社畜系TS魔法少女(旧題TS魔法少女と終末世界) 作:無知覚
フォルテさんは高嶺の花のような存在だった。彼女は私たちのように魔法少女管理局の本部にいることは少なく、その活躍をテレビで見るだけだった。他の特級魔法少女たちはよく本部にいて、たまに会話することだってある。だから、私はフォルテさんと個人的な交流ができたということに少し浮かれていたのかもしれない。
フォルテさんが刀を持ったままになっていたので返しに来てもらうことになって、駅まで取りに行くことになった。
「そろそろ行かないと」
私は家を出て刀を受け取りに行った。駅につくと、まだ少しフォルテさんが来るまで時間があった。スマホを取り出し時間まで待っていると、フォルテさんの姿が見えた。
「あ、フォルテさん。わざわざありがとうございます」
後日じゃなく今日返したいなんて、やっぱり律儀というかなんというか。
「いえ、これくらいは。ただ、この刀なのですが、かなりボロボロになってしまいまして」
ところどころ刃が欠けていて、それだけの戦いが行われたのだと分かった。あんなトラブルだったのに、申し訳なさそうにしていて、相変わらず真面目だと思って説明さえすれば大丈夫だと言っていると、横から誰かがフォルテさんに声をかけた。
「あれ、お姉ちゃん?」
声のした方を見ると、確かに少し目元がフォルテさんに似た女の子がいた。妹さんがいたんですねとフォルテさんに声をかけるが返事がなく、どうしたのかと振り返るとフォルテさんは女の子を見て、顔を真っ青にしていた。思わず驚きに固まっていると女の子が続けて何かを言おうとした。
「お姉ちゃん! あの、わたし……」
しかし次の瞬間、フォルテさんはその場から逃げ出した。えっと声を上げる間にもその後ろ姿が小さくなっていく。何が起きたのかは分からないけれどあんなに怯えたようなフォルテさんをそのままにはしておけない。そう思い追いかけた。女の子も私の横で走っていて、少なくとも同じ目的だと思い一緒に探すことにした。
しかし、フォルテさんはすぐに見失い、どこにいるのかが分からなくなってしまった。せめて無事でいてほしいとメッセージを送り安否の確認をしたかったがそのメッセージは読まれていないようだった。
1時間程は探したがもう見つからないだろう。もしかしたら家にまで戻っているのかもしれない。
「す、すみません。私のせいです」
女の子がフォルテさんを追いかける途中で転んでしまい、膝などから血を流しているのを見て私が応急処置をした。そのことに対する謝罪を言われる。
「いえ、さすがにあれだけの怪我ですから仕方ないですよ」
うまく受け身が取れなかったようで、大きな怪我になってしまい跡が残ってしまいそうだったので私が回復魔法で治すしかなかった。
「えっと、自己紹介でもしておきましょうか」
名前も分からないと不便なので自己紹介をする。
女の子は白砂
自己紹介が終わり、1番気になっていたどうしてフォルテさんが逃げ出したのか、それに心当たりがあるかを聞くと、彼女は分からないと答えた。
「昔からお姉ちゃんは無口で、何を考えてるかはあまり分からなかったけど、いつも私に優しくしてくれて。でも、突然家から出てって一人暮らしを始めたらしくて」
フォルテさんが無口!? 動揺を顔に出さないように気をつけながらもう少し話を聞いてみると、フォルテさんの両親は妹の優結花さんには魔法少女として働いていることだけを伝えてどの魔法少女であるのか、どこに住んでいるのかなどの情報は教えてもらっていなかったらしい。
家族であったら知っていておかしくない情報を知らないというのはかなり不自然だ。見たところまだ中学生ではなさそうだし両親が幼い優結花さんでは秘密が守れないと教えていなかったのだろうか。それとも、何らかの事情があったのか。
「私、お姉ちゃんがどこにいるのか分からないし本当に生きてるのか不安だったんです。お姉ちゃんがどこに住んでるのかも分からないし。でも、生きててくれて良かった」
涙を浮かべながら心底嬉しそうにそう言った彼女に私は協力してあげたいと思った。フォルテさんに話を聞くだけでもやってみよう。
その後、連絡先を交換してから自然と別れて家に帰った。家に帰ると帰るのが遅かったから家族に心配されていた。
それからしばらくの間フォルテさんは本部に姿を見せることはなかった。姿を見せるようになったのは、テロ対策部隊が本部にいることになって対立による雰囲気の悪化に対応するための任務が出たかららしい。
フォルテさんに妹さんの話を切り出したいが、いいタイミングが見つからない。
そうして少し時間がまた空いて、フォルテさんが1人のときに話しかけ、妹さんの話をしたけれど取り付く島もなかった。
話を聞いてくれるなんて思いこんでいた。けどそんなことはなかった。フォルテさんがあんな悲しそうな顔をしたのはなにか深いわけがあるからだろうし、私はそこに軽率に踏み込もうとしていた。そのことに気づかされてショックで私の方が顔を歪めてしまったがたぶん心はフォルテさんの方が辛いはずだ。
淡々とした様子で話すフォルテさんに謝るのはその場では出来なかった。その日はそれで別れて私は落ち込みながら家に帰った。
数日、私はフォルテさんにどう謝ろうか考えていた。すると、それを見かねてか友達のツグミちゃんに声をかけられた。
「何か困ったことがあったら相談くらいしてよ。友達なんだからさ」
一人で考えていても答えはでないと思ったのでツグミちゃんに相談することにした。
「なるほど。……ねえセイント、フォルテさんはすぐ怒る怖い人?」
そんなわけがないと否定すると、ツグミちゃんは少し笑ってこう言った。
「フォルテさんも何か事情があるのだろうけど、セイントが正直に謝れば許してくれると思うよ。前にセイントから聞いた話とかを考えても。……私もついて行ってあげるから一緒に謝りに行こ?」
ツグミちゃんに連れられフォルテさんに謝りに行くと許してもらうことができた。フォルテさんの大人の対応でなんだかもっと申し訳なくなってしまった。