ライブが無いウマ娘世界で、なんとかライブを根付かせたい転生者のお話 作:貯金缶
でも、アプリだとフジキセキが『ポニーちゃん』とか言ってるし、ポニーはいるのだろうかと考えていたら、この小説の設定に行き詰まっています。馬はいるのかいないのか、どっちだろうか!
俺とファル子が去年と同じように神社で茅の輪くぐりをしてから、数日が経ち夏になった。今年は幾分か涼しい夏ではあるが、それでも扇風機くらいは必要な暑さだった。現にファル子は扇風機の前で口を開けながら涼しんでいた。ツインテールが風に靡いてゆらゆらと左右に揺らいでいた。しばらくすると、ファル子はネットで見たのだろうか、よく分からないセリフを扇風機に向かって口ずさんでいた。
「ワレワレハウマドルダ。オマエタチヲドウカスル。テイコウハムイミダ」
そんなファル子に俺は冷蔵庫から持ってきたアイスを差し出し、話を切り始めた。自分もアイスの袋を破り、豪快に口に含む。アイスの冷たさで、頭がキーンとした痛みで走った。アイスの冷たさを我慢しながら、俺はファル子を眺めていた。
「はい、アイス。これでも食べながら、夏休みのトレーニングプランを考えよう。まず俺としてはファル子のスタミナを鍛えたいと思う。スタミナが増えれば、恐らくだが中距離を超えて長距離でも通用するようになると思う」
ファル子は、俺の差し出したアイスを手に取り、その袋を破ってアイスに齧り付いた。
「はにゃほにゃふにゃ、ごっくん。トレーナーさん、それは分かったけど、長距離ということは目標とするレースは何になるの?菊花賞?有馬記念?」
「そうだな、俺としてはファル子にはクラシック路線がいいと思う。ティアラ路線でもファル子はキラキラしているだろうが、クラシック路線だったらもっとキラキラしているはずだと思う。だから、最終的には菊花賞だし、有馬記念だね」
「トレーナーさん、分かったよ。じゃあ、ファル子はクラシックにする。ただ、スプリンターズステークスとかマイルチャンピオンシップとかには出てみたいの。もちろんジャパンカップも。ファル子は一番速くてキラキラしたウマドルなんだから、全部の距離で勝つの!」
そのファル子の言葉を聞いて適正だけで考えると、たぶんファル子は全距離しかもダートと芝を問わず全てで戦えるだろうと俺は思った。短距離やマイルを走りたいとすると、今でも充分だと考えるが、念のため少しだけパワーを高める必要があるだろう。よしっトレーニングプランを少々変更しよう。
俺が悩みながらファル子のトレーニングプランを考えているとファル子がいつものように尻尾を振り回しながら遊びの計画を始めた。
「トレーナーさん、ここでキラキラとした花火大会があるから、ファル子はトレーナーさんと一緒に見に行きたーい」
俺はファル子の指し示すスマホに表示している地図を眺めながら、手の平で顎を擦りつつ花火大会開催場所までの往復の時間を考えて答えた。
「この場所だと、花火が打ちあがったらすぐに帰らないと門限に間に合わないと思う。そうすると、ここに向かわなくても途中の道から眺めるだけでも大丈夫じゃないかな」
「花火が打ちあがった瞬間を近くで見たいの! キラキラした花火を間近で見て、ファル子のウマドルパワーをアップさせるんだよ」
ファル子が俺に向かって応援ありがとうといった感じで手の平を振りながら力説している様子からして、もう既に決定事項になったのだろう。紙に書いていた当日のプランを書き直しながら、俺は納得した。ふと窓から外を見たら、そろそろ外は涼しくなる時間になったのだろう日差しが幾分か和らいだ気がした。さぁ、これから今日のトレーニングを始めよう。
「ファル子、そろそろ今日のトレーニングを始めるぞ。ひとまず着替えてくれ」
「はーい☆ トレーナーさん。ファル子準備するね♪」
ファル子の準備が終わって外に繰り出し、いつものようにトレーニングをして、その日は終わった。
そうこうしているうちに花火大会の日がやってきた。浴衣を着たファル子と一緒に俺は電車に乗って花火大会の会場へ向かっていた。電車の中で周りを見ても、俺たちと同じように花火大会へ向かう乗客でいっぱいだった。ただ如何せんか花火大会の最寄り駅に近づくにつれ人が更に増えていった。普通の人間だとともかくとして、ウマ娘は尻尾があるからこういった押し込まれるような環境だと尻尾の置き場所に困ってなかなかつらいだろう。
「大丈夫か、ファル子? 」
「ちょっと苦しくなったけど、だいじょーぶいぶい、ばっちしOK。そろそろ花火大会の駅まで着くね。途中の屋台で何か食べ物とか買って、食べ歩きしながら会場までいこうね。トレーナーさん」
「そうだな、そうしようか」
電車の中で少し窮屈な思いをしながらも、暫くして目的の駅に到着した。駅から出ると、色々な喋り声が聞こえ始め、祭り特有の浮わついた雰囲気が辺りを支配していた。
花火会場へ歩いている途中にあった近くの屋台で、おおよそのウマ娘が好物であるニンジンを使ったニンジン飴が売っていたので、ファル子はそれを買ってペロペロと舐めながら機嫌よく尻尾をゆらゆらと左右に振りつつ、俺の隣を歩いていた。こういう時間も大切にしたいと思う。ファル子にとっても俺にとっても、最悪の場合を考えるとファル子と一緒に過ごせるのは、中央トレセン学園入学まであと一年半しか時間が無い。いやいや、気持ちを切り替えよう。ちょっとした遊びをしよう。
「ここら辺で一番大きい花火大会だから、かなり人で混んでいるな。こういうときは、ちょっとしたトレーニングをしてみよう」
「トレーニング?どういうことなの?」
ファル子が疑問を持ったのか首をコテンと傾げた。
「例えばだけど、ここがレース場としてファル子がスタートダッシュに失敗してバ群に飲まれたり、前を塞がれたりしたとき、ウマドルとしてキラキラするには、そのバ群を避けながら先頭にならなければならない。ここでまではいいよね?」
「うん、トレーナーさん。そうしたときどうするの?」
「ファル子のパワーで抉じ開けるのが一番だけど、ウマドルとしてスマートにするとなるとバ群の隙間を縫って先頭を目指すのが一番だと思う。まぁ、そもそも誰もいないバ群の外側から追い越せばいいのだけれど、現実的ではないね」
「分かったよ、トレーナーさん。ファル子、周りの人達に迷惑にならないようにしながら、するするとすり抜けて進んでみるね。じゃあ、行ってきまーす☆」
「ファル子待って!ファル子の速さで先に行かれるとはぐれちゃうよ」
俺の制止に気づかずにファル子は人混みの中をすいすいと進んでいった…あっ人混みの波に呑まれたみたいだ。はぐれないように俺はファル子に向かって手を差し出した。
「こっちだ。ファル子。この手を握って」
ファル子が俺の手を砕くような圧力で握って言った。
「ウマドルー!ファイトー!」
控えめに言って岩を砕くような力で強く握られた手の痛みをこらえながら俺も答えた。ファル子の手を握ったら先ほどの鬱屈した気持ちも僅かながら減った感じがした。そうだよな。俺はファル子と一心同体なのだから、まだ俺はいけるはずだ。そうだ。まだだ、まだ終わってはいない。
「ウマドルー!ファイトー!」
そうして俺はファル子を人混みから引き抜いた。ファル子の表情を見るからに気分が悪くなったりせず、あまり辛くなさそうだ。そのままファル子と手を繋ぎながら花火大会の会場へと向かった。ファル子はピコピコと耳を振るわせながら俺と一緒に歩いていた。
程なくして花火大会の会場に着いた。あらかじめ考えていたプランの花火が見えつつ駅に向かってすぐに帰れる場所に二人で一緒に座った。もちろんレジャーシートは敷いた。
道中で買った屋台の食べ物を頬張りながら、花火の打ち上げの時間を待った。二人で無言で食べていたが、ちょっとそうするとファル子が話を始めた
「どんな花火が打ちあがるかな? トレーナーさん」
「菊とか牡丹とか冠はあると思うよ」
「菊?」
「花火の種類だよ。調べたけど、かなり複雑な感じだった。だけど、多分あると思うけど割物は分かりやすいね。ハートとかの分かりやすいイメージの図柄を打ち上げるそういうものだよ」
「そうなの。トランプの絵柄があるといいね♪」
「絵柄があったら、見てから一緒にびっくりしような。」
そうこうしているとアナウンスが流れて花火大会が始まるようだ。こういうときどんな掛け声にすべきだろうか。
「花火には掛け声があるけど、玉屋かな?鍵屋かな?それとも何かな?ファル子はどれが好き?」
「うふふっ、もちろんウマ屋だよ」
そんな他愛のない会話を続けていると花火が打ちあがる音が聞こえた。綺麗な花火を見ながら俺たちは一緒に右手を突き上げて叫んだ。
「ウマ屋~~!」
こういう幸せなときは続かないもので、ファル子の門限に間に合うように、そそくさとファル子の家に向かって帰った。電車の中はそこまで混んでいなく適当に話しながら、ファル子の家の近くの駅に着いた。
「じゃあね、トレーナーさん。また今度ね」
「ああ、また今度な」
そう言いつつ、俺はあと何回この「また今度」が言えるのかを考えながら、ファル子が手を振りながら帰って行く姿を眺めていた。
そうして、ファル子との二年目の夏が終わった。
ライブが無いので、勝負服の有無をどうしようかと考えています。陸上競技で勝負服を着る意味とはなんぞやと考えていますが、公式のHPには何も書かれていません。どうしようかなぁ?
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(特に「ドワーフが少女のために生活用品とか作る話」とかいかかでしょうか?)