少し時間を戻して、ここは
そこでは未だにアスナが謎の男と戦っていた。
「この……!」
「無駄だ」
アスナはハマノツルギで男を攻撃するも、男は避けることに集中してギリギリで回避して見せる。
「どうやれば帰れるの……!?」
「何度同じ質問をした? 無駄だと言っているだろう」
この”隣の世界”からネギのいる世界に帰るには、どうすればいいのか。
アスナは考えながら、目の前の男へとハマノツルギを振るう。
男はそれを聞かれたと思ったのか、答えないと意地悪な顔で吐き捨て、左手で握った拳銃でアスナを襲う。
「まったくお転婆な
「ふざけないで……!」
ただ、男は目の前のアスナの強さに、はっきり言って驚いてばかりだ。
自分の想像以上に剣の扱いが上手く、咸卦法の使い方も非常に完成されている。
だからそれを罵倒として言い放てば、弾丸を軽々と避けたアスナは怒りを爆発させ、さらにハマノツルギを振るう速度を加速させる。
「ふざけてないぞ。ほれ」
「――――っ!?」
が、男はそれを
アスナは急に剣でハマノツルギが弾かれたことに驚き、数歩下がって構えなおした。
「剣!? いつの間に……!?」
「用意はいい方だからな」
「何ですって……!?」
数歩下がったアスナへと男は勢いをつけて、その剣を横なぎに振るう。
アスナはそれを一歩下がり回避し、逆に男へとハマノツルギを振るうが、男はそれを理解していたように動き、またしてもアスナのハマノツルギをはじいて防御したのだ。
突如として剣を持ちだした男に、アスナは驚いた。
先ほどまでは拳銃を武器にしていたのに、気が付けば剣を握って振ってきたからだ。
――――と言うのも、この男が神から貰った特典はジョジョの奇妙な冒険Part7・SBRに登場する敵、”ファニー・ヴァレンタイン大統領の能力”だ。
何かに挟まれば”隣の世界”へ移動でき、他者を挟んでも移動させられる。
つまり隣の世界に剣を置いておき、挟まって移動し、取りに行っただけにすぎない。
ただ、本来、ファニー・ヴァレンタイン大統領のように、隣の世界の自分と
先ほどアスナから受けた傷が治ったのも、”隣の世界”に保管してある治療用魔法薬を使っただけだ。
と言うのも、この男は転生者だ。
ファニー・ヴァレンタイン大統領ではない。
よって、
ファニー・ヴァレンタインはアメリカ大統領であり、自国を豊かにすると言う使命を精神の巨大な柱としている。
だからこそ、他の平行世界のファニー・ヴァレンタイン大統領へと入れ替わり、自らが死ぬことを恐れず能力を使えるのだ。
だが、転生者はどうだろうか。
何か大きなものを守護したり、あるいは上り詰めたりと言う精神的な柱がない。
そんなやわな精神力でヴァレンタイン大統領のように、隣の世界の自分へ能力を与えて自分が犠牲になるような行動など、できる訳がない!
なので、この男はひたすら魔法を勉強して習得したり、魔力の強化や剣術を練習したりした。それがこの男だ。
しかし、魔法はアスナに通じないので、魔力の強化と剣で戦っていると言う訳だ。
「”D・4・C”ッ!!」
「くっ!? 見えない攻撃!?」
男はD・4・Cを繰り出し、両腕でラッシュを放つ。
アスナにはスタンドが見えないので、雰囲気で察して下がって回避するしか方法がない。
とは言え、アスナはスタープラチナ使いのヘンタイ転生者と戦ったり、状助の戦いぶりを見て知っているので、思った以上に察することができるのだ。
「ホラホラホラホラホラホラホラホラァッ!!」
「ッ!?」
D・4・Cの攻撃が見切られたのを察した男は、次に剣を高速で突きまくる。
剣先が無数に存在するかのような速度で突きのラッシュを受けたアスナは、ハマノツルギでガードしつつ、またしても後退を余儀なくされた。
「ハァッ!!」
「”D・4・C”」
「またっ!?」
だが、瞬動を用いてアスナは一瞬にして男へと肉薄、そのまま垂直にハマノツルギを叩き落す。
しかし、それは悪手であり、またしても男はハマノツルギと地面に挟まれ、この世界から姿を消すだけだ。
「振り下ろすと消える。これはわかったけれども…………」
とは言え、アスナもそのパターンを理解し始めていた。
ハマノツルギを振り下ろせば、男が消えることはすでにわかっているのだ。
「そういえば、私がここに連れてこられる前……、何をされた…………?」
そして、そこでアスナはさらに深く男の能力について考える。
そもそも、この
そうだ、確かハンカチみたいな布を頭にかぶせられ、そのまま何もわからずここへ来た。
この
「待って…………。だんだんわかってきた気がする」
そこまで考えたアスナは、ふと男の能力に勘づき始めた。
同じパターンで消える男。そのパターンは、ハマノツルギを振り下ろした時。
そこに大きな秘密があるはずだと。
「もしかして…………」
ならば、そのパターンは自分にも適応されるかもしれないのではないか?
そのパターン以外でならば、男を倒すことができるのではないか?
アスナはそう思考し、仮説をいくつか立てていく。
それとアスナに男の能力をじっくりと分析する余裕があるのは、
何故なら
つまり、同じ世界に同じ人物は存在できずに、対消滅してしまう。
その例外こそがD・4・Cを持つ男であり、何人でも同じ世界に存在できるのだ。
ただまあ、そんなことをする気など本人にはない。
呼んだところで来ないし、自分同士で喧嘩になるだけだからだ。
それに男はアスナを封じ込めたいだけで殺す気がないから、このような状況にしていると言う訳もあった。
……とは言えだ、それはこのD・4・Cの能力で移動しているからそうなる。
他の手段で隣の世界へ移動したなら、また違う現象が起こるかもしれないし、何も起こらないかもしれないが。
「貰ったぞッ!!」
「ッ! 来た!」
すると、男が何もない場所から登場し、再びアスナへと剣を振るう。
アスナは思考しながらも、常に警戒していたため、それをすぐに察知し、男の方へと向いて攻撃を開始していた。
「そこッ!」
「ぐうっ!? 見切られただとッ!?」
アスナの素早い行動に男は驚いた。
出現して剣を振るった直後に、すでに横なぎに振るわれたハマノツルギが目の前に迫ってきていたからだ。
男はそれを回避できず、ギリギリ後退したものの、軽く左腕にハマノツルギを受けて切り傷を作っていた。
「ハアァーッ!!」
「ぐうううッ!?!?」
さらにアスナは逃がすまいと追撃を放ち、男は胸に斜めに切られた傷を作る。
男はまだまだアスナのことを侮っていたのだ。
「ハァ……ハァ……、これでもまだ届かぬとは…………。思った以上に強い……」
自分の不意打ちを簡単に防ぎ、逆に反撃でダメージを与えてきたアスナに、男は戦慄するしかなかった。
予想以上、いや、はるかに上回った実力を持つアスナに、男は予想外だと悪態をつく。
「これでッ!!」
「ッ!? チィ!!」
だが、そこでボーっと突っ立っていれば、アスナがチャンスとばかりにさらなる追撃を放つだけだ。
男はマズイと考え、後退しつつアスナの横なぎの攻撃を剣で防御したが、強烈な衝撃で剣が弾き飛ばされ、自然と舌打ちが漏れる。
「ハァッ!!」
「クッ!? 流石に我が能力のメカニズムを理解し始めたか!?」
そこへアスナは追い打ちとばかりに、下から斜め上へとハマノツルギを振り上げる。
このハマノツルギの軌道を見た男は、真上から振り下ろす攻撃が自分をこの世界から消すことを理解されたと察し、厄介に思い始めた。
「だったら、これなら!」
「何ッ!? なぜハマノツルギをしまった!?」
男は危険だと考えアスナから距離を取ることを選んだ。
この世界に閉じ込めておくだけなら、無理をして戦う必要がないからだ。
それを見たアスナは、突如としてハマノツルギを仮契約カードへと戻したではないか。
アスナのその行動に男が驚き戸惑えば、男の放った言葉に答えるかのように、背中に背負っていたメトゥーナトから預かった剣を引き抜いたのである。
「”光の剣”ッ!!」
「気の剣圧を飛ばしているのかッ!? ぐうおおッ!?」
アスナはメトゥーナトの剣に咸卦の気を乗せて、その技を解き放つ。
メトゥーナト直伝の光の剣だ。
光の剣は無心となりて気を解き放つメトゥーナトが編み出した奥義。
その威力はただの気の斬撃とは比べ物にならない威力であり、最大威力ならば山すらも切り刻む。
それをあえて掠るように放てば、後方に下がった男の右肩へ軽く命中し、衝撃で男は吹き飛ばされたのだ。
また、この預かった剣は、ハルナの飛行船に保管してあったのを、突入前に持ってきていたものだ。
「ぐうっ…………。
今の斬撃と衝撃は、男にとってダメージが大きかった。
すでに血まみれでズタボロになった男は、どうにかして
隣の世界へ移動し、そこにおいてある魔法薬などで治療するためだ。
「どこへ行こうと言うのかしら?」
「…………
男が四つん這いになって這っている目の前に、ズンと立ちはだかるアスナ。
もはや逃がすことはできない。帰る方法を聞きだそうと、剣を男の顔へ近づけ脅すように威圧する。
その姿に男は咄嗟に出た言葉は、
男は知らないのだ。彼女の苗字が
「クックックッ」
「…………何がおかしいのよ」
「早く帰らないと、そろそろマズイことになるんじゃあないか?」
「…………!」
されど、男はまだ諦めていない。
そこで何とかアスナに剣を縦に振るわそうと、挑発する言葉を吐いて誘導しようとする。
そう、今ここで戦っている間にも、時間は過ぎている。
元の世界の魔法世界が、刻一刻と終わりに近づいていると。
「もうすぐ、始まるだろうなぁ、
「だから今すぐ帰るのよ!」
この世界ではまだ起こってないようだが、元の世界はどうだろうか。
アスナはその男の言葉に対して、そこへ帰るとはっきり告げた。
こんなところで時間を費やしている暇はない、今すぐにでも戻らなければと。
「できるのか? そんなことが?」
「だったら教えなさいよ。
が、男はアスナがまだ完全に自分の能力を知った訳ではないことを理解している。
だからさらに挑発して、自分が
アスナもそれを言われたからこそ、ならば言えと剣をチラつかせ、さらに威圧を与えて男を脅す。
「馬鹿が……教えるか。舐めるな小娘」
「ならッ! これで終わりよ!」
されど、男はその剣を叩きつけてもらいたいのだ。
剣を真上から叩きつけられさえすれば、
ならばと、アスナは男の言葉で焦ったのか、剣を頭上に掲げ、そのまままっすぐ男へと叩き落してしまったのだ。
「ふっ。――――D・4・C」
男はアスナが挑発に乗ってくれたと思い、チョロい女だと嘲笑いながら能力を発動しようとする。
しかし、今の行動は男にとって予想外なものだった。
「――――ッ!? なんだッ!? 地面の方を叩き割るなどッ!?」
どう言う訳かアスナが振り下ろした剣は、男の顔の真横に突き刺さり、宮殿の石畳を大きく砕き割っただけで終わったからだ。
男はアスナが何故こんな行動をしたのかわからず、たまらず声を荒げた。
「もう手品のタネはわかってきてるのよ。
「ふん。そこまで知られるのは想定内だ」
そこでアスナは男の能力のことを
とは言え、男も能力を何度も見せたからには、そのぐらいバレるのは当然わかっていたことだ。
「だからこうするのよッ!!」
「何だとオォッ!? 地面の下から斬撃をッ!?」
であれば、真上から攻撃しなければよいと、アスナは地面に刺さった剣を上に振り上げ、気の刃を男へ放った。
男は焦った。下からの攻撃では、剣と地面との間に挟まれない。
「だがっ!
されど、目の前にはアスナが地面に作った裂け目がある。
「
――――しかし、それこそアスナが張った罠だった。
剣と地面に挟まれば男が消えることは理解した。
ならば
何故なら、ここへ飛ばされて来た時に、ハンカチのような布を使って地面と
それを男がはっきりと答えたのだ。
さらには
それなら、男が言ったようにしてみる価値はあると考え、アスナは行動するだけだ。
たとえ男が答えなかったとも、行動を見ればすぐにわかる。そういう意味では二重の罠だったのだ。
それを聞いたアスナはニコリと笑って皮肉が効いた感謝を述べると、自分が作った地面の切れ目に手を突っ込んだのだ。
するとアスナの体がどんどんと切れ目へと入り込んでいき、その場から消滅して思惑通りに元の世界へと戻っていったのである。
「なっ、何イィッ!? しっ、しまったッ!? 欺かれたッ!!! 小娘ごときにッ!!!!」
男は罠にはまったことに気が付き、気の斬撃を転がって回避しながら大いに焦った後に、強烈な後悔と怒りが湧いてきた。
たかが小娘と侮っていたアスナに、してやられたことが許せなかったのだ。
と言っても、悔しかろうが怒ろうが、能力を見せすぎた男の失策だ。
「クソッ!! この私を舐めるんじゃあないぞッ!! 追いかけてもう一度連れ込んでくれるッ!!」
だが、逃げた先は元の世界だ。
もう一度そこへ戻り、再び挟んでやればいいだけだ。
怒りを抱きながら男は、アスナが消えた裂け目に手を突っ込み、同じルートで元の世界へと移動したのだった。
…… …… ……
同じく少し時間を戻して、ネギと小太郎は『フェイト』と激戦を繰り広げていた。
「ハアアァァッ!! ”最果ての光壁”ッ!!!」
「ぐっ!? なんだこれは……!? 何が起こっている……!?」
ネギは最果ての光壁にて『フェイト』を攻撃。
『フェイト』はご自慢の多重障壁をあっけなく砕かれ、混乱した頭をどうにか冷静に戻そうと必死になっていた。
何せ『フェイト』には、
いや、違う。
「俺も忘れちゃ困るでぇ!!」
「クッ!!? 犬上小太郎!!」
だが、それはネギだけではない。
この
はっきり言うと、『フェイト』は小太郎をある程度下に見ている。
確かに実力は上級だろう。それでも自分を倒すには値しないと、そう考えている。
だと言うのに、自分へ瞬間的に肉薄し、ぶん殴ってくる。
そのぶん殴ってくる拳が、さらに避けきれない。前の小太郎ではありえないことだった。
「障壁のアドバンテージを失ったか……!? だがッ!!」
曼荼羅のような多重障壁も、全部砕かれてしまえば丸裸同然だ。
その強大な防御力であるあの障壁が使えないと言うのは非常に不利な状況だと考えたが、それでも造物主の使徒として生み出された強靭なフィジカルと膨大な魔力で有利だと判断する。
「”万象貫く黒杭の円環”ッ!!」
ならば、全力で打ち砕くのみ。
『フェイト』はそう考え、すぐさま膨大な量の黒い杭を作り出す。
「ジャック・ラカンは凌いだよ……! 君はどうだい!?」
そして、
ネギは何も言わなかったが、その『フェイト』の言葉にも疑問が出た。
何故なら以前フェイトは、
さらにラカンも
「”盾”よッ!」
「ッ!? ”槍”が”盾”に!? だけど、その程度で防げるとは思わないでほしいね……!」
そんなことを考えながらも、ネギはすでにその魔法への対策を講じていた。
最果ての光壁の槍の部分が左右へと開き、柄の部分が折りたたまれ、カイトシールドのような形へと変形したのだ。
されど『フェイト』はこの魔法に自信がある。
その程度の防御など、貫通するだけだと思ったのだ。
「”最果ての光壁”! ”最強防御”ッ!!」
「――――はじき返した……だと……!?」
そしてネギは最果ての光壁から、さらに強靭な障壁を展開すれば、『フェイト』の大量の杭を完全に跳ね除けたのである。
『フェイト』は目を見開いて驚いた。
万象貫く黒杭の円環は自慢の魔法だ。
いかなるものであろうとも貫くと言う自信があったからだ。
――――だが、それ以上に驚愕する瞬間が『フェイト』を襲う。
「――――ッ!?」
なんと、突如として『フェイト』の顔面が滅茶苦茶に歪んだのだ。
何故なら、小太郎の拳が『フェイト』の顔に突き刺さっていたからだ。
「ホンマにとんでもない魔法やなぁ! せやけど、
「馬鹿な……ッ!?」
なんということだろうか。
こともあろうに、あの小太郎が気の強化を利用して超高速で駆け抜け、万象貫く黒杭の円環の包囲網を突破してきたのだ。
流石に無傷ではないが、リジェネートで自動回復できるからこそのごり押しだ。
だからこそ、『フェイト』が驚いているわけだ。
あの小太郎がスピードで、あの魔法の隙間を縫うように抜け、自分へ接近して殴り飛ばしてきたからだ。
「クッ! ”千刃黒耀剣”ッ!!」
『フェイト』は殴られた直後、即座に黒い石の剣を大量に作り出す魔法を放つ。
この剣は宙に浮き、自在に操ることが可能。
小太郎は『フェイト』の千刃黒耀剣を見て、すぐさま後退。
だが、そこへ大量の石の剣が小太郎を襲う。
「”雷の暴風”ッ!!」
「その程度でッ!!」
そこへすかさずネギは最果ての光壁を槍へと戻し、魔力をふんだんにつぎ込んだゴン太ビームのような威力の雷の暴風をぶっ放せば、それが大量の石の剣と『フェイト』へと襲い掛かる。
されど、『フェイト』はその程度では怯むことはない。
追撃として『フェイト』は、次に使う魔法をすでに詠唱し始めていた。
「”狗音爆砕拳”ッ!!」
「グッ!!?? 雷の暴風に乗っかってッ!?!?」
しかし、そこへ急に小太郎が『フェイト』の前に現れ、腹部へと気と狗神を合わせた拳を突き立てていたのだ。
恐ろしいことに、小太郎はネギが放った雷の暴風の中心点を突っ切り、『フェイト』へと近づいてきたのである。
さらに、千刃黒耀剣は雷の暴風によって吹き飛ばされ、無惨にも散っていた。
今のも完全に油断していたと、口から白い体液をぶちまけながら後悔する『フェイト』。
まさかこんな強引な方法で、小太郎が突っ込んでくるとは思ってもみなかったと言う訳だ。
何せ小太郎はネギからリジェネートの魔法を受け取っている。
そのおかげである程度のダメージは自動回復するからこそ、このような強引な手が使えたのだ。
「そこだァッ!!」
「ッ! 二度目はないよッ!!」
「うッ!! すごい衝撃だ……!」
ネギもすかさず槍モードの最果ての光壁にて『フェイト』へと突撃するが、流石に『フェイト』も行動を予測していたため、それを格闘で防ぎネギを吹き飛ばす。
よって、巧みな技など使えるわけではないので、簡単に『フェイト』のカウンターを受けてしまう。
ただ、ネギの障壁は超強固であり、ラカンのパンチすら耐える。
故にネギ自身にダメージはないが、その衝撃だけは殺せずに体が揺さぶられ、吹き飛びながら驚いていた。
「そっちもッ!」
「ぐうっ!?」
さらに『フェイト』は再び近接戦闘を試みようとする小太郎の顔面へと拳を突き刺す。
小太郎も『フェイト』の速度を見切り切れず、それを顔面に受けて後方へと吹き飛ばされた。
「”引き裂く大地”ッ!!!」
『フェイト』は攻撃の手を緩めず、爆発的な溶岩を相手に叩きつける魔法を、ネギたちへと放った。
「”最果ての光壁”ッ!! 解放”雷の暴風”ッ!!」
すぐさまネギは小太郎の前へと飛び込み、最果ての光壁にて溶岩流を防御し、ストックしていた雷の暴風を解き放ち『フェイト』の魔法をなんとか相殺する。
「”千の雷”ッ!!」
「闇雲に放った千の雷など……!」
そこへネギは詠唱し終えて最果ての光壁にストックしておいた千の雷を、『フェイト』へと解き放った。
だが、何の策もなく撃ちだされただけの千の雷など、『フェイト』にとっては脅威ではない。
即座に対魔法障壁を用意し、簡単に受け止めて見せた。
「これでどうやッ!!」
「グウッ!!?」
その隙をついて今度は小太郎が『フェイト』へと襲い掛かった。
渾身の気と狗神を纏った拳が、『フェイト』の脇腹を抉るように突き抜ける。
またしても隙をつかれた形になった『フェイト』は、苦痛を感じながら、今の現状がまったく理解できないことに、焦燥を感じはじめていた。
「馬鹿な……。何だこのコンビネーションは……!」
小太郎から距離を取った『フェイト』は、態勢を立て直しつつネギと小太郎を見て考える。
どう言う訳かわからないが、あのネギと小太郎が絶妙な連携を見せ、自分を追い込んできている。
「何故だ……。どうして僕が押されている…………!?」
それに、もっと理解できないことは、今の自分が二人に対して押されていることだ。
スペック的には今も圧倒しているはずが、どうにも押し切れない。
パワー負けはしてないはずが、どうにも調子が狂わされる。
「本来ならば、この程度なんてことないはずだ……! なのに何故……!?」
障壁をあの謎の光の槍に砕かれようとも、魔法も格闘も自分の方が上回っているはずだ。
それでも何故か二人の連携で有利を奪われている。まったくもって理解が追い付かない。
「だが、ここで負けるわけにはいかないッ!! ”障壁突破・石の槍”ッ!!」
「アグッ!? この防御を抜けてくるなんてッ!?」
しかし、負けることは許されない。
『フェイト』は再び決意を固め、
障壁が固いならば、それを貫通する効果が付与された魔法を使えばよい。
そこで『フェイト』が使った魔法は、障壁貫通効果を追加した地面などの石を突き出し串刺しにする魔法だ。
強固な障壁を持つネギも、流石に障壁貫通までは防げない。
ネギとて突然の魔法に回避が不可能と判断し、その石の槍のダメージを最小限にとどめる動きをするのが精いっぱいだった。
「こっちを見ろやッ!!」
「見なくともッ!!」
「ガッ!?」
ネギの危機に小太郎は『フェイト』を釘付けにすべく飛び込むも、『フェイト』の視線はネギへと向けたまま、小太郎を裏拳で制圧。
小太郎も視線を向けられずにあしらわれたことに苛立ちつつも、痛みと共に再び吹き飛ばされ地面に転がった。
「”冥府の石柱”ッ!!!」
『フェイト』は今の攻撃で隙が出来たところに、詠唱を完成させて追加の魔法を放つ。
空に巨大な石柱を作り出す魔法、よくフェイトが使っていた冥府の石柱だ。
「”地を裂く爆流”」
それだけにとどめず、『フェイト』はさらに追加で魔法を放つ。
大地を砕いて爆発させる魔法だ。
「上と下との同時攻撃ッ!?」
「考えおったなぁ!?」
ネギはその二つの魔法の意図を理解した。
上から降り注ぐ複数の巨大な石柱と、大地が爆発する下からの攻撃で、挟み撃ちにするつもりということだ。
小太郎も『フェイト』の作戦に舌を巻きながらも、してやられたと声を荒げる。
「”最果ての光壁”ッ!!」
「そこだッ!」
「ッ!!」
下からの魔法を飛び上がって回避し、上からの魔法は最果ての光壁にて防御することを選んだネギ。
それは大きな隙となり、そこを狙ってきた『フェイト』が、ネギへと一直線に飛び込んでくる。
「ネギはやらせへんでッ!!」
「ガアッ!!?」
しかし、そこへ小太郎が影分身で三人に増えながら、ネギを庇い『フェイト』へと拳を
『フェイト』すらも意識しなければ回避できぬ速度の攻撃に、『フェイト』はうめき声をあげながらおかしいと頭の中で考える。
小太郎はこんな素早くないはずだ。小太郎はこんなにパンチ力はないはずだ。
ありえない。自分に手傷を負わせるほどの力はなかったはずだ。なのに何故……。
――――何故なら、
拳闘大会には出場こそしなかったが、ラカンにボコられながら、その力と技を見て鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて、そのまた鍛えてここに来た。
それにネギから前衛をしっかり任され、しかも自分と並ぶと約束した。
そんなネギに恥じぬ強さを身に着けるべく、ひたすらに研鑽を重ねた小太郎は、気が付けば結構強くなっていたと言う訳だった。
「今だッ! ”最果ての光壁・砲撃形態”ッ!!」
「見え透いた攻撃なんて……!」
小太郎が『フェイト』を抑えたことで、逆に『フェイト』に隙が出来た。
このチャンスを逃すまいと、ネギは最果の光壁を砲撃形態へと変形。
槍の中央が菱形に開き、魔力がどんどん収束・圧縮されていく。
されど、明らかにバレバレの攻撃。
当然『フェイト』には見えており、テレフォンパンチがごとき攻撃など通じないと、再びネギへと攻撃しようと飛び上がる。
「ッ!? 狗神……!? 犬上小太郎かッ!?」
「”疾空黒狼牙”ッ!!」
だが、そこで『フェイト』は狗神の術を見て、咄嗟に回避行動へと移る。
すでに小太郎が『フェイト』の邪魔しようと、黒き狗を大量に召喚して差し向けていたのだ。
「この程度じゃ僕を縛ることはできないッ!」
「一瞬だけ隙が出来ればええんや!」
しかし、当然『フェイト』にはそのような攻撃は通じない。
空中で加速した『フェイト』は、疾空黒狼牙の群れなど大した相手にならず、あっけなく撒いてしまう。
が、そんなことは小太郎も想定済みだ。
そうだ、それを回避しようと行動させることこそが、小太郎の目的だったのだ。
「なに!? ――――ハッ!?」
小太郎の言葉を聞いた『フェイト』は意識をネギへと再び向ければ、こちらに最果ての光壁の砲門を向けていたネギがいるではないか。
さらには、その砲門からはあふれんばかりの魔力が凝縮され、すでに砲撃態勢が整っているではないか。
「”
「しまっ――――――」
意識を向けたときには、すでに遅かった。
ネギはそこで素早くその攻撃の名を叫び、圧縮された光の魔力を『フェイト』へと向けて撃ち放ったのだ。
遅かった、甘くて見た。
『フェイト』は後悔に苛まれながら、一瞬にして自分へと到達した光の魔力の中に飲み込まれていった。
そして、光の柱となった砲撃は墓守り人の宮殿の一部をえぐり取り、下の大地へと着弾。
巨大な光のドームを轟音と共に作り出し、徐々に小さくなって消えていった。
「やったか!?」
ネギも今の最大の攻撃で『フェイト』は倒せたはずだと声を出す。
――――だが、この程度で『フェイト』を倒したなど言うのは、甘い考えだ。
「…………まだ終わりじゃないよ」
「なんだってっ!?」 「なんやてっ!?」
光の柱にて抉られた場所の横から、煙と共に人影が現れれば、終わっていないと言葉にしてきた。
ネギも小太郎も咄嗟にそっちの方を向き、まだ戦いが続いていることに驚き戸惑う。
光の柱に飲み込まれた『フェイト』だったが、意識が吹っ飛ぶ前に光の柱から抜け出してダメージを最小限に抑えていた。
ギリギリだったが、なんとか抜け出して敗北を免れたのだ。
「”石化の邪眼”ッ!!」
「ッ!!」
そして、煙の奥から一筋の光の魔法が、空を飛ぶネギへと放たれた。
それこそ『フェイト』の目から放つことができる石化の魔法だ。
ネギは触れたらマズイことを直感で察し、何とかギリギリで回避。
だが、『フェイト』の攻撃はまだまだ続く。
「”石の息吹”!!」
今度は周囲に石化する煙を出す魔法を、地上にいる小太郎へと向けて放つ。
『フェイト』は自分が追い込まれている理由考え、単純にネギと小太郎の連携攻撃に翻弄され、押されているのだと判断した。
ならば片方を退場させれば、残りは容易く済むと考え、どちらかを石化させることにしたのだ。
石化してしまえば、傷などを自動回復できたとしても意味がないからだ。
「これはまさかッ!! コタロー君!!」
「これはあかん!!」
一瞬にして石化の煙が周囲を包み込み、小太郎へと襲い掛かる。
ネギはあの煙も石化効果の魔法だと察し、小太郎の名を叫び避けてくれと願った。
また、ネギの判断が少し遅れたのは、
小太郎も一目でこの煙の魔法が、とてつもなく危険なものだと判断し、瞬動でその場を離れ退却。
「”万象貫く黒杭の円環”ッ!!!」
「魔法の煙から大量の杭が!!?」
そこへ『フェイト』はさらなる魔法を使い、確実に小太郎を追い詰めようと行動する。
それは先ほど使った黒い杭を大量に放つ魔法だ。
石の息吹の中から、『フェイト』の周囲を埋め尽くすほどの黒い杭が出現し、小太郎を襲ったのだ。
小太郎は石化の煙から逃げつつ、その杭を回避せねばならない状況となり、かなり危機的状況へと陥っていた。
「こりゃキツいでッ!!」
空からその光景を見ていたネギは、これはマズイと判断し、小太郎の元へと駆けつけようと動き出す。
その間も小太郎は杭を気と狗神を使って叩き落しながら、高速移動で後退しつつ回避していた。
「コタロー君!!」
されど、小太郎もギリギリの限界だ。焦燥で額に冷や汗が流れる。
石化の煙から逃げつつ、周囲を覆うほどの杭から逃れるのは至難の業だ。
煙に触れぬように後退しなければならず、杭の回避だけに専念できないからだ。
それを見たネギは、小太郎の前へと立ちはだかろうと急ぐ。
自分の最果ての光壁ならば、周囲の煙を吹き飛ばしながら、杭を防ぐことができるからだ。
「”無極而太極斬”!!!」
――――その時、少女の声がどこからともなく聞こえてきた。
すると、どうだろうか。
目の前の石化の煙も大量の杭も、一瞬にして消滅してしまったのだ。
無極而太極斬。魔法を無効化して消滅させる能力を飛ばす技だ。
魔法でできたものならば全てを無効化し、たとえそれが物理的な石でさえも消滅させることが可能だ。
そして、その使い手は魔法無効化を持つもの。
それこそ、さっき姿を消してしまった、アスナだったのだ。
「――――ッ!?」
『フェイト』は石の息吹と万象貫く黒杭の円環が全て消滅させられた光景を見て、驚愕の表情を浮かべていた。
何がありえないかと言うと、
「待たせたわね……!」
「アスナさん!」
「アスナ姉ちゃん!」
ネギと小太郎もその光景を見たあとに後ろを振り向けば、そこには再びハマノツルギを握りしめ、地面に突き付けたアスナが姿があったではないか。
二人は消えたアスナが無事に戻ってきたことに安堵し、彼女の名前を呼んで無事を確認していた。
「ば…………馬鹿な…………。何故……ありえない…………」
そんな三人を前に『フェイト』は茫然となって立ち尽くしていた。
ありえない光景を見て、頭がぐちゃぐちゃになって混乱していたからだ。
この状況が飲み込めず、錯乱しかけていたからだった。