さて、横ではリコリスがバースト射撃でゾンビの頭部を粉砕し始めた、対してボクは拳銃こそ一応抜いたもののまだ撃ちはしない。この距離では頭を狙うことはできないし、そこ以外に中ったとしても奴らには有効打とはならない。このせいで一体、何人の警官やリコリスが犠牲になったことやら。
何かできることは、と思ったら手榴弾の詰まったリュックサックが目に入った。が、
「つっきー飛沫飛んで来たらヤバいから、やめてね~。」
リコリスの言うとおり返り血や肉片でも浴びて目や口に入ったら大変だ、感染力凄いからな、では人類最初の飛び道具でも使うかね。銃をホルスターに戻し、握りこぶし大の石を拾い、
「チャーーシューーメンッ!!」
大きく振りかぶって投げた。コレ打つときの掛け声だったかな?まあいいや。
放物線を描いた石はゾンビに当たることなく落下、アスファルトに傷をつけただけだった。うん、元サラリーマンの身体能力などこんなものだろう。
アホなことをしている間にゾンビが近づいてきたので、拳銃をホルスターから取り出し発砲、『森の人』の22LR弾とはいえ、中たればどうということはない。
リコリスの放つ5.56 mm弾ほどの威力はないが、それでも頭部に穴を開け中身を引っ掻き回す程度のことはできる。あと22LR弾はリコリスの拳銃と互換性が無いから出し惜しみは無しだ。
上空から
ライフル持ちのリコリス一個班4人と拳銃のみのボク、たった5人の火力などたかが知れている。自衛隊の人、機関銃は置いて行ってくれなかったしなぁ…。
「つっきーそっち!」
「あいよー。」
現に避難所のフェンスに取りつくゾンビも出始めた。フェンスの隙間から手を突き出すそいつらに銃弾を叩き込む。『森の人』の予備弾倉が無くなった後は支給品のグロック17に持ち換え、撃ち続ける。
ついには積み上がった仲間の死体を登り、フェンスを乗り越えようとする奴まで現れた、優先的に撃ち続けるがキリが無い。
「グガァァー、プベッ?!」
乗り越えられたのがそんなに嬉しいか。死体の山の上で誰かの腕付き釘バットなどという、頭の悪そうな得物を振り回すゾンビに9mmパラベラム弾をプレゼント、飛沫が飛ぶだろうが大人しく寝てろ。
「下がれ!退避ー!」
スリル満点鬼ごっこの始まりだ。最後尾はもちろんボク、拳銃は近づかないと当たらないからな。
弾薬が詰まったリュックを引っ掴み、後ろへ適当に弾をバラ撒きながら駆けだす。リコリスの援護射撃が次々と顔の横を掠めていく、当ててくれるなよ?どっかのファーストみたいには避けられないからな?
「ちょいちょい、ちょーい危ねえって!」
そう叫びながら置き土産に手榴弾を投擲、爆発とほぼ同時にドアの中へ転がり込んだ。
「ハァハァ…、え、援護射撃どうも…。」
「さ、早く上いくよ。でないとアイツら雪崩込んで来る。」
息も絶え絶えのボクに対して、涼しい顔のリコリスは軽い調子でそう言った。
普段運動などしない元サラリーマンと訓練を積んだリコリス、一緒に残るとは言ったものの、彼女たちの足手纏いにならないか今更不安になってきた。