理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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百九十四話 決戦の勝敗

 

 ジェネシックガオガイガーとパルパレーパ・プラジュナーは、墓守り人の宮殿の外れで戦闘を繰り広げていた。

はっきり言うと、ジェネシックガオガイガーの方が当然強く、パルパレーパ・プラジュナーとて破壊と再生を繰り返すだけだった。

 

 

「宮殿の方に巨大な何かが!?」

 

「行かせんッ! お前はここで私に敗北するのだッ!!」

 

「クッ!?」

 

 

 ジェネシックガオガイガーを操る転生者の豪が宮殿の方をふと見れば、なんと黒い巨大な怪物がうごめいているではないか。

何本もある巨大な腕、大量の触手、数多くの竜の頭を持つ、黒い怪物。

 

 それを何とかする方が先かと豪は考え、そちらに体を向けるが、同じく完全なる世界の転生者であるパルパディーパとパルパレーパ・プラジュナーがそれを許さない。

 

 

「俺は負けないッ!」

 

「ならば、このパルパレーパ・プラジュナーを倒すのだなッ!!」

 

「言われなくとも! 倒して見せるッ!」

 

 

 ならば、まずは目の前のパルパレーパ・プラジュナーを倒すしかないと、再び攻撃を再開。

パルパレーパ・プラジュナーを駆るパルパディーパは、もう完全に覚悟ガンギマリ状態で、ジェネシックガオガイガーを抑えるのに躍起になるのだった。

 

 

……… ……… ………

 

 

 そして、巨大な怪物との戦闘場面。

心を読まれ、最後の鍵(グレートグランドマスターキー)の場所を知られてしまった転生者のセプテムムは、もはやなりふり構わない行動を起こす。

 

 

「邪魔な連中だ! ならば、全員一掃してやろうッ!」

 

 

 それは竜の頭らしきものを大量に生やし、魔力砲撃を連続するものだった。

 

 

「なっ!? 竜の頭みたいなのが大量に増殖してやがる!?」

 

「こいつぁヘヴィーな予感がしてきたぜ」

 

「ああ、これは……一斉攻撃の予兆だ」

 

 

 ロビンフッド(アーチャー)は竜の頭が増え続けているのを見て、マズいことが起こると焦り、坂田金時(バーサーカー)カルナ(ランサー)も同じ予感を感じていた。

 

 セプテムムは心を読まれてやけくそだ。

こうなったら全てを吹き飛ばしてこの戦いを終わらせるつもりで、巨大な竜の頭を新たに9つ作り出し、魔力を溜めて解き放とうとしていた。

 

 膨大な魔力が9つの竜の口の中ですでに圧縮されており、もはや発射寸前と言う状態だった。

誰もがそれを見た途端、強烈な危機感に襲われた。当然だろう、あんな膨大な魔力が解き放たれれば、ただでは済まないからだ。

 

 

 力なきものは慌てふためき、力あるものは全員を守れるかどうかわからないと悩む。

それでも防御を固めに走るものも、頭を減らそうと攻撃するものも、誰もがこの状況を何とかしようと行動する。

 

 当然防御を固めるものとして、ネギは地上へと降りて最果ての光壁の盾を広域展開し、障壁を広げる。

が、あの9つの魔力砲撃を完全に受け切れるかは、完全に賭けでしかなかった。

 

 だが、それを全部ひっくりかえせるものが、この場に存在したのを忘れてはいけない。

それこそが、かのトロイア戦争で活躍した、俊足の英雄だ。

 

 

「──────ライダーッ!!」

 

「任せろッ!!」

 

 

 ────ライダー・アキレウス。

召喚者でありマスターである転生者、ササジマの叫び声に呼応し、ライダーは巨大な竜の頭の中央へと飛び上がり、一つの盾を取り出した。

 

 

「────消え去るがいいッ!!」

 

 

 セプテムムは飛び上がった緑色の逆毛もそのまま吹き飛ばそうと、9つの竜の頭の魔力を開放、爆発的な魔力の砲撃がそこから発射されたのだ。

 

 ただ、ライダーは踵が健在であるかぎり、神性を持たぬ者の攻撃を無効化する。

つまり、仮にその砲撃が命中してライダーを吹き飛ばそうにも、吹き飛ばすことなどできるはずがない。

 

 

「────”蒼天囲みし小宇宙(アキレウス・コスモス)”ッ!!」

 

 

 そして、ライダーは銀の円形の盾を構えると、その宝具の真名を開放する。

 

 ────それこそが蒼天囲みし小宇宙(アキレウス・コスモス)

 

 鍛冶の神ヘパイトスに作られたと言う盾で、アキレウスが見てきた世界そのものを投影する、防御型の結界宝具。

発動すれば対城、対国、さらには対神宝具すらも防ぎきる、すさまじい防御力を誇る。

 

 それが今、解き放たれれば、結界としてアキレウスが見てきた”世界”が周囲に構築されていく。

外周は海神による海流が渦巻き、そこからまるで生きているかのように地形を形成し続け、その圧倒的な物量の防御結界により怪物の砲撃を完全に防ぎきった。

 

 

「なっ!? なにっ!?」

 

 

 セプテムムは今の9つの砲撃を、全て受け切られたことに衝撃を受け、驚きの叫びをあげた。

とは言え、これは相手が悪い。ギリシャNo2とも称される英霊、ライダー・アキレウスが相手なのだから、本当に運がない。

 

 

「いやー、やっぱすげぇな。この宝具」

 

 

 ササジマはこの宝具、色んな媒体で見たことがあった。

されど、こうもリアルで体験すると、あらためて強烈な印象を受けて驚くほかなかった。

 

 また、この場にいた全員が、その宝具が生み出す結界に度肝を抜かれた。

アキレウスが見てきた世界、古代ギリシャの地形や景観、建造物、そして争い。それら全てが目に焼き付けられていく。

 

 

「なんつー防御型宝具だよ……。あの砲撃全部なしにしちまいやがった」

 

「素晴らしい防御だ。素晴らしい防御だ」

 

「こいつぁすこぶるゴールデンじゃんかよ」

 

 

 同じサーヴァントとして、ロビンは馬鹿げた防御だと乾いた笑いを出していた。

ただの義賊だった自分には、とうてい真似できないものだと。

 

 太陽の神の子であり、本来は肉体に防御型宝具を保有しているランサーも、その盾の宝具には感銘を受けていた。

その防御力のおかげで誰一人欠けることなく、憂いなく戦えることに感謝の念を抱くほどだと。

 

 バーサーカーも当然、最高の盾だと賞賛する。

こりゃとんでもない宝具だ。世界そのものを作り出す盾と言うのは、本当にすさまじくゴールデンだ。

 

 

「ネギ! お前の槍で怪物の胸を貫いて、最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を奪ってこい!」

 

「兄さん!?」

 

「俺もサポートすっからよ! 貫通力はお前の方が上だろうしな! 任せるぜ!」

 

「……わかった! やるよ!」

 

「おっしゃぁ!!」

 

 

 敵の攻撃が完全に防がれたのを見たカギは、今こそがチャンスだとネギへと自分の考えを叫ぶ。

 

 ネギの最果ての光壁と言う術具融合の槍モードは、自分が雑に扱う雷神斧槍なんかよりも、ずっと精度が高い。

複合能力で突貫力は自分以上だと判断し、ならばあの怪物を貫くことができるかもしれんと判断したのだ。

 

 カギからそう言われたネギは一瞬戸惑うも、カギの言葉を聞いてやる気を見せる。

ならばと、カギも同じくやる気を出し、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から宝具を発射し、ネギの援護に回り始めた。

 

 

「俺もおるで!」

 

「僕も手伝おう!」

 

「んじゃ、俺様もな!」

 

「ラカンさん!? いつの間に!?」

 

 

 そこに駆けつける小太郎とフェイト、さらにラカン。

突如としてここへ現れたラカンに、たまらず驚くネギ。

一体いつやってきたのかと思ったのだ。

 

 その四人も各々の魔法や技でネギへと襲い掛かる竜の首は触手を破壊していく。

 

 

「なんだか知らねぇが、邪魔なもんは全部打ち砕くッ!」

 

「邪魔するものは切り裂くッ!!」

 

「一元!? それに流か!?」

 

 

 さらには、別の場所で戦っていたカズヤと法も参戦。

全身をアルター化させたカズヤと法は、巨大な怪物を見た瞬間い敵認定し、そのまま直接攻撃を叩き込む。

 

 カズヤと法の声を聞いた千雨は、そちらを向いて二人の名を叫んだ。

敵に引きはがされて孤独に戦っていた二人が、ようやく戻ってきたからだ。

 

 

「俺も忘れちゃ困るぜぇ!」

 

「この声はまさか猫山先輩っスか!?」

 

 

 だが、その二人だけではなく、直一も全身アルター化して戻ってきて、超高速で駆け抜け怪物へと飛び蹴りを放つ。

直一の声に反応した美空だったが、なんか特撮もののスーツみたいな姿になった直一を見て、声だけでしか判断が付かなかったのか疑問形であった。

 

 

「えぇい! もう一度!」

 

 

 セプテムムはこの状況がかなり不利だと判断し、再び巨大な竜の頭を増やして砲撃を行おうとする。

 

 

「させるかよ!」

 

「やらせん!」

 

「二度目はねぇぜ!!」

 

「次があると思ったのか? 甘いんだよッ!」

 

 

 が、当然邪魔が入る。

サーヴァント4騎が即座に行動し、増やし始めた竜の頭を次々と破壊していく。

 

 特にライダーは自らの神速と槍にて、瞬く間に竜の首を殲滅していく。

先ほどは守りの戦いに徹していたが故に一瞬遅れてしまったが、最初からこうすればよかったのだと攻撃を加速させる。

 

 

「馬鹿な!? ぐうっ!? だがっ!!」

 

「ッ!? マズイ!」

 

 

 9つの竜の頭を瞬時に破壊されたのを見たセプテムムは、さらに焦りに焦った顔を見せる。

しかし、それ以外にも止めなくてはならない相手を見つけ、そちらへと巨大な腕を向けて振り払う。

 

 その相手とはネギだ。

ネギは最果ての光壁を槍へと変え、怪物の胸部へ突撃している最中だ。

そこへ上から叩き落とすように巨大な腕が迫ってきており、このままでは地面へ叩き落されると考えた。

 

 

「────秘剣”燕返し”ッ!!」

 

「なっ!? きっ、貴様ッ!?」

 

 

 その直後、覇王が飛んできて、巨大な腕を燕返しで切断して吹き飛ばす。

思わぬ伏兵に驚くセプテムムは、たまらず悪態をつく。

 

 

「行けー! やれぇ! やっちまえぇ! ネギ!!」

 

「はああぁぁぁぁッ! ”最果ての光壁”ッ!!」

 

 

 そこへカギがネギを応援しながら、怪物の胸へと王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から宝具を発射し、胸部に円を描くように突き刺して目印を作り出す。

 

 カギが作り出した宝具の中心目掛けてネギは突撃。

最果ての光壁の魔力を全開にして加速し、光と風の魔力を槍の周囲へと渦巻かせて、怪物の胸部へと突入していった。

 

 

「これが……最後の鍵(グレートグランドマスターキー)…………?」

 

 

 そして、ついにその鍵をネギがつかみ、怪物の背から抜け出してきたのだ。

ネギは造物主の掟(コード・オブ・ザ・ライフメイカー)よりも一回り大きい、鍵の形をした杖をまじまじと見た。

これこそが自分たちが求めてきた最後の鍵(グレートグランドマスターキー)なのだと。

 

 

「しまった!? クッ! 返すのだッ!」

 

「もう返却は不可能でーす! 雷神斧槍────解放ッ! ”神殺轟雷”ッ!!」

 

「ぐおお!?」

 

 

 最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を奪われたセプテムムは、必死に取り返そうと別の巨大な腕や竜の頭をネギへと伸ばす。

何せ最後の鍵(グレートグランドマスターキー)は重要なアイテム。それにこの魔素の怪物の触媒にも使っていたので、このまま奪われる訳にはいかないのだ。

 

 そこへカギが煽るような言葉を言い放ち、雷の槍をぶち込んでそれらを吹き飛ばす。

 

 

「触媒を一つ失い、再生力が落ちたか! ”氷槍弾雨”ッ!!」

 

「このまま畳みかける! ”こおる大地”ッ!!」

 

「オラよおォォォッ!!! ”ラカン・インパクト”オォッ!!」

 

「ならば! 魔力限界突破! ”光嵐轟天”ッ!!!」

 

 

 カギが破壊した腕や竜の頭の再生が遅れているのを見たディオは、最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を失ったのが原因だと判断し、今が好機と見て氷の槍を連続で怪物本体へとぶち込む。

 

 エヴァンジェリンもラカンも同じ判断をし、同じく怪物へと魔法や技を叩き込んで怪物の体を吹き飛ばしていく。

 

 さらにネギも怪物の背後から戻る際に、最果ての光壁を槍から砲撃モードへと変え、すれ違い様に最大以上の魔力砲撃を叩き込んでいく。

 

 それ以外の仲間たちも、一斉に攻撃を仕掛けて細かい触手や竜の頭などを次々に殲滅していく。

 

 

「”冥府の石柱”ッ!」

 

「”縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)”」

 

「斬り裂かれて塵となれッ!!」

 

「これがッ! 俺のッ! 自慢の拳だあぁぁぁぁッ!!」

 

 

 そこへフェイトやランスロー、カズヤや法も同時に攻撃。

四人の攻撃が怪物に複数ある巨大な腕を、次々に破壊してもいでいく。

 

 

「”梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)”ッ!!」

 

「一撃必殺ッ!! ”黄金衝撃(ゴールデンスパーク)”ッ!!」

 

「”疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)”ッ!!」

 

 

 最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を失い、怪物の再生が遅れて崩れ始めたのを見たランサー、バーサーカー、ライダーも、宝具を開放して怪物を破壊し尽くす。

 

 ランサーの爆発的な炎の魔力を纏った投げ槍が、怪物の左上半身の大部分を削ぎ、バーサーカーの雷の力を宿した鉞が、右上半身から腹の部分まで掻っ捌いて吹き飛ばす。

さらにはライダーの戦車での突撃で全身くまなく削りに削られ、巨大な躯体は崩れ始めた。

 

 

「”鬼火”ッ!!」

 

 

 さらにさらに、覇王が先ほどの戦いでのうっぷんを晴らすかのように、巫力を大量に使った鬼火で怪物の体を消失させた。

もはや再生力が下がった怪物は大技の連続を受け、再生が全く追い付かずに、ほとんどの部分を滅ぼされ原形を保っていなかった。

 

 

「まだだ……! まだ終わってはいないッ!!」

 

 

 されど、セプテムムはまだ諦めていない。

最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を奪われてはならぬと、渾身の魔力で魔素の怪物の再生を試みる。

もはや意地だ。負けたくないと言う強い意地だけが、彼を突き動かしていた。

 

 

「もう終わりよ!」

 

「なにっ」

 

 

 だが、そこで聞こえてきたのは、少女の声だった。

そこを見れば赤オレンジ色のツインテールの少女が、巨大な剣を構えて立っていたのである。

 

 

「”無極而太極斬”ッ!!」

 

「それは────」

 

 

 少女こそアスナだった。

すでに構えていたハマノツルギを、怪物の頭部と残った一部へと大振りに振り払えば、魔法の全てを消失させる斬撃を解き放ったのだ。

 

 これこそが魔法無効化能力を持つアスナとハマノツルギによる魔を必滅する技、無極而太極斬(トメー・アルケース・カイ・アナルキアース)だ。

 

 この一撃はセプテムムの魔素の怪物にとって致命的だ。

一瞬にして物質化していた怪物すらも、完全に消失して存在が消されてしまったのである。

 

 

()()()()()()……! 連中め……しくじったか……!?」

 

 

 アスナがここへ現れたと言うことは、つまりあの二人が抑えていることに失敗したということに他ならない。

セプテムムはそれを考え、次の行動へと移ろうとしたその時────。

 

 

「────ガハアァァッ!?」

 

「舐めたことをしてくれたな……。礼はたっぷりしてやろう」

 

 

 再びセプテムムの胸を、一本の腕が貫いた。

気が付けばディオがセプテムムの背後へと回っており、今度は直接右腕でセプテムムへと攻撃していた。

 

 あの時のことはディオにとって失敗であり、屈辱だった。

なのでその応酬として、皮肉の言葉を投げかける。

 

 

「うおおおぉぉぉッ!? 私の核がッ!?」

 

「今度こそ、確実に砕かせてもらうぞッ!」

 

「アアアァァァァアァァァァァァ──────ッッ!!??」

 

 

 そして、セプテムムがディオの右手を見れば、そこには核が握られていた。

セプテムムは目を見開きたまらず叫ぶが、ディオは恨みが籠った言葉を放ち、三度目はもう来ないと言うように、そのままセプテムムの核をその場で握り潰して砕いたのである。

 

 

「終わったか……」

 

 

 核を砕かれたセプテムムは力なくうなだれ動かなくなり、ディオはセプテムムを投げ捨てれば、動かぬ体はそのまま地面へと叩きつけらた。

 

 

「アスナさん! ご無事で!」

 

「え、えぇ……、……そうね、無事よ…………。それより、そっちも無事でよかった」

 

「いやぁ、大変だったっスねぇ……」

 

 

 アスナが姿を現したことに、仲間たちはほっとした様子を見せた。

何せ空から落っこちてきた状助を助けに行ったまま、帰ってこなかったからだ。

また、同じく飛行船組も状助の無事な姿に、ほっと胸を撫で下ろす。

 

 ネギもアスナが戻ってきたことに安堵し、嬉しそうにアスナへと近寄る。

アスナはネギから自分のことを告げられると、少し濁した様子で問題ないと言いつつ、仲間たちの無事に喜んだ。

そのアスナの微妙な言い方に、状助は察した様子で言葉を述べる。

 

 何せアスナは、ヘンタイクソ野郎に粘着されて脱がされ続けたのだ。

肉体的には無事でも、精神的にはちょっと傷ついたりショックを受けていたりしてもおかしくない訳で。

アスナもそれ故に、素直に無事だったとまでは言えなかった。

 

 

「これが最後の鍵(グレートグランドマスターキー)です」

 

「これが…………!」

 

 

 そして、ネギはアスナへと最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を見せると、アスナも初めて見る最後の鍵(グレートグランドマスターキー)を、まじまじと眺めて感慨深い気持ちを抱いた様子だった。

 

 

「そうだ、あと助けに行かないと……!」

 

「もしかして……?」

 

「そう、()()()()()よ!」

 

 

 ただ、最後の鍵(グレートグランドマスター)だけがあればいい訳ではない。

魔法世界を消滅させる儀式において、一番必要なものは別にあるからだ。

 

 それこそが、魔法無効化能力を持ち儀式の要である、黄昏の姫御子。

その存在であるアスナはここにいて、身代わりが存在する。

 

 ネギもアスナが助けると言った人物のことを察すれば、その代わりを助けなければならないと、アスナは大祭壇の方を見た。

 

 

「これでマスターを救出しに行ける」

 

「ほんじゃま、行きますか」

 

「そうですね」

 

「早く行ってやろうぜ?」

 

 

 また、同じくしてマスターを救うべく動くランサーがいた。

あの巨大な怪物は、ランサーにとってはマスター救出の道をふさぐだけの邪魔な存在。

それが排除された今、マスターを助け出しに行くのが最優先だ。

 

 ランサーの同士となったロビンやそのマスターのナビス、そしてバーサーカーもそちらの方を向いて進みだす。

その方向は、奇しくもアスナが見た大祭壇と同じ方向だった。

 

 

…… …… ……

 

 

 墓守り人の宮殿から、離れた場所の下の大地。

そこににらみ合う少女の姿が二つ。

 

 

「巨大な影が消えはったようですな。向こうももう終局と言うことなんでしょう」

 

「そうだな」

 

 

 月詠と刹那。

何度も何度も衝突し、それでもお互い決着がつかず、戦いがもつれてここまできていた。

 

 月詠は宮殿に突如現れた巨大な黒い怪物が消滅したのを見て、向こうももうすぐ戦いが終わるのだろうと予想した。

その月詠の言葉に、塩対応な態度で応じる刹那。

 

 

「ならば、こちらも終わりにしよう」

 

「終わり? 終わりですか? この死合いを終わりにしはるなんて、もったいないことこの上ありまへんわ」

 

 

 刹那としてはさっさと目の前の月詠を倒して、湧いた怪物のところへ行って加勢したかったが、月詠に粘りに粘られていけずじまいになってしまったことを後悔した。

故に、もはやこれ以上戦いを長引かせまいと、建御雷を強く握りしめる。

 

 されど、月詠はこの戦いを終わらせる気などない。

こんなに楽しい戦いが、楽しい時間が終わってしまうのは、おしいと言う気持ちしかないのである。

 

 

「しかし、自由なればセンパイを超えれると思ったんやけども、そうでもなかったようです。多くのものを背負ってはるセンパイの剣を、どうしても抜けられへんのやから」

 

「私の剣には、数多くの様々なものが詰まっている。そう簡単に折れるようなものじゃない」

 

 

 そんな月詠だったが、楽しい時間を過ごすだけではなく、刹那を倒すためにもここにいる。

月詠は自分の持論を言葉にし、持論通りにはいかなかったことに、少し残念な気持ちを感じていた。

 

 その月詠の持論を聞いた刹那は、特に持論に対して何かを思うことはなかった。

 

 真面目に言うと、刹那としては月詠など眼中にない。

確かに強い剣士であり、妖刀ひなを支配できているところは素直に感心する。

だが、それだけだ。

 

 

 だから自分の背景を見て勝手に測って語る月詠に、その程度で抜ける剣など使っていないと豪語する。

 

 月詠の持論としては、何かを背負ってかたっ苦しくしているものよりも、自由な身で動き回るものの方が強くなれる、ということなのだろう。

背負っているものと言うのはつまり、木乃香や仲間とその絆や、数多くのもののことを言いたいのだろう。

 

 刹那としても背負っていると言われれば、そうだろうと思う。それも当然剣に乗せて振るっている。

ただ、それだけではなく、自分が築き上げてきたものや、仲間と共に研鑽してきた技術や時間も、この剣に乗せている。

 

 この剣が折れるのは、それを超越した力以外ありえない。

木乃香やバーサーカー、そして覇王や数々の友人たちとの思い出こそが、この剣の芯なのだ。

 

 

「では、いきますえ……!」

 

「…………いざ!」

 

 

 そして、両者は互いに剣を構えれば、次の瞬間にどちらも地面を蹴って斬りかかった。

 

 

「ハァッ!!」

 

 

 瞬く間の速さで月詠は刹那の懐へと入り、そのまま妖刀ひなを振り下ろす。

しかし、その瞬間に目に入った光景が、スローモーションで再生されていく。

 

 

「────ッ!? その剣は……!?」

 

 

 なんと、刹那の建御雷が光れば、姿を変えて日本刀のような姿へと変化したのだ。

その峰には白き翼のようなエフェクトがあり、まさに白き翼(アラアルバ)の剣だった。

 

 

「──────」

 

 

 ────その瞬間、気が付けば刹那はすでに月詠の背後へと立っており、妖刀ひなとともに月詠の体を斬り裂いていた。

 

 

「……私は自分が大した存在だとは思っていない。何せ上には上がいるのだからな」

 

「…………!!」

 

 

 切り裂かれた月詠自身には不思議と怪我はなかったが、強烈な斬撃の衝撃は確実に入っており、そのまま前のめりに倒れていく。

 

 倒れていく月詠へと、刹那も自分のことを静かに語りだした。

そう、自分なんてそう大そうなものではないと。天井を見上げれば、覇王やバーサーカーのようなものが、そこに立っているのだから。

 

 

「それでも、その人たちに少しでも並ぼうと……、()()()を絶対に傷つけさせはしないと、そう想いを馳せて研鑽してきた」

 

 

 だが、その背を追って必死に頑張ってきたのも事実だ。

自分も同じ場所に辿り着くために、剣を磨いてきた。彼らと並ぶその時を夢見ると、浮き立つ気持ちになる。

 

 また、その先を目指した原点は木乃香だ。

木乃香を守護したいと言う強い気持ち一心に、剣を振るってきたのだから。

 

 それに木乃香も覇王に鍛えられて強くなった。

であれば、それに見劣りしない強さを身につけるのは、当たり前のことだ。

 

 

「私は目指す場所を道しるべに歩んできた。ただ、それだけだ」

 

 

 それこそが刹那の道だ。

その道をひたすら進んでいくだけ、それが刹那の強さの持論。

自由では道など見えぬ。道があるから進むべき場所がわかるのだから。

 

 刹那がそれを語り終えた時、月詠は地面へと倒れ動かなくなっていた。

別に死んだ訳ではないだろうが、すぐには立ち上がれぬだろう。

 

 刹那は振り向くことなく白き翼を伸ばして、そのまま宮殿の方へと飛び去って行ったのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 同じく宮殿の外の下にある大地。

ザジの姉である魔族のポヨと高畑が、まだに衝突していた。

 

 

「”七条大槍無音拳”ッ!!」

 

「────ッ!!」

 

 

 ラカンインパクト並みの砲撃技であるこの技を、タカミチはポヨへと放つ。

ポヨは回避しきれないと判断したが、その攻撃は背後にある魔力で作られた悪魔型の傀儡を消し飛ばしたにとどめた。

 

 

「わざと本体であるこっちを外したポヨか……? 舐められたものポヨね」

 

「そうだね。でも、もういいんじゃないかな?」

 

「何が……、────!」

 

 

 ただ、自分狙いの技でなかったことに、不服を申し立てるポヨ。

この魔族としての矜持を踏みにじられたと感じ、怒りを覚えたのである。

 

 が、高畑は宮殿の方を見た後にポヨの方へと視線を移すと、この戦いは終わりと言う様子を見せたではないか。

その高畑の態度に妙な疑問を感じたその瞬間、何かを察してポヨは動きを止める。

 

 

「────ふぅ……。そうみたいポヨね」

 

 

 何故なら、ポヨの首筋には一振りの剣が添えられていたからだ。

少しでも動けば、たちまち首を両断できるように。

 

 故に、ポヨはゆっくりと両手を上げ、降参のポーズを取った。

それに宮殿の戦いも終わった様子であり、これ以上戦うのは得策ではないと思ったからでもあった。

 

 

「悪いな、タカミチ」

 

「問題ありませんよ。来史渡さん……。いえ、()()()()()()()()

 

 

 そして、その剣の主こそ、銀河来史渡。本名、メトゥーナト・ギャラクティカ。

高畑はそれに気が付いて戦いをやめたのだ。

 

 メトゥーナトはここまでの戦いのことに対して詫びの言葉を述べれば、高畑は気にしないと言い、その名を呼ぶのだった。 

 

 

…… …… ……

 

 

 そして、同じように宮殿外の下の大地では、すでに一つの戦いが終結していた。

真名とビリーの戦いだ。勝敗を制したのは真名で、真名は魔族化をすでに解いており、ビリーは岩場に背を預けて倒れていた。

 

 二丁拳銃での接近戦に持ち込んだ真名は、銃弾をあえて撃たずにグリップ部分を使ってビリーを殴りに殴った。

ただぶん殴ると言う訳ではなく、計算された緻密な行動によって隙のない回避不可能に近い打撃を与え、ビリーの身動きを止めたのである。

 

 

 ビリーは全身を殴打されたことで、体が動かなくなっていた。

半魔族の魔族化からの打撃だ。たとえ気を操って防御で軽減できたとしても、強烈な衝撃だけは完全に消すことはできない。

それによって肉体的ダメージが蓄積され、この結果になったと言う訳だ。

 

 

「どうやら、でかいことは終わったらしい」

 

「そのようだな」

 

 

 ビリーは敗北したと言うのに清々しい表情を見せながら、宮殿の方を見上げて笑っていた。

先ほど発生した巨大な影が消えていることに気が付き、そのことを真名へと語り掛けたのだ。

真名もそれには気が付いており、向こうも戦いが終わったと察したのである。

 

 

「相棒。本当に強くなったな」

 

「そうかな?」

 

「ああ、昔よりも、俺が思っているよりも、ずっとな」

 

 

 そこでビリーは、真名が昔よりも実力をつけていたことを話し出した。

真名としてはあまり気にしたことがない様子だったが、ビリーは昔の真名と比べてそれを語る。

 

 

「…………あの人は、どうしている?」

 

「神社の跡取りとして働いているさ。それに今も昔のようにとはいかないが、小さくではあるが活動している」

 

「そうか…………」

 

 

 そして、次にビリーは自分の従者の主である、立派な魔法使いの男のことを真名へと聞いた。

龍宮コウキなる人物のことだ。数年前に死にかけた主を、何気に気にかけているのがビリーだった。

 

 真名は自分を神社に招き入れ、龍宮の姓を与えてくれた魔法使いの主が、その神社で昔よりは大人しくしていると、小さく笑ってビリーへ教えた。

ビリーもそれを聞いて、少し安心したかのように、フッと微笑む。

 

 

 実は、この二人には暗黙のルールがある。

それは従者同士での戦闘においては、仮契約カードでのアーティファクトを用いらないことだ。

 

 ビリーも従者なので当然仮契約カードを持ち、アーティファクトも使える。

それでも両者ともにアーティファクトを使わないのは、主である彼を尊重しているからこそだ。

 

 

「世界から、争いを無くすことはできなかったが……。まあ、助けたかった人は助けられた、という訳か」

 

「そうだ。お前のおかげで、あの人は生きている。感謝しているよ」

 

「相棒、お前もいたからだ。俺だけでは足りなかった」

 

 

 この戦いに負けたビリーは、少し悔しそうにしながらも、一番守りたかったものが守れたことを思い出した。

心優しき魔法使い。子供たちの幸せを願って活動していたあの男。自分もその男に救われた一人だ。

 

 そのビリーの言葉に、真名も微笑みを見せながら、あの時のことに改めて礼を述べた。

お前のおかげで彼は死なずに済んだ。今を生きてくれている。これほどうれしいことはないのだと。

 

 だが、ビリーは自分だけでは彼の命をつなぎ留められなかったと、真名へと語る。

お前なしでは不可能だったと。お前と一緒だったからできたことだと。

 

 

「謙遜するな」

 

「お互いにな」

 

 

 真名はそんなビリーへとそう自分を卑下にするなと言葉すれば、それはそっちもだと返すビリー。

互いを尊重し合い、笑い合える相棒同士。それが本来の二人の関係であり、それだけは崩れていなかった。

 

 

「…………これから、どうするつもりだ?」

 

「さぁな。また、気ままに紛争地帯を練り歩くだけだろう」

 

「お前も昔から変わらないな」

 

「性分だからな。こればかりは今更変えようがない」

 

 

 そして、真名はビリーへとこれからのことを聞いた。

この戦い、どうなるかはまだわからないが、この先があるならば知りたかった。

 

 ビリーはその問いに、明確な答えは返せなかった。

されど、やりたいことを上げるとすれば、と言う感じでその答えを語りだした。

 

 真名もビリーのその答えに、いつも通りだと苦笑する。

まるで自分たちの魔法使いの主のようだと。

 

 そんなことはビリーも理解しており、自分で言った言葉に肩をすくめて諦めろと言うだけだ。

それに、それはお前も似たようなもんだ、と内心思っていたりもするのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 そして、冒頭のジェネシックガオガイガーとパルパレーパ・プラジュナーとの戦闘へと戻れば、何度も再生を繰り返すパルパレーパ・プラジュナーの姿があった。

 

 両腕をメス状に変形させたり細い医療用ドリルへと変形させて戦っても、ジェネシックガオガイガーのパワーには及ばない。

再生を無限に繰り返せるが、相手の豪もそれを理解しているのか隙を見せることがない。

よって、パルパディーパに不利な状況が続く。

 

 

「もはや、もはやこれしかない!」

 

 

 パルパレーパ・プラジュナーを操るパルパディーパは、逆転の一手を切ることを選ぶ。

すると背中の六つのモジュールが三つずつ両手に繋がれば、巨大な鉗子型の巨大モジュールへと変化。

 

 

「”ゴッドアンドデビル”ッ!!」

 

 

 それを突き出したまま、勢いよくジェネシックガオガイガーへと突撃していく。

これぞガオガイガーの必殺技、ヘルアンドヘブンに似たパルパレーパ・プラスおよびパルパレーパ・プラジュナーの必殺武器だ。

 

 

「受けて立つッ! ”ヘルアンドヘブン”ッ!!」

 

 

 ならばと豪もジェネシックガオガイガーの尻尾を三つ分離させ、両手に黒い装甲として纏わせると、両腕を広げて最強技の構えを取る。

右腕に破壊のエネルギー、左手に防御のエネルギーを蓄積していく。

 

 

「ゲル・ギム・ガン・ゴー・グフォー……」

 

 

 次にその呪文と共に、ゆっくりとそのまま両手を合われば、その直後、爆発的なエネルギーを生み出す。

 

 

「ウィータッ!!」

 

 

 そして、最後の呪文の一言を言い終え、ジェネシックガオガイガーもパルパレーパ・プラジュナーへと突撃していった。

 

 

「ウオオオォォォォォッッ!!」

 

「オオオオオオォォォッッ!!」

 

 

 両者の最強技がぶつかり合い、強烈な光と衝撃を周囲にまき散らす。

ほぼどちらも拮抗しているかに見えたが、徐々にパルパレーパ・プラジュナーが押され始めていく。

 

 

「グウオオオォッ!?」

 

 

 次の瞬間、モジュールを砕かれてパルパレーパ・プラジュナーの胸へと、ジェネシックガオガイガーの両腕が突き刺さった。

強烈な破壊と衝撃はパルパディーパへと伝わり、そのまま羽虫のように吹き飛ばされてしまう。

 

 

「……やはり、予想外だ……。このような結末は…………」

 

 

 パルパディーパはジェネシックガオガイガーが出てくるなんて、露にも思っていなかった。

完全に計算外の出来事であり、ジェネシックガオガイガー相手は厳しいと思っていたが、それが現実のものとなっただけだった。

 

 ジェネシックガオガイガー、そしてそれを操る転生者の男は、明らかにエヴォリュダーだ。

超進化動力体であるエヴォリュダーに勇気が満ち溢れている限り、無限を超えた絶対勝利の力を生み出す。

それは完全再生で不意打ちしても、最後には敗北する程の相手だ。

 

 もはやパルパディーパに戦う気力は残っていない。

特典として得た再生能力を停止して、潔く負けを認めることにしたのだった。

 

 

「潔く消えた……。勝った、と言うことでいいんだよな……?」

 

 

 ただ、パルパディーパのその行動は、豪にとっても予想外だった。

再生能力があるのならば、再び再生して襲ってくるかと思ったのだが、それがなかったことを逆に不審に思うのだった。

 

 

 

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