社畜系TS魔法少女(旧題TS魔法少女と終末世界)   作:無知覚

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2話〇「魔法少女セイント」

 外敵。

 それは人類にとっての、いや、生物にとっての天敵であった。

 

 突然どこかから現れたそれらは、そもそも生物なのかも不明だった。生物だとするにはあまりにも強すぎるからだ。あまりにも硬い表皮、科学では解明しえない未知の攻撃方法。当初は宇宙人がつくり出した機械なのではないかという噂も出た。しかし、すぐに外敵は生物を用いて繁殖を行う何か(もの)だと分かった。外敵によって滅びた国があったからだ。外敵の餌食になった生物の末路は悲惨だった。苗床にされ、繁殖に使われ、果ては周りの環境を変えて外敵の住みやすい場所を作るだけの環境汚染物質(オブジェ)になる。外敵はこのオブジェによってできた環境を好むのか、それらがない場所にいる時間は少ない。だから人類は逃げた。それらのいない場所に住んでいた。しかし、外敵は段々生息域をひろげていた。人類の滅亡はすぐそこであった。そのとき、外敵に対抗しうる存在が生まれた。魔法少女である。

 魔法少女は魔法を扱うことで硬い表皮を突破しやすく、魔法の眼を用いることで一般人には見えない攻撃を回避することもできる。だから魔法少女はすぐに国によって保護され、外敵を排除する役割を期待された。

 

 私はそれまで、魔法少女やその歴史は知っていたがまさか私が魔法少女になるとは夢にも思っていなかった。

 

 私は魔法少女セイントを名乗るようになった。魔法少女としての適性が見つかったからだ。

 最初は外敵との戦いに怯えていたけれど、最近では比較的落ち着いて戦えるようになったように思う。慣れてしまったのかな。今日もまた外敵との戦いをいつも通りにやる。これはもう日常になったと思っていた。

 

 しかし現実は違った。目の前には超巨大な外敵。いつも現れる外敵なんかよりもずっと大きい。私たちでは対処不可能だ。オペレーターとの通信で状況をリーダーが報告する。

 

「ええ、わかりました」

 

 報告が終わったみたい。一体どうすればいいのかな。

 

「みんな、今特級魔法少女がここに向かってる。それまで何とかして耐えるのよ!」

 

 特級魔法少女? それって魔法少女の中でもトップ10と呼ばれるあの人達? 

 

「じゃあ相当やばいじゃない。セイント、あとでどうなってもいいからありったけの支援お願い」

 

 私の友達であり同じ魔法少女であるツグミにそう言われ、早速全員に強化魔法をかける。限界ギリギリまで強化をするとあとで体中痛くなるけれど命には変えられない。

 

 戦闘が開始してしばらく経った。どれだけ魔法を撃ち込んでも怯む様子を見せない外敵はまるで無敵みたいだった。いつもならある程度魔法を撃ち込んでいたら外敵の動きも鈍ってくるはずだけどそれもない。もう強化魔法は切れているし体が少しずつ痛くなってきた。痛みで動きが鈍くなって相手の攻撃ももういつ当たるか分からなくなっている。

 

 外敵は珍しく攻撃方法自体は単純な体当たりがメインだけど、その速度がとてつもないくらい速いのが問題だった。移動を始めようとする段階で注意していないとかわせないくらいに速い。大きい身体のせいで余計そう思うんじゃないかな。そんなことを考えていたからだろうか、私はそれを見逃してしまった。

 

 突然目の前に迫る壁。それが私にものすごい衝撃を与えた。一撃で遠くに吹き飛んだかと思えば壁にぶつかった衝撃で息ができなくなってしまった。パニックになりそこで私は何も行動することができなかった。目の前には巨大な外敵がいる。頭の中には走馬灯が流れ出し、死ぬということを突然突きつけられたかのようだった。

 

 目の前の絶望が私に痛みを与えるのか死を与えるのか、それはどちらでもなかった。

 

「大丈夫ですか?」

 

 思わず閉じてしまった目を開けると、目の前には特級魔法少女フォルテがいた。私を抱え外敵の攻撃から助け出してくれたみたいだ。

 いつかテレビで見たままの姿だった。白銀の髪、青い瞳、白を基調とした衣装に身を包んだその姿はまさに魔法少女そのものという感じだ。彼女はそのまま私を抱えてその場を離れた。

 

 少し離れた安全な場所で下ろされると、私は動けなかったのでツグミに抱えられて後方へと撤退していく。「よく生きてたわね」とツグミに言われた。他の魔法少女たちも傷だらけになっていたけど無事なようでよかった。

 

 後ろを見るとフォルテさんは1人で巨大な外敵に向き合っていた。いくら強いとはいえたった一人で挑むなんて無謀すぎると思う。

 

 私は彼女を心配しながら、彼女が倒してくれることを願うしかなかった。

 しかし、彼女の戦う姿を見た私は目を疑うことになった。

 

 彼女は飛翔しながら大量の魔法を同時に使い外敵を攻撃していた。魔法の矢が放たれたり火の玉がいくつも浮いていたり雷が走ったりと様々な種類の魔法が使われていたのでどれが何属性の攻撃なのかはさっぱりわからなかったけれど、とにかくたくさん使われていたことはわかった。飛んで魔法を使うだけでも大変なはずなのに、数十、いや、数百の魔法が展開されている。こんなたくさんの攻撃、一体これは何人、いや、何十人分の魔法なんだろう。

 しかしそれだけやっても外敵の固い表皮を貫くことはできないらしい。それどころか表皮を覆う粘液を散らす程度の効果しか出ていないように見えた。

 

 フォルテさんが攻撃を続けているが、やはり効果は薄そうだ。しばらくそれが続いていたかと思うと、突然攻撃をやめてしまった。そして彼女は飛んだまま様子見することにしたみたいだ。一体どうしてだろう。何か策でもあるのかな。

 

 それから少しすると通信でさらに距離を取るように言われた。私たちは指示通り移動する。どうしてそんなことをするのだろうと疑問だったけれど、すぐにその理由が分かった。

 外敵に向かって隕石のようなものが大量に落ちてきた。その大質量による攻撃により、外敵の表皮が破れていく。また少し時間を置いて隕石が降り注ぐ。何度も繰り返しているうちにとうとう外敵は倒れた。

 あれだけ苦労させられた外敵がこうもあっさり倒される光景を見て、改めて私は特級魔法少女の力を知った。

 通信で戦闘終了が告げられた。

 

「あ、お礼も言ってない! というか大丈夫ですかって聞かれたのに答えてもいなかった!」

 

 私は慌てて彼女の元へ向かった。

 

「あの、ありがとうございました!」

 

 私がそう言うと、彼女はこちらを向いて言った。

 

「無事だったようで何よりです」

 

 特級魔法少女に助けてもらってお話するなんて夢にも思わなかったからなんだか変な気分だ。それに、近くで見るとやっぱり綺麗。こんな人が世の中にいるなんて信じられない。私はつい、彼女をじっと見つめてしまった。

 

「えっと、どうかしました?」

 

 彼女は首を傾げて不思議そうな顔をしている。ああいけない、ジロジロ見たりしたから不愉快に思われちゃったかも……。

 

「あの、何かお礼とか……」

 

 誤魔化そうとしたらそんな言葉が出てきた。何を言っているんだろうか私は。

 

「お礼なんてものはいりませんので。私には」

 

 突然フォルテさんは少し怖い顔でそう言った。い、いらないこと言っちゃったかな。私なんかに時間をとられるのは嫌だとか?

 

「ではそろそろ……」

 

 フォルテさんがお別れの言葉を告げようとしたとき、グウと音が聞こえた。一瞬誰の空腹の音か分からなかったけれど、目の前の彼女が顔を赤くして俯いているところを見ると彼女のものだったようだ。特級魔法少女であるというのに、普通の女の子みたいに恥ずかしがっている。突然私たちと同じなんだって親近感が湧いてきた。

 

「えっと、良ければ一緒にご飯でも食べに行きませんか? 美味しいお店を知っているんです。デザートのケーキがすごく美味しいお店なんですよ」

 

 だからだろうか。思い切って誘ってしまったのは。断られるかとも思ったけど、彼女は小さく「お願いします……」と言ってくれた。

 

「あ、まだ自己紹介もできてませんでした! 私下級魔法少女セイントです。よろしくお願いしますね、フォルテさん!」

 

 これが私とフォルテさんとの出会いだった。

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