クロスオーバー短編集   作:ふみどり

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海月が審神者になっちゃったよ。
独自設定いっぱいのとうらぶクロスオーバー。
初期刀かなり海月の影響うけてます。


海月 × 刀剣乱舞

親愛なるクソ生意気な妹へ

 

 久しぶり。まず俺が手紙なんてものを書いている時点で、お前は俺の頭がイカれてしまったんじゃないかと邪推をすると思うが、決してそういうわけではないと念を押しておく。俺は今、過去でも未来でも現在でもないよくわからん空間で生活しているわけだが、ここに意識を置きすぎると自分のいるべき時代との縁が薄くなってしまうことがあるらしい。その影響はさまざま確認されているが、「個人」としての記憶が薄れ、「審神者」である以外の全ての自我を喪失してしまった例もあるそうだ。そうならないように、審神者は「審神者でない自分」を知る誰かに定期的に手紙を送り、縁を結び続けることを義務づけられている。俺がわざわざこんな手紙を書いたのはそういうわけだ。筆なんて慣れないもので書いてるから読みにくいと思うけど、とりあえず俺が普通に帰るために最後まで読むように。手書きなのも、俺の痕跡をより多く残すためとかいう理由らしい。

 

 俺がいる場所は、戦の拠点という意味で「本丸」と呼ばれている。審神者ごとに本丸が用意されているので、識別のために俺の本丸は「海月本丸」と称されている。そのまんま。読み方は一応「クラゲ」だし、俺も今基本そう呼ばれているけど、そのまんま。真名を隠せと言ったのはどこの時の政府なんだろうな。真面目に呆れる。

 ここでの生活は、まあ言うほど悪くはない。基本的に快適な生活が送れるように配慮されているし、家事や畑仕事をする必要はあるが、意外と「刀」ってのはそういうのもやってくれるらしい。それぞれ進んで働くかいやいや働くかの差はあるが、戦をするにはまず足下をかためる必要があることはわかっているんだと思う。その辺りは文字通り歴史から学んでるんだろうなとちょっと感心した。

 刀が付喪神になってひとの形を得て戦うってどういうことだよって感じだけど、普通に話す分にはわりと困らなかった。普通に日本語を話すし、何故だか現代の言葉にもある程度理解があるし、何より知らないことがあれば学ぼうという意識がある。いざというときに俺の指示が理解できなかったら困るから、だそうだ。基準が戦闘なところは刀だなって感じだけど、人間より勤勉かもしれない。

 

 最初のうちはひととして扱えばいいのかモノとして扱えばいいのか、はたまた神なのか妖怪なのか手探りだったけど、いちばん最初に選んだ刀曰く「好きにしろ」とのことなので、わりと遠慮なくモノ扱いしている。それを不快に思っている刀はどうもいないようなので、そういうもんなんだと思うことにした。ひとのカタチをもっても「刀」であるという意識が強いんだろうな。俺が本丸に持ち込んだ呪具の刀をもの言いたげな目で見ていることがあるのは、どうも「そいつだけずっと俺の部屋にあってずるい」という気持ちらしい。持ち主がモノに愛着をもつように、モノのほうも持ち主に愛着をもつんだと。基本的にひと好きな存在とは聞いてたけど本当だったわ。

 もちろん神は神なので雑な扱いをすれば祟られることもあるそうだが、とりあえず今のところは大丈夫だと思う。まあ俺が使いやすいように手入れして調整してるモノをわざわざ使い潰すような無駄はしないし、それぞれが力を発揮できるように状況と状態を整えるのが俺の役目だ。普通に審神者の仕事やってりゃ祟られることはないと思うんだが、祟られたやつっていったい何をしたんだろうな。わからん。

 

 ああでも、喧嘩というか、言い争いみたいなものをすることはあるな。主人の命令聞くのが生きがいみたいな刀がいて、俺が書類仕事とかしてると横からガン見される。それくらいは自分がやるから命じてくれってことらしいが、俺からすれば戦闘後くらい普通に休めばいいのにって感じ。審神者の呪力量によっては本丸に帰ってくるだけで刀剣男士の疲れはある程度回復するらしいが、あいにくと俺程度じゃそうもいかない。だからちゃんと休息を取って自己回復に努めろっつってんのに「主が働いているのに俺が休むわけにはいきません!」の一点張り。あんまりうるさかったから一回顕現解いて物干し竿にしてやったが、それでも懲りなかったので仕方なく書類仕事を手伝わせている。めんどくせえ。

 ほかにも戦狂いの刀なんかは無茶な出陣だの進軍だのしようとするし、身だしなみにうるさい刀は隈を消せだの髪を整えろだのいちいち小言を言うし。うちの本丸にいる刀全員、一通り説教したかされたかしたような気がする。

 時の政府の言う、刀剣男士との信頼関係がうんぬんはよくわからんが、戦績は悪くないはずなので文句は言われてない。俺の見張り兼政府の遣いのキツネは油揚げさえやっときゃ黙るから、俺にまで文句が届かないだけかもしれないけど。

 

 現状、俺が討伐しなきゃいけない歴史修正主義者のなかにいる「術師」とやらの尻尾はまだ掴めてない。俺が審神者辞められる日はまだ遠そうだけど、呪術界も見習えよって思う程度には時の政府の科学と術の融合のレベルがヤバい。情報収集のレベルも段違いだし、そいつを見つけるのもそう遠くはないと踏んでる。これで見つからない理由の方がわからねーっつうか、これで見つからないなら時の政府は頭の中に鼠でも飼ってるんだろうな。知らんけど。

 まあとにかく、俺が予想していたより状況は悪くなさそうだ。呪術師の任務と違って俺が直接戦うわけじゃないのにはまだ慣れないけど、何とかなると思う。

 審神者就任から半年経てば有給とって帰省もできるらしいので(どこの一般企業だよって感じ)、そのうち高専にも顔出すわ。

 じゃ、元気で生きてろよ。

 

兄より

 

 

 

 

「……これでいいか。こんのすけ、出しといて」

「かしこまりました!」

 

 そう言って文をくわえ、妖怪の類いのようにどろんと消えた管狐。いい加減俺はこんのすけを分解して中身を確かめてみたいのだが、これがなかなか捕まえられずにいる。いくらここが亜空間だからってどうなってんだよそれ。分解させろ。

 俺が何を考えているのかわかっているらしい近侍は、呆れたような顔をしながらも真剣な声を落とした。

 

「……主、いいのか」

「何が?」

「時の政府に鼠がいる可能性がいると書いただろう。検閲が入る可能性もあるぞ」

「可能性っつか確実に入るな」

 

 今が戦時下だということを考えれば、それは当然のことだ。機密情報を外に流されて、それが歴史修正主義者の耳にでも入れば笑えない、……という名目のもと、それぞれの審神者の動向は完全にモニタリングされているだろう。俺が時の政府の役人でもそうする。

 戦争の勝利のため。時の政府のため。時の政府の、上層のため。まったく、どこの世界でも上にいる人間が利益を得たがる構造は変わらない。だから、それを逆手に取る。

 それでいいんだよ、と文机に頬杖をついた。

 

「可能性じゃない。確実に鼠はいる。しかも、上層の中にな」

 

 そう言い切れば、一番付き合いの長い刀、山姥切国広は僅かに眉をひそめた。

 

「……上層だと言い切る根拠は?」

「これまでの戦況を見る限り、たぶん『鼠』は積極的に歴史修正主義者に与しているわけじゃない。単純に、向こうに決定的な打撃を与えないようにしているだけだ」

 

 つまり戦争が終わらねーようにしてる、と言えば、理解したらしい国広は眉間に皺を寄せた。ほかの山姥切国広がどうなのかは知らないが、うちの国広は察しが良くて会話をするにもストレスが少ない。それは汚れた布にくるまって卑屈を極めていたときからずっとそうで、国広のそういうところは気に入っていた。

 

「戦争で得をするのは、いつだって戦場に立たずふんぞり返っている人間だということか」

「……お前口悪くなったな」

「主に似たんだろう」

「こいつひとのせいにしやがった」

 

 まあでもその通り、と頷く。

 時の政府の内部構造や「表の」政府との関わりはよくわからないが、時の政府は時間遡行軍を討伐するため、あらゆる超法規的な措置が許されている。戦時下の国家において軍部が多大なる権力をもつように、戦争が存続している限り時の政府の特権は薄れない。当然、その上層部がもつ権力も計り知れないものになるだろう。

 それを失いたくないクズの馬鹿は何を考えるか。考えるまでもない、戦線の膠着だ。

 

「けど、それに付き合ってやる義理はねーからな。あの手紙はただの揺さぶりだよ。時の政府は高専から無理矢理引っ張ってきた俺のことをやけに警戒してるし、何かしらの反応を示す可能性は高い」

「……それは主の『術』が出した答えか?」

「まあな。わりと確率は高いぞ、不確定の要素が多いから外れるかもしれねーけどな」

 

 わかった、とどこかため息交じりに国広は言い、さっと立ち上がってふすまを開けた。

 すぱん、と景気のいい音が辺りに響き、庭では収穫した野菜を抱えている燭台切光忠や一期一振、洗濯物を干すへし切長谷部や加州清光、鍛錬をしている同田貫正国に御手杵、五虎退の虎と戯れていた短刀たちがきょとんとした顔でこちらを向いている。

 縁側で茶を飲んでいた宗三左文字が、今度は何をやらかしたんですか主は、とめんどくさそうに尋ねた。何で俺がやらかした前提なのか、後できっちり問い詰めたい。

 嫌そうな顔の国広は、それぞれに向けて口を開いた。

 

「また主が上に喧嘩を売った。確定ではないが、また刺客がくる可能性がある」

 

 またを強調した上に繰り返した俺の近侍、知ってたけど性格が悪い。

 

「またぁ?」

「あるじさんってばも~」

「相変わらずうちの大将は剛毅なおひとだ」

 

 口々に呆れたような声が落ち、じとりとした目が俺に向けられる。が、こんなもんにひるむようじゃ審神者は務まらない。うるせ、と短く言えばまた国広がため息をついた。

 

「しばらくの間、本丸の守りをかためる。内番の担当も組み直すから、また確認してくれ。主、それでいいな」

「任せた」

 

 すべてを国広にぶん投げると、頭の痛そうな顔で頷く近侍。その顔を見て、ずいぶん表情筋が正直になったなとしみじみと思う。

 組み直しは俺も手伝おうと長谷部が言い、ここにいないひとたちにも伝えないとだね、と燭台切は苦笑した。ず、と熱い茶をすする宗三は、こちらを見もせずに言う。

 

「貴方、本当に死にたがりですね」

 

 その背中にひとつ笑って、馬鹿言うな、と俺はモニターに向き直った。

 

「持ち主も守れないようななまくらが俺の本丸にいるわけねーだろ」

 

 

 

 

 それは突然の手紙だった。

 少々疑いながらも封を開ければ、それは確かに兄貴の筆跡で。しかもその内容を鑑みるに、兄貴の筆跡を真似た誰かからというわけでもないらしい。

 あの兄貴、どこにいてもやることは一緒のようだ。呆れを通り越して笑ってしまう。

 

「ああ硝子、クラゲさんから手紙来たんだって? 完全に隔絶されてるのかと思ってたけど、そういうのは許されるんだね」

「返事は送れないみたいだけどな。普通に郵便で来た」

「亜空間から普通郵便とかウケんね。で、クラゲさん何だって?」

 

 私は面白くなって、和紙に筆で書かれたその手紙をクズどもに差し出す。いいのかい、という夏油の言葉に頷くと、ふたりは遠慮なく便せんをのぞき込んだ。

 そして、予想通り同時に吹き出したクズふたり。

 

「ま~~~た喧嘩売ってんじゃん、もうこれクラゲさん趣味の域じゃない?」

「呪術界の上層も時の政府の上層も、クラゲさんにとってはたいして変わらないんだろうね。でもこれ、良かったじゃないか。さっさと片付ける気しかないだろう、あのひと」

 

 本当にすぐに帰ってくるかもしれないね、と夏油は言い、それも時の政府の技術力を土産にしてね、と五条も笑った。

 残念なことに、私も完全に同感だった。

 

「どうだお前ら、賭けるか? 兄貴がいつ帰ってくるか」

「お、いいね。じゃー僕、三年で帰ってくるに飲み代一回分」

「じゃあ私は二年に飲み代一回分だ」

 

 硝子は、と五条に促されてにやりと笑う。

 

「一年以内。有給消化を待たずに帰ってくるに飲み代三回分だ」

 

 このブラコン、と声を揃えたクズども、いつか絶対に解剖してやる。

 

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