ライブが無いウマ娘世界で、なんとかライブを根付かせたい転生者のお話 作:貯金缶
スマートファルコンとエイシンフラッシュの二人は、その後の聖地巡礼を滞りなく?終えた。ただし、緻密な予定が書かれているはずのエイシンフラッシュの分厚いスケジュール表を何度も更新した。気疲れしたスマートファルコンは、にこやかに笑うエイシンフラッシュと一緒にバスと電車でトレセン学園へと帰った。
二人の自室である部屋に戻ると、さっそくエイシンフラッシュは、自分のベッドの近くに聖地限定ザハイヴスペナントとか聖地限定ザハイヴスグッズを飾っていった。その様子を見ながら、エイシンフラッシュの控えめに言って意外な一面を見ることができたスマートファルコンの心境は、複雑だった。
今まで結構な時間をエイシンフラッシュと過ごしていたはずだけど、まったく気が付かない自分がおかしいのか、エイシンフラッシュの隠蔽が良かったのかが分からなかった。とりあえずは、そろそろ自分の生活空間にまで達して浸食されそうなので、この聖地限定ザハイヴスグッズを飾る場所を縮小してもらうことにした。
「フラッシュさん、ファル子、そろそろザハイヴスのグッズは、置く必要ないかなぁと思うの」
「ファルコンさん、どうしてそのようなことを?」
「毎日、ザハイヴスのグッズを入れ替えれば、その都度、新鮮な気分にならないかなぁ」
「その考えはありませんでした!啓蒙が上がった感じです。ありがとうございます」
「いえいえ、フラッシュさんには、いつも助けてもらっているから」
「それでは、お礼にこちらを差し上げますので、枕元にでも置いてください」
スマートファルコンがエイシンフラッシュの手元を見て、エイシンフラッシュのにこやかな笑顔を見た。仕方がないので、素直に16分の1スケールのザハイヴスwithトレーナーのフィギュアを受け取り、観念して枕元に置いた。その様子をエイシンフラッシュは布教が成功したという気持ちを隠しながら眺めていた
その日のスマートファルコンの夢の中では、『妖星乱舞』というべきであろうか、荘厳だが聞いたことのない音楽が頭の中に響き続けた。スマートファルコンの寝起きは最悪だった。スマートファルコンの調子が下がった。まず、スマートファルコンは、ザハイヴスのフィギュアを枕元から物置に移動させた。悪夢は去ったが、なぜかその様子を見てしまったエイシンフラッシュの調子がグーンと下がった。
別の日に、トレセン学園の食堂でスマートファルコンとエイシンフラッシュが、お昼ご飯を食べていると、ウマ娘特有の耳の良さが不幸にも作用し、その会話が耳に入った。
「中央のライブの開祖様がさー…」
「そういう爆弾はいけない」
「周囲に他の人はいないし、大丈夫だよ」
「一緒にやられる私の身も考えてよ」
「気にしすぎだよ」
その会話を聞いたエイシンフラッシュは、静かにプッツンと切れた。死にかけの吸血鬼や爆弾魔とかに『出しな、てめえのスタンドを』と言いたい心境だった。しかしながら、エイシンフラッシュにもお淑やかさがあるので、『ライブの始祖様は、ザハイヴス様』という小さい冊子を常人では手が見えない速度で、くだんのウマ娘のポケットに投げ入れ忍ばせた。これでも読んで正しい歴史を勉強しなさいという気分だった。
だが、スマートファルコンは、その拙い技を厳しい目で見逃さなかった。フラッシュさんは、クンフーが足りないとも思った。直接、そのことを伝えるのもなんだし、見ない振りをした。いつか自覚する日が来るだろう。まだまだウマドル道を一歩も踏み出していないフラッシュさんだから、ここで語る必要も無いだろう。そして、二人がお昼ご飯を食べ終え、食堂から去った時に誰かの叫び声が聞こえた。
幾度となく、暴走しそうとしたエイシンフラッシュにスマートファルコンがアームロックを極め、『それ以上はいけない』と警備員さんに怒られながら、季節が過ぎた。そろそろ、聖蹄祭である。エイシンフラッシュが分厚い辞書という聖書(本人談)の音読する日々が続き、スマートファルコンにも、その内容が朧げに頭に残った。ある日の事、寝ぼけながら、スマートファルコンは、呟いた。ザハイヴスが始祖様だと。その言葉を聞いたエイシンフラッシュの調子は絶好調になった。やはり、これが真実なのです!
聖蹄祭の日がやってきた。この年で一番、トレセン学園の狂信者が騒ぐ日である。春のファン感謝祭では、狂信者的には控えめだった始祖派の催しが、この聖蹄祭では大々的に行われる。もちろん、開祖派も大々的に騒ぐ。つまるところ、これは戦争なのだ。ただし、ウマ娘的に直接的な暴力は無く、巧みな弁舌を持って観客の支持を得るのだ。
今年は、冷静?で名高いエイシンフラッシュが論客の先鋒になっていた。明日、5人抜きをするらしいとエイシンフラッシュ本人が熱心に語る内容をスマートファルコンは、もう午前二時だよと思いつつ、寝ぼけながら聞いていた。
聖蹄祭の議論は、理解できる人間以外では到達できないレベルで戦っていた。狂信者同士の頂上決戦とはこういうことなのかと、観戦しているみんなは、よく分からないが納得した。
「被告?の証言にはムジュンがある」
「異議あり!」
「待った!」
「証拠はここにある!」
一部始終を聞いていたスマートファルコンは思った。目の前の論戦には、被告がいないのだけれども、観客のみんなは楽しんでいるし、それでいいかも。フラッシュさんが勝って欲しいと願って、スマートファルコンの心に狂信者が芽生えた。
論争も終盤に入ったが、どうやらエイシンフラッシュは、開祖側の大将に粘り負けしたらしい。『必ず辿り着いて見せる。この真実に!』エイシンフラッシュの心に決意の炎が燃え盛った。
その後は、スマートファルコンがザハイヴスの歌を唄いつつ、その様子をエイシンフラッシュが綺麗なコールをしながら、聖蹄祭は恙なく?終わった。
そうこうしているうちに、スマートファルコンとエイシンフラッシュの変わらぬ狂信的な日々が続いたのであった。
短編なので、あまり長く続けるのも何だしという思いがあります。
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(特に「ドワーフが少女のために生活用品とか作る話」とかいかかでしょうか?)