フェイトと栞の姉へと降り注いだ三つの千の雷は、突如として砕かれた。
「アルカディアの皇帝!?」
「皇帝陛下!?」
「おうよ」
そして、未だに体を密着させたまま、声の方を向くフェイトと栞の姉の横へ現れた男こそ、アルカディア帝国の皇帝、ライトニングご本人だった。
当然、三つ分の千の雷を四散分散して消し去ったのも、皇帝の仕業だ。
ちょっとした魔法と魔力の研究結果の応用だ。消したのではなく、解体しただけだ。
いきなり現れた皇帝の姿に、フェイトと栞の姉はたまらず驚いた。
が、皇帝は体をくっつけたままの二人を見て、この局面でよくやるわ、とニヤニヤ眺めつつ、雑に返事するだけだ。
「おめぇら、いつまでイチャついてんだ?」
「え? あっ…………、すみません……」
「いや……」
されど、周囲には造物主の使徒と言う再生怪人が勢ぞろい。
流石にその状況で抱き合ってんのはなぁ、と思った皇帝がそれを指摘すると、栞の姉は顔を真っ赤にして戸惑いながら、誰へ向けたのかわからない謝罪をしだす。
フェイトはそれを聞いて、気にしていないと言う態度を表向きには見せていた。
実際はもう少しそうしていたかった、とちょっと思ってたりするが、今はその場面ではないと気を取り直す。
「奴がアルカディアの皇帝!?」
「や……奴は……!?」
で、ようやく造物主の使徒たちは、皇帝が現れたことに驚き、戦闘態勢に入る。
12年前雑にバラバラにされたセクンドゥムは、その時のことを思い出し、かなり苦い表情をして怒りに燃えていた。
「おやおやぁ?
そして、皇帝はぽつりと言葉をこぼすと、ゆっくりと、静かに前へと歩き出す。
されど、本当に靴の音を立てて歩くだけ。強烈な威圧や重圧などもなく、ただ、ゆったりとしたリズムで歩みを進める。
「なっ、なんだこれは……? 一体どうなってると言うのだ……?」
造物主の使徒たちはそれを見て、何か変だと気が付き、大幹部デュナミスが代表としてのように言葉にした。
そう、皇帝の体には、本来起こっているはずの気や魔力の流動が、まったくと言っていいほど見られなかったのだ。
そこにあったのはただの『無』。
まるで、その場所に溶け込んでいるかのように存在感がない、そんな『無』。
本当にそこに存在しているかさえわからない程に、何も感じられなかったことに狼狽したのである。
「ほほおぉ、面白いことになってんなぁ」
「なんだ!? この光は……!?」
そこで大祭壇の最奥部が、突如としてまばゆい光に包まれた。
あっちにも分身を飛ばしている皇帝は、ただただ興味ありげな様子でそこを眺めているだけだ。
誰もが、敵も味方もそちらを向いた。
それほどの強い輝きが、祭壇の方から発せられていたのだ。
「うおっとっと!」
が、光がやむ前に、皇帝へと大魔法を連発してくる造物主の使徒たち。
ここで皇帝を倒しておかないと、何やら嫌な予感がしたようだ。
それに皇帝が無であれば、障壁も張ってないと言うことだ。
大魔法で力押しすれば、倒せると判断したと言う訳だ。
されど、皇帝はおどけた声を出しながら、しれっと全部かわして見せた。
広範囲かつ高威力の魔法だが、魔力の流れを読んで穴にさえ入ってしまえば、ノーダメージで回避できる、と言うことを平然とやってのけたのだ。
ただ、その大魔法の爆発によって、大祭壇で何が起こったのか、誰も見ることができなかった。
分身を送り付けている皇帝を除いて。
「い、今更その皇帝が出てきたとて、たった一人で何ができるというのだッ!」
「クックックッ…………」
「なっ! 何を笑っているっ!?」
複数の大魔法を全部スレスレでかわされたことに驚きつつも、未だに威勢が良いセクンドゥム。
皇帝一人出てきたところでと言うと、皇帝は急にくつくつと不気味に笑い出す。
セクンドゥムは薄気味悪さを感じながら、笑う理由を叫んで問う。
「いやいや……、テメェらは運がいい。今日は特別な日だ、もう数人来ているぜ」
「なにっ!?」
確かに俺は一人でここまで来たが、別にここに来たのは一人ではない、と話し出す。
その答えにセクンドゥムが驚いた瞬間────。
「ほぉ、かの皇帝がお出ましとは……。それと、このような大事に巻き込まれて大変じゃったな。よく頑張った」
「このかの友人たち……、遅れてすまない……。それとこのかは…………? えっ?」
戦えない子たちの前へと現れたのは木乃香の父である近衛詠春と、木乃香の祖父で麻帆良の学園長でもある、近衛近右衛門だ。
デュナミスが麻帆良とこの宮殿を繋げたために、彼らが麻帆良からやってこれたと言う訳だ。
学園長はアルカディアの皇帝の姿を見て少し驚いたあと、自分の生徒らをにこやかに労った。
詠春は自分の娘の姿が近くにないのを見て、周囲を見れば、覇王と共に敵と戦う木乃香の姿を目撃。
一瞬目を疑うが、もう一度見ても同じ光景が映り、それが現実だと言うことを思いっきり突き付けられていた。
詠瞬はここまで来て、また娘が遠い場所へ行ってしまったと思い、ショックを受けた。
だが、ショックを受けている場合ではないので頭を切り替え、造物主の使徒らへと視線を向けて剣を握る。
「”小さく重く黒い洞”」
「ぐおっ!?」
「アルビレオ・イマ!?」
さらに、突如としてデュナミスの背後に現れた男は、その肩に手を添えると、超小型の
それこそ今まさにクウネル・サンダースと言う名前を気に入っているアルビレオだ。
デュナミスはそれを食らい、右腕を飲み込まれ消失。
他の造物主の使徒も、アルビレオを警戒。
また、アルビレオはさらなる味方をここへ召喚、三つの魔法陣が周囲に出現。
「タカミチさん! クルトさん!」
「うおお! ガトウのおっさんまで!!」
そこへ現れたのは高畑とクルト、そしてガトウの師弟チームだ。
ネギとカギはそれを見てテンションが上がっていく。なんか昔のチームが勢ぞろいしてきたぞと。
「おーおー! 懐かしのメンツが勢ぞろいしてんなぁ!」
「お前、連戦続きなはずなのに、なんでそんな元気なんだ……?」
「いやー、こう見てもちょいっとばかし疲れてきてるんだぜ?」
「ちょっとで済むのか……」
当然そこへラカンが現れ、紅き翼がほぼそろった。ドリームチームの完成だ。
まさか墓守り人の宮殿で紅き翼が揃いに揃うなど、よくやってくれたとしか思えない。
ガトウはラカンが総督府からずっと戦っているのを思い出して聞けば、ラカンはまだ全然余裕らしい。
流石にラカンの馬鹿げたタフさには、ガトウも引き気味だ。
タフと言う言葉はラカンと言う男のためにある。
こうして揃った紅き翼の面子と学園長は、造物主の使徒や完全なる世界の転生者と戦いを繰り広げ始めた。
「紅き翼の連中が今更増えたところでッ!」
だが、それでもセクンドゥムは自分たちの優位性を信じて疑わない。
造物主の使徒として最高の力を得た自分たちが、寄せ集めの人間どもに負けるはずがないと思っているからだ。
「残念だったな、それだけじゃねぇ……。”召喚、ライトニングの従者”」
されど、皇帝が言ったのはそれだけではない。
何故なら、まだここには呼んでいなかったからだ。
故に、仮契約カードを三枚取り出し、彼らを召喚する。
すると、皇帝の左右と前の地面に魔法陣が展開し、呼応したものたちがその場に現れた。
────そう、それは皇帝が誇る三人の部下だ。
「────我が剣は皇帝陛下のために」
「────我が拳は皇帝陛下のために」
「────我が知識は皇帝陛下のために」
三人は召喚と同時に跪いて、最敬礼の態勢を取る。
皇帝の剣、メトゥーナト。
皇帝の拳、龍一郎。
皇帝の頭脳、ギガント。
皇帝の直近の部下であり、彼が誇る最高の戦力。それがここにて集結。
「さあて、待ちに待った最終決戦だ野郎ども、存分に暴れて見せろ。俺は最後の仕上げにかかる、任せたぜ」
「「「ハッ!」」」
皇帝は三人の部下へと、適当な指示を出す。
もはや、やることは皇帝が全部やるだけだからだ。
邪魔にならないように、邪魔をする奴らを蹴散らせ、ただそれだけの指示だ。
三人は指示を聞いて頭を深々と下げて一斉に返事をすれば、即座に行動へと移った。
「皇帝が率いる三人の部下…………!?」
皇帝の部下が全員そろって登場することなど、誰の記憶にも存在しない。
20年の間もあったはずだが、三人の部下はみな別々の任務で動くことが多かった。
そして、三人が戦場に投入されたと言うことは、皇帝がこの場で決着をつけると言うことだと、デュナミスは直感で理解できた。
魔法世界消失の儀式、魔法世界消失の危機、その全て終わらせるつもりだと。
「皇帝陛下よ、我に力を…………。
仮面の騎士メトゥーナトは仮契約カードを取り出し、皇帝から賜れた宝剣を呼び出して手に取る。
全ての理を斬り裂く黄金の剣、宇宙割つ刃。
「では、いざ、参ろうか」
その剣の力にて、完全なる世界の転生者を斬り裂き、”
転生神が与えた特典は、魂に結び付く付属品。それを断ち切ることも可能なのだ。
特典を失った転生者どもは、慌てふためき狼狽えるだけで、もう何もできない。
哀れだが、しかたないことである。
「アイツらはっと……、あーいたいた。あっちかぁ」
「親父!」
「父さん!」
龍一郎はここにいるだろう息子の数多と義娘の焔を探し、飛行船の上でその姿を見つければ、二人も龍一郎へと自分たちが無事だと言うことを伝えるように呼ぶ。
「向こうは無事みてえだな。んじゃ、いっちょやってみっか!
二人の元気な姿を見た龍一郎は、憂いが晴れた様子で一枚のカードを取り出し、アーティファクトを起動。
────その名は”天昇りし暁の平線”。
東から昇り、西へ落ちるまでの間は、肉体的・精神的疲労を消失させ、常にパーフェクトコンディションを持続させ続ける効果を持つ、擬似太陽を生み出すアーティファクト。
一度使うと12時間は起動できなくなるデメリットがある上に、使用者本人が強くなければならない、かなり扱いづらいアーティファクトである。
故に、普段使うことはないが、使うなら今しかないと言うほどのタイミングだ。
さらに拳を握りしめれば、周囲を飲み込むほどの爆発的な炎が発生。
瞬時にメトゥーナトとは逆の方向にいる転生者どもへと肉薄し、肉弾戦を行うのだった。
「ギガント様……!」
「師匠さん!」
「あの姿が……師匠の本来の……?」
また、飛行船の上の数多と焔の横で、同じように下の状況を見ていた者たちがいた。
ブリジットは恩師の名を、のどかはいつもの呼び方で声を出せば、夕映だけギガントの本来の姿を知らなかったので、ちょっと驚いた様子を見せていた。
「お師匠さま!」
「えっ!? あの方がお師様の本当の姿!?」
同じくネギもギガントのことを呼ぶと、待機組のところでそれを見ていたアーニャも、ギガントの真の姿にびっくりした様子だった。
と言うか、一応総督府でちらりと見たことがある亜人が、まさか自分の師匠と同一人物だったとは、思ってもみなかったのである。
「よく耐えたな、自慢の弟子たちよ。あとは我々に任せなさい」
そして、そんな弟子たちをあたたかな声で称賛し、自分たちの出番だと語るギガント。
弟子たちが無事でよかったと言う気持ちと、随分とたくましくなったと言う嬉しい気持ちを味わいつつ、目の前の敵へと戦意を見せて魔法を使いだした。
「馬鹿な!? ありえん!? ありえんぞ!? 我々は造物主の使徒!
紅き翼と皇帝の部下にて造物主の使徒が押されているのを見て、セクンドゥムはたまらず叫ぶ。
そんな馬鹿なことがあるか。
もはや言っていることはほぼ現実逃避だ。悲しいかな、これが現実。
「なんか雲行き怪しくないか?」
「ああ、”原作”とも全然違うし……」
「旗色悪すぎるだろ」
「いやもうだめそう……」
完全なる世界の転生者たちの中にも、もはや敗戦ムードが漂ってきていた。
なんかもうこれ無理くない? 無理でしょ。諦めるしかなくない? もう終わりでしょ。
そんな意見が次々と出てきて、もはや戦意を失い戦闘を放棄するものまで現れ始めた。
また、宮殿から逃げ出す連中まで現れる始末だったが、外にはポケモンの里の人々や艦隊が待っており、逃げることはできず、やられて捕まるだけであった。
「ぬう!
されど、造物主の使徒は諦めなど存在しない。
いや、諦めることを許されない。
大幹部デュナミスは背に巨大な魔法陣を出現させ、
完全なる世界に記録された存在を、ここに召喚する。
「再現! ”戦の影法師”ッ!」
「漆黒に染まったサーヴァントと言う存在……!?」
それは全身が黒一色のサーヴァント。
魔法世界で記録されたサーヴァントの模写。多くの英霊たちの影法師の欠片。
外見的特徴を再現しただけの、影の戦士。
騎士風の影、槍を握る影、筋肉質で巨体な影、弓を持つ影、王の影、様々な影の姿がそこに出現。
その大多数の影のサーヴァントを召喚し、デュナミスは支配して使役する。
それを見たガトウは、サーヴァントのことを思い出して、厄介なものが出てきたと渋い顔を見せる。
とは言え、あれはただの偽物であり、能力だけは本物とは程遠い存在だ。
「蹴散らせぃッ!!」
デュナミスが左手を突き出して指示を出せば、影のサーヴァントが一斉に襲い掛かる。
それはまさに古の戦争。まさに神話の光景。
「英霊の残り香を記録から取り出したって訳か!」
「こいつは面白い! だったら本気の速度だ! 受けてみろッ!」
ササジマはシャドウサーヴァントを見て、ある程度の中身を察して、感心を寄せる。
この魔法世界で召喚されたサーヴァント、そのデータを元にして作り出されたのだろうと。
また、その横に戻ってきていた
「いやぁ、真っ黒だけど形だけはより取り見取りってか!」
「流石に全ての能力を再現している訳ではないようですね」
「そりゃ全部再現されてたら地獄絵図ですわ」
今さっきここへ来た
なんとまあ、大それたことをしてくれたもんだ。よく見ると有名どころのシルエットがいるじゃないの。
その現在のマスターであるナビスも、影のサーヴァントと対峙してその能力を分析。
確かに全身真っ黒でシルエットだけ似せたこの影のサーヴァントは、動きだけを見るとサーヴァントに近い。
ただ、スキルやステータスが大幅に下がっていたり、一部のスキルや宝具が使用できていないのを見ると、かなり劣化した存在だと言葉にする。
その説明にロビンは、全部が全部そのままだったら、俺たちじゃちょっと荷が重くなるとさらに苦笑い。
「しっかしまあ、なんかどっかで見たことあるのも、うようよしていて気持ちが悪いっつーか……」
また、実は、実はでもないが、このロビンは今いるサーヴァントの中でも、かなりの古株である。
何せ前マスターは、髭の爺さんになるぐらいの年齢の人物だった。それから今のマスターになって20年も過ごしてきている。
なので、目の前の影のサーヴァントの一部の姿を、見たことがあったりするのである。
「んでもって、奴は20年前にいた因縁の相手ってこった!」
「………そうですね」
「まっ、本人じゃないにせよ、20年前の借りを返してもらうって言うか……、八つ当たりをさせてもらうぜ!」
そして、一番見覚えのある形をした影のサーヴァントが、ロビンとナビスの前に姿を現す。
巨大な二つの触覚、大きな肉体、巨大な槍。まさしく20年前に、ナビスが使役していたサーヴァント、呂布の姿だった。
ナビスにとっては悲しい記憶のサーヴァントであり、ロビンにとっては悔しい記憶のサーヴァント。
ナビスもロビンも20年前の残痕を、払拭するためにここにいる。
これ程乗り越えるのにうってつけの相手はいないと、二人はそう思って、目の前の影のサーヴァントを見る。
「
「
ナビスが昔、20年前のロビンのマスターと同じような言葉を放てば、ロビンは20年前と同じ言葉を一字一句間違いなく言い放つ。
その直後、ロビンは瞬時に影の呂布へと矢を放ち、ナビスも魔法を行使するのであった。
「これで……、兄さん!」
「うおっ、まだ魔力残ってたのかよ。ありがてぇ! ありがてぇ!」
「そ、そこまで感謝しなくていいんだけど……」
造物主の使徒に集団リンチされていたネギは、この隙に残り少ない魔力で自身とカギを治癒。
カギもネギの治癒魔法のうまさと魔力の量に驚きつつ、治癒してくれたことを平伏して感謝した。
治癒しただけで土下座する兄に、ネギはめちゃくちゃドン引きだ。
「それに、流石に僕ももう魔力はほとんど残ってないよ」
「マジ? 俺はまだもうちょい頑張れそうだぜ」
「昔っから兄さんって、呆れ返るほどタフだよね……」
「そりゃ俺ってめっちゃタフだし」
とは言え、今の治癒でネギの魔力はほぼ空っぽだ。
怪物レイドバトルで、かなり消耗してしまっていたのだ。
なのにカギは未だにまだ元気がある様子で、ムッキムッキとポーズをとれば、カギのタフさにネギは呆れる。
そんなネギに対してカギは、自慢げに笑っていた。
「っておい! 影サバに囲まれてんぞ!!?」
んな話をしていたら、いつの間にやら影のサーヴァントに囲まれているネギとカギ。
カギはやべぇ! と叫んで
「────”
「ギャヒーッ!?」
上から筋肉モリモリマッチョマンの
その衝撃に驚いたカギは、たまらず変な声を出して叫んだ。
「いきなりマッチョが落ちてきたらビビるだろ!?」
「そいつはすまねぇ」
んでもって助けてもらった癖に文句を飛ばすカギ。なんという奴だ。
そんなカギに対しても謝罪をするバーサーカー。
まあいきなり落下してきて、宝具を間近でぶっぱしたからしょうがないと思ったのだ。
「ネギ! あとカギ! 大丈夫!?」
「アスナさん!」
「大丈夫かと言われりゃ微妙だぜぇ」
そこへアスナと状助も現れ、アスナはネギとカギの無事を確認する。
ネギはアスナが再び無事に姿を現したことに安堵し、カギは今の状態がそこまで無事でないことを小さくこぼした。
「まあ怪我ぐらいならなおすからよぉ」
「そのスタンドめたくそ便利だなぁ……」
状助は怪我ならなおすと話すと、カギはクレイジー・ダイヤモンドの便利さをちょっとうらやましく思った。
スタンドパワーは使うが魔力は使わないで、きれいさっぱり怪我すらなおせるんだから、本当にすげぇな、と。
「おん? なぁ、その子なんだ?」
「私の身代わりだった子よ」
と、ふとカギは状助の肩の上にいる少女を見て、誰だこいつ? と思った。
それこそ先ほど
ナビスやロビンは戦場に出たので、状助がとりあえず面倒を見ることになった。
護衛としてバーサーカーが近くにおり、ランサーもよく見ると近くでこちらに意識を向けながら戦ってくれている。
何せランサーの攻撃は派手派手の派手なので、あんまりマスターの近くで戦うとマスターに被害が出かねないからだ。
また、アマネはナビスのフードを着せられ、アスナが持っていた認識阻害の指輪をつけさせてある。
まあ、カギは初対面なので正体なんてわからないので、急に湧いた小さい女の子に疑問を感じただけだ。
「は? えっ? じゃあ、つまり…………、お前の隠し子か?」
「んなことある訳ないでしょ! このおバカ!」
「いてっ!? 冗談だぜぇ……」
身代わりってことは、つまり完全魔法無効化能力を持ってるってコト!?
ってことは、その小さな子も転生者ってコト!? とカギは考え、さらにとんでもないことが頭に過った。
なんとカギは、アマネをアスナの隠し子だとか言い出したのだ。
と言うか、この話題は宮殿に来る前からしてたし、なんなら儀式が発動してるのを見ればわかることなのだが、今更それに気がついたのが、このカギだ。
流石にアスナもそんなこと言われたら、当然怒る。
純潔だし未だ清らかで貞淑な乙女相手に、何言ってくれてんのと。
その怒りに任せて軽くカギの頭をこついて、はっきりと全否定した。
そりゃ転生者は基本的に5歳で特典が発生する訳で。
アマネはそこから数年過ごしているから、もうちょっと上な訳で。
それを考えたら、いつ産んだ隠し子になるんだよ、と言うことになる訳で。
軽く殴られたカギは、流石にギャグ、ギャグだよー、と弁解。
とは言え、アマネをツインテールにしたら結構雰囲気そっくりになるので、それでほんの少し脳裏に浮かんだのも事実。こいつ最低なんだ!
「そんなに怒っちゃダメだよ! 怖い顔になっちゃうから!」
「うぅ……、そうよね……」
「やーい! 幼女に叱られてやんの!」
そこでカギの心ない冗談にプリプリ怒るアスナへと、アマネが注意した。
怒りすぎると眉間にしわが寄って、治らなくなっちゃうぞと。
ただ、怖い顔になっちゃったらよくないと思って、言っただけだったりする。
流石に幼子にそう言われちゃ、黙るしかないアスナ。
むしろアスナは、自分は普段からクールな淑女だと思っているので、熱くなりすぎたと反省。
まあ、そんなことあやかが聞いたら、大爆笑しながらいじること間違いなしだが。
カギはと言えば、今のアスナのことを見て大笑いしながら、いじくりまわし始めたのだ。
本当のこの少年、中身おっさんなのかってぐらい、バカみたいなクソガキムーブだ。
「そっちもそういうこと言っちゃダメ!」
「グエーッ!!」
「に……兄さん……」
だが、そんなカギにもアマネは注意する。
相手がちゃんと反省したんだから、言い過ぎちゃダメだと。
カギも幼女に叱られてブーメランが頭にぶっ刺さったダメージで、後ろへとビターンとぶっ倒れた。
幼女に叱られてショックで倒れる兄を見たネギは、その情けなさに、うわ……、と言う顔で滅茶苦茶ドン引きしていた。
「お前ら呑気しすぎだってんだ! まだここは戦場だぜ!?」
「ご、ごめんなさい!」
「すみません!!」
「いやー、少しぐらい気ー抜かせてくれよん!」
「おめぇらよぉ……。もうちょっと緊張感もってほしいぜぇ……」
されど、ここは未だに戦闘中だ。
何でこいつらこんなにリラックスしてんの!? と思ったバーサーカーは、たまらず叱咤する。
アスナもネギもバーサーカーのお叱りを受け、すぐさま謝って戦闘態勢へと移る。
まあ、ネギはもう魔力なんかほとんど残ってないので、とりあえずポーズだけしとくみたいな状態なのだが。
が、叱られてもへこたれずに気を抜き続けるカギとか言う奴。
ただのアホじゃねぇ、ド級のアホ、ドアホだ。まあ、連戦続きで緊張しっぱなしだったからしょうがない……、本当に緊張してた?
その姿に状助も、いやもうちょっとこう……さあ……、ここマジでクライマックスの場面なんだけど……、と愚痴るのだった。
そんなゆるい連中とは別で、当然真面目に戦っているランサー。
ランサーは影のサーヴァントを操る男、デュナミスを発見してそちらを攻撃目標に定めた。
「所詮は影でしかないか。本物を抑えるには足りないと言わざるを得ない……」
「当然だ。我々には英雄としての矜持がある。ただの操り人形に負ける気はない」
「グッ!? やってくれるッ!!」
記録から作り出した影のサーヴァントは確かに便利ではあるが、真のサーヴァントの前では流石に塵芥も同然だ。
それを言葉にしている時、ランサーが出現して槍を振るってきたのだ。
ランサーの槍を受けてデュナミスは吹き飛ばされるも、数多くの影のサーヴァントをランサーへと仕向ける。
いやはや、総督府では救世主のように助けに来たランサーが、今はもう敵になってるんだから悲しいことだ。
「これはマスターからの礼だ、遠慮なく受け取れ。”
「うおおおおぉぉぉッ!?」
だが、ランサーの右目が光ったかと思えば、そこからビームのような攻撃が発射されたのだ。
それを薙ぎ払う形で使用すると、周囲の物質を溶かしながら、多くの影のサーヴァントもろとも吹き飛ばして焼き尽くす。
同時にデュナミスも吹き飛ばされ、改めてサーヴァントと言う存在の恐ろしさを実感するのだった。
しかも、かなり皮肉めいた言葉を発しながら、それをやっているランサー。
が、ランサーは怒ってなどいない。そっちの事情は概ね理解しているので、マスターを利用するのは致し方なし、と思っている。
とは言え、利用したのだから報復される覚悟があるのだろうと、応酬しているだけだ。
「フェイト殿! 不肖、剣が助太刀に参りました!」
「すまない、助かる」
「もったいなきお言葉」
また、フェイトのところへとランスローが到着。
自らフェイトが名付けた剣と名乗り、跪く。
フェイトは栞の姉から軽い治癒を受けて、ある程度動けるようになったので、立ち上がって礼を言うと、礼を受けたランスローはたまらず頭を下げたあと、再び立ち上がり通常の剣を握り
ランスローは魔力をだいぶ使ってしまったため、
「出遅れたか! だが、存分に取り戻して見せよう!」
さらにそこへ自称アーチャーが登場。
なんかもう最終決戦が始まってることに焦り、せっせと降り立って影のサーヴァントやら転生者やらを攻撃し始める。
アーチャーが何故帰ってこなかと言えば、理由は簡単。
と言うのも、アーチャーはすでに裏切者、さらに言動がもう煽ることばかりだったのもあり、恨まれまくっていた訳で。
恨みを持った連中から袋叩きに遭い、何とか返り討ちにして戻ってきた経緯があった。
「神鳴流決戦奥義! ”真・雷光剣”ッ!!
「せっちゃん!」
それ以外にも味方が参戦。
白い翼を生やした刹那が、まさに舞い降りる剣の如く急降下からの奥義ぶっぱ。
周囲にいた影のサーヴァントを一掃して見せた。
近くで戦いを繰り広げていた木乃香も、笑顔になってたまらずその名を叫んだ。
「なんかすごいことになってるな」
「真名! 無事だったアルか!」
古菲が同じような中国拳法使いの
その声の方を見れば、真名のアサルトライフルを構えた姿があった。
元気そうに戻ってきた真名に、古菲も表情を緩ませて喜んだ。
されど、周りにはまだチラホラと敵がおり、真名は古菲へ背を預け、その敵たちを共に殲滅していった。
「”鬼火”」
「うおっ!? すげー炎! 前も見たがマジでスゲェな"星を総べる者”の最強技!」
さらには影のサーヴァントが集まったところへ、爆発的な炎が投下された。
それこそ覇王の鬼火だ。覇王は敵の数が多いことに業を煮やし、大技ぶっぱの殲滅作戦に移ったのだ。
ラカンも闘技場で見たことを思い出しながら、改めてこの鬼火とか言う炎の技は桁違いだと称賛する。
「”
「ザ・ワールドッ!!」
また、セプテムムとディオは未だに拮抗した戦いをしており、セプテムムがメドローアを撃ち、ディオがそれを回避すると言う動作がずっと続いていた。
「しぶとい奴だ。さっさと消え去ればいいものを……!」
「ふん。この私には果たさねばならぬことがある。それが成就されるまでは、消えるなどありえん」
反射さえされなきゃ撃ち放題のメドローアで攻めまくるセプテムムだが、それでもディオは倒せない。
面倒だと思い始めているセプテムムへと、そんな程度では自分の意志と未来は砕けぬとディオは煽る。
その後またしても両者の魔法合戦が続き、終わりが見えぬ戦いを続けていく。
「さて……、随分と貴様たちに見せ場をやったんだから、そろそろ私が一撃で終わらせてやろうッ!」
そのディオの妹たるエヴァンジェリンもこちらにやってきて、随分と転生者と影のサーヴァントが減ったのを見て、造物主の使徒どもを潰すことにした。
すごく偉そうな台詞を吐いているエヴァンジェリンだが、実際は竜の騎士や祭壇での戦闘で結構魔力が減っていたので、少し回復を待ってたりしていた。
とは言え、タイミング的には今が最適なのも事実であり、そこでニヤリと笑いながら詠唱を始める。
「分身の方も、準備は終わったみてぇだな」
この戦いをじっくりと眺めていた皇帝は、分身の方の準備を待っていた。
それが完了したのを確認すると、ゆっくりと大祭壇の中央にある大魔法陣へと足を延ばしだす。
「んじゃ、こっちの方もやりますか。最後の仕上げをよ」
そして、皇帝の手には新たな黄金の杖が握られており、飛び交う魔法をステップで回避しながら、最後の仕上げに取り掛かるのであった。