。
爆発によりフォルテさんが吹き飛ばされたことで攻撃が空振りに終わった。そこでようやく自爆して躱したのだと気づく。
フォルテさんは爆発でこちらへと吹き飛ばされてきたためわたしは急いで扉から出る。
受け身も取れずに地面に叩きつけられたフォルテさんは苦しげな声を漏らしていた。そんなフォルテさんに駆け寄り急いで回復魔法をかける。
「大丈夫ですか!?」
フォルテさんはすぐに起き上がり体勢を整えていた。しかし、息は荒く、額からは汗が流れている。フォルテさんの持つ刀も
何も考えず出てきてしまったことを少し後悔しながら恐る恐る敵の方を見ると敵2人もかなりボロボロで、特に狐のお面の方の女の子は傷だらけで今にも倒れてしまいそうだった。
「……まだ続けますか?」
フォルテさんが尋ねると狐のお面の女の子は武器をポイッと捨てた。武器は空中でスッと消えていった。
「もう無理や。これ以上やったら死ぬわ。時間稼ぎは十分したし撤退させてもらうで」
そう言って狐のお面の女の子は死神の女の子と共に姿を消した。
「はあ、まずはここから出ましょうか。新手が出る可能性はありますし」
そう言いながら歩き出すフォルテさんについていく。わたしはフォルテさんに肩を貸す形で一緒に歩いた。途中回復魔法をかけてあげたが、それでもフォルテさんの顔色は悪いままだった。
「回復魔法はもう十分です。ありがとうございます」
「固有魔法で回復魔法を持つ人も多分いますから、早くテレポート装置で合流しましょう」
テレポート装置を使ってわたしたちは本部へと戻ろうとしたのだけど本部へは行けなかった。他の訓練生たちはこことは別の訓練場に行ったみたいだ。
「本部に何かがあった……?」
「わたしたちもこっちの訓練場にいけば回復魔法を受けられますよ」
「本部への距離はここの方が近そうですね。……わたしはここから直接本部へ行きます。セイントさんはこちらの訓練場へ転移してそこで待機していてください」
「え? あの、いまなんて」
フォルテさんはテレポート装置を発動させ、わたしを転移させた。怪我したままで。