1:『帝都東区下水道にて怪獣発見、未成年三人が巻き込まれたか』
うひょー、久木区長涙目(゚∀゚)wwww
2:面白がり過ぎやろwwww
3:まあ実際区長より対怪研が涙目、怪獣発見用のレーダーが意味無い事が判明したから
4:しかし、下水道で発見とか随分小型やな
5:5、6mって話。それより、久木区長マジギレじゃん
6:あの区長、思ったより気が短いから、改革が早い早い。
非異能者に対する保障制度とか、他の区より先に実践するし
7:対怪研は今大変だろうよ。ニュースが事実なら、ヒーローの出動を一度見送ったって話だし
8:あれ、他の区の怪獣多発のせいだろ。つか、避難指示出てるのに現場に居たガキが悪いじゃんwww
9:小型怪獣とか、ヒーロー要らんやろwwww
半端者集めて突っ込ませたらええやんwwww
10:どうせ使えない連中だし、俺らの為に死ぬのが役目でしょ! 早くして!
11:そうそう、半端者は俺らの為に死ねばいいんだよwwww
12:出来損ない産んだ親も報われるね
13:ほんそれ、異能持って産まれて怪獣倒せないとか、マジ終わってる。
俺なら自殺するねwwww
14:おっと、ニュースや。
ガキの救助に向かった怪獣解体屋の一人が重傷、事件の裏に半端者か?
うはwwww ビッグニュースやwwww
15:役立たずの出来損ない犯罪者達見てるー?
16:マジ笑える。役立たずの上に犯罪者とか
17:もうこれ、半端者は殺処分でええやろ
18:俺達に貢献出来ない異能者とか要らんしwwww
19:命令出した区長もナイス✨
これで死んだら、役立たずが一匹減るね
梅花皮が目にしたのは、懐かしさを感じる白い天井だった。
腕には点滴の針が刺さり、何かしらの薬液がリズムを刻んで落ちていた。
「おはよう、梅花皮。やっぱり目覚めるのが早いわね」
「……ナターシャ、お前何時秋津に?」
「話も早い。三日前よ、久々に貴方達に会いに来たら、貴女がピンチだって久木がね」
久木と梅花皮の友人であり、トップヒーローの一人であるナターシャが、異様なまでに蠱惑的な笑みを浮かべていた。
「まさか、お前が来るとはな」
「なに? まさか私が大事な友人を見捨てる女だと思ってたのかしら」
「私は半端者で、お前はヒーローだ。そういう選択肢もある」
「無いわよ。友人を見捨てる選択肢なんて、あってたまるもんですか」
端整な顔を歪ませ、金の髪を手櫛で直す。
梅花皮の言う通り、ヒーローは人気商売の面もあり、人気が高ければ高い程、怪獣討伐の任が回り給与も上がる。
そのヒーローが今の世論の中で半端者を助ければどうなるか。
答えは火を見るより明らかだ。
「お前達二人は何時もそうだ。少しは自分の事を考えろ」
「言葉を返すわ。貴女こそ、少しは自分の事を考えたら? ……再生者で普通より死に難いだけで、確実に貴女の命は縮まってる」
「どうにもならんさ。私は半端者でしかない。この国で半端者は消耗品だ」
この国で半端者は保険にも入れず、金融、通信会社との契約も出来ない。
いずれ壊れる消耗品、満足な契約金すら払える保証の無い者達なら契約する必要すら無い。
「第一、この入院費すら私には払えん」
「その辺は私が払うわ」
「私は保険が無い。全額負担だ」
「その程度、私に払えないと?」
梅花皮が舌打ちをすると、ナターシャが苦笑する。
「梅花皮、今回の真相を話すわ」
「要らん」
「まあ、一人言よね。今回の主犯の目的は単純な久木の失脚よ」
「…………」
無言でナターシャが持ってきた見舞いの品から、林檎を一つ取り齧る。その間にも、ナターシャの話は進んだ。
「久木が懇意にしている貴女を陥れ、そこから久木を追い落とす。そんな杜撰な計画ね」
「ふん」
鼻を鳴らすと、早くも芯だけになった林檎をゴミ箱に放り捨てる。そして、次の果物に手を伸ばした矢先、ふと気になる事が出来た。
「……久木は対怪研からも恨みを買っているか?」
「対怪研? どうかしらね。怪獣研究に関しては、区より国の管轄よ。一区長が方針に口は出せないわ」
「そうか」
バナナを剥いては食べを繰り返し、あっという間に一房を生ゴミに変えると、梅花皮は思案に入った。
あの現場で、対怪研からは救援は出せないと久木は言った。
ナターシャの話を踏まえて単純に考えると、久木が対怪研から恨みを買って、駒使いの自分達に矛先を向けた。
そういう風に見るのが、妥当だろう。
だが、問題がある。
「ナターシャ、子供らは?」
「あの子達なら無事よ。一人は足を骨折している以外はね」
「そうか」
あの子らは、まるで狙ってあの場に放置された。そんな気がする。
しかし、怪獣の発生は予見が難しい。
なのに、あの小型怪獣が巣くう下水道に犯人は放置した。
何か怪獣発生を予見する手があるのか、ただの偶然出会し逃げたか。
それを考えても、今出せる答えは無い。そして、答えを出したところで、半端者である自分に出来る事など無い。
梅花皮は諦めを口にする代わりに、最後の果物を口に放り込んだ。
「……相変わらずの食い意地ね」
「再生者は腹が減る」
「そう。それで何か気掛かりでも?」
「私が考えても仕方ない事だ」
「なら、私は?」
「安定した奴が要らぬ橋を渡るな。……最悪、半端者が一人減るだけだ」
「……ねえ、梅花皮。私達は貴女が心配なの」
「無用だ。半端者は半端者として使い捨てられる。それがこの国の習いだ」
「なら、私と一緒に連合に行きましょう」
「無理だ。約束は違えられん。……久木を一人には出来んよ」
「……本当に、そういうところは義理堅いわね」
呆れた様にナターシャが言えば、梅花皮は少しだけ疲れた顔を見せた。
「……ナターシャ、私にもしもがあれば……」
「聞かないわよ。また三人で酒でも呑みましょう」
「……そうだな」
二人だけの病室で、そんなやり取りがあった。