五等分の花嫁・あなたと共に過ごした記憶 作:angelika
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えー、みなさん、ご機嫌ななめなようで、何よりどすえ。このつまらん大舞台を見に来てくれはって、誠におおきに。
さて今日は、何を語りましょうかいな?実はな、さっき中野家におって、友達と一緒に勉強しててん。しかもやで、めっちゃ綺麗で愛想のええ女の子や。羨ましかろう?赤髪でちょっとぽっちゃりしてて、ほんまに可愛い子やで。食いしん坊なとこも忘れられへんわ。こんな子と同じ机で勉強するなんて、まるで夢のような時間やったんや。あの腹黒い姉ちゃんが来るまではな。
「ねね、知っとった?昨日な、店が並んどるとこ散歩してたら、すっごいお店見つけたんよ」
「なんやなんや、ぶっきらぼうに」
「だから聞いてってば。あの辺でな、めっちゃオシャレなお茶屋さん見つけたんよ」
「どうせ飾りだけのとこやろ。こんな時代に美味いお茶売る店なんかあるかいな」
「ほんまやって。信じひんなら、ほら、嗅いでみ。昨日そのお店寄って出るとき、店員さんがこれくれはってん。そしてこう言いはったんや。『これを彼氏にあげとき。きっと惚れてまうから』って。失礼な、うちまだ彼と付き合ってへんのに」
「彼氏でもないんやろ?そこ大事やで」
と、まあ、無駄話は端折ってな。興味半分で、その姉ちゃんが言うてた店に行ってみたんや。ほんならな、中はただならぬ香りが漂っててん。
「やあ、いらっしゃい。あら、お可愛らしいお客さんやこと。当店にどのようなご用件で?」
「はいな、この店、どんなお茶売ってるか聞いてみたくてな」
「それはお客さん、ええとこ来はったわ。この店な、現世万象のお茶が揃ってるんやで。さあさあ、ご覧にいれますえ。常識、ひっくり返したるわ!」
「おおおおお、これは……!」
なんと店の中、逆さまになっとるやないか!すごいやん!
「煎茶・玉緑茶・かぶせ茶・玉露・抹茶・玄米茶・ほうじ茶・白茶・烏龍茶・紅茶・黒茶!」
よっ!お上手なこと!千利休も裸足で逃げ出すレベルやわ。
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あ、そもそも坊主やったな。すんまへん、色男かと思うたわ。
「ほな、お客さん。好きなん選んでや、安うしといたるわ」
んんんんん、困ったなぁ。これは一つに選ばれへん。どうしよ。
「お客さん、もしかして発酵系がお好み?」
おおおお、よう分かったな。
「それ分かりますよ。伊達に茶店やってへんわいな」
「ありがと、店長はん。でも、遠慮しとくわ」
「おや?ほな、どれにします?」
「そうやなぁ、せっかくやし、思いきって淡白な釜炒り茶にしとこか」
「やあ〜、お客さん、目が高いやなぁ。これは特別品やで。ほな、少々お待ちを」
釜炒り茶っちゅうのは、名の通り釜で炒めたお茶のことや。作り方は他のとほぼ一緒やけど、最後に釜で炒めるんがミソやな。ちなみに炒め具合でも分かれ道があんねん。時間が短いと緑っぽくて、長すぎると白っぽい淡い色になる。せやから職人の腕がもの言う世界やな。失敗したら、ただの雑草みたいやしな。色が深くなると味も変わる。不思議やなぁ。
「ほな、お客さん、お待たせしました。○○○○円になります」
うひょー、こりゃ儲かったやないか!ありがと、店長はん!また来るわ!
「そうやお客さん、余計なお世話かもしれへんけど……」
「なんや、言うてみ?」
「あんまり彼女さん待たせすぎると、怒らはるで?」
。。。え?と思いながら、なんのことやと思うたら――あっ、忘れてた!うち、彼女と図書館に向かってる途中やったんや!しっけしっけ!
うちは急いで店長はんに挨拶して、彼女がいるとこへ猛ダッシュ!ほんなら、彼女は頬っぺたぷくっと膨らませて待ってたわ。
「すまん、待たせてもたなぁ……」
「やめてって言うとるやろがあああああああああああああああああああああ!」
彼女は珍しいほどの声で、うちを月まで飛ばすようなビンタをかましよった。
お後がよろしいようで。
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さて、はいお茶いち。。。
「げふん」
。。。裁判長。
「ありがたくいただくよ」
いち。。。裁判長は礼儀正しき正座で私が注いだお茶を唇で間接して、美味しくいただいていた。
いいなこの感じ。まさにお茶の湯の感じ。
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清きたまり、器汚れなく、汝と安らかな時を歩まん。
天使アンジェ
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ふむ、我ながら良い句である。
「じゃないわよ!なんで何事もなかったみたいな顔してるのよ!」
「もう、なによ。せっかくいい雰囲気だったのに。いいじゃないか、裸くらい見られたって、減るもんじゃなし」
「減るわよ!私のピチピチ女子としての尊厳がね!」
めんどくさいな。
皆さんは困惑しておられると思いますが、そんなに大したハプニングじゃありません。さっき、私と一花が家に帰ったとき、友人の太郎がピチピチタオル一枚の女子高生に襲いかかった、という騒動があっただけです。今はその「裁判」を行っております。
裁判長は一花、被害者の蝶々とその弁護士は五月さん。そして一方の被告は、根暗で、クズで、性格は災厄級で、ついでに変態でもある上杉風太郎――と、その弁護士である中野三女。
それぞれが自分の立場をしっかり意識し、空前絶後の判決を下す!
「いい?風呂上がりでタオル一枚の私に、こいつが襲いかかってきたのよ!しかも、撮るつもりだったの!」
「え。。。冤罪だ。。。」
鬼畜!スケベ!恥知らず!襲い魔!
私は怒りを四役分の勢いで太郎にぶつけていた。多忙極まる。多弁極まる。
「“取りに”、でしょう」
三女が、まるで駄洒落のような指摘を入れてくる。
まあ、一理あるかも。だって現実には字幕なんて出ないし、“とりに”がどんな漢字かなんてわかりっこない。ちなみに私はアニメのオープニングでいつも字幕を見て、漢字とひらがなを学んでいました。めっちゃ便利。
「裁判長!三玖は被告に対して個人的感情で庇っています!」
個人的感情、って。
あ、三女の顔、赤くなった。あの反応、私はよーく知っている。王道恋愛漫画でよくある、あれだ。
ちょっと待て……三女が太郎に……嘘、でしょう……?
「三玖、信じてくれるって信じてたぜ」
「それ以上近づかないで」
ガン!
ふぅぅぅ、なんだ、気のせいか。やっぱりな、太郎に好かれる女子なんているはずない。もし、そんな子が本当にいるなら、私だってとっくに、彼女のひとりやふたりできてるわい!
がははははははははは!
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「裁判長、あの男、キモい顔してるし、とっとと追い出して」
「あ、ダメダメ。アンくんは私の大事な助手なんだから。出ていくなんて、嫌だよ?」
一花!私が言うのもなんだけど。。。天使か!
「ああああああっ!揃いも揃って、なんなのよ!こんな男たちに誑かされて!」
「やああ。。。なんというか。。。アンくんのお茶、美味しいから。ね、みんな?」
「これは、なかなか」
「はい。アンジェさんが淹れてくれたお茶、美味しいです」
「お茶のことはどうでもいいのよ!こいつらを出入り禁止にしなさいって言ってるの!」
そう怒り狂う様子の蝶々さん。
私は五月さんに携帯を借りて、証拠写真を確認しようとしたが
「なに見てんのよ、この変態!……っていうか、五月、その写真消しなさいよ!!」
とんでもない迫力で怒鳴られ、私と五月さんは一花にしがみついた。
よしよしと撫でてもらえた。
「んん。。。もし三玖の言われた通りしたらこんな体制になるかな」
「一花!やっぱあんたと話は合うわ!こいつが突然私に追い被さって来たのよ!」
太郎はこのことを否定しなかった、三女はそれを聞いて頬を膨らせて彼を有罪した。
「お待ちください。私の知っている太郎は、意味もなく人を押し倒すような人ではない」
「は?なにを根拠にそんなこと言ってるの?こいつの友達だからって擁護するわけ?」
「いや、だって自己中の化身みたいなこいつが、こんなことすると思う?」
「関係ないでしょ。だって、私が押し倒されたのは事実だし、証拠の写真だってあるのよ。ほかに事情があるっていうなら、言ってみなさいよ」
くうっ。。。すまん、太郎。私、なんて不甲斐ない。
太郎は目つきが悪いけど、そんなことをする人じゃない。
彼が誰かに手を出す理由。。。何ヶ月もそばで見てきたけど、思いつかない。
なにか、なにかあるはず。。。
「ね、アンジェさん。もしかしてこれじゃないかな」
五月さんが私に証拠である写真を見せて、画面にいるとあるものを指した。
これは。
私はそれを確信を得るためにその写真が写っていた位置を捜査した。結局真偽は知らないが、理由としては十分だ。
「棚から落ちだ本、あなたを庇った。どうだ、五月さん」
「はい、写真をよく見たらそういう可能性もないとは言えない」
「そうなんだよ。アン、五月、ありがとう」
「別に礼をさせるほどことではない。あくまでその可能性を考慮しただけ」
「私はあくまであなたの友人として当然のことしただけさ」
太郎は感動して、ぽろぽろと涙を流していた。それに私も、ちょっと蝶々に仕返ししてやりたかったからね。そもそも、こいつにあんなことをする度胸があるわけないでしょ。それでも彼女は納得せず、不満げな態度を取りながら口論を続けようとしていたけれど、結局は言い負かされて、家を出て行ってしまった。
なんか悪いことしちゃったかな。大丈夫だろうか。わっ、罪悪感が。。。やっぱり、追いかけたほうが。。。
「行かせてあげて」
見に行こうとしたが、三女に止められた。
しばらくして夜になり、太郎は帰っていった。私はもう少しだけ五月さんに問題集の解き方を教えていた。
「はい、おしまい。いろいろあったけど、なんとか終わったね」
「はい、ありがとうございました」
なんか今日は倍疲れたな。朝は蝶々に振り回されて、夜はまた別の意味で追い詰められて。。。蝶々だらけじゃないか。
たく、あの子と同じ空間にいるとストレス感じるわ。
「あの、アンジェさん。さっきのこと、あまり気にしないでください。二乃も二乃なりに、私たちのことを心配してくれてて、だから」
「大丈夫。気にしてないから」
ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ気にしてるけど。
「あ、そうだ。はい、これ」
「これは!」
「帰りにクッキーを買ったんだ。よかったらお茶と一緒にどうぞ」
五月さんはキラキラした目で見送ってくれた。エレベーターの階数表示がどんどん下がっていくのを見ていると、それと同時に中野家が少しずつ遠ざかっていくような気がした。
ああ、今日も終わったんだな。。。と、そんな気分になった。
エレベーターの扉が開いたとき、中野三女と蝶々が立っていた。
「降りてきたんだな」
「はい、二乃を迎えに行ってきたので」
「どこにいたんだ?」
「マンションの前です。フータローと一緒に」
「そうか、仲直りしたのか。それは良かった」
「は!?そんなわけないでしょ。いい?私はあんたたちと仲良くするつもりなんて一切ないから。
あんたにも言っておくけど、あんたとあいつは絶対に私たちの輪から追い出すんだから。覚悟してなさい。行くわよ、三玖」
三女の腕を掴んで、彼女はエレベーターへと連れて行った。扉が閉まる直前、蝶々が私に向かって舌を出して「べーっ」としてきた。
。。。また生意気なことを。まあ、いいか。
マンションを出ると、太郎と鉢合わせた。
って、まだ帰ってなかったのか。
「ちょうど二乃と一緒ここで居座ってたんだよ。女の子一人外でいたら危ないだろ」
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ドッキリ?!
「どうした」
「いや、太郎も女の子を思うという人の心が持っていたのかっと思って」
「俺をなにに思っているの」
「クズで根暗で。。。」
「それでいい!それ以上言うな!自分でもわかっている」
「自覚があるならその性格治したら。五月さんたちもお前について行くと思うよ」
「簡単に言う」
癖を治るのは簡単じゃないってことわかるけど。
「今回は私が五月さんと友達として勉強を付き合ってるけどこれをどこまで限界かわからないよ。家庭教師のお前が、私が五月さんに勉強を教えたら意味ないだろ」
「そうだな。全くお茶に惑わされた人の言葉じゃないな」
「返す言葉もない」
なんか私が離れた後、太郎は姉妹の変な競争に巻き込まれて苦労したようだ。厨房で何か焦げた匂いしたがそういうことだったのか。なるほど食戟が行なっていたんだな。
「これから帰ってどうする気」
「それはもちろん、あいつらに奪われた貴重な勉強時間を補いだ」
「お前そればっかだな。もっと別のことやりなよ」
「馬鹿か、今が未来を作らないといつ作る」
「未来は勉強だけで立てられないの、別のプラスがあるの」
「お茶か」
「いつまであれで縛っているの。悪かったって。ほら、お詫びにこれをあげるよ。元々早く渡したかったけど」
「なにこれ?チケット?」
「この近々な、憧れのあの人が劇場で演出するのよ。すごくない」
すごい舞台物語なのよ!戦後と手紙と言葉。はーあの人の歌声生で聴けるなんてなんという贅沢!愛の物語!
「良かったら一緒にいか。。。」
「さよなら」
「ちょっとまだ話が終わってないよ!内容興味ないの!愛の物語なのよ!」
「愛と絡むことだったら碌なものないんだよ!俺は勉強に戻る!」
「馬鹿やろ!あの人に比べて勉強なんざクソよ!ねお願い一緒行こう。このチケット二人ペアじゃないと入らないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
おしまい