理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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百八十八話 終焉の足音

 

 墓守り人の宮殿、上層大祭壇の少し離れた場所にて、戦っている者がいた。

真祖の吸血鬼の特典を得たディオと、造物主の使徒、アーウェルンクスシリーズ最高峰の能力を特典として得たセプテムムだ。

 

 

「中々に強い……」

 

「当然だ。伊達に600年は生きていない」

 

「それもそうか」

 

 

 ディオは二つの闇の吹雪を闇の魔法で自らに取り込み、夜天頂と言う形態となってセプテムムへと肉薄しようと迫る。

セプテムムは奈落の業火とこおるせかいを闇の魔法で取り込み、氷炎絶滅と言う形態でディオと距離を開けようと高速で飛び回りながら応戦する。

 

 両者とも闇の魔法の使用者同士の戦いであり、拮抗した状態が続いていた。

 

 それと、セプテムムこそが最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の守護者。

本来ならば大祭壇付近に浮かされて保管されていた最後の鍵(グレートグランドマスターキー)だが、転生者が多く存在する()()()()では、このセプテムムが守護する役目を担ったのである。

 

 

「──────ッ!!」

 

「チィッ!!」

 

 

 と、会話が終わった瞬間に、ディオが目の前から姿を消す。

セプテムムは咄嗟に距離を取り、周囲を警戒して障壁を強化した。

 

 

「時間停止、厄介な」

 

「避けられるとはな」

 

 

 そこへ突如真横からディオが現れ、すでにセプテムムは攻撃を受けていた。

これぞディオのスタンド、ザ・ワールドの時間停止だ。

 

 されど、時間停止中は詠唱しても魔法は使えず、自分の肉体化スタンドで殴る蹴るや、ナイフを投げるなどの行動しかできない。

他にも詠唱を完成させて時間停止し、移動してその場で魔法を撃つぐらいだ。

 

 セプテムムもディオが時間停止するのを知っているので、ギリギリの対策として距離を離しながら戦うことを心掛けている。

おかげで何とか今の攻撃も回避し、事なきを得たのである。

 

 

「ただ避けただけだと思ったら大間違いだ」

 

「なっ! マズい────」

 

 

 だが、セプテムムは避けるだけでは終わらない。

ただでは転ばないと言い放ち、すでに用意していた魔法を解き放つ。

 

 ディオは気が付き回避行動に移も、一瞬遅れたために脇腹にそれを受けてしまった。

 

 

「…………まさか、置き極大消滅呪文(メドローア)などと……」

 

「この状態ならばこの程度も可能だ」

 

 

 セプテムムが使った魔法の正体、それは小さな遅延極大消滅呪文(メドローア)だ。

極大消滅呪文(メドローア)炎属性(メラ)氷属性(ヒャド)が均一なら完成する魔法。

つまりそれを完成させて置いておき、ディオが姿を現したタイミングで撃ったのだ。

 

 流石のディオも、今の攻撃には肝を冷やした。

こんなことまで可能なのかと、余計に警戒せねばならぬと、改めて意識を高める。

 

 逆にセプテムムは得意顔で笑っていた。

確実に殺すには至らないが、ディオに一泡吹かせることができたからだ。

 

 

「ッ!」

 

 

 と、そんな得意顔をキメていたセプテムムだが、再びディオが一瞬で姿を消したのを見て、再び焦りの表情となる。

何せディオは時を止めれる。時が止まった状態では、自分が無防備になるのを恐れているのだ。

 

 

「甘いと言っているッ!!」

 

 

 それでもディオの動きは予測できる。

今度は背後に回っただろうと、そちらの方を向いて拳を伸ばして殴ろうとするも。

 

 

「いないッ!?」

 

 

 そこにはディオの姿はなかった。

セプテムムはディオの動きを読み違えたのだ。

 

 

「ここだッ! 無駄ァッ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 すると、すでに傷が治ったディオが、なんと突如として正面の足元に姿を現したのだ。

視界に入らない足元ならば、奇襲に成功すると読んだからであり、それは正解であった。

 

 セプテムムは突如後方、つまり先ほど向いていた方向の足元からディオの拳を背中に受け、大きく前のめりに倒れかける。

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」

 

「ちぃ!! ”燃える天空”! ”氷槍弾雨”!!」

 

「ふんッ!!」

 

 

 ディオはそのままスタンドと自分自身の拳でラッシュをかまし、セプテムムへと追撃する。

 

 このままではマズイと考えたセプテムムは、思考を切り替えて大魔法を二つ詠唱し、ディオへとぶつけるが、ディオはまたしても時間停止して回避。

 

 

「”闇の吹雪”!!」

 

「”こおる大地”!!」

 

 

 セプテムムから距離を置いたディオは、そこで闇の吹雪を発動。

それを見たセプテムムも応戦し、こおる大地を発動して闇の吹雪と相殺。

魔力と魔力の衝突で冷気の大爆発が発生し、周囲を白く染め上げた。

 

 

「凍てつく氷柩ッ!!!」

 

「無駄無駄ァァッ!!」

 

 

 視界が真っ白に染まったことで、互いが互いを見失うことになった。

それを好機と見たセプテムムは、相手を氷に閉じ込める魔法を姿が見えぬディオへと放つ。

 

 だが、ディオはすでにその場から移動しており、その魔法は空振りに終わる。

ディオは真っ白い凍える霧の中を、セプテムム目掛けて加速しながら移動、すでに目の前までやってきていたのだ。

 

 

「甘いぞッ!! ”紅蓮蜂”ッ!!」

 

「無駄だッ!!」

 

「ッ!? また時間停止か!?」

 

 

 セプテムムもディオがすでに近くにいることを想定し、触れると爆発する炎の蜂を魔法で作り出していた。

それをディオは察知すると、すぐさま時間を停止して後退。その場から姿を消す。

 

 

「”魔法の射手・収束・氷の23矢”ッ!!」

 

「なにっ!? クッ!!」

 

 

 ディオは氷の魔法の射手を収束させて解き放ち、その炎の蜂を起爆させて吹き飛ばす。

自分の爆風に飲まれかけたセプテムムは障壁を張りながら後ろへと下がり、今の爆発で白い霧が消滅したのを確認し、すぐさまディオの姿を目で追う。

 

 

「無駄無駄無駄無駄ァァッ!!」

 

「その程度などッ!! ”氷槍弾雨”ッ!!」

 

「ぬうっ!?」

 

 

 そこにすでにセプテムムの真横へと移動してきていたディオが、そのまま再び拳のラッシュをぶち込む。

が、やはりセプテムムは時間停止を警戒し、後退して氷の槍を無数に放つ魔法でディオへと反撃。

 

 またしてもディオはセプテムムを追い切れず、回避に専念せざるを得ない状況にされてしまった。

 

 

「……時間停止を警戒して距離を取られている。面倒な」

 

 

 ディオはセプテムムが時間停止の時間射程距離ギリギリの場所まで間隔をあけていることに、苛立ちを感じていた。

とは言え、時間停止に対抗できる手段など、そのぐらいしかない。時間停止の能力がバレている時点で、距離を取られるのは必然だった。

 

 

「”奈落の業火”!!」

 

「”こおる大地”!!!」

 

 

 距離を十分に取ったセプテムムは、詠唱を終えて大爆発が発生する魔法を解き放ち、ディオも同時に地面に鋭い氷の塊を生やす魔法で応戦。

 

 両者の魔法がぶつかり、爆発と共に水蒸気があたり一面を覆い尽くした。

 

 

「魔法の撃ち合いでは勝負がつかないか……」

 

 

 セプテムムはただやみくもに魔法を撃ちあうだけでは、この均衡を崩せないと考え、ならばやはりあの手しかないと考え行動に移る。

 

 

「ならば、”極大消滅呪文(メドローア)”ッ!!」

 

「ふん! ”ザ・ワールド”ッ!! 時よ止まれぃッ!!!」

 

 

 それは当然極大消滅呪文(メドローア)だ。

何せ当たりさえすれば消滅させられる恐るべき魔法だ。使わない手はない。

 

 が、当然ディオもそれを警戒している。

極大消滅呪文(メドローア)が発射されたタイミングで時間を止め、瞬時にセプテムムへと接近する。

 

 

「無駄ァッ!!」

 

「────ッ!! ”燃える天空”ッ!!」

 

「チィッ!!」

 

 

 セプテムムへと肉薄したディオは、ザ・ワールドの拳と自分の拳でセプテムムの頭を挟み込むようにして殴り抜く。

 

 それに瞬時に気が付いたセプテムムは、咄嗟に反応して一歩下がってディオの攻撃を回避し、そのままディオへと向けて燃える天空を撃ち放つ。

 

 ディオは当然至近距離からの膨大な炎と爆発は避けきれずに、直撃を受けて後退せざるを得なくなった。

 

 

「多少の攻撃ではすぐに傷が治る…………。吸血鬼と言うのも厄介極まりない」

 

「逆にお前は再生能力がない。そういう意味では私の方が有利だ」

 

 

 されど、ディオにとってその程度のダメージなど、あってないようなものだ。

何せ真祖の吸血鬼としての特典を得たディオは、すぐに傷が回復するからだ。

 

 そういう意味ではセプテムムの方が地味に不利である。

セプテムムは造物主の使徒であるが、自己回復機能は存在していない。外部の修復に頼らざるを得ないのだ。

 

 ディオもそれを知っているので、この拮抗した状況も自分の方がやや有利だとうっすらと感じ取っていたのである。

 

 

「だが、私はお前の弱点を知っているぞ!」

 

「ほう? 弱点か? やってみるがよい!!」

 

 

 とは言え、セプテムムもディオの弱点を察し始めていた。

それを言葉にすれば、ディオは面白いことを言うと笑い、再びセプテムムへと攻撃を仕掛けた。

 

 

「また極大消滅呪文(メドローア)かッ!!」

 

「反射技がない相手なら、使い放題だからなッ!!」

 

 

 そこでセプテムムは再び弓を弾く構えを取り、極大消滅呪文(メドローア)の準備を行う。

ディオはそれを見て馬鹿の一つ覚えみたいだなと言えば、セプテムムも気にせず使えると言うではないか。

 

 何せこの極大消滅呪文(メドローア)、反射にめっぽう弱い。

何故なら触れただけで消滅させる魔法でさえも、反射魔法などの効果には逆らえないからだ。

 

 消滅する魔法が反射され自分のところに戻ってきた場合、同じ威力の極大消滅呪文(メドローア)で相殺しなければならない。

そんなリスクがある魔法だが、反射魔法がないこの世界ならば問題ないと、セプテムムは使いまくるのだ。

 

 

「しかしッ!! ”ザ・ワールド”ッ!!」

 

 

 だが、ディオには時間停止がある。

止まった時間の中では全てが停止し、何もかもが意味をなさない。

そのままセプテムムへと接近して後ろへと回り込み、再びディオは拳のラッシュをぶち込もうとしたが。

 

 

「ッ! そこだなッ!! ────”極大消滅呪文(メドローア)”ッ!!!」

 

「なにっ!?」

 

 

 ディオのいる方向へと、セプテムムが向きを変え、そのまま極大消滅呪文(メドローア)を解き放ったのだ。

セプテムムとて時間停止して消えたディオの位置などわかる訳もなく、咄嗟の判断でディオの位置を特定し、そちらを向いたのである。

 

 そのセプテムムの行動にディオは大きく焦ったがもう遅い。

そのまま極大消滅呪文(メドローア)の巨大な光の渦の中の前で、ただただ驚愕した顔を見せるだけだった。

 

 

「そうだ! 時間停止解除直後は、数秒のインターバルが必要だろう!! そこを狙うのは当然のことだッ!!」

 

「うおおおッ!?」

 

「勝ったッ!! 不死者とて肉体全てを消滅させられれば、生き残れまいッ!!」

 

 

 セプテムムが言ったディオの弱点、それは時間停止を連続で使用できないことだ。

時間停止後、数秒開けなければもう一度時間停止を使うことが不可能だからだ。

 

 ディオもそれを知っていたがどうにもならない。

もはや目の前で自分へ向け発射された極大消滅呪文(メドローア)の光を見ながら、消えゆく時間を待つばかりだった。

 

 もはや勝ったも同然。

セプテムムは自分の勝利を確信した。

真祖の吸血鬼だろうが不死身の怪物だろうが、全身くまなく消滅させられてしまえば、再生など不可能だと思ったからだ。

 

 

「終わったな…………。この最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を奪うに値しなかったか」

 

 

 そして、ついにディオは極大消滅魔法(メドローア)に飲み込まれ、その場から完全に姿を消してしまった。

セプテムムはそれを見て勝ち誇り、余韻に浸りだしたのである。

 

 しかし────。

 

 

「────ゴフッ……!?」

 

 

 突如としてセプテムムの口から、血のような白い液体を吐き出して苦しみだした。

セプテムムが自分の体を見れば、胸に穴が開き、同じような液体がダバダバと零れ落ちているではないか。

 

 

「なっ……なにが…………っ」

 

「甘かったな」

 

 

 この現象に理解が追い付かないセプテムムが言葉を漏らすと、背後からディオの声が聞こえてきた。

 

 

「馬鹿なッ!? お前は極大消滅呪文(メドローア)で蒸発したはずッ!?」

 

「ああ、したな……。だが、()()()()()()()

 

「何故だッ!?」

 

 

 セプテムムがゆっくりと首と目を後ろへと向ければ、そこには五体満足で元気そうなディオの姿があった。

 

 まるで幽霊を見たような顔で驚くセプテムム。

ディオは間違いなく極大消滅呪文(メドローア)に飲み込まれて、完全に消滅したはずだと思ったからだ。

 

 だが、そうはならなかった。

ディオは消滅しておらず、無事だったからだ。

 

 

「貴様が消し飛ばした私は、闇で作り出した幻影だったのだ」

 

「────ッ!!??」

 

「そうやって貴様を騙すため、あえて極大消滅呪文(メドローア)を受けたことにしたと言う訳だ」

 

「ばっ……馬鹿な…………」

 

 

 その答えをディオは律義に、煽るように話しかける。

極大消滅呪文(メドローア)を回避した方法、単純明快な方法だった。

 

 時間停止前に影の幻影を作り出し、入れ替わったにすぎなかった。

その後闇の転移魔法(ゲート)の内に潜み、セプテムムが油断したところに背後へと回り込み、さらに転移した後に時間を停止して不意打ちを行ったのだ。

 

 また、ディオはあえて時間停止を使い、極大消滅呪文(メドローア)を時間停止直後に放つように誘導し、自ら死んだことにしてセプテムムの隙を作ることにしたと言う訳だ。

 

 その作戦が成功し、今一番危機に陥っているのがセプテムムの方になったのである。

 

 

「恨むのなら慢心した自分を恨むのだな」

 

「してやられた…………、と言う訳か……」

 

 

 残心を捨てていたことを後悔しろと、ディオはセプテムムへとつぶやく。

 

 セプテムムは騙されかことを説明されて、ようやく全てを理解した様子だった。

何ということだ。目に見えるものだけに囚われ過ぎたと。

 

 そして、今セプテムムの胸に穴を開けているのは、ザ・ワールドの拳だ。

セプテムムはスタンド使いではないので、スタンドが見えず、自分の胸に大きな穴が開いているようにしか見えないのである。

 

 

「ガハッ……、ウグッ…………」

 

 

 ディオがザ・ワールドの拳を引き抜くと、セプテムムは口から液体をまき散らし、その場で仰向けに倒れて動かなくなった。

 

 

「…………もうこんな時間か」

 

「時間……? 何……? これは…………?」

 

 

 そこでセプテムムが空を見て、とうとう最終局面まで来たかと言葉をこぼすと、ディオも空を見上げて驚愕の表情を浮かべたのだった。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 墓守り人の宮殿、その上空にて、一匹の竜が複数の人を乗せて飛んでいた。

 

 

「ほー! 敵にバレないのは随分とありがたいなぁ」

 

「確かに、これはかなりの魔道具だ」

 

 

 その竜はフェイトの従者である環であり、竜族竜化して仲間を背中に乗せ、飛んでいたのである。

 

 また、そこで嬉しそうに話すのは、先ほど彼女たちを助けに来たヴィガ・ササジマと言う転生者の男だ。

ササジマは夏美のアーティファクトの効果に、すごく感心した様子を見せていた。

 

 夏美のアーティファクト、孤独の黒子は完全に気配を消すことができ、フェイトすら気が付かない程の効果だ。

しかも恐ろしいことに、手をつなぐなどして他者と触れるとその方にも効果が乗り、その他者が他の他者に触れても効果を与えることができると言う優れたものだった。

 

 それを夏美が使い、顔にマスクらしき形状のアーティファクトを当てながら環に乗ることで、今環に乗っている仲間全員の気配を消すことが可能だったのである。

 

 いやはや、とてつもない効果だ。

複数の人間の気配をこうも容易く消せるなど、恐ろしいとしか言いようがない。

とは言え、これで敵と遭遇してもスルーされ、見つからないと言うのは便利だ。

 

 それをササジマが言うと、相棒(サーヴァント)のライダー・アキレウスが相槌を打つ。

 

 はっきり言ってこの効果はかなり強力だ。

アサシンの気配遮断とて、これほど強力な効果を出すには、かなり高いランクを要する。

それにアサシンの気配遮断は戦闘態勢になると効力を大きく落とすが、この孤独の黒子は戦闘態勢となっても効果が継続する。

これほど恐ろしい能力のアイテムなど、英霊が持つ特殊スキルか宝具に匹敵するとライダーも思ったのだ。

 

 

「しかし、よく見ると敵はまだまだいるな」

 

「あれだけの相手を一々してたら切りがなかったぜ」

 

 

 それ以外にライダーは周囲を見渡すと、敵らしき人物が複数人うろうろしているのが見えた。

あれだけの敵を相手しながら移動するのは面倒だから助かったと、ササジマは安堵したのだった。

 

 そんな風に褒めちぎられるのは慣れてない夏美は、顔を下に向けて照れており、当然友人たちも同じことを思っていたので、ニコニコしながら夏美を見たりしていた。

 

 

「このルートであってる?」

 

「はい、大丈夫です」

 

 

 そこで暦は環の代わりにあやかへと、最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の所有者のいる場所への道のことを尋ねる。

あやかもこのアーティファクトを起動するのは初めてだが、感覚でなんとなくわかるので、問題ないと言葉にする。

 

 そして、その効果のせいで、地味にセプテムムはディオとの戦闘をしながら、あやかの方へと近づいていた。

まあ、そこでセプテムムが倒されているので、どの道あやかが移動しなければならなくなってしまったのだが。

 

 

「しっかし、なんか見えてきちまったなぁ……」

 

「ほう、こいつはまた……」

 

 

 と、そんな時ふとササジマが空を見上げると、妙な光景が広がっていたのだ。

それを言葉でこぼすと、ライダーもなかなか幻想的かつ驚くべき状況だと、引き締まった顔を見せていた。

 

 

「あれって!」

 

「なっ!? なんだよアレは!?」

 

「ええ……、あれは……」

 

 

 彼らが空を見てそんな反応をしたのを見て、あやかたちも空を見上げれば、何やらとんでもない光景が広がっているではないか。

夕映も驚きたまらず声を上げ、千雨はびっくり仰天して静かに騒ぐではないか。

 

 あやかも空を見て、まさにその通りと言う声を出した。

何せその光景は、彼女たちが見知った場所だったからだ。

 

 とは言え、初見であるフェイトの従者たちは、ただ驚くだけだった。

 

 

「え……? そこにいるのは……?」

 

 

 誰もが空を見ている最中、栞の姉はふと下の墓守り人の宮殿の一角を見ると、何やら誰かが戦っているところが目に入ってきた。

そこにはよく知った、今何をしているのか心配していた人の姿があったのだ。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 墓守り人の宮殿の下部上空、そこで飛び回りながら追ってくる転生者を倒している者がいた。

ハルナが駆る飛行船と、その乗員だ。そして、この飛行船、名前はグレート・パル様号と言う。

 

 

「ねえ、あれってまさか…………」

 

「地形データから参照して間違いなく、麻帆良学園です」

 

 

 そんな時、空をふと見上げると、上空の一部に穴が開き、見知った地形が逆さに見えてきたのだ。

見慣れた建物、光る巨大な樹、これはまさに麻帆良学園そのものだった。

 

 

「本当です!」

 

「何が起こってるの!?」

 

「ど、どうなっちゃってんの!?」

 

 

 夕映ものどかも裕奈もその光景に驚き、思いもよらぬ何かが起こっていることに焦り困惑し叫ぶ。

 

 

「一体何故……」

 

「あれが…………」

 

 

 焔もその光景を見て、何が起こっているのかと驚き目を見開く。

また、ブリジットは話だけにしか聞いたことがなかったので、むしろ珍しさを感じていた。

いや、目を閉じたままなので、見ているのかはわからないが。

 

 

「マジかよグレート……」

 

「ついにここまで来てしまったようだな……」

 

 

 状助もびっくり仰天、スタンドも月まで吹っ飛ぶ衝撃を受け、クゥァルトゥムを倒して戻ってきていた自称アーチャーも”原作”を考え、ついに決戦の終盤へと来たと実感した。

 

 また、他の仲間たちもその光景を思い思いに見ながら、とんでもないことが起き始めていると驚いていた。

 

 

「あっ、あれ!? なんか……船体が安定しなくなってきて…………。もしかして流される!? これってかなりヤバくない!?」

 

「魔力乱流が発生し、空中が不安定になってきています」

 

「マジかー!」

 

 

 と、そこで飛行船を操縦するハルナは、船体がやたらにきしむ音が聞こえてくることに嫌な予感を感じて茶々丸に聞けば、なんとこの空域の魔力が乱れ狂い始め、安定性がなくなっていると答えてきたではないか。

 

 ハルナはそりゃヤバイ、超ヤバイと言う顔で、操縦桿を握りしめて喚き散らす。

ぶっちゃけ麻帆良が上空に見えたのはすごい気になるが、墜落したら意味がないのである。

 

 

「船の状態は任せといて欲しいっス……」

 

「ふっ、敵対していた時こそ邪魔だと思ったが、今は頼もしい能力だな」

 

 

 しかし、ここにはクレイジー・ダイヤモンドのスタンドが使える状助がいる。

状助は船体のダメージは修復できるから大丈夫だと言う意味で、それをハルナへ伝えれば、アーチャーが、何やら皮肉めいたことを言い始めやがったのだ。

 

 アーチャーとしては真面目に褒めている気なのだが、こりゃいかん。

 

 

「おめぇよぉ……、一言余計なんじゃあねぇかぁ? めっちゃ睨まれてるぜぇ……?」

 

「うっ…………癖で…………、その……スマン……」

 

 

 状助はアーチャーの誉め言葉に、一言多くて恨まれるぞとつっこむ。

そのせいで周囲から、特にゲートポート襲撃に巻き込まれた人たちから、滅茶苦茶冷たい目線を向けられていた。当たり前である。

 

 今の発言を失言だったと反省するアーチャーだが、どうにもそういう言葉を使ってしまうのが癖になっており、反省してもなかなか治らないと謝る始末。

 

 

「ギャハハッ!! ようやく”原作キャラ”発見だぜぇ!!」

 

「また来やがったぜ!!」

 

 

 すると完全なる世界の転生者が、またしても登場。

上空に麻帆良が見えてきたこの状況でさえ、無関係とばかりにやってきやがる。

それに、これでかれこれ10回目ぐらいで、大抵は弱かったから雑にぶん殴って事なきを得ていたりする。

 

 ただまあ、彼女たちは認識阻害の指輪をしており、たとえ転生者であっても彼女たちが原作キャラだとすぐに認識できない。

そのため認識できた奴らは原作キャラだと喚くが、大体はわからずに侵入者として排除しようと動くだけだった。

 

 ちなみに囮役の別動隊やネギがいる本隊は、待機組の飛行船の安全を考えて、あえて指輪を外して敵の視線を誘導しようとしていたりする。

 

 また、流石に10回目なのか、みんな随分と慣れ始めており、大きく騒ぐようなことはなくなってしまっていた。

のどかも夕映さえも気にしない様子で、ただ警戒した表情でその新たな転生者を見ていたりするが。

 

 状助は現れた新たな転生者に敵意をむき出しにし、仲間に知らせる。

 

 

「私が相手をしよう!」

 

「おっお前は自称アーチャー野郎!!? 裏切ってたのかよ! クソがよぉ!!」

 

「原作通りに進めるために入ったに過ぎないのでね」

 

 

 そこでアーチャーが自ら戦うと言い出し一歩前に出れば、目の前の転生者はアーチャーを指さしてキレはじめた。

何せこのアーチャー裏切り者だ。最初から裏切る気で完全なる世界に入っていた訳で。

それがバレて黄金の男にぶっ刺されて死にかけた情けない所もある訳で。

 

 叫んでキレる目の前の転生者に、アーチャーは肩をすくめてしれっとした態度で言い訳をし始めた。

このアーチャー、そもそもの目的は”原作厳守”のための行動。原作どおりに道をたどってもらうための工作をしていただけなのだ。

 

 なので、終盤もういいかなってところで一抜けする気だった。

あれだけヘイト稼いでおいて、今更味方面しにいく面の皮の厚さはまさにラーテルの皮ぐらい厚いのかもしれない。

 

 まあ、実際状助をボコったのは防護服(メタルジャケット)の男だが、無茶苦茶やって被害出してビビらせたのはアーチャーなのでしかたないことだ。

 

 

「アーチャー野郎! テメェが目障りだったんだよ。何をするのもいつもテメェの指示通り、俺はいつも下っ端扱いだ」

 

 

 ただ、目の前の転生者がキレているのは、裏切ったからだけではない。

毎回毎回後ろからしゃしゃり出てきて指示しまくる指示厨態度が、滅茶苦茶気に入らなかったのだ。

 

 

「どこにでも出てきて幹部面しやがるッ!!」

 

「ふっ、ようやく私から解放されたのだろう? この()殿()()()()だがね」

 

 

 この転生者はなんか自分より偉そうな態度で指示ばかりしまくるこのアーチャーが、めっちゃ嫌いだった。

ウザくて仕方がなかった。本当にウザかった。

 

 そんなことを言われたアーチャーは、またしてもしれっとした態度で皮肉を言い出した。

自分が抜けたんだからもう指示されないだろ? まあ、完全なる世界にいるんだから、他の誰かがまた指示するだろうけどね、と。

 

 

「アーチャー野郎ッ!!」

 

「野郎は不要だ。下っ端くん!!」

 

 

 この皮肉めいたクソみたいなしゃべり方も、本当に腹が立つ。

転生者はプッツンして、目の前の腹立たしいスカした赤い野郎の通称を叫べば、アーチャーは野郎はいらないと馬鹿にした態度を取るのだった。

 

 この転生者アーチャーのこと赤井弓雄、マジで煽り癖が抜けないどころか悪化してるんじゃないかと思われる。

 

 

「おおーーい!! あんまり遠く行かないでほしいんっスけどよぉー!!」

 

「見えなくなってしまったな……」

 

「私たちだけで防衛するしかないみたいだね」

 

 

 すると完全にキレ散らかした転生者が、アーチャーへと突撃してきた。

アーチャーはそれを見てすぐさま干将(かんしょう)莫耶(ばくや)をトーレスオンし、防御しながら逆に押し返して飛んで行ってしまったのだ。

 

 状助は離れすぎると守護が手薄になると叫ぶも、もうすでにアーチャーの姿はなかった。

何せ大気中の魔力が渦巻き、宙に浮いた岩礁が動き回り始めていたからだ。

 

 焔もアーチャーが完全に姿が消えたことに呆れ、裕奈もそれを見て自分たちで守護らねば……、と一層気合を入れる。

 

 

「敵が一人だと誰が言った?」

 

「────ッ!! そこです!」

 

「ふむ、いい反応だ」

 

 

 だが、襲ってきた転生者は一人ではない。

突如として船の甲板に、緑髪で角刈りで医者のような白い恰好をした、左目に円状の装備を付けた男が現れたではないか。

 

 夕映は咄嗟に反応し、無詠唱で雷属性の魔法の射手を1発だけ相手に撃ち出すが、その男は右腕の剣のような武器ではじき返し、距離を取った。

 

 

「何者だ!」

 

「我が名はパルパディーパ」

 

 

 焔が誰だと聞けば、新たな転生者は自ら名乗ってくれた。律義だ。

 

 名乗った名前はパルパディーパ。

勇者王ガオガイガーFINALに登場する敵、ソール11遊星主の一人であるパルパレーパの能力を貰った転生者だ。

 

 

「パル! 聞いた!? パルが二人になったよ!?」

 

「ええい! 言ってる場合かー!!!」

 

 

 相手の名前を聞いた裕奈は、ハルナのあだ名がパルだと考え、パルが増えたと騒ぎ出した。

ハルナはそんな裕奈に馬鹿言ってんじゃねー! とつっこむ。本当にそうだから困る。

 

 

「貴様たちも極楽浄土への引導を渡してくれようッ!」

 

「そうはさせないぞ!」

 

 

 今回の転生者はガチで彼女たちを倒しに来たようで、すごい殺意と敵意を見せつけてきた。

 

 それにすぐさま対応し、目から熱線を放つ焔。

敵対するなら先手必勝。先に攻撃してダメージを与えておきたいところだ。

 

 が、二度攻撃されたのを確認した男は、戦う意思があることを理解し、敵対行動を開始する。

 

 

「いいだろう。我が力、見せてやる」

 

「見せてみろコラァッ!!」

 

 

 そこまで戦うと言うのならば、自分の特典(ちから)を出すと宣言する男。

状助はその男へ挑発するかのように強気の態度で強気の発言を叫ぶと、男は蛾のような菱形の羽根を生やして後方へと飛び上がった。

 

 

「”ケミカルフュージョン”ッ!!」

 

 

 すると、その眼下から巨大な円形の物体が現れた。

まるで原子構造のような形状の物体へと男は叫びながら侵入すると、それは分子レベルに分解されたかのようにバラバラとなり、徐々に別の形へと組みあがっていく。

 

 

「パルパレーパァァッ!!!」

 

 

 白い腕、白い足、紫の胸、白い頭部、白いマントのような翼、その翼の背後に生える六つの白い注射器のような突起物。

先ほどの構造物が形状を変え、人型のロボットとなったのだ。

 

 男は名を叫ぶ、────パルパレーパと。

これが男の選んだ特典のおまけとしてついてきた装備、パルパレーパ・プラスだ。

 

 

「マジかよグレート…………」

 

「ギャー!? でかいロボになった!?」

 

「あのロボットからは、安定した高出力が検出されています」

 

 

 状助は転生者故に、その姿を見て一発でわかった。いや、男を見た時点でわかっていたことだ。

それでも目の前に巨大なロボが現れるのは、やはり度肝を抜かれると言うものだ。

 

 ハルナも飛行船を操りながらも、突然巨大ロボが出てきて驚き戸惑った。

そこで茶々丸は敵のロボのエネルギーについて指摘し始めた。

 

 

「しかも、()()()()()()()()()()()()()()

 

「どういうこと!?」

 

 

 そのエネルギーはさらに、自分が使っているものと同列だと茶々丸は言葉にした。

何故なら、茶々丸は転生者である獅子帝豪が特典のおまけで得たGストーンの一部を使っているからだ。

 

 たた、Gストーンのエネルギーは武装に使われており、通常稼働自体は魔力や電力を使っているので、全てGストーンから得ている訳ではないが。

 

 とは言え、使用していることに違いはなく、同列のものが使われているのも事実。

それを聞いたハルナは、何故茶々丸と目の前の敵のロボが似たような動力源を持っているのか、わからないと言う様子で叫んでいた。

 

 何故なら、パルパレーパ・プラスも、当然ラウドGストーンで動いているからだ。

勇気をエネルギーに変換するGストーンを、安定的にエネルギーを供給できるように改造したものがラウドGストーンだからだ。

 

 

「では、神罰を受けるがよい!!」

 

「こりゃヤバい!! 最大加速!!」

 

 

 パルパディーパはパルパレーパ・プラスを操り、ハルナの飛行船へと宣戦布告を叫ぶ。

ヤバイ、ヤバイってこの状況、とハルナは飛行船をフルスロットルで加速、直ちにこの場を離脱して逃亡を開始した。

 

 

「逃げ切れるなどと思うなァッ!! ”ポイズンオーラ”ッ!!」

 

「クッ! 木霊防御ッ!!」

 

 

 パルパディーパはパルパレーパ・プラスの胸部にある口のような部分から、紫色の粘液状の物体を、必死で逃げるハルナの飛行船へと吐き出す。

 

 それを見たブリジットは、とっさに木の根を伸ばして防御を行う。

 

 

「これでは防御しきれません!」

 

 

 だが、圧倒的な質量のポイズンオーラの前では、木の根での防御だけでは間に合わない。

このままではマズイと、ブリジットは危険を叫んだ。

 

 

「わっ、私たちも!」

 

「やるです!!」

 

「なら私も……、”プロテクトシェード”!」

 

 

 するとのどかと夕映も杖を持ち、同時に障壁を展開。

同じく茶々丸もプロテクトシェードを展開し、ポイズンオーラへと立ち向かう。

 

 四人の防御でギリギリであるが、飛行船がポイズンオーラに飲み込まれるのを防ぎ、とどまらせることに成功。

とは言え、完全に防いでいる訳ではなく、ポイズンオーラは飛行船の真横で包み込むように停止しているだけだ。

 

 

「何……!? 何故貴様がその防御機能を……!?」

 

 

 だが、パルパディーパは茶々丸がプロテクトシェードを使ったのを見て、心底驚いた。

何故なら、本来そんな機能など使えないからだ。本来ならばガオガイガーが搭載しているはずの装備だからだ。

 

 

『それは俺が開発にかかわっていたからだアァァッ!!!』

 

 

 そこで上空から大きな叫び声が聞こえ、獅子の顔が胸にある黒いロボットが、左腕に巨大なドライバーを掲げて落下しながら突撃してきたのだ。

 

 そのままの勢いで黒いロボはドライバーをポイズンオーラにかすらせ、ポイズンオーラを吹き飛ばす。

 

 

「ま……、まさか…………!?」

 

 

 パルパディーパは知っていた。黒い獅子のロボットを。

当然だ。何故なら同じ作品が特典元の存在なのだから。

 

 

「なんか増えたーーッ!?」

 

「でもこの声は確か……!」

 

 

 ハルナは新しい黒いロボが空からカッ飛んで落ちてきたのに、滅茶苦茶驚き叫びまくる。

されど、どこかで聞いた声だと思ったのは夕映だ。

 

 

「そうです。獅子帝豪です」

 

 

 そして、その声の主をよく知っている茶々丸が、その名を言葉にした。

 

 ────獅子帝豪。

エヴォリュダー凱の能力を貰った転生者。

茶々丸を開発する超へと技術を提供した男。

 

 それが自ら黒き破壊神と共に、この場に参上したのだ。

 

 

 

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