社畜系TS魔法少女(旧題TS魔法少女と終末世界) 作:無知覚
あ、刀返し忘れてた。
セイントから借りたままになっていたなあ。
訓練場が襲撃されたあと、私が本部へと向かっている途中妨害があり着いたころには全て終わっていた。
私が襲撃を受けていた頃、本部はもっと多くの
しかし、本部というだけあって強力な魔法少女も大勢いたため、私がたどり着く前に撃退されていた。
それでも負傷者は多かったようで、今も治療を受けている人が多いようだ。
本部のスタッフたちも忙しそうに動き回っていて私は待機でもしてろという感じだった。
通信も今は混雑しすぎていてやれることはなさそうだった。
とりあえず周囲を巡邏してみようかと考えていたのだが、思ったよりも受けていたダメージが大きかったのか1度椅子に座ってからは立ち上がる気力が湧かなかった。
仕方なくそのまましばらく休憩していると誰かが近づいてくるのを感じた。
俯いたままの視界に赤い髪の毛が映る。
「あれ、あんた……いたの?」
顔を上げるとそこにはヴィオラがいた。その表情は少し不機嫌そうだ。よく見ると怪我をしているようで左腕を三角巾で吊っている。
「先程到着したばかりで……。その怪我は?」
「別にこれくらいの怪我、大したことないわよ」
強がりを言うヴィオラだったが、やはり痛いらしく顔をしかめている。
「それで、さっきはどこにいたのよ?」
「ここの襲撃の際は訓練場の方にいたのでいませんでした。訓練場で襲撃を受けその処理の後すぐにこちらに来たのですが……」
「この状況だったってわけね。まあアンタがいなくても私一人でなんとかなったけどね」
得意げにしてはいるが怪我してるからか普段よりは声に勢いがない。
「そうだ。あとで会議やるから参加しなさいよ。そこで被害状況とかいろいろ話すみたいだから」
「分かりました」
それから、少し落ち着いてきた辺りで訓練場のことをスタッフに報告して情報をまとめて貰っていると、具合が悪くなってきた。
立っていることができず壁に寄りかかるようにして座り込む。
「フォルテさん? ……大丈夫ですか!?」
少し無理をしてたかもしれない。気持ち悪くなってきた。吐き気がすると思いながらじっとしていると、突然楽になっていくのを感じた。
「無理をしないで。内臓へのダメージがあるようね。治療するから少し椅子に座れる?」
メアリーの声がする。言われるがままに椅子に座ると暖かい光が溢れ出し、痛みが大分和らいできた。
「ありがとうございます」
「それより、こんな状態なのにどうして治療室に来てくれなかったのかしら」
「治療室が慌ただしかったようでしたし、私はさっきまで動けていたので後で行こうかと……」
はあ、と呆れたようなため息をつかれた。
「けが人がそんなこと気にしちゃダメよ。外傷がなくたって内蔵がダメージを受けていれば危険なんだから」
「すいません……」
思ったより耐えられなかったなあ。もう少し頑張らないと……。
その後、会議室へと入ると上級魔法少女たちとともにメアリーとヴィオラがいた。他の支部と繋がった画面なんかも映っている。
椅子に座りスタッフたちが慌ただしくしている間、後ろがうるさかった。別にいい内容でもないので聞き流す。
しばらくすると、会議が始まった。
まず最初に本部の被害について話された。
建物自体は大きな損傷はなかったものの、防衛に当たっていた魔法少女たちに大きな損害が出たらしい。
死者が5人、負傷者は数百人に上る。
また、一般人にも死傷者が出ているらしい。
次に他の場所での被害が話題になった。私のいた訓練場では建物への被害が多かったが負傷者は少数だった。他の支部は襲撃こそあったものの、そこまで大きな被害はなかったとのことだ。
そして今回の本部
今回の襲撃事件はテロ組織『アルカ』を名乗る集団によるものであり、本部には
突然本部の結界の1部が崩れ、そこから魔法少女たちが侵入してきてしまった。
その後通信や転移装置が使えなくなった。これはおそらく何らかの妨害を行われたのだろうと説明が入る。通信妨害はともかく、転移を妨害とは一体どういうことなんだろう。それも魔法ということなのだろうか。
侵入者たちはそれぞれが上級魔法少女並の力を持っていたようで、中級以下ではなかなか倒すのが難しかったらしい。そのせいで負傷者がかなり出たとか。
上級魔法少女を中心として数で対抗することで大凡は上手く対処出来ていたがその中でも強かった奴らは特級魔法少女のメアリーとヴィオラの2人で対処し撃退に成功。
しかし捕まえることは出来ず結界が再び破壊され逃げられた。
とまあ、大体こんな感じの状況だったらしい。
結局
その日はとりあえず情報が纏まったら解散という形になったが、どうやら後日テロ対策部隊という部隊の一部が魔法少女管理局本部や支部に配置されたらしい。テロ対策部隊は対テロのため、対魔法少女戦を意識した訓練を積んだ魔法少女の集団で通常の指揮系統とは別で動いている。それもあってか色々と衝突が起きているとか。
前はSPみたいなこととか特殊部隊みたいなことしかしてなかったんだけど、面倒なことになったなあ。
なんだか変に偉そうな態度を取られるからあんまり自分から近づきたいとは思わない。
テロ組織が思った以上に魔法少女たちを集めていたことがわかったし、割りとマジになって対策しないといけないんじゃないかな。
はぁ、私の休みが減りそうだ。さっさと潰れてくれないかな。
そうだ。会議も終わったし刀返しに行こう。
セイントの家は確か向こうの方だったな。さっさと行こう。もう夕方過ぎてるしそろそろ暗くなりそうだ。
スマホを開きセイントに連絡する。すると、すぐに返信が来た。駅まで取りに来るということだった。
じゃあ駅まで行って刀返すか。
さて帰るかと刀を持ち荷物を背負うと駅まで歩く。目的地までは歩いたあとしばらく電車に乗っていかないといけない。
電車に揺られ眠気がピークに達した頃ようやく目的地に着いた。
頭が少しぼーっとしたまま改札を出てセイントに連絡すると、辺りを見渡した。まだ来ていないのかな。そんなことを考えていると別の改札口の方でセイントがいた。
「あ、フォルテさん。わざわざありがとうございます」
「いえ、これくらいは。ただ、この刀なのですが、かなりボロボロになってしまいまして」
弁償とかした方がいいやつだろうか。
「あ、これは支給されたやつなので色々申請さえすればなんとかなると思うのでそんな顔しないでください」
そうか。セイントには必要なものだろうしそりゃ支給されてるよな。まあ今何やってるのか詳しくは知らないけど。
そんなこんなで刀を渡し、そろそろ帰ろうかと思っていると、横から声をかけられた。
「あれ、お姉ちゃん?」
一瞬息が止まる。横目でチラと声の主を窺うと、見知った顔が見えた。
なんでこんなとこに、いや、そうじゃない。
逃げないと。
気づくと私はどこか分からない場所にいた。どこかの路地裏みたいだ。
ぜえぜえと荒い息を吐く。かなり遠くまで走ってきてしまったようだ。
ふらふらとしつつも辺りを見渡し撒くことができたかを確認する。誰も近くにいないようだと分かり地べたに座り込んだ。
息を整えようと深呼吸をしてみようとしたが、上手く息を吸えなかった。再び息を吸おうとするが、なんだか突然吐き気に襲われる。何度か深呼吸しようとして全て失敗し、仕方なく小さな呼吸を繰り返す。
……ああ、もう、最悪だ。こんなところで会うなんて。しかも逃げたのセイントに見られてるし。
「うっ、ずず、ひっく」
なぜだか涙まででてきた。なんで涙なんか。
ひとしきり泣き終えたあと、私はようやく落ち着くことができた。スマホを見るとセイントからどうしたのかと心配のメッセージが届いていた。
どう返信したものかな。家族に会うのは色々気まずいから思わず逃げてきたけども、なんでとかいう話になったら私が昔母親に虐待されてたとかそういう話になってきてしまう。そんなことまでセイントに話す気は起きないし上手く誤魔化せないかな。
うーん、思いつかない。とりあえず帰って寝たら思いつくかもしれないし帰ろ。
さっと立ち上がり、変身して空を飛び家へと帰った。
お風呂に入り晩ご飯を食べて寝る準備ができたころには少し落ち着いて考えることができた。
まあそこまで考えなくてもいいか。もう問題ないですっと。もう会わなきゃ大丈夫だろうし。まあ、あの辺行くときは変装しようかな。
それから数週間が経った。定期的に入る外敵の駆除を行い、本部のゴタゴタは無視して家でゲームばかりしていた。
最初の方はあの遭遇を思い出してしまっていたが、ようやくあまり思い出さなくなってきて調子も良くなってきた。
今日もゲームするかなと思っていると通信が入る。いつもの掃除ではないようだ。面倒事の気配がする。
本部へと到着すると、テロ対策部隊があちこちにいて諍いが起こりまくっていた。
一応味方のはずだが、もはや敵扱いである。態度が悪いせいだとは思うがここまで仲悪いのか。
用事をさっさと済ませよう。今回はなにか話があるとかいうので聞きに来たのだが、一体何の話なのだろう。
スタッフに用件を伝え、話を聞いてみると、どうやら私の魔法少女の育成の訓練をそのままテロ対策の訓練にしろという命令が国から下ったらしい。この前のテロのせいで連日ニュースになってたみたいだしな。そのせいで、世間では侵入してこない外敵より身近なテロリストたちをどうにかしてくれという話になるのは当然のことだろうけど。国防なんだからそんな世論に流されないで欲しい。
まあ私がやる訳じゃないから仕事が減ってラッキーくらいに考えとこう。
まあ上手くいくかは知らないけど。