社畜系TS魔法少女(旧題TS魔法少女と終末世界) 作:無知覚
ドキドキと煩い心臓に手を当てる。深呼吸をして少しずつ緊張をほぐす。
周りの魔法少女たちは私のように初めての子もいるみたいだけど私の方が緊張しているようだ。
「大丈夫?」
先輩魔法少女のセラムさんに話しかけられる。訓練ではよく私の面倒を見てくれた人なのであまり心配させたくない。
「だ、大丈夫です」
さっきは少し吐きそうだったが深呼吸してるうちに良くなってきた。
「もしダメそうならすぐに言ってね」
「はい」
船が目的地へとたどり着き、私たち魔法少女の出番がやってきた。いくつかのグループの魔法少女たちで外敵の集団を相手するのが今日の任務だ。
「そろそろ準備をしてちょうだい」
リーダーの
外敵がやってきた。どこか無機質な見た目をしているがそれは明らかに私たちを認識していた。あまりにも異質なその姿に少し驚きで身を固くしてしまう。
「攻撃魔法、準備!」
その言葉に少し遅れて攻撃魔法を用意する。それだけで魔力の1割ほどが失われていく。魔力の残量はなんとなく分かるのだが、魔力がなくなれば変身がとけて魔法すらも見えない無力な存在になってしまう。魔法を使うのはそこに近づいていくことを意味する。その恐怖を呑み込み、指示に従う。
「放てえ!」
その声に従いグループのメンバーの魔法が同時に放たれる。私も魔法を外敵に当てた。外敵はそれだけの数の魔法には抗えなかったようでその形を崩した。ホッとしてそれだけで膝から崩れ落ちたくなるが気力を振り絞り立つ。前を見るとまた別の外敵が魔法で攻撃してくるようで今度はそれに対して結界を張らなければいけない。失敗したら死ぬかもしれないということで決死の覚悟で結界を張る。結界は自分でやるしかない。攻撃は同時着弾させることで威力を上げられるが防御は個人でやるしかないのだ。結界は攻撃魔法ほど魔力を消費しないし少し魔力をこめすぎても暴発しにくいのが幸いだ。焦りつつも結界を張ろうとしていると隣にいた同じ初心者であろう子が結界をうまく組めていないのに気づく。
血の気が引いた。その瞬間その子の周りに結界を張っていた。自分が結界で防御できなくなってしまうなんていう理屈抜きで身体が動いてしまった。自分で張った結界の後ろに回り、魔法の衝撃を耐える。炎の魔法だったようで少し空気が熱くなったような気がしたが痛みはなく、前の様子を見ると先輩魔法少女たちが前で塊になってこちらに向かってきた魔法を遮断してくれていたようだった。
「自分の結界を最優先にしなさい!次、攻撃魔法準備!」
先輩の言動に少し驚きつつも指示に従う。隣の子が何か言いたげにしているが集中できそうにないので無視する。
しばらく無我夢中で戦い魔力が底をつきそうになり撤退した。それから少しして外敵は全て倒された。休憩しているとさっき結界を代わりに張った子に謝罪された。疲れていたのでうまく返事ができたか自信が無い。
戦闘はただ魔法を放つのと防御とを繰り返すくらいだった。なんとか指示に従うだけで精一杯だ。まだ慣れることができてない。
その日はもう終わりかと思っていたらまた近くに別の外敵の集団がいたらしく数時間だけ置いてまた戦うことになった。その頃には魔力が回復はしていたが、精神的にはまだ回復しきってなかった。ただ、だからといって根をあげるわけにもいかず頑張った。
それが終わるともう動けなくなってしまい、先輩に運ばれて船の中へと戻ることになった。船の中に戻ってもまだ動けなかったので先輩に色々とお世話してもらう羽目になってしまった。恥ずかしくて泣きそう。
結局また数時間くらい経った頃にまともに動けるようになった。ただ、そのせいで先輩をかなり心配させてしまった。そのとき限界であれば最初だし休憩くらいできたというのを聞いてなにそれとなった。
限界になったらちゃんと休もう。それくらい許してくれるというなら。
あれから、私は一生懸命に戦い、船での生活を続けているうちに少しずつ周りの魔法少女たちとも仲良くなることができた。
外敵と戦うのはまだ怖い。ただ、友達を見捨てたりなんかするのはもっと嫌だった。逃げてなんかいられない。
成長というほどのものではないかもしれないが、私は戦いで精神的に消耗することは少なくなった。しかし、誰かが防御に失敗したときなんかはかなりショックを受けてしまう。死んでしまうのではないか、そんな思いが現れるからだ。魔法で治療され帰ってくると安心するけど、それでも怖い。
私がもっと強ければこんな思いをしなくて済むのかなあ。