理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ45:公園などで発生する転生者同士の激しい戦闘

テンプレ46:オリ主の強い能力

テンプレ47:クレイジーDの活用


十七話 少女の苦悩と二つの炎

 熱海数多、アルカディア帝国の皇帝直属の部下の一人、熱海龍一郎の一人息子。真の熱血にたどり着きしものであり、心の強さ、精神の強さを信条とする熱血な男子である。父親、熱海龍一郎から、麻帆良にて勉学と共に身も心も強くなれと言われ、とりあえず生活しているのだ。

 

 

 そんな中、数多の妹となった少女が、麻帆良へとやってきた。そして、”原作”に大きく関わる、麻帆良学園本校女子中等部の1年A組に在籍しているのだ。その妹こそ、あの”焔”である。彼女は1年A組でとりあえず父親の言われたとおり、普通に勉学に励み、普通に生活していた。

 

 しかし、焔は性格上もあるが生い立ちゆえに、1年A組のクラスメイトになじめずに居たのだ。どうにも騒がしくてのー天気な感じのクラスが、焔としてはあまり好ましくないのだ。だから、どうすればよいかと、兄である数多に相談することにしたのだ。

 

 

 だが、焔は基本的に女子寮住まいであり、数多は流石にそこへは出向けないと考えた。だから休日にでも、どこかで待ち合わせようと考えたのだ。その場所が世界樹前広場であった。広い階段のあるこの公園で、とりあえず数多は焔から相談を受けることにしたのだ。

 

 

 

 しかし、その場所になかなか現れない数多。待ち合わせ時間が少しだけ過ぎていた。焔は遅いと感じはじめた時、少年の二人がいがみ合っていたに気がついた。この不穏な空気の中、焔はひたすら兄を待つしかなかった。

 

 

…… …… ……

 

 

「おめぇ転生者だな? 俺様の邪魔をするなら、死んでもらうぜ!!」

 

「……何を言っている? この俺の能力に、勝てると思っているというのか?」

 

 

 突然このような会話をしだした少年たち。喧嘩を売り始めた少年をA、ガタイがいい、それを買う少年をBとしよう。転生者たちは、自分が主役であることを信じている。

 

 ゆえに、原作キャラを独り占めしようと、目論んでいるものも多い。そして、同じ考えの転生者同士が出会った場合、基本的に戦闘となる。だが、その能力が高ければ高いほど、周りに壮大な被害を与えることになるのだ。

 

 転生者は基本的に魔法世界で暴れまわっている。しかし、原作開始直前ということもあり、この麻帆良に多くの転生者が在籍していた。だからその分、衝突も起こりやすかった。今、それが始まろうとしているのだ。

 

 

「じゃぁ、俺様の”特典(のうりょく)”を先に見せてやるよ!! ”武装錬金”!!」

 

「何!? それがお前の武器か!!」

 

 

 武装錬金、それは核鉄を用いて発現する武器である。使用者の闘争本能に応え、さまざまな姿へと変化する。だが、これは転生神により与えられ、固定された武装であり、使用者の闘争本能とは何の関係も無い。そして、少年Aが操る、その武装錬金が姿を現した。

 

 

「これが俺の貰った特典だ!! ミサイルランチャーの武装錬金、”ジェノサイド・サーカス”だ!!」

 

 

 ……おぞましい光景だった。大量に配置されたミサイルポッドの群だった。少年Aの立っている周囲にそれが展開されていた。そして広場の一部がミサイルポッドに埋め尽くされ、それを放つだけで全てを破壊しつくすだろう。だがなぜか、それを見た少年Bは愉快に笑い、余裕を保っていた。

 

 

「クックックックッ、いやいや……、まさかこうなるとは、面白くなってきた……」

 

「アァーん? 何余裕こいてんだおめぇ!? 俺様の武装錬金を見た恐怖で、頭がおかしくなっちまったか?」

 

「あぁ、いや、笑いしかないな……。なぜなら、俺も似た能力を持っているからだ!! 見せてやるか、俺の”特典(アルター)”というものを!!!」

 

 

 すると少年Bの体から、大量の重火器が生え始めた。全身を重火器に埋め尽くし、柱のように立ち尽くすガタイのいい少年B。その姿はまさに、人間破壊兵器と言っても過言ではなかった。

 

 

「これが俺の特典……、アルター、”殲滅艦隊(ゴーランド・フリート)”!!」

 

「な、にぃ!? 俺の特典(のうりょく)とそっくりだ……!?」

 

 

 それは漫画版スクライドに登場する人物、ハーニッシュ・ライトニングが操っていたアルター能力。いわく無敵、いわく最強。そう呼ばれたほどの能力だった。重火器による大量破壊を前提にしたアルター。ジェノサイド・サーカスに近い特性を持つ、破壊の化身となるものだ。

 

 近い能力者同士の戦い。両者とも動かずに、静かに、何かを待つように、たた立っているだけだった。そこに、一枚の葉っぱが落ちてきた。それが両者が立っている、中央の地面に触れると、両者は能力名を叫んで攻撃を開始した!

 

 

「”ジェノサイド・サーカス”!!」

 

「”殲滅艦隊(ゴーランド・フリート)”!!」

 

 

 その号令と共に、すさまじい破壊音が鳴り響く。静かだった世界樹前広場が、一転火の海へと変わってしまったのだ。焔はこの光景を見て、過去の出来事がフラッシュバックしたのだ。

 

 あの時と同じ、二人の少年の戦闘。そこから始まった大規模な破壊。街の崩壊。街と共に滅びていく人々。自分を守ろうとして、命を落とした両親。それを見て、焔はたまらず叫び声をあげていた。悲痛な叫び声だった。

 

 

「や、やめろ!! やめるんだ!! そんなことをすれば、この街が破壊されてしまうではないか!!」

 

「誰だか知らねぇが、危ねぇと思うならここから消えな!!」

 

「こうなった以上、俺を止めることはできんぞ!」

 

 

 まるで話を聞いていない。話を聞くよりも、戦闘のほうが大事なようだった。そこには、大量のミサイル群を全身に受けているのにも関わらず、さほどダメージがなさそうな少年Bと、その逆に、ミサイルの雨を先読みしながら回避し、自分のミサイルで打ち落とす少年Aの姿があった。

 

 しかし、広場はすでに破壊しつくされ、もはや完全に別の場所のように変わり果ててしまった後だった。焔はなんとか戦闘を止めようと、必死に叫ぶ。自分が何をしたというのだ、なぜこのような仕打ちをするのだと。

 

 

「やめてくれ! なぜこんなことをするんだ!! 何の恨みがある!! 私はただ、普通に生活していただけだ!!」

 

「恨みなんぞない、ただ、目の前に敵がいるだけだ!!」

 

「危ねぇから消えろっつってんだろ!! 死にてぇのか!?」

 

 

 その会話後、さらに戦闘が激しくなり、加速していく。ミサイル群とミサイルの雨の衝突。空中、地上、ありとあらゆる場所で爆発が起きていた。少年Bが立っていた場所は、完全に破壊しつくされ、何も残っていなかった。

 

 それだというのに、少年Bはやはり元気そうに、少年Aに対して攻撃を行っているのだ。少年Aも、回避と相手のミサイルの打ち落とし、無傷で応戦していた。

 

 爆音と轟音が鳴り響く広場は、もはや爆発と発生した立ち込める煙以外、何も見えなかった。焔はもはやしゃがみ込んで、泣き崩れていた。どうしてこうなってしまったのか、あの時と同じくこの場所も、何もかもを破壊されてしまうのかと。

 

 

「なぜ……なぜなんだ……どうして……」

 

 

 爆発の中、ただ泣くことしかできない焔。もはやなすすべは無い。どうして、なぜ。何度考えても、焔が欲した答えは出なかった。さらに、焔の近くでミサイルが着弾し、焔は吹き飛ばされた。階段近くの壁に、背中を打ちつけ、力なく横に倒れることしかできなかった。

 

 

「もう……やめてくれ……」

 

 

 爆発で吹き飛ばされた痛みに耐えながら、大規模な戦闘により見るも無残な光景を、焔は見ているしかなかった。もう終わりだ、あの時のように、何もかもをまた失うだけだ。もう焔は完全に諦めてしまっていた。だが、そこに天をも焦がすほどの膨大な炎が、二人の少年の中心に巻き起こったのだ。

 

 

「何!? これはなんだぁ!?」

 

「ぐおおお……!?」

 

 

 そこの炎の中に、二人の少年が立っていた。赤い鉢巻の男子、熱海数多。そして星のアクセサリーを身につけた少年、赤蔵覇王。その二人が炎の中で静かに立っていた。怒りに燃えながらも、その怒りを抑えながら、その場所に立っていた。そしてその巻き上がる炎は、彼らの怒りを表すかのように、轟々と燃え上がっていた。

 

 

「兄……さん……」

 

「よー、わりーな、遅れちまった」

 

「怪我してるみたいだね、治療しよう」

 

 

 数多は遅れたことを謝罪し、覇王は焔の怪我を巫力を使って治療する。その突然の来訪者に二人の転生者は、戦いに水を差されたことで怒りの声をあげていた。

 

 

「おめぇら!! 俺様の邪魔をするんじゃねぇ!!」

 

「なかなか面白い戦いだったのだが、こうも邪魔されてはかなわんというものだな!」

 

「……あー? 周りを見ろや……。テメェらの戦いで、ひでー事になってるじゃねーかよ……」

 

 

 その二人の発言に、怒りの炎に燃える数多。この二人の戦いで、広場のありとあらゆる場所が、完全に破壊しつくされていたのだ。数多は焔をその場に寝かせ、戦闘態勢に移る。そして覇王もこの戦いに怒りを覚えており、確実に倒す手に出た。

 

 

「ひでーことをしやがるぜ……。まったく久々の戦闘だっつーのに、胸糞悪いぜ」

 

「本当に久々だ、こんなに気分が悪いのは……。S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)O.S(オーバーソウル)……」

 

 

 今の覇王のO.S(オーバーソウル)は、いつもの赤き巨人であるS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を空気を媒介に、具現化させるものではなかった。圧縮されていくその膨大な巫力。シャーマンキングにて、最強と呼ばれ、無双を誇ったO.S(オーバーソウル)。宇宙にある衛星砲からの爆撃すら、無傷で耐えるその姿。それが甲縛式O.S(オーバーソウル)、その名は……。

 

 

O.S(オーバーソウル)、”黒雛”……。お前らにはもう、手加減する気はない……」

 

「馬鹿な!? ハオだと!?」

 

「どういうことだ……!!?」

 

 

 覇王のその姿に、恐怖と戦慄を覚える二人の転生者。その姿は背中から回り込むように、長いアームが生え、鋭い爪を覗かせている。尻尾のようなパーツを背中から一本生やし、その左右の上段に、二本の蝋燭が装備されていた。これが最強のO.S(オーバーソウル)、黒雛の姿だ。最強のO.S(オーバーソウル)が今、ここに君臨したのだ。

 

 

「僕はあのデカイのをやる、しぶとそうだしね。……熱海先輩は、そっちを頼んだ」

 

「そうだな、こっちは俺に任せときなー!」

 

 

 両者が衝突し、戦いの火蓋は切られた。全てを破壊しつくすミサイルの豪雨が飛び交う。そしてそれを向かい撃つ二人。その傍らで、上半身を起こし、壁を背にもたれかかる少女が、ただそれを見てるしかなかった。

 

 

…… …… ……

 

 

 世界樹前広場にて、二人の転生者の少年が戦闘を繰り広げたいた。

 

 その少し前、熱海数多は妹の約束のため、その広場へと向かっていた。その途中で、ある人物に出会ったのだ。それが赤蔵覇王であった。

 

 覇王は今世にて、アルカディア帝国へと赴いた時、この数多と知り合い、友人となっていた。また、麻帆良学園本校男子中等部の先輩と後輩という仲でもあり、たまに学校で話したりもしていたのだ。数多は時間に余裕があると考え、少しだけ話そうと考えたのだ。

 

 

「よぉー、覇王じゃんかよ、元気してっかー?」

 

「おや熱海先輩、こっちはまあまあさ。そちらも元気そうでなによりだね」

 

「まーな、しかしここは平和だねー」

 

「表向きにはね、それにこの前ひどい事件があったし、一概にそうとも言えなくなって来てるかもしれないよ?」

 

「ひどい事件?」

 

 

 数多は男子中等部で生活しており、さほどそこから出ない。妹の焔とも連絡は取り合っているのだが、その事件のことは聞かされていなかった。

 

 

「女子寮に下着泥棒がでてね、それが転生者の仕業だったのさ」

 

「なん……だと……」

 

 

 数多はショックだった。まさかそんな事件があろうとは思っても見なかった。そして女子寮ならば、妹である焔も被害にあっている可能性を感じ、少し頭にきたようだった。

 

 

「その犯人を、一発殴っていいかなあー? ほんのちょっと、なでるように殴るだけだからよー!」

 

「もう十分僕らが殴ったし、女子たちも殴ったみたいだから、それ以上は必要ないと思うけどね」

 

 

 その犯人はすでに覇王と友人の状助にボッコボコにされていた。さらに、その盗んだ下着を返した時に、女子にもボコボコにフクロにされたようだった。だからもう、これ以上殴る必要はないと、覇王は言ったのだ。

 

 それに、あの後犯人は特典も無くなり、女子にボコボコにされた恐怖で、女性恐怖症となってしまったようなのだ。そういった理由があるので、それ以上するとかわいそうだなーと、覇王は考えたのだ。

 

 

「そうかー? ならいいけどさ……。妹もそのことは言ってくれなかったし、気がつかなかったぜ」

 

「まあ下着が盗まれるなんて、少し恥ずかしいだろうから、しかたないんじゃない?」

 

 

 まあ、こんな感じで数多は会話していたら、妹との約束の時間が少しだが過ぎてしまっていたのだ。やべぇー!と思い、急遽、その待ち合わせ場所へと移動しようとしたその時、その待ち合わせ場所付近から巨大な爆発音が響き渡った。覇王も数多も、驚き戸惑った。まさか、この麻帆良で転生者同士が戦っているのではないかと。

 

 

「な、なんだこの爆音は!? 尋常じゃねーぞこれ!?」

 

「まさか、転生者が戦闘を始めたのか!?」

 

「お、おいやべーぞ!あの場所の辺りに妹が居るかも知れねぇ! 急がねーと!!」

 

「待つんだ熱海先輩、僕のS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)に乗って飛んでいった方が早い!」

 

 

 その爆音はやむことなく、さらに激しさを増していくばかりだった。さらに、約束した場所である広場からは、すさまじい煙とともに、大規模な爆発が起こっていたのだ。

 

 数多は焔が待っているのではないかと心配になり、急いで駆けつけようとした。そこで覇王は、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)O.S(オーバーソウル)し、それに乗って空から移動することを提案したのだ。数多は考えることもせず、それを承諾した。

 

 

「おう、すまねーが任せたぜ!」

 

「もう準備はできている、さぁ乗るんだ」

 

 

 しかし、実は数多にはS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を見ることが出来ない。だから覇王の横に移動したのだ。すばやくS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)の左手に乗った二人は、すさまじい速度で飛び立った。そしてその時、二人は上空からその広場を見た。

 

 だがそこには、普段の静かな広場ではなく、悲惨な光景が眼下に移っていた。すさまじいミサイルの群と同じくミサイルの雨が、衝突して大規模な破壊が発生していたのだ。

 

 広場は無残なことになり、原型をほとんどとどめていなかった。数多は妹の焔を発見したが、その直後ミサイルが焔の近くに着弾し、その爆発で吹き飛ばされた。

 

 そして、焔は広場の階段近くにある壁に衝突し、横たわってしまっていたのだ。数多はその光景を見て、完全にキレていた。だが、平常心を保つことは忘れてはいない。心の強さとは、自らを抑え、それを自らの力へと換えることなのだから。

 

 

「俺が炎を出す! 俺の炎なら、広場を破壊せずに済む。奴らのど真ん中の花火の中に降り立つぞ!」

 

「炎で彼らの気を引いて、一度戦闘をとめるわけか。わかった、中央に下りたとう」

 

 

 熱海数多の能力、それは真の熱血(パシャニット・フレイム)だ。父親である熱海龍一郎が、修行の末、完成させた境地の一つでもある。真の熱血とは、自らの感情や思いを燃焼させることで、炎を発生させるというものだ。

 

 その炎は特殊であり、自らが定めた存在のみに熱量を与え、炎上させることができるのだ。なぜなら、自らの感情で生み出す炎であり、この世界の自然現象ではないからだ。その力ならば、熱量を感じさせない見掛けだけの炎を作り出し、広場を傷つけずに派手に炎上させれるのだ。

 

 そして、現在へといたるのだった……。

 

 

…… …… ……

 

 

 

 転生者の少年Aと少年Bは戦慄していた。なぜなら目の前にあの麻倉ハオにそっくりな少年が、最強のO.S.(オーバーソウル)黒雛をまとっていたからだ。そして、覇王は宣言どおり、ガタイのいい少年Bへと攻撃を開始した。

 

 

「ハオ……、貴様を倒さなければならないなら、倒すしかなかろう。”殲滅艦隊(ゴーランド・フリート)”!!」

 

「その程度の攻撃で、僕を倒す気だというのなら、笑えない冗談だ」

 

 

 少年Bの号令とともに、おびただしいミサイルが全身から発射された。しかし、そのミサイルの雨の隙間を潜り抜け、覇王は高速で飛行し、少年Bへと近づいていく。

 

 

「ぬう、あたらぬなら、さらに数を増やすまでだ!!」

 

「くだらない、諦めて潔く燃やされてしまえよ」

 

 

 少年Bは、さらに発射するミサイルの数を増やした。覇王はそれすらも簡単に回避していく。だが、そこに特大のミサイルが覇王に接近していた。少年Bの切り札らしき、大型のミサイルだった。しかし。

 

 

「無駄なことを、衛星砲の爆撃すら効かぬこの黒雛に、その程度の能力で敵うと思うのか」

 

「な、何だと……!? バカな!? これほどだというのか!?」

 

 

 覇王はそう言ってのけると、その大型ミサイルを黒雛のアームで握りつぶし、爆発させたのだ。少年Bはその光景を見て、恐怖の混じった表情で、驚くことしかできなかった。

 

 そして爆発の煙を衝きぬけ、少年Bの近くまで接近したのだ。その直後に、覇王は黒雛のアームで少年Bの腹部を串刺しにし、炎上させた。

 

 

「ガ、グアアアアアアアアアアアアガアアアアアアアアア!!!」

 

「ふん、最初からこうしていろ」

 

 

 少年Bは炎上しながら、炎に焼かれる苦しみと、腹部を串刺しにされた痛みにより、絶叫をあげていた。それをうるさそうに聞きながら、つまらないやつを倒したと、覇王は考えていた。

 

 そう思考しながら、少年Bを一度殺した後、黒雛を解除し、普段のS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)O.S(オーバーソウル)しなおす。そして、いつもどおり特典をS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)に喰わせ、生き返らせたのだ。もはや何度目だろうかと思い、手馴れた作業のようにそれを行う覇王だった。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 覇王が少年Bと戦闘を開始した直後、数多も少年Aと戦闘を始めていた。少年Aは相手が覇王でなくて、心底安心していた。なぜなら覇王にはミサイルが通用しないことぐらい知っていたからだ。だから、自分よりも年上らしきこの男子が相手だということに、余裕を感じていたのだ。

 

 

「俺様がおめぇみてぇなやつに、負けるわけがねぇ! 邪魔をするなら消えろ!!!」

 

「あぁー、そう上から目線だと、足元が見えなくなるぜ?」

 

「はっ、俺様のジェノサイド・サーカスに勝てるかよ!!」

 

 

 少年Aはそう言うと、大量のミサイルポッドから、雨あられのようにミサイルを発射した。そして全ての目標を数多へと向け、そのまま着弾するのを微笑しながら待っていた。だが、そこで奇妙な現象が発生したのだ。

 

 

「”真の熱血(パシャニット・フレイム)” !うおおおおおおおお!!」

 

「な、なんだこれは!? どうなってやがる!!??」

 

 

 大量のミサイルが数多に着弾する前に、数多の周囲に膨大な爆炎が生み出されていた。そして、その炎がミサイルを飲み込むと、ミサイルが炎上して燃え尽きたのだ。少年Aは驚いた。なぜならミサイルが炎にあぶられても爆発せず、灰となって消えていったからだ。

 

 

「俺様のジェノなんとサーカスがなんだって?」

 

「や、野郎ゥゥゥゥゥゥ!! ならばこれならどうだ!!!!」

 

 

 少年Aは先ほど以上のミサイルの豪雨を数多に向けて発射した。数多は少年Aに近づくため、地面を蹴って移動した。

 

 その大量のミサイルは、またしても数多が放出した炎により、焼却されて消滅していく。少年Aは完全にあせっていた。自分が選んだ誰にも負けないはずの最高の特典が、こうも無効化されてしまっていたからだ。

 

 

「オラァ!!!」

 

「グッ、あたんねぇよ!!!」

 

 

 数多は少年Aに接近し、その拳を少年Aの顔面へと突きつけた。しかし、少年Aはそれを回避したのだ。そして、少年Aは、追撃のミサイルを繰り出す。数多はそれを炎上させて消し去り、虚空瞬動を用いて移動し、少年Aを逃がさぬよう射程を保つ。

 

 

「なんで俺様のミサイルが爆発せずに灰になるんだよ!? ありえねぇ!!」

 

「そんぐれー自分で考えな!! オラオラオラオラオラァ!」

 

 

 数多は何度も拳を少年Aへと打ちつける。しかし、それすらも少年Aは回避して見せたのだ。数多は少年Aの能力に、予知か攻撃がはっきり見える能力を持っていると考え始めた。

 

 また、少年Aは自分のミサイルがまったく通用しないことに、もはやパニックになりかけていた。さらに近距離を保たれてしまっているため、ミサイルを発射することができずにいたのだ。

 

 

「考えてもしょうがねーな、一つ一つ試してみるか!」

 

「ふざけんなぁぁああああ!! 俺様が主役だぁぁあああ!! くたばれぇぇ!!!」

 

 

 もう少年Aは自暴自棄となり、大量のミサイルを数多へと放った。数多と少年Aの距離は近く、数多に命中して爆発すれば、少年Aも無事ではいられないというのにだ。

 

 つまり、それほどまでに少年Aは、精神的に追い詰められていたのだ。そしてそのミサイルが数多に触れる直前に、恐怖のあまり少年Aは目を閉じてしまった。命中すれば大爆発が発生し、自分もかなりダメージを受けてしまうからだ。

 

 だが、そのミサイルすらも、全て燃え尽き灰となった。少年Aは失念していた、そうなることすら予想できないほど、完全に混乱していたのだ。そして、その目を閉じた瞬間が隙となり、数多の渾身の一撃を受けることになる。

 

 

「ハイパーナッコォォォーッ!!」

 

「ガッハッ……!?」

 

 

 数多の拳には炎が発生しており、殴られた痛みだけでなく、その熱のダメージをも与えるのだ。その一撃は少年Aの顎に決まり、少年Aはその痛みと、頭が揺らされたせいで、感覚がおかしくなってしまったのだ。さらに、数多は連続して拳を打ち放ち、少年Aを殴り続ける。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラァァッ!!」

 

「ギイイイアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

 

 高熱の炎をまとった拳を、何度も打ち付けられる少年A。もはや完全に再起不能なレベルにまで殴られていた。数多は死なない程度にはとどめているが、それでも本気で殴り続けているのだ。

 

 妹が怪我を負わされ、怯えていたのだから当然である。数多は怒りを面に出していなかったに過ぎないのだ。そして、その拳の連打は終わりを告げ、数多は最後の一撃を少年Aへと繰り出す。

 

 

「オラァァァァッ!!」

 

「ウギャアアアーーーッ!?」

 

 

 顔面を殴り飛ばされた少年Aは、少年Bの特典を奪い終えた覇王の足元に転がった。覇王はその少年Aに止めを刺し、少年Bと同じように特典を奪い、そのまま面倒そうに生き返らせた。

 

 

「ナイスだったよ先輩、いいところに飛んできた」

 

「狙っては居なかったぜ? いやでも助かったぜ。あいつ目を瞑ってくれたからよー、その分楽に殴れたってわけだ。でなけりゃとりあえず、死角に回り込まなきゃならなそうだったかんなー」

 

「ふむ、攻撃が見えるような能力持ちだったんだろうか」

 

 

 少年Aの特典の一つは動体視力の向上であった。それは動くものがはっきり見えるということだ。だから高速で動く数多の拳にも反応できたのだ。だが、目で見ていなければ意味が無い。

 

 少年Aは目を瞑ってしまったが、数多はそれが無ければ目では届かない死角に入り、倒そうと考えていたのだ。

 

 

 さて、少年Aも疑問に感じた、ミサイルが爆発せずに炎上し、灰となって消えた現象。別に難しいことではない。真の熱血は感情を燃料として発動する発火現象である。

 

 いかなる存在をも、目標として捕らえれば燃やすことができ、それは自然現象としての発火ではないのだ。複数のパーツからなるミサイルという兵器ではなく、”ミサイル”という単体の存在を燃やし尽くしたということである。だからこそ爆発せずに灰となって消えたのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

 戦いは終わった。覇王は転生者らを睨み監視しており、数多は壁にもたれかかった焔に近寄った。

 

 

「よう、ひでー目にあっちまったな、悪かった」

 

「大丈夫……というほどでもないが、とりあえず、ありがとう」

 

「いやー覇王と途中会っちまってさー、ちーと会話してたら遅くなっちまったんだわ。ほんと悪かった!」

 

「普段なら怒るところだが、今日は助けてもらった、だから気にするな……私も気にしない」

 

 

 数多は遅れた理由を述べ頭を下げに下げていた。焔も助けてもらったし、怒る気はないようだ。そこで第三者が現れた。仮面の騎士メトゥーナトと、それに抱えられてるリーゼント、東状助だった。

 

 

「君たち、大丈夫か? おや、数多か。元気そうで何よりだ」

 

「よーおっちゃん! そっちもいつもどおりっぽいな!」

 

「あれは確か皇帝の部下の一人だったか」

 

「どうも……」

 

「来史渡さんよぉ~、俺なんで連れてこられたんスか?」

 

 

 状助は強制的にメトゥーナトにつれてこられたようで、どうして連れて来られたかがわかっていないようだった。覇王はそれを見て愉快に笑っており、状助は覇王が居ることに驚きつつ、いつものことかとため息をついていた。

 

 

「学園の魔法使いもそろそろ来るだろう、まあ君たちは帰ってもいい。私がとりあえず報告しておこう」

 

「おう? いーんですかい、それで?」

 

「それは助かる。せっかくの休日なんだから、つかまったら大変さ」

 

「お、俺はどうなんスかねぇ~?」

 

 

 状助以外はこのまま解散してもよいとメトゥーナトに説明され、それを喜んでいた。メトゥーナトは、その場で状助に連れてきた理由を説明し始めた。

 

 

「すまなかったね、状助君。君にはこの広場を”直して”ほしい。ちゃんと依頼料は出す、頼まれてくれるか?」

 

「確かにこりゃひでぇ~ぜ。ま、そうなら仕方ないスね! クレイジー・ダイヤモンド!!」

 

 

 メトゥーナトがなぜ状助をこの場につれてきたかというと、広場の修復であった。爆音や轟音が鳴り響いていたので、広場が破壊されていることを考えたメトゥーナトは、状助に連絡し、そのまま連行したのだ。状助はそれを聞くと納得し、能力を使って広場を修復した。

 

 

「状助はほんとチートだね、クレイジーだ。僕も生物以外の修復はできない」

 

「いやホントすげーな、一瞬で直っちまったよ」

 

「一体どうなっているのだろうか……」

 

「そんな褒めねぇでくれ! 照れるじゃねぇかよ!」

 

 

 クレイジー・ダイヤモンドの能力により、破壊された広場は時間を巻き戻すかのように、修復されていった。広場は一瞬にして元通りに戻り、破壊されつくした広場ではなく、元のきれいな広場へと修復されたのだ。

 

 そしてメトゥーナトが戦闘を始めた転生者二名に拘束魔法を使い確保していた。この場で魔法使いが来るのを待つようだ。

 

 

「大体の経緯は彼らから聞くとしよう。君たちは解散してくれてもかまわない」

 

「んじゃ、けぇりますか~!」

 

「ありがてぇーぜ! おっちゃん!!」

 

「とりあえず、別の場所へ行こうか。さあS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)に乗るんだ」

 

 

 移動のためにS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)O.S(オーバーソウル)する覇王。戦闘以外は基本的にタクシー代わりにされるのがS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)の宿命なのだろうか。まあ、空も飛べるし便利なので、しかたないのではあるが。しかしそこで、焔はそのS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)に乗ることを躊躇した。

 

 

「お、恐ろしい……全ての炎の精霊の主に乗るなど……」

 

「おい覇王!妹をビビらせてどうすんだよ!!」

 

「え?なんで驚いているのか、さっぱりわからないんだけど」

 

 

 焔は”原作どおり”炎を操る。そして炎精霊化もできる。つまり炎の精霊には敏感なのだ。そこに五大精霊の一体である、全ての炎の源たるS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)が目の前に現れればどうなるだろうか。そりゃビビる。最強にて最大の炎の精霊なのだから。それに足をつけて踏みしめろなどと、焔にはできるはずがないのだ。

 

 

「魔法世界では、ある程度遠くに感じていた力だったが……。そしてなぜか最近、この近くで全ての炎の精霊の主が動き回っていると思っていた。……だが、まさか”星を統べるもの”がすぐ近くにいるとは……」

 

「”星を統べるもの”? なんスかその厨二病っぽいネーミングは?」

 

「それ、僕の異名なんだけど」

 

 

 覇王は厨二病な異名である”星を統べるもの”と魔法世界で呼ばれ、有名なのだ。五大精霊S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を操る、不敗の少年としてとても人気者なのだ。

 

 しかしまさか、ここで状助にそれがバレるとは思っていなかった。ちょっとショックだった。まあ、なじってきたら威圧してしまえと考える、この覇王は本当に最近ドSなのだ。

 

 

「え? マジかよグレート……」

 

「シャーマンキング、星の王にもなってないのに、そう呼ばれるのは心外なんだけど」

 

「そ、それは申し訳ございませんでした」

 

「いや謝るのは覇王だろうが!!」

 

 

 覇王はG.S(グレート・スピリッツ)を見つけておらず、星の王になってないので、その異名は好きではなかった。むしろ煽られているんじゃとすら考えるほどだ。

 

 焔はS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を操る、星を統べるものである覇王を噂で知っており、尊敬の念があったので恐縮しているのだ。

 

 そして、別に焔を驚かせるつもりなど毛頭なかった覇王に対して、驚かせたのは事実だから謝れと数多は言っていた。

 

 ”原作知識”にて彼女が焔だとわかれば、ある程度察しがつくのだが、覇王は原作知識をほとんど失っているのだ。それに焔には転生者用の認識阻害がかかっているので、原作知識が残っている状助も、焔のことに気がつかないのだ。

 

 覇王はしかたなく、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)をぬいぐるみのような小さい姿にして、焔に手渡した。

 

 

「ほら、これなら怖くないだろ?まあ、しかたないね、とりあえず歩こうか」

 

「た、確かに、見た目だけなら怖くないないのですが……。圧倒的な存在感はいまだに残っている……」

 

「まあ、しょうがねぇスな、歩きますかね」

 

「だから覇王! 謝ってやれよ!! なぁー!!」

 

 

 いまだに数多は覇王に謝れといい続けており、覇王はもう半分無視していた。状助はその隣に続いて歩き始めた。焔は小さく人形のようになったS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を神妙な気分で抱え、数多の後ろをついていく。

 

 そして、とりあえず四人は、どこか適当なくつろげそうな場所まで移動することにしたのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 とりあえず休める場所へと移動してた四人は、適当な店に入り、適当な飲み物を注文するのだった。数多は先ほどの戦いで、目的をすっかり忘れていた。ここに来てようやく、数多はどうして焔と待ち合わせたかを思い出し、その内容を聞いたのだ。

 

 

「そーいや、なんか相談事あったんだっけ? ノーテンキなクラスに馴染めないとか?」

 

「確かに今まではそうだったが、今は少し違う」

 

「違う? どーしたんだ?」

 

 

 焔はぬいぐるみのようなS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を抱きかかえている。そして、それを眺めるように下を向き、考え込んだような表情をしていた。数多は今は違うといわれて、どうしたんだろうかと考えた。覇王と状助はそれを見ながら、静かに聞いていた。

 

 

「今まで私は、自分は”神に捨てられたもの”と考え、彼女たちを”神に選ばれたもの”だと考えてきた。それを妬ましいと感じていたのかもしれない」

 

「なーるほど。で、今は違うってーのは、どういうこった?」

 

「……あの二人の戦闘が始まって、ここも自分の街と同じようになると思った。そしたらここに住む人々も、誰もが私のようになってしまうと思った」

 

 

 焔は今まで自身の過去から”神に捨てられたもの”と格付けし、円満な生活をするのー天気なクラスメイトを”神に選ばれたもの”と格付けしていた。しかし、自分が過去に味わった恐怖の戦闘が、この場所でも起こることを知って、意見が変わったようだ。

 

 

「彼女たちの近くであの戦いが起これば、私のように”神に捨てられたもの”になってしまいかねない。いや、現に今日、それが起こってしまった」

 

「ふむ、確かにそうだなあ、迷惑な話だが、また起こるかも知れねー……」

 

 

 転生者はまだ、この麻帆良に大量に存在する。つまり、今日のような出来事が、もう無いとは言い切れない。むしろ、これからそういうことが増える可能性だって存在するのだ。

 

 数多の発言の後、焔は数多のほうへ向きなおして会話を始めた。その目にはもう、迷いは無かった。

 

 

「兄さんも知っているとおり、私は私のような過去を持つ子供が、なくなればいいと思っている」

 

「それは聞いたな。戦いで孤児となった子供が、いない世界になればいいって、いつも言ってたよな」

 

「だが私は同時に、平和に暮らす彼女たちを色眼鏡で見ていたようだ。私のよな過去を持たない、のー天気なやつらだと思い、勝手に拒絶していた」

 

 

 ”原作”でも焔を含めたフェイトの従者たちは、孤児が二度と現れない世界がほしくて、フェイトと共に世界滅亡の道を歩んでいた。それはフェイトと共に、多くの争いの残酷さを見て来たからなのだろう。確かにそう考えてしまうのも、しかたないことだった。

 

 だからこそ、その傍らで、3-Aのメンバーに嫌悪感を抱き、自分たちは彼女たちと違うという意思で、戦っていた。しかし、フェイトの従者たちは、そこに大きな矛盾が存在していることに、まったく気がついていなかった。

 

 そしてこの焔も、ある程度そういうものを見て来た。父親の龍一郎の同僚、ギガントを手伝おうと、戦場近くの医療テントの村を歩いたこともあった。フェイトがつれてきた孤児を、何度も見ていた。だからこそ、そういう考えにいたったのだった。

 

 だが、その矛盾に気がついた焔は、数多に対してしっかりとした声で告げる。自分でたどり着き、得た答えを。

 

 

「でも、それも今は違うんだろう?」

 

「今日のあの二人の戦いで、思い知らされた。そして同時に気がつけた。私のような孤児がなくなるということは、全ての子供たちが、彼女たちのような平和な暮らしをするということなのだと……」

 

 

 ”神に捨てられた”子供が出ない世界とは、つまり誰もが平和に暮らし、笑顔が絶えない世界だ。焔は孤児が出ない平和な世界になってほしいと思う反面、平和な世界のクラスメイトを拒絶していた。しかし、その矛盾に、今日の広場での転生者同士の戦闘で、気がつくことができたのだ。

 

 

「今までは、それに気がつかなかったのだ。自分の過去ばかり気にして、他人の過去ばかり気にして。まったく気がつけなかった……」

 

「でも気がついたじゃねーか。今日の出来事はひでーことだったが、得られるものもあったのは大きいかもな」

 

「……かもしれない。あの争いがなければ、私はずっとこの矛盾を抱えたままだった。あの争いで、どんな人でも、突然”神に捨てられる”ことを、知ることができたんだ」

 

 

 人間、生きていれば必ず悩みや壁にぶち当たる。平和な街ですら、突然事故にあって不幸な思いをする人もいる。神に選ばれることも、捨てられることも、きっと神の悪戯なのだろう。そして、神に捨てられた後、どうするかが問題なのだと、焔はそう思えるようになったのだ。

 

 

「まー、俺や親父もそこんとこ、けっこー気にしてた。相談されたら、ちょいとヒントぐらい出そうと思ってたのさ」

 

「やはりそうだったのか」

 

 

 数多と龍一郎は、そのことに気がついていた。だから何とかしてあげたいとも考えていた。しかし、それはきっかけを作ることであって、答えを教えようとは思っていなかった。自分で気がつくことが、最も重要だと考えていたからだ。

 

 

「焔はさ、過去ばっか気にしてたしよー。今はもう元気なんだから、少しぐれー楽しく暮らしてもいいじゃねーかって、よく親父と話してたぜ?」

 

「……そうか……。だから父さんは、私をここへ行かせたのか……。そして、こういうことが言いたかったんだな。兄さんの言うとおり、不器用な人だ……」

 

「ああ、不器用な親父だよ。強いけど、ホント不器用な、最強で最高の親父さ」

 

 

 答えは得た、大丈夫だよ。これから頑張っていくから。こう書くとそのまま死んでしまうかもしれない。だが、焔は自分で答えを見つけることができた。他人から教わるわけでも無く、自ら答えを出すことに、とても大きな意味があるのだ。

 

 そんな会話を静かに聞いていた状助は、涙を流して感動してた。いい話だなーと泣いていた。覇王も、その話を聞き入れて、静かに目を閉じていた。いい話だ、最高の家族じゃないかと。

 

 

「まだ、すぐには馴染めないし、彼女たちに対する気持ちも、すぐには変えられない。だが、なんとかやっていけそうだ」

 

「おう、その意気さ! 多くの友人を作れなんて言わねー、少しずつ変わっていけばいーのさ!」

 

「そうだね、少しずつ変わる意思が、重要さ」

 

 

 そこで覇王が会話に加わってきた。変わる意思が重要だと。覇王も1000年前転生し、一度本気で絶望したことがあった。だが、それも悪くないと意識を改めたら、別になんともなくなってしまった。住めば都という言葉があるが、まさにそのとおりだったのだ。その経験があるからこそ、出る言葉であった。

 

 

「僕もいろいろあった、そういう意識の変革はすぐにはいかない。だけど、変えられないことは無かった。無理せず、変えていけばいいと思うよ」

 

「……そうですね。流石”星を統べるもの”、ためになることを言ってくれます」

 

「それ、やめてくれないか?」

 

「あ、いや、申し訳ございません……」

 

 

 その”星を統べるもの”という異名は、覇王は本気で気に入らないのだ。G.S(グレート・スピリッツ)を持たない自分が、星を統べるわけがないと思っているからだ。

 

 ……実際は、星形のアクセサリーを大量に装備してるから、そんな名前で呼ばれるようになったのだが。そして、またしてもやってしまったと焔は反省し、小さいS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)をギュっと抱きしめて縮こまってしまった。状助はいまだに感涙にむせび泣いており、良い話すぎるぜー、と言っていた。

 

 

「いやーでも、悩みが解決してよかったよかった。あの二人はどうしようもなかったが、得るものがあって助かったぜ」

 

「まったくだよ。ただのはた迷惑な連中で終わらなくて、むしろよかったと思うべきかな?」

 

「どうあれ、私はもう二度と、あの光景は見たくはないぞ……」

 

 

 いやーほんと、あの馬鹿ども、どうしてこんな馬鹿な真似してくれたんだろうか。と数多と覇王は言いつつも、まあ、焔の悩みを解決する糸口を出してくれたことに、ほんの少し、雀の涙ほどに感謝しておいた。

 

 焔はもう、あの光景は二度と見たくないようだ。当然である。本気でトラウマなのだから。状助もようやく復活したようで、注文したジュースを飲んでいた。

 

 

「……こういう平和も、悪くないか」

 

「だろ? 今まで肩の力を入れすぎた分、ちったー楽に生きてみればいーんじゃねーかな?」

 

「そうだな、今は少しずつ、そうして行こうと思っている」

 

「……楽に生きる……か」

 

 

 焔はもう少し楽しく生きようと思い、心に誓ったようだ。しかし、楽しく生きるという言葉に、覇王は何か悲しいものを感じていた。

 

 

「覇王、どうかしたか?」

 

「いや、別になんでもない。楽に生きる、いい言葉だなと思ってね」

 

「楽に生きられりゃいいっスもんなぁー!」

 

 

 状助も会話に加わってきたようだ。だが覇王の気分は晴れなかった。その”楽に生きる”という言葉が似合うはずの”彼”が、どうしようもない駄目なやつだったからだ。そして、どうしてもっとしっかり”彼”を導けなかったのかを、覇王は考えてしまった。暗い考えで、暗い表情となった覇王を、状助は心配した。

 

 

「覇王よぉ~、どうしたってんだ? すげぇ気分が悪そうだがよぉ~?」

 

「ああ、何、少しいやなことを思い出しただけだよ」

 

「覇王、妹のようにおめーの相談にも乗るぜ?」

 

「私もです、あなたほどの人の悩み、さぞ辛いものでしょう」

 

 

 覇王はどうしようもなく自分を恥じている部分があった。それは兄弟間のことである。弟の陽を、少しでもまっすぐな人間に変えたかった覇王は、それがかなわなかったことを悔やんでいるのだ。

 

 大量に焼いてきた転生者と同じ思考を持ちながらも、自分と血を分けた陽を、何とかしたかったのだ。

 

 だが、それはできなかった。悲しいことだが、陽は自分を変えようとはしなかったからだ。覇王が今、最も後悔している部分は、そこなのだ。

 

 

「三人とも、気にする必要は無いよ。もう大丈夫だ」

 

「そうスかぁ? それならいいんスけど」

 

「大丈夫そうに見えねーけど、まあ本人が言うなら無理に聞き出すこたーしねーさ」

 

「本当に大丈夫なのでしょうか……。しかし、全ての炎の精霊の主、柔らかで暖かくて気持ちがいいな」

 

 

 焔この会話の中、ずっとS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を抱きかかえていた。ほんのり暖かく、やわらかいS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)に、もはや恐怖はなく、むしろ気持ちよさを感じていた。そんなS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)をもふもふして、喜ぶ焔は、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)がほんの少しほしいと思った。

 

 

「覇王様、この全ての炎の精霊の主、とても気に入ってしまいました」

 

「様はやめてほしいな、せめて”さん”にしてくれないか?」

 

「では改めまして、覇王さん。この全ての炎の精霊の主、少しの間貸してくれませんか?」

 

 

 焔は本気でS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)が気に入ったらしく、少しだけ貸してほしいと覇王に提案していた。覇王が様で呼ばれたことに状助は笑い、本物のハオみてぇだなと言っていた。

 

 覇王はその姿の状助を見て、あとでいじってやろうと考えていた。そして、流石にS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)は貸せないと断った。今、自分の持霊は、そのS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)しかいないからだ。

 

 

「すまないが、それはできないよ。今の僕には、彼しかいないんだ」

 

「そうですか……、申し訳ないことを聞いてしまいました」

 

「気にしなくていいさ。S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)はなんだかんだ言って、重宝するからね」

 

 

 重宝するっていう意味で、貸してほしいと焔は言ったわけではないのだが。覇王は戦闘以外は、便利グッズレベルでS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を操っているから仕方が無かった。

 

 状助もそを知っているので、いないと不便だなーと思っていた。焔はそう聞くと、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を覇王に手渡し、覇王はそれにお帰りと言っていた。そして、全ての注文したジュースも空になってきたことだし、そろそろ帰ることにする四人だった。

 

 

「今日は助かったぜ、俺が最年長だからおごらせてくれや」

 

「いいのかい? それは助かるよ。最近痛い出費をしてしまったからね」

 

「確かに痛かったぜぇ……」

 

「兄さんが払ってくれるのか、ありがとう」

 

 

 数多がジュース代を全部おごることにして、支払いを終えた。そして外に出れば、綺麗な夕日が出ていた。また、明日学校なので、今日はもう、みんな帰ることにしたのだ。

 

 別れの挨拶をして、自分の住む寮へと帰っていく、四人をオレンジ色に染める夕日が、眩しく輝いていた。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:少年A

種族:人間

性別:男性

原作知識:あり

前世:20代公務員

能力:武装錬金でのミサイル攻撃

特典:漫画武装錬金に登場する武装錬金、ジェノサイド・サーカス

   動体視力の向上

 

 

転生者名:少年B

種族:人間

性別:男性

原作知識:あり

前世:20代アルバイト

能力:アルター能力、殲滅艦隊(ゴーランド・フリート)

特典:漫画版スクライドのハーニッシュ・ライトニングの能力

   強い肉体

 

 

 




近い能力同士の熱い戦い
超絶的な戦闘力を持つ転生者でなければ、ある程度強い能力であり、一定の攻撃力を持つことができる
マイナーすぎて誰も選ばないが、遠距離で火力を持たせられる強い能力である

そして初黒雛が、まさかこのような場所で出ようとは
本来ならもう少し先まで取って置こうと思ってた


予想通りの扱いを受ける状助君だった

状助君はこういうことに使うために出したのではなく、単純に作者の趣味です
むしろ初期プロットでは、麻帆良での大規模な戦闘は無かったのです

あと二人の転生者も黒雛は見えません、黒雛という単語で、大体把握している程度です
でも状助には見えてます、スタンド使いで幽霊が見えるからです
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