ライブが無いウマ娘世界で、なんとかライブを根付かせたい転生者のお話   作:貯金缶

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ライブと言えば、このウマ娘を登場させるのを忘れていました。
相棒は、ドイツ連行系ウマ娘です。
書きたいものを、書けて良かったです。


スマートファルコンとエイシンフラッシュの珍妙で奇妙な聖地巡礼の旅

 

 スーツケースを引いているエイシンフラッシュが心配そうに、慌てて旅行の準備をしているスマートファルコンに話しかけた。

 

「ファルコンさん、あと四分二十七秒で出発しないと予定の電車に間に合わず、聖地巡礼の旅の予定の大幅な修正が必要となります」

「えーん、フラッシュさん、あとちょっとだけ待って。待って。待って。ファル子の聖地巡礼準備を万端にして、悔いのないようにしたいの!」

 

 なんとか準備を終えた二人は、予定の電車とバスに乗り、エイシンフラッシュの分厚いスケジュール表に基づいて、まずは、ホテルのチェックインと聖地巡礼に必要な物以外の荷物を預けて、早速、バスに乗って町の中心にある聖地に向かった。

 

 グランドライブが初めて行われたライブハウスに到着した。周囲には、エイシンフラッシュとスマートファルコンの二人と同じような観光客で溢れかえっていた。

 

「流石、聖地と呼ばれることがありますね。とても活気に溢れています」

「そうだね、フラッシュさん。ファル子のウマドルパワーもなんだかピーンと漲っているみたい。ファル子!ファイトー!」

 

 スマートファルコンは、右腕を元気良く振り上げ、尻尾をピーンと高く上げ、興奮のあまり叫んだ。だが、周囲の観光客も同じような状況の人が幾人いたので、あまり注目されずに済んだ。

 

「ファルコンさん、もう少し慎みを持って行動しましょう。予約しておいた優先入場チケットによると、あと1分39秒後に優先入場が開始します。それまでに万難を排さなければ」

 

 エイシンフラッシュは、胸に手を当て、静かに興奮しているかのように、スマートファルコンを窘めた。二人で少し待っていると、程なくして優先入場の時間になった。

 

「ふぁ~。此処がライブ開始の聖地なんだ。凄く狭いけど、なんだか面白いね。」

「そうですね。当時の熱気が今にも感じられる気がします。あと、十四分二十三秒しか時間がありません。なるべく写真とか展示物を見て回りましょう」

 

 短い時間でしか滞在できないので、自撮りして、ウマッターとかウマスタグラムに投稿したりして、二人は聖地巡礼の始まりを恙無く終えた。

 

 そのまま続けてライブ始祖の町を巡る二人は、ライブ開催告知の看板持ちの多さに驚いていた。これがこの地方のトレーナーの通過儀礼なのだろう。町の中心部からちょっと外れた場所に、体の前後に看板をつけた小さな銅像がポツンと立っていた。

 

「えーと、なになに。『ザハイヴスのトレーナーが初めて看板持ちをした場所』だってさ。特に変わったことも無いし、他の観光客も来ていないようだし、もしかして、隠しスポットをファル子たち見つけちゃったの?ウマッターに早速アップロードしようっと」

 

「ちょっと待ってください、ファルコンさん。よく見ると、トレーナーの両手が前に組まれていますし、どう見ても手錠のようなもので繋がれています。つまり、ここは、ザハイヴス様のトレーナーが逮捕された場所ですね」

 

「フラッシュさん、どういうこと?」

 

「ちょっと待ってください。少し考える時間をください。予定を修正しないと…。うーん、どう考えても最初の結論に至ります。ここ逮捕現場です」

 

 地元の人達も必死なのだろうし、商魂が逞しいのだろう。ただし、ザハイヴスのトレーナーが逮捕された場所を観光名所にするのは、どうだろうかと思った。

 

 近くの土産屋さんで、ザハイヴスのトレーナーが地方トレセンの学食に潜入という名の飯の集りをしたときに作ったウマ耳のペーパークラフトをお土産に買って見て、お土産でこのレベルならば、実際に使用されたウマ耳はどれ位の精度なのだろうと二人は思った。

 

 その日は、明日に疲れを残さないようにホテルで休むことにした。ちょっとお高いホテルに併設しているレストランで晩御飯を食べることにしたスマートファルコンとエイシンフラッシュの二人だったが、メニュー表を眺めていると、なんだか嫌な予感がするメニューが書かれていた。

 

『ザハイヴス様のトレーナー潜入当時のトレセン学園の食事を再現!』

 

 とりあえず、試しにメニュー表を一枚捲る。目の前にうどんが出てきた。

 

『1回目:ウマ娘サイズ小 素うどん 300円』

 

「えーと、ザハイヴスのトレーナーは、うどんが好きだったのかな?」

「ファルコンさん、ザハイヴス様のトレーナーは、データによると蕎麦派みたいです」

「だけど、ウマ娘サイズの小でも結構な量があったはずだけど、食べきれたのかな?」

「二日で1食だったらしいですから、食べきれたのでは?うどんも柔らかければ病人食代わりになるかもしれません」

 

 さらに、二人は、メニュー表をもう一枚捲った。目の前にカレーが出てきた。

 

『2回目:ウマ娘サイズ小 スパイスの効いたキーマカレー 700円』

 

「空きっ腹に香辛料って大丈夫なのかなぁ」

「スパイスは、つまり薬膳みたいなものですし、問題無かったのでは?」

「ファル子、これにしようかと思ったけど、あと何枚かあるみたいだから、全部見てから決めようと思うの」

「まだ、就寝予定時刻まで、ある程度の時間もありますし、適宜、予定を修正して対応して、そうしましょう」

「じゃあ、次のページ捲るね」

 

再び、スマートファルコンがメニュー表をもう何枚か捲った。目の前に色々料理が出てきたが、数をかさねる毎に注文が複雑になっていった。

 

「これで、最後のページか、色々な料理を見たけど、どれも美味しそうなのは分かったけど、ファル子には合わないかなぁ」

「かなり人を選ぶ料理ばかりでしたね。そろそろ注文する料理を決めましょう」

「じゃあ、次のページ捲るね」

 

『8回目:ウマ娘サイズ極小 オムライス、ナポリタン、ハンバーグ、エビフライ(タルタル付き)、カニクリームコロッケ 1500円』

 

「フラッシュさん、これどう見ても…」

「大人サイズの所謂お子様ランチですね…」

「ファル子、キーマカレーにする。フラッシュさんは、どうする?」

「納豆は明日の朝に食べるとして、このお子様ランチにしてみます」

「じゃあ、店員さん呼ぶね、ピンポーンっと。あっ、サイズはどうする?」

「ファルコンさん、もちろん、ウマ娘の標準サイズにします」

 

 二人は、その後、程なくして作られてきた料理に舌鼓を鳴らした。とても満足できる味だった。でも、二人は同じ考えに至っていた。どうして、トレセン学園で大人なのにお子様ランチをわざわざ作ってもらったのでしょうか?

 

 メニューの最後には、小さく文字が刻まれていた。

 

『TIPS:ザハイヴス様のトレーナーのお昼ご飯の代金は、全てザハイヴス様が立て替えて、頼んだメニューの内容を代わりに教えてもらったという都市伝説があるよ!いつも恋は戦争だね!戦争といえば、準備が肝心らしいよ!私の旦那もそれで手に入りました!』

 

 次の日の朝、寝ぼけているスマートファルコンをエイシンフラッシュがなんとかしつつ、エイシンフラッシュの分厚いスケジュール表に従って、二人はバスに乗って聖地のひとつである博物館に向かった。一般的には、恋愛成就の効果があるらしい。博物館に着いた二人は、地方にある微妙な顔を突っ込んで、記念撮影をする看板を二人で撮影しあい、そろぞれのウマッターにアップロードした。その看板は、センター部分が開いていて顔を突っ込む部分があり、その横にザハイヴスの写真があり、その周囲を8天使が配置されている看板だった。中途半端にシンメトリーじゃないのが気に食わなかったようで、エイシンフラッシュの顔が梅干しを食べたときのような微妙に変顔だった。

 

 目的であった博物館の中に入る。特にこれといった展示物は無かったが、強いて言えば8天使が寄贈した私物くらいだったが、最奥に行くと、物々しいウマ娘の護衛がある部屋があった。

 

「すみませーん。ここは、展示物があるところですか?」

「ファルコンさん、ここでは、ウマッターなどのSNSは厳禁になります」

「どうして分かるの?」

「ここの注意事項に書いてありますし、大体予想がついています」

「じゃあ、スマホを預けて、レッツゴー」

 

 二人は、スマホを入口の係の人に預けて、部屋に入った。その途中で、金属探知やX線検査があったが、スマートファルコンは、今朝あらかじめエイシンフラッシュに教えてもらったように気を付けていたので、無事に通過した。もちろん、エイシンフラッシュもそのまま通過した。

 

 ガラスケースの向こうに、恭しくCDが一枚掲げられていた。テレビで何度か見たことがあるザハイヴスの最初にライブした参加者に配布されたCDと同じだった。展示品の説明文をよく見る。CD No.32 始祖様のCDと端的に解説したCDだった。

 

「フラッシュさん、これ凄いね」

「ファルコンさん、凄いどころじゃありませんよ。噂には聞いていましたが、神々しいCDです。世界中で50枚しかなく、12天使様の12枚と始祖様とそのトレーナーのご家族を除くと、残り31枚しかない大変貴重なCDの1枚です。あぁ、本当に存在するとは、始祖様、ザハイヴス様、この出会いに感謝いたします」

「そ、そう。ファル子、フラッシュさんが楽しんでくれて、嬉しいなぁ…。それはそうとして、今何しているの?」

「もちろん、始祖様のCDのお姿を描いています」

「えーと、X線検査とか金属探知に引っ掛からなかったの?」

「紙と鉛筆ですから。ファルコンさん、もうちょっと右に移動してください。監視の目から私の手元が見えなくなります。あと、3分しかありません。なるべく書き込まなければ」

「ふぁ、ファル子、頑張りまーす」

 

 スマートファルコンにとって、人生で最も長い3分が経った。護衛に連れられ、部屋の外に出た。見物するだけだったのに、大変疲れた。エイシンフラッシュの描いた絵は、没収されたが、彼女は笑顔だった。

 

「フラッシュさん、絵が没収されちゃったけど、大丈夫?」

「大丈夫です。あそこにいた人達は全員同士だったのです。後日、私が描いた絵が直接ファンレターとして、始祖様に届くらしいです。とても嬉しい一日になりました。ファルコンさん、誘ってくれてありがとうございます」

 

 二人は、博物館を出た。エイシンフラッシュの顔は、見る人が見れば、振り返るようなこの世で一番の笑顔だった。スマートファルコンの調子が下がった。そのまま、エイシンフラッシュの足取りは軽やかに、スマートファルコンの足取りは泥沼に浸かりながら、美術館へと向かった。美術館に入ると、二人が見たかったものが目に入った。

 

「フラッシュさん、こ、これは、噂のザハイヴスのトレーナー潜入当時のウマ耳ですね」

「ファルコンさん、そうですね。ザハイヴス様のトレーナーが潜入した時のレプリカのウマ耳です」

「レプリカ?」

「ここの説明文にも書いてある通り、ザハイヴス様のトレーナーが潜入時にオープンテラスで食事している時に、通り雨が降って、段ボールのウマ耳が湿気ってしまって、地方トレセンの給食場に人間であるとばれてしまったことは、有名なエピソードです。ただ、この通り雨が無ければ、中央に始祖様のグランドライブが広まらなかった可能性が高いので、ファルコンさんにとっては、恵みの雨だと思います」

「そ、そうなの。ファル子、驚いちゃったなー」

「そうです。始祖様に感謝しないと」

 

 スマートファルコンの調子が下がった!

 

 その後、二人で美術館を見学したが、特にサプライズも無く終わってしまったので、近くにあるお土産さんが集まっている場所で、お土産を吟味することにした。スマートファルコンがエイシンフラッシュに聞いてみた。

 

「フラッシュさん、何かいいお土産とかないかなぁ?お饅頭とかの消え物とかどうだろう?」

「そうですね。ちょうどよくバームクーヘンがあるので、それを買って帰りたいと思います。あっ、あれは、現地限定の始祖様のペナント!すみません、ファルコンさん。ちょっと行ってきます」

 

 スマートファルコンは、エイシンフラッシュを気にせず、お土産を買った。ペナントを買って戻ってきたエイシンフラッシュの顔は、何か使命をやり遂げたようで艶やかだった。

 

 その後は、お土産屋さんを冷やかし前提で見て回り、エイシンフラッシュの言うところの現地限定公認ザハイヴスグッズを買いあさって、ホテルに戻った。

 

「ファルコンさん、荷物持ちをお願いして、申し訳ありません。どこかで埋め合わせします」

「フラッシュさん、この大荷物、どうするの?」

「殆どは、ホテルから郵送で寮に送りますので、大丈夫です」

「結構なお金がかかると思うけど…」

「ホテルのオーナーと話し合って、郵送費用については、快く負担していただきました」

「本当?」

「はい、寮にいる同士のことを伝えたら、一発で大丈夫でした。これも始祖様のお導きなのです」

 

 つまるところ、ウマッターやウマスタグラムなどのSNSでザハイヴスの事になると長文になる狂信者が身近にいるとは、思わなかったスマートファルコンであった。

 

 







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他の作品も見ていただけると幸いです。
(特に「ドワーフが少女のために生活用品とか作る話」とかいかかでしょうか?)

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