あなたに歌を、そしてセカイを   作:kasyopa

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今回はニーゴ視点になります。ナイトコードでの一幕。


瑞希の心配事

 

 草木も眠る丑三つ時。パソコンの画面に向かう少女達は会話を交わしながら作曲やイラスト、動画作成に勤しんでいた。

 彼女達のサークル名は『25時、ナイトコードで。』通称ニーゴと呼ばれるその音楽サークルは、主にネット上で活動を続け今やそこそこに名の知れた存在となっていた。

 活動に支障がなく一同が集まれる時間を模索した結果、25時という深夜を主な活動時間とし数多の楽曲を世に送り出していたのだが……当然、現実での障害がつきまとう。

 

「というわけだから、ちょっと動画遅れるかも……」

『わかった。学校行事なら仕方ないね』

 

 メンバーであるAmia、もとい瑞希はスキー合宿の件を他の三人に伝えていた。流石の本人も学校行事にサークル活動を持ち込むことはしない。

 尽力出来ないことに落ち込むがリーダーであるK、もとい奏は受け入れていた。

 

『スキー合宿かあ……そういえば去年そんな話もあったっけ』

「えななんは行かなかったの?」

『行くわけないでしょ。寒いし別に好きでもないし』

「それもそっか」

 

 唯一メンバーの中で昼夜の違いはあるものの先輩であるえななん、もとい絵名に質問を飛ばすも安定のNOが返ってくる。

 望んだ答えが返ってこないものの、こればっかりは仕方ないと肩を落とす。

 

「雪の方はどう? スキー合宿ってあった?」

『ううん、夏に臨海学校ならあったよ』

「臨海学校! いいなあ〜……あ、でも日焼けしちゃうしやっぱり冬でいいかも」

『ゲレンデでも雪が反射して日焼けするよ』

「えっそうなの!? じゃあ日焼け止めも持っていかなきゃ」

 

 淡々と事実を告げるのは雪、もといまふゆであり今も作詞のては止まっていない。母親にシンセサイザーを没収されたものの、大きな支障は無いと活動を継続している。

 それはそれとして瑞希も慌てた様子で用意を進めていた。

 

『Amia、そんな調子で大丈夫なの?』

「大丈夫、必要なのは今日買ってきたから。それに言葉達にも会えたし」

『言葉さんにも会ったの?』

「うん。あっちもスキーウェア買いに来てたんだけど……」

 

『お気になさらず。恐らく私だけならオシャレなど気にせず、ダサいものを買っていたでしょうから』

 

 ふと思い返すのは言葉のこと。自分の選んだものをすぐに良しとした少女。自分の見立てに間違いはないものの、こうも相手の意思がないならむしろ押し付けたと言っても過言ではない。

 そんなことを気掛かりに思っていると自然と口も止まってしまい、周りの不審に思ってしまう。

 

『ちょっとAmia、どうしたの? 急に黙り込むなんて』

「ごめんごめん。大した事じゃないから」

『もしかして、言葉さんと何かあった?』

 

 烏丸言葉という人物について後ろ髪が引かれる奏にとって、踏み込むに値する情報。元より歌で多くの人を救うと誓った彼女だからこそ、自分よりも人のことが気になる性分であった。

 何より、引かれる原因となったあの曲に近づけるのだと。

 

「何かあったってわけじゃないんだけど……」

 

 隠すことでも無いと今日あったことを説明する。無論必要なのは言葉の情報だけなので、理那に関しては一切喋ることはない。

 

「そんな感じで、押し付けたみたいになっちゃってさ」

『でも喜んでくれたんでしょ? それなら気にすることないんじゃない?』

「それはそうだけど、なんていうか昔のまふゆに似てるなぁ、って」

 

 気掛かりになる理由も似た少女がそばに居たからに他ならない。先生達から評価が高いことは知っていたが、それが逆に重圧になっているのではと考えてしまう。

 かと言ってそこまで長い付き合いでもないため、絵名の言う通り気にするほどのことではないのかもしれない。

 

『私に似てるの?』

「雰囲気だけね。ただその、無理してるって感じじゃないからそうでもないって言うか……」

 

 感覚派の人間である瑞希もある程度人の感情には敏感だ。嫌と言えなくても嫌なら多少の戸惑いが出る筈。しかし彼女にはそんな()()などひとつもなく、さらりと答えてみせた。

 それは本心から喜んでいるようだが、あまりに自分の意志がなさすぎた。

 

『それでAmiaはどう思ったの』

「どうって……なんていうか、ほっとけないなって」

『そうなんだ』

 

 まふゆ本人はそんなに興味はなさそう、というより興味を持つことすらない。自分が会ったことのない人のことを言われても彼女にとってはどうでもいいことだった。

 しかし瑞希にとっては目を離せない存在になっている。いつかのまふゆのように忽然と姿を消す未来があるかも知れない。友人である理那がそばに居ても、安心できなかった。

 

「ごめん、変な話しちゃったね。とりあえず、投稿には間に合うようにするからさ!」

『あ、うん』

 

 強引にマイクをミュートにして編集画面へと戻る瑞希。一抹の不安を抱えながらも押し殺すのは得意であり、作業に没頭するのであった。

 

 

 

『ふああ、ごめん、ちょっと眠いから落ちるね』

『私も、明日早いから落ちる』

『うん。えななん、雪、おやすみ』

 

 作業に没頭すること数時間、絵名とまふゆがナイトコードから消える。残ったのは瑞希と奏だけであった。

 

「Kはどうする? 今日は解散にする?」

『わたしはこのままでも問題ないよ。それに……少し気になることもあるから』

「それってもしかして、言葉のこと?」

『うん』

 

 それから奏は語り始めた。あの日言葉に出会って教えてもらった彼女の曲を全て聞いたこと。それら全てに想いが籠っていないこと。それでもSNSで拡散されているあの曲の寂しさはどこから来たのかと。

 

「それでKも気になってるんだね」

『少し、だけどね。まふゆに似てるっていうのは分からなくもないけど、多分、全然違う』

 

 かつてまふゆが一人で作った曲でさえ、どこまでも冷たい暗闇のような曲だった。しかし言葉の作る曲は感情がない。AIやアンドロイドが作ったと言っても過言ではなかった。

 自分の気持ちを代弁してくれる奏に、自分だけではないと瑞希の心は少しだけ軽くなる。それでもまだ顔の見えない少女の事が気になってしまうのであった。




唐突ですが、作者がコロナになった影響で療養解除されるまで更新を一時的に停止します。
楽しみにして頂いている方、誠に申し訳ありません。
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