ライブが無いウマ娘世界で、なんとかライブを根付かせたい転生者のお話   作:貯金缶

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なんというか冬っぽさがないお話です。


よく分からないけどファル子が凄いと分かった転生者とウマドルを目指すスマートファルコン 1年目冬

 そろそろ年末になりそうな師走の冬が来た。世間ではクリスマスだとかなんだかとか言っているが、俺はファル子が運動会で出したスプリントレースの結果を考えてレースプランを見直していた。少なくともファル子には短距離の素質があるだろう。

 

 だが、マイルや中距離でもいけるだろうとも考えていた。それだけファル子の素質は恵まれていた。この素質を生かすも殺すもトレーナー擬きの俺次第だろう。必ず中央でのメイクデビューと傲慢かもしれないが重賞をファル子に捧げたい。そんな気持ちだった。

 

 俺が悩みながらトレーニングプランを考えていると、ファル子から電話が来た。受話器のマークを押して、電話に出る。元気なファル子の声が聞こえてきた。

 

「あのね、トレーナーさん。ファル子ね。お願いがあるんだけど、クリスマスプレゼント交換が流行らしいから、トレーナーさんとプレゼント交換をしてみたいの」

「ええーと、まぁいいんじゃないかな。ファル子をキラキラにするプレゼント用意しておくから、楽しみに待っているといいよ」

「ファル子もトレーナーさんにピッタリのプレゼント用意しておくね」

「楽しみにしておくよ。ところで、期末試験とかは大丈夫だった?」

「トレーナーさんのおかげで、だいじょーぶいぶい、ばっちしOKです☆平均点よりもちょっと上くらいだから、赤点はないよ」

「それなら安心した。心置きなくトレーニングプランを考えておくよ」

「トレーナーさん、よろしくお願いしまーす。じゃあ、おやすみなさーい」

「ファル子、おやすみなさい」

 

 俺はスマートフォンの通話を終えた。手を顎に覆いながら考える。さてさて、クリスマスを適当に過ごそうとした独身男性にとって難しい問題が放り込まれたぞ。どうしよう。年頃の女の子の流行とか全く分からないぞ。定番の品物を考えてみると、これからもっと寒くなるのだからマフラーでいいだろう。というかそれ位しか思いつかない。マフラーにしよう。カシミヤのマフラーでいいだろう

 

 

 クリスマス当日になった。ファル子が指定した待ち合わせ場所は独身男性にとっては地獄のような場所だった。ファル子ー、早く来てくれー。そろそろクリスマスというフリーザに殺されそうだ。いたたまれない気持ちで待ち続ける。天の声が聞こえた。

 

「トレーナーさん、お待たせ♪」

「本当に待ったよ、ファル子。それでどこに行きたいの?」

「ファル子は、スマホの地図に目印を書いたの☆。えっとね、こことこことここ。そことかに行ったらプレゼント交換しようね☆」

 

 俺とファル子は、ファル子があらかじめ行きたがっていたお店を見て回った。もちろん周囲には煌びやかなクリスマス特有の飾りつけがしてあり、そろそろ夕方になろうとしているのにとても明るかった。そういえば、こんなキラキラした場所を久しくじっくりと歩かなかったなぁと思いつつ、これもファル子のウマドルパワーなのだろうと結論づけた。

 

「トレーナーさん、ファル子が行きたいところは大体見て回ったから、プレゼント交換しようよ。はい、これ。ファル子からの贈り物だよ☆ 大事にしてね♪」

「ファル子、俺からもこれがファル子へのプレゼント」

 

 俺とファル子はプレゼントを交換し、一緒に中身を開けてみることにした。面白いことに両方のプレゼントの中身は、マフラーだった。

 

「ファル子、びっくり!これもトレーナーさんとファル子の絆の証だね。さっそくマフラーを着てみるね。トレーナーさんも一緒に着ようよ」

 

 俺とファル子は、お互いに交換したマフラーを身に着けた。なんとなくファル子と俺の調子が上がった気がした。

 

 クリスマスを終えて、遂に今年最後の日がやってきた。俺は二八蕎麦のとろろ蕎麦を食べながら今年を振り返ってみると、トレーナー試験に不合格になったのは残念だった。

 

 でも、そのおかげというかそれが切っ掛けでファル子にも出会えたし、トレーナーの真似事もできた。なんというか不思議な一年だったと思う。しかしながら、未だにロイヤルビタージュースを完成させることが出来なかったことが来年への課題だと思う。

 

 年末の特別番組をぼーっとしながら見ていると、ファル子から電話が来た。

 

「トレーナーさん、今年は大変お世話になりました。来年もよろしくお願いします」

「ファル子にも色々と助けてもらってありがとうございました。来年もトップウマドル目指して頑張っていこうね」

 

 見ていたテレビ番組でカウントダウンが始まった。10、9,8,7,6,5,4,3,2,1,新年を迎えた。

 

「トレーナーさん、新年明けましておめでとうございます。今年もトップウマドル目指してがんばろー♪」

「新年明けましておめでとうございます。今年もファル子と一緒に頑張るよ。新年の抱負としては、ウマドルを表すような歌を作曲したいね。それによくアイドルがやっているような特徴的な掛け声?合言葉?みたいなものも作りたいと思う」

「ファル子も考えてみるね」

「じゃあ、もう夜も深いし、明日一緒に初詣に行こう。おやすみなさい」

「トレーナーさんもおやすみなさい」

 

 スマートフォンの通話を切ったスマートファルコンは、お気に入りのパジャマに着替えてベッドに飛び込んで、すやすやと寝始めた。

 

 ファル子は不思議な初夢を見ていた。ここはどこだろう?ファル子は確かトレーナーさんとおやすみなさいと電話を終えてから、ベッドで寝たはずだけど、見渡す限り辺り一面に草原が広がっていて心地よい風が吹いている。なんだかウマ娘にとっての天国みたいだった。

 

 ファル子がそう考えていると、どこかから誰かの声が聞こえてきた。

「左を見ろ」

 

 ファル子が左に振り向くと、いつのまにか4人の人影が見えてきた。いったい誰だろう? 耳の形状からすると、どうやらファル子と同じウマ娘さんみたいだけど、ファル子にあんな知り合いいたっけ? わわわっ、みんな近づいてきた!

 

「は~い、マルゼンスキーよ」

 

 赤い衣装を身に纏ったウマ娘さんがそう名乗った。

 

「はろはろ~!アイネスフウジンなの!」

 

 続けて、サンバイザーを被り、へそ出しルックのウマ娘さんがそう名乗った

 

「あの、サイレンススズカです」

 

 白を基調に、緑と金色が鮮やかに映えるフォーマルな服を着たウマ娘さんが控えめに名乗った。

 

「ミホノブルボン始動します」

 

 宇宙服?みたいなちょっときわどい衣装を着たウマ娘さんが手の平をファル子に見せるようにビシッと腕を伸ばしてそう名乗った。

 

 ファル子が4人の名乗りに尻尾を立たせてびっくりしていると、ファル子の服装もキラキラとしたウマドルのような衣装になっていた。これが夢にまで見たトレーナーさんと一緒に目指しているウマドルなのだと直感的に理解できた。

 

 ミホノブルボンと名乗ったウマ娘さんから声を掛けられた。

 

「それでは、リーダー。定番のあの言葉をお願いします」

「ミホノブルボンさん、これで全員なの?」

「足りないでしょうか?」

 

 いつのまにかファル子を中心として5人で横一列に並んでいた。不思議なことに自然とファル子の頭の中の考えが言葉となって、違和感なく口から出た。ファル子がいつも使わないような厳かな雰囲気の言葉だった。まるで、強大な敵と最終決戦を臨むようだった。

 

「逃げ切りシスターズ!…アッセンブル」

 

 はっとしてスマートファルコンはベッドから起き上がった。近くにある時計を見てみる。もう朝だった。なにやら未来の出来事を見ていた気がしたが、少なくとも一富士二鷹三茄子ではない事だけは理解できた。まだ時間はあるけど、初詣の準備をしようとスマートファルコンはいそいそと動き出した。

 

 スマートファルコンは、両親と一緒におせち料理を食べて、初詣の待ち合わせ場所まで時間通りにきっちりと向かった。あっお餅を食べ忘れた。ガガーン☆スマートファルコンの調子がちょっと下がった。

 

 俺はいつも通りにあらかじめ約束していた初詣の神社に辿り着いたが、どうやらファル子の方が先に着いて待っていたらしい。ファル子も俺を見つけたようだ。

 

「あけましておめでとうございます、トレーナーさん♪ じゃあ、さっそく初詣へゴー!」

 

 ピーンと腕を高く上げ、尻尾もご機嫌で左右に振っているファル子は、新年からウマドルとしてさらなる高みに至ったようで、とても元気だった。

 

 俺とファル子は二人一緒に鈴を鳴らして参拝して、神様にお願いという決心を伝えた。ファル子のウマドルへの大成はもちろんのこと、今年こそはロイヤルビタージュースを完成させなければならない。

 

「トレーナーさん、おみくじ引こうよ。きっと楽しいよ。あっちのおみくじが人気みたいだから、一緒に並ぼうね」

「そんなに引っ張らないで、服が伸びちゃう」

 

 ウマ娘の平均以上の膂力があるファル子の力で半ば引きずられながら、おみくじを二人で引いた。おみくじを開くと結果は凶だった。まぁ、良い方だろう。ポジティブに考えよう。

 

「ねーねー、トレーナーさん。おみくじはどうだった?ファル子は、吉だったよ」

「ファル子、俺は凶だったけど、まぁマシな方だから問題ないよ」

「うーん、凶か。でも、大丈夫。ファル子のウマドルパワーでトレーナーさんをキラキラする一年にするね」

「それは、楽しみだ」

 

 もう既にキラキラにさせられている俺をもっとキラキラにしたいみたいだった。その後は、近くの屋台で色々な食べ物を買って、食べ歩きをしながら適当に散策をした。こういうときの屋台のご飯はなんでだろうか、気分が高揚して美味しいものなのだ。

 

 節分の日になった。ファル子から豆まきをしたいという連絡があったが、嫌な予感しかしない。ひとまずいつもの河川敷でファル子と出会った。

 

「ファル子、豆まきは家の中でやるものだよ」

「えー、でもファル子、トレーナーさんと豆まきしたーい。ファル子、お豆を投げるんだ。大丈夫だよ、適当にトレーナーさんと一緒に投げるだけだから」

「そうか、それなら良かった」

 

 俺が鬼にならなくて心底安心した。ファル子の指示通りに魚のえさになることを願いつつ、川に向かって豆を投げた。ぽちゃんと豆が川に沈んだ。まぁ、大丈夫だろう。

 

「しゃしゃしゃしゃーいっ☆」

 

 ファル子が豆を投げた瞬間、ショットガンのように豆が放たれ、川が爆発したかのように水がしぶき飛び散った。人の身でこれを受けたら、俺は粉々になっていただろう。たまたまいた周囲の人達も驚いていた。警察が来る前にファル子を引っ張って、そそくさと逃げて行った。

 

 そうして、ファル子との初めての冬が終わった。

 




お話の備蓄が尽きたので、次話は時間が掛かります。


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他の作品も見ていただけると幸いです。
(特に「ドワーフが少女のために生活用品とか作る話」とかいかかでしょうか?)
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