理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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百九十三話 魔素の怪物

 

 

 アスナたちが結界に閉じ込められた後、大体の仲間が集い、巨大な怪物を倒さんと攻撃を繰り広げていた。

全員に情報を共有し、あの怪物の中のどこかに最後の鍵(グレートグランドマスターキー)があることと、火力のごり押しはマズイということは伝わっていた。

 

 それに術者らしき人物の上半身の一部が怪物の頭部から覗いているので、そこを破壊すればよいかと考えたが、一番最後の鍵(グレートグランドマスターキー)がありそうな部分であり、そこをごり押しで吹き飛ばす訳にもいかないので、ジリ貧な戦いを強いられる羽目になってしまっていたのである。

 

 ……ちなみに、墓所の主たる人物は、単純に静観を決めている。

どちらにもつかずに、この状況の行く先を見つめているようだ。

 

 

「チィ!? 再生速度が異常に高ぇ!? こいつぁ厄介極まりねえな!」

 

「この巨大な躯体を削り切るには、いささか時間がかかりすぎるか……!」

 

「オレ程度の攻撃じゃどうにもなりませんよこれは!!」

 

「それでもないよりはましですよ」

 

 

 坂田金時(バーサーカー)は怪物の腕を叩き斬るが、そこからすぐに再生するのを見て舌打ちをする。

何せあの中には最後の鍵(グレートグランドマスターキー)が存在しており、最大火力で殴るとそれを壊す可能性があるため、あえて力を抑えて攻撃しているからだ。

カルナ(ランサー)もその再生は厄介だと思いながら、何度も槍で切り刻む。

 

 ロビンフッド(アーチャー)は自分の攻撃が再生するスピードのせいで、あまり効果的でないことにショックを受けた様子を見せ、今のロビンのマスターである転生者のナビスは、そんなロビンを気遣う言葉を送りながら、魔法を怪物へとぶち込み続ける。

 

 

「あー! チキショー! めんどくせぇなぁこういう敵!!」

 

「再生力が高すぎるでござる……!」

 

「高火力ぶっぱできないってのは厄介すぎるぜ……!」

 

 

 カギたちもすでにここへ来て、怪物の相手をしていた。

カギも王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)で何度も攻撃するが、威力が強すぎるとマズイと考え手加減している現状だ。

楓やアルスは高火力の技と言うのがあまりないため、普通に攻撃しているが、やはり再生されてしまい、先が見えぬ戦いだと冷や汗を流す。

 

 

「こんなことになっちまってんなら、彼女たちを逃がすべきだったかぁ?」

 

「今更言っても仕方のないことだ! 守護しつつ戦う他ない!」

 

「小生も彼女たちを守護しながら戦いましょう」

 

「いけー! やれー兄貴ー! ぶち込め―!」

 

 

 あやかの計画でここまで来た待機組もすでにやってきており、彼女たちの恩人たる転生者、ヴィガ・ササジマもすでに攻撃していた。

ササジマは気で肉体強化して物理でぶん殴るタイプで、殴った瞬間に気の爆発を起こしてダメージを増す技を使う。

 

 また、こんな敵が出てくるのであれば、やはりあやかたちを避難させた方がよかったとササジマは後悔するが、アキレウス(ライダー)はこれからをどうするかだと言葉にしながら、見えざるスピードで移動しながら槍を振るって怪物の触手を切断しまくる。

 

 同じく和美の守護霊と化したマタムネも、彼女たちを守るために前に出て鬼殺しを構え、近づいてくる触手や腕を叩き斬っていた。

その後ろの方でカモミールはカギへと叫んで応援しまくる。

 

 

「攻撃が命中した瞬間から再生されては……!」

 

「なんて再生力……!?」

 

「大きすぎてちょっとの攻撃じゃ通じないし、本当にどうすればいいの!?」

 

 

 高音も影の槍を大量に作り出し、怪物へと攻撃を仕掛けるも、ダメージを与えた後にすぐ再生されてしまい、思ったよりも結果が出ないことに悔しく歯噛みする。

横でその従者の愛衣も魔法の射手を放つが、大きな手応えはない様子だった。

 

 同じくアーニャも、得意の炎の魔法を術具融合化して殴る蹴るを繰り返しているが、大きすぎてダメージになってるのかさえわからないと言う感じだ。

 

 

「クッ!? こっちもダメ! ちょっとやそっとじゃ簡単に再生されちゃうよ!」

 

 

 豹族獣化(チェンジ・ビースト)で攻撃力とスピードを上げた暦も、爪で何度も攻撃しているが、同じように再生されてまったく歯が立たない様子だった。

当然竜族竜化した状態だった環も攻撃に加わって入るが、結果に大きな差はない。

無駄に高い再生力が本当に邪魔なのだ。

 

 

「次から次へと……! 燃やし尽くしてやるしかねぇッ!」

 

 

 数多もコールドとの戦いに勝ち、ここへと参戦しており、すでに戦いを繰り広げていた。

燃やしても燃やしてもキリがなく増え続ける触手などの攻撃に、それ以上の炎で殲滅をもくろむ。

 

 

「最大火力で押し切れないのはなかなか面倒だ」

 

「せやけど、やるしかない!」

 

「こんなでかい怪物を相手にするのは初めてアル!」

 

 

 それに火力で押し切れないと言うのが、一番面倒だった。

せめて火力で吹き飛ばせるなら、一撃で吹っ飛ばすのにと思う覇王。

 

 だが、それでも倒さなければならないのは間違いないので、木乃香も横で必死に戦う。

古菲もこれほどのデカブツ相手の初体験ながら、恐れることなく何度も攻撃を繰り返していた。

 

 

「これじゃ最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を見つけ出す前に、儀式の時間が来てしまう……!」

 

「アスナ姉ちゃんがおらなくなったんはデカすぎるで!」

 

 

 当然ネギも術具融合、最果ての光壁を大剣モードへチェンジして、巨大な腕などを叩き斬ってはいるが、これでは埒が明かないと焦りの声を出す。

 

 何せ必要なのは、この怪物の体内のどこかにある最後の鍵(グレートグランドマスターキー)であり、どの部分にそれがあるかさえわからない。

巨大な怪物のどの位置にそれがあるかもわからないため、的確な攻撃を行うことができないでいた。

 

 小太郎は、アスナが状助を助けに行ったきりになっていることを言葉にする。

いればこの怪物さえも、一撃で消滅させることができるからだ。

 

 とは言え、ネギも小太郎もアスナが何もせずどこかに消えるとは思っていない。

思いもよらぬ何かがあり、こちらへ帰ってくることができなくなっていると二人は考え、いないならば頼らない方法で戦うしかないと必死に攻撃を繰り返す。

 

 そりゃ魔法も召喚魔も魔法で作り出されたこの怪物も、全部無効化できるのがアスナだ。

そんな一番放置したらマズイ人物を、放っておくはずがないだろう。

 

 

「おのれ……! これ程厄介なものを作り出してくれたな!」

 

 

 また、ディオもこの状況を打破できぬことに苛立ちを覚え、魔法と共に怒りをぶつける。

 

 

「本当に面倒ごとばっかりね! 竜の騎士相手でもう疲れてるんだけど!」

 

「されど、アレを倒さねば世界が滅びてしまう!」

 

 

 トリスは竜の騎士との戦いで結構ズタボロだと言うのに、今度はレイドバトルをさせられることにかなりご立腹だった。

その横でランスローは冷静な態度で、倒さなければならぬと剣を振り続ける。

 

 

「こういう時に大火力で押し切れないのは本当に面倒だな……!」

 

「しかも半端なダメージではすぐ再生される。調整するのも大変だ」

 

 

 当然エヴァンジェリンも戦っており、最大火力で破壊できないことにもどかしさを感じていた。

 

 フェイトも火力が低すぎても簡単に再生されることを、かなり面倒だと言葉にする。

それに、遠くから栞の姉たちの姿を見ており、そちらの方もとても心配していた。

 

 

「奴らは()()()()()()を抑えているようだな。どれほど時間稼ぎができるかどうかだが……」

 

 

 怪物の頭部と融合しているセプテムムは、この状況でも楽観視はしていない。

アスナが出てくれば、この怪物すらも一発で消滅してしまうからだ。

 

 故に、アスナを抑えに行っているらしい二人が、どれほど持ちこたえるかを考えるのだ。

 

 それに、これはセプテムムが用意した最大限の()()()()だ。

敵を倒せるならばそれで良し、しかし敵は強大だ。ならば、時間を稼ぐだけ稼ごうと言うのが、作戦の一つなのである。

 

 

 と、そこへハルナの飛行船も飛んでくる。

 

 

「うわっ!? なんかすごいことになってる!?」

 

 

 目の前に巨大な怪物が出現したことで、ハルナは驚き戸惑った。

 

 

「どうしよう」

 

「私たちが今、あちらに行ったところで足手まといになるだけです」

 

「そうだけど……」

 

「ここは私たちだけができることをするべきです」

 

 

 のどかはネギたちが戦っているのを見て、何かできることはないかと夕映へと言うと、夕映は自分たちがあの戦いに混ざったとしても、邪魔になると無慈悲に言う。

だが、その後に、あの場で戦うことよりも、もっと別の方法でサポートするのがよいと付け加えた。

 

 

「私もこっから援護射撃してみるよ!」

 

「とりあえずはそうするしかないか」

 

 

 裕奈は魔法銃を取り出してとりあえず戦う姿勢を見せ、焔もアーティファクトで熱線を、裕奈の魔法弾とともに怪物の触手へと叩き込む。

 

 

「引き続き防御はお任せください」

 

「防御はこちらで何とかします」

 

 

 防御面はプロテクトシェードが使える茶々丸と、木霊防御が可能なブリジットが担当。

それによって適当な攻撃ははじき返せ、なんとか安全に飛行で来た。

 

 

「こっちもなんとか必死に船体を安定させるからみんな頑張って!」

 

 

 ハルナもこの激流の中、頑張って飛行船を操縦していた。

それでも状助がさっきまでいたおかげで、機体はほぼ無傷であり、まだまだ何とか安定させようとすればできる範囲だった。

 

 

「ふむ……、この戦いにも慣れてきた。”梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)”ッ!!」

 

「加減の仕方ってのがわかってきたぜッ! ”黄金衝撃(ゴールデンスパーク)”ッ!!」

 

 

 と、何度も戦っているうちに、ランサーとバーサーカーは加減しながらいい塩梅の攻撃を出すことに慣れてきた。

なのである程度の威力の技で、怪物の外面だけを削り取る戦法に入ったのだ。

 

 

「羨ましいもんだなぁ。オレなんてちまちま矢を撃つだけ……」

 

「十分仕事してますよ。牽制も大切なことです」

 

「マスターのありがたいお言葉頂戴しましたよ!」

 

 

 が、ロビンはそこまで高威力の武装も宝具もない。

相手が毒にならないと効果がない宝具では、あの怪物に通じない訳で。

 

 そんなロビンへナビスは、触手などはロビンの矢でも撃ち落とせるから問題ないだろうと話す。

マスターの慰めにロビンは、いやー、そう言われると仕事した気になるなぁ、と的確に矢を撃ち放つ。

 

 

「とは言え、この再生力だ。それにどこに最後の鍵(グレートグランドマスターキー)とやらがあるかわからなければ、この戦い、終わりそうにないぞ」

 

「アスナがおらへんけど、どないしたんやろ……? 心配やわ……」

 

 

 されど、怪物の再生力は未だ健在であり、削り切るには時間がかかりすぎる。

覇王は最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の位置がわからない限りは、千日手のような状況を打破できないと言葉にしながら渋い顔を見せる。

 

 木乃香はアスナがいないことに気がつき、心配していた。

そもそもアスナがいれば一瞬で終わる訳だから、敵もそれを妨害してくるはずだと考え、アスナの無事を祈る。

 

 

「なんでみんな、本気で戦ってないんだろう……?」

 

「もしや、あの怪物の中に最後の鍵(グレートグランドマスターキー)があるのでは!?」

 

「それってつまり……」

 

「怪物の中のどこにあるかわからない最後の鍵(グレートグランドマスターキー)のために、みんな力を制限して戦っているということです」

 

 

 飛行船の上で戦いを眺めるのどかと夕映。

のどかはふと、下で戦う仲間たちが全力でないことに気が付いた。

夕映ものどかの言葉で、最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の場所を予測して見せたのだ。

 

 と言うことは、あの怪物の中の最後の鍵(グレートグランドマスターキー)が、どの位置にあるかわからなければ、うまく戦えないと言うことを二人は理解した。

 

 

「だったら、私のアーティファクトで心を読めば……!」

 

「あの怪物に意思はないはずです。それを操作してる存在を見つけなければ……」

 

 

 ならば、心を読んで場所を特定できないかとのどかは考えたが、怪物自体は魔素で編まれた傀儡であり意思はない。

ただ、それを操る人が必ずいると考えた夕映は、その人を特定できればと言葉にする。

 

 

「アレを動かしてるのって額に埋まってるあの人じゃない?」

 

「確かに、その可能性は高そうだ」

 

 

 その話を聞いた裕奈は、怪物の頭に上半身だけをはりつけにしたように出している、少年っぽい姿の人物を発見。

焔もそれを見て、それっぽいと考えて裕奈の言葉に同意する。

 

 

「それなら、せめて名前がわかれば……」

 

「名前を読むにせよ、近づかなければならないです。思考を読みに行くだけでも、かなり危険です」

 

「でも!」

 

 

 ただ、心を読むには読む相手の名前を知る必要がある。

それを可能にする魔道具をのどかは所有しているが、相手に近づく必要がある。

 

 相手も名前を知られた後、攻撃してくることを考えて、そのまま心を読むのは難しいだろう。

つまり、名前を知る時と心を読む時の二度、近寄らなければならなくなってしまう。

 

 夕映はそれを考え、名前を知りに行くと言う行為はかなりリスクが高いと言うが、のどかは諦めないと言う態度を崩さない。

 

 

「まずは、できることからやるべきです。誰かがあの敵の名前を知ってるかもしれないですし、まずはネギ先生やカギ先生に連絡をしてみましょう」

 

「うん」

 

 

 高いリスクを冒す前に、他にやれることがあると夕映は考えた。

下で戦っている人の中に、そのものの名前を知ってる人がいる可能性があると踏んだのだ。

 

 はっきり言って普通ならありえないような考えだが、接近すると言う大きなリスクを取るより、まずできることをやるのが先決だと夕映は考えた。

誰も知らなきゃその時また対策を考えればよいし、知っている人がいれば大儲けな訳だから。

 

 それに下では多くの人たちが、怪物を倒そうと戦っている。

誰か一人でも知ってくれてさえいれば、のどかは心を読むだけで済むのだから、かなりのリスクを減らすことができる。

 

 ならばネギやカギに連絡を取り、知ってる人を探してもらおうと判断し、二人は仮契約カードの念話機能を使ってメッセージを送ったのである。

 

 

「兄さん!」

 

「そっちも連絡が来たってか?」

 

「うん」

 

「とりあえず、アレを操ってるっぽい奴の名前知ってそうな奴を探すか」

 

 

 ネギはのどかから、カギは夕映から話が飛んできた。

そこでネギがカギへと声をかければ、カギはだったら早々に行動するぞと周囲を見渡す。

 

 

「お客様の中にアレを操ってる奴の名前を知る方はおりませんかぁ────!!!」

 

 

 そして、カギは風魔法で音を拡散し、夕映からの依頼を叫んだのだ。

 

 

「────なんだ?」

 

「うおっ!? アンタ一体何もんなんだっ!?」

 

 

 すると、すぐさまディオがカギの前にやってきた。

ディオはあの怪物を作り出したセプテムムから、直接自己紹介を受けた。名前ははっきり聞いている。

が、突如として、まったくもって知らない奴が目の前に現れたカギは、誰だこいつと驚く。

 

 

「私はディオ……、エヴァンジェリンの兄の転生者だ」

 

「転生者なのは見りゃわかるぜ。……えっ!? 師匠(マスター)の兄!?」

 

「お前こそ、ネギの兄弟ではないのか? ()()()()()()()

 

「んなこともあるんだなぁ」

 

 

 ディオは初めて会ったカギへと、とりあえず警戒心を解くために自己紹介をする。

 

 カギはディオのその言葉に、かなり驚いた。

何故なら、目の前の黄色い野郎がエヴァンジェリンの兄を名乗ったからだ。

 

 しかし、ディオはカギへと、お前だって似たようなもんだろと言えば、カギは納得した様子を見せた。

また、カギは修行中にエヴァンジェリンの人造霊へ、そんな特典なら兄弟になれたかもな、と言ったことを思い出し、本当にあったんだなあ、とも思ったりもした。

 

 

「話を戻すぞ。ヤツの名前なら知っている。自ら名乗っていたからな」

 

「で? 名前は?」

 

「ヤツの名はセプテムム。闇のアーウェルンクス、シリーズの7番目と言っていた」

 

「野郎も転生者ってことか……」

 

 

 そんなことよりも、あの怪物を操る敵のことだ。

ディオは奴の名前をカギへと伝える。するとカギも、名前とどういう存在かを知り、そいつもまた転生者だと理解したのである。

 

 

「転生者……?」

 

「隠語だぜ隠語!」

 

「は、はぁ……」

 

 

 ただ、ネギには転生者と言うものがわからなかったのでカギへと聞けば、慌てたようにはぐらかされた。

何かあるのかと思ったが、カギのいつもの病気かもしれんと考えたネギは、それ以上聞くことはなかった。

 

 

「これでのどかさんのいどのえにっきで相手の思考が読める!」

 

「よーし! すぐさま情報を夕映に伝えるぜ!」

 

 

 ネギは収穫があったことに喜び、カギもこれで何とかなると早速夕映へと念話を始める。

ディオはと言うと、すでにこの場に姿はなく、すでに怪物との戦闘を再開していた。

 

 

「のどか! カギ先生が名前を教えてもらってくれたです!」

 

「本当に!?」

 

「あの人はセプテムム、と言うらしいです」

 

「セプテムム……」

 

 

 夕映はカギからの情報を、ちょっとテンションが上がった様子でのどかへと伝える。

その男の名はセプテムム。のどかはそれを聞いて、その名を復唱する。

 

 

「でも、どうやって近づこう……」

 

「私たちだけでは、あの猛攻の嵐を抜けるのは難しいですね……」

 

 

 とは言え、これは第一関門にすぎない。

相手の思考を読むためには、近寄らねばならないのだ。

この状況の中で、近寄るのは非常に危険で至難の業だ。

 

 

「だったら俺を頼れよな!」

 

「カギ先生!」

 

「水臭いんじゃないですか? 僕も手伝いますよ!」

 

「ネギ先生!」

 

 

 だが、そこへ急にカギの偉そうででかい声が聞こえてきた。

夕映が見上げれば、飛行船の屋根の上で仁王立ちするカギの姿があった。

 

 さらに、気が付けばネギもやってきており、のどかの隣にいた。

のどかもネギの姿を見て、喜びの声を出したのだった。

 

 ネギとカギはのどかが敵の心を読むのを理解し、それをサポートのために、念話で情報を伝えた後にこの飛行船を探し出して来たのだ。

 

 

「頼もしいねえ!」

 

「これならいけそう!」

 

 

 ハルナはネギとカギが来たことで光明が見えたようにはしゃぎ、裕奈もなんとかなりそうだと喜ぶ。

 

 

「”最果ての光壁”! ”広域障壁”!!」

 

「槍が盾になって、盾が分離して……!」

 

 

 ネギは防御へと周り、最果ての光壁のシールドモードへと変更、四つに分離して飛行船の周囲に展開し、飛行船全体を包み込むほどの障壁を生成。

のどかはその過程を見て、ネギがいかに守護に力を入れているかを実感した。

 

 

「おっしゃぁ! 火力は任せろ!! ”王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”ッ!!」

 

 

 カギは火力担当となり、いつもの王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)ぶっぱで邪魔な触手などを抹消。

流石は宝具をぶつけるだけあって、とてつもない威力である。

 

 

「ハルナ! お願い! 怪物の頭の前を通り過ぎるだけでいいから!」

 

「オッケー! んじゃ気張って行くかぁ!」

 

 

 そして、のどかはハルナへと次に、やってもらいたいことを大声で話す。

ハルナは景気よく返事を返せば、気合を入れなおして舵を握りしめ、飛行船を操りだした。

 

 

「うわっ! 滅茶苦茶攻撃が迫ってくる!?」

 

「問題ねぇぜ! ”王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”」

 

 

 だが、敵も飛行船を無視することはしない。

巨大な腕が飛行船の目の前へと伸ばしてきたのだ。

 

 されど、そんなものなど脅威にならない。

カギの王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の前では、ただのでかい的なだけだ。

余裕の態度のカギは、自分の背後に大量の宝具を空間から覗かせれば、一斉に発射して巨大な腕を破壊しきった。

 

 

「今度は砲撃!?」

 

「大丈夫です。この障壁なら防御できます」

 

 

 腕がダメなら砲撃とばかりに、今度は竜の首が口の中で魔力を溜めて放出してきたのだ。

その攻撃はネギの最果ての光壁の障壁によってはじかれ、完全に防がれた。地味にとてつもない防御力である。

 

 

「いやぁ、本当にすごいねぇ……!」

 

 

 いやはや、ネギもカギもとてつもない存在だと、ハルナは改めて思い知らされた。

10歳の少年だと言うのに、この飛行船を二人で守り切っている。頼もしいったらありゃしない。

 

 

「私たちだって!」

 

「任せたままにはしない!」

 

「やれます!」

 

 

 また、攻撃だけならカギだけにやらせていられないと、裕奈と焔と夕映も細かな触手への攻撃を行う。

カギの王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を巨大な障害物のみに集中させるためだ。

 

 

「私もやれますよ」

 

「邪魔はさせません……!」

 

 

 同じく茶々丸も右腕をビームライフルへと変形させ、触手やらを撃ち抜き、ブリジットも木霊で木の根を操り邪魔になりそうな触手や竜の頭を押さえつけ、進路を妨げないように協力。

 

 

「もうすぐ!」

 

 

 飛行船はカギとネギの援護のおかげで、とてつもない速度で巨大な怪物へと接近していく。

その位置はもうすぐ怪物の頭部のすぐ近くであり、後は通り過ぎるだけだ。

 

 ただ、当然敵に近づくと言うことは、攻撃頻度が増す。

それをカギたちが攻撃して食い止め、ネギの防御で防ぎきりながらどんどん進んでいく。

 

 

「ここでっ!」

 

 

 そして、絶好のタイミングがやってきた。

飛行船はとうとう、怪物の頭部の真横へと差し掛かった。

 

 

「────な・に?」

 

 

 そこでのどかとセプテムムの視線が交差した。

のどかの決意溢れる視線を見たセプテムムは、何をする気なのだと警戒する。

 

 だが────。

 

 

「”セプテムムさん! 最後の鍵(グレートグランドマスターキー)はどの位置にありますか!?”」

 

「──────っ!?」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 その直後、のどかの大きな声で出された問いを、セプテムムははっきりと聞いてしまった。

この問いを聞いたセプテムムは、しまったと後悔した。だがもう遅い。

 

 のどかの読心術は、相手が声を出して返される必要がない。

相手が質問を聞いて頭に浮かべた時点で、いどのえにっきに記されてしまうからだ。

なので、思考を読み終わったのどかは、最後にセプテムムへと礼を述べれば、飛行船はそのまま通過していったのである。

 

 

最後の鍵(グレートグランドマスターキー)は……、怪物の心臓部にあるようです!」」

 

「やりましたね! のどか!」

 

「本当にすごいですよ!」

 

「でかした!」

 

 

 のどかはいどのえにっきに記された、最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の位置の詳細をネギたちへとすぐさま伝える。

夕映もネギもカギも、のどかの戦利品に感謝し、これで光明が見えてきたと喜んだ。

 

 セプテムムが触媒とした最後の鍵(グレートグランドマスターキー)がある位置とは、つまり巨大な怪物の胸部の中央だ。

それがファンシーな怪獣図鑑めいた絵となって絵日記に記され、詳しく載っていたのである。

 

 

「くっ! ふざけた真似をッ!! 逃がすものかッ!!!」

 

 

 しかし、セプテムムは心を読まれたことを理解しているので、ただで逃がす気はない。

さっきよりも激しい攻撃を飛行船へと加えるために、巨大な躯体を総動員する。

 

 

「うわっ!? 攻撃が過激になってきたー!?」

 

「このぐらいならまだ防げます!」

 

最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の場所を知られちまったから必死なんだろうぜッ!!」

 

 

 ハルナは攻撃がさらに激しくなったことに、焦った様子で飛行船を操作しながら離脱を専念。

とは言え、ネギは最果ての光壁から生み出された障壁に自信があり、この程度の攻撃は問題と豪語する。

 

 カギはと言うと、相手の巨大な物理的攻撃を王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)で蹴散らしながら、一番知られたくない致命的な弱点を知られ、もはやなりふり構ってられないんだろうと笑っていた。

 

 

「でも、どうすれば最後の鍵(グレートグランドマスターキー)をそこから盗めるかな……?」

 

「そこが問題ですね」

 

 

 されど、ここからがまた問題だった。

確かに最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の位置はわかったが、これをどうやって奪いに行くかと言う大きな課題が次に出てきた。

 

 のどかはその疑問を言葉にし、夕映も頭を悩ませ始めたのだった。

 

 

 

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