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ここは墓守り人の宮殿の一角。
そこではアルカディアの皇帝の部下の一人である、亜人のギガントが完全なる世界の転生者と戦っていた。
「ぬう……、なかなか数が多い……」
はっきり言って、完全なる世界に肩入れする転生者は、かなり多い。
倒しても倒してもキリがない程には、転生者が大量に完全なる世界の仲間入りをしているのだ。
「彼らは何故”滅び”に力添えするのか…………」
ギガントは、転生者の数が尋常ではない量で現れることに、戦いながらふと何故だろうかと疑問に思った。
「”
しかし、疑問に思っている暇などなく、続々と襲い掛かってくる転生者。
それらを一気にひねりつぶす為に、ギガントは大技を繰り出す。
ギガントが巨大な足を石畳の床にたたきつければ、宮殿全体が震えるかのような巨大な揺れが発生。
転生者の足元に砕けた石畳が舞い上がり、それらが彼らに叩きつけられて吹き飛ばされた。
「皇帝陛下は”彼らに隠れて協力せよ”と申したが……、こうも”転生した者”が多いとなると……」
ギガントはアルカディアの皇帝から、”ネギたちのサポート”を命じられていた。
その命令により、こうして大量の転生者を再起不能にすることで、彼らの邪魔者を減らしているのだ。
「故に、ここでこやつらの戦力を削っておかねばならんな」
されど、倒しても倒しても出てくる転生者を前に、さらに戦力を削いでおく必要があると、強く思った。
故に、ギガントは全身全霊の力をもって、この連中を対処することに決めたのであった。
…… …… ……
時を同じくしてメトゥーナトと龍一郎も、オスティアの避難者が乗る飛行船を守護すべく、墓守り人の宮殿から湧き出る召喚魔を蹴散らしていた。
「ハアァァァァァッ!!!」
「おオォらアァァァァよオォォォッ!!!!」
超高速で剣を振りながら、気を凝縮した刃を無数に発生させて、敵を叩き切り落とすメトゥーナト。
競うように、まるで大砲から発射される一撃のような、すさまじい炎と衝撃を拳から打ち出す龍一郎。
両者のすさまじい攻撃により、召喚魔はまるで羽虫のごとく駆逐されていく。
「召喚魔の大群……殲滅させてもらうッ!」
「数だけだが、まあその数が厄介極まりねぇな」
それでも湧き続ける召喚魔を目の前にし、いつ終わるかもわからぬ攻撃を彼らは続ける。
正直言ってしまうと、彼らにとってはこの状況、もはや作業でしかない。
されど、敵の数は無限大。倒してもきりがないのである。
「おん? あの一筋の光はまさか……?」
そんな時、龍一郎がふと眼下を見下ろすと、一筋の緑色の輝きが見えた。
それはまるで流星が落ちるかのごとき勢いで、大量の召喚魔を吹き飛ばしながら、墓守り人の宮殿へと流れ落ちていったのだった。
…… …… ……
場所を移して墓守り人の宮殿の上空。
そこではカズヤと法が、あろうことかナッシュと睨み合いをしていた。
「直一の言った通り、こいつらちょっかいかけてきやがったぜ!」
「よほど”向こう側”の力が欲しいんだろう」
カズヤたちは直一から、ナッシュらの情報を伝えられていた。
直一が随分と時間をかけて調べていたことは、ナッシュの行動であった。
ならば、必ずカズヤと法に再び接触してくると警告されていた。
そして、今、この瞬間、ナッシュが彼らにちょっかいをかけてきたのだ。
「ほう? この私に逆らうと? 神から得た力を持つ、このナッシュ・ハーネスに」
「んなこたァ俺らも同じだろうがァッ!!」
「逆らうに決まっているッ!!」
ナッシュはカズヤと法を前にしながらも、余裕の態度で見下す。
最強に等しい特典を神から与えられ、負けなしで生きてきたからこその自信だ。
だが、それはカズヤと法も同じことだ。
カズヤも法も、神から特典を貰って転生してきた。
つまり、ナッシュが言うことはカズヤたちにも言えることなのだ。
故に、カズヤは叫ぶ。テメェと同じだと。
故に、法も断言する。お前には従うことは決してないと。
「テメェの考えなんぞ知ったことかッ! 売られた喧嘩は買わせてもらうッ!!」
「ああ、そうだ! 我が友人たちを傷つけた罪は処断せねばならない!」
目の前のいけ好かないクソ野郎が何を考え何をしようとしているのかなど、カズヤには関係ない。
ただただ、目の前のクソ野郎がご丁寧に喧嘩を売ってきた。
だから、それを買うだけだ。
法もまた、目の前の男を許さない。
どんな理由があるにせよ、メガロのゲートや、新オスティアで部下を暴れさせた。
それによって仲間や友人が危険な目に遭い、被害が出た。
その邪悪な行いに、ケリをつけなければならない。
「だから!」 「故に!」
そう。それ故に、それだけに。
彼らは周囲の岩礁をアルター粒子と変えて、自らの
「テメェを!」 「貴様を!」
カズヤはシェルブリット第二形態を天に掲げ、法は絶影を真なる姿へと変え。
目の前の余裕をこきまくって見下した目でこちらを見るいけ好かねぇナッシュへ、両者は睨み、叫ぶ。
「「倒すッ!!!」」
お前は必ず倒すと。
両者は怒りを帯びた声で叫んだ。宣言した。宣戦布告だ。
「しかし、これならどうです?」
されど、ナッシュの余裕は崩れない。
崩れないどころか、さらに余裕の態度が増すばかり。
余裕で、両手を前に出してニヤニヤと笑いながら、目の前の二人に言葉を投げる。
「ハハハハハハッ!! ハハハハハハハハッ!!」
「…………!!」
すると、先ほどまで静かに待機していたナッシュの部下二人が、再び動き出してナッシュの前に立ちふさがる。
笑う男は特典であるアルター、スーパーピンチを呼び出し目の前に呼び出し、黒い鎧の男も大剣を構えた。
「チィッ! またこいつらかよ!!」
カズヤは何度もやりあったこいつらに、嫌気がさしたような声で悪態をつく。
「”衝撃のファーストブリット”オォォッ!!!」
が、次の瞬間、弾丸のごとく飛んでくる男が、ナッシュの部下の一人が操る
「ハハハハハッ!?!?!?!」
笑う男は強烈な強襲に驚き、一瞬笑い声を途切れさせた。
「直一!!」
「この笑う奴は俺に任せなッ!」
それをなした男こそ、猫山直一。最速を自称する男だ。
カズヤは直一を見てその名を叫ぶが、直一はすぐさま笑う男にも蹴りを放ち、この相手は自分がすると叫びながら離れていった。
「ほお~、まだお仲間がいたのですか」
その様子を気にする様子もなく、淡々とした態度で見ているナッシュ。
まったくもって直一の登場に、動揺すらもしていない。つまり計画に支障はないと言うことだ。
「さて、では茶番はもう終わりにしましょう。そして、この私、ナッシュ・ハーネスが世界を牛耳るのです」
「何勝手なこと言ってんだ?」
そして、その計画こそが、ナッシュがこの火星の王になることだ。
さらに最終的には地球をも掌握し、すべてを手に入れることだ。
ナッシュがそんなことを言うと、カズヤは煽るように言葉を吐き捨てる。
「…………!!!」
「っ! 黒い鎧の野郎か!」
そこへ黒い鎧の男が、大剣を構えながらカズヤに突撃してきたのだ。
カズヤも咄嗟の男の行動に驚くも、だったらやってやると防御の構えを取った。
「……!」
しかし、黒い鎧の男は真なる絶影の体当たりで吹き飛ばされ、どちらも船の屋根から離れていくではないか。
「俺はあの黒い鎧の奴を相手にする」
「あのイケすかねぇナッシュなんたらは譲ってくれるってのか?」
スッとカズヤの横から前に出てきた法が、アレの相手は俺だと言い出した。
ならば、目の前のクソ野郎のことナッシュは、カズヤが相手にすることになる。
それでいいのかとカズヤは法に尋ねた。
「俺には少なからずではあるが、あの男に因縁がある。お前が奴に因縁があるならば、お前が相手をするのが道理だ」
「道理だか因縁だか知らねぇよ! だがあの野郎は俺に喧嘩を売ってきやがったッ!!」
法は黒い鎧の男には因縁めいたものがあると語りだした。
あの黒い鎧、あれは確かに過去、麻帆良で一度戦ったことがある。
何故あの男がナッシュとかいう男の手先になっているかはわからないが、とにかく再び決着をつける必要があると法は思っていたのだ。
そんな法の言葉を聞いたカズヤは、因縁とかどうでもいいと叫ぶ。
カズヤがナッシュと戦う理由、それは喧嘩を売られたからだ。
無関係なポケモンの里を襲い、それを自分のせいだとほざきやがったあの野郎。
調子こいてこっちを見下した態度を見せる、あの男だけは絶対に許しちゃおけねえ。
「だから買うのさッ! 喧嘩をなァッ!!」
「喧嘩? 喧嘩ですって? 私の野望をそのような低俗な言葉に置き換えないでほしい」
絶対に許さねえ。このメガロなんたらのナッシュだけは絶対に許さねえ。
売られた喧嘩は絶対に買ってやる。カズヤはそう叫び、ナッシュを睨みつける。
だが、喧嘩と聞いたナッシュは、そんな言葉では自分の野望は片づけられないと言い出す。
この世界を、旧世界をも支配する、その野望がただの喧嘩な訳がないのだから。
「喧嘩は喧嘩だ! テメェが売った! 俺が買ったッ! だからボコす! 徹底的にだッ!!」
「ならば、貴方にも私の力の前にひれ伏させてあげましょう」
「やってみろオォォよオォォォッッ!!!」
されど、カズヤはそれでも喧嘩と言い放つ。
ナッシュが売った喧嘩であり、それを買ったのが俺だと。
故に、喧嘩としてボコボコにぶちのめす。これは決定事項だ。
ナッシュはカズヤの強気の姿勢に、そこまで言うなら逆に返り討ちにしてやろうと、余裕の様子で言葉を放つ。
カズヤはその言葉が喧嘩の始まりの合図と受け取り、拳を前に突き出してナッシュへと襲い掛かった。
「行くぞッ!!」
法も黒い鎧の男へと絶影を迫らせ、攻撃を開始した。
ナッシュと黒い鎧の男は戦いが始まったのを察し、船から離れて彼らを誘導するように移動を開始したのであった。
…… …… ……
時を同じくしてマンタ型の飛行船の内部。
静かだった外が、急に騒がしくなったことに、誰もが動揺をし始めていた。
「外では戦いが始まったようです」
「だ、大丈夫なのか……!?」
外からの爆音、それは戦闘の始まりを告げる音だった。
その音が戦いの狼煙であるのを察したのは、ロボの茶々丸だった。
茶々丸の言葉に、不安を覚える千雨。
戦っているのは十中八九間違いなくカズヤと法であり、その二人に対しての心配の言葉でもあった。
「何かあれば私たちが守護ります」
「まかせてよね!」
「小生も微力ながら尽力いたしますので」
そんな不安な様子を見せる千雨や、そのクラスメイトたちへと、高音は自分たちが守護すると宣言。
同調するかのようにアーニャも声を上げ、自信満々な表情を見せた。
同じくマタムネも彼女たちを安心させるかのように、自分も力添えをすると述べた。
その彼らの声に、暦や環なども小さく頷き、一致団結する姿を見せたのである。
「ナッシュ様の命令により、あなた達は私が相手になりましょう」
だが、突如として男の声が聞こえてきた。
知らない男の声が聞こえたと思えば、瞬時にマンタ型飛行船の天井が剥ぎ落されたのだ。
「何事です!?」
「うわっ!? なっ、何が起こったッスか!?」
突然の出来事に、誰もが慌てふためいた。
しかし、高音は年長者として、魔法使いとして冷静に状況の把握に努める。
そんな横で美空が驚きながらパニックを起こして周囲を見回し、天井が消えているのを目撃した。
そして、消失した天井を見てみれば、光り輝く空に大剣を持った一人の男の影が見えた。
「なっ!? 船が!? クソッ!!」
さらに、今の攻撃により飛行船の飛行能力が大幅に減退。
ジョニーは何とか飛行船を飛ばすのがやっとのようで、悪態をつくことしかできなかった。
「アイツらは!?」
「もう姿がないわ! 引き離されてしまったみたい!!」
「チクショー! こんな時にッ!!」
誰もが大剣を持った男の登場に、困惑と驚愕を感じた。
千雨はカズヤや法がいたはずだと声を出したが、彼らの姿はすでにない。
アーニャはこの状況で考えられうる最悪の状況として、あの二人はすでに別の敵と戦闘となり、この付近にいないのだと判断した。
あの二人がいないことに千雨は大きな焦燥感に駆り立てられる。
カズヤと法がいないということは、それだけ戦力が削られたということであり、守備力を大幅に失ったことになるからだ。
本来ならばあの二人こそがこの飛行船の守備の要だった。
そう、それを理解していたナッシュは、彼ら二人を飛行船から引き離すように誘導し、引き離して見せたのだ。
それに気が付いたカズヤと法の二人であったが今更遅く、隙を見せれば自分たちが危険だと判断し、早々に目の前の敵を倒して戻ることを決意していた。
「では、叩き落して差し上げましょうかねェッ!!」
男は大剣を天に掲げ、船を落とすと宣言すれば、そのまま勢いよく剣を振り下ろしながら突撃。
その斬撃は容赦なく飛行船を引き裂き、エンジン部分を破壊したのである。
「うおおおおっ!? ヤバいぞ! 船がもう持たねぇ!!」
エンジンすらも破壊され、もはや飛ぶ力を失った飛行船を何とか落とすまいと、ジョニーは必死に操作レバーを両手で抑える。
とは言え、飛行船はもう完全に破壊されたも同然であり、ジョニーも船が落ちることを全員に叫んで伝えたのだ。
「環!」
「任せて」
このピンチの最中、暦はすぐさま環の名を呼べば、環も次に何をすればいいかを理解し、小さく頷いて応えた。
「おおきなドラゴンに!?」
「全員彼女の背中に乗って!!」
すると、環は竜族竜化を行い、自らの衣服の犠牲と引き換えに巨大なドラゴンへと変身したのだ。
彼女の近くにいた栞の姉は、環が竜になれることを知らなかったようで、驚きながらその背中へと体を移す。
また、姉の近くにいた栞も、ジョニーを含めたクルー全員に環の背中へと乗り込むように指示を出していた。
「逃がしませんよ。貴方がたの相手は私なのですからッ!!」
「逃がしてくれねえって訳だ」
されど、空中で魔法陣の上に立つその男は、彼女たちを逃がす気はない。
銀髪と浅黒い肌を持つその男は、再び剣を構えて彼女たちをロックオンしていた。
千雨も環の背中へと移動しながら、その男のほうを見て冷や汗を流す。
その下では先ほどまで乗っていた
「こうなれば私たちが!」
「はい! お姉様!」
「えっ……!?」
追ってくる男へと、高音は今こそ戦うときだと叫ぶ。
その従者である愛衣も、同調して仮契約カードから箒のアーティファクトを呼び出す。
そんな二人の横で、あんなのと本気で戦うのかと驚く美空が呆けた声を上げていた。
「防御は私が担当いたします」
「小生もお守りいたしましょう」
また、あの男の強さは異常だと考え、茶々丸は防御を担当することに。
同じく戦えぬ彼女らの側でいつでも守護れるポジションになると、マタムネも鬼殺しを生み出し防御の構えをとった。
それ以外にも、無言で男の方を睨みながら少女たちの前に立ちはだかる三郎。
どんな攻撃をしてきたかはわからないが、彼女たちを傷つけまいと、いざとなれば自らの体を盾にすることも躊躇しない様子だった。
「貴方たちを危機に陥れること、それこそがナッシュ様が私に与えて下さった任務」
緊張感をどんどん増やしていく彼女らとは別に、男はそれこそ愉快という顔で自分の任務を話し出した。
それこそ、彼女たちを追い詰めることだったのである。
「ですから、ゆっくりと、じっくりと、少しづつ、じわじわと…………」
敬愛するナッシュの命令、であれば、全力で全うするのみ。
故に、時間をかけてゆっくりと、蛇が獲物を飲み込むかのように。
「なぶって差し上げましょう……ッ!!!」
彼女たちをいたぶりつくすと、そう男は叫んだと同時にとびかかってきたのだ。
「何故そのようなことを!?」
「任務ですからねェッ!!!」
高音は迫りくる男へと魔法で空中に浮きながら対峙。
そのまま質問をしながら、鋭く尖った帯状の影の槍を何百本も出して迎撃しようと試みる。
なれど、男は任務だから、としか言わずにそのまま突撃してくるのみ。
そのまま影の槍が命中し、貫かれるはずが、まるで手ごたえがないかのように防がれたのだ。
なんということか、男は剣で防御すらせず、影の槍を受けながらも平然とした態度で突き進んできていたのである。
また、愛衣も魔法の射手を男へと放っているが、それを男は回避することもなく体に受けつつ、魔法の射手など最初から存在しないような態度で、完全に無視して行動しているのだ。
もはや愛衣は相手にすらならない、どうでもいい存在と告げるように……。
「あなたはこの世界が滅びてしまっても、よろしいと言うのですか!?」
「この世界が滅びようとも、ナッシュ様が新たな世界を構築してくださる!!」
そんな最中だが、高音は攻撃の手を緩めることなく、さらに影の槍を増やして男へと質問を続けながら攻撃し続ける。
高音はこの男が下の墓守り人の宮殿に居座る組織のものかはわからないが、こんなことをしていればいずれ世界が滅ぶことは知っていた。
経緯はすでに聞いていたからだ。
だから高音は、男へと今この状況で自分たちを襲ってくることに対して、世界がなくなってもいいのかと問い詰める。
が、男は滅んでもよいと言った。
さらに、滅んだ後に自分の主であるナッシュが、再び世界を作り出すと言い放ったのだ。
「本当にそのようなことが可能だと!?」
「左様です。ナッシュ様は新世界の神となるのですッ!!!」
男の言うことは明らかに荒唐無稽な話だった。
この魔法世界を滅ぼした後、新たな世界を築き上げるなど不可能に近い。
そんな出鱈目な話を高音は信じられず、もう一度男へと聞き返せば、可能だと自信ありげに嘯いてきたではないか。
さらに、ナッシュが世界を新たな世界を作り出し、その世界の神になるのだとのたまったのだ。
「まるでナッシュとか言う奴の狂信者だな……」
男のそんな話に、千雨はナッシュに狂信するヤバイ奴だと思った。
もはやナッシュという存在に酔いしれ、神のように崇拝しているようなものだった。
それもそのはず、この男はナッシュ右腕であり側近だ。
自らナッシュの手足となり、ナッシュの目的のために任務を遂行する、イエスマン。
ナッシュが持つ最高の人材であり、最強の工作員でもある。
その実力と神から与えられた特典は、あのナッシュの手駒の二人を余裕で上回るものなのだ。
「それが本当だったとしても、この世界を滅ぼすような悪逆非道な行いを容認などできません!!」
「貴方に容認してもらう必要など、粒子一つ分もありませんよッ!!!」
だが、たとえ新たな世界を作り出せるにせよ、今あるこの世界を消し去ってまでやるのは間違っている。
高音はそう自分の考えを叫ぶが、男は気にした様子もなくお前の言葉は不要だと切り捨てた。
「ハハハハッ! どうしました!? 先ほどまでの威勢はッ!?」
「くっ……! 私の操影術でも全く歯が立たないですって……!!?」
また、こうも言い合っている最中も、高音は影の槍で男を攻撃し続けていたが、男にはダメージが入った様子はない。
そして、男は気まぐれに剣を横なぎに振り回し、影の槍を一掃してしまったのだ。
戦い始めた時にはあった強気の姿勢も、だいぶ消失してきていることに、今どんな気持ちだと、高音に対して悪辣な煽りをぶつける。
高音はそんな問いに、悔しそうな表情で対応する。
魔法使いとして高みへと研鑽してきた魔法が通じないことに、大きなショックを受けないはずがないのだ。
「貴方たちの魔法程度では、この私に傷一つ負わせることは不可能なのですよォッ!!」
「あうっ!?」
さらに絶望を与えるかのように、男は叫ぶ。
お前らごときの魔法で、自分を傷つけることなどかなわないのだと。
無駄な抵抗であり、空しい行為で哀れな反抗でしかないのだと。
その言葉通り、もう一度男が剣を振り下ろしただけで、影の槍は吹き飛ばされ、その衝撃波が高音へと襲い掛かった。
高音は回避がかなわずに衝撃波に飲み込まれ、大きく後方へと吹き飛ばされてしまった。
また、衝撃波の余波はドラゴンになった環たちにも襲い掛かったが、茶々丸のプロテクトシェードで何とか防いでいた。
「お姉様ッ!!」
高音すらも全く歯が立たないことに、その従者である愛衣が高音へと心配して名を叫んだ。
その愛衣の視線の先には、何とか空中で態勢を立て直す高音の姿があった。
それに高音に体に大きなダメージを受けた様子はない。
理由は彼女が纏っているのは影の魔法で編み出した黒いドレス、
見た目は漆黒のドレスだが、名前の通り強靭な影の鎧であり、装着すれば防御力は3倍、肌にピッタリ装着すれば7倍にもなる優れた魔法だ。
…………ただ一つだけ大きな弱点があり、高音が気を失えば瞬時に消失し、裸になってしまうことである。
「本当ならばあの二人の関係者を痛めつけるのがよいのですが、まずは貴方に再起不能となってもらいましょう!」
この男の本当の狙いは、ナッシュと戦い始めたカズヤと法と特に縁が深い人物だった。
その人物を痛めつけ、彼らの動きを鈍らそうというのもまた、この男の任務だったのだ。
「はっ? 狙われてたのは私なのか!?」
その男の言葉を聞いて、どっと冷や汗を流して驚く千雨がいた。あの二人、カズヤと法の関係者と言えば自分だからだ。
狙われていたのを理解して、驚きと焦りが瞬間的に襲ってきたのだ。
「こっのーッ!!」
そんな風にしゃべりながらも剣を構えて高音へと迫る男に、アーニャがいてもたってもいられずに炎を纏って弾丸のような飛び蹴りを放つ。
「無駄です。その程度の攻撃で、私は傷つけられません」
「なっ!?」
されど、男はその飛び蹴りすらも剣で防御することもなく、体で受け止めてにやりと笑う。
さらに、自分には通用しないと自信をもってアーニャへと宣言したのだ。
先ほどから高音の影の槍すらノーダメージであったが、直接的な攻撃すらも効かなかったことに、アーニャも驚愕の表情を見せていた。
「では、まず貴方からです!」
「ヤバッ!?」
そして、密着した状況のアーニャへとターゲットを切り替えた男は、構えた剣をそのままたたき落としながら叫ぶ。
アーニャもこの状況の悪さを理解し、まずいと思ったのもつかの間。
男が振り下ろした剣が目と鼻の先まで迫ってきていた。
もう駄目か、アーニャは一瞬弱気な考えが脳裏に浮かんだ。
そんな時、誰かが自分を抱えるような感覚に見舞われた。
「無茶するねー本当」
「あっ。ありがとう……」
危機一髪であったが、アーニャは助かった。
いや、助かったのではなく、助けられた。
アーニャを間一髪で救出したのは、あの美空だったのだ。
一応彼女も魔法使いの生徒であり、流石にこの状況でなんとかせねばと思ったのだ。
彼女は靴のアーティファクトであり、超高速で動けるというものだ。
それを呼び出し、アーニャが危険と判断し、とっさに飛び出してアーニャを掻っ攫ったのである。
その後箒を呼び出して足場とし、そのまま中を浮いたのだ。
美空はアーニャの無鉄砲だが勇敢な行動に、困った顔をしながら少し関心させられていた。
仲間がピンチの時、いの一番で動いたのは自分よりも数年年下のアーニャだったからだ。
アーニャも美空に助けられ、素直にお礼を述べていた。
あのままであれば命の危険もあったし、あの場で救出を実行した胆力に驚かされたからだ。
「やってくれますね…………」
男は今の攻撃が不発に終わったことに、大変不服な様子を見せた。
この調子に乗った顔で笑っていた男が、表情を変えたのだ。
「この隙に! ”
男が屈辱に震えて動きが止まったその隙に、暦がアーティファクトを呼び出して使用した。
このアーティファクトで男の周囲の空間の時間を遅延、停滞させて動きを止めようと言うのが狙いである。
今までは男が動き回っていたので狙いが定められず使用できなかったが、動きが止まった今ならやれると判断しての行動だった。
「っ! 生意気なッ!!」
「避けられた!?」
だが、男とてそう簡単に術にはまるような間抜けではない。
アーティファクトの起動を察知し、男は飛ぶように横へど移動し、男の居た場所に発生した時間停滞地帯を回避して見せたではないか。
完全に不意打ちだったはずの攻撃を、まさか避けられるとは暦も思っておらず、大きく動揺して驚いた。
「あなたですか。今の攻撃はッ!!!」
「っ!!?」
男は暦の持つアーティファクトが命中せず、どういった効果なのかはわからなかったが、兎に角一番警戒すべき相手だと理解した。
と言うことはつまり、ターゲットが高音やアーニャから、暦へと移ったということだ。
すなわち、次に狙われるのは暦であり、もうすでに剣を構えて瞬動にて、環の背中の上にいる暦へと迫っていたのだ。
男の素早い判断と行動に、暦はたじろぐ。
しかし、このままやられる訳には行くまいと、もう一度
「そのようなもの、当たるはずがないでしょうがアァッ!!!」
「っ!?」
されど、男はすさまじいスピードで、しかも行動を読まれないようにジグザグに動きながら距離を詰めてきていた。
暦は男に狙いを定めきれずに、目で男を追うので精一杯だった。
そして、男はすでに暦の目の前まで飛んできており、暦は自分の危機を理解して驚愕し、尻尾をピンと真上に伸ばす。
「お嬢さん方には手出しさせません」
「ほう?」
だが、男が剣を振り下ろした直後、男の剣は巨大な日本刀によって止められた。
その日本刀は強固でありながらも、何やら透けていた。そう、ネコマタのマタムネが操る鬼殺しだ。
マタムネは男に睨みつけ、男の強烈な膂力に抗いつつもお前の好きにはさせないと宣言する。
男はそんな小さい猫に、少し関心の声を漏らすだけで、特に大きく気にするような態度は見せなかった。
何故なら――――。
「…………そうですか、なるほど」
――――何故なら、この程度も脅威にすら感じないからだ。
脅威ではないのだから、特に驚くこともない。
とは言え、これほどまで
「ならば、もはや遊ぶ必要など…………ありませんッ!!」
「浮遊してた岩をこっちに向けて!?」
だから、そうだから、だから男はそろそろ本気で狩り取ることにした。
玩具が遊ぶ主に抵抗するなどもってのほかなのだから。そんな玩具など破壊してしまえばいいのだから。
すると男は超高速で近くにある浮遊する巨大な岩場へと移動し、その岩を蹴り飛ばして強引に環たちへと向かわせたのだ。
「大丈夫です、この程度なら守り切れます」
しかし、この程度なら脅威ではないと、茶々丸はプロテクトシェードで防御の姿勢だ。
案の定大岩は茶々丸のプロテクトシェードに阻まれ、粉々に砕け散り四散して空へと消えていった。
「全員まとめて吹き飛ばしてさしあげましょうかねェェェッッ!!!」
だが、今の大岩はただの目くらましでしかなかった。
何者にも邪魔をされずに、次の大技の準備の時間を稼ぐための、時間稼ぎの攻撃でしかなかったのだ。
誰もが立ち上る光の柱を見て、それを理解してしまった。
男は剣を構え、その剣からは異常なほどの魔力と光が発生し、天に突き刺さっていたからだ。
そして、男はすでに大技の準備を完成させ、大きく叫びながらその大技を起動させようとしていたのである。
「ッ!? みんな気を付けて!! とてつもないパワーをあの剣から感じるわ!!」
「…………見ればわかる!」
その光景に誰もが口を開けて目を見開いていた。
幻想的でありながらも、それが自分たちの命を奪う恐るべき光だということを、誰もが理解してしまったからだ。
――――誰が最初に声を上げたか。
あの幻想的かつ恐怖の光の危険度を最初に声に出して叫んだのは、アーニャだった。
その声に我に返って、わかっていると叫んだのは千雨だ。
また、今の声で全員がはっとした顔となり、恐怖が今更になって襲い掛かってきたのだ。
「…………計算では、あの攻撃を私の装備で防御しきることは不可能です」
「なんという恐ろしいまでの極光の柱………………」
茶々丸もまた、自分の防御機構であるプロテクトシェードですら防ぎきれないと判断し、申し訳なく思っていた。
プロテクトシェードは空間湾曲の応用で跳ね返すバリアだが、相手の出力が大きすぎて
同じくマタムネも自分が持つ全ての巫力を用いても、あの光を全て受け切って後ろの彼女たち全員を守り切るのは不可能だと判断し、悔しさで歯噛みしていた。
「これはかなり……手厳しい状況ですね…………」
高音もこの現状に硬直し、どうしようもない現実として受け入れるしかなかった。
自分の魔法使いとしての技量、それを結集した操影術をもってしても、男の攻撃を完全に防ぐ手段を持っていなかったからだ。
「邪悪なる竜は失墜し、世界は今、洛陽に至るのですッ!!」
「環ッ!! 早く逃げ…………っ」
男は最後のロックを解除するかのように、言葉を述べ始めた。
目の前の竜族を屠るに相応しい、我が最強の
暦はこの攻撃はマズいことを、見た目とその内包された魔力で察していた。
だから今すでに回避、いや逃亡を開始していた環へと、さらに加速を要求したが…………。
「撃ち落としなさいッ!! ”
――――男は真名を解き放つ。
邪竜を滅ぼしたその魔剣の一撃を。その幻想を。
誰もが、誰もがもはや間に合わないと思った。もうダメだと諦めかけた。
この一撃で全てが終わると、誰もが理解した。もう終わりだと感じた。
――――――――だが、そこに一筋の希望の光が差し込んだ。
「マスター! しっかりつかまってなァ!!」
「応ッ!!」
銀色に輝く軽鎧を装備し、薄緑の逆毛と体に巻いた夕焼け色のマフラーをなびかせながら、三頭の馬に引かれた戦車に跨る、野生味溢れた美丈夫が一人。
その後ろの男性を
後ろの、短い濃紺色の髪をした細マッチョで長身の男性は、薄緑の髪の男にそう警告され、ならばと元気よく返事を返す。
「クサントス! バリオス! ペーダソス! 命懸けで突っ走れ!」
薄緑の髪の男は、戦車を走らせる三頭の馬たちへと、鼓舞を投げる。
馬たちもそれに応えるかのように、さらに気合も乗せて加速。
「我が
その速度はまさに流星。天を切り裂く星屑。
箒星の尾のように伸びた翠の魔力を引きずり、超高速で目標へ向けて空を駆け抜ける。
「”
薄緑の髪の男は、その名を高らかと叫ぶ。
――――
かのギリシャの大英雄が一人、俊足の英雄が持つ、神馬二頭と名馬一頭の合計三頭だての戦車。
その戦車が最大速度にて敵軍へと突撃する、対軍宝具。
まさに空中を自在に超速度で飛び回る芝刈り機。
もはや目ですら終えぬ速度にて迫る戦車の強行に、男は気が付かなかった。
「なにっ!? ガッ!? グウオオアアァァァッッ!!!!????」
そして、気が付いた時にはすでに、戦車は男の真横に突入してきた時だった。
真名開放中という無防備の隙をつかれた形となった男は、防御すらできずに戦車に轢かれ、その衝撃を全身に受けることになった。
男は衝撃とともに吹き飛ばされ、近くの浮遊する大岩へと体を打ち付け、クレーターを作ってめり込んだ。
「グッ…………、まさか無……関係な…………、第三者……から…………横槍が入る……とは…………、思いませんでした……」
「そいつは悪いことをしたな」
もはや男は息も絶え絶えな様子で、悔しそうに表情をゆがませる。
こんな予定はなかった。急に出てきて轢き殺してくるような相手が出てくるなど、予想外だったと。
そこへ戦車から飛び降り、流星のごとく男の前へと現れ、槍を首元へと突きつける薄緑髪の男は、男の口から吐き出された恨み言を、皮肉る言葉で返す。
「テメェが美少女たちをいたぶってたんでな。つい手が出ちまった」
薄緑の髪の男は静かに、殺気を込めて語りかける。
こんなつまらない横槍をぶつけたのは、単に気に入らなかったからだと。
か弱い少女たちを痛めつけて笑っている、お前の姿が許せなかったからだと。
「我が鎧をも貫通する攻撃、英霊の力…………、その姿…………、まさしく俊足の英雄の…………」
「俺は有名だからな。見りゃわかっちまうか」
男は銀色の軽鎧を纏った逆毛に立った薄緑髪の男を見て、すぐさまその真名を理解した。
故に自分の最強に等しい防御を貫かれ、瀕死の姿にされたのだということも。
薄緑髪の男もまた、自分の正体に気が付かれたことに、当然と吐き捨てた。
自分の名は有名であり、人体の一部の名前にもなっているのだから当然だ、という様子だった。
とは言え、男が彼の正体を知っているのは、
――――この大剣を持った男が転生神から貰った能力、それは黒のセイバー・ジークフリートの能力だ。
もう一つが肉体にかかっている呪いの除去、つまり背中を必ず見せなければならないという呪いの消滅だった。
故に、本来ならばいかなる――――Bランク以下の威力の攻撃をも無効化し、それ以上の攻撃を受けたとしても、ダメージを大幅に減退させる
その宝具によって守護られたことにより、高音たちの魔法が通じなかったのである。
かの英雄同様、背中の一部に存在する菩提樹の葉の形の部分には、宝具の効果が存在しない弱点部分が存在する。
が、それを隠すことはできないという呪いを二つ目の特典にて消しているため、その形を目視で拝むことは不可能となっている。
また、
これが今しがた発動し放たれていたとしたら、環の命は確実になかったであろう。
いや、その絶大な威力によって、彼女たち全員が命の危機に瀕していたに違いない。
されど、それは起こらなかった。
「アキレウス…………、こんな……時に……、このような……存在が現れよう…………と……は……………………」
そして、鎧の宝具の防御を貫通し、ダメージを与えた宝具こそが、ライダーとして召喚された俊足の英雄アキレウスが駆る戦車、
アキレウスなどと言うサーヴァントが、…………いや、それの能力を貰った転生者かもしれないが、今この時に現れて妨害してくるなど、予想外にも程があると、男は最後に独り言を言い終えると、静かに気を失った。
この程度、とは言い難いダメージではあったものの男が気を失うほどであったのは、ひとえに男が
これがもし、ジークフリート本人であるならば、このダメージを受けたとしても戦意も気も失わず、悠然として剣を再び握りしめたであろう。
「…………気を失ったか」
アキレウスーーーーライダークラスで召喚されたその英霊は、目の前の男が気を失い全身から力が抜けたのを見て、槍を下げた。
「終わったのか、ライダー」
「ああ」
そこへ
マスターと呼ばれた男の言葉に、ライダーは持ち前の槍を肩に担ぎながら、短い言葉で肯定した。
「んじゃ、いつものやつ、使いますか」
そこでマスターと呼ばれた男は、ニッと笑って
「やっぱ便利だな、ソレ」
「持ち運びが可能な牢獄なんて、よう考えるわ」
男が瓶に吸い込まれていくのを見ながら、ライダーは感心していた。
ライダーの言葉に、マスターと呼ばれた男も同じ意見だと言う様子で、瓶の特性を言葉にしていた。
――――この魔法具の瓶こそ、あの覇王がアルカディアの皇帝から貰った牢獄型の魔法球と同じものなのだ。
このマスターと呼ばれた男も、覇王と同じくアルカディアの皇帝と協力関係を結び、ライダーとともに危険な転生者を封じる手助けを行っていたのである。
魔法球の瓶は当然転生者を封じることを想定して作られており、内部は何重にも重なる結界が施され、強烈な束縛を強いられる。
よって、神から強大な力を貰った転生者と言えど、あらゆる行動を制限され、特典すら働かすことが不可能な状況に投げ込まれることになるのだ。
マスターと呼ばれた男とライダーは、男が瓶の中に消えたのを確認すると、先ほど助けた少女たちの方へと戦車で移動を始めた。
「よう、アンタたち、無事か?」
「あっ、ありがとうございます!!」
「なぁに、これしきのこと、礼にはおよばん」
少女たちはすでに墓守り人の宮殿に降り立っており、その近くへと戦車を止めたライダーはゆっくりと戦車から降りつつ、彼女たちの無事を確認する。
いきなり現われて助けてくれた美丈夫のイケメンに驚きつつも、高音は代表として全員分の感謝を彼らに告げた。
ライダーは彼女の感謝の言葉に、それは不要と堂々と言葉にした。
この程度ならば朝飯前。気にされる必要なんて、どこにもないからだ。
「そういや俺も言い忘れてわ! よくやってくれたぜ! サンキューなライダー!」
「マスターも気にするな。今の行動はマスターの頼みでもあったしな」
ライダーの横にいたマスターと呼ばれた男も、高音の礼を聞いて、自分もライダーへ感謝してなかったことを思い出し、笑顔で謝礼した。
そんなマスターにライダーもニヤりと笑いながら、今の行動はマスターのお願いを叶えた結果であり、マスターが礼するほどじゃないと謙遜した様子を見せる。
やはり、ライダーとともに戦車に乗っていたのは、ライダーのマスターだった。
「それに、こんな美少女たちをほっとくなんて、俺にはできないってもんだ」
「その意見には俺も同意しかねえ」
また、ライダーとて彼女たちの危機を無視することなどできはしない。
英雄としての、男としての矜持がそれを許すことはないからだ。
そんなライダーの言葉に、肩をすくめてフッと笑いながらライダーの言葉を肯定するマスターの男であった。
・
・
・
彼女たちから経緯を聞いたライダーとそのマスター。
マスターたる男は”原作知識”を持っており、原作との差を腕を組みながら考えていた。
とは言え、ライダーのマスターはそんなことなど関係なく、この世界消失を防ぐためにライダーとともにこの場所に参上した。
故に、原作との差など気にすることなどなく、むしろこんな敵だらけの中で、味方が増えたことに喜びを感じていたほどである。
「なるほどなあ。お仲間さんが戦ってると」
「相手もかなり危険な連中だと思われるんです。どうにかして助けに行かないと……」
また、ライダーは千雨から、カズヤと法の話を聞いていた。
気概溢れる若い男の話だ。そんな男たちは敵の罠にかかったのか、飛行船から遠いのた場所で孤立し、戦っている可能性があるという。
だから千雨は二人を助けに行かなければと、英雄然とした彼に言う。
あの二人は強いが何かあったらと考えると、恐ろしい。不安でたまらないのだ。
「だがまあ、その連中が助太刀を欲してるかは別だがな」
「な……、何がどういう…………!?」
しかし、ライダーから返ってきた言葉は、千雨が予想していたようなものではなかった。
千雨はその言葉に、大きく動揺して意味が分からないと言う顔を見せたのだ。
「男の俺としちゃあ、そういう時は助太刀なんざ欲しくねえと思うもんさ」
「そうだなー。話を聞くにそいつら結構意固地っぽいしなあ」
その千雨の動揺した言葉に、ライダーは先ほどの続きを話し出す。
そもそも、ライダーは話に聞いた男二人が、どうにも助けを求めるようには思えなかったからだ。
血気盛んで愚直なタイプ。一度こうと決めたら曲げない一途な精神。
こんな男たちが、はたして助けてほしいだなんて願うだろうか?
ライダーは自分もそうだからわかるところがある。
こういう勝負ってのは、己自身で勝ち取りたいものだ。
男としての意地があるだろうし、誰かに手助けされるというのは矜持が許さないだろう、と考えたのだ。
話を横で聞いていたマスターも、確かにと頷いていた。
なんかちらちと話を聞いていただけだが、その二人はどうにも頑固ものっぽい。
多分「助けに来たぞ!」とか言って駆けつけても、「いらねぇよ!」とつっぱねるのが想像できてしまったようだ。
「それにこんな危険地帯のど真ん中で、アンタらを放置することはできないしな」
「遠くから見ていたが、まだまだ敵がうようよしていたぜ」
「マジかよ…………」
まあ、彼らを助けに行けない理由のもう一つは、目の前の彼女たちのことだ。
ここは敵地のど真ん中。と言うか、敵の本拠地なのだ。
こんな場所に彼女たちを放置して行くわけにもいかないと、ライダーは語る。
マスターも周囲には敵がまだまだいたのを見ており、このままにしておくことは無理だと断じたのだ。
千雨はその話を聞いて、顔を青ざめさせて嘆いた。
実際、こんな場所に来る予定はなかったし、ナッシュの攻撃さえなければ、こんなことになるはずがなかったのだから仕方がない。
「つー訳でだ。とりあえずは俺らと行動してもらうが、それでいいか?」
「異論はありません。ご迷惑をおかけします」
そんな現状だからこそ、ライダーは彼女たちの護衛として傍にいてもよいか尋ねる。
ライダーの問いに、彼女らの代表として高音がライダーの同行を認め、頭を下げて礼を言う。
「気にすんなって。俺もアンタらに何かあったら寝覚めが悪いからな」
「そうそう。それに俺らにゃ君らを守護るのなんて、むしろ役得でしかねえしさ」
頭を下げて恐縮する高音に、ライダーは軽い感じで返答する。
そもそも今の提案自体が自分たちのお節介であり、礼を言われる筋合いはないと考えているのだ。
マスターの男も同じ気持ちであり、むしろ”原作キャラを守護れる”という事実にウキウキワクワクしている。
よって、彼女たちの護衛はご褒美だと、マスターの男は嬉しそうに言うのであった。
…… …… ……
転生者名:アキレウスのマスターの男、ヴィガ・ササジマ
種族:人間
性別:男性
原作知識:あり
前世:30代の会社員
備考:魔法世界で生まれ育った
能力:頑丈な肉体でのステゴロ
特典:Fateのサーヴァントをランダムで呼べる呼符
強靭な肉体
真名 アキレウス
出典 ギリシャ神話
マスター ヴィガ・ササジマ、神からの特典の呼符でアキレウスを引き当てた。
身長/体重 185cm・97kg
属性 秩序・中庸
クラス ライダー
ステータス
筋力 B+ 耐久 A 敏捷 A+ 魔力 C 幸運 C 宝具 A+
クラススキル 対魔力 C 騎乗 A+
保有スキル 神性 C 戦闘続行 A 勇猛 A+ 女神の寵愛 B
宝具
ランク A 種別 対軍宝具 レンジ 2~60 最大補足 50人
三頭立ての戦車。海神ポセイドンから賜った二頭の不死の神馬と都市から略奪した名馬の一頭で引く。クサントス、バリオス、ペーダソス。
その神速をもって戦場を蹂躙する。速度の向上に比例して追加ダメージを与える。もはや超高速で飛び回る大型芝刈り機。
ランク A+ 種別 対人宝具 レンジ 0 最大補足 1人
疾風怒濤の不死戦車から降り立つことで起動する常時発動型の宝具。
あらゆる時代のあらゆる英雄の中でもっとも迅いと言う伝説が具現化したもの。
広大な戦場を一呼吸で駆け抜け、フィールド上に障害があっても速度は鈍らない。
自身の弱点であるアキレス腱を露出しなくてならないが、この速度を捉えきれる英霊は数少ない。
踵を破壊されると消滅する。
ランク B 種別 対人(自身)宝具 レンジ 0 最大補足 1人
踵を除くすべてに母である女神テティスが与えた不死の祝福がかかっている。
いかなる攻撃も無効化するが、固有スキル神性を持つ者にはこのスキルが打ち消される。
また、踵を破壊されると消滅する。
ランク B+ 種別 対人宝具 レンジ 2~10 最大補足 1人
疾風怒濤の不死戦車から降り立つことによって使用可能になる。
相手の同意がある場合のみ、英雄同士の一騎打ちを目的とする領域を作り上げるという、固有結界に匹敵する大魔術。
ライダーとして召喚されているので、不治の呪いなどの一部の能力は使用不可能。
ランク A+ 種別 結界宝具 レンジ 0 最大補足 1人
アキレウスが見てきた世界そのものが投影されており、外周部分には海神による海流が渦巻いている。
この盾に立ち向かうということは、即ち世界を相手取るということであり、発動させれば対城、対国、対神宝具すら防ぎきる。