あなたに歌を、そしてセカイを   作:kasyopa

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気まぐれにゃんこの頼み事

──神山高校 食堂 お昼休み

 

 結局シブヤ・フェスタで得られたものは少なく、それからも変わらずいつもの日常が訪れる……と思っていた。

 流石に屋上だと寒さが堪えるので理那に誘われ学食の食堂にやってきている。しかし二人きりの食事とは違っていた。

 

「瑞希が学校来てるなんて珍しい。今日はお昼登校?」

「まあそんな感じ。学食がカレーだったから来ちゃった」

 

 理那の隣に座っているのは暁山さん。さっき変な会話があったような気がするけど気にする必要はない。

 食事中も会話を挟む二人。友達の友達、という割には仲睦まじく話す様子は親友と言っても差し支えないだろう。

 そんな中、一人浮いている私を引き入れる為か暁山さんが話題を切り出した。

 

「そういえばこの前のシブフェスだけどさ」

「はい」

「最後に烏丸さんが演奏してたの、誰かが録っててSNSに上げてたみたいなんだよね」

「そうですか」

「ありゃ、怒らないんだ。それがなんでか知らないけどバズっててさー」

 

 スマホを差し出せば、縦長の動画にこの前の演奏風景が映し出される。

 「シブフェスで見かけたピアニストとコスプレがヤバいww」と短い動画だからか50万再生を越しており、リプライも二桁後半まで行っている。

 何がそこまで、と思いきやリプライは大体理那のコスプレに関する事ばかりだった。曲に関してもちらほら見えるが、「オリジナルか否か」が大半。

 

「大体理那のことについて言われてるね」

「あはは、みんなそんなもんだよ。でも曲についてもコメントしてる人いるよ」

 

 まだ名も知られていない二人組。ただネットの世界に「こういう人達もいる」と発信するには十分な材料になる。

 しかし私達に辿り着くには遥かに遠い。気付くのはあのお祭りで居合わせた誰か、特に暁山さんのような人間くらいだと思う。

 

「あれ、烏丸さんってもしかしてこういうこと興味ない?」

「まあそうだねー。瑞希のこと知らないくらいには?」

「あー、それもそっか。知り合いがちょっと烏丸さんのこと気になってたから話くらいしたかったんだけど……」

「へえ、言葉に興味があるなんて珍しい。もしかしてこの前の子?」

「うん。奏っていう、曲を作ってる……あ、ジャージ着てた女の子のがそうなんだけど」

 

 紹介はされたから覚えてはいる。ただ印象云々を聞かれると長い白髪ストレートと、風が吹けば飛ばされてしまいそうな線の細さとしか答えられないだろう。

 ステージでもすぐにそれぞれの楽しみ方をしていたし、特別会話を交わしたわけでもない。むしろあそこで一番交流を持ったとするなら草薙さんくらいだろうか。

 しかし、作曲をしているのか。どうもあのお祭りから音楽関係の人達と関わりを持っている気がする。いや、正確にいえば理那と知り合ってからかも。

 

「あの方、作曲をされているんですね」

「うん。あ、もし良かったら聴いてみる? 動画教えるよー?」

「ありがとうございます。では是非」

 

 動画の名前を教えてもらってとりあえずブックマーク。マリオネットのサムネイルが特徴的。ただその場で聞くことはしない。食事中はマナー違反だ。

 

「聞かないの?」

「はい。食事が終わってからの甘味として頂きます」

「噂通り真面目だねー。それに甘味って、デザートってこと?」

「あはは、言葉ってば洒落た言い回しー。じゃあ私も後で聞かせてもらおっと」

 

 こうしていつもとは違うチグハグなお昼は過ぎていく。

 

 

 

 食後も暁山さんが曲の感想を求めてこちらを見つめている。それが主食であるように、自分の食事にはほとんど手をつけていない。

 本人は「猫舌だから出来立てはちょっとねー」と言っていたが本当かどうかは判断に困る。

 ひとまず教えられた動画を聴いてみることにした。

 

 操られているような、縛られている日常にNOと答える曲。激しい曲想から暗闇の中で必死に足掻いているような気さえしてくる。

 一通り聞き終えてみれば、ニマニマと期待を込めてこちらを見つめてくる暁山さん。

 

「どうだった?」

「楽曲に対しての歌詞が非常にマッチしてますね。現実で足掻くといいますか、アンチテーゼといいますか」

「なんていうか、結構ズバッと言ってくるね……でも気に入ってくれたみたいで良かった」

「気に入る……」

 

 その言葉に対して流石に首を傾げる。楽曲分析をしただけで特別思い入れがあるわけでもない。あくまで一般論だ。

 

「へー、あんな子がこんなストレートな歌詞書くんだね。もうちょっと上品かと思った」

「あ、作詞は別だよ? 紹介しようと思ったらいなくなってたし」

「ということは、まふゆか……ふーん」

 

 理那も理那で感想を述べているが、何か思い当たる節があったのか急に興味を失せてしまったようで聞くのをやめてしまった。

 

「なんていうか、二人とも冷静だね」

「いやー、悪気はないんだよ。ただこっちも音楽やってるから何がいいたいのか大体分かるっていうかー」

「あはは、理那ってば鋭いもんね。じゃあ、どんな風に思ったの?」

「そりゃ簡単だよ。今に満足出来ないから抜け出したいってことでしょ。ジャンルからしてそうだし」

 

 単刀直入。歌詞から受け止められる部分を抽出して弾き出した彼女の答え。アンダーグラウンドと称される音楽の数々。

 反体制、反商業主義といった、現実を真っ向からNOという芸術の形式。私が唯一()()()()楽曲群でもあった。

 

「まあ、当たってるっちゃ当たってるけど、少し違うかな」

「なーんだ。じゃあいいや」

 

 元より興味のない問題だから正解すら求めていない。気分屋らしい返事でむしろ理那らしいと言える。

 でもおそらく、そこにまふゆという人物が噛んでいるからというのも理由の一つなんだと思った。

 

「それで話を戻すけど、もし良かったら奏に会ってくれないかな」

「別に構いませんよ」

「えっ、ホントに!?」

「はい。私も他の作曲者さんと関わったことはあまりないもので」

 

 作らないからといって全くの参考にならないわけじゃない。どういった想いで作っているかは参考になると思うから。

 

「あ、じゃあ予定決めなきゃ。次の休みって空いてる?」

「学校の時間でなければいつでも合わせられますよ」

「オッケー、じゃあ決まったら連絡……って連絡先交換してなかったよね」

 

 仲介役として暁山さんと連絡先を交換。こうして、暁山さんの導きの元別の作曲者と会うことになった。

 

「あ、私だって言葉の連絡先持ってないのにー。じゃあ私もー」

 

 ……ついでに理那との連絡先も交換することが出来たのだった。

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