理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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百八十四話 星屑の槍

 

 

 風の音が聞こえ始めた。

静まった世界に音が戻ってきた。

 

 

「…………終わったか」

 

 

 それを感じたのかはわからないが、無明はぽつりと一言こぼした。

囲まれ、必殺の技を叩き込まれる最中に出した秘儀にて、その全てを吹き飛ばして見せた無明。

 

 この一撃で三人を蹴散らし、戦いが終わったと感じたのである。

 

 

(ぐっ…………、一体何を…………された……?)

 

 

 ――――しかし、これで終わりなどということはない。

アルスは今の一撃で吹き飛ばされ、地面に倒れ伏せていた。

 

 されど、命も意識も失ってはいない。

故に、状況判断として無明の放った技のことを即座に考察するが、一瞬すぎて何が起こったのかさえわからなかった。

 

 

(クソッ……体が言う事聞かねぇ…………)

 

 

 また、先ほどの無明の技を受けたダメージのせいで、体が思うように動かなかった。

致命傷ではないにせよ、かなりのダメージだったことが伺える。

 

 

(手足がまだ繋がってるのはありがてぇが…………、どうする……?)

 

 

 それでも手足が千切れている訳ではない。未だ五体満足だ。

であれば、まだ動ける。戦える。そのために、次にどう動くかをアルスは模索し始めたのである。

 

 

(チクショーッ!! 攻撃がまったく見えなかったッ!? 意味がわからねぇッ!?)

 

 

 同じくカギも、宮殿の岩でできた壁に体を半分めり込ませながらも、意識をすぐに取り戻して状況の把握を行おうとしたが、無明の先ほどの技が見えずに、何が起こったのかわからず混乱していた。

 

 

(だけどよーッ! 今ので仕留めきれなかったことを後悔させてやるぜッ!! このヤローッ!!)

 

 

 しかし、カギははねっ返りがかなり強い。

この一撃でとどめを刺せなかったことを、どう後悔させてやろうかと、怒りを抱きながら企む程度には、まだまだ元気でタフなやつだ。

 

 

(うっ…………。何も見えぬとは…………)

 

 

 そして、楓はと言うと、今ようやく意識を取り戻したばかりであった。

 

 

(アルス殿があの瞬間にかばってくれなければ、体が両断されていたでござるな…………)

 

 

 目を覚ました楓は、無明が技を発動した時のことを思い返した。

あの時、無明が何かの技を発動した瞬間に、なんとアルスがスターランサーを盾として楓の前に配置してくれていたのだ。

 

 アルスのこの機転の利いた行動のおかげで、自分の体が繋がっていると楓は思ったのである。

 

 

「もう少し、楽しめると思ったんだが…………、実に、残念だ」

 

 

 赤月の一撃で全員が吹き飛び動かなくなったのを見た無明は、これで戦闘が終わったと感じてがっかりした様子を見せていた。

もっと戦いたかった、と言う顔だ。

 

 

「残念だったなぁッ!! まだくたばってねーんだわッ!!!」

 

「兄貴イィィィィッ!!!!」

 

 

 だが、そこへ突如として声が響く。

壁にめり込んでいたカギが、瞬動にて無明の近くへと移動しながら叫んだのだ。

 

 カギの復活にたまらず声を上げるのはカモミールだ。

あのカギがやられてしまったのかと思っていたカモミールは、カギの復活に心の底から喜んだのである。

 

 

「ふん」

 

 

 カギはすでに術具融合で雷神斧槍を作り出しており、それを無明へと突き出した。

が、当然無明はそれを丑刻天月で防ぎ、力比べへと持っていく。

 

 

「残念では、ない。もう一度、戦えるのだ。嬉しいではないか」

 

「俺は嬉しくねーんだよッ!!」

 

 

 無明はカギの「残念」と言う言葉に反応し、むしろ嬉しいと笑っていた。

 

 そんな無明に対してカギは嬉しくないと叫ぶ。

当たり前であるが、こんな強敵と戦い続けるのは、カギとしてはあまりやりたくないことだ。

 

 

「――――解放!! ”神殺轟雷”いぃッ!!!」

 

「何度やっても、同じことだ」

 

 

 カギは受け止められ徐々に押されたのを察し、即座に術具融合を解き、内包していた魔法を無明へとぶちこんだ。

が、無明はそれを最小の動きで回避し、再びカギへと切りかかった。

 

 

「んなもん試さなきゃわからねーぜ!! ”爆熱陽剣”ッ!! オラオラオラッ!!」

 

「無駄だ。その程度の、攻撃など……”反月”」

 

「ぐえぇっ!!?」

 

 

 同じことだと言われたカギは、んなもんわからないだろと叫びながら、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から美しい剣を取り出し、術具融合を作り出す。

 

 さらにそのまま無明の丑刻天月と鍔迫り合うが、無明は力任せに爆熱陽剣を振るうカギへと、カウンター技を放った。

そのカウンター技、反月を受けたカギは汚いうめき声を出す。

 

 

「痛ぇってんだよぉッ!! このクソヤローッ!!!」

 

「随分、粘る…………。――――”舞月”」

 

「ちぃぃッ!!」

 

 

 が、その攻撃で受けたダメージを無視して、カギは爆熱陽剣を無明へ振り続ける。

そんなカギへと無明は、さらに別の技を解き放つ。

 

 舞うような足さばきでカギの攻撃を回避しつつ、丑刻天月を振り払い連続して斬撃を繰り出す技だ。

 

 カギは悔しさを舌打ちに出しながらも、その技を回避するため後ろへと飛び、難をしのぐ。

 

 

「チクショーッ!! チキショーッ!! 攻め切れねぇッ!! 舐めやがってぇッ!!!」

 

「”震月”」

 

「ああぁぁッ!! クソったれがあぁーッ!!!」

 

 

 無明の無駄のない技に、カギは攻め切れないことへの憤りを感じていた。

何度も切り込んでいると言うのに、全て相手の攻撃で完封されている。

苦しい修行を重ねてきたカギにとって、これほど悔しいことはないだろう。

 

 攻めきれずにもどかしさを感じるカギへと、無明はさらに技を追加する。

斬撃と見えざる斬撃が何重にも重なって同時に襲い掛かる震月だ。

 

 カギはその技を回避するために、今以上に後方へと退避を余儀なくされた。

この打破できぬ状況にイラつきを隠し切れないカギは、怒りの叫びをあげるしかなかったが――――。

 

 

「こっちも倒せたと思わない方がいいぜ」

 

「ぬうぅ!?」

 

 

 ――――そこへアルスが接敵し、スターランサーを無明へと叩きつけた。

無明は突如として現れたアルスの攻撃の対処に一瞬遅れ、軽く後方に吹き飛ばされる。

 

 

「――――楓忍法……”朧十字”!!」

 

「なに? ”狂月”」

 

「っ!? 流石に二度目の不意打ちを届かせてはもらえぬでござるか」

 

 

 さらに、無明がその位置に来るのを待っていたかのように、楓が技を仕掛けた。

16人の影分身による障壁破壊が可能な技、朧十字だ。

 

 楓の技を受ける寸前、無明は咄嗟にランダムに斬撃が発生する技である狂月を放つ。

それによって楓の影分身は吹き飛ばされるが、本体は寸前で回避し、アルスの横へと着地したのであった。

 

 

「なるほど。その二人が回復するのを、待っていた、ということか」

 

「そのとーりよぉ!」

 

 

 先ほどの赤月を受けてなお、問題なさそうに動くアルスと楓を見た無明は、カギの方を見てしてやられたと言葉にする。

 

 実は動けなくなっていたアルスはひっそりと自分に治癒(クーラ)をかけたのちに、楓の方へと移動して治癒(クーラ)を楓にもかけていた。

 

 つまりカギは二人が回復するまでの間、視線誘導のために大声を出しながら無明と殴り合いをしていたのだ。

カギが率先して無明を惹きつけてくれていたおかげで、アルスと楓は復帰できたということだった。

 

 

「助かったでござる」

 

「惹きつけ役を任せて悪かったな」

 

「はっ! 気にすんなって!!」

 

 

 楓はその行為に対してカギへと感謝し、アルスも謝る態度を見せ、二人に感謝されたカギは、まったくもって気にしてないとカラッと笑って見せた。

 

 

「会話の暇など、ない。”散月”」

 

「あらよおっとッ!! 術式解放――――”日炎陽光斬”ッ!!」

 

 

 が、今はそんな会話をしている暇すらない。

無明は余裕は与えぬと、すぐさま技を繰り出してきた。

広範囲に複数の斬撃を相手に叩きつける散月だ。

 

 しかし、カギも何度か技を受けてきたので、ある程度対処を理解し始めていた。

無明が技を出した瞬間に、無明とその技の斬撃へと、握っていた爆熱陽剣に内包していた魔法を解き放つ。

 

 

「”雷の暴風”!!」

 

「今更ただの魔法など」

 

 

 さらにアルスが別方向から雷と嵐の渦をぶつける雷の暴風を、無明へと撃ちだした。

 

 とは言え、その程度の魔法など無明には通用しない。

無明は瞬時に日炎陽光斬と雷の暴風を回避。

 

 

「風魔手裏剣!?」

 

 

 だが、回避したその場所へと、複数の風魔手裏剣が飛んできた。

咄嗟の判断で無明はそれらを丑刻天月で弾き飛ばすが、そこには鎖と爆符が繋がっている訳で。

 

 

「”縛鎖爆炎陣”ッ!!」

 

「んでもって! ”燃える天空”ッ!!」

 

 

 その爆符がはじけた瞬間に、アルスが燃える天空を同時に叩き込む。

アルスは無詠唱の特典を持つが故に、ノーモーションで魔法を放てる。

 

 

「――――”曼月”」

 

 

 無明は同時攻撃に対応すべく、技を繰り出す。

無明の周囲を広範囲な円形状に斬撃を放つ曼月。

それによって爆発と魔法の爆炎を切り裂いてかき消し、消失させることに成功するが。

 

 

「こっちを忘れちゃ困るってもんだぜっ!! ”天雷螺旋剣”ッ!! 術式解放――――”雷風螺旋撃”ッ!!!」

 

「”皇月”」

 

 

 その瞬間を狙ってカギがさらに術具融合を編み出し、解き放つ。

雷撃と竜巻の嵐が無明を襲うが、無明も次なる技を出して冷静に対応。

 

 地面と左右へと同時に広い範囲の斬撃が発生する技、皇月にて雷と竜巻を切り裂いて見せた。

 

 

「”スターランサー”ッ!! ”フェイタルバインドフィールド”ッ!!」

 

「――――ぐっ!? 技の出を、狙われたか…………?」

 

 

 だが、さらにその瞬間を狙っていたのはアルスだ。

大技の出の後には一瞬だが隙が出来たのと見たアルスは、そこへ強烈な束縛の結界を作り出す。

 

 その連携された攻撃によって、無明は初めてアルスの結界の中へといざなわれ、強烈な束縛を受けることになったのだ。

 

 

「”天魔覆滅・縛鎖地網陣”ッ!!」

 

「”爆熱陽剣”ッ術式解放――――”日炎陽光斬”ッ!!!」

 

「”奈落の業火”ッ!!!」

 

 

 そこへ三人の爆炎系の大技が、動きが止まった無明へと同時に襲い掛かった。

灼熱の炎が弾け混ざり、破裂と熱波が荒れ狂い爆音を奏でる。

 

 

「――――――”赤月”」

 

 

 されど、拘束されてもなお無明は冷静そのもの。

強烈に束縛された状態だと言うのに、平然とした態度で即座に大技である赤月を放ち、爆炎を切り裂いたではないか。

 

 本来ならば技すらも出せぬほどに束縛されているはずであるが、移動が不可能程度の束縛に留められてしまっているのは、無明がそれほどの力を持っていることの証明だ。

 

 

 ――――そして赤月(しゃくげつ)

超高速で周囲に広範囲の斬撃を放つ、無明が編み出した技の一つ。

 

 数百と言う数の斬撃を、広範囲にばら撒く過程で発生する強烈な摩擦熱により、ほんのり周囲を赤く染めることから、この名を付けた。

 

 一瞬で放たれる数百の斬撃故に、先ほど三人が何もわからず食らい、吹き飛ばされたと言う訳だ。

また、無明が「色」を名前に付けた技は、他の技より上位と見なしており、必殺奥義に位置付けている。

 

 

「アーンドッ!! ”雷風螺旋撃”ッ!! もってきなぁ!!」

 

「何ッ!? 爆発と爆炎を暴風の渦が飲み込んで――――――」

 

 

 爆炎は切り裂かれ散り散りとなると思ったその直後、カギはすでに再び完成させた天雷螺旋剣を開放し、雷風螺旋撃を無明へとぶちかました。

 

 風雷螺旋撃は未だ残っている周囲の爆炎を飲み込んで、炎と雷が混ざった渦となりて、無明へと再び襲い掛かったのだ。

 

 

「ぬぅ…………」

 

 

 流石に連続した技を防ぐ手がなかった無明は、爆炎を飲み込んだ風雷螺旋撃の直撃を受け、多少のダメージを受けた様子を見せた。

 

 ただ、多少であって大ダメージではない。

破壊された昼刻透月はすでに復元済みであり、ほとんどのダメージを防御できているからだ。

 

 

「これでもほとんどダメージになってねぇってのかよ!? ふざけやがってぇッ!!」

 

「だが、間違いなくダメージにはなった」

 

「拙者たちが諦めない限り、前進あるのみでござる!」

 

 

 今の攻撃でさえあまりダメージが通らなかったのを見たカギは、腹立たしいと言う様子で叫んでいた。

 

 しかし、良い方向に考えれば、しっかりダメージになっているということだ。

アルスはそれを前向きにとらえて発言し、であれば何度でも攻撃するだけだと楓も再び戦闘態勢をとる。

 

 

「グッ…………。――――――予想以上の、束縛だ…………」

 

「俺の自慢の十八番だからな! そのまま黙って袋叩きにされてくれッ!!」

 

 

 そんな三人の会話中、無明は必死にアルスの結界を解こうともがく。

だが、予想以上の結界の拘束は頑丈であり、無明の力をもってしても解放することは叶わない。

 

 アルスもそれを見て安心しつつも、だから自慢にしていると述べて再び魔法を使おうと動き出す。

 

 

「しかし、技は出せる。――――――”銀月(ぎんげつ)”」

 

 

 されど、移動できぬだけならば問題ないと無明は判断。

これ程の強烈な束縛を受けながらも、先ほども普段どおりに精彩を欠くこともなく技が出せたことを思い出し、瞬時に技を解き放つ。

 

 ――――銀月(ぎんげつ)

無明が誇る赤月と並ぶ奥義に位置付けた技の一つ。

超絶的な範囲に何重にも重なるような斬撃が発生する、対軍用の奥義だ。

 

 

「なっなんつー範囲の攻撃だよっ!? 結界のための触媒にしてたスターランサーもろとも吹き飛ばしやがったッ!?」

 

「これで、自由になれた、な」

 

 

 銀月の超広範囲に及ぶ複数の斬撃によって、アルスが配置した結界のためのスターランサーが全て破壊されたではないか。

 

 これによって結界は砕かれ、無明は束縛から解放され、身動きがとれるようになってしまったのだ。

 

 

「いってえぇぇってんだよこのクソヤローッ!!! ”神殺轟雷”ッ!!」

 

「何…………ッ!?」

 

 

 また、飛び込んですでに接近していたカギは、銀月を受けた痛みに叫び声をあげながらも、なお雷神斧槍を開放し神殺轟雷を無明にぶち込まんと挑む。

 

 今の攻撃範囲と重なった斬撃を受けながらも、こうも接近を許したことに、無明は一瞬驚いた。

が、一瞬は一瞬。即座にカギの攻撃を回避し、距離を開けて丑刻天月を構える。

 

 

「だけどなぁ、もう何度も技を受けてきた。お前の攻撃の仕組みは大体読めてきてるんだよ」

 

「ほう?」

 

 

 結界を破壊されたとは言え、アルスは幾度となく行われた技などを観察し、すでに丑刻天月や無明の技の特徴などを理解し始めていた。

 

 ――――――無明は最初に丑刻天月の説明で、刀身が自在に伸び縮みすることは開示した。

だが、丑刻天月の能力はそれだけにとどまってはいない。

 

 自在に伸縮する刀身以外にも、光属性の光刃が分裂して斬撃として繰り出されていたのだ。

それは丑刻天月が、()()()()1()0()0()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが要因だ。

 

 1001発分の魔法の射手を分離させ、魔法の射手を斬撃の形に変化させ、複数の斬撃として攻撃を行っていたのだ。

これこそが何重にも広範囲に発生する斬撃の正体だったのだ。

 

 

 とは言え、それを理解したからと言って、対策ができるかは別問題だ。

アルスは相手に心理的威圧を与えるために、お前の技術はわかってきたと豪語するが、対策自体はまだまだ思いついてはいなかった。

 

 されど、無明は理解されたことに、関心の声を漏らすだけだ。

この技を理解したからと言って、簡単に回避できるようなものではないことを、無明自信がよく理解しているからである。

 

 

「――――参る!」

 

「”天雷螺旋剣”ッ!! でりゃぁッ!!!」

 

 

 無明とアルスが会話しているところに、楓とカギが無明へと仕掛ける。

楓は風魔手裏剣を三つ同時に投擲し、カギは天雷螺旋剣をそのままの形で投擲。

 

 

「その程度の、連携など」

 

 

 当然無明はそれらを簡単に丑刻天月ではじき返し、風魔手裏剣と雷神斧槍は無情にも無明の周囲に突き刺さる。

 

 

「”千の雷”!!」

 

「っ!?」

 

 

 だが、そこへアルスが無詠唱で千の雷を叩き落す。

無明ですら無詠唱で千の雷が使えるなど予想外であり、驚きの表情を見せながらも回避行動へと移っていた。

 

 

「そこでござる!」

 

「解放! ”雷風螺旋撃”いぃッ!!!」

 

「なんだと?」

 

 

 無明が千の雷を回避しようとしたその瞬間、風魔手裏剣に括り付けていた鎖を楓が引き寄せて無明へと向かわせ、さらにカギが天雷螺旋剣の魔力を開放し、雷風螺旋撃として暴風の渦を作り出したではないか。

 

 渦を巻く暴風の相乗効果によって、風魔手裏剣は高速回転しながら無明に襲い掛かる。

また、頭上からは千の雷が迫り、隙のない左右と頭上からの同時攻撃に無明は回避が防御かの選択を迫られた。

 

 

「なるほど。だが…………、これなら、どうだ」

 

 

 三人の絶妙な連携に、流石の無明も舌を巻く。

されど、その程度で冷静さを欠くような人物ではない。

氷のように冷静な態度で、無明は迫りくる脅威を吹き飛ばす。

 

 

「――――――”金月(きんげつ)”」

 

 

 その瞬間、無明は自分が持つ最後で最強の技を解き放った。

 

 ――――金月(きんげつ)

幾多の技を編み出した無明が、最強の奥義として位置付ける必殺の剣技。

上下左右に発生する無数の斬撃が、ほぼ同時に襲い掛かる奥義。

 

 技の発動により雷風螺旋撃の嵐をかき消し、風魔手裏剣を切り刻む。

その瞬間に無明は後退し、千の雷を寸前でかわした。

 

 

「なっなんだぁ!? まだこんな技があるのかよッ!? 嘘だろぉ!?」

 

「なんという絶技でござるかッ!?」

 

 

 さらに、金月の余波がカギたちへと襲い掛かる。

カギと楓は必死に回避しながらも、まだこんな技を隠していたことに驚き戸惑う。

 

 

「クソッ! 回避するのもギリギリだ。このままじゃこっちがジリ貧だ」

 

 

 当然アルスにも斬撃が襲い掛かっており、本当に寸前で斬撃をかわしていた。

また、こんな技を繰り出されては回避に集中せざるを得なくなり、攻撃に転じられないと焦りを見せる。

 

 

「”銀月”」

 

「クソォッ! 無茶苦茶だぜこのヤローッ!!」

 

 

 無明は射程を稼ぐべく、広範囲に渡って大量の斬撃を放つ銀月を発動。

カギはそれをなんとか回避しながらも、後ろへ下がらざるを得なくなり、無明との距離が開くばかりと言うことに愚痴をこぼす。

 

 

「”赤月”」

 

 

 追加で無明は赤月を放った。

目視できるのかわからない速度で、無数の斬撃が広範囲に広がっていく。

 

 

「ざけんなっ!! 技の範囲がアホみたいにでかくて近づけねぇぞクソォッ!?」

 

「どうにか技と技の隙間に入り込み、斬りこまねば倒せぬでござるッ!」

 

 

 馬鹿みたいに広い射程の斬撃に、カギは後ろへ下がって回避しながら苛立ちを感じて怒号のように声を荒げる。

 

 それもそのはず。

無明は丑刻天月の刀身を伸ばし、射程をさらに追加していたのだ。

故に、斬撃の射程は先ほど以上となり、広範囲に放たれる斬撃の範囲は、前の斬撃の倍になっていたのである。

 

 楓も斬撃と斬撃の間を通り抜けて、何とか近づかねばと斬撃を回避しつつ、対策を練っていくが。

 

 

「”金月”!」

 

 

 無明は猛攻を止めることはせず、次に金月を無明は解き放つ。

金月のほぼ同時に上下左右から迫りくる広範囲の斬撃は、まさに悪夢そのもの。

 

 カギも楓もアルスも、無明の奥義の連続に避けることだけを考えて動くことしかできず、攻撃の一手すら出せずにいた。

 

 

「どうすりゃいいんだよこの状況!?」

 

「くっ……接近すらも困難…………。これでは刃が届かぬでござる」

 

 

 カギは回避に専念するだけの状況に頭を抱え、楓も攻撃に転じることができず、焦燥の表情を浮かべるしかなかった。

 

 

「――――――いやはや、確かにすげぇ技の連続だ。だけどなっ!」

 

 

 しかし、一人だけ冷静に無明の技に対応するものがいた。

それこそアルスだ。アルスは実戦経験が二人よりもずっと多い。

メガロメセンブリアのエージェントとして、長年任務を遂行し、いくつもの修羅場を潜り抜けてきた猛者だ。

 

 

「”スターランサー×5”ッ!!」

 

 

 アルスはそこでなんと、スターランサーを五つも生成したではないか。

 

 ――――このスターランサー、そしてスタースティンガーの触媒は、実はコイン型の魔法触媒だ。

 

 術具融合は必ず武器などの触媒と魔法を融合させなければならない。しかし、武器などは流石に大量に持つことはできない。

故に、大量の触媒を所有し、なおかつかさばらない大きさのもの、コインに目を付けたのだ。

 

 まあ、楓のような忍者などはどこかしらに武器を折りたたんで隠し、大量に巨大な武装を所有することが可能だったりするのだが。

 

 

「もうちょい燃費抑えて余力残したかったが、ここでやられるよりかはいい」

 

 

 また、アルスとてやみくもにスターランサーを大量に作り出した訳ではない。

 

 スターランサーは雷の投擲の魔法を融合させている。

それを普段は魔力コントロールの特典で魔力消費を最低限まで抑え、必要最小限の魔力で作成している。

 

 されど、今作り出した五つのスターランサーは、膨大な魔力を消費し、強固に編み出した特別性だ。

 

 …………はっきり言うとアルスの魔力は、カギやエヴァンジェリンなどに比べたら雀の涙ほどだ。

一般的な魔法使いの魔力量と比べればまあまああるかな、と言うぐらいであり、化け物クラスの魔力量に比べたら半分以下程度か下手すればそれ以下。

 

 そのためアルスは、常に魔力消費量を精密な魔力操作による工夫で節約し、後のことを考えて魔法を使っていた。

が、もはやそれすら言っていられないような状況だ。だから、アルスはコスト度外視の戦法に出ることにしたのだ。

 

 

「五本の雷の槍が、三十本に…………。だが、数を増やした程度では、無意味」

 

 

 そして、スターランサーは六つに分離する槍状の術具融合。

五本のスターランサーが全て六つずつに分離すれば、合計三十本の槍となる。

 

 無明はそれを見て、数だけ増えた槍に無意味と吐き捨てた。

 

 

「そんでこれを全部防御に使う!」

 

「こいつぁ!?」

 

 

 とは言え、アルスも無計画に槍を増やした訳ではない。

しっかりと戦術に組み込むために、数をここまで増やしたのだ。

 

 アルスは手を振るってスターランサーを、自分の思った場所へと配置していく。

空を飛び、落下し、流星のごとく定位置へと配置されていくスターランサーに、カギも感服の声を漏らす。

 

 

「鎧にはならねぇが、障壁みたいな使い方はできなくもねぇ」

 

「おっしゃーッ!! やれるッ!!」

 

「助かるでござるッ!!」

 

 

 二十本のスターランサーが浮遊しながらカギと楓の周囲に十本ずつ配置され、アルスが軽く説明を語る。

それは、このスターランサーを障壁として機能させ、無明の攻撃を耐えながら前進するというものだった。

 

 カギはこれならつっこめると、意気込みを見せ、楓もアルスの作戦に礼を言う。

そして、二人は悠々と無明へと切り込んでいったのである。

 

 

「”赤月”!」

 

「こんだけやってんのにクソ痛ぇ!? だけどなぁ!!」

 

 

 無明は即座に近づくカギらに、赤月を叩き込む。

カギは強引に突破しようと、斬撃を何度も受けながら進むが、スターランサー十本の防御をもってしても、それなりのダメージを受けた様子だった。

 

 されど、その程度の痛みではカギは止まらず、無明へとどんどん接近していく。

 

 

「潜り抜けて、きただと……? 荒れ狂う、斬撃の嵐の中を…………?」

 

 

 まさかこんな強引な形で自分の技を突破してくるとは思ってなかった無明は、驚愕の表情を見せたではないか。

 

 

「オラよォッ!! ”雷風螺旋撃”ッ!!」

 

「ぬう」

 

 

 カギは握りしめた天雷螺旋剣を開放し、無明へと雷風螺旋撃をぶちこむ。

無明はすぐさま精神を落ち着かせ、最小の動きでそれを回避。

 

 ――――――だが。

 

 

「――――ぐっ!? これは…………!?」

 

「アルス殿の”スタースティンガー”でござるよッ!!」

 

「自分の刀代わりに…………!?」

 

 

 カギのぶっぱなした雷風螺旋撃の中から、なんと楓が飛び出し無明へと短剣を突き立てたのだ。

 

 何とか回避をしようとしたが故に致命傷になる場所は避けた無明だったが、その短剣の効力により障壁と昼刻透月を粉砕されていた。

 

 何故なら、楓が握りしめた短剣は自分が使っていた忍者刀などではなく、アルスが用意した障壁破壊用術具融合である、スタースティンガーだったからだ。

 

 

「んでもって、近づいたスターランサーをこうやって!」

 

「――――――!? まさかっ!?」

 

 

 さらに、二人が無明に近づいたのを見たアルスは、スターランサーを二人から分離させ、無明の周囲に突き立てて配置。

 

 スターランサーの配置にすべてを察した無明は、今の戦いにおいてはじめて焦燥を感じて冷汗を流した。

 

 

「フェイタルバインドフィールド最大出力ッ!! ”ギガグラビトンホールド”ッ!!!」

 

「があっ!? ぐうおおぅうぅッッ!? ううおおおぉぉぉおおぉぉぉおおぉぉッッッ!!??」

 

 

 そう、再度アルスは無明に拘束結界を使ったのだ。

しかも前以上に強力な束縛力がある結界、その名をギガグラビトンホールド。

 

 対竜種用結界であったフェイタイルバイントフィールドを、さらに強化したこの結界。

範囲は半分以下になってしまったが、左右からの強烈な圧迫感と頭上からの超重力により、囲った相手を完全に押しつぶして身動き一つとれなくさせるものだ。

 

 竜種用の結界を強化しているのだから、常人ならば押しつぶされてペシャンコになってもおかしくないが、原型をとどめたまま束縛される無明は、やはり逸脱した怪物と呼べるほどの存在だろう。

 

 だが、そんな怪物である無明ですら、障壁と昼刻透月を失い無防備の状態から直に受ける、想像を絶する圧迫と重力には抗えない。

全身がバラバラになる程の圧力に耐えきれず、無明程の者も喉から血が出るんじゃないかと言うほどの絶叫をあげていた。

 

 

「特別製でござるよ! ”天魔覆滅・縛鎖地網陣”ッ!!」

 

「ぐっぐうぅっ!!?」

 

 

 強烈な束縛によって動けぬ無明へと、楓が情け容赦なく追撃を仕掛ける。

楓が風魔手裏剣を二つ同時に投れば、動けぬ無明の右肩、左足に命中。

 

 無明に風魔手裏剣が命中した瞬間、風魔手裏剣へとくくりつけた鎖に配置していた、大量の”威力の高い特別な”爆符を起爆。

巨大な爆発に飲み込まれた無明は、爆風を直に食らった痛みで、たまらず呻き声をあげた。

 

 

「”スターランサー”持ってきやがれっ!!」

 

「うがああぁぁぁぁッ! ぬうぅうあぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

 さらにアルスが自分の周囲に配置していた残り十本のスターランサーを、無明へ向けて発射。

無明は動くことすら叶わないため防御すらできず、それを全て自分の体で受け止め、串刺しとなったのである。

 

 ――――スターランサーは雷の投擲でできた術具融合。

雷属性の魔法の特性で、強烈な電撃のダメージを受けた無明は、拘束だけでなく感電による麻痺にも苛まれ、完全に身動きがとれぬ状態となってしまった。

 

 結界と電撃のダメージを受けた無明は、たまらず叫んだ。

地鳴りのようなおぞましい叫び声。先ほど飄々としていた無明とは思えぬ声であった。

 

 

「うおおおぉぉりゃあぁあぁぁッッッ!!! 極大解放ッ!! ”界滅超轟雷(かいめつちょうごうらい)”いいぃぃッ!!!」

 

 

 そして、カギがとどめとばかりに最大の魔力を突っ込んだ雷神斧槍を開放し、巨大な魔法の槍を出現させる。

ネギが得意としていた巨人ころしに似た巨大な雷の槍を、カギは界滅超轟雷(かいめつちょうごうらい)と名付け叫び、これで終わりだとばかりに無明へと放つ。

 

 

「ぐうおおおおおおぉぉあぁあぁぁあぁッッッ!!!!??」

 

 

 無明にもはやカギの最大魔法を防ぐすべはない。

無明に唯一できること、それは爆風の嵐にまざり、絶叫の悲鳴を奏でること、それだけだ。

 

 当然、界滅超轟雷は遮るものなどなく、吸い込まれるように無明へと着弾し、雷と嵐の爆風があたり一帯を覆った。

 

 

 ――――――決着はついた。

界滅超轟雷の爆心地には巨大なクレーターができ、その中央には無明が意識を失い立ち尽くしていた。

全身が雷で焼かれズタボロになっており、死んではいないようだが、もはや戦闘不能、再起不能なのは一目瞭然。

 

 その後、無明はゆっくりと前のめりに倒れ、ようやく強敵との戦いが終わりを告げた。

 

 

「ようやく倒れたみてぇだな…………」

 

 

 戦いに勝ったことを確認したアルスは、疲れた表情を見せてそのまま尻もちをついて息を吐く。

 

 

「強敵でござった」

 

「マジで疲れたぜぇ…………」

 

 

 楓も戦闘態勢と緊張を解き、カギも体を前にだらけさせて疲れたと言う態度を見せていた。

 

 

「兄貴ィ!! やったなぁ!!!」

 

「カモーッ!! やったぞ!! 俺はやったぞ!!」

 

「兄貴イィッ!!」

 

 

 そこへカモミールが現れ、大喜びしながらカギへと飛びついてきた。

カギもカモミールと抱き合って、喜びを分かち合ったのである。

 

 

「喜ぶのはいいが、俺、魔力もうあんま残ってねぇ」

 

「大丈夫でござるか?」

 

「一応はなぁ」

 

 

 そこへ少し水を差すような発言をするアルス。

とは言え、アルスの残り魔力がないと言うのは死活問題であり、言っておかなければならないことだ。

 

 楓がアルスへと、魔力の消耗で何か体に異変がないかを尋ねるが、それ自体は今はないとアルスは答える。

 

 

「俺はまだまだ全然元気元気で平気だけど?」

 

「はぁ……。俺は大量の魔力を特典で選んでないんでなぁ」

 

「あーなるほどッ!」

 

 

 そこへカギが自分は全く持って平気平気と余裕を見せ出せば、アルスは元気なカギを見て、小さくため息を吐いた後、魔力がない理由を語った。

 

 アルスが選んだ二つの特典。

それは「無詠唱」と「魔力コントロール」だ。そこには膨大な魔力など、魔力量を増大化するものは含まれていない。

故に、アルスの魔力は並みぐらいとなっているのだ。

 

 カギはアルスの言葉を聞いて、納得した様子を見せた。

そもそもカギは父親である「ナギの能力」を特典の一つに選んでおり、アホみたいに強い身体能力と膨大な魔力を両立して貰っている。

 

 お得なセット特典みたいなものを選んだカギには、アルスの魔力事情など理解しづらいものであったのだ。

 

 

「何の話かはわからぬが、アルス殿の魔力は心もとないところまで来ているのでござるな」

 

「ああ。野郎に使いすぎて、……余力として残しておきたかった分も、まあまあ使っちまった」

 

「それは…………」

 

 

 楓にはアルスが言う「特典」と言うものがわからないのでカギとの会話には付いていけないが、アルスの魔力が心もとないことはわかった。

 

 それを楓に聞かれたアルスは、余力として残しておきたかった分の魔力も使わされたと悔し気に言葉にする。

その言葉に対して楓も、それは結構マズイのではないか、と言いかけた。

 

 

「んじゃどうすんだ? 先進むか? 戻るか?」

 

「アルス殿や拙者らの状態を考えれば…………、ここで退くのも仕方ない状況でござる」

 

 

 ならどうする? とカギは二人に問う。

この状況で先に進むのか、安全を取って戻るのか、その選択をしなければならない。

 

 楓の考えとしては、自分たちの今の現状を客観的に見るならば、退却も視野に入れるべきだと語る。

 

 

「ダメージ自体は俺も治癒(クーラ)ぐらい使えるし、何とかなるっちゃなるけどよ」

 

「なんだよ。そっちも使えたのかよ」

 

「そりゃ師匠(マスター)がそっちの方も得意だかんなぁ。覚えておいて損はねぇって叩き込まれたわい」

 

 

 そこへカギは、傷自体は自分の治癒(クーラ)の魔法でどうにかなると言い出した。

アルスがカギの発言に、お前も使えたの? と少し驚いた顔を見せれば、カギも当然と言う表情で使える理由を語りだした。

 

 何せカギの師匠はエヴァンジェリン。

この世界のエヴァンジェリンは治癒魔法のスペシャリストだ。

そんなエヴァンジェリンが戦闘だけを鍛える訳がなかったのである。

 

 …………実際の話、カギは「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中に傷を癒す秘薬があるから不要だぜ!」つっぱねたが、「戦闘中それを態々取り出して使うのか?」と言われたので、習う事にしたと言う経緯があったりする。

 

 

「助かるでござる」

 

「いいってことよ!」

 

 

 と、カギは楓へと治癒(クーラ)をかけた。

楓は感謝を述べれば、カギは気にすんなと言うだけであった。

 

 カギにとって楓も当然大事な生徒。

生徒の傷を癒すことなど、生徒に手を差し伸べるのとなんら差がないのだ。

 

 

「じゃ、どうするん?」

 

「傷は癒えても魔力や気はすぐに回復できぬが故…………」

 

 

 そして、会話は進退のことへと戻る。

カギは再びどうすんだ? と言うが、楓は傷が言えても魔力や気などは魔法じゃ回復できないと、悩むしぐさを見せていた。

 

 

「――――先に進もう」

 

「大丈夫かよ?」

 

 

 そこでアルスが出した結論は、進行であった、

カギもアルスの判断に、いけるのか? と静かに問う。

 

 

「ここまで来たんだ。行くしかない」

 

 

 無明とか言う敵は、この先に最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を守護しているものがいる、と言った。

ゴールは近いということだ。

 

 ならば、ここまで来て退くと言うのは、選択に存在しない。

あるのはそこを目指して進むのみだ。

 

 

「それに今の回復時間で多少休憩できたし、何とかなりそうだ」

 

「しかし」

 

 

 また、今ここで話し合いをしていた時間で、多少だが魔力が回復したとアルスは言う。

されど、楓は先に進むには不安要素が多いと考え、躊躇っている。

 

 何故なら、先ほど戦った無明レベルの相手が、この先にいる可能性が高いからだ。

特に最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の守護者は、無明と同等かそれ以上ではないかと睨んでいるのだ。

 

 

「歴戦の猛者が行けるってんだから信じようぜ」

 

「…………そうでござったな」

 

 

 そう、アルスは長年任務をこなしてきたベテランだ。

その男が進むと言うのだから、その言葉通りにするべきだと、カギは話す。

 

 楓もカギの言葉には納得できない部分もあるが、自分たちよりも実戦経験豊富なアルスが言うのだから、と進むことに賛成した。

 

 

「まっ、俺は魔力あんま残ってないから、後ろで色々考える役をやらせてもらうわ」

 

「サポートよろしく頼むぜぇ」

 

 

 とは言え、アルスの余力はほとんど少ない。

後ろから作戦考案やらバックアップやらを行う後衛として、献上するとアルスは言った。

 

 カギはそんなアルスに特に気にせず、任せたぜと快く頼んだ。

 

 

「俺も考える役ぐらいできますぜぇ!」

 

「んじゃ、俺とお前さんで後方支援といきますか」

 

 

 そこへカモミールも顔を出し、作戦立案ならできると豪語。

ならばと、アルスは二人でやっていこうと、カモミールを自分の肩の上に招き入れた。

 

 

「でもこのまま進まず戻った方がよかった気がしてきた…………。今更すぎるけど…………」

 

「臆病風吹かすなってカモ! 俺もいるんだからよ!」

 

 

 が、カモミールはアルスの肩に乗った直後、急激な後悔に襲われた。

こんな危険な場所をさらに奥に進むよりも、安全な後退を選ぶべきだったのではないのかと。

 

 そんな不安に駆られるカモミールを励まし安心させようと、カギはでかい口と胸を叩いた。

 

 

「いやまあ…………頼りにしてるぜ兄貴」

 

「任せとけって!」

 

 

 そのカギの根拠のない自信に、カモミールは毎回ながら呆れるも、それでもなんとかしてきた実績を考え、悩んだ末にその自信を信じることにした。

 

 カギもカモミールに頼まれたなら、より一層気を引き締めなければと思いながら、ニヤリと笑ってサムズアップするのであった。

 

 そして、三人と一匹は、墓守り人の宮殿の奥へと進んでいった。

全ては魔法世界崩壊を阻止するために、そのために必要な最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を奪取するために――――――。

 

 

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