理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

124 / 184
百二十四話 見えない足場への一歩

 なんということだ。

状助の命はもはや風前のとともし火だ。

生きている可能性があるかさえわからないほど、ボロボロでズタズタだ。

 

 頼みの綱であった木乃香も陽と言う敵に阻まれて、状助に近づくことができなくなってしまった。

 

 エヴァンジェリンは陽が姿を現し木乃香に張り付いたのを見て、やはりと思っていた。

 

 隠れていた敵がここぞで姿を現すであろうと、予想していたのだ。

それと同時に焦りも感じていた。あのままでは状助の命が危ないからだ。

まだ、生きてるかもしれないからだ。

 

 

「ちっ! やはり隠れていたか!」

 

「マスターはそれを警戒して?」

 

「当たり前だ! クソ……、あいつらはまだ戻ってこないのか!」

 

 

 敵の数は未知数、隠れているかもしれないという嫌な予感は的中した。

エヴァンジェリンは外れて欲しかった予感が当たり、舌打ちをしていらだっていた。

 

 茶々丸は、エヴァンジェリンのその判断が、この時のためのことだったことに初めて気が付いた。

エヴァンジェリンはそれを当然だと話し、夕映たちが未だ戻ってこないことに焦っていた。

 

 夕映やのどかも、当然治癒の魔法を習得している。

あの千雨も同じことだ。彼女たちが治癒にあたれば、問題はないはずなのだ。

 

 しかし、彼女たちは展望テラスへ行ったまま、戻ってきていない。

そのことに悪態をつきつつ、エヴァンジェリンは自ら行動に移ることにした。

 

 

「なら私が行くしかないようだ。茶々丸とチャチャゼロは依然こいつらを守れ」

 

「はい、マスター」

 

「俺ハ行カナクテイイノカ?」

 

「ああ、今回は守備に徹しろ」

 

「アイアイサー」

 

 

 仕方がない。

誰もいないのなら、自分からやるしかない。

 

 エヴァンジェリンは茶々丸とチャチャゼロに、ネギの無力な生徒たちの防衛を任せ、マントを羽ばたかせ飛び上がった。

 

 また、エヴァンジェリンがチャチャゼロを連れて行かなかった理由。

それは、なにやら巨大な力を感じていたからだ。

 

 チャチャゼロがいかに魔法の力で、術具融合で防御があがっていても、限度というものがある。

この感じる力は恐ろしい何かだ。チャチャゼロでは到底抑えられない、防ぎきれない力だと考え、あえて守備を任せたのだ。

 

 

 そこでアーニャも、自分が師から教えてもらった治癒魔法で何とかできないかと考えた。

だが、エヴァンジェリンから何があっても動くなと言われていた。

故に、歯がゆい思いをしながらも、その場にとどまることを選んだ。

 

 それはネギも同じだった。ネギも生徒を守るよう言われていた。

だから、この場を離れるわけには行かないと思い、障壁を張ること以外何もできない自分に苛立ちを募らせていたのだった。

 

 

「だが、こうもすんなりと東状助を治療させてくれるとは思えんが……」

 

「――――その通りだ。吸血鬼」

 

 

 そしてエヴァンジェリンは、すばやく状助の下へと飛び上がりつつ向かって行った。

しかし、簡単にあの状助を治癒させるなど、奴らが許すとは思えない。

 

 状助の能力は強力だ。

自分以外のものならば、生物物質関係なく、部品さえそろっていれば修復してしまう。

はっきり言えばアーチャーの連中として見ても、これほど戦術的に厄介な能力はないのだ。

 

 それをぽつりと、エヴァンジェリンが誰かに話すようにぽつりとこぼすと、突如頭上から、男の声が響いてきたのだ。

 

 

「――――”ギガブレイク”!」

 

「グウッ!?」

 

 

 なんと、一人の男がゲートポートの天井を突き破り、突撃してきたではないか。なんという豪胆な攻撃。

しかも、この男はすでに、剣に雷の力を宿させており、それをエヴァンジェリンへと向けていたのだ。

 

 その男。最強に近き存在。その男。恐るべき力を持つ存在。

そして、我々は知っている。この男の剣を知っている。

この男の技を知ってる。この男の額の紋章を知っている。

 

 そうだ、この男こそ竜の騎士だ。

フェイト・アーウェルンクスすらも瀕死に追いやった、最強クラスの転生者だ。

 

 アーチャーは対覇王として、竜の騎士の男をこの作戦につれて来たのだ。

アーチャーが切り札として、この作戦に投入したのだ。

 

 さらにその技はギガブレイク。

竜の騎士最大級の奥義が一つ。

 

 真上から振り下ろすように、極大の雷撃を纏った剣が、エヴァンジェリンの幼く華奢な体を切り裂いた。

その雷の衝撃と熱量は、確実にエヴァンジェリンに命中した。

真祖の障壁すらもぶち破り、エヴァンジェリンへと斬撃と雷撃が直撃したのだ。

 

 流石のエヴァンジェリンでさえも、その極光の破壊力の苦痛に、悲痛な声をもらすほどだった。

 

 

「……やはり来たか。気が付いていたよ。貴様のその、恐ろしいまでの強い闘気(オーラ)に」

 

「流石真祖の吸血鬼だ。我がギガブレイクでも簡単にはくたばらんか」

 

 

 だが、エヴァンジェリンは切り刻まれた体を小さな無数の蝙蝠と化し、瞬時に男の後ろへと回った。

 

 エヴァンジェリンは知っていた。わかっていた。察していた。

この男の強大な力を、その竜の力をすでに感知していた。

 

 男は静かに、振り向きもせず視線と意識だけを背後に向け、淡々と語った。

ギガブレイクの一撃を受けても平然としているエヴァンジェリンに関心しながら。

 

 二人は宙に浮きながら、どちらも威嚇しあう訳でもなく、余裕と冷静な態度で、静かに語り合いだした。

 

 

「話には聞いているぞ。竜の騎士とやら……」

 

「有名になった覚えはないがな」

 

 

 また、エヴァンジェリンは最初から知っていた。

この男のことを。竜の騎士のことを。

 

 それもそのはず、エヴァンジェリンも皇帝の部下から、あのメトゥーナトからこの男のことを聞いていた。

神にもまさる竜の力を宿す、恐るべき騎士がいるということを。

 

 男は特に名がはせるようなことをした覚えはないと、冷静にこぼした。

戦いは基本的に隠蔽してきたし、大きな噂になるようなことは一度もしてきていないと。

 

 また、この竜の騎士も、背後のエヴァンジェリンについて、仲間から話を聞いていた。

最強の真祖、闇の福音、幼き吸血鬼エヴァンジェリンの名を。

その強さを。

 

 

「しかし、お前はここでは本気を出せまい」

 

「フン、本気でなくとも、貴様ぐらい倒せるさ」

 

「言うものだな。だが、それはかなわんぞ!」

 

 

 だが、今はそんなことなどどうでもいい。

男はエヴァンジェリンの方へと向きなおし、力が出せないだろうと言葉にした。

 

 何故なら、エヴァンジェリンの最も得意とする魔法は、広域範囲の凍結魔法だからだ。

ここでそれを使えば、どうなるだろうか。きっとネギたちを含めて全員氷の下に沈めてしまいかねないからだ。

 

 エヴァンジェリンも当然それを理解している。

それでも男へと、不敵に笑って問題ないと豪語してみせた。

 

 ただ、内心焦りを感じていた。この竜の騎士とやらは相当厄介な存在だ。

聞くところによれば、上位魔法すらも無傷で耐えるそうではないか。

被害を最小限にとどめる攻撃で、目の前の男に傷一つつけれるだろうか。それがかなりの不安であった。

 

 男もエヴァンジェリンの笑いを見て、それが強がりにしか見えないと思った。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)に守られている自分を、低級魔法で傷つけられるはずがないからだ。

 

 周囲の被害を考えない本気の力でなければ、自分に対抗すらできないことを知っているからだ。

 

 

「チッ……、だがこのままでは東状助は死ぬぞ……!」

 

「余所見ができるほど余裕か?」

 

「なめるな……!」

 

 

 しかも、エヴァンジェリンには時間がない。

こんなことをしている間にも、状助の命が失われる。

 

 まずい、かなりまずい。

エヴァンジェリンはそのあたりにも焦っていた。

急がねばならないと思っていた。

 

 エヴァンジェリンは状助の状態の確認のため、チラリとそちらに目を向けた。

が、そこで竜の騎士の男は隙だと考え、愛剣、真魔剛竜剣を強く握り、切りかかったのだ。

 

 エヴァンジェリンはそれにすぐさま対応し、男が剣を握っている拳を押さえつけた。

そして、どちらも一度距離をとると、男は再び剣を天に掲げだした。

 

 

「一撃では無理だったが、何発撃てばくたばるか試してみるか……! ”ギガブレイク”!」

 

「……!」

 

 

 流石は真祖の吸血鬼と呼ばれるだけある。

ギガブレイクの一撃を受けても、余裕という訳だ。

 

 ならば、どれほどのギガブレイクを与えれば、くたばるだろうか。

男はそう冷徹に述べると、試すかのように再びギガブレイクをエヴァンジェリンへと放った。

 

 男のそのスピードは、まるで雷そのものだ。

エヴァンジェリンは思った以上にすばやい男に、一瞬気を取られた。

速い、なんと速いことか。あのギガブレイクとやらは避けきれない。

 

 されど真祖の魔法障壁でどこまで耐えられるだろうか。

聞くところによれば、複数の魔法障壁をぶち破ったそうではないか。

これは少しまずいと考え、エヴァンジェリンは一筋の冷や汗を頬に流していた。

 

 だが、そこにもう一つ、真下から雷のごとく輝く一筋の光が飛び上がってきた。

 

 

「”黄金(ゴールデン)――――衝撃(スパーク)”ッ!!!」

 

「何!?」

 

 

 それはまさに雷電だった。

雷電を受けて輝くゴールデンであった。

バーサーカーの宝具、黄金衝撃(ゴールデンスパーク)だ。

 

 なんとバーサーカーがエヴァンジェリンの間に割り込むように、真下から現れギガブレイクに挑んだのだ。

 

 黄金衝撃(ゴールデンスパーク)を真下に打ち込むことは、危険と判断して使えなかった。

 

 しかし、真上ならばどうだろうか。

何もない真上ならば、頭上ならば、問題なく使用できる。

 

 そして、黄金衝撃(ゴールデンスパーク)とギガブレイクが衝突。

その轟音と爆音がゲートポート内全てに響き渡り、その雷の光は周囲を白く染め上げた。

衝撃もすさまじく、空気の振動がゲートの床を大きく揺らしていた。

 

 これには竜の騎士の男も驚いた。

まさか正面からギガブレイクを受け、防ぎきる技があるとは。

まさか、これほどの雷の力を操れるものが存在したとは。

 

 

「加勢を頼んだ覚えはないが?」

 

「はっ、だろうな。だがよ、うちの大将きっての頼みでな」

 

「余計なことを……」

 

 

 その振動や光が収まると、エヴァンジェリンは静かに、バーサーカーは豪快に床へと着地した。

同時に竜の騎士の男も床へと降り立ち、バーサーカーを難敵を見る目で睨みつけていた。

 

 エヴァンジェリンはバーサーカーへ、どうして助けたと尋ねれば、バーサーカーは簡潔に答えた。

刹那が助けろと命じたから。それだけだと。

 

 それを聞いたエヴァンジェリンは、横目で刹那を睨みつけた。

その刹那本人はエヴァンジェリンに睨まれたことすら気にせず、そちらを見る余裕はなさそうにアーチャーと戦っていた。

 

 また、刹那も竜の騎士の男の、その強大な気配と威圧感を感じ、バーサーカーへとそれを命じたのだ。

 

 

「アレはハッキリ言ってヤベェな……。見ただけでそれがわかっちまったぜ……」

 

「ああ、アレは確実に化け物以上の存在だ」

 

 

 バーサーカーも、目の前で立ち尽くし、額の紋章を輝かせながらガンつけている竜の騎士を見て、かなりヤバイ相手だと理解した。

アレは本当に危険な存在だ。先ほどの攻撃も相当やばかった。

一撃食らえばこちらがくたばりかねない威力だった。

 

 エヴァンジェリンも当たり前のように理解していた。

化け物の中の化け物。自分以上の化け物だ。竜の力だけではない。

あれはそれ以上におぞましい何かだ。

 

 

「ぬう……、コイツも竜の雷を……!」

 

 

 しかし、竜の騎士の男も、バーサーカーを見て戦慄していた。

あの筋肉質で金髪で、どこにでもいそうなヤンキーな風体の男だというのに、どうにも胸をざわつかせる存在だ。

 

 それはあのバーサーカーが、雷神、赤龍の子だからだろうか。

男はそれを知るよしもないが、目の前のバーサーカーも、竜……、否、”龍”の雷を操る存在だということだけは理解したのだ。

 

 なるほど。確かにそれならば、ギガブレイクを防ぎきるわけだ。

それも同時に納得していた。

 

 

「ヤツのことはオレに任せな! 早くアイツを治療してやってくれや」

 

「そうしたいのは山々だがな……」

 

 

 とりあえずバーサーカーは、目の前の男は自分が相手をすると言った。

ニヤリと笑い、余裕に満ちた表情でそう言った。

自分が男を相手にする、その間に状助を助けてやれと。

 

 状助はいいやつなんだ。

覇王の友人でルームメイトで、自分もそこで同居してる。

すげぇいいやつなんだ。バーサーカーはそう言いたそうな表情で、エヴァンジェリンへと状助の治癒を頼んでいた。

 

 エヴァンジェリンもそれは考えた。

そうしたいと思った。そうしなければまずいと理解していた。

だが、目の前の竜の騎士が、そうはさせてくれそうになかった。

 

 

「それはさせれんな。ヤツの治療をしたいのなら、この私を倒してからだ」

 

「……だ、そうだ」

 

「余裕じゃあねぇか、テメェ」

 

 

 その通りだ、逃がす訳がない。

竜の騎士の男は静寂な様子で口を開いた。

そちらに向かうならば、そこへギガデインを叩き落すだけだ。紋章閃という技だってある。

 

 エヴァンジェリンも最初からそんなことはわかっていた。

バーサーカーも目の前の男が余裕かましているのに、ナメられたもんだと悪態をついた。

 

 

「貴様ら二人を相手に、余裕なはずがなかろう。そうせざるを得ないだけだ」

 

「ハッ、そいつァ随分とまあ、高く評価されたもんだ」

 

 

 しかし、男は余裕ではないと語った。

竜の騎士の力を以ってしても、真祖の吸血鬼とバーサーカーを二人相手取るのは少々厳しい。

が、優先することは状助の治療の邪魔だ。

 

 アレは復活してはならない。

何せベホマとは違い、全てが完全に修復されるのだ。 

 

 そこに大きな消費もない上に、スタンドパワーもさほど使わない。

クロコダインのように何度も立ち上がってこられれば、こちらが簡単に不利になる。だから邪魔をしなければならないのだ。

 

 バーサーカーは竜の騎士の男の言葉を聞いて、愉快に笑った。

黄金喰い(ゴールデンイーター)を肩に担ぎながら、盛大に笑った。

ナメられていたと思ったが、その実大きく評価されていたことに、笑いが止まらなかったのだ。

 

 

「来るがいい、二人まとめてあの世へ送ってやる」

 

「吼えるじゃないか!」

 

「やってもらおうじゃんか!」

 

 

 そして竜の騎士の男と、バーサーカー&エヴァンジェリンは衝突した。

バーサーカーが前に出て竜の騎士の男と刃を交わし、エヴァンジェリンが後ろから氷系の魔法を放つ。

即席のタッグだが、中々どうしてすばらしいコンビネーションだった。

 

 だが、竜の騎士の男も負けてはいない。竜闘気(ドラゴニックオーラ)で強化した肉体と、その膂力でバーサーカーと互角に打ち合っていた。

そのすさまじい刃と刃がぶつかり合う衝撃で、周囲の床や柱などの装飾が派手に吹き飛ぶ始末だ。

両者、どちらも人知を超えた力を秘め、どちらもそれを開放して戦っているのだからそうもなろう。

 

 さらにエヴァンジェリンが放つ高密度の魔法でさえ、竜の騎士の男の前ではけん制にしかならなかった。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)を突き破るほどの魔法など、そうそうないからだ。

エヴァンジェリンもそれをわかっていたが、少し自信ってやつが砕けそうだと、内心ショックに思っていた。

 

 両者とも、一歩も引かぬ戦い。

竜の騎士の男もバーサーカーも、大技を出す隙すらない状況だ。

その戦闘はさらに激しさを増していくばかりであった。

 

 

 そして、バーサーカーをエヴァンジェリンの下へと向かわせた刹那も、アーチャーと斬りあっていた。

ただ、刹那はアーチャーの動きが不自然だと思い、それを斬撃とともに放った。

 

 

「貴様、本気ではないな……?」

 

「いや、本気だったさ。貴様らの攻撃を避けるという点においてはね」

 

「どいうことだ!!?」

 

 

 先ほどからアーチャーが、本気で自分たちを倒す気がない様子に、刹那は変だと思った。

何せアーチャーの作戦上、刹那たちを倒す必要がないので、そのあたりは当然だ。

 

 それでもアーチャーは本気だったと語る。

バーサーカーと刹那、二人の攻撃を回避しながら戦うのは、精神的にも大変だったのだ。

 

 しかし、アーチャーはそんな内心を悟られぬよう、不敵に笑って皮肉っぽく話した。

刹那はどういうことなのかわからず、たまらず叫んでいた。

 

 

「なに、私は貴様らを倒すのが目的ではないからな……」

 

「何だと……!?」

 

 

 また、アーチャーはここに来て、自分の目的は別にあると言い出した。

刹那はアーチャーへ剣を向かわせながらも、さらに問いただすように声を荒げていた。

 

 

「そうだ。こうやって時間を稼ぐのが、私の仕事だ……!」

 

「ッ!」

 

 

 もはや時間的にも余裕がある。

ここで話してしまってもかまわんだろう。

 

 アーチャーはそう判断したのか、自分の目的が時間稼ぎであることを、ニヤリと笑んでしゃべったのだ。

ただ、言葉だけでなく行動にもそれは現れており、再び投影した白と黒の夫婦剣を刹那へと投げ、爆破したのである。

 

 

「それで、一定の距離を取りつつ攻撃を……」

 

「そういうことだ。だが、もうすぐそれも終わる」

 

「それはどういう!?」

 

「フッ、それは話せんな」

 

 

 刹那はその目的を聞いて、先ほどからのアーチャーの動きに合点がいったと思った。

そう思いながらも、アーチャーの爆撃をとっさにかわし、再びアーチャーへと距離を縮めるべく突撃した。

 

 アーチャーとて距離をつめられる訳にはいかない。

即座にバックステップで後ろへ下がり、再び夫婦剣を投影し、刹那へと投げる。

 

 が、この永遠に続くかと思われていた逃走劇も、そろそろ終わりのようだとアーチャーは考えた。

時間稼ぎと言うことは、タイムリミットがあるということだ。

その時間が刻一刻と迫ってきていたのだ。

 

 刹那はアーチャーがどうして時間を稼いでいるのか、時間が来たら何が起こるのかわからない。

だからそれを叫んでアーチャーへ問いただした。

 

 当然アーチャーもそれだけは話すはずがない。

自分たちに目を向け、今仲間の一人がゆっくりと、着実にそれを行っている。

今それがバレてしまえば、面倒なことになりかねない。

そう、アーチャーは自分に目を向けさせるという役目もかっていたのだ。

 

 

「ならば、倒して聞くまで!」

 

「そうはいかんよ!」

 

 

 目的をしゃべらないのは当たり前のことだ。

ならば聞き出せばいいではないか。どうやって聞き出すか。

 

 再起不能にすればいい。

刹那はアーチャーをしとめるべく、さらに動きを俊敏にさせた。

 

 アーチャーも刹那の動きに対応し、距離を開けつつけん制を行った。

夫婦剣を何本も投影し、邪魔になるよう配置する。

こうやって時間を稼がれている間に、アーチャーたちの計画は進んでいくのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 夕映たちは展望テラスで魔法世界の首都を眺めていた。

そのためネギたちの場所で起こっている異変に、気がつくのが遅れていた。

そして、夕映たちが気がついた時は、すでに戦いがはじまった後であった。

 

 

「これは……!」

 

 

 すさまじい戦闘が、数分前に転移して来た場所で発生していた。

さっきは静かだったゲートも、戦いの音色で奏でられ、ここが戦場だということが嫌でもわかる状況だった。

 

 そこから少し離れた場所へと、夕映たちはやってきて、その目の前の戦いに少し混乱した様子であった。

 

 

「えッ!?」

 

「キャアアアアッ!!?」

 

「一体何!?」

 

 

 さらに、突如としてまばゆい光と轟音に、夕映たちも包まれたのだ。

それはバーサーカーと宝具と、竜の騎士の必殺技が衝突して発せられたものだった。

 

 音や光以外にも、当然そこで巻き起こされた衝撃波すらも、何もわからぬ彼女たちを襲ったのである。

 

 

「皆さん、大丈夫でしたか?」

 

「うん、なんとか……」

 

「すごい衝撃でした……」

 

「今の何!?」

 

 

 マタムネは夕映たちへと、今の衝撃で何か問題は起こっていないかを尋ねた。

それに問題なさそうだと、何事もなかったことを安堵しながらのどかは答えた。

夕映は今の衝撃に驚きを隠しきれない様子を見せており、ハルナも大声で仰天した声をあげていた。

 

 

「つーかコレは一体何なんだよ!?」

 

「わからないけど、みんな戦ってるみたいだね……」

 

 

 千雨はこの状況に理解が追いつかず、混乱した様子だった。

何でこんなことになってるんだ。意味がわからないと、そんな状態だった。

 

 裕奈も状況が把握できずにいたが、何やら戦っているというのだけはわかった。

これは結構まずい状態ではないかと。さらに、その場でアルスが戦闘をしてないのを見て、こことは違う場所で戦っている可能性も考えていた。

 

 

「あれを見て!」

 

「あれは東さん……!」

 

「……酷い怪我です……!」

 

 

 そこでハルナが指をさして、周りにそこを見るよう呼びかけた。

それは体や周囲の床を真っ赤な血で染め、まったく動かなくなった状助だ。

遠くからでも、そのダメージの大きさがわかるほどに、状助の状態は危険なものだった。

 

 

「和美さんがた、小生から離れぬよう……」

 

「うん……!」

 

 

 また、マタムネも危機的状況だと判断し、和美の前へと出てくわえていたキセルを手に握っていた。

和美はかばうように立ってくれたマタムネの注意を聞き、多少驚いた様子で静かに返事をした。

 

 

「コイツはどうなってやがんだ!」

 

「あれは状助……! これは……、マズイな……」

 

 

 すると、後からやってきたカズヤがこの現状を見て、大きな声で叫んだ。

 

 カズヤと法は千雨からは不安だからついてきて欲しいと頼まれただけだった。

だと言うのに、目の前で意味不明な集団が、自分の仲間たちを襲っているではないか。

カズヤも一瞬だが、理解が追いついていなかったのだ。

 

 法も状助が血まみれで倒れてるのを見て、このままでは危険だと考えた。

まだ状助が生きている可能性があるが、放置していれば死んでしまうと。

 

 

「だったらよぉ! 俺たちもあの連中をぶっとばせばいいってことだろうが!」

 

「そうだな……!」

 

「ああ、そうだ! そうでなくっちゃなぁ!」

 

 

 だが、そこでカズヤは、自分たちも加勢し、状助たちを助ければよいと話した。

自分たちが戦いに出れば、誰かが治癒するだけの余裕ができるはずだと思ったのだ。

法もそれに賛同し、ならば戦おうと拳を強く握った。

 

 そして、カズヤが右腕を前へ伸ばし、人差し指から順番に拳を強く握り締め始めた。

 

 しかし、その時カズヤは失念していた。

戦いがあそこで起こっているものだけだと。

他に敵が存在する可能性を。

 

 

「――――何!? グウオオアアアアアッ!!!」

 

「カズヤ!? これは!?」

 

「一元!!?」

 

 

 カズヤは突如として現れた、黄色い巨大なロボットの腕に真横から殴り飛ばされた。

完全に不意打ちを受けたカズヤは防御すら取れず、吹き飛ばされて柱へとめり込んだ。

その後頭や腕から血を流し、カズヤはその場に倒れてしまったのである。

 

 法は突然の攻撃に驚き、とっさにカズヤの名を叫んだ。

そして、今の攻撃が自分の知るものだと、瞬時に理解した。

 

 これはなんということだ。

まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()と、驚愕していた。

 

 同じく千雨もカズヤの名を大きく呼んだ。

あのカズヤが一撃で吹き飛ばされ、倒されたからだ。

今の攻撃で血で体を濡らし、動かなくなったからだ。

 

 

「フハハハハハハハハッ! ハッハッハッハッハッハッ!!!」

 

 

 先ほどカズヤを殴り飛ばした腕は一体どこから現れたのか。

違う、現れたのではない、生み出されたのだ。ではどうやって? それは周囲の状況を見ればすぐにわかった。

なんと虹色に光る粒子が集まり、その腕をゆっくりと構築し始めたのだ。

 

 さらに腕だけではなく、足・体・頭部と順番に構築され、その全貌があらわになった。

そう、カズヤを殴り飛ばした腕は、巨大ロボットの腕だったのだ。

 

 これこそがスクライドに登場するアルターの一つ、スーパーピンチだ。

そして、その巨大なロボの名は、スーパーピンチクラッシャーだ。

 

 そして、その黄色く勇者なるものに似たロボットの頭に、濃い緑の対ショックスーツを装備した謎の男が一人降り立ったのだ。

何がおかしいのだろうか。謎の男はそこへ立った時からずっと笑っていた。

 

 赤いマフラーを揺らしながら、口を大きく開けて笑っていた。

頭にリングをかぶりながら、狂ったように笑っていた。

 

 完全にイカれている、そんな顔で爆笑していたのだ。

この男がこの特典(アルター)を選んだ人物なのは確かだが、どうにも状況がおかしかった。

 

 

「増援か!?」

 

「これはなんとも奇怪な……!?」

 

 

 法はすぐさま敵の増援だと考えた。

あちらで戦っている奴(アーチャー)”らの仲間だと考えたのだ。

 

 虹色の粒子がロボットとして、構築されていく様を見たマタムネは、その力が奇妙なものだと思ったようだ。

しかし、それにしても妙な感じでもあった。が、それ以上に妙なことに、法は気がついていた。

 

 

「しかし、そんなことがありえるのか!?」

 

 

 法がこの特典(アルター)を見て驚いたのには理由があった。

同じ原典(スクライド)特典(のうりょく)だったからではない。

 

 このアルターは本来、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 故に、不意打ちなどができる能力ではないのである。

しかし、目の前の敵はさも当然にそれを操り、不意打ちを繰り出した。

 

 つまり、それとは別にその能力を自らの意思で支配できる特典を選んだ可能性があるということだ。

法はそれを考え、驚いていたのである。

 

 

「キャアアアアアッ!!」

 

「何!? あん時と同じやつ!?」

 

「形は違うみたいですが……」

 

「アレ知ってるの!?」

 

 

 突如としてゲートポート内に現れた謎の巨大ロボットに、のどかは悲鳴を上げ、ハルナも、虹色の粒子からなる機械的な物体を、”未来の麻帆良”で見ていたのを思い出し、それと同じなのかと驚いていた。

それについて、その時のとは形が違うと語りつつも、冷や汗を額に流す夕映がいた。

 

 また、裕奈はこの能力者自体に出会ってないので、あの巨大物体を知っているのかと驚いていた。

実際はその近くで倒れるカズヤや戦慄する法も、同じような力を持っている。

が、能力などではなく、あの巨大ロボをハルナたちが知っていそうな口ぶりだったので、あれ自体を知っているのかと誤解したのだ。

 

 

「おっおい……、大丈夫なのかよ……」

 

「任せておけ! ……!」

 

 

 千雨もその能力自体はよく理解していた。あれはカズヤや法が持つ能力と同じものだと。

そこで法へと、アレを相手にして平気なのかと尋ねれば、法はニヤリと笑って胸を張っていた。

 

 しかし、突然ハッとした顔となり、驚愕しはじめたのだ。

 

 それは目の前の巨大ロボのことではなかった。

その足元に、別の敵が現れたからだ。だが、それ以外にも大きな理由があった。

 

 

「おっ、お前は!? 何故ここに!?」

 

「知ってるのか!?」

 

「いや、そんなはずはない……。ヤツは麻帆良で倒した後、学園側に引き渡したはずだ……」

 

 

 巨大アルター、スーパーピンチの足元に現れた人物は、漆黒の甲冑に身を包んでいた。

フルフェイスの兜で顔を隠し、男であるか女であるかもわからない。

 

 だというのに、法はその人物を知っていた。

どこかで見たことがあった。その漆黒の甲冑とその手に握られた巨大な剣に、法は確かに見覚えがあった。

故に、一瞬かなり驚いてみせたのだ。

 

 

「しかし、誰であろうと負けはしない! ”絶影”!!」

 

「……!」

 

 

 だが、そんなことなど気にしている暇はない。余裕もない。

法はアルターの名を叫び、周囲にある柱などを粉砕し、虹色の粒子へと変換。

 

 そこへ十字を切るような銀色の発光とともに、腕のない拘束された人間型のアルター、絶影が構築された。

 

 法は絶影をすぐさま攻撃へ移行させるべく、右腕を前へと突き出し指示を出した。

が、その瞬間、その漆黒の騎士が爆発的な加速を行ったではないか。魔力強化を用いた超速突撃(クイックチャージ)だった。

 

 

「なっ! ――――グッ!?」

 

「おっ、おい!!」

 

 

 速すぎた。とてつもなく速すぎた。

今の漆黒の騎士の攻撃は、刹那的なものだった。

 

 巨大なその剣に殴り飛ばされた法は、カズヤと同じように柱に衝突し、血反吐を吐いていた。

今の攻撃に反応できなかった法は、柱にめり込んだ時にようやく何が起こったのかを把握したのだ。

 

 突如として吹き飛ばされた法を見て、千雨は数秒間動けなかった。

そして、ハッとした後に、法へと心配するような声を出していた。

 

 

「大丈夫だ……! だが、なんというスピード……!」

 

「……」

 

「再び来るか! だがスピードでは負けん! ――――絶影!!」

 

 

 法は口についた血を拭い去ると、千雨へ問題ないと安心させるように言葉にした。

また、今の攻撃に反応できなかったことに驚いた様子を見せていた。

 

 すると、再び漆黒の騎士が、大剣を握り締め攻撃に移って来た。

法はそれを見ると、今度はこちらの番だと言わんばかりに、絶影を動かし首の鞭状の触手で攻撃したのだ。

 

 

「クソッ! 私も杖があれば……」

 

「うん、杖さえあれば魔法が使えるんだけど……」

 

「杖ならあそこです!」

 

「あれか!」

 

 

 法と漆黒の騎士が激戦を繰り広げ始めたところで、千雨は杖さえあれば、と考えていた。

杖があれば治癒の魔法が使える。先ほど負傷したカズヤも法も、治療できるのだ。

 

 しかし、杖はネギの近くにおいてあるので、取りに行かなければならない。

むしろ彼女たちは未だ杖が、封印の箱にしまってあると思っているのだ。

 

 だが、夕映はぱっと見て、ネギの近くに自分たちの杖は仮契約カードが落ちているのを発見した。

裕奈もそれを見て、あそこまで取りに行けばいいと思ったのである。

 

 

「つーか、師匠は何をやってるんだ!?」

 

「エヴァンジェリンさんならあそこだよ!」

 

「……手が離せねーって訳かよ……」

 

 

 千雨は、この状況を見て自分の魔法の師匠であるエヴァンジェリンが、今何をやっているのか気になった。

こんな状況なのだ、何か行動を起こしていてもいいはずだ。

状助を治癒できるはずだと思った。

 

 するとのどかがエヴァンジェリンを見つけ、そちらを指さした。

その指の先には、バーサーカーとともに、剣を携えた黒い髪と黒いちょび髭の男と戦っている、エヴァンジェリンの姿があった。

剣を携えた男が強いのか、エヴァンジェリンも動けない様子だったのだ。

 

 千雨もそれを見て、エヴァンジェリンの状況を理解した。

さらに、エヴァンジェリンが治癒どころではないということも悟ったのだった。

 

 

「このかも敵に張り付かれてるです」

 

「私たちが治癒の魔法で手助けしないと!」

 

「それしかないね」

 

 

 また、エヴァンジェリンと同じく治癒が得意な木乃香も、少年の敵と戦っていた。

もはやどちらも治癒ができないからこそ、状助があの状態だということを彼女たちは理解したのだ。

 

 こうなったら自分たちがやるしかない。

夕映やのどかはそう考えた。それしか方法はないと思った。

ハルナもそれに同意だった。

 

 

「ハハハハハハッ!! ハハハハハハハハハハハッ!!!!」

 

「うわっ!!」

 

「さっきのロボ!?」

 

 

 だが、それを邪魔するかのように、スーパーピンチが彼女たちへと立ちはだかった。

その本体であるアルター使いが、完全にイカれた笑いをしながら狂った顔で、彼女たちを見下ろしていた。

 

 千雨、和美たちはスーパーピンチが立ちはだかったことに驚いた。

そうだ、敵は法が戦っている漆黒の騎士だけではない。

巨大ロボの使い手もまた、かなり危険な敵なのだ。

 

 

「逃がさねーって訳かよ!」

 

「これでは杖を取りにいけないよ!」

 

 

 千雨は目の前のロボが自分たちを逃がさないように、邪魔をしているのだと考えた。

裕奈はこれでは杖を取りにいけず、何もできないと考えた。

 

 一応杖がなくとも魔力での身体能力の強化程度はできるのだが、やはり攻撃となれば杖が必要になる。

杖さえあれば、誰もがそう思っていることだった。

 

 

「ならば、小生が相手を……!」

 

「マタっち!」

 

 

 するとスッと和美の横から現れたマタムネが、目の前の奇怪な機械を相手取ろうと目つきを鋭くさせていた。

O.S(オーバーソウル)であるこの身が、鉄の塊である鉄のからくりにどれほど攻撃が通るかわからないが、とにかくやるしかないと思ったのだ。

 

 和美はマタムネを見て名を叫び、助けてくれることを感謝した。

やはりこのマタムネはいつだって頼りになると、そう考えたのだ。

 

 

「”シェルブリット”ォォォォッ!!!」

 

「ゴオハハハアァァァァッ!!?」

 

 

 しかし、そこへアルターを発動させたカズヤが、スーパーピンチの頭を砕いた。

 

 カズヤは吹き飛ばされて一瞬だけ気を失っていた。

そして、気が付いた瞬間にアルター、シェルブリットの強化型を装着し、不意打ちをかましたスーパーピンチへと狙いを定め、攻撃したのだ。

もはや、最初から本気モードだ。

 

 頭が砕かれたスーパーピンチは膝を突いて機能を停止し、その頭の上に乗っていた本体も吹き飛ばされ、床へと叩きつけられた。

 

 

「一元!?」

 

「行きな!」

 

 

 千雨はカズヤが復活し、一撃でスーパーピンチの動きを止めたことに驚きの声を出していた。

そんな千雨へ、顔を向けずにスーパーピンチを捉えたまま、ネギたちの方へ行くよう話した。

 

 スーパーピンチはピンチになるほど強くなる。

目の前のそれがその通りになるかはわからないが、まだ本気でないことをカズヤは知っているからだ。

 

 

「大丈夫なのかよ、その怪我!」

 

「問題ねぇよ! さっさと行けっつてんだ!」

 

 

 だが、カズヤは頭から血を流し、かなりボロボロだった。

スーパーピンチの不意打ちがそうとうきいているようだ。

千雨は血に濡れたカズヤへ、大丈夫なのかと叫んだ。

 

 カズヤは自分の心配などどうでもいい。する暇なんてないだろう。

そう言った感じで、早く向こうへ行けと叫んだ。

 

 こんなところでうろたえている暇なんかあるなら、杖でもなんでも取りに行って役に立って来いと。

 

 

「こっちも抑えている! 早く行くんだ!」

 

「法!」

 

 

 また、法も漆黒の騎士の大剣を、絶影の剣のような触手で防ぎながら叫んでいた。

漆黒の騎士はこうやって抑えておく。今の内にネギたちの下へ行くんだと。

 

 しかし、法もまた、漆黒の騎士との戦いで傷だらけだ。

その姿を見た千雨は、たまらずその法の名を叫んだのである。

 

 

「時間がありません! とりあえず走るです!」

 

「そうだね!」

 

「うん!」

 

 

 夕映はもたもたしている時間はない、走ってネギの近くへ行こうと叫んだ。

その言葉にのどかも裕奈も頷き、今にも走り出そうという感じだった。

 

 

「小生が先導しましょう!」

 

「助かるよ!」

 

 

 ならばと、マタムネがすかさずその先頭に立ち、先導すると叫んだ。

何かあれば自らがそれを防ぎ、断ち切る。

そう考えて先頭を行くことにしたのだ。

 

 和美はそんなマタムネに、とても嬉しそうに礼を言葉にした。

 

 そして、マタムネが夕映たちを率いて、ネギの下に向かって走り出した。

時間はない、余裕もない。早く行かなければ、誰もがそう考えていた。

 

 

「待って! 私も!」

 

「待ってろよ! 一元! 流!」

 

 

 ハルナは法やカズヤの戦いに戸惑い、出遅れてしまった。

慌てた声を上げながら、夕映たちにおいていかれないよう必死に追いかけた。

 

 千雨も杖さえあればカズヤと法を魔法で治療できると考え、意気込んで走り出した。

 

 カズヤと法は傷だらけだ。

杖を得たら戻ってきて、治療してやる。

だから待っていろと、戦う二人へ言葉を残して走り去った。

 

 

「彼女たちは去った、ここからは本気で行かせて貰うぞ!! ”絶影”!!」

 

「今の奇襲はキいたぜ……! だがよ、本番はここからだアァァァァッ!!! ”シェルブリット”ォォォォッ!!!」

 

 

 すると法は千雨たちがこの場から去ったのを見て、ようやく本気を出した。

なにせ真なる絶影となれば、戦闘は派手となり周囲に被害が出てしまうかもしれなかったからだ。

 

 法が自分のアルターの名を叫ぶと、絶影が銀色に輝きだすと同時に肥大化した。

さらに硝子が割れるように銀色の光が砕け散ると、上半身は人、下半身は大蛇の尾を持ったアルターが姿を現した。絶影の本気の姿だ。

 

 これからが本番だ、そう言った感じの表情で、目つきで、法は漆黒の騎士を睨んでいた。

一度は不意を突かれて傷を負ったが、次はうまくはいかないぞ。

お前はこの場で断罪する、そう思い鋭く睨みつけていた。

 

 

 同じくカズヤも、その力をさらに解放した。あの不意打ちは痛かった。

かなりヤバかった。突然の売られた喧嘩に戸惑った。

その借りは倍の倍にして返してやる。そう叫んだ。

 

 するとカズヤも自分のアルターの名を大きく叫び、拳を顔の前へで構えると、手の甲のシャッターと腕の亀裂が開いたではないか。

また、そのシャッターが開いた穴からすさまじい回転が発生し、周囲の空気を大きく揺さぶったのである。

 

 カズヤも、頭を再び再形成し、動き出したスーパーピンチを許す気はない。

立ち上がり、再びスーパーピンチの肩へと乗り込む本体の男を、逃がす気はない。

 

 粉々に砕いて二度と再生できないほどに、立ち上がれなくなるほどに、動けなくほどに痛めつけてやると思った。

ここからが正真正銘、戦いのクライマックスだ、そう思った。

二人の男は、そう思った。

 

 そして、二人の男と二つの敵は、再び衝突を始めたのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 場所を戻して、ここはネギたちの周辺。

アスナは未だに防護服(メタルジャケット)の男と戦っていた。

 

 完全に動かない状助を心配しながら、何度も防護服(メタルジャケット)の男へとハマノツルギを振り下ろす。

 

 しかし、防護服(メタルジャケット)の男のシルバースキンにより、その全ての攻撃は無効と化する。

いや、防護服(メタルジャケット)の男は、そんな甘いことは許さない。

 

 徹底的に攻撃を回避し、受け流し、アスナへと攻撃を行う。

アスナも当然それを回避し、もはや勝負は拮抗した状態となっていた。

 

 

「このままじゃ……、状助が……!」

 

「……」

 

 

 状助が生きているかはわからない。

だが、希望は捨てない。生きる、絶対に生きている。

アスナはそう言い聞かせながら、目の前の男と戦っていた。

 

 そして、生きているならば、すぐにでも治療してあげないとまずい。

そう思っていた。

 

 が、それを目の前の男は絶対に許さない。

させてなるものか、そう言葉にしてなくてもわかるような、信念すらも感じるほどに。

目の前の男はアスナへと、何度も拳を打ち付けた。

 

 

「クソッ! こんなことになってるというのに増援も来ない……。まさか……!」

 

「そう、ここは完全に遮断された世界。誰も外からはこの事態に気が付かない」

 

「やってくれたな!」

 

 

 また、ネギたちから離れた場所で戦っているアルスは、異変に気が付いた。

何かおかしいことに気が付いた。明らかに派手に戦っている。

先ほどのすさまじい光と雷は、外にも伝わるほどの強烈なものだったはずだ。

 

 だというのにも関わらず、誰もこの場所へやってこない。

つまり、この場所は既に、他の場所と”つながりを絶たれた”ことになる。

外の場所とこの場所は、完全に隔離されてしまっている。そうアルスは考えた。

 

 すると目の前の青いローブの敵も、そのことをぽつりと語った。

このゲートポートは、外とは完全に離別してしまっている。

もはや助けなど来るはずもない、と。そうほくそ笑みながら、静かに語っていた。

 

 アルスはそれを悔しそうに聞いていた。

やはりそうだと思ったが、してやられたとも思ったからだ。

わかっていた、こうなるだろうと予想していた。

だが、それでも悔しいものだった。

 

 

 そして再び場所をネギへと戻すと、ネギは歯がゆい思いで状況を見ていた。

自分が状助を助けに行けば、そう思った。

 

 だけれども、この場所を離れて、後ろのまき絵たちを危険に晒すわけにもいかないと言うのもあるからだ。

 

 

「僕が治療しに行けば……、だけど……」

 

「あれはゆーなたち!」

 

 

 確かに自分以外も防衛しているが、それでも先ほどの極光がこちらを向けば、防ぎきれるかはわからない。

だから、エヴァンジェリンに言われたとおり、この場を動くことができなかった。

 

 そう考えている時に、後ろのまき絵が叫んだのが聞こえてきた。

まき絵は裕奈を先頭に走ってくる夕映たちを発見し、指差していたのだ。

 

 

「みなさん! これを!!」

 

「助かります!」

 

 

 そこですかさずネギは、戻ってきた彼女たちへと仮契約カードと杖を投げ渡した。

夕映たちもエヴァンジェリンから治癒の魔法を教えてもらっている。

彼女たちならば、状助を治療できると考えたのだ。

 

 夕映たちはそれをしっかりとキャッチし、礼をネギへと叫んだ。

 

 

「おっし! 待ってろ二人とも……!」

 

「私たちも早く東さんを……!」

 

 

 千雨はそこで気合を入れなおし、戻ってきた道を再び走り出した。

カズヤと法を治療するためだ。

 

 夕映もこのまま状助を治療しようと、そちらへ駆け出した。

裕奈も夕映たちをガードするように、杖を握り締めて障壁をはっていた。

 

 

「和美さんは小生の隣に……!」

 

「うん」

 

 

 また、何もできない和美は、マタムネに守られつつ、ゆっくりとネギたちの方へと歩き出した。

マタムネも夕映たちも護衛したいと思ったが、まずは何もできない和美を、安全な場所へ移すことを先に選んだのだ。

 

 

「ふん、”両断! ブラボチョップ”!!」

 

「なっ!!」

 

 

 しかし、その時防護服(メタルジャケット)の男が、不意に手刀(チョップ)を繰り出した。

そこには円形のゲートとゲートを結ぶ橋の役割の渡り廊下があり、それが砕け折れたのだ。

 

 アスナはそれを見て、かなり驚いた顔をした。

状助の治療をさせんが為に、建造物を破壊してみせるとは。

 

 

「キャアッ!!」

 

「道が!」

 

「なんという怪力無双……」

 

 

 すさまじいその衝撃に、ゲートが大きく揺れた。

その近くにいた夕映たちは、その揺れに耐えかねて膝をついて縮こまった。

のどかは大きく悲鳴をあげ、ハルナは状助の下へ行くための道が破壊されたことに衝撃を受けていた。

 

 同じくマタムネも、目の前の男の手刀の威力に驚きの声をもらしていた。

たった一撃でこれほどまでの破壊。おぞましい力だと。

 

 さらに、今ので夕映たちと同じように、マタムネも和美を連れてネギの下へ行くことが、不可能に等しくなってしまっていた。

 

 夕映たちは当然、飛行の魔法を教えてもらっている。

だが、飛行の魔法にはある程度の大きさの杖が必要だ。

 

 夕映たちは未だに魔法使い見習いという扱い。

初心者用の小さな杖はあっても、ネギが持っているような、大きな杖を持ってないのだ。

 

 裕奈も、大きな杖を持ち合わせてはいなかった。

というのも、基本的に裕奈のバトルスタイルは射撃。

大きな杖を持たず、小さな杖や魔法銃などを用いて、すばやく移動しつつ的確に相手を狙い撃ちするスタイルなのだ。

 

 しかし、裕奈ならば魔力強化で夕映一人ぐらいは担いで、移動することぐらいは可能だ。

それでも、それを躊躇わせるのは、やはり橋を破壊した男の存在があるからだ。

 

 あの攻撃はかなり危険だ。

自分の魔法障壁ですら、防ぎきれないと考えた。

 

 誰かを担いでそちらに向かった時、攻撃されればおしまいだ。

裕奈はそれを考え、冷や汗を額に流しながら、どうするかを考えていた。

 

 さらに、回り込むにも周囲で激しい戦闘が繰り広げられている。

安易に他の場所へ行けば巻き込まれる危険性があった。

それだけに、遠回りはできそうになかった。

 

「なっ、なんてことするのよ!」

 

「ヤツだけは、ヤツだけは回復させん」

 

「何で!!」

 

 

 アスナは今の防護服(メタルジャケット)の男の行動に憤慨した。

ここまで状助を治療させたくないのか。

死なせたいのかと。

 

 が、目の前の男はそう言った。

その通りだと、あのクレイジー・ダイヤモンドのスタンド使いだけは絶対に治癒させないと。

 

 アスナはどうしてそこまでこだわるのかわからず、たまらず叫んだ。

どうしてそこまでするのかと。

 

 

「ヤツの特典(スタンド)は脅威だ。あってはならない」

 

「そんなことで死ねって言うの!?」

 

「そうだ」

 

 

 防護服(メタルジャケット)の男は、静かに言った。

あの特典(スタンド)、クレイジー・ダイヤモンドは我々にとって恐ろしい存在だ。

いかなるものをも修復する力は、この先生かしておいたら脅威となる。

 

 アスナはそんなくだらないことで、状助に死ねと言うのかと、怒りに任せて叫んだ。

そんな勝手な事情で、人の命を失えと言うのか。

そんな身勝手なことがあってたまるか。

 

 が、なんということか。

目の前の男はそれを一言で片付けた。

言うとおりだと、死ねばいいと。むしろ、ここで死んでもらうことを願っていると。

 

 

「そんなの! 絶対に許さない!!」

 

「強がるな……」

 

 

 アスナは本気で怒っていた。許せないと思っていた。

絶対に状助を助けると、ハマノツルギをさらに強く握り締めた。

ああ、許せるものか。状助を死なせるなんて、あってたまるか。

 

 状助は変だけど面白く、そして何より気が利く奴だ。

小学校のことからずっと友人として親しくやってきた。

最初はたどたどしく、自分たちにあまり関わりたくないような、そんな態度を見せていた。

 

 それでも自分を助けてくれた。

能力(スタンド)がバレるのを怖がっていたと言うのに、それを使って助けてくれた。

一緒に遊んでくれた。相談にも乗ってくれた。風邪を引いたら治してくれた。

 

 そんな状助がいなくなってしまうのは、悲しい。

むしろ、悲しいとかそういう次元じゃない。きっと絶望してしまうだろう。

 

 そのぐらい、自分は彼に気を許しているんだ、そう実感できた。

だからこそ、状助を絶対に助けたい。

死なせたくない。

 

 

 アスナはずっとそれを頭の中でぐるぐると思考しながら、目の前の男を倒そうと力を振り絞る。

 

 目の前の男は強大だ。

それでも、それでも諦めたくなんてない。

諦めるなんてことはしない。倒す。そうだ、倒す。

 

 さらに力を入れたアスナは、咸卦の気をよりいっそう強めていく。

目の前の男を、銀色の外郭の男を倒すために。

 

 

 しかし、防護服(メタルジャケット)の男は静かに言う。

どんなに怒っても、どんなに荒ぶっても、どんなに気持ちを強めようとも、このダブルシルバースキンを抜くことは不可能。

 

 なんという理不尽なる防御だろうか。

アスナの咸卦法による膂力でさえも、ダブルシルバースキンは破れない。

 

 故に、防護服(メタルジャケット)の男はそう考える。

やめておけ、諦めろ、それ以上は無意味なことだ。防護服(メタルジャケット)の男はそう思っていた。そう言葉にしていたのだ。

 

 

 道をふさがれてしまった夕映たちは、どうしようかと考えていた。

急がなければ状助が死ぬ。すでに死んでいるかもしれないけれど、そうは考えたくはない。

 

 助けられるかもしれない。

それでも、目の前の橋が砕かれてしまっては、身動きが取れない状態だ。

 

 

「待って! 今私のアーティファクトでなんとかするから!」

 

「ハルナ!」

 

 

 そこでハルナはすかさず仮契約カードを用いて、アーティファクトを呼び出した。

アーティファクトで再び橋を描けば、あるいは翼を描けば渡れると思ったのだ。

 

 夕映はハルナのアーティファクトに期待した。するしかなかった。

この状況を打破するには、それしかないかもしれないと思ったからだ。

 

 

「うわあッ!!」

 

 

 しかし、そこへ白い剣が一本、ハルナのところへ飛んできた。

そして、その剣はハルナの近くで大爆発を起こしたのだ。

 

 ハルナは驚き慌てふためき、身をかがめて目を瞑った。

が、爆発自体は直撃はせず、誰かにしっかり防がれたようだった。

 

 

「大丈夫!?」

 

「問題ありませんか……?」

 

「ゆーな! それにマタムネさん!」

 

 

 剣の爆発を防いだのは裕奈とマタムネだった。

裕奈は高い強度の障壁を張り、マタムネはO.S(オーバーソウル)、鬼殺しを展開し、それを盾にしたのだ。

そのおかげでハルナは無事だった。

 

 

「もうすぐ終わる。それまで大人しくしていてくれたまえ」

 

「貴様ァ!!」

 

 

 その剣を投げ飛ばし、爆発させたのは当然アーチャーだ。

とは言え、アーチャーはハルナの命を狙った訳ではない。

 

 ほんの少し時間を稼ぎたかっただけだ。

ハルナへの攻撃は命中させる気など、まったくなかったのだ。

 

 だが、そんなことなど知らない刹那は、クラスメイトへの攻撃に激怒した。

この目の前の男はネギだけではなく、ハルナまで攻撃した。

さらに、目の前の男の仲間は状助に致命傷を負わせた。

 

 もはや許すわけにはいかない。

刹那の剣撃はどんどんすばやく、そして鋭くなっていくばかりだった。

 

 

「ふむ、そろそろか」

 

「どいうことよ!」

 

 

 そんな時、アスナと戦っていた防護服(メタルジャケット)の男が、ぽつりとこぼした。

時間だ。もう終わりだ。

 

 アスナはその意味を問い詰めるように、大きく叫んだ。

何がそろそろなのか、何を待っているのか。

 

 

「シルバースキン”リバース”!」

 

「なっ! 防御を一つ解いた!?」

 

 

 すると、防護服(メタルジャケット)の男はおもむろに、装備していた一つのシルバースキンを自ら解除、分解した。

 

 アスナはそれを見て驚愕した。

何故、今になって突如として装備を解除したのかわからないからだ。

目の前の男の意図がまったくわからないからだ。

 

 防護服(メタルジャケット)の男が一つシルバースキンを解除すると、中から海賊船長のようなシルバースキンが現れた。

そして、男は大きくその名を呼んだ。

 

 ――――シルバースキン”裏返し(リバース)”と。

 

 

「え!? どうしてこれを私に!?」

 

「すぐわかる」

 

「馬鹿にして!!」

 

 

 そうすると次の瞬間、分解されたシルバースキンが六角形のパーツの集合体となり、アスナへとまとわり付いた。

さらにそれはシルバースキンの形となって、アスナに装着されたのだ。

 

 また、”裏返し”の文字通り、シルバースキンのカラーもまた反転し、ズボンとコートの色が真逆となり黒が主体となっていた。

 

 どういうことだ。

この行為に意味があるのか。

相手に自分の防具を装備させて、ナメているのだろうか。

 

 アスナには相手の行動の意味がわからない。

目の前の男の思考が理解できなかった。

 

 それをアスナが言葉にすると、防護服(メタルジャケット)の男は目を光らせ、一言だけ述べた。

 

 意図など理解する必要はない。

どうせ、すぐにその効果がわかるのだから、と。

 

 アスナはやはり馬鹿にされたと考え、再び目の前の男へと、そのハマノツルギを振り抜いた。

 

 

「――――っ!? 攻撃が遮断された……!!?」

 

「そうだ。能力をバラしてしまうが、我がシルバースキンは全ての攻撃を遮断する防護服(メタルジャケット)……」

 

 

 しかし、ああ、なんということだろうか。

アスナの攻撃は、アスナに装着させられたシルバースキンにより、封じられてしまっていた。

アスナが装備させられたシルバースキンが、六角形のパーツに分離し、ハマノツルギに巻きつくようにまとわり付いたのだ。

 

 アスナはかなりの力をこめて振ったはずのハマノツルギが、まさか自分に装備させられたジャケットによって受け止められるなど思ってなかった。

 

 だが、同時に目の前の男の行動の意味を理解した。

自分の攻撃を封じるために、そうしたのだと。

そして、これを装備させられたからには、もはや逃げ場はないと。

 

 防護服(メタルジャケット)の男は勝利を確信しつつも、謙虚に振舞いながら、自分の装備(とくてん)について語りだした。

 

 シルバースキンは全ての攻撃をはじく最強の鎧。

無敵の防護服。地上のありとあらゆる攻撃を防ぎきる盾であると。

 

 

「そして、それを反転することにより、いかなる攻撃をも束縛する、拘束服(ストレイトジャケット)となる……!」

 

 

 さらに、それを反転させて相手に装備させれば、逆に相手の攻撃を束縛することが可能となる、と。

 

 そうなってしまえば、たとえ相手が誰であろうと、もはや攻撃すら不可能になると。

これこそが最強の防御を反転させた最強の拘束、シルバースキン”裏返し(リバース)”なのだ。

 

 

「このぉ!」

 

「無駄だ……。それがあるかぎり、お前はもう捕らえられたも同然だ」

 

「そっ、そんな……!」

 

 

 しかし、アスナはやってみなければわからないと言わんばかりに、再びハマノツルギを振り抜く。

 

 それでも哀しいかな、その攻撃すらもシルバースキンリバースに邪魔され、再びハマノツルギは拘束された。

 

 防護服(メタルジャケット)の男は、もうこうなってしまえば無意味だ。

完全に包囲されたと同じことだ。捕まったのと同じことだ。

そう静かに語りかけた。

 

 そう、男の目的の一つ、それはアスナの捕獲でもあった。

あわよくばアスナを捕らえる、それもまた、男に与えられた使命であった。

 

 アスナはそれを聞いて、とてつもないショックを受けていた。

それと同時に、一つの疑惑が生まれた。

 

 目の前の男は、もしや昔自分を捕らえた連中の仲間なのではないかと。

ならば、捕まってしまうのは非常に危険ではないかと。

 

 

「……つかまってたまるもんですか!!」

 

「悪あがきはよせ」

 

 

 ならば、絶対に捕まる訳にはいかない。

捕まったらおしまいだからだ。全てが無に帰するからだ。

魔法世界が滅びるからだ。

 

 だからアスナは、何度もハマノツルギを振り回した。

拘束を破壊しようと、できるかもしれないと。何度も何度も振り回した。

 

 しかし、それも無意味だった。

この拘束は絶対に解除できない。破壊できないものなのだから。

 

 故に防護服(メタルジャケット)の男はこう言う。

無意味なことはやめて、大人しくしろと。これ以上逆らっても、意味なんてないと。

 

 

「ハァ……、ハァ……」

 

「もう終わったのだ。大人しくしろ」

 

「まだ……、まだよ……!」

 

「諦めの悪いやつだ」

 

 

 アスナは何度もハマノツルギを、必死に振り回した。

それでも拘束は破壊できない。むしろ、振り回すたびに拘束されてしまっていた。

何度も何度も、何度も何度も。

 

 その拘束を振りほどけず、アスナはついに息が荒くなってきていた。

疲れてきていた。咸卦の気で強化されようとも、強靭な拘束を破壊するために力を出し続ければ、体力の消耗は大きい。

 

 目の前の男は依然として、余裕の態度だ。

絶望的な言葉を投げかけ、アスナを折ろうとしている。

いや、哀れみを感じてるのかもしれない。そんな声でもあった。

 

 それでも、それでもアスナは諦めない。

自分のためだけではない、世界の、魔法世界のためにも。

メトゥーナト(パパ)のためにも、ここで諦めるわけにはいかないのだ。

 

 防護服(メタルジャケット)の男は、やれやれという感じになってきた。

これほどの圧倒的な拘束を受けても、未だ諦めずに剣を振るアスナに、しぶといヤツだと思ったのだ。

 

 

 だが、アスナがもう一度ハマノツルギを振ろうとしたその時、目の前の男の後ろに影ができた。

黒い影が突如として現れ、男の後ろに立っていた。

 

 

「……え?」

 

「――――なに?」

 

 

 アスナはその影に、小さく驚いた声を出していた。

一瞬だけ呆けた顔で、その影を見た。

 

 そして、アスナのその声に反応し、防護服(メタルジャケット)の男も不審に思った。

 

 何だというのか、どうしたというのか。何か、何か自分の背後にいる。

ドドドドドドドドド、そんな効果音が聞こえてきそうな、そんな気配を男は感じた。

 

 そして、それを確かめるべく、ゆっくりと、ゆっくりと後ろを向こうとした、その瞬間だった。

 

 

「ドララララララララララララララララアァァァァァァッッ!!!」

 

「――――何!? 馬鹿な……!? グウオッ!?」

 

「状助!!?」

 

 

 なんと、防護服(メタルジャケット)の男は、無数の見えざる拳によって連続的に殴られたのだ。

 

 また、その男は後ろに居た人物に驚いた。

そんなはずはない、ヤツが立っていられるはずがない。

まさか、一・撃・必・殺、ブラボー正拳、で死んだはず。

くたばったはずだ。

 

 アスナは目の前の男の影の名を、大きな声で、驚きと喜びが混じったような声で叫んだ。

 

 状助。

そう、男の背後に突然現れたのは、状助だった。

 

 血まみれで倒れ、動かなくなっていた状助だった。

全身血塗れになりながらも、強い意志を瞳に宿し、スタンドで攻撃する状助の姿だったのだ。

 

 

「ドラララララララァァァァッ! ドラララララララララララララララララララララララァァァァッ!!!」

 

「ううおォォ!?」

 

 

 いつにもまして、先ほどのものよりも強烈な、激烈な、苛烈なラッシュが、防護服(メタルジャケット)の男を襲った。

状助が操るクレイジー・ダイヤモンドの攻撃が、倒れる前よりもより激しさを増していたのだ。

渾身。もはや命すらも削っていると言っても過言ではないほどのパワーを、その拳に宿らせていた。

 

 しくじった。

防護服(メタルジャケット)の男はそう一瞬思った。

やはり言われたとおり、聞いていたとおり、”ジョースターの血”と言うのは侮れないものだった。

 

 ここぞという時、危機になった時、その力は爆発し、牙をむく。

男は後悔した。とどめを刺し損ねたことを。

 

 真っ赤に染まりながらも、瀕死の重傷を負っているというのに、さっきよりも爆発的なラッシュの拳を放つ状助を見て。

その爆撃の中心地点にいるような衝撃を身に受けながら。

 

 

「ドラァァァァァッ!!!」

 

「があッ!? ぐうゥッ!?」

 

 

 すさまじい渾身のラッシュによって、防護服(メタルジャケット)の男のシルバースキンを全て弾ぜた。

再びシルバースキンは六角形の細かいパーツとなり、男の周囲に分散したのだ。

 

 しかも、今男が装備しているシルバースキンはアナザータイプの一つだけだ。

もう一つはアスナに装備させ、拘束に使っていた。

 

 故に、今の男は無防備だった。

弾けとんだシルバースキンから、ツンツンした黒い髪の、顎に無精髭を生やしたそこそこダンディーな男の顔が現れる。

作業服を着た男が、その全貌をあらわにした。

 

 状助はそこへすかさず力を最大に込めた、クレイジー・ダイヤモンドの拳を突きたてた。

ダイナマイトの爆発のような、強烈なパンチ。それが防護服(メタルジャケット)の男の顔面へと吸い込まれるかのように命中したのだ。

 

 直撃だった。クレイジー・ダイヤモンドの拳は男の顔に深々と突き刺さると、男は血を噴出しながら、数メートルもの距離を吹き飛んだ。

その瞬間、男は頭部に大きな衝撃を受け、脳が揺さぶられたのか、一瞬だが気を失った。

一瞬、たった一瞬の出来事だった。

 

 男が一瞬だが、ほんのわずかな時間だが気を失ったことで、シルバースキンおよびシルバースキンアナザータイプ、両方全て解除された。

そして、解除されたシルバースキンは核鉄へと戻り、男の手元へと戻っていった。

 

 

「じょ……、状助アンタ……」

 

「――――フッ……」

 

 

 アスナはシルバースキンリバースが解除されたことで、自由を取り戻した。

血まみれで立ちながら、不敵に笑う状助を見ていた。見ているだけで、すぐに動くことができなかった。

 

 

「ちょっ、状助!!」

 

 

 しかし、その直後、状助は力尽きたようにその場に倒れ、再び動かなくなってしまった。

無理もないだろう。むしろ、これほどの出血とダメージで再び立ち上がり、スタンドを操った方が奇跡としか言いようがないのだから。

 

 アスナは倒れた状助へと、すぐさま駆け寄ろうとそちらへ走った。

立ち上がったと思ったら、また倒れてしまった。これ以上はもう持ちそうにない。早く何とかしなければ。

そう思いながら、状助の名を叫び、焦りの表情でそっちへと駆けた。

 

 

「クッグウゥ……、油断……したか……!」

 

 

 また、状助に殴り飛ばされた防護服(メタルジャケット)の男は、口に付着した血をぬぐいながら、己の過信を悔やんでいた。

 

 してやられた、まさかあの状態で立ち上がり、あれほどの攻撃を繰り出してくるなど、思っていなかった。

情けないことに、残心を失っていた。

 

 が、もう約束の時間だ、そろそろこの戦いも終わるだろう。

アスナを取り逃してしまったことは大きいが、今の任務はオマケでしかない。

後日、改めてお迎えにあがればよい。

 

 そう考えた男は、その場から移動し、ゲートの要石を砕いている仲間の下へと移動した。

さらに、要石はすでに、砕ける寸前であった。

 

 ――――この男、一瞬だけ意識が途切れたが故に、武装錬金は一度解除された。

それでも意識を取り戻した直後、すぐさまダブル武装錬金を行い、再びダブルシルバースキンを武装していたのだ。

すさまじい判断力と精神力のなせるワザだ。

 

 

 そして、ネギたちが守護する陣地にて、自分も役に立ちたいと願うものがいた。

 

 アーニャだ。

アーニャもネギたちと共に障壁などを張り、無力な一般人であるまき絵たちを守っていた。

が、それだけではなく、何かないか。そう考えて周囲を見渡していると、何か異変に気が付いた。

 

 

「ネギッ! あいつらはゲートの要石を……、世界と世界の楔を壊そうとしてる!」

 

「まさか!」

 

 

 要石、旧世界と魔法世界を繋ぐ楔。

それを奴らは断ち切ろうとしている。

アーニャは要石に異変が発生していることに気が付き、それをネギへと叫んだ。

 

  要石とは、言われたとおり旧世界と魔法世界を繋いでいる石だ。

石、と言うよりも大きな縦に長い岩で、魔力の塊のようなものである。

 

 ネギもそんなことをすればどうなるかなど、理解していた。

最悪、ここが吹き飛ぶ可能性がある、ということをだ。

 

 それでも、この状況を打破するには、一手足りない。

ここを動けば、後ろの生徒たちが危険に晒される。

 

 かといって、周りも戦いで動けない。

もはや、敵の目的がわかったところで、どうしようもなく詰んでいたのだ。

 

 

「それが貴様たちの狙いか!」

 

「いまさらだな。しかし、もう遅い!」

 

「クッ!!」

 

 

 そのアーニャの声を聞いた刹那は、全てを理解した。

そして、目の前で戦っているアーチャーへと、それを叫んだ。

 

 だが、アーチャーはそれを聞いてほくそ笑みながら、言葉と同時に白と黒の剣を再び投げ、退却の準備を始めたのだ。

刹那はそれを回避しながら、アーチャーとの追撃戦を繰り広げるしかなかった。

 

 

「まさか、ゲートを破壊する気か!?」

 

「そうだ。世界の繋ぐ楔を破壊させてもらう」

 

「テッ、テメェ!!!」

 

 

 エヴァンジェリンも、目の前の男たちの目的がゲートの破壊だと察したようだ。

どういう理由で破壊するかは知らないが、このままでは危険だと考えた。

 

 それをエヴァンジェリンが叫べば、竜の騎士は淡々と答えた。

その通りだ、このゲートが破壊されれば作戦は終了だと。

 

 バーサーカーはその敵の態度に、かなり激怒した様子だった。

ここを破壊されればどうなるかわからないが、とにかく嫌な予感がしたからだ。

相手の手の平で踊らされていたからだ。

 

 

「クッ……!」

 

「あら、もう時間? もう少し愉しんでおきたかったけど……」

 

 

 さらに、遠くで戦っていたアルスは、青いローブの敵の攻撃によりボロボロだった。

あちこちが切り傷だらけ、血まみれという状態だった。

それでも未だ戦う意思を失ってはおらず、敵を睨みつけていた。

 

 が、敵の方はむしろ余裕の様子を見せ、時間が来たことに残念だともらしていた。

先ほどまでは待ち時間だとやる気がなかったというのに、随分と態度が変わったようだ。

 

 

「それじゃ、さようなら」

 

「なっ! ――――ガアアアッ!!!」

 

 

 青いローブの敵は、それならもういいか、遊びの時間は終わりにしましょう。そう言う感じで別れを告げると、渾身の一撃をアルスへと見舞った。

そして、そのまま敵は転移魔法でその場から去ったのである。

 

 アルスはその鋭い蹴りの一突きを受け、壁の向こう側へと吹き飛ばされた。壁を突き破り、隣の部屋の壁にぶつかったアルスは、そのまま倒れ、立ち上がれぬほどのダメージを負ってしまったようだ。

もはや完敗、まるで赤子の手をひねるように、アルスはボコボコにやられてしまったのだった。

 

 

「ん? 時間か」

 

「陽!」

 

「じゃーなこのか! 今度会った時こそ、オレのものになってもらうからよ!!」

 

「待っ……!」

 

 

 木乃香と戦闘していた陽も、時間を悟って退却を始めた。

それを追うように木乃香が走るも、最後に捨て台詞を吐いた陽はそこから姿を消したのだ。

 

 木乃香は陽が消える寸前に、声をかけようと駆け寄ったが、すでに遅く、そこで悲壮に満ちた表情をすることしか、できなかったのであった。

 

 

「……私も退却とするとしよう」

 

「逃がすかッ! チッ!!」

 

「奴らめ……、これほどまでの速やかな撤退ができるとは……」

 

 

 すると、エヴァンジェリンとバーサーカーを相手取っていた竜の騎士も、退却を開始した。

 

 もはやこの場に用はない。

速やかに撤退するべし、と言う様子で、最後に特大のギガデインを目くらましに使い、さっさと転移していった。

 

 バーサーカーも竜の騎士を追うも、ギガデインに阻まれて逃してしまった。

エヴァンジェリンもこの撤退のすばやさは、最初から入念に計画されていたとしか思えないと、しかめた顔で考えていた。

 

 さらに、楓と戦っていた黒いローブの敵も、小太郎と戦っていた大きな白い帽子の敵も、既に撤退をはじめていた。

 

 もはや要石が砕けるのも時間の問題。

要石の破壊を行っているものの防衛は、あの銀色の男だけで問題ないと判断し、転移していったのである。

 

 

 そして、場所はカズヤと法へと移せば、こちらも最終局面となっていた。カズヤは何度もスーパーピンチを砕くも、砕くたびに再生するスーパーピンチに苦戦していた。

しかも、相手は何度もアルターを砕かれようと、まるで消耗が無い様子だったのだ。

 

 また、カズヤの特典(アルター)シェルブリットの強化型は、一発撃つだけでも腕に大きな反動を受けてしまう。

おかげで、かなり消耗を強いられており、もはや右腕を左手で押さえながら、苦悶の表情を見せるほどであった。

 

 法は法で、中々の接戦を強いられていた。

漆黒の甲冑の敵は、中々どうして動きがよく、法のアルター、真・絶影の攻撃を防ぎ、しっかりと反撃を行ってきた。

 

 そのすばやさとパワーは法が想像した以上のものであり、法も随分とダメージを負った様子であった。

 

 が、漆黒の甲冑の男もやはりどこか妙だった。

人間的な動きと言うより、超精密機械のような、そんな印象を法は受けたのだ。

 

 

「ハハハッ……! ……」

 

「! ……了解……」

 

 

 しかし、敵の様子が突然おかしくなった。高笑いしながら、スーパーピンチを操っていた男が、突如として笑うのをやめた。

漆黒の甲冑の男も、何者かと交信しているかのような声を出し、二人は撤退をはじめたのだ。

 

 漆黒の甲冑の敵はすぐさまスーパーピンチの手に乗り、スーパーピンチの操縦者とともに浮かび上がった。

そして、天井を破壊すると、その場所へと目がけて赤色の鳥型のロボットが飛んできたではないか。

 

 これぞ、スーパーピンチのサポートメカである大いなる翼、ピンチバードだ。

当然このピンチバードもアルターであり、スーパーピンチを操る男が作り出したものだ。

 

 そのピンチバードはスーパーピンチを鳥のような足で掴むと、その場をすさまじい速度で飛び去っていったのだ。

 

 

「テメェ逃げる気か!? ぐううゥゥッ!!! クソ……! シェルブリットを撃ちすぎたか……!」

 

「待て、貴様!! グッ……!」

 

「お前ら!!」

 

 

 カズヤは逃げる相手を追うように攻撃をしかけるも、いきなり右腕のシェルブリットが暴走を始めたのだ。

右腕が大きく痙攣し、まるで言うことを聞かない。

 

 カズヤはシェルブリットを撃ちすぎたと考えながら、激痛と暴走で右腕を押さえ、苦痛に耐えていた。

 

 法も敵を追おうと試みるも、アルターが受けたダメージがフィードバックしており、力尽きるように膝を突いた。

法は法で、かなりアルターを消耗し、能力が減退してしまっていたのである。

 

 さらに真・絶影は操るのに負担が大きく、もはや能力発動限界(オーバーシュート)寸前だ。

故に、法の額は斜めに割れ、血を流していた。

 

 そこへ駆けつけるかのように現れた千雨であったが、もはや既に遅かったと言える。杖を握り締め、苦悶にゆがんだ表情を見せる二人を、何とか治癒しようと急いでいた。

 

 それでも、カズヤと法のいる場所までは、まだ少し遠い。

この間にも、すでに要石が砕かれようとしていたのだ。

 

 

「マズイ! 魔力が暴走する……!!」

 

 

 このままでは、要石が破壊された時に巻き起こる魔力の暴走で危険だ。

アーニャも、要石が砕かれたのを見て、コレはマズイと思った。

魔力の暴走が始まる、そう叫んだ。

 

 が、遅かった、遅すぎた。全てが遅すぎた。一手遅れた。

そう、そんな状況だった。

 

 ついに砕かれた要石が、そのたまった魔力を放出し、暴走を始めたのである。

そして、要石を砕いていた敵の仲間も、その防衛の為に隣にいた防護服(メタルジャケット)の男も、スッと転移して消えていった。

 

 

「強制転移魔法だと!?」

 

「何がどうなってやがる!」

 

「貴様ら! 早く一箇所に集まれ!」

 

 

 さらに、ここでネギたちの足元に魔方陣が現れた。

それは強制転移魔法だ。

 

 バーサーカーはそれが一体何なのかわからず、混乱した様子を見せていた。

また、それに気が付いたエヴァンジェリンは、その危機をネギたちへと伝えるべく叫んだ。

 

 また、同時にその魔法の無効化も試みていた。

しかし、中々頑丈に編み出された強制転移魔法のようで、突然のことということもあり、そう簡単には破壊(レジスト)できそうにはない。

頼みの綱のアスナもそれどころじゃない様子であり、状助へと駆け寄るのが精一杯だった。

 

 

「みんな!! 集まって手を……!!」

 

 

 ネギはエヴァンジェリンの警告を聞き、すぐさま全員に集まって手を掴むよう叫んだ。

 

 しかし、それも遅かった。二手遅れた。

魔力が光り輝き、周囲に極光が発せられた。

 

 

「では、私もそろそろ退かせてもらうよ」

 

「何! グッ!」

 

「だが、何も無しに帰るのは忍びないのでね……!」

 

 

 そんな状況だと言うのに、最後の最後まで残っていた敵がいた。

アーチャーだ。彼は刹那との戦いに、未だ興じていたのだ。

 

 アーチャーは自分も危険なのでそろそろ退場すると言い、周囲に飛び交う夫婦剣を連続的に爆破した。

刹那はその爆風を受け、アーチャーから遠ざかり身を守ることに徹するしかなかった。

 

 が、アーチャーが一人だけ、意味も無くここに残っていた訳ではない。

ここまで魔力が暴走を始めている危険な状況下に、身を置いておく必要はない。

 

 アーチャーは最後の最後、でかい花火を打ち上げるためだけに、この場に残っていたのだ。

 

 

「さて、これは君たちの新たな旅路への、私からのささやかな選別だ。受け取ってもらうとしよう」

 

 

 アーチャーは独り言をこぼすと、再び弓を投影した。

さらに、もう一本、強力な剣を投影したのだ。

 

 その剣は螺旋状の刀身を持つ剣。

カラドボルグ、そう呼ばれた剣の改良型(アレンジ)偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)だ。

 

 アーチャーは弓とそれを握り、高く高く飛び上がった。

ゲートの天井付近まで到達するほどの跳躍だ。

 

 そこで、まるでそれが置き土産と言わんばかりに、その螺旋状の刀身を持つ剣を、そっと弓に構えたのだ。

 

 

「我が骨子は捻れ狂う……」

 

 

 高所から低所へ、矢を構えるアーチャー。

呪文のような言葉を口走ると、螺旋剣は矢のように細くなり、光り輝いた。

また、その矢へと膨大な魔力が流れ込み、まがまがしいオーラが矢から溢れんばかりに放出されていた。

 

 

「―――― 偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!」

 

 

 そして、転移寸前、魔力爆発寸前の状況下にあるネギたちへと、その真名と共に、矢を解き放った。

 

 矢は瞬間的にゲートへ到達、すさまじい魔力爆発が発生。

狙った場所は要石が存在した場所。要石の破壊による魔力暴走と、アーチャーの矢の魔力爆発により、すさまじい衝撃波が発生したのだ。

 

 

「うわああああああああッ!!」

 

 

 もはや、もはや白一色の世界。

目を開けていられないほどの光が、ゲートを包んだ。

 

 その爆発と暴走の規模は膨大であり、光と同時にゲートポートの建造物の天井が全て、跡形もなく吹き飛んだ。

当然、そんな状況下に置かれたネギたちは、なすすべもなく悲鳴を上げることしかできなかった。

 

 

「さらばだ諸君。いや、また会うだろうがな……!」

 

 

 そんな状況を脱し、転移する前に一言残したアーチャー。

計画はうまくいった。これで魔法世界編の第一歩が始まった。

 

 そう考えながらアーチャーは、再会を待ち望む様子でニヤリと笑い、転移魔法で消えていったのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:不明、スーパーピンチのアルター使い

種族:人間

性別:男性

原作知識:不明

前世:30代おもちゃメーカー社員

能力:自分の意識で操れるロボット型アルターでの物理攻撃

特典:スクライドに登場するアルター、スーパーピンチ

   スーパーピンチをいのままに操る

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。