ライブが無いウマ娘世界で、なんとかライブを根付かせたい転生者のお話 作:貯金缶
見切り発車過ぎました。
なるべく定期的に更新したいなぁと思っています。
追記
このお話は、後々修正します
季節は、寒空が広がる冬になった。暖房をつけて暖かい部屋の中で、俺は秋に調べたファル子のデータからトレーニングプランを修正していた。目の前で机を挟んで椅子に座っているファル子は、蜜柑の皮を剥いて、白い筋を丁寧に取り除いていた。蜜柑を一房分口に含み、よく噛んでから飲み込んだ。ちろりと赤い舌で唇を舐めてから、今思い付いたことを提案してきた。
「トレーナーさん、そろそろおでんが美味しい季節になったね。今度、おでん作ろうよ。」
「うーん、大きな鍋が無いから、どうしようかな?そうだっ、温めるだけのおでんなら簡単にできるだろうから、今度買っておくよ。そういえば、コンビニだとおでん売り場が全く見かけないようになったな。冬と言えばあれがあったのが懐かしい。」
「見たことがなかったけど、そんな時代があったんだね。」
ファル子のその言葉に、俺は時間の過ぎる早さを感じてちょっぴり寂しくなった。これからもあっという間にファル子と過ごした一年が終わるのだろう。
「さて、ファル子。外は寒いけど、こういう環境のレースがあるだろうから、これからトレーニングを始めよう」
「分かったよ☆準備してくるね♪」
ファル子がトレーニングの準備をしている間に俺も自身の準備を始めた。計測機器だとかトレーニングプランを書いた紙を収めたバインダーを鞄に詰め込んでいたら、脱衣室でトレーニングウェアに着替えたファル子がやって来た。いつものようにやる気充分の様子だった。
ファル子はビシッと両手でこぶしを握りしめ、元気良く話しかけてきた。
「じゃあ、さっそくトレーニングを始めようね。トレーナーさん。ファル子は、いつもの河川敷にウォーミングアップも兼ねて先に向かっているね!」
「その前に怪我をしないように、しっかりと準備運動をしないとね。」
「はーい。忘れずにやっておくね。ファル子、行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
ファル子は、元気に俺の家から出ていった。足を挫いたりしなければいいけれどと考えつつ、杞憂になるだろうと思っていた。今のファル子なら、そんなことは承知済みだろう。
扉を開けて俺も家の外に出ると、寒い風が吹き込んできて、少しだけ体を震わせた。さぁ、これからトレーニングを始めよう。
そんなこんなでトレーニングをしていると、もう既に年の暮れになった。年末の歌番組を眺めながら蕎麦を啜っていると、ファル子から連絡が来た。スマホを手に取り耳を傾けると、ファル子の声が聞こえてきた。動画通話だったので、俺とファル子は見つめながら新年の挨拶をお互いした。
「トレーナーさん、今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします」
「そうだね、ファル子。今年もお世話になりました。来年も一緒に頑張ろうね」
俺達は、お互いに新年の抱負をしながらも、二人の目指す目標へ進むことを心に決めた。
それから月日が経ち、俺の目の前には中央のトレーナーライセンス試験の結果が記された書類があった。この書類の内容を確認しなければならないと心の中ではそう考えていたが、俺の心の中にはかなり緊張というか恐怖感が大部分を占めていた。
幾分か時間を費やして、俺は書類を開いた。内容を確認する。不合格の文字が見えた瞬間、目の前が真っ暗になった。
気がついた時には、俺は布団に頭を伏せてむせび泣いていた。ファル子と一緒に中央に行く為には、あと一度しかチャンスが無い。このままだと、かなりの困難が待ち構えているだろう。俺にはトレーナーという職業は荷が重いのだろうか。
やはり俺が中央に行けなくとも、せめてファル子が確実に中央トレセン学園に入学出来るようにフォローに専念すべきだろう。
それでもよいのだとも考えていた。すまないファル子。俺の心は、諦めかけていた。
数日後、いつものようにファル子とのトレーニングを一緒にしようとしたとき、ファル子がなにかを聞きたいようだった。その様子に俺は笑顔を浮かべながら、先に話を切り出した。
「今日のトレーニング内容で分からないことがあるの?」
「ううん、違うけど、トレーナーさん、今日はどうしたの?なんだかいつものトレーナーさんの雰囲気じゃないね。なんというかファル子が運動会で走ったあとに、やっとゴール坂に追い付いてきたウマ娘と同じ雰囲気がする」
「そんな風に見えていたのか。まぁなんだ、ファル子を中央トレセン学園に入学出来るようにしないといけないって新たに決心していただけだよ」
「そうだね。ファル子の勘違いだったかも、トレーナーさんも一緒に中央へ行こうね」
俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、ファル子に隠しておきたかった事実を伝えることにした。
「ファル子、それについてなんだが、俺が中央に行くのは難しそうだ。いや、恐らく無理だろう。だから、せめてファル子だけでも中央へ行かせようと思っている。」
そう泣き言を言っていた俺にファル子から頬への平手打ちとともに激励の言葉を貰えた。
「ファル子逃げるね。だから、トレーナーさんは、中央トレセン学園へ逃げるファル子を一番初めに追いかけてきて!トレーナーさんが自分自身を信じられないのかもしれないけど、ただただ真っ直ぐ愚直にファル子を信じて追いかけて!」
ファル子のの平手打ちで一本歯が抜け飛んだ俺は、ファル子が言いたいことが朧げに分かった。
「そうだな、そうだよな。ただひたすらに真っ直ぐファル子を追いかけるよ。だって、俺はファル子のトレーナーでファン1号なのだからな」
俺は服の袖で目から溢れる涙を拭いながら、そう答えた。悔しいが、まだ涙が止まる気配はなかった。ただ、諦めていた俺の心に再びマグマのような熱さを感じた。そうだ、忘れていたファル子のトレーナーになったと思ったときの気持ちだった。まだ俺が俺自身を信じられないのかもしれないが、ファル子が信じる俺を信じよう。
今日は、俺にとって生涯忘れられない1日の一つになった。
「それじゃあ、トレーナーさんが泣き止んだところで、ファル子の自己紹介の練習をしま~す!」
「えっ!こんなしんみりした雰囲気なのに今からするの?」
「あなたのハートをスマートにダッシュ♪ スマートファルコンです♪」
「トレーナーさんも一緒に~はい!決めポーズ!」
顔の前でハートを両手で組んでビシッと決めポーズをしたファル子の姿を見よう見まねで俺はファル子の決めポーズを真似た。
「こ、こうかな?」
「トレーナーさん!もう少し肘の角度を下げて、そうその感じでOK!」
「トレーナーさん!はい、ここで掛け声!」
「うぉー!L・O・V・E !ラヴリー、ファル子!」
「トレーナーさん、その調子だよっ☆ それじゃあ、もう一回いってみよー! ふぁるふぁるふぁるふぁる~?…っはい!」
「ファ・ル・子!」
その日は、声が出せなくなる迄、ファル子のウマドルのコーレスとかの練習に付き合った。結局、予定していたトレーニングは、まったく出来なかったけど、まぁ、こんな日があっても良いかな?
そうして、ファル子との二年目の冬が終わった。
色々なお話が増えてきていますね。なるべくはやくこのお話を終わらせたいと思います。ただ、できればいいなぁ?
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(特に「ドワーフが少女のために生活用品とか作る話」とかいかかでしょうか?)