墓守り人の宮殿、その外れにて、パルパディーパが駆るパルパレーパ・プラジュナーを撃破した、ジェネシックガオガイガーを操る転生者の豪がいた。
「宮殿の方が騒がしい……、何かあったのか!?」
豪は宮殿の方を見ると、何やら光っている部分があるではないか。
それを見た豪は仲間の危機だと考え、宮殿の方へとジェネシックガオガイガーを飛ばす。
「なっ!? この魔法陣は!?」
だが、宮殿付近まで来たその時、急にジェネシックガオガイガーの周囲に魔法陣が展開されたではないか。
それは強力な強制転移の魔法陣であり、瞬間的にジェネシックガオガイガーは他の場所へと飛ばされてしまったのだ。
「しまったッ!? 麻帆良に転移させられたのか!?」
転移先は宮殿上空に見えていた麻帆良学園の上空だった。
豪はそれに気が付き、してやられたと思いながらも、再び宮殿へ向かうために行動する。
「だが! ガジェットツール! ”ボルティングドライバー”ッ!! ”ジェネシックボルト”ッ!!」
最初に宮殿上空へと抜けた方法を、もう一度取る豪。
ボルティングドライバーをジェネシックガオガイガーの左腕に装備し、再度宮殿上空への突入を図る。
「なっ!? なにっ!? また戻された!?」
しかし、またしても再び麻帆良学園の上空へと戻され、宮殿へ行くことができなかった。
何故なら、パルパディーパが最後の最後に、仲間へと妨害を頼んだからだ。
ジェネシックガオガイガーとの戦いには素直に敗北を認めたが、宮殿の近くに存在させることだけは絶対に認めない。
なので魔法が得意な、特に転移系が得意な完全なる世界の転生者の仲間に、ジェネシックガオガイガーを追い出すように頼んだ。
とは言え、この転移系が得意な転生者とて、宮殿内で戦う連中を転移させられるような繊細な魔法は使えない。
ジェネシックガオガイガーのような巨大な物体に対して行うのがやっとなのである。
「クソ! 完全に蚊帳の外に追い出されたというのか!?」
何度やっても麻帆良へと戻される豪は、もはや上空に映る宮殿を眺めることしかできない。
「みんな、無事でいてくれ!」
悔しく感じながらも、麻帆良でうごめく召喚魔を手加減しながら倒しつつ、宮殿内の仲間の無事を祈ることしかできなかった。
…… …… ……
そして、ここは墓守り人の宮殿内部、魔法世界消滅の儀式が行われている大祭壇。
アスナの身代わりとして、魔法世界消滅の鍵となった完全魔法無効化能力の少女が眠る、多重リングの形をした祭壇の前。
「クッ!」
「アスナ!?」
アーウェルンクスシリーズの一番目、初代フェイトのことプリームムと、炎のアートゥルの二番目、弐。
両者が少女が眠る輪の前へと現れ、アスナたちを襲ったのである。
アスナは魔法無効化とハマノツルギで、造物主の使徒の魔法を消滅させ難を逃れるが、アスナが狙われたのを見て状助はその名を叫ぶ。
「早くあの子の目を覚まさせないと!」
「そうはさせないよ」
「チクショー! なんでいい所で敵が現れやがるんだ!?」
「そんなことだろうと思っていたさ」
また、この状況を打破する方法は、儀式の鍵である少女の意識を取り戻すことだ。
それを何とかしなければとアスナはハマノツルギを握りなおすが、プリームムはそれを許さず進路をふさぐ。
この急な戦闘に、状助は焦りで声を荒げる。
何せさっきまでは何もなかったのに、突如として敵が出現して戦闘になったからだ。
ただ、エヴァンジェリンはこうなると予想していたようで、静かに、冷静に状況を見極めていた。
「邪魔をするのならば、容赦はしない」
「ガキを利用する連中になんざぁ、情けをかける必要はねぇ……」
「まっ、そりゃそうだ」
それにこっちには三騎のサーヴァントが存在する。
ランサーは戦わないなら見逃すと言うようなことをはっきりと告げ、逆にバーサーカーとロビンは最初から許す気がないと言う態度を取る。
「ランサーは彼女の方へ! あなたが一番彼女の目を覚まさせられるはずです!」
「……承知した」
そこへ現在のロビンのマスターである転生者のナビスは、ランサーに少女の近くへと行くように指示。
何せ少女はランサーのマスター。接点もランサーぐらいしかないので、呼び覚ますのに適しているのがランサーぐらいしかいないのだ。
ランサーもその指示に素直に従い、祭壇の中央に浮かぶ少女の方へと飛翔していく。
「行かせない!」
「炎か……」
「なっ!?」
そこへアートゥルの弐がランサーの邪魔をしに飛び出し、爆発的な炎の魔法を放つ。
が、ランサーもまた、炎の属性を有するサーヴァント。しかも太陽神の力を持つ。
その程度の炎じゃびくともしない。
ランサーは槍を振り切れば、炎が切り裂かれて消滅。
まさか槍を振っただけで、上級炎魔法が消滅するなど思ってもみなかった弐は、目を見開き戦慄する。
「言ったはずだ。邪魔をするのなら容赦はしないと……。警告はした。”
「────ッ!? ぐううあぁぁっ!?」
そして、ランサーは最初に言った言葉通り、情け容赦など一切ない攻撃を解き放つ。
核兵器に例えられるほどの破壊力を持つ宝具、
灼熱の炎を纏った槍が、瞬間的にアートゥルの弐へと着弾。
造物主の使徒特有の多重障壁などなかったかのように貫通し、弐の体のほとんどを吹き飛ばし、破壊してしまったのだ。あっ、一発で砕けた。
ランサーはそのあと右手を掲げれば、投げた槍は高速で戻ってきて、その手の中に納まった。
また、ランサーは怒ってなどいない。慈悲として邪魔さえしなければ見逃したのに、襲い掛かってきたので撃墜しただけだ。
「まったく恐ろしいね、
「ビビってんならさっさと尻尾を巻いて逃げな!」
「そうもいかないのが、造物主の使徒たるものだよ」
「チィッ! 大量の杭か! ”
プリームムは目の前のサーヴァントを恐ろしいと言う。
それに、今その場で弐が破壊されたのを見て、改めて恐ろしいと感じたのだ。
だったら逃げてもいいぞと笑うのは、バーサーカーだ。
まあ、逃げたからって逃がす訳がないとも思っているが。
されど、プリームムも造物主の使徒としての使命と責任、そしてプライドがある。
ここでおめおめと逃げるなど、選択に存在しないのだ。
そこでプリームムは石の杭を大量に作り出す魔法を放つ。
バーサーカーはそれを見て、咄嗟に範囲攻撃用の
「状助! 私の後ろに!」
「す、すまねぇ!」
「私も何かやれそうだと思ったけど、これじゃあ動けそうにないわね……!」
また、アスナは状助が危ないと考え、自分の背へと誘導すれば、状助も事態を理解しており、素直に従い
とは言え、バカスカ魔法が飛んでくる状況では状助が何もできないのはわかっていることだ。
アスナとて魔法をハマノツルギを高速で振るって消しながら、身動きが取れない状況に、ランサーが少女の目を覚ましてくれるのを、信じて待つことしかできなかった。
「敵はそいつらだけじゃねーんだよ!」
「新手!?」
「次から次へと……!」
「この時を待ってたんだぜ!」
「マジかよグレート……」
されど、弐が減った分プリームム一人だけが頑張っている状況に、増援が登場。
こっちの方にも完全なる世界の転生者が現れ、攻撃を仕掛けてきた。
どんどん敵が増えていく状況に、アスナは焦燥を感じて頬に汗を伝わせ、エヴァンジェリンも雑魚が増えることに対してイラついた様子を見せた。
当然完全なる世界の転生者どもも、別の場所に現れた連中と同様に、このタイミングを狙っていた。
それを聞いた状助は、洒落にならねぇと言う様子で青ざめる。
「アスナを抑えろよ! 野朗ども!」
「指図すんじゃねぇよ! わかってんだよ!」
「魔法連打で動きを止めろ! 無効化を使い続けさせて身動きを封じるんだ!」
さらに転生者どもは、アスナを重点的に狙うことにした。
何故ならアスナの魔法無効化が強すぎるからだ。それにこの儀式を支配して、魔法世界の状態を元に戻せるのもアスナだからだ。
故に、魔法を連続でぶつけ続けて、魔法無効化させ続けにして金縛りにする戦法を取ることにしたのである。
脱がしてこないと言うだけで、かなり良心的に見えてくる。
「やはりアスナを狙ってきたか……!」
「おめぇよぉ、狙われすぎじゃあねぇかぁ!?」
「しょうがないでしょ、魔法無効化があるんだから! あっちもそれだけ必死なのよ!」
「いやまあ、確かにそうだけどよぉ……」
エヴァンジェリンも敵の対応すら予測していたので、やはりと言う感想しか出てこなかった。
むしろ、増えた敵を相手にするために、冷静に観察していたにすぎない。
そんな最中、状助はアスナの狙われっぷりにちょっと引いており、アスナも自分が狙われることを知っているので、自分だって文句があると少し怒って叫んでいた。
「なら、この私が相手をしてやろうじゃないか!」
「げっ!? エヴァンジェリン!? なぜここにッ!?」
なので、エヴァンジェリンは邪魔してくる新手をぶっ飛ばしに動き出す。
竜の騎士や魔素の怪物との戦闘後だと言うのに、思ったより元気だ。
エヴァンジェリンを見た転生者連中は、大いに焦った。
何せ本当ならエヴァンジェリンは、
それがフライングでここにいることに、驚き戸惑ったのである。
「やるぞー! 最後の鍵を取り返すぜー!」
「ひゃっはー! 盗みはよくねぇよなぁ!」
そうこうしているうちに、さらに転生者登場。
大祭壇の最奥部は守護対象として、一番重要なのだからしょうがない。
それに
こんな頭空っぽみたいにテンション高い馬鹿っぽい転生者だが、特典だけを見ればどいつもこいつも強力だと思われる。
「まだ敵が隠れていたとは……」
「まったく、やってられませんわ!」
「だけど、やるしかありません。ランサーには近づけさせないように」
「言われなくともッ!」
ナビスも魔法を使い攻撃しながらも、敵がどんどん増えていることに、焦りと呆れを感じていた。
思いのほか数さえそろえばいいと言う感じなので、なんというか疲れるだけなのだ。
当然ロビンもわんさか増える敵を見て、気持ちはゲンナリするばかり。
されど、少女を呼び覚ます役目のランサーの邪魔だけはさせてはならない。
それは絶対条件で死守すべきことだ。
ロビンもナビスにそう言われれば、当たり前だと増えた敵へと矢を放ちまくる。
…… …… ……
ランサーは祭壇の傍まで来て、周囲に張られている結界の表層へと手を当て、静かにマスターへと念話を送る。
『マスター……、我がマスターよ。目覚めてくれ』
何度も念話を送っているが、マスターからの返事は皆無。
何せ精神部分が儀式と埋没同調してしまっており、完全に意識がないからだ。
『お前が目を覚まさなければ、この世界が崩壊すると言う』
それでもランサーは念話をマスターに送り続ける。それしか方法がないからだ。
むしろ、ランサーもこれしかできないことに、強い歯がゆさを感じていた。
武の英雄として、戦闘においては誰にも負けない自信がある。
槍でも素手でも、相手を倒せば終わりなら、どれだけ楽なことかと。
さらに、このような状況はランサーにとっては、逆に苦手な分類だった。
何せコミュ力と言う言葉が苦手な男だ。
あまり話すのが得意ではなく、むしろ逆に相手を逆なでしてしまうことすらある。
そんな口下手なランサーが、マスターへと呼びかけ続けるのだから無理もない。
起きてくれないとヤバイことになる。
世界が滅びる。滅びたらおしまいだ。最初はそう語り掛けていた。
『……いや、違うな』
だが、ランサーが本当に言いたいことは、そんなことじゃない。
そこで、いつかのマスターに言われたことを、ふと思い出した。
自分は一言足りないのだと。思ったことを最後まで口に出すべきだと。
だからランサーは、自分が思ったことを全て、今のマスターに伝えることにした。
本来ならば、言葉にする必要すらないことを。
『お前が目覚めてくれなければ、オレがここへ来た甲斐がない』
ランサーは今世において、マスターのことを第一に考えてきた。
いや、マスターのことを第一に考えるのは、サーヴァントととして当然だとランサーは思っている。
それでも特に強く思ったのは、幼いマスターが天涯孤独だったからだ。
触れれば崩れてしまうぐらい、儚い存在だったからだ。
ランサーがここに来たのも、マスターを助けるためだ。
マスターがここで助からなければ、起きてくれなければ、マスターを守ると言う約束を果たせない。
それでは、ここへ来た意味がなくなってしまう。
『それに……、マスターはまだ、
幼きマスターは、まだ何も得ていない。
ようやく、そう────、ようやく人並みの幸せを得たばかりだ。
自分で選んで何かをしなかったのではなく、まだ何もできていない。それを選んですらいない。
なのに、ここで全ての幕を閉じてしまうには、いささか早すぎる。
それでは無念と言う言葉でしかない。
『これからマスターが、何かを得られるのか、何も得られないのか、それはオレにもわからない』
これから、そうこれからがマスターの人生の始まりなのだ。
この先の人生を歩み、何かをなし得るのか否か、今はまだ、それがわかる前の状態でしかない。
何かをすると言う自由すらも、今は残されていないのだから。
『だが────。どのような道を歩もうとも、オレはお前のサーヴァントであり続ける』
何も見えぬ闇夜を歩んでいくのでもなく、光輝く先を歩んでいくのでもなく。
幼きマスターは、今はまだ、ようやく立ち上がったところだ。
それに、どんな道を歩くかはわからないが、ランサーは絶対にマスターを見捨てることはない。
何せ、自分はマスターに召喚されたサーヴァントなのだから。
理由はそれだけで十分だ。
『誰かの特別でなくとも、何かの特別があろうとも、オレは君を庇護し続けよう』
また、何よりもマスターの無事を祈っているのは、ランサー自身。
平穏を謳歌するただの少女であろうとも、組織に利用される特殊な力を持つ者だろうと、関係なく彼女の平穏を望んでいる。
『故に、信じている。マスターが目を覚ますことを……、だから────』
そして、今のマスターをただひたすらに信じている。
成功だとか人生だとか、そういうものではなく、まずはここからの一歩を踏み出してくれることを。
『起きてくれ、
────それは誰のものでもなく、ランサー自身の願いだ。
目を覚まして、こんなことになる前の平穏な暮らしに戻ろう。
マスターが望むのであれば、その全てを手に入れて見せよう。
こんなところで終わってほしくなどない。
幼いマスターには、まだ先があるのだから。多くの未来が待っているはずなのだから。
それこそランサー自身が、このマスターの未来を見守っていきたいのだから────。
・
そこは闇と無音が支配する世界。
何もない、あるのは鎖でがんじがらめに縛り付けられた、眠れる少女の凍った意識だけ。
この少女の名前はアマネ。
姓はない、ただのアマネ。
”………………呼んでる……。…………誰?”
だが、そこへ小さな光が差し込んできた。
本当に、本当に極わずかな光だったが、アマネにはその光が少し暖かく感じた。
そのわずかな光と温かさが、アマネの意識を少しだけ呼び覚ます。
”カルナ……?”
その小さな日差しのような暖かさは、アマネの記憶にあった。カルナのやさしさだ。
言葉足らずで話すことは不器用で、それでも行動は常に自分のことを優先してくれて。
いつも自分が困っていないか、寂しくないかを聞いてきてくれた、一番身近になった人。
”助けに来てくれたの? 約束を守りに来てくれたの?”
ここに来る前に、何があっても守ってくれるって言っていたのを、安心してくれって言ってくれたことを、アマネは思い出した。
その約束を果たすために、ここに来てくれたことを喜んだ。
”ありがとう……、カルナ。だから、そんな顔しないで”
来てくれた、約束を忘れずにいてくれた。それだけでアマネは十分だった。
なのに、アマネには、カルナが普段見せないような、眉を下げた表情が何故か思い浮かぶ。
────アマネは前世から、すでに孤独だった。
前世の名前も覚えていない。何故なら、名前で呼ばれたことがほとんどなかったから。
そして、恨む気持ちすらも覚える前に、死んでしまった。
だからアマネは、心の中で思う。
そんな表情をする必要はないよ、だってもう、十分救われたのだから、と。
だって、カルナが来てから、毎日が楽しかったから。
いつも気にかけてくれて、本当に嬉しかったから。もう寂しくなかったから、と。
”…………ほんとは私も……、ここから出たい。カルナに会いたいよ……”
ただ、アマネはそれでも、カルナが約束を守るために来てくれたんだから、もう一度カルナの顔を直接見たかった。
真っ暗で何も見えなくて、何もなくてよくわからない場所になんて、いたくなかった。
”でも……、何かがからまってて、動けないの……”
なのに、アマネは自分が何もできない。体が全く動かせない。
何かわからない、鎖のような何かが全身を締め付け、身動きが取れないからだ。
”私一人じゃ、どうすることもできないの……、ごめんね……”
動けない、一人では動けない。
カルナが呼びかけてくれているのが、なんとなくわかったのに、手を伸ばすことすらできない。
何もできない自分が悲しくて、カルナを悲しませているのが悲しくて。
でも、謝ることしかできなくて。辛い思いをさせて、ごめんね、と。
”……あれ? なんだろう…………。体があたたかくて、まるでお日様の光みたいな…………”
だが、そこでアマネは、ふと何かに気が付いた。
動かない体の真ん中に、ぽかぽかと気持ちのいい暖かさを感じたのだ。
その温かさも覚えている。
空に輝いて照らしてくれている、おてんとう様だ。
いつも自分や他の人を、あたたかく見守ってくれている、天の光だ。
”これ……、たしかカルナの…………”
そして、それが何なのかを、アマネは思い出した。
この太陽のような光は、カルナが自分に渡してくれたもの。
自分に何かあった時に無事でいられるようにと、おまじないのように施してくれたもの。
そう、それは──────。
…… …… ……
すると、突如としてアマネが眠る祭壇の輪から、強烈な光が発生した。
「なっ!? 何っ!? 何の光!?」
「すげぇまぶしいぜ!?」
まさに極光とも呼べる輝きは、墓守り人の宮殿を明るく照らす。
アスナも状助も突然の光に驚き、そのあまりのまぶしさに目を腕で覆って、輝きの方へと目を向ける。
「何が起こっている!? あれには概念結界を重ね掛けしておいたはず!? それに儀式と同調しているのだから、意識は蘇らないはずだ!?」
プリームムもまた、目を腕で隠しながら、光の方向を見ながら考える。
こんなことが起こるはずがない。あの場所には概念結界を何重にも張っておいたはずだ。破壊されることなどほぼありえない。
それに、意識と儀式が同調している”代わり”が、目を覚ますことなど、それ以上にありえない。
また、転生者の連中も、まぶしさに当てられて戦闘を一時中断。
一体何がどうなってんだと言う顔で、光の先を見つめていた。
「この光、この魔力……、まさか!」
「何が起こってるってんだ!? こいつは!?」
同じくその輝きを見て、ふと気が付いたのがナビスだ。
強い光と魔力の性質、これはどこかで感じたものだったからだ。
ただ、ロビンにはそれはわからないので、困惑しながらフードをかぶってまぶしさを必死で回避していた。
「へっ、ゴールデンじゃねぇか。そう思うだろアンタもよぉッ!!」
「グッ!? 出鱈目な使い魔め……!!」
ただ、バーサーカーはグラサンをしているので、別にまぶしくない。
むしろ、あの輝きの正体こそがランサーとマスターとの絆の証だと理解し、最高にゴールデンだとニヤリと笑う。
なお、このグラサンは二つ目であり、一つ目はランサーとの勝負の際に壊れてしまっている。
また、まぶしくないのでそのまま戦える訳で。
バーサーカーは叫びながら、目の前のプリームムへと鉞を振り下ろす。
プリームムはまぶしさの中でそれを何とか回避しながら、本当に厄介な存在だと悪態をつくしかなかった。
────数秒間だろうか、その輝きが放たれていたのは。
そのまばゆい光が落ち着くと、祭壇の輪の周囲に張り巡らされていた、概念結界にヒビが入った。
そのヒビはどんどん広がっていき、最後には結界が崩壊し、ガラスが割れたように砕け散ったのだ。
「カルナ──────!」
「マスター!」
そして、目を覚ましたアマネは、目の前にいたランサーの胸元へと飛び込んだ。
ランサーも小さなマスターを優しく抱き留め、マスターの帰還を喜び微笑んでいた。
「会いたかったよ! カルナ!」
「あぁ、オレもだ」
アマネは小さく涙を見せながら、カルナにしがみついて喜び笑う。
そんなアマネを見て、ランサーも自分の気持ちを語り、もう二度とこの小さなマスターを離さないと決意する。
「馬鹿な……!? 姫御子の代わりとは言え、ほぼ同じ能力で完全同調していたはずだと言うのに、何故意識を取り戻した!?」
喜び合う二人を見たプリームムは、大きく目を見開いて頭がおかしくなりそうなほどに混乱した。
何故なら、全てがありえないからだ。儀式と同調した意識が戻るはずもないし、概念結界が壊れるはずもない。
全部、全部が不可能な要素しかなかったのに、何もかもが覆されてしまったからだ。
「ありがとう、カルナ。カルナがくれた
「そうか……、そうか……、役に立ったか……」
そこでアマネは自分の体の中にあった、あの光が助けてくれたとカルナへ話した。
この場所へ来る前に、ひっそりと自分の体へと流し込んでくれた、黄金の輝き。それが鎖を断ち切り、呼び覚ましてくれたのだと。
ランサーも流石にこうなることは予想していなかったが、自分の身を切ってでも、その力をマスターに与えておいてよかったと、心の底から思ったのだ。
「
「なるほどねえ。礼装として宝具をマスターに埋め込んで、守護させてたって訳ですか」
「ランサーの鎧は太陽神からの施し。たとえ
そこで全てを理解したナビスが、ぽつりと何が起こったのかを語り始め、ロビンがその聞き手となる。
ナビスは最初にランサーの姿を確認した時から、妙な違和感を感じていた。
本来あるはずのものが、そこにない、そんな違和感。
それは本来、ランサーの肉体と同化しているはずの黄金の鎧の宝具、
消失する要素は存在する。
それは黄金の鎧と引き換えに使用する宝具、
しかし、それを使用する前から、黄金の鎧がなくなっていた。
そこにあるはずの宝具の代わりに、ハリボテのようなくすんだ黄金の鎧があっただけ。
何故なかったのかと言う疑問が、ここでようやく解消されたと言う訳だ。
つまり、ランサーはマスターの身を案じ、何かあった時のために、黄金の鎧をマスターへと移植しておいたのだ。
それによってランサーが念話で語りかけたことで、黄金の鎧が呼応し、マスターを呼び覚ますことに成功したのである。
そして、その黄金の鎧である
神々すらも破壊は困難とされ、ムーンセルすら破壊不可能な太陽の光そのものの宝具と、
「我が父よ。我がマスターを救ってくれたことに感謝する」
アマネからの説明を受けたランサーは、ここからは見えない太陽の方へと視線を移し、目を瞑ってまずは自分の父へ感謝した。
生まれる前から与えられたこの黄金の鎧が、マスターの助けになったからだ。
その後、マスターを助けるために協力してくれた仲間たちにも、礼を言おうと心に誓う。
「本当によかったわね……!」
「いやまったくだぜ!」
「いつ見ても、こう言うゴールデンな光景には感激しちまう」
アスナも状助も、バーサーカーさえも、ランサーとマスターの少女の再会には、涙なしでは見られなかった。
「これで憂いなく貴様らを殲滅できるな!」
「やべーぞ!」
「マジかよ嘘だろ!?」
それで無事問題が解決したのを見たエヴァンジェリンは、悠々と転生者どもをぶちのめし始める。
転生者は儀式に必要だったアスナの身代わりが解放されたことで、大きく動揺して絶望を叫ぶ。
何せこれじゃ儀式が完成しない上に、エヴァンジェリンがガチでボコしに来てるからだ。
「くっ!? このままでは!」
当然、造物主の使徒であるプリームムは、大きく焦り戸惑う。
「
「なっ!? ガアッ!?」
だが、そこへ第三者の声が聞こえてくれば、プリームムは6等分に切り刻まれて、床に転げ落ちて動けなくなった。
「ギャッ!?」
「ゲゲッ!?」
「グギャーッ!!」
「ギャースッ!?」
「ドギャスッ!!?」
さらにそこいらで慌てふためいていた情けない転生者連中も、突如として衝撃を受けて吹き飛ばされ、気を失って倒れ伏せたのである。
それを見ていたナビスもロビンも、バーサーカーも驚いた。
とは言え、敵がなんか倒されたんだから、まあいいか、とも思い肩をなでおろす。
「あっ、あなたは!」
「よっ! 元気してたか?」
「あっ! 貴様っ!!!」
また、その姿を見たアスナは覚えのある顔だと思って驚けば、まるで旧知の仲みたいな挨拶が飛んできたではないか。
オールバックにした橙色の髪、赤茶のコート、怖い顔の男。
エヴァンジェリンもその姿を見て、大きく叫んで驚いた。
何故なら一番会いたかった人物だからだ。会ってぶん殴りたかった人物だったからだ。
そんでもって「と言うか本当に遅いんだよ、何やってたんだ今まで、ぶん殴るぞ! ぶん殴るのは確定だった」と文句が出そうになっていた。
「だっ、誰だぁ? ってあの時映像に出てた……!」
「うん。あの人こそ、アルカディア帝国の皇帝……」
ただ、状助はまったく知らない人物だったので、何かどこかで見た顔だったはず、と深く考えれば、ラカンの映画に出てきた人物なのを思い出した。
そこでアスナは状助の言葉に、その人物のことを語りだす。
「そうよ、俺がライトニング・サンダリアス・アルカドゥスってやつよ」
そして、本人からその名が発せられた。
それこそアルカディア帝国の皇帝。ライトニングだったのだ。
「まぁ、こっちは分身だがな」
「ぶん殴ってやろうと思ったが、本人でないなら後でにしてやろう」
「おーこわ」
されど、こっちは本人ではなかったので、それを皇帝がこっそり言えば、エヴァンジェリンは持ち上げていたグーを下げて、殴るなら本人に、と今は我慢すると言い出した。
えっ、本人殴られるの? と思った皇帝だったが、別に本人じゃないからいいか、と放置することにしたのだった。
…… …… ……
転生者名:カルナのマスターの少女、アマネ
種族:人間
性別:女性
原作知識:なし
前世:5歳
備考:物心ついた時にはすでに一人だった。特典はくじで選んだ
能力:完全魔法無効化
特典:完全魔法無効化能力
Fateのサーヴァントをランダムで呼べる呼符
真名 カルナ
出典 マハーバーラタ
マスター アマネ、神からの特典の呼符でカルナを引き当てた。
身長/体重 178cm・65kg
属性 秩序・善
クラス ランサー
ステータス
筋力 B 耐久 C 敏捷 A 魔力 B 幸運 D 宝具 EX
クラススキル 対魔力 C
保有スキル 貧者の見識 A 騎乗 A 無冠の武芸 - 魔力放出(炎) A 神性 A
宝具
ランク A 種別 対人(自身)宝具 レンジ 0 最大補足 1人
彼の母クンティーが未婚の母となることに恐怖を感じ、息子を守るために太陽神スーリヤに願って与えられた黄金の鎧と耳輪。
太陽の輝きを放つ、強力な防御型宝具。光そのものが形となった存在であるため、神々でさえ破壊は困難。
本来ならばカルナの肉体と一体化している。
アーチャーならば弓などの攻撃となるらしいのだが、ランサーだと目からすごいビームらしき形で発生する。
ランク A+ 種別 対国宝具 レンジ 2~90 最大補足 600人
バラモンのパラシュラーマから授けられた対国宝具。
クラスがアーチャーなら弓、他なら飛び道具として顕現する。
カルナの属性である炎熱の効果が付与され、その一撃は核兵器に例えられるほどだと言う。
ランク EX 種別 対神宝具 レンジ 2~5 最大補足 1人
一撃のみの光槍。雷光でできた必滅の槍。
敵陣である神々の王・インドラから与えられたもの。
神々をも打ち倒す力を持つというが、神話においてカルナがこれを使用した記録はない。