社畜系TS魔法少女(旧題TS魔法少女と終末世界) 作:無知覚
外敵。
それは人類にとっての、いや、生物にとっての天敵であった。
突然どこかから現れたそれらは、そもそも生物なのかも不明だった。生物だとするにはあまりにも強すぎるからだ。あまりにも硬い表皮、科学では解明しえない未知の攻撃方法。当初は宇宙人がつくり出した機械なのではないかという噂も出た。しかし、すぐに外敵は生物を用いて繁殖を行う
魔法少女は魔法を使うことで硬い表皮を突破でき、魔法の眼を用いることで一般人には見えない
わたしはそれまで、魔法少女やその歴史は知っていた。だけどまさかわたしが魔法少女になるとは夢にも思っていなかった。
わたしは魔法少女セイントを名乗るようになった。魔法少女としての適性が見つかったから。
最初は外敵との戦いに怯えていたけれど、最近では比較的落ち着いて戦えるようになったように思う。慣れてしまったのかもしれない。今日もまた外敵との戦いをいつも通りにやる。これはもう日常になったと思っていた。
でも現実は違った。目の前には超巨大な外敵がいる。いつも現れる外敵なんかよりもずっと大きい。どれだけ魔法で攻撃しても怯まないから効いているかも分からない。わたしたちではどうにもできない。オペレーターとの通信で状況をリーダーが報告する。
「ええ、わかりました」
報告が終わったみたい。これからどうすればいいのかな。
「みんな、今特級魔法少女がここに向かってる。それまで何とかして耐えるのよ!」
特級魔法少女? それって魔法少女の中でもトップ10と呼ばれるあの人達?
「そこまでやばいの?……セイント、あとでどうなってもいいからありったけの支援お願い」
わたしの友達であり同じ魔法少女であるツグミちゃんにそう言われて早速全員に身体能力の強化魔法をかける。限界ギリギリまで強化をするとあとで体中痛くなるけれど命には変えられない。
今までは遠くから魔法を撃つだけだったけれど、ここまで近づかれてしまうと物理的な攻撃に気を付けないといけない。魔法を今まで使っていないから多分物理的な攻撃しかしない外敵だと思うけれど、そういう敵は素早かったりするはず。そう思っていると、突然外敵がすごい速さで体当たりをしてきた。仲間の魔法少女はなんとか避けれたみたいだったけれど、身体強化が切れると私は避けられないかも。
近距離戦闘が始まってしばらく経った。どれだけ魔法を撃ち込んでも怯む様子も見せない外敵はまるで無敵みたいだった。いつもならある程度魔法を撃ち込んでいたら外敵の動きも鈍ってくるはずだけどそれもない。もう強化魔法は切れているし体が少しずつ痛くなってきた。痛みで動きが鈍くなって相手の攻撃ももういつ当たるか分からなくなっている。外敵の攻撃方法自体は単純な体当たりとジャンプしかないけど、その速度がとてつもなく速いのが問題だった。移動を始めようとする段階で注意していないとかわせないくらいに速い。大きい身体のせいで余計そう思うんじゃないか。そんなことを考えていたからだろうか、わたしは
突然目の前に迫る壁。それがわたしにものすごい衝撃を与えた。一撃で遠くに吹き飛んだかと思えば壁にぶつかった衝撃で息ができなくなってしまった。パニックになりそこでわたしは何も行動することができなかった。目の前にはジャンプで押し潰そうとしている巨大な外敵がいる。頭の中には走馬灯が流れ出し、死ぬということを否応なく突き付けられた。
最後にできたのは、ただ目を閉じることだけだった。
痛みを、衝撃を覚悟した。しかし浮遊感だけが体を襲った。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけられて閉じてしまった目を開けると、目の前に特級魔法少女フォルテがいた。後ろから聞こえてくる地響きの方向には外敵がいた。私は抱えて運ばれ、助けられたみたいだ。
魔法少女フォルテは、いつかテレビで見たままの姿だった。白銀の髪、青い瞳、白を基調としたドレスのような衣装に身を包んだその姿はまさに魔法少女そのものという感じだ。でもテレビより近くで見た彼女は綺麗で、恰好よかった。
彼女はわたしを抱えたまま空を飛んで、その場を離れた。少し離れた安全な場所で下ろされると、わたしは動けなかったからツグミに抱えられて後方へと撤退していく。
「よく生きてたわね」
そうツグミに言われた。助けられなかったらきっと死んでた。そう思うと震えが止まらなかった。
「あの人が助けてくれたから」
他にも傷ついた魔法少女はいたけど生きている。みんなとその喜びを分かち合うことができる。
後ろを見ると魔法少女フォルテは1人で巨大な外敵に向き合っていた。いくら強いとはいえ、あんな無敵みたいな外敵にたった一人で挑むなんて無謀すぎると思う。
わたしは彼女を心配しながら、彼女が倒してくれることを願うしかないと思っていた。けど、そんなのは間違いだったということをすぐに思い知らされることになった。
彼女は飛翔しながら大量の魔法を同時に使い外敵を攻撃していた。魔法の矢が放たれたり火の玉がいくつも浮いていたり雷が走ったりと様々な種類の魔法が使われていたのでどれが何属性の攻撃なのかはさっぱりわからなかったけれど、とにかくたくさん使われていたことはわかった。飛んで魔法を使うだけでも大変なはずなのに、数十、いや、数百の魔法が展開されている。こんなたくさんの同時攻撃、一体これは何人、いや、何十人分の魔法なんだろう。特級魔法少女は、文字通り一騎当千の魔法少女なんだ。これならあんな外敵でも倒せるかもしれない。そう思ったけれどそれだけやっても外敵には効いていないらしい。……そういえば、近くで見たときに表皮を覆っていた粘液があった。遠くから粘液を注視すると、大量の魔法はそれに散らされているような気がした。
「もしかしたらなんですけど」
仲間にあの粘液の話をしてみたら通信で伝えてみようかという話になった。そんなときに、彼女が突然攻撃をやめた。そして飛んだまま通信をし始めた。一体どうしてだろうと思っていると、通信でもっと距離を取るように言われた。わたしたちは指示通り移動する。
移動して少し経つと、外敵に向かって隕石のようなものが大量に落ちてきた。その大質量による攻撃により、外敵の表皮が破れていく。また少し時間を置いて隕石が降り注ぐ。何度も繰り返しているうちにとうとう外敵は倒れた。
あれだけ苦労させられた外敵がこうもあっさり倒される光景を見て、改めてわたしは特級魔法少女の力を思い知った。
通信で戦闘終了が告げられた。
「あれが、特級魔法少女かあ。セイント、すごい人に助けられたね」
「あ、そうだ。お礼言ってない! というか大丈夫ですかって聞かれたのに答えてもいなかった!」
わたしは慌てて彼女の元へ向かった。
「あの、ありがとうございました!」
わたしがそう言うと、彼女はこちらを向いて言った。
「無事だったようで何よりです」
特級魔法少女に助けてもらってお話するなんて夢にも思わなかったからなんだか変な気分だ。それに、近くで見るとやっぱり綺麗で、こんな人が世の中にいるなんて信じられない。わたしはつい、彼女をじっと見つめてしまった。
「えっと、どうかしました?」
彼女は首を傾げて不思議そうな顔をしている。ああもう、ジロジロ見たりしたから不愉快に思われちゃったかも……。
「あの、何かお礼とか……」
誤魔化そうとしたらそんな言葉が出てきた。何を言っているんだろうかわたしは。
「お礼は言葉だけで十分ですので、いらないです」
私の言葉を遮ってフォルテさんはなんだか少し怖い顔でそう言った。い、いらないこと言っちゃったかな。わたしなんかに時間をとられるのは嫌だとか?
「では、そろそろ……」
フォルテさんが別れの言葉を告げようとしたとき、ぐうと音が聞こえた。一瞬誰の空腹の音か分からなかったけれど、目の前の彼女が顔を赤くして俯いているところを見ると彼女のものだったようだ。さっきまであんな格好よく戦ってた特級魔法少女なのに、普通の女の子みたいに恥ずかしがっている。突然わたしたちと同じなんだって親近感が湧いてきた。
「えっと、良ければ一緒にご飯でも食べに行きませんか? 美味しいお店を知っているんです。デザートのケーキがすごく美味しいお店なんですよ」
だからだろうか。思い切って誘ってしまったのは。断られるかとも思ったけど、彼女は小さく「お願いします……」と言ってくれた。
「あ、まだ自己紹介もできてませんでした! わたし下級魔法少女セイントです。よろしくお願いしますね、フォルテさん!」
これがわたしとフォルテさんとの出会いだった。