ランス10を久々にやってからDMC5やったらこんなの出来てた。
僕は悪くない。
生まれ落ちて、そして死ぬ。
それはあらゆる生命体への共通項だ。
だからこそ悔しい。
いや、悔しいというのは嘘になる。
別段悔やむほどの人生を送ってこなかったから。
だからこそ、ああせめて、次の生が有るとするのならば・・・・・・
「せめてかっこよく・・・・・・」
そう言って事故に巻き込まれた男の命は潰えた。
誰か少女を救うために。変わった服装の少女を救うために、全力でトラックの前に飛び出し、その少女と自分の場所を入れ替えた男の生はそこで終焉を迎え・・・・・・
「ごめん。ごめん・・・・・・僕のせいでだから・・・・・・」
そして誰かが、そんなことをつぶやいた。
そんな気がした。
や、しかして転生なんてモノが有るというのは信じがたい出来事だった。
少なくとも、この身に起きるとは思ってもいなかった。
気がついたときは中世の街外れ。弟と一緒に遊んでいるそのときに、唐突に過去の記憶が戻り。
その戻った瞬間の隙を突かれて頭に木の棒が直撃する。
「あはははは。やったぞ兄さん。これで僕の勝ち越しだ」
そう言って笑う茶髪で口の大きな男の子。
名前は・・・・・・ランス。
旅のレベル屋に才能限界を幾度計って貰っても、計測不能という数字が出る規格外。
・・・・・・まて、ランス? 才能限界? そして・・・・・・レベル屋?
「ルドラサウム大陸?」
「あん? 何言ってるんだ、兄さん?」
「兄さん? 俺が・・・・・・?」
「ま、まずい。ちょっと本気で殴りすぎた? 兄さんの様子がおかしい。・・・・・・いやだけど、兄さんには本気で挑まなきゃ勝てないし・・・・・・」
こちらを心配そうな目で見つめてくる茶髪の少年。
そんな彼に心配をかけさせないようにと笑って、頭をなでてやる。
少しばかり驚いた表情を見せるがなされるが儘になるその姿は年相応で、かわいらしくすら有る。
だけど大事なのはそこではない。
この身が誰かの体を乗っ取ってしまったのかと罪悪感に駆られるが、思い出せるのは今の自分の人格とほとんど変わらない以前からの人格に、おぼろげな過去の記憶。となれば、乗っ取ったと言うよりも単純に記憶を思い出したという方が、この状況を説明するにはたやすい。
それに確かめなければならないこともあった。それは目の前の少年が、いつかあこがれた英雄の幼き頃の姿で有ることの確認だ。
なすべき事、記憶の混濁で、頭の中がぐるぐると回る。
それは決して、たたかれた事による影響じゃない。自分が唐突に信じがたい状況に置かれると、考えが回らないらしいと言うことを彼は初めて自覚した。
そんなことを考えている間にランスが自分の頭をのぞき込んでくることに気づく。
何だと首をかしげれば、ランスが素直にこっちに言葉を返してきた。
「兄さん。ここ、こぶになってる。冷やしといた方がいいよ」
「あ、ああ。それじゃあ、どこか近くの井戸にでも」
「井戸は街の中だし、近くに川が流れてるんだからそこで水汲んで冷やせば?」
「そうだな。そうさせて貰うよ」
「じゃ、案内するな」
そう言って立ち上がり自分を先導するするようにランスは森の中を歩いて行く。
それに付き従いながら、彼は理解できていないことに対して考えを巡らせていた。
それは自分自身の事に関してだ。
ランス。
彼が生まれた世界におけるエロゲの主人公。作中における大英雄にして稀代の女好き。
そのことには納得がいく。
この体が持つ知識と照らし合わせて、考えればそれが間違いないと受け入れられる。
理不尽に理不尽を重ねた状況ではあるが、そんな状況を何故か受け入れている自分が合った。それはこの世界で生まれ育って既に五年もたっているからか。その五年間で培われた人格は前世の記憶を取り戻しても消えることはなかったらしい。
しかし・・・・・・
「ランスの双子の兄・・・・・・か」
ひとり小さくつぶやく。
無論、血が繋がっているわけではない。
単純に同じ日にこの街に預けられたという事から双子扱いをされているだけの話だ。
尤も預けられたのはランスだけで、自分自身は捨て子だったのだがと、自嘲に口元をゆがめる。
そしていくつかの疑問が浮かぶ。
まずは自分のこと。
ランスシリーズ原作にランスの兄なんて存在はいなかった。
ならば、自分自身は完全なイレギュラーであろうことが察せられる。ランス本編の中で、ランスの幼少期について語られていることはさほど多くはないが、少なくとも彼の兄を名乗る人物は現れていなかった以上、まず間違いないだろう。
またこの身も才能限界を測定できないとレベル屋に言われた記憶。
何より・・・・・・
「ついたよ、兄さん」
「ああ。ありがとう」
「いいって事よ。久々に兄さんに勝てて今の僕は機嫌がいいからね」
「そうか」
言いながら彼は川をのぞき込む。
綺麗な川だった。清流と呼べるような澄み切った水が流れている。
それを一掬いして、未だに熱を持つ頭の部位にかけてそのあと十分に冷えた手を押しつけると、じんじんと痛む頭が少しばかりましになる。
そしてそれと同時に流れる川に自信の容姿が映し出された。
銀髪に青い瞳。
見慣れた。あるいはあこがれた存在の姿がそこにはあった。
「・・・・・・ダンテ」
「ダンテ? 何の事だそれ」
「・・・・・・そうか。ならバージルか。そういえば俺はお前の兄だったな」
「いきなり自分の名前を言ったりしてどうしたんだよ、兄さん」
「・・・・・・気にするな。それよりもそろそろ村長の家に戻ろう。これ以上遅くなると、また村長のご令嬢に文句を言われるからな」
「ちぇっ・・・・・・分かったよ、兄さん」
明らかに渋々といった様子でランスは街はずれに戻ると二人は共に村長の家へと歩み出した。
自然豊かな町外れを抜けてゴモラタウンの中心地へと向かう。
そこには彼らが世話になっているゴモラタウンの村長の家があった。
記憶が戻ってから数年の歳月が過ぎた。
流石に未来の主人公。
一緒にいると退屈しない。
大小様々な事が問題が次から次へと降りかかり、その尻ぬぐいをあるいは一緒になって騒動をバージルは引き起こしていた。
それがいやなわけではない。
だが、同時に思うところがないわけでもない。
このままでいいのかとその身を焦がす焦燥感。
それが、気持ち悪いくらいにその身を焼き焦がす。
ランスの活躍は見てみたい。
彼と共に激動のルドラサウム大陸を駆け抜けたいという願望は確かにある。
そこに嘘はない。嘘はないが・・・・・・
「チッ・・・・・・」
舌打ちを一つこぼして、今日も今日とてバージルは剣を振るっていた。
扱うのはショートソード。
しかしながら八歳という年齢ではそのショートソードもバスタードソード並みの大きさに感じられる。
それを使って只管に剣を振るう。
脳裏に思い浮かべるのは、あこがれた存在が振るう斬撃。
その領域に踏み込んでいるなどとは烏滸がましくてかけらも思えないが、それでも転生した肉体に才覚はあったらしい。齢八つにしては驚異的な鋭さを持って斬撃が振るわれる。
それを他者が見れば神童ともてはやすだろう。
既にいっぱしの剣士として下級モンスターを狩ることさえ可能であろうその実力は、地味にランスにも影響を与えているのだがそのことを彼は自覚していなかった。
はぐれモンスターの出る森の中で二人だけの秘密の特訓。
それは確かに二人の血となり肉となりレベルとなって反映されていた。
ランスのレベルは現在3。バージルは4。
幼い子供であることを考慮すれば破格の一言。
だが、それでは足りない。
力を求める内なる声が、聞こえるような気がした。
「兄貴?」
「・・・・・ランスか」
無心になろうと振るっていた剣を止めて声かけてきた弟の方へと視線を向ける。
だいぶ原作イメージに近づいてきた彼は少し心配そうな視線でこちらのことを見ている。
その視線に対してバージルは答えるすべを持たなかった。
何せその視線にこめられた心配は的中している。
それが早いか遅いかの違いだけ。
基礎学校に通わせて貰っていることに対して村長への感謝の念はあれど、この心の内に秘めた熱情も、とどまることを知らなかった。
「I need more power.飲まれるつもりはなかったんだな」
「兄貴。何を言って?」
「お前には関係ない話さランス。何を求め、何を願うのか、未だ定まっていないお前にはな」
「・・・・・・俺を馬鹿にしているのか?」
「いや、そんなつもりはない。お前にもいずれ分かる」
そういうとバージルは二人に与えられた部屋へと戻ろうときびすを返した。
そんな彼に憮然とした態度を見せながら、ランスもついてくる。
ブラコンというわけではないが、ランスはランス。自身の身内と見なしたモノに対してはどこまでも甘い男だ。その片鱗は昔から有ったというわけだ。男だから、女だからとで区別していないこの年頃にあってはなお。
そんな彼を横目で見据えて、バージルはランスに向かって語りかけた。
「自らの魂の魄動に逆らうことは出来はしない。その自覚が少しばかり俺は早かった。只それだけのこと。だとするなら・・・・・・ランス、お前はどうしたい? お前の魂はどう叫んでいる?」
「はぁ? 何を言ってるんだよ、兄貴。頭でも打ったのか? 本当におかしいぞ」
「狂っているのは当然だ。この魂ががなりたて、この身をせかして焼き尽くそうとする。だからこそ、俺に選択肢はなかった。そして、それでいいと思っている」
「兄貴?」
「ランス。お前の魂は何を望み、何を願う?」
そう言うとバージルはその腰に備え付けていた木刀をランスに向けて突きつけた。
突然のことにランスは戸惑うばかり。
そんな彼の様子を見て、バージルはただ苦笑を浮かべて、その腰に木刀を差し直した。
「それが分かったあとに、また会おう」
「お、おい待てよ、兄さん。どこへ・・・・・・?」
「さてな。とりあえずはこの魂の赴くままに・・・・・・さ」
そう言うとバージルは向かっていた道からそれてその場を立ち去る。
ランスはそんな彼のあと姿を追うことも出来ずに、ただその場に立ち尽くすしか出来なかった。
そして次の日、さらに次の日も戻らないバージルのことをランスは心のしこりとして胸に残し、それでも日々はたんたんと過ぎていった。
時にしてGI歴1006年。
未だ、ランスが女を知らず、自らの魂の望みを知らず、ただ無邪気に兄と一緒なら何でも出来ると信じていた、そんな時期だった。