百九十九話 2600年前から
墓守り人の宮殿での決戦から二日後。
新オスティアにて、先の戦いでの功労者を労い、称える式典が執り行われていた。
当然アルカディア帝国のものも出席するため、そこへ集まっていたが、肝心な人物が姿を見せていなかった。
「もうすぐ式典の時間なんだが……、陛下はまだ来られてねぇのか?」
「うむむ……」
それはアルカディアの皇帝、ライトニングだ。
こんな大事で重要な場面に、トップ不在。これまずくね? と直属の部下龍一郎が少し焦りの表情で言えば、同じく直属の部下であるギガントも腕を組んで悩み唸っていた。
「どこ行っちまったんだ? 我らが皇帝陛下様はよ?」
「ワシにもわからぬ」
マジで何やってんだうちのトップ? どうすんだよこの状況。
龍一郎は頭を抱えて悩みだし、ギガントも特に何も聞いてないので、何が何だかわからんと言う様子だった。
と言うか、この式典は功労者のためだけではなく、アリカ女王復権の式典でもある。
それなのにアルカディア帝国のトップ不在は流石にマズイと二人は頭を抱えているのだ。
「おい、ナト。なんか知ってっか?」
「さてな、わたしにもわからん」
「まぁ、そりゃそうか」
そこで近くで静かにしている同じ直属の部下であるメトゥーナトへと、知らね? と聞く龍一郎。
が、メトゥーナトも特に知っている様子を見せず、知らんとそっけない態度で答えが返ってくる。
龍一郎もギガントが知らないんだから知る訳ないか、とその言葉を信じ、はぁ……とため息をつく。
「どうすっかねぇ……、こんな大事な式典ドタキャン陛下とかよぉ……」
「うーむ……、帳尻合わせするしかあるまいて……」
もう式典始まりそうなんだけど、どうすんだこれ? 龍一郎の頭の中はもうどうにかなれー! 状態だった。
ダチの約束じゃないんだからさぁ、ドタキャンはねぇだろ。
ギガントもトップ不在の時の代表代理で、皇帝欠席の言い訳やらなにやらを頭の中で考えながら、腕を組んで悩みに悩む。
マジ困った。政治的にもちょっとこう……。ここで皇帝が顔見せないとかマズくね? と。
「…………」
しかし、そんな二人を横目に、メトゥーナトは晴れ渡った青空を、ただ眺めていた。
その瞳は何かを信じ、何かの無事を祈っている、そんな目だった。
…… …… ……
火星に築かれた幻想の世界、魔法世界。
その二つの月の一つの衛星。
高速で公転する衛星からは、魔法世界の壮大な地形がすぐ真下に広がっており、そこから見れば平和そのものだった。
そこに一つの人影が、静かにたたずんでいた。
黒衣を渦を巻くように身にまとい、ローブで顔を隠した者。
「どこに行くんだ?」
「…………」
「逃がしゃしないぜ?」
その少し離れた背後に、一人の男が現れた。
赤茶のコートをゆらりと揺らしながら、その場へとゆっくり着地する男。
背中には何やら鎖につながれた大き目の棺を抱えており、それをそっと地面へと置く。
その男こそ、アルカディアの皇帝、ライトニングだった。
そして、皇帝の目の前にいる者こそが、魔法世界を作り出した始まりの魔法使い、
皇帝は
「……火星にある二つの月の一つ、このフォボスは、徐々に火星に近付いてるんだってな?」
皇帝はまるで友人に会ったかのように、急にうんちくを語りだした。
それは今自分たちがいる、衛星フォボスのことだ。
「そのうち、火星の重力に耐えきれないポイントに入って、粉々に砕け散るんだとか」
このフォボスは火星に引き付けられており、そのうちロシュ限界へと到達し崩壊すると言う、と皇帝は笑って話す。
「俺はそいつを見ることができっかなぁ? 今から楽しみだと思わねぇか?」
で、その粉々になってどうなるかを、自分は眺められるのかと言い出す皇帝。
と言っても、そうなるのには大体4000万年後と言う気の遠くなるような歳月が必要なので、そもそも火星や地球がどうなってしまっているかさえわからない。つまり冗談だ。
「おっと、そういやこの前言い忘れていたぜ。久しぶりじゃねえか! 20年ぶりか? ハッハッ、あいも変わらずシケたツラしてやがる」
また、皇帝は2日前に会った時に言えなかった挨拶を、笑って述べる。
そんな皇帝を静かに、冷たい視線で眺めている
「……お前は何故、こんなことをしている?」
「…………何故? んなもん愚問だろ」
ふいに、
こんなこととは、アルカディアの帝国を築き上げ、世界の弱きものを集めていることだ。
皇帝にとって、そんな質問は質問にすらならない。
「俺がしたいからやってる。それ以外あんのか?」
「…………」
「だんまりかよ。何か言えよ……」
何故なら、好きでやってるだけだからだ。
色々な要因や理由があろうとも、最終的にそこへ行きつくからだ。
すると
せっかく一応答えたのに、そこで黙られると気まずいだろ、と皇帝は文句を垂れる。
「いやー、まったくお前も酷ぇことするよなぁ? 子孫の国をぶっ壊そうとしたり、子孫を苦しめるような真似したり。挙句に自分の作ったもんまでぶっ壊そうとしたりよ」
「…………」
「そんなんだから、子孫らに叛逆されんだろ?」
まあ、
自分の末裔にめっちゃ迷惑かけまくってんなお前、その末裔がメタ能力なの本当に因果応報だな、と。
「……わからんな」
そんな皇帝の独り言のような話を聞き終えると、
「2600年という永き時を過ごし、されど何も変わらぬ行為に、何の意味を見出している?」
「変わらねぇ? わからねぇ?」
「お前は必死に世界を変えようと努力したが、結果はどうだ?」
自分と同じ時間を過ごして来て、色々行動しているようだが、結果が出てないだろ。
結果が出てない行動をずっと続けてるけど、意味あるのか、と。
皇帝はそうか? と聞くと、お前の行動で何か変わったかと言う。
「どう変わった? どこが変わった? 何も変わらぬではないか」
「……」
結果は出ていない、どこに何か変化でもあったのか、と皇帝へとはっきり告げてやる。
皇帝は静かに聞いていたが。
「……はぁ…………」
皇帝は少し黙って
「……確かに大きくは変わっちゃいねぇ。急に平和になったとか、みな平等になったとか、そういうことにゃなってねぇな」
そりゃ目に見えてすごい変化はない。
むしろそんな簡単に世の中変わったら、洗脳や常識改変やらの怪しい何かを疑うわ、と皇帝は思う。
「だがよ、小さいところは、よくなってはいるぜ? 本当に小さいけどよ?」
「……」
「お前は無駄に広いもんで見てっから、小さいもんを見落とすんだぜ?」
それでも、確かに大きな変化はないが、それでも小さく変化してきている。
転生者のこともそうだが、魔法世界の紛争は徐々に減ってきている。
黙って聞いている
大きいものばかりを見てるからそうなるんだ、と。
「それに俺はコツコツやるタイプだからよ。いきなりビッグな革命とかやらねぇ主義だし」
そもそも、自分はいきなりでかいことをしようなんて、柄じゃないと皇帝は笑いながら言う。
「どうせ時間はたんまり余ってる訳だしな。生き急いだ行動したって、足元すくわれるだけだ」
「……やはり、貴様とはどの道意見が合わん」
「そうだったか?」
何せ、先の時間は山ほどある。
皇帝に焦りはない。焦れば焦るほど泥沼に沈んでいくのだから、と。
されど、その言葉に
そんな言いぐさに皇帝は、わざとらしく首をひねって悩むしぐさを見せていた。
「……何をしに来た?」
「わかんねぇか?」
「さようならは言ったはずだ。……別れたはずだ」
「あぁ、聞いたな」
そこで
すると、
あの時、もう道を分かたれたと。お前の下から去ったはずだと。
皇帝もそれは確かに昔。聞いていた。
「だが、俺はそれに何も返しちゃいねぇ」
「……屁理屈だな」
「そういうのが好きなんだよ、忘れちまったかぁ?」
が、あろうことか、その時何も言わなかったのが皇帝だった。
なのでそんなもん知らないと言い出せば、
皇帝は悪びれずに、それが俺だろと言い放つ。子供か?
「…………私を滅ぼしに来たのか」
「クックックッ、そう思えるか?」
「それ以外、何かあるのか?」
「ある……、と言ったら?」
逆に言うと。それ以外考えられなかったからだ。
されど、皇帝は笑って逆に質問しだす始末。
それ以外ありえないと考える
「…………いや、ないな。ありえない」
「そのありえないことだとしたら、どうだ?」
「……荒唐無稽なことだ。まやかしに等しい」
皇帝の答えに
あれは遥か昔、皇帝が絵空事か寝言で言っていたことだった。
なので、それもないなと
それを
「それに、今更そうだとしても、……我が邪魔をすることに変わりはない」
また、その夢物語が本当だったとしても、それはすなわち自分の計画を阻害してくると言うことだと、
「ならば……、────消えよ」
「うお!? いきなりかよ!?」
自分の計画を邪魔するのであれば、何人たりとも許さないと、
そこから漆黒の魔力砲撃を皇帝へ向けて放ったのだ。
皇帝は突然の攻撃に驚き、その攻撃を全て全身に受けてしまう。
「おおおおお!? おおおおおお!?」
さらに、雷の投擲が無数に降り注ぎ、皇帝の全身を串刺しにし、さらに千の雷が串刺しになった皇帝へと降り注いだ。
その攻撃を受けた皇帝は、手足がバラバラとなり体にはいくつもの穴が開き、全身焼け崩れて仰向けになって倒れていた。
「…………全てわざと受けたな? 何故避けなかった?」
「……これは、贖罪だからな」
「贖罪……?」
されど、
と言うのも、皇帝ならば避けれるはずの攻撃を、まったく避けなようとしなかったように見えたからだ。
皇帝は今受けた傷を贖罪と称した。
贖罪、そう言われても
「お前に対しての、な」
「……意味がわからないな」
「クックッ……別にわかってほしいなんて思っちゃいねぇよ」
何に対しての贖罪かを、皇帝は血まみれの口を動かして静かに言った。
それこそ
そう言われても
皇帝はそもそもわかってほしい訳でもなく、ただ自己満足げにそうしているだけだった。
「懐かしいぜ。こんなにズタボロになったのは、いつ以来だろうなぁ……」
そして、皇帝は過去を思い返し始めた。
最近これ程のダメージを受けたことがない。
と言うよりも、受けることすらなかった。
だって攻撃なんて全部避ければノーダメージだったから。
どのぐらい遡れば、このぐらいの傷を負う自分がいただろうか────。
・
・
・
────アルカディア帝国の皇帝、ライトニング・サンダリアス・アルカドゥスは、決して特別な生まれではなかった。
2600年前、ごく小さな村に生まれた少年、ライ。
ライと言う少年は、ごく普通の少年だった。
強いて言えば、他人と比べて
友人に囲まれ、家族に囲まれ、特に不自由することなく、その人生を謳歌していた。
本来ならば、このまま普通に村で過ごし、歴史に名を刻むことなく、平凡な人生を歩んで消えていくだけの存在だった。
だが、そうはならなかった────。
ある日の夜、星も月も見えぬ曇りの日。
突如として村が爆発し、燃えはじめた。
ライは意味が分からずに、ただただ震えるだけだった。
すると家も爆発に巻き込まれ吹き飛ばされ、両親も家屋とともに消え去った。
そこへ一人の男が現れた。この男が村を襲った犯人だった。
男はヘラヘラと笑いながら、次々と他の家を破壊し、略奪を繰り返していた。
そして、男は次に目を付けたのは、ライの姉だった。
ライの姉は美しい女性だった。男はそれが欲しくなったのだ。
ライは姉を助けるために、落ちていたナイフを拾って男へと突撃したが、蹴り飛ばされて地面に転がされるだけだった。
男はライにキレ、剣を引き抜いてライへと斬りかかった。
ライはもう死ぬんだと思い目を閉じるが、一向に痛みがこなかった。
恐る恐る目を開けると、そこには剣で斬り裂かれた姉の姿があった。
姉はライを庇って、男に斬られてしまったのだ。
姉は死に際に言葉を残した。
逃げなさい。逃げて、生き延びて、希望を見失わないで、と。
そう言い終わると、姉の命が尽きていった。
されど、ライの危機的状況は変わらない。
男はライの姉が死んだことに、もったいないと言うだけで、何かを思うような様子はなかった。
それで男はライが邪魔をしたから女が死んだと思い、再びライを蹴り飛ばした。
ライをサンドバッグにして、うっぷんを晴らして殺そうと思ったのだ。
もうだめだ。姉の最期の約束も果たせぬまま、ここで無惨に死ぬんだ。
そう思ったライだったが、そこで眼を凝らしせば、男の中にある光のようなものが見えた。
ライはそれが何なのかはこの時にはわからなかったが、それを「見て」男の攻撃を回避することができた。
男は攻撃が外れたのをまぐれだと思い、何度もライへと攻撃するが、ライはその全てを「見て」回避し続けた。
そんなライの動きに我慢の限界を迎えてキレた男は、大技をぶっ放そうと行動を開始。
男の中に膨大な光が集まるのを見たライは、自分の最期を悟とるが、そこに突如として別の男が現れ、先ほどの男に戦いを挑み始めたのだ。
ライはチャンスだと思い、そのまま走って走って走って、村から脱出を試みる。
心臓は破裂しそうなほど鼓動し息も耐え耐えで、ようやく村を抜けた先の草原へと入ったライがもう一度村の方を向けば、男たちが衝突し、巨大な爆発を発生させたのではないか。
そして、ライの村はその瞬間に消滅し、巨大なクレーターだけが虚しく残されていた。
まさに地獄のような光景を見たライは、泣き崩れてうなだれた。両親や姉の遺体すらも弔えず、友人やその家族、村人たちも死に絶え、村が消滅し、一人だけ生き延びてしまったからだ。
だが、ライは折れなかった。
姉の際の言葉を、”希望を見失わないで”と言う言葉を思い出し、空を見上げてそこから旅立った。
気がつけば雲が晴れており、黄金に光る満月と満天の星々が、夜の空に輝いていた。美しい空だった。
あの壮絶で悲惨な光景を見たライは、まずは力を欲した。
力がなければ、力があるものには勝てない。勝てなければ守れないと思ったからだ。
独学でライは必死に修行した。強くなるために体も鍛えた。
さらには自らを鍛えながら、幾度となく自分の村を襲ったものと同じような存在と戦った。
傷つき死にかけても、決して負けずに倒し続けた。己を鍛えるために、無垢の人々を助けるために。
しかし、足りない。独学では限界があった。
魔法とて体内を流れる光がそれらしき力であることはわかったが、どうやってそれを操ればいいのか、その術を知らなかったからだ。
だから、幾度となく敵対する”例の存在”の使う”
これを彼らは魔法と呼んでいた。その呪文の一つである”魔法の射手”などの低級魔法ならば、操れるようにはなった。
だが、触媒を持たぬライにはそれが限界であった。
ライの前に巨大な壁が現れ、力を得ようともがくライを阻んだ。
上級の、もっと威力が高く範囲が広い魔法を操ることができなかった。
────そんな壁にぶち当たっている時に、ライは一人の男に出会った。
再び危険な存在に出会ったライが我武者羅に戦っている時に、その男が現れた。
長い黒髪の男で、どこかの部族のような格好をした、不思議な男だった。
その不思議な男は見えざる力で戦うようだったが、ライにはそれがはっきり見えた。
男の手には複数の動物を合体させたような槍が握られており、それで危険な存在を一撃で倒したのだ。
ライは渇望した。その強い力を。その力があれば、強大な力に勝てる。守る力が得られると。
気が付けばライは、男に頭を下げて教えを請っていた。その力が、強さが欲しかったからだ。
その男はあのような危険な存在を倒しながら旅をしているとライへ話し、それでいいならと静かに答えれば、ライは「それでいい、すでに行く当ても帰る場所もないのだから」と返すと、男は小さく頷き同行の許可を出した。
そして、その男は、自らをエージと名乗った。
みすぼらしいライの姿を見た男は、何かを思ったのか面倒を見てくれるようになった。
力が欲しいと言うのであればと、まずは魔法触媒として杖を与え、魔法や気などの基礎的なものをライへと教えた。
エージは自らを転生者であると話し、この世界には自分と同じような転生者が多数おり、その中でも力を持て余してタガが外れた存在が、少数だが暴れていると語った。
さらに、信じがたいごとにこの世界は、”彼が転生する前に見た物語の世界”だと言うのだ。
その物語のずっと昔に転生し、それを不満に思ってどうでもよくなった転生者の連中が、この世界を荒らしているのだろうと、エージは自分の考察も話した。
故にエージはそういった力を振りかざす転生者を許せず、倒しながら生活していたと言う訳だった。
ライは転生者にも色々いるのだとそこで理解し、全ての転生者が危険な存在ではないことを知った。
また、ライはその話を聞いて、自分の村を襲った男とそのあとに来た男がそうだったのだと悟り、怒りに燃えた。されど、怒りが沈下すると今度は虚しさを感じた。
そんな連中のために、自分の村や他の弱い人々が消えていくことに、悲しみを感じたからだ。
だからライは、その時に思った。
誰もが自分のように苦しまないような、希望が消えない場所が欲しいと。
これこそが、ライの、皇帝ライトニングの原点であった。
そして、星空へと手を伸ばし、握りしめた。
いずれ天に輝く星々をも掴んで見せると。希望をこの手につかみ取って見せると決意しながら。
そのあとエージは転生で得た力のことも話した。
その力とは、即ちシャーマンの力だ。その得た力とは、高い巫力とシルバなる人物の能力を貰った、と言う事だった。
そこでライはエージとの旅の中で、魔法と気以外にもシャーマンの力も教えてもらうことにした。
ただ、ライはシャーマンとしての才能がそれなりにあったが、魔法の方が得意だった。
シャーマンとしての力、魔法、それと接近戦などの指導を受けたライは、みるみると強くなり、並みの魔法使いや転生者なら余裕で倒せるほどまで成長した。
実力をつけていくにつれて、もともと
相手の魔力や気の流れがはっきりと見えるようになっていき、空気中に漂う魔力や魔法による魔力の流れなどもしっかり見えるようになった。
それ以外にも、本来目では見えないものも、見えるようになってきた。
エージはそれを魔眼か千里眼だと教えてくれた。
ライは元々何となくでできていた、眼で魔力や気の流れを見て動きを読むことを、さらに学んで強化していった。
それからライが青年へと成長するほどの年月が経ったところで、エージはこの世界の魂を根本的に見直すべきだと考え、シャーマンキング、星の王になると言った。
シャーマンキングとなるためにエージは、グレートスピリッツを探す旅に出ると言った。
ライはそこでエージと別れ、のちにエージはシャーマンキング……、この世界の転生神の一人となった。
だが、現代の転生神は彼とは別で、すでに星の王を交代し後であった。
それから、ライは各地を旅していろんな場所を見た。
各地で転生者が暴れ回り、酷い場所もあった。そんな連中を倒すものも存在した。
別に争いのもとが転生者だけとは限らなかった。
平和で争いのない場所もあった。
静かで何もない場所もあった。
この世は地獄か、違うのか、わからない時もあった。
────そこでライは、一人の女性に出会った。
・
・
・
────皇帝は思い返す。自分の原点を。
「クックックックッ……」
皇帝は、過去の自分を思い返して笑い出した。
懐かしい、なんと懐かしいことか。
二つの出会いがあった。
一つ目の出会いがなければ、ここにはいなかっただろう。
二つ目の出会いがなければ、ここまでこなかっただろう。
この二つの出会いがあったからこそ、皇帝はここにいるのだと思い笑う。
故に、故に、ここで寝転がっているのはもう終わりだと、肉体を、服を、自分を構成している全てを復元し、再び立ち上がって
「…………何を考えている?」
「さぁな」
突如として不気味な笑いを発しながら、スッと立ち上がった皇帝を見て、
皇帝はニヤリと笑って、その問いをごまかした。
「いやぁ、いいの貰ったぜ。すげー効いた」
「……」
そして、皇帝は腕を回し、首を回し、今の攻撃は痛かったと言いながら、やはり表情は笑っていた。
「アルカディアの皇帝ライトニング、いや……、
すると、
「お前はどうしようもなく愚かな男だ。本質的に、愚かしいほどに、……清々しいほどに愚直な男だった」
「クックックッ、酷い言いようだな? まあ、間違っちゃいねえな」
お前はいつもそうだ。何が面白いのかわからない。
常に何かに全力疾走で、常に何かに向かって突き進んでいた。
2600年前も、常に前向きに行動していたこの男。
弱きを助けることを当然とし、手を差し伸べたものに手のひらを返されようとも、気にすることはなかった。
誰であれ、どうであれ、生きていればチャンスがあると、そう言って信じて進んでいたこの男。
愚かしい、と思った。されど、清々しい、とも思った。
過去、村を吹き飛ばされ家族を失ったと言うのに、この男は人を恨むより慈しんだ。
”転生者”とか言うふざけた存在にも、弱いものであれば当然手を貸した。
この男へと”何故そうするのか”と質問すれば”俺がそうだったから”と答えた。
村も家族も失ったことは辛いことだが、命が助かったことは幸運だった。運がなければ死んでいた、と。
そこで助かったのだから、誰かを助けることができたならば、その誰かは自分のように朽ちず生きることはできる、と。
懐かしき2600年前の光景が、目に映った気がした。
そういう男だったな、目の前の男は。
皇帝もそれは理解しているので、当たっていると笑いながら言う。
むしろそれこそが俺なのだと、そうでなければ俺ではないと思っている。
「だがよぉ、だからこそ、そんな俺と、……お前は愛し合ったなぁ!」
「…………」
「事実から目ぇそらすんじゃねぇぞ」
故に、お前と俺はそういう関係だったじゃねえか、と皇帝はニヤニヤ笑う。
突き抜けて、真っすぐに突き進んでいく人間を好ましく思ってたのは、お前だろと。
が、
と言うか、外見はナギなので、ちょっとアレな絵面になってる。
確かに、そう確かに2600年前、この男の精神性に惹かれたことは間違いない。
そんな自分も愚かだったと思うほどには、この男と愛し合った。否定はできない。
が、なんというか、目の前のコイツの顔を見ると、無性に否定したくなった。
昔からそうだが、そういうところアレと言うか、本当にデリカシーがない。
なんでそういう部分は成長しないで昔のままなのか、まったく理解できない。
また、皇帝は
なんたって、あれだけ情熱的に求め合ったってのに、今更そりゃねえだろって感じだ。
ちなみに裏に引っ込んでるナギの精神もしっかり聞いているので、マジかよこいつら……そんな関係だったのかよ!? と驚きながら困惑していたりする。
「お前が言う通り、マジにアホみたいに愚直な男さ俺はよ」
とは言え、皇帝は
どうしても進む必要があったからだ。進んだ先に小さな光があるならば、それをつかみ取りたかったからだ。
「何せ、今もお前を求めてやってきてんだからな」
「…………意味がわからない」
その掴みたかった小さな光の一つが、お前だと皇帝ははっきり宣言した。
そうだ、ここに来たのはそう言う事だ。お前の手を引きに来たと。
が、当然そんなこと言われても困惑しかない
魔法世界のどうこうとか、人類のどうこうとかではなく、そこなのか、と理解が追い付かない様子だった。
「俺、こう見えて一度惚れた女には無限に粘着するタイプでな。ゾッコンになっちまったら二度と離したくなくなっちまうのさ」
すると、皇帝は自らの性癖を暴露し始めた。
俺って結構ストーカー気質のヤンデレ男かもしれんと。
つまり、ここで逃げても追って追って追いかけて、絶対に離さんぞ、と言っているのだこの皇帝は。
「長かったぜぇ、2600年は。あんなに一緒だったのによ、突然さよならはねぇだろ?」
「…………」
いやはや、昔はあれほど一緒に過ごしたのに、別れてからの方がすごい長くなっている。
しかも消えるときは突然さよならだった。皇帝はそれに返事を返してないが、消えてしまった
故に、
自らを国の歯車とするために若返りや老化阻止などを行い、徐々に死なない肉体へと作り変え、
んなこと言われてちょっと引いてる
あれ……、昔の自分って男を見る目なかったのではないか? と後悔し始めながら黙ってしまった。
「まぁ、だからよ、お前を掻っ攫いに来たって訳だ」
「……ふ、私と同化するつもりか?」
「いんや?」
そして、こうして目の前に現れて、とりあえず素直に捕まらないだろうから、そのまま奪いに来たと皇帝は豪語。
つまりそれは、この体を殺して自分に乗っ取られることかと、
まあ、皇帝がそこまでヤンデレじゃないだろ、とは
「まっ、とりあえず、そこの英雄様には悪いが……、
ただ、それにはどうしても
なので皇帝は、器として使われている現代の英雄、ナギに対して宣戦布告を行うのであった。