理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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百八十九話 麻帆良に吹く突然の嵐

 

 一方時間を少し戻した麻帆良学園の方でも、大きな混乱が起こっていた。

世界樹は光輝き、空には謎の宮殿が逆さに映っているからだ。

 

 飛行機などで向かおうにも進路が勝手に変更される謎の現象に見舞われ、入ることができない。

そんな謎の場所を見て、誰もが困惑するばかりであった。

 

 しかも、そこからさらに無数の怪物どもが押し寄せてきたのだ。

街中は大混乱し、恐怖に恐れおののく。

 

 されど、怪物どもは物理的な攻撃で人を襲わず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「召喚魔が降ってきやがったぜ!」

 

「”原作通り”の展開よなぁ」

 

 

 麻帆良の魔法使いたちや転生者も、空から来た怪物、召喚魔に気が付きすぐさま出動。

連中を倒すために攻撃を開始したのである。

 

 

 別の場所でも、アルビレオやここへ来ていた木乃香の父、詠春、それ以外にも学園長も外に出て、その様子を冷静に観察していた。

そして、召喚魔が()()に被害が出ないような()()されていることに、安堵の声を漏らす。

 

 また、アルビレオは召喚魔が集まっていく場所が、麻帆良の中心にある世界樹だと言うことに目を付けたのだ。

 

 

 別の場所でも転生者たちが、何やらざわついた雰囲気を出していた。

 

 

「だったら俺の特典でぶっ殺してやろう! ゴミどもめェェェッ!!」

 

「だからやめろ! お前がやったらここもあぶねえってんだよ!!」

 

「そうだやめろ!! やめろ!!」

 

「貴様らぁ……クッ! 離せェェ…………!!」

 

 

 そこで街へと出てきた転生者たちも、我先にと召喚魔を退治し始めるが、やたら叫ぶ転生者が特典を使おうと力を入れた時、周囲の転生者がまた止めに入った。

この転生者が特典を開放すれば、麻帆良が壊滅する恐れがあるからだ。

 

 複数の転生者が彼を羽交い絞めにし、身動きが取れないようにしていく。

その転生者も暴れて拘束を解こうとするが、力が強い転生者たちが拘束しているため、まったく抜け出せないで叫ぶだけだった。

 

 

「なんかウジャウジャ降って湧いてんなぁ!」

 

「マジかよこりゃあよぉ…………」

 

 

 そんなところとは関係ない場所で、音岩昭夫と鮫島刃牙も騒ぎになってる街へと姿を現す。

そこで街を見渡せば、なんか大量の召喚魔が湧いてるではないか。

こりゃマズイと思った昭夫は、戦うことを選び動き出した。

 

 

「ぶっ潰してやるぜェェッ!!」

 

「ギターうるせぇ!!」

 

「行くぜぇッ!! ”レッド・ホット・チリ・ペッパー”ッ!!」

 

「俺は水がねぇと役に立たねぇ…………」

 

 

 ならば全部ぶっ倒すとギターを弾きまくり鳴らしまくる昭夫の横で、めっちゃうるさいと叫ぶ刃牙。

叫んでいる刃牙の文句なんて無視し、昭夫はレッド・ホット・チリ・ペッパーを繰り出して戦いだした。

 

 レッド・ホット・チリ・ペッパーは電気があれば超強力なスタンドだ。

電線の中も移動でき、電気の量でパワーアップし雷速でも動ける。

 

 そして、ここは街中だ。電気が通っている場所はそれなりにある。

昭夫は街灯の電気を使い、レッド・ホット・チリ・ペッパーに電気を与え、超高速で召喚魔をぶん殴っていくのだ。

 

 それを横で見ているだけの刃牙。

刃牙のスタンドはクラッシュ。機械的な鮫の姿のスタンドで水と水の区間をワープできるのだが、水がないので何も出ない。

今はただ見ているだけのカカシにしかなれなかったのだった。

 

 

「つーか…………、アキラのやつ戻ってきてねぇけど…………、まさかだよなぁ……?」

 

 

 ただ、刃牙には一つ大きな心配があった。

それこそ妹分として接してきたアキラのことだ。

 

 イギリスに旅立つ前に、魔法世界(変なところ)に行くなよ気を付けろよと忠告しておいたのだが、それが上手く行ってるかわからなかったのだ。

 

 それにスピードワゴン財団が、何故か知らないが女子中等部3-Aの生徒たちを連れて帰ってきた。

その中にアキラの姿がなかったことに、強い不安がよぎったのである。

 

 

 また、街中の建物の屋根の上では。

 

 

「来たか」

 

「ぼっちゃまの予想通りですな」

 

「あまり当たってほしくない方の予想だがな」

 

 

 トンガった頭を尖らせながら、空の状況を眺める少年、転生者の錬。

彼の横で話しかけるのは、錬の特典のおまけであり、最大の相棒である持霊の馬孫だ。

 

 錬は微妙だが原作知識を持つ転生者。

あまり覚えてはいないが、この最終局面のことはある程度覚えていた。

なので空に謎の宮殿が現れたのを見て、嫌な予感が当たったと錬はこぼしたのだ。

 

 

「むっ! あれはっ!!」

 

 

 だが、ふと下を見れば召喚魔どもが、人々に詰め寄っているではないか。

 

 誰もが何が起こったのかわからず、パニックを起こしていた。

何せ先ほど発生した現象の話では、この怪物どもの攻撃で服が脱げると言うのだ。

そりゃこんな街中で服が脱げるなんて、当然嫌だからしょうがない。

 

 それに錬の見た人々は大体が女子で、そりゃビビるのも当たり前の状況だった。

 

 

「みなさん! 逃げて!!」

 

 

 そんな状況に出くわしていたのが、錬の友人であり同じ転生者の聖歌だ。

聖歌は周囲の人の盾となるように前に出て、逃げるように指示を出す。

頭で考えずに体が勝手に動いた、咄嗟の判断だった。

 

 その聖歌の一声で周囲の人々は逃げようとするが、ここは街の中の袋小路。

残念ながら逃げ場が一つもなかったのである。

 

 

「っ!」

 

 

 そして、目の前の怪物が何やら術らしき行動をはじめ、光り出した。

聖歌はもうだめだと目をつぶったその時────。

 

 

「”九天応元雷声普化天尊”!!!」

 

 

 知っている少年の叫び声と共に、とてつもない轟音、それこそ雷鳴が聞こえてきた。

 

 

「あっ……、れ、錬!!」

 

「下がっていろ。あとは俺がなんとかする」

 

「……ありがとう」

 

 

 聖歌が目を開くと、そこにはよく見た男子の背中があった。

 

 錬はすでに甲縛式O.S(オーバーソウル)武神魚翅を作り出しており、特大の雷撃を召喚魔の集団にぶち込み、一瞬にしてそれらを消滅させたのである。

 

 たまらず聖歌は彼の名を呼ぶと、錬はすっと左手で聖歌を制し、ここは自分に任せろと笑うではないか。

この錬の行動と、助けてくれたことに対して、聖歌ははにかみながら礼を言うのだった。

 

 

 他の場所でも、この異変に気が付き急行してくるものたちがいた。

 

 

「これは一体どういうことだ!?」

 

「人命救助は任せろ!」

 

 

 それは転生者の豪が作り出した青と赤のビーグルロボ、氷竜と炎竜だ。

どちらもこの状況に困惑しつつも、住民の安全を第一を考える。

 

 

「何が起こっているのです…………!?」

 

「友好的じゃねぇのは確かだぜ!」

 

 

 さらに学園祭以降に完成した二体の緑と黄色のロボ、風龍と雷龍も参上。

やはり二体とも突然の襲撃と言うことで、驚きを隠せないでいた。

 

 

 だが、当然その四体だけではない。

指揮者として茶色の長髪を靡かせる男がそこにいた。

 

 

「氷竜! 炎竜! 風龍! 雷龍! 街のみんなを守りつつ、謎の集団を撃退するぞ!」

 

「「「「了解ッ!!」」」」

 

 

 それこそ彼らを作り出した転生者、獅子帝豪。

彼もまた原作知識を微妙にだが覚えている。こうなることはある程度が予想していたのだ。

 

 そこで四体に指示を出し、住民の避難とどんどん増えていく召喚魔を退治するように命じれば、四体は心強い声で指示に応じる。

 

 

「ならば俺も! ────ギャレオーンッ!!」

 

 

 そして、豪も自ら戦うべく、特典のおまけとして持たされたライオン型のロボ、ギャレオンを呼べば、ライオンロボが勇ましい雄たけびと共に豪の元へと飛んできた。

 

 

「フュージョンッ!!」

 

 

 ギャレオンが飛んできたところで、豪は高くジャンプして声高らかに叫べば、ギャレオンの口の中へと吸い込まれていく。

 

 すると、前足の爪が後ろへ折りたたまれて手となり、後ろ脚がまっすぐ伸びてつま先が持ち上がる。

さらにライオンの頭が胸部へ移動すると、人型の頭部が現れた。

 

 

「ガイガーッ!!」

 

 

 これこそガイガー。されど、ただのガイガーではない。

エヴォリュダー豪は特典で与えられたギャレオンとフュージョンすることで、ジェネシックガイガーへと変形できるのだ。

 

 

 「ジェネシッククローッ!!」

 

 

 ジェネシックガイガーへとフュージョンした豪は、即座に空中にいる召喚魔を撃退し始める。

腕に装備されたクローを使い、超高速で移動しながら召喚魔を殲滅していく。

 

 

 当然、それらをモニタリングしている者たちもいる。

 

 

「一体何が起こっておるんだ!?」

 

「上空に逆さに映る宮殿らしきものが見えます!」

 

「まさか火星と麻帆良のゲートが繋がってしまっているのカ!?」

 

 

 超の新たな基地内で叫ぶ白髪のおじいさん、転生者のエリックだ。

その横で上空のモニター画像を見ながら少し焦っている葉加瀬と、もしやと仮説を驚きの声で語る超がいた。

 

 

「あの怪物どもは何故ここへ降りてきている!?」

 

「ちょと待つネ。今分析するヨ」

 

 

 エリックは怪物どもが、ただやみくもにはぐれて落ちてきただけとは考えられず、何かあるはずだと叫べば、超がすぐさまデータを分析。

 

 

「あの召喚魔らしき魔物の行先は…………、世界樹のあたりみたいだネ」

 

「世界樹!? 一体何があるというのだ!?」

 

「そればかりはわからないヨ…………」

 

 

 そして、超は分析したデータを見て、召喚魔の目的地を割り当て、それを言葉にする。

分析したデータはアルビレオの推測と重なり、世界樹の場所に何かあることは明白となった。

 

 が、超たちにそれがわかる訳もなく、何故世界樹へと向かっているのかはわからないままだった。

 

 

「猫山君なら何か知っていると思うが、彼は出張でいないしなぁ……」

 

「あの召喚魔は、あの宮殿から湧いているみたいネ」

 

 

 とは言え、この状況を知ってそうな人物にエリックは心当たりがあった。

それこそ猫山直一、原作知識を持つ転生者だ。

 

 彼は学園祭の時も()()()()を、彼らに残してくれたりしていた。

故に、この状況も知っているだろうと思ったのだが、肝心の本人は魔法世界へ出張しているのでここにはいないのである。

 

 彼らは直一が、まさか今まさにモニタリングしている宮殿の内部で戦っているなど、夢にも思うまい。

 

 

 と、この混乱した状況を何とかしようと、行動するものが現れる。

 

 

『騒がしてすまんのう。こちらは麻帆良学園イベント実行委員会のものじゃ』

 

 

 それは覇王や状助の担任教師であり同じ転生者のジョゼフ・ジョーテスだった。

ジョゼフも原作知識が多少残っており、この事態だけは何とか記憶に残っていた。

 

 なのでそれに則りスピードワゴン財団の協力のもと、巨大立体映像で姿を見せながら、街の住人へと話しかけ始めたのである。

 

 

「あっ!? ジョーテスのジジイ!? テメェがその役やんのかよ!!?」

 

「あのジジイまだセンコーやってんのか?」

 

「バリバリ現役だぜぇ」

 

「マジかよ。元気だなぁマジで」

 

 

 立体映像と声を聴いた昭夫は、驚いた顔で叫び始めた。

昭夫は一応だが原作知識がある。どうでもいいと思っているが、あるにはある。

この展開で本来ならば雪広あやかが行う行動なのを、ジョゼフがその役を代わりにやっているのに文句が出た訳だ。

 

 隣でそんな文句を聞いた刃牙は、ジョゼフが未だに教師を続けているのかと思い、声に出した。

何せこの刃牙も、数年前はジョゼフの教え子であり、あの時から高齢だったので流石に引退したんじゃないか、と思っていた。

 

 刃牙の問いに昭夫は元気してやってると答えれば、まだ元気なのかよあのジジイと思い、ようやるなあと思ったのだった。

 

 

『ほっほっ、どうじゃ? 夏休み最終日を飾るにふさわしいイベントは』

 

 

 二人がそんな会話をしている間に、ジョゼフの演説は進んでいく。

 

 

『今発生しておる現象、それは突発イベント。名付けて”麻帆良学園VS火星人大襲来”じゃ』

 

 

 この襲撃を全てひっくるめて、学園祭の続きのイベントだと宣言したのだ。

まあ、これも全部()()()()()の展開で、ジョゼフはあやかの代役をしているだけだが。

 

 

『今回の敵の目標地点はなんと世界樹。参加者には世界樹へ向かってくる火星人どもを食い止め、撃退していただきたい』

 

 

 ジョゼフの説明の間に、学園祭で使った魔法銃を住民に配り始めた。

手伝ってくれているのは当然女子中等部3-Aの子たちだ。

ジョゼフが彼女たちに頼み込んで手伝ってもらっているのである。

 

 彼女たちもネギの故郷から迎えに来た教師であり、覇王や状助の担任と言うことで、特に気にせずに手伝ってくれたのだ。

本当にありがたいことだ。

 

 

「火星人あんなんじゃないネ」

 

「まあそういうな!」

 

 

 そこで火星人と言う単語に超は反応して愚痴りだす。

確かに人の姿とは少し違うのもいるが、あそこまで悪魔っぽいのは火星人にはいないよな……? いないよね? と。

召喚魔は悪魔の類だとするならば、金星の方の可能性が高いが。

 

 とは言え、これは混乱を治めるための嘘なので、エリックも横で超の肩に手を乗せ、笑ってなだめる様子を見せた。

 

 

『ポイントの上位入賞者にはスピードワゴン財団から、豪華な賞品がでるぞ! ふるって参加してほしいのう』

 

 

 ジョゼフは最後の説明を終えると、立体映像の姿を消し、住民は魔法銃などを借りて一斉に戦いだした。

 

 

「なんであのジジイがスピードワゴン財団とコネ持ってんだ?」

 

「宇宙の果てを知らねぇようにそんなことは知らねぇ」

 

 

 とりあえずレッド・ホット・チリ・ペッパーで戦っている昭夫だが、銃を貰いに行こうと移動し始める。

 

 そんな時、ふと疑問が湧いてきた。

何故ジョゼフがスピードワゴン財団を利用できるのかと。

 

 刃牙も当然そんなことなど知るはずもなく、誰も答えてはくれない問いだった。

 

 

「騒ぎにならぬよう配慮されたようだが、さて、どうするか…………」

 

「とりあえず、召喚魔を片付けなければならないネ」

 

「行くと言うのか!? まだ監視はとれておらんぞ!」

 

「このまま放置はできないヨ」

 

 

 これで街の混乱はだいぶおさまり、誰もがイベントだと勘違いして召喚魔と戦ってくれるようになった。

ならば、こちらはどうするかと、エリックは腕を組んで考える。

 

 超は言わずとも外の召喚魔を倒しに行くと、戦闘用の装備を整え始めた。

 

 されど、超はまだ魔法使いたちの監視が付いている。

一応監視役は知り合いの豪だが、それでも監視下にいるのだ。

勝手なことをしたらまずいとエリックは説得しようとするも、超は戦う姿勢を崩さずに基地から出ようと移動を始める。

 

 

「ドク・ブレイン! 獅子帝さんからシグナルが!」

 

「なにっ!? まさか()()まで持ち出すと言うのか!?」

 

「ここは任せたネ! ドク! ハカセ!」

 

「待てと言っておろう!!!」

 

 

 そんな時、豪からの緊急シグナルが発せられ、コントロールパネルの一部が点滅して警告音が響き渡る。

葉加瀬はそれを見てエリックへと声をかければ、そのシグナルの意味を理解したエリックが、驚きの声を上げたのだ。

 

 そこへ毒策差に紛れてさっさと立ち去る超。

エリックがそれに気づくもすでに時遅し、超は基地の出口へと続くエレベーターへと乗り込み、出てってしまったのだった。

 

 

「どうします!? やるんですか!?」

 

「うーむ…………。獅子帝君も無意味にアレを使おうなど思わんはずだ。何かあったのだろう! 許可しよう!」

 

「では……!」

 

「ならば獅子帝君が言っていたとおりに進めよう!」

 

 

 とは言え、今はそれ以上に豪のシグナルの方だ。

葉加瀬はこのシグナルの指示通りに行動すればよいのかとエリックへ尋ねると、エリックは再び腕を組んで深く考えたのち、豪のことを信じて応じると答えた。

 

 エリックの言葉に葉加瀬が反応し、エリックもすぐさま豪の説明通り動こうと、このモニタリング用の部屋の隅に置いてある、ある緑色の板の前へと移動する。

 

 

「……これを叩いて割ればいいんですよね?」

 

「ああ、確かそんなことを言っていたはずだが……」

 

「叩いて割っても、いいんですよね?」

 

「ワシにもわからんよ!」

 

 

 と、その六角形の緑の板が五つほどくっついたものを見て、葉加瀬はエリックへ再び質問する。

エリックも豪の説明しか聞いていないので、はっきり言って豪が何をどうしてそうさせたいのか、さっぱりわからないのだ。

 

 と言うのも、この緑の板。

ファイナルフュージョンに必要なジェネシックマシンを呼び覚ますために必要なものだ。

これを叩き壊すことで、封じておいたジェネシックマシンが起動し、ファイナルフュージョンが可能となるのである。

 

 とは言え、何も知らない人がそれを聞いてもチンプンカンプンで、頭が??????となるのは当然のこと。

なのでエリックも訳がわからんと叫ぶことしかできないのだった。

 

 

「何か叫びながらやると言っておったが……」

 

「なんか注文が多いですね……!」

 

「ええい! とりあえず任せるぞ!」

 

「はっ、はい! 何とかやってみます!!」

 

 

 だがさらに、注文があった。

特定の単語を叫びながら行えということだった。なんだそれ?

 

 エリックも意味がわからんと話せば、当然葉加瀬もアホみたいだと呆れていた。

それでも一応豪の頼みなので、やるしかないと二人は決意する。

 

 そして、代表として葉加瀬が、豪の言った通りの行動を行ったのである。

 

 

「ジェネシック!! ドラーイブ!!!」

 

 

 なんだかよくわからないが、とにかく意味ありげな言葉を叫び、板の中心を叩いて砕く葉加瀬。

特殊なスーツを着ながらやっているから、なんとか割れてる可能性がある。

 

 すると、砕けた板からすさまじい光が発生し、周囲を緑色に染め上げたのだ。

 

 

「うおおっ!? まぶしい!?」

 

「何が起こって…………!?」

 

 

 エリックはまぶしさに目を覆い、葉加瀬もこの状況に困惑する。

 

 すると、麻帆良の地下に隠してあった五つのクリスタルが砕かれ、中からジェネシックマシンが飛び出してきた。

イルカ型のプロテクトガオー。モグラ型のスパイラルガオー。鮫型のブロウクンガオー。同じくモグラ型のストレイトガオー。そして、鳥型のガジェットガオー。

 

 それらは麻帆良の地下の隙間を抜けて地上へと飛び上がり、ガイガーの周囲に円を描くように終結した。

 

 

「よっしゃ────────ッ!!! ファイナル! フュージョンッ!!!」

 

 

 ジェネシックマシンが飛んできたのを見た豪は、にやりと笑って大きく叫ぶ。

それこそファイナルフュージョン。

 

 

 するとガイガーの下半身が回転し、緑色の煙を大量に噴出してフィールドを形成。

そこへジェネシックマシンが突入してきて、胸のギャレオンの雄たけびに反応し、合体の準備を始める。

 

 ストレイトガオー、スパイラルガオーがガイガーの脚部に接続、体が折りたたまれて足へと変形。

ガイガーの腕が背中へ折りたたまれると、胸を横に貫通する穴が出現、プロテクトガオー、ブロウクンガオーがガイガーの左右で変形し、その穴へと左右から侵入し、中央でドッキング。

プロテクトガオー、ブロウクンガオーの頭部部分から滑るように白い上腕が現れる。

 

 その後ガイガーの背中へと逆さのままガジェットガオーが接続、両肩となったプロテクトガオー、ブロウクンガオーへとガジェットガオーの爪が引っ掛かりロック。

 

 上腕部分へと腕部が接続し、拳の部分が回転しながら下がってくる。

 

 そして、ギャレオンの頭部の横に鬣のパーツが追加され、頭部にヘルメットが合体、額のGストーンがせり上がり、マスク部分が下がってくる。

最後に頭部の後方に金色の鬣が出現し、黒き巨人が姿を現した。

 

 

「ガオ! ガイ! ガーッ!!!」

 

 

 ────それは、最強の破壊神。

 

 ────それは、勇気の究極なる姿。

 

 転生神から与えられた、大いなる遺産。

 

 その名は、勇者王。

────ジェネシックガオガイガー。

 

 

「あんなのが麻帆良の地下に隠してあったんですか!?」

 

「ワシも話しか聞いとらんから何が何だかわからんのだよ!!」

 

 

 突然地下から5体のロボが現れたことに、葉加瀬は慌てふためいた。

何せあのような謎のマシンが隠されていたのだ。驚くのも当然だ。

 

 エリックも当然驚き戸惑った。

一応豪から話には聞いていたが、それがどういったものかなどは聞いていないので、まったくわからなかったのだ。

 

 

「なんで破壊神が湧いてんだよ!? 意味がわかんねぇ!!」

 

「だったら俺の力でもぶっ飛ばしてやる……! ゴミどもめぇ!!」

 

「だからお前はダメだって!!」

 

「離せッ!! くそったれー!!」

 

 

 麻帆良の地上でも、ざわめく声が漏れていた。

破壊神、ジェネシックガオガイガーが降臨したのだから、転生者としても話題が尽きない。

 

 そこで破壊神が現れたのだから、自分の特典でもやれると暴れそうになる転生者を、再び羽交い絞めにして抑える転生者たち。

いやはや、先ほどとまったく同じことをしているのだから、懲りないようである。

 

 

「マジかよぉ…………」

 

「すげぇー、あんなもんまであるのかよぉ……」

 

 

 ジェネシックガオガイガー出現は、昭夫と刃牙の度肝をも抜いていた。

なんであんなの出てくるんだ? いや青いロボと赤いロボがいる時点で、まあいるかも……、とは思ってはいたが。

実際出てくると迫力が違うと言うか、恐ろしいほどのパワーを感じると言う訳だ。

 

 

「ガジェットフェザーッ!!」

 

 

 そんな地上の状況など知らず、豪は飛行能力を向上させるために背中のウィングを展開。

 

 

「”ブロウクンマグナム”ッ!!」

 

 

 さらに右腕の拳部分を超回転させ、真っ赤に光らせて目の前の召喚魔の群れに、拳部分をぶっ放せば、重力を無視するかのような軌道で拳が飛び回り、召喚魔の大群を殲滅していく。

 

 

「やはりジェネシックのパワーでは、市街地での戦闘だと被害が出かねない……!」

 

 

 とは言え、この程度の攻撃でさえ、余波がすさまじいことになっている。

豪はジェネシックガオガイガーの戦闘は、街の真ん中で行うのは危険と判断し、空を見上げる。

 

 実際は市街の被害を抑えるバトルフィールドを作り出す、ディバイディングドライバーと同等の効果のあるガジェットツールも存在するが、今ここで使うと逆に住民が混乱すると考え、使うことができないと豪は判断した。

 

 

「隊長!」

 

「ここは我々に!」

 

「そうだな! 任せたぜ! お前たち!!」

 

 

 そこへ炎竜と氷竜が来て、街のことは任せろと叫ぶ。

豪は言葉に甘えて彼らにこの場を任せ、自分がすべきことをなすために行動を起こす。

 

 

「ならば、俺が目指すべき場所は…………!」

 

 

 再び豪は天に映る宮殿を見上げ、そこに何かを見た。

 

 

「上空の穴の先に、巨大な影が見えた……! あれを放置するわけにはいかないぜッ!!」

 

 

 巨大な影。大きく白い物体。

あれは自分が相手をするべき存在だと、豪は直感で理解した。

 

 

「獅子帝、まさか空中に映る宮殿へ行く気カ?」

 

 

 そのジェネシックガオガイガーの様子を見ていた超は、豪が何をするのかを察する。

 

 

「ガジェットツールッ!! ”ボルティングドライバー”ッ!!!」

 

 

 ならばと、豪は尻尾を分離させ中間の関節を二つ取り外して左腕へと合体。

すると巨大な先端がないナットドライバーがそこから伸びて形となる。

 

 

「”ジェネシックボルト”ッ!!!」

 

 

 そして、ギャレオンの口から一本のドライバーの先端が飛び出し、それをボルティングドライバーの先端へと合体させ、そのまま上空へと飛び上がった。

 

 

「ウオオオオオオオォォォォッ!!!」

 

 

 上空に映し出される宮殿へは何かに阻まれて奨めない。

されど、ボルティングドライバーによる空間湾曲と、ジェネシックオーラを放ちながら飛び上がったジェネシックガオガイガーは、召喚魔を蹴散らしつつ強引にその壁を突破し、そのまま魔法世界へと飛び込んでいったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在、パルパレーパ・プラスの前へと立ちはだかる、破壊神。

 

 

「馬鹿な……ジェネシックが出てくるなど……!」

 

「お前の相手はこの俺だッ!」

 

 

 パルパディーパははっきり言って、ここでジェネシックガオガイガーが出てくるなど考慮していない。

むしろ、突然出てきて頭がおかしくなりそうなほど混乱していた。

 

 逆に豪は目の前の相手こそ、自分が倒すべき相手だと確実に認識している。

何せ学園祭で見た人たちが乗った飛行船を、目の前のパルパレーパ・プラスが襲っていたからだ。

 

 豪はジェネシックガオガイガーの左腕に装備したボルティングドライバーを分離し、再び尻尾の節へと戻すと、パルパレーパ・プラスへと向いて戦闘態勢で構える。

 

 

「クッ!! ぬうおおおおおぉぉぉぉッッ!!」

 

「なにっ!?」

 

 

 もはやなりふりかまっていられないパルパディーパは、最大のパワーをもってジェネシックガオガイガーに突進をぶちかまし、そのまま押して場所を移動し始める。

 

 豪は目の前のパルパレーパ・プラスの行動に驚き、何とかこの状況を打破しようとするも、時すでに遅し。

 

 

「しまった! 宮殿から離されたかッ!?」

 

 

 豪はパルパレーパ・プラスによって墓守り人の宮殿から、結構距離をあけられてしまった。

目の前のパルパレーパ・プラスの行動がこのためだったことに、してやられたと感じて宮殿の方を向く。

 

 

「いや、むしろ好都合だ! ここでなら本気で戦えるぜッ!!」

 

 

 逆を言えばこの場所ならジェネシックガオガイガーが本気を出しても、誰にも被害を出さずに済む。

それを考えればむしろ好機だと、再びパルパレーパ・プラスの方を見れば、衝撃の映像が目に入ってきた。

 

 

「────ハッ!?」

 

 

 なんと、パルパレーパ・プラスの六つのモジュールが、パルパレーパ・プラスに突き刺さっていたのだ。

 

 

「”ドーピングシリンダー”ッ!!」

 

「これはまさかッ!?」

 

 

 これぞまさにドーピングシリンダー。

パルパレーパ・プラスの能力を向上させるドーピングだ。ラウドGストーンの出力を大幅に高めることで、強力な力を得る。

だが、それはドーピングでしかなく、時間経過で効力を失い、さらにはラウドGストーンすらもその力を失ってしまう。

 

 

「パルパレーパ・プラジュナーッ!!!」

 

 

 しかし、そこまでしなくてはならない相手、それこそが目の前に現れたジェネシックガオガイガーだ。

ジェネシックガオガイガーは、このパルパディーパの特典で得た力、パルパレーパ・プラスの天敵だ。

 

 二つ目の特典に強力な再生能力を貰っていても、こちらは容易く砕かれ破壊され続ける。

たとえ勇者王ガオガイガーFINALのように、ピサソールの力があったとしても、再生以外では不利になる。

 

 このまま戦っても敗北し砕かれるのみ。

もはや命を捨ててでも倒さねばならぬ相手こそ、ジェネシックガオガイガーだ。

 

 ドーピングシリンダーが吹き飛び、パルパレーパ・プラスの姿がどんどん変化していく。

曲線状でツルツルしたボディから、直線状で鋭利な見た目へと変わり、指が蛇のような形状となり、全身が薄緑色に光輝いた。

 

 これこそがパルパレーパ・プラスの強化形態、パルパレーパ・プラジュナーだ。

 

 

「もはや……、なりふり構っていられぬ……。滅びの悪魔を相手にするのであればなおさらだ」

 

「勝負だ! ()()()()()()ッ!!」

 

「ゆくぞオォッ!!!」

 

 

 故に、全てを投げ捨ててでも戦わなくてはならない。

本当ならばドーピングシリンダーなど、使いたくはなかったが、そうは言っていられない。

持てる全てを燃やし尽くし、滅びの悪魔(ジェネシックガオガイガー)を倒さなくてはならないのだから。

 

 豪も目の前のそのすさまじい気迫を感じ、ファイティングポーズを取って構える。

それを見たパルパディーパは、己の全てを賭して勝利を勝ち取るために戦い始めたのだった。

 

 

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