魔法世界での戦いからはや二回目の日曜日。
それも連休の日曜日ということで、状助はアスナに会いに来ていた。
「状助君か、ようこそ」
「どうもっス」
アスナは今日は実家、メトゥーナトがいる骨董品店のある家の方に来ているとのことで、状助もそちらにやってきた。
そこで出迎えたのが、仮面をつけていない素顔のメトゥーナトだった。
メトゥーナトは状助が来たのを見て挨拶をすれば、状助もいつもどおりに挨拶を返す。
「今日はアスナがこっちに来てるっつーんで、寄らせていただきまス」
「ああ、約束していると聞いているよ」
「んじゃ、おじゃましますんで」
「どうぞ」
アマネが妹になってからのアスナは、アマネの世話をしによくこっちへ帰るようになった。
何せ孤児のような状態だったアマネは思いのほか何も知らないので、色々なものを教える必要があったからだ。
また、可愛い妹のようなアマネをアスナはすごくかわいがり、面倒を見ることが楽しくて仕方がないのである。
そんなアスナに世話を焼かれるアマネも、アスナを本当の姉のように慕い、いつもニコニコしていた。
「そうだ、状助君」
「なんっスか?」
「君には謝らなければと、ずっと思っていたんだ。すまなかった」
「ん!? 何のことっスかね……?」
と、そこでメトゥーナトは状助を呼び止めると、振り返って疑問を口に出す状助。
するとメトゥーナトは、突然状助へと謝り始めたのである。
状助は何がどうして? とさらに疑問が増えて、かなり困惑した様子で驚く。
「アスナから君が死にかけたと聞いてね。とてつもない事件に巻き込んでしまって、申し訳ない」
「いっ、いやあ別にそんな!? 来史渡さんが謝ることじゃあないっスよぉ!!!」
メトゥーナトは麻帆良へと帰ってきた後にアスナから、魔法世界に入った時に状助が敵と戦い瀕死になったことを聞かされた。故に、そのことについての謝罪だった。
そもそも、彼らの魔法世界行きをあまり快く思っていなかったメトゥーナトは、それでも行かせてしまったことで自分が招いたことだと思っているのである。
だからメトゥーナトは、しっかりと頭を下げて状助へと謝罪した。
が、状助としては最初から気にしていない上に、メトゥーナトから謝罪される必要すらないと思っているので、それを不要と大声で言う。
「アスナにも言ったんっスけど、
「…………確かに、君はそう言えるだろう」
だが、状助は自分で行くと決めたので、別に気にすることはないと言う。
行くときに覚悟だって決めたし、死ぬのもまあしょうがないとさえ思ったぐらいだからだ。
されど、それは生き延びた状助だから言えることだと、メトゥーナトは話し出す。
「だが、それは結果論だ。君がもし、本当にあの場で命を落としていたら、そういう訳にもいかなかった」
「まっ、まぁそう言われればそうなんっスけど……」
状助が生き残れたのは、たまたま運がよかったからだ。
そこで死んでいたらどうなっていただろうかと、メトゥーナトは状助に問う。
だから君を守れなかったことは事実であると、状助へと話すメトゥーナト。
それでも状助は、死んでたら色んな方向に迷惑かけたり悲しませてしまったかもな、と思うぐらいで、特にそれ以上はない。
状助は自分がいなくなっても問題ないと思っていたり、無鉄砲なところがあるせいである。
転生して二度目の人生だからと言う部分もあるかもしれないが。
「ですけどよぉ……、俺はこうやって元気に戻ってきた訳っスから! あまり気にしないでほしいっスねぇ。悪いのはあいつらだった訳っスし」
「……そう言ってもらえると助かる…………」
「別にいいっスよぉ。もう付き合い結構長いっスから」
なので、状助は結果論だとしても、今自分が元気なのだから、とガッツポーズをして見せた。
んで、一番悪かったのはあのゲートポートを襲ってきた連中であって、それ以外の誰かが悪かったなどとは思っていない。
メトゥーナトがあの事件を予測していたとしても、本当に起こったかなどもわかるはずがないのだから。
たとえそれが
そこまで言われたメトゥーナトは、申し訳なさそうにしながらも引き下がることにすれば、状助はやっぱり気にしてないと、ニカっと笑うのだ。
「じゃ、改めてお邪魔させていただきます」
「ああ、どうぞ。アスナも待っているはずだろう」
とまあ、そういう辛気臭い話は切り上げましょ、と状助は再度挨拶をすれば、メトゥーナトもふっと微笑みながら招き入れたのだった。
ちなみに、アスナはアマネに色々なボードゲームなどを教えてあげており、時間を忘れていたので慌てたと言う。
そのあとアスナはドタドタバタバタと支度して、状助と一緒に出掛けて行ったのだった。
…… …… ……
同じく休日の午後、エヴァンジェリンが保有する”別荘”にて、ギガントが弟子たちに会いに来ていた。
「弟子たちよ、久しいな」
「お師匠さま!」
「師匠!」
「師匠さん!」
ギガントがゆったりと挨拶をすれば、ネギ、夕映、のどかが元気そうに近寄ってきた。
「
「いえっ!」
「全然っ!!」
「大丈夫です!」
ギガントがここへ来た理由は、魔法世界にいた時に自分のことを説明ができなかったからだ。
ただ、三人は別にそれを気にした様子はなく、問題ないと言うだけだ。
「そういえば師匠、あちらの姿が本当の姿なのです?」
「うむ。今まで騙していて悪かった」
そこで夕映はギガントへと、魔法世界で見た亜人の姿のことを尋ねれば、ギガントは頷きながら肯定して謝った。
何せこちらで活動するためとはいえ、弟子たちにずっと嘘をついてきたのと同じだからだ。
「こちらで活動する上で、そちらの姿でなければならないのはわかってますから……」
「気にしなくてもよいのです。どんな姿でも師匠は師匠です」
「うん。私たちの師匠さんに変わりはないもんね」
「そう言ってくれると嬉しい」
ただ、ネギたちはこの旧世界で活動するのに、今の姿の方が適しているのを理解しているので、あまり気にしていなかった。
それに姿形ではなく中身の問題だと思っているので、自分の師匠がどんな姿であっても、変わらないと夕映とのどかは話す。
そんな三人にギガントは優しき弟子に恵まれたと、静かに頷いて喜んでいた。
「では、今一度本来の姿をお見せしよう」
「これが師匠の本当の姿……」
そこでギガントは魔法を解き、今の老人の姿から本来の亜人の姿へと変えていく。
夕映は遠くから初めて見た師匠の真の姿を間近で見て、少しだけ驚いた様子だった。
そして、初めて新オスティアに来た時の式典で、この姿を見たのを思い出して納得した様子だった。
「驚くのも無理はない」
「いえ!
「そういえば、確かにそうだね」
夕映がちょっと驚いているのを見たギガントは、まあ自分の姿は結構トゲトゲしてて怪獣だしびっくりするだろう、と苦笑する。
されど、夕映は旧世界ではそりゃ見ないけど、魔法世界であれば気にならない姿だと言えば、のどかもうんうんと頷く。
また、ネギは総督府で説明されていたので、特に驚くことはなく、改めてこれがお師匠さまの本当の姿かあ、と思っていただけだった。
「あの……、触ってもいいです?」
「ゆえ!?」
「どうぞ」
「ありがとうございますです」
すると、夕映がギガントの肌が触ってみたくなったので、それを聞いてきた。
のどかはそれは流石に失礼では? と驚くが、ギガントは微笑んで許可を出し、夕映も静かに頭をペコリと下げて、おずおずとギガントへと近寄る。
「すごくゴツゴツです。でもなぜか優しくて安心するです……」
そして、夕映はむき出しになっている指先などをさするように触れ、その固く強靭な皮膚の感触と温かさをその手で感じた。
さらに巨大な尻尾の方へと移動し、そちらにもふと触って感触を確かめながら、その新鮮さを味わった。
「君たちもどうかね?」
「えっ!? いえ! 私は別に!」
「僕もそこまでは!?」
「それならいいのだが……」
ギガントは夕映の行動に優しい眼差しを向けた後、残った二人に同じことをするか尋ねるが、流石に二人は遠慮しており少し慌てた様子でNOと断る。
とは言え、ギガントとしては別に減るものではないし、と思っており気にしていないのだが。
「ゆえ……?」
「────はっ!」
と、のどかがふと見れば、ゆったりと揺れるギガントの尻尾の上で、うとうとしている夕映が眼に入ってきたではないか。
そこで夕映へと声をかければ、夕映は気が付いて飛び起きた様子を見せ、ちょっと照れながら尻尾からのそのそと降りてくる。
夕映はこの暖かさに、どこか懐かしく思っていた。それは2年前に亡くなってしまった哲学者だった祖父、綾瀬泰造のことだ。
とてもおじいちゃん子だった夕映は祖父が死んだ時、何もかもが灰色に見えるほどにショックを受けたことがあった。
そのあと同じクラスで図書館探検部の三人と友人となり、その部分が解消されていった経緯がある。
今でも祖父の写真が入ったロケットペンダントを持っているぐらい、祖父のことを敬愛していた。
それ故か、心のどこかで亡くなった祖父を、未だに求めていたのかもしれない。
過ぎた過去は戻らないことなど承知だが、寂しさだけは消せないのだから。
だからだろうか、見た目や雰囲気は違うけれども、祖父とギガントに重ねて見ていた部分が夕映には確かにあったのだ。
「あっ、ありがとうです。失礼しました」
「なに、このぐらい大したことではないよ」
流石に尻尾の上でうたた寝してしまったのは失礼過ぎたと、夕映は顔を赤くしてペコペコ頭を下げて礼を言うが、ギガントは暖かい眼差しを向けて気にしないと言うのみ。
その眼差しを見て夕映は、やはり懐かしさを感じてしまっていた。
「さて、久々にワシが魔法の授業をしようか。何か教えてほしいことは?」
「では……。ネギ先生やカギ先生が使っていた、術具融合を教えてほしいです」
「ほう? しかしアレを習うのなら、ワシよりエヴァンジェリンに教えてもらった方がよいぞ?」
そして、向こうから帰ってきて時間ができたので、今回はギガントが弟子たちを指導すると話して質問を出せば、夕映は教えてほしいものを手を挙げて言葉にした。
カギやネギが使いこなしていた術具融合を、夕映は間近で見て教えてほしくなったのだ。
しかし、この魔法はエヴァンジェリンが考案したものであり、それなら本人に教えてもらった方が効率が良いのではないか、とギガントは言う。
それに近くでエヴァンジェリンも見ており、彼女にもそういうプライドがあるのではないかと、気を使っているのだ。
「確かに開発者であるエヴァンジェリンさんに教えてもらうのが一番なのはわかってるです。それでも、師匠から教えてほしいです」
「…………ふむ……」
夕映もギガントが言ったことは承知だが、それ以上に師匠であるギガントに直接指導してほしいと願い出たのである。
ギガントは腕を組んで考え込みながら、ちらりとエヴァンジェリンの方を見る。
第一人者の彼女が、どんな反応をするかをうかがっている訳だ。
「まあ、いいじゃないか。貴様の弟子がここまで言っているんだ。教えてやればいい」
「……エヴァンジェリンがそういうのであれば、そうしていただく」
「ありがとうです! 師匠!」
エヴァンジェリンもギガントの視線に気が付き、気にしないからやってやれと肩をすくめて言ってやると、ギガントは頷いた後に夕映たちへと指導すると言葉にした。
それを聞いた夕映は喜んで礼を言い、大きな笑顔を見せた。
ネギはすでに使いこなしているので、それならサポートしようかなと考え、のどかはどうしようかな、と悩んだ様子を見せるのだった。
こうしてギガントの魔法授業が始まり、三人は笑い合いながら指導を受けた。
そのあとギガントはカズヤと法の浸食した状態を診た後に麻帆良を発ち、もう一人の弟子であるアーニャに会いに行き、その足でアルカディア帝国へと帰って行ったのだった。
…… …… ……
次の日の休日、メトゥーナトたちは久々に都会へと出て買い物へとやってきていた。
「すごい大きい建物! 人もこんなにいっぱい!」
「慌てないのよ? あとはぐれないように気を付けてね?」
「はーい!」
アマネは初めて見るビルや人の量に圧倒され、驚きながらもはしゃいでいた。
そんなアマネに人の多さに巻き込まれないようにとアスナが注意すれば、アマネは元気に返事を返す。
「マスター、オレの手を掴んでおくとはぐれずに済む」
「うん!」
ならばとランサー・カルナが左手を出し、アマネに掴むように言えば、アマネもニコニコしながらランサーの手を掴んだ。
いやはや、黒いスーツにサングラスな白髪の男に引き連れられる幼き少女と言う、なんかすごい絵面である。
「アスナとこうやって街に出るのも、随分と久々だな」
「確かにそうねぇ。
「そういえばそうだな」
メトゥーナトはそういえば、と思い出したかのようにアスナへ話しかける。
何せこういうところにアスナを連れて行くことは滅多になかったメトゥーナト。
それを言われたアスナも魔法世界で随分と長く生活していたので、うんうんと頷いて確かにと言うと、メトゥーナトも魔法世界生活が長かったことも思い出した様子だった。
何せ旧世界と分断された魔法世界の時間は、旧世界での時間より早く流れており、数か月もの間魔法世界で生活したことになったからだ。
「とは言っても、今日はアマネちゃんが主役だものね!」
「そうなの?」
「そうよ? 日用品は揃えたけど、それ以外にも色々買わないとね」
「今のでも十分だよ?」
それに今日はあくまでアマネのための買い物だとアスナは笑顔で言うと、アマネはなんで? という顔をしたので、理由をアスナが並べれば、アマネは不自由はないんだけど、と疑問に思った様子だった。
「お出かけ用の服とか、そういうのもまだじゃない? 女の子なんだから必要よ?」
「でも……」
というのも、アマネの分の生活必需品は早急に揃えたが、それ以外はまだ何も買っていなかった。
だからお外用やこれからの季節に備えた服、カバンや携帯などを揃えなければいけなかったのだ。
ただ、アスナがそれを言うと、アマネは遠慮してしまって表情を暗くしてしまう。
「こういう時は甘えてもいいんだ。君はまだまだ子供なのだからね?」
「……ほんとにいいの?」
「当然だよ」
「……うん! ありがとう!」
「どういたしまして」
そこでメトゥーナトがしゃがんで彼女の視線に合わせて語り掛けた。
アマネはまだまだ小さくて幼い。庇護が必要な存在だ。なので、そういうことは気にしなくてもよいよ、と優しく言い聞かせたのだ。
アマネはメトゥーナトの言葉に対して、もう一度確かめるかのように聞き返せば、メトゥーナトは優しく微笑んで頷く。
それを聞いて大丈夫なんだと安心したアマネは、パァーっと表情を明るくして礼を元気よく言と、メトゥーナトは穏やかな表情で言葉を返した。
「こうも人が多いと、周りが見えないだろう。マスターはオレの肩の上に乗るといい」
「ありがとう! カルナ!」
そこでランサーは、アマネの背が小さくて周りが見えないだろうと考え、肩車を提案。
するとアマネはニコニコと笑って、ランサーへと小さく礼したあとランサーの肩へと乗ったのだった。
「あの二人、本当に兄妹みたいね」
「そうだな。彼女も彼には懐いているようだし、やはり一緒にしておくのがよいようだ」
二人のやり取りを微笑んで眺めるアスナは、本当に仲がいいんだなと言葉にすれば、メトゥーナトも二人が常に一緒ならば安心だろう、と思った様子だった。
「そういえば、私ってああいう風にしてもらった記憶ないけど……?」
「昔のアスナはああいったことよりも、剣の稽古の方がやりたくて仕方がなかったからな」
「……まあ、確かに…………」
で、アスナはふと、自分の過去を思い出した。
あのような子供らしい行動を、自分はメトゥーナトからされたことがなかった、と。
が、メトゥーナトはアスナが子ども扱いされるのを、あまり好きではなかったのを知っていた。
なのでそういうことはせずに、アスナがやりたいことをさせていたりした。それが剣の稽古だった。
メトゥーナトからそう言われたアスナは、ああそうだった、と思い出して、自分ってそんなに可愛げのないガキだった……? と思い返してみる。
すると、毎回剣の稽古だの修行だのを要求し、学校に通うようになってからも同じことを言ってばかりだった。
いやまあ、見た目も情緒も子供だったが、実年齢はそうじゃなかったんだけども、とも思ったりしたが。
「君は存外物静かな雰囲気を出しているわりに、お転婆でやんちゃだった」
「そ、そんなことは…………、なかった……はず……」
さらにメトゥーナトは昔のアスナを思い出して言葉に並べれば、アスナはそこまでじゃなかった、と言い切れずに口ごもる。
否定したくても思い出した過去の自分の態度が客観的に見て、剣を振り回すのが大好きな可愛げがないガキすぎたので、お転婆だったのを否定することができなかった。
「小学校に入って早々、喧嘩してきたのを忘れた訳ではないな?」
「うっ!? しっ、しょうがなかったのよ! あの時はまあ、色々あったし……」
メトゥーナトはそれ以外にも、小学校に入ったばかりのアスナを語りだした。
入学した初日から喧嘩して傷を作って帰ってきた。しかもガキだのなんだの言って文句ばかりだった。
それを言われたアスナは、事情があった……色んな回想を挟んで……事情が! と声を荒げる。
ただ喧嘩したのはあやかに文句を飛ばされたからであり、ほとんど言い訳になってしまうのだが。
「それもあるだろうが……。まあ、そのおかげで今のアスナがあるのだろうから、悪くは思ってないよ」
「そうね……。そういう意味じゃ、いいんちょには感謝してる……かな……」
アスナの言葉にメトゥーナトも、すさむ理由はあるなと腕を組んで頷く。
されど、そんなことがあったからこそ、こうやって元気になってくれたのだとメトゥーナトは思っており、よかったとさえ思っていた。
それはアスナも同じであり、あやかと喧嘩して勝負して、色々馬鹿なことをしたからこその今があると思っていた。
なので、アスナとしてもあやかには結構感謝している部分があったりする。出会えなかったら、こんな風にはなってなかったと思っているからだ。
「彼女のことが好きなんだな」
「
「そうか。その絆を大切にするといい」
「言われなくたって、大切にしてるから大丈夫よ」
「フッ」
ちょっと照れ臭そうに語るアスナを見て、メトゥーナトはその友人のことを聞けば、アスナもはっきりと好きとは言わないが、好意的であると話しておく。
実際は友人として本当に大切にしていると思っているし、魔法世界から何事もなく無事に帰還させられたことを安堵していたほどだった。
メトゥーナトはそんな意地っ張りなアスナの気持ちに気が付いており、ならばその繋がりを断ち切らぬようにと微笑んで話すと、アスナもわかってるとしました顔ではっきり告げた。
そんな素直ではないアスナに、メトゥーナトは小さく笑う。
「そうだ、今日はアスナも欲しいものを買うといい。わたしが全部支払おう」
「えっ!? 本当にいいの……?」
「向こうから無事帰ってきてくれたお祝いだ。そのぐらいさせてほしい」
そこでメトゥーナトは、今日はおごりだと言い出した。
アスナは突然そう言われて驚いて遠慮しがちに聞けば、メトゥーナトは魔法世界からの帰還祝いだと笑って答えた。
メトゥーナトは本当はアスナに魔法世界に行ってほしくなかったので、無事に戻ってきたことに安堵しているのだ。
それに結構向こうで無理させてしまったのではないかと考え、ちょっと贅沢させてあげようと思ったのである。
「……ありがとう、パパ」
「どういたしまして」
気を利かせてくれたメトゥーナトに、アスナはちょっとしおらしい態度でお礼を言えば、メトゥーナトは当然と言う様子でにこやかにするのだった。
そして、四人は色んな店へと入りながら買い物を楽しみ、日が傾き始めるまで街中を散策したのであった。
…… …… ……
日も傾き、随分と買い物を楽しんだメトゥーナトたちは、未だ人があふれる街中を歩いていた。
「寝ちゃいました?」
「そのようだ。慣れない街中と人の量とで疲れてしまったのだろう」
アスナはランサーにおんぶされたアマネが寝てしまったのを見れば、ランサーもそれを肯定してアマネを落とさないように力を籠める。
アマネは小さい村で暮らしてきたので、こういう人の多い都会にまったく慣れていなかった。
そのため色んな所に気を使い、または気を張ってしまい、疲れてしまったのである。
「もうこんな時間だし、そろそろ帰らないとね」
「そうか、もうそんな時間か」
アスナは日の傾きを見たあとに自分の腕時計へと視線を移し、帰る時間だと口に出せば、メトゥーナトも随分と長く買い物していたな、と思った。
「はぁ……。でもやっと平和な日常に戻ってきたって実感が湧いてきたわね」
「向こうにいた時間が長かっただろうからな。大変だっただろう?」
「んー。まあ、大変だっと言えば大変だったかな? 色々あったしね……」
ただ、アスナはこういう体験を経て、ようやく自分が旧世界に帰ってきたことを実感した様子。
やっと、そう、やっと肩の荷が全部降りたと言うか、ようやくほっとできたと言う気持ちだった。
メトゥーナトもアスナが魔法世界でいた時間を考えれば、確かにそうなってもおかしくないと話す。
アスナとしても魔法世界での行動は、確かにそれなりに大変だったと、思い返して言葉にした。
それに精神的な面では、かなり苦労したとアスナも思った。
状助は死にかけるし、あやかも巻き込んでしまって一緒に冒険する羽目になったし。そういう方向で大変だったのも事実だ。
なのでそういう部分を全てひっくるめて、色々あった、と口に出す。
「でもまあ、みんな無事だったし、よかったんじゃない?」
「そうだな。それが一番だ」
しかし、アスナが言えることはただ一つ、全員が無事だったということだ。
無事にみんなが旧世界へと帰ってこれたので、終わりよければ全てよし、と思っているのだ。
メトゥーナトも全員の無事こそが大事だと、小さく頷いて肯定した。
誰も欠けることがなかったことこそが、一番重要なのをメトゥーナトもわかっているからだ。
「それに、こんなにおごってもらったしね!」
「ふっ、その程度お安い御用だ」
だが、アスナは今最高に気分がいいのは、メトゥーナトに色々おごってもらったからだ。
両手に一杯の紙袋を持ち上げてそれをメトゥーナトに見せながら、晴れ晴れした笑顔を見せるアスナ。
ご機嫌なアスナを見てメトゥーナトも、よかったよかったと満足げに笑って見せる。
本当はこんなものじゃ全然足りないと思っているメトゥーナトだが、アスナの輝くような笑顔を見て、これでよかったのかもしれないな、と思うのだった。
「本当にありがとう」
「気にすることはない。当然のことだ」
そして、アスナはもう一度礼を言って、ニコリと笑顔を見せる。
メトゥーナトはそんなアスナの微笑みを見て、ふっと笑って見せるのだ。
こうして買い物は終わり、みんなでのんびりと麻帆良へと帰っていくのだった。