理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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空白期間にオリイベ挟もうと思います


クリスマス前の転生者襲撃編
二百十六話 麻帆良に迫る突然の危機


 

 

 クリスマス・イブ前、24日の朝と昼の境目の時間、エヴァンジェリンはいつも通りログハウスでのんびり過ごしていた。

 

 

「ん……? なんだ? この妙な魔力の揺れは……?」

 

 

 が、何やら麻帆良の上空に何か魔力の気配を感じた。

空間が揺れて魔力が波を打つような、そんな感覚がエヴァンジェリンを襲ったのだ。

 

 これはただ事ではないと察したエヴァンジェリンは、すぐさまログハウスの外へ出て空を見上げれば、そこには恐るべき光景が瞳に入ってきたのである。

 

 

「なんだあれは……!? とてつもない魔力の塊だと……!?」

 

 

 麻帆良の上空には青色をしたキューブ状の巨大な魔石らしきものが浮かんでおり、そこから膨大な魔力をエヴァンジェリンは感じたのである。

 

 

「結界が感知しなかったってことは……、転移での瞬間移動か!?」

 

 

 麻帆良には結界が張ってあり、主に対魔などの効果を持っている。

エヴァンジェリンも麻帆良の結界を利用して、色々察知できるような仕組みを作っていた。

 

 それが全く反応せずに、突如としてあのような巨大な物体が現れると言うことは、つまりあの物体ごと転移してきたのではないか、とエヴァンジェリンは考察。

 

 

「来史渡は何をして……。────昨日から定期的な報告のためにアルカディアへ出向いていたんだったか!?」

 

 

 同じく結界で転生者の侵入などを監視しているはずの来史渡……、本名メトゥーナトが、まったく動いた様子がないのをエヴァンジェリンが気が付けば、昨日からメトゥーナトは帰国のために不在だったことを思い出す。

 

 

「確かアマネとランサーも来史渡と共にアルカディアへと行っていたな……! クソッ!!」

 

 

 しかも今回はアマネとそのサーヴァントであるカルナ(ランサー)も、メトゥーナトとともにアルカディア帝国へと向かってしまい、不在だった。

アマネは魔力無効化を利用されて魔法世界消滅の儀式に組み込まれた経緯があり、そのため定期的に異常がないかを検査してもらっていたのである。

 

 

「タイミングが悪い時にやってくれたな!」

 

 

 なんで寄りによって今日やらかしてんだよ、と悪態をつくエヴァンジェリン。

せめてメトゥーナトがいれば、こんな問題であっても即座に解決しただろうに、と思い腹立たしくて仕方がない様子だ。

 

 

「ちょっとマスター! 何よあれ!!?」

 

「予想だが貴様と同じ存在が、やらかそうとしてるんだろうよ」

 

 

 当然従者となったトリスも気が付き外に出て空を見上げ、エヴァンジェリンへ言ってくる。

エヴァンジェリンはこれは転生者の仕業であり、目的は不明だが麻帆良をどうにかしようとしているのではないかと答えてやった。

 

 

「はた迷惑な……!! 学生の時ぐらいのんびり過ごそうと思ってたってのに!!」

 

「ほう? そんな気があったんだな?」

 

「当たり前でしょ!? ガクセーはガクセーらしくよ!!」

 

「それもそうか」

 

 

 トリスはそれを聞いて本気でマジでふざけんなよそいつら……、と怒りのままに地団太を踏む。

せっかく学生になって友人もできて楽しく過ごしていたと言うのに、突然こんなことをされれば頭に来るのも当然。

 

 なんか最初に学生しろと言った時、滅茶苦茶文句を言っていたのに随分と楽しそうだな、とエヴァンジェリンが聞けば、学生生活満喫してるって感じの態度を見せるトリス。

まあ、なんだかんだで学生を楽しんでるトリスに、エヴァンジェリンはそれはよかった、と思うが、その前にやるべきことがあると、上空を睨みつける。

 

 

「マスター!」

 

「茶々丸も来たか!」

 

「あれを!」

 

 

 当然茶々丸も空の異常を見てエヴァンジェリンへと焦りながら話しかけてくる。

エヴァンジェリンも茶々丸が気が付いたのを察すれば、茶々丸はかなり慌てた様子で空を指さす。

 

 

「召喚魔を大量召喚……!? あの魔力だまりの魔力を利用しているのか!」

 

「ちょっとちょっと!? どうすんのよあれ!!?」

 

「破壊するしかないだろう!? トリスは私と共に来い! 茶々丸は友人らを防衛しろ!」

 

「了解です、マスター」

 

「はーい……」

 

 

 すると、三人が上空を見上げれば、キューブ状の物体の周囲に、魔法陣が展開されていたのだ。

さらに魔法陣からは幾度となくあふれ出るように召喚魔が召喚されはじめ、麻帆良の空を覆い尽くす勢いだった。

 

 エヴァンジェリンはキューブ状の物体の魔力を用いてそれを行っていると分析し、トリスは召喚魔が大量に出現したことに驚き戸惑う。

もはや一刻の猶予もなくなってきた現状に、エヴァンジェリンは魔力の塊であるキューブ状の物体を破壊するしかないと叫ぶ。

 

 さらにエヴァンジェリンはこの状況は街や一般人にも被害が出る可能性を考慮し、茶々丸には学生寮へ行けと命じる。

茶々丸はエヴァンジェリンの命令を聞いて強く返事を返したのち、そのまま高速ですっ飛んで行った。

 

 また、トリスはこの面倒な状況に嫌気がさしており、せっかく冬休みに入ったばかりだというのにと、心の中で涙を流しながら返事をしていた。

 

 

「チャチャゼロ! 久々にやらせてやる!」

 

「ケケケ! アリガテーゼ!!」

 

 

 そして、エヴァンジェリンはチャチャゼロを連れて行くことにし、チャチャゼロの元気な返事を聞いたのちに、トリスとともに麻帆良の空へと飛び上がって行ったのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 すでにこの異常事態に動いているものがいた。覇王だ。

覇王は膨大な魔力の塊を察知して、即座に寮から飛び出して上空にあるキューブ状の物体へと向かっていた。

 

 

「へえ? 僕の目の前で、随分と大それたことをしてくれるじゃないか?」

 

 

 すでにキューブ状の周囲の魔法陣から召喚魔が出現し、麻帆良の上空を黒く埋め尽くし始めていた。

覇王はこんな大規模なやらかしをしてくれやがった転生者らしき敵や首謀者を、どうやって料理してやろうかと考えながら、召喚されたての召喚魔を吹き飛ばして突っ込んでいく。

 

 

「だったら容赦はしないよ」

 

 

 もはや手加減などせず、さっさとキューブ状の魔力の塊をぶっ壊して、まだ姿を見せぬ敵も全部ぶっ倒してやると覇王は意気込む。

 

 

「しかし、これじゃあ一般人がどうなるかわからないぞ……? 学園側はすでに動いて対処しているようだが……」

 

 

 ただ、この現状はかなりマズイことであることには違いはない。

まだ被害こそ出ていないが、この異常事態を一般人たちも気が付き始めている。

魔法使いたちもすでに行動を起こしており、対策に追われているようだった。

 

 

「まあいい、僕は目の前の召喚魔を減らしながら、進むだけだ」

 

 

 故に、さっさとこの騒動の幕を下ろしてしまおうと、それなら問題はなくなると覇王は速攻するためにさらに加速するのだが────。

 

 

「────!? なっ!? あれは!?」

 

 

 突如として覇王の目の先に、氷のように透明な物質に覆われた黒くて丸い物体が現れた。

大きさは人の頭より少し小さいものだったが、覇王はそれを見て普段見せない驚愕の表情を見せたのだ。

 

 

「クソッ!? この麻帆良を焦土にでもするつもりか!? マズイッ!!!」

 

 

 覇王はそれを黒雛の爪で掴かんで受け止め、瞬時にどうするかを思考する。

それこそ”ダイの大冒険”に登場した大規模破壊兵器、”黒の核晶(コア)”だったからだ。

 

 この黒の核晶(コア)は簡単に言えば核爆弾のようなものであり、”ダイの大冒険”にて一つ爆発するだけで魔界の大陸を吹き飛ばすほどの威力を出しており、ここで起爆すれば麻帆良を簡単に消し去ってしまうほどの超危険なものだ。

故に覇王すらも驚き焦り、この爆弾の処理に気を使っているのである。

 

 

「だが、氷系魔法で凍らせれば……!! いやこれは!?」

 

 

 ただ、黒の核晶(コア)は凍らせてしまえば爆発を止めることが可能だ。

なので覇王はすぐさま氷系魔法を使用して凍結させてしまおうとしたが、なんと、すでに黒の核晶(コア)の起爆スイッチが起動しており、強烈な光が放たれてすぐさま爆発する状態になっていたのだ。

 

 

「クッ!! 僕の巫力と魔力をすべて振り絞ってでも、全力で抑え込まなければ……!!!」

 

 

 黒の核晶(コア)は創造者の魔力を流せば起爆することが可能であり、簡単に爆発させることが可能。

この状況をどうにかするために覇王は覚悟を決め、はるか上空へと急いで飛び上がりながら、全巫力を注いだO.S(オーバーソウル)で黒の核晶(コア)を囲い込み、さらに大量の魔力障壁で覆うことにしたのである。

 

 

「──────ッ!!」

 

 

 そして、覇王がそれを行った数秒後、黒の核晶(コア)が破裂すれば、そこから膨大な光が発生。

本来ならば麻帆良すらも消滅させる威力の爆発を、恐ろしいことに覇王は無傷で防ぎきったのである。

 

 だが、その代償として覇王は、膨大な巫力と大半の魔力を失ってしまった。

これでは肝心のO.S(オーバーソウル)を使うことができない。戦力が大幅に削らたことになる。

 

 

「ほう? 黒の核晶(コア)の爆発を完全に抑え込むとはねえ。恐ろしい力だよ本当に」

 

「舐めたことを……」

 

 

 と、そこへ黒い闇と共に転移してきた、大鎌を持つ漆黒の人物が登場すれば、覇王が黒の核晶(コア)の爆発を防ぎきったことに驚いたと笑いながら言い出した。

その姿こそ”ダイの大冒険”に登場した人物である、死神キルバーンそっくりな者だった。

 

 覇王は皮肉めいたことを言うそのキルバーンらしき相手を睨みつけ、こいつの策略だと見抜く。

何せ”ダイの大冒険”にてキルバーンの顔に装着されている仮面の下には、今しがた爆発した黒の核晶(コア)が埋め込まれていたのを覇王も覚えていたからだ。

 

 

「だけど残念ながら君は肝心の巫力を使い果たしたようだね? じゃあ、死んでもらおうか?」

 

「その程度でこの僕が負けるはずないだろ? 滅ぼされるのはお前の方だ」

 

 

 キルバーンらしき敵は、大鎌を構えて覇王へと対峙。

巫力を無くした覇王の首を駆らんと、襲い掛かったのである。

 

 されど覇王には使い慣れた刀と”気”がまだ存在している。魔力も多少は残っている。

これだけあれば戦えないことなどないと、結界の札を準備しながら、そのまま麻帆良の街へと落下していったのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 女子寮の6階の643号室。アスナと木乃香の部屋。

その外から突如として、窓の中へとまばゆい光が入ってきた。

 

 

「何!? 今の光!?」

 

「アスナ! さよ! 空を見てみ!」

 

「何よこれ……!? どういうこと!?」

 

「何が起こってるんです!?」

 

 

 それを見て驚きアスナは、木乃香がすぐさま窓の外を覗けば、空にはキューブ状の物体と空を埋め尽くすほどの召喚魔が見えたのである。

アスナもさよも木乃香の横へと来て窓の外を見て、その異常事態を把握して大いに困惑。

 

 

「あっ! あれははお!? どないしてO.S(オーバーソウル)を使ってへんの!?」

 

「さっきの光と関係あるかもしれないわね……」

 

 

 木乃香は麻帆良の空へと落下しながら漆黒の人物と剣でつばぜり合う覇王の姿を見て、驚いた声を出した。

何故なら覇王が黒雛どころかO.S(オーバーソウル)すら使わず、剣のみで戦っていたからだ。

 

 それをアスナも見て、さっき窓に差した光がかかわっていると考えた。

そう、あの光は黒の核晶(コア)が爆発した光であり、覇王がこの麻帆良を守護しきった証明だったのだ。

 

 

「とりあえずパパに連絡を……、────あっ! そうだった!? 昨日からいないんだったわ!? 本当にタイミングが悪い……!」

 

 

 これはただ事ではないぞとアスナはメトゥーナトへ電話しようと携帯を取るが、メトゥーナトが昨日からいないことを思い出して頭を抱えた。

 

 

「帰ってくるのは、確か……今日の夜……!? ダメだわ! それじゃ遅くなりすぎる!!」

 

 

 さらに帰ってくるのが今日の夜、つまりまだまだ不在は続くと言うことだ。

今こんな状況では帰りを待っていたら、どうなってしまうかわからない。

 

 

「でもまだ今日中に帰ってくるだけマシだわ……。その間どうにかしなくちゃ……!」

 

 

 されど、逆に良い方向に考えるならば、メトゥーナトは今日には帰ってくると言うこと。

数日間不在だったら本気で困ったが、夜までならば持たせることはできると、前向きに考えられるからだ。

それに自分たちだけでも解決できるかもしれないし、こう言う時こそ冷静に行動しなければと、アスナは気を引き締め直す。

 

 あと、こんな時にアマネがここにいなくてよかったと、アスナは本気で思った。

こんな大事件に巻き込まれずに済むのなら越したことはないし、こんなことで不安を募らせることもないからだ。

 

 

「どうするんです?」

 

「はおを助けにいかな!」

 

 

 さよはこの状況、一体どうすればよいのかと木乃香とアスナへ聞けば、木乃香はまずO.S(オーバーソウル)を使っていない覇王を助けなければと声を上げる。

 

 

「あの巨大な水晶から湧き出てる召喚魔を何とかするのが先よ!」

 

「せっ、せやけど……!」

 

「覇王さんなら気と剣術だけでも強いんでしょ? だったら私たちがやるべきことを先にするべきよ!」

 

 

 だが、アスナはそれより先にやることがあると木乃香へ叫ぶが、木乃香は迷いを見せて戸惑った。

木乃香は覇王も異常事態に襲われていると察しており、助けに行きたくて仕方がなかったのだ。

 

 されど、アスナは覇王は大丈夫だと考える。

何せあの刹那の剣と交え修行させたり、影分身すらも操る力を持つ。

その力を信用しているのであれば、自分たちは別の行動をするべきだとアスナは木乃香へ叫んで告げた。

 

 

「……そうやった。はおにもそう言われそうやし、ウチも頑張らなアカンな……!」

 

「そうです! その意気です!」

 

 

 アスナの言葉を聞いた木乃香は、覇王のことを想って信じることにした。

それに覇王は助けに来たところで、アスナと同じようなことを言ったはずだと、木乃香は気を引き締めなおす。

さよも木乃香の気合を見て、ガッツポーズしながら笑った。

 

 

「すでに戦闘できる人たちは召喚魔を減らしに出てるみたいね」

 

「せっちゃんもおるようやな!」

 

 

 また、アスナが再び窓を開けて外を見れば、すでに刹那たちが戦いだしていた。

 

 

「せやったら、さよ!」

 

「はい! あっ……! ちょっと待ってください!」

 

「さよ!? どないしたん!?」

 

 

 ならば自分たちも、と木乃香がさよとO.S(オーバーソウル)しようとしたその時、さよは何かに気が付いてストップをかけ、木乃香は驚いて理由を聞く。

 

 

「S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)さんが来てます!」

 

「っ、ホンマや!?」

 

 

 さよが驚いた理由は、なんとS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)が、この部屋の窓の外までやってきていたからだ。

木乃香もそれに気が付き、再び驚いた。何せ覇王の持霊の一体であり、覇王が最も相棒として接しながら操っている存在だからだ。

 

 

「覇王さんが扱えない今、それならこのかに扱ってもらおうと考えたのかもしれないわね」

 

「はお……」

 

 

 それを見たアスナは自分が考えた憶測を木乃香へと話した。

あの覇王が今O.S(オーバーソウル)を使ってないのであれば、きっとそれはO.S(オーバーソウル)できない思いもよらぬ何かがあったのだろうと。

であれば、自分の愛弟子である木乃香に自分の最大の持霊であるS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を貸し、戦いを有利にすることにしたのだと。

 

 アスナの語りを聞いて、木乃香は覇王のことを想い、静かに遠くで落下しながら戦う覇王の姿を見た。

O.S(オーバーソウル)を使わず、いや、きっと使えずに剣一本で敵と対峙し、幾度となく衝突するその雄姿を、木乃香は目に焼き付ける。

 

 

「うん! せやったら……、ウチ、はおの分までやったる!」

 

 

 覇王が頑張ってるのに、自分に力を貸してくれた。

であれば、その分までやらなければと、木乃香はさらにやる気を出して声を上げた。

 

 

「O.S(オーバーソウル)! さよ&S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)!!」

 

「一緒に頑張りましょう! S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)さん!」

 

 

 それなら、覇王から貸し与えられたその力を、自らの武器へと変えるために木乃香はその力を操る。

さよもこれから木乃香が行おうとする行動を察して、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)へと元気よく話しかければ、木乃香のシャーマンとしての力によってS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)と一つとなり姿を変えた。

 

 ────複霊甲縛式O.S(オーバーソウル)として。

 

 

…… …… ……

 

 

 また、状助も寮から外に出て空を見れば、上空に異常な光景を目の当たりにした。

 

 

「覇王が急に飛び出していったと思ったらよぉ。なんつーことだよこいつぁよぉ!?」

 

 

 覇王は魔力の塊が出現した直後に、それを感知して部屋の窓から飛び出していった。

あの覇王が自分に何も言わずに飛び出したのは異常だと思った状助は、何があったのかを確かめるために寮の外に出て空を見上げ、その光景を見て確かにこれはヤバイと本気で思ったのである。

 

 

「どうした状助? うお!? なんだぁこりゃぁ!?」

 

「意味がわからねぇ状態だぜぇ……」

 

 

 そこへ昭夫が出てきて状助の視線の先を見れば、キューブ状の物体に取り巻く魔法陣から、召喚魔がどんどん出てくるのを目にしたのだ。

状助もなんでこんな状態になってんだ? とかなり混乱した様子を見せる。

 

 

「とりあえず俺たちができることは、みんなを避難させることだけだぜ」

 

「おめぇのスタンドなら戦えるんじゃあねぇのかあ?」

 

「戦えるぜぇ? だが今はそれより避難優先だろうが!」

 

「そ、そうだよなぁ」

 

 

 こりゃ召喚魔が襲ってきたらマズイと考えた昭夫は、友人らなどを避難させるのが先決だと状助に話せば、状助は昭夫のレッド・ホット・チリ・ペッパーで倒せるだろと呑気に言う。

 

 当然昭夫はできると断言するが、あの数の召喚魔を見て友人らが混乱した方が危ないと考えてそう言えば、状助も納得。

 

 

「そういや三郎の奴は!?」

 

「おめぇの友人か?」

 

「一般人的な能力の転生者なんだよ。このままじゃマズイ!」

 

「だがよぉ、その前にとりあえず避難誘導が先だぜ!」

 

「お、おう……」

 

 

 だが、そこで状助はもう一人の友人である三郎のことが心配になった。

すでに冬休みに入っており、この寮にいるのかわからないのでこの状況は危険だと思ったのだが、昭夫は今は目の前にあることを対処しろと正論を解き、状助はそれに従うことにした。

 

 

「おっ、ホールド先生が来て説明始めたぜ?」

 

「とりあえず夏休み最後のイベントの続きの扱いにするみてぇだな……」

 

 

 そこへ急いでやってきた男子中等部の魔法先生アルスが、寮の入り口に人を集めて集会を開き、説明会を始めたのである。

一般人への説明では学園祭と夏休みの最終日から続くイベント、火星人戦争の続きということにしたようだ。まあ、もうそれしか手がないとしか言いようがない。

 

 

「でもまぁ、この前のように戦闘はさせねぇみてぇだな。まっ、そりゃそうだよなぁ……」

 

「逃げ切れば勝ちってことにしてんのか。まっ、俺たちも指示に従うしかねぇな」

 

「やれやれだぜぇ……」

 

 

 とは言え、相手が完全に未知の存在だと言うことで、参加方式が戦闘から逃亡へと変更され、避難訓練のような扱いとなっていた。

状助もそれを聞いて納得し、昭夫もとりあえずアルスの指示に従うことに決めた。

 

 また、こんな混乱を引き起こしてる連中に対して、状助は呆れてため息を吐く。

なんでこんな時期にやらかしてくれてんだよ、チクショー! という気持ちが強いのである。

 

 

「……心配だなぁ、こいつはよぉ」

 

 

 ただ、状助にはもう一つ、心配することがあった。

それをぽつりとこぼして、もう一度空を見上げてその惨状を確認したのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 同じく空を見上げて悪態をつく女性が一人、転生者で魔法世界から麻帆良にやってきていたナビスだ。

 

 

「やってくれましたね!」

 

「こんな場所であれほどの規模のテロ活動なんて、本当によくやりますわ」

 

 

 もう原作イベントなんて残ってないのになんか事件が発生しているのを見て、これは転生者のやらかしだと理解して普段は見せない苛立ちを見せるナビス。

そのサーヴァントであるロビンフッド(アーチャー)も、勘弁してほしいなあ、という顔を見せていた。

 

 

「とりあえず私たちも召喚魔を減らすことにしましょう! あの魔力の塊の魔力がなくなれば、落ち着くはずです!」

 

「っても随分とため込んであるみたいですぜ? あとどのぐらいでなくなるって言うんですかい?」

 

「まだ十数時間は消えないでしょうね」

 

「いやぁ、そりゃまったくもって困ったもんだ」

 

 

 召喚魔を大量に召喚できているのは、あのキューブ状の物体である魔力の塊があるからだと見抜いたナビスは、そこから魔力がなくなれば召喚は止まると言う。

が、それってどんぐらい? とロビンが訝しんだ表情で聞くと、まだまだ十数時間ぐらいかかるだろう、と渋い顔でナビスは言葉にした。

 

 十数時間かぁ、とロビンは思って肩を落とすが、んなことやってる場合じゃないと気合を入れなおし、再び上空を見上げた。

 

 

「行きますよアーチャー!」

 

「へいへいっと! マスターの命令には従いますよ!」

 

 

 もはやこちらもなりふり構っていられないと言う様子でナビスは、まずは大量に湧き出して地上に降り注ぎかけている召喚魔を減らすことにした。

ロビンへとそれを命じると、ロビンもやる気がある声で対応し、とりあえずは麻帆良の高い建物の屋根の上へと移動するのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 当然カギも教職員宿舎の部屋で空を見上げて、この状況を把握していた。

 

 

「ほげーっ!? なんだよこれ!? ふざけんなよクソ!!」

 

 

 ふと、何か変だなあ、と窓を開けて空を見たカギは、キューブ状の物体とそこに発生する魔法陣、さらにその魔法陣からゴキブリのごとく湧きまくる召喚魔を視界に捉えて狼狽えた。

その数秒後、逆に怒りが増してきて、やりやがった!! と声を張り上げる。

 

 

「一体これはどうなってるんだ!?」

 

「きっと”転生者”がやらかしてんだよ!! 腹が立つぜぇ! ここで無茶苦茶してんのがよ!!」

 

「でも、一体どうして!?」

 

 

 ネギもカギの様子がおかしいのを見て、窓から身を乗り出して空を見上げて驚きの声を上げる。

そこへカギがこの原因こそ転生者とやらのせいだと判断し、さらに怒りを募らせて叫んだ。

が、ネギはその転生者とやらが、何故こんなことをし出したのか理由がわからず、困惑した様子を見せる。

 

 

「テロリストまがいな連中の思考なんざ知らねえよ! ただまぁ、言えるとすれば欝憤晴らしってところじゃねえか?」

 

「欝憤晴らしって!? そんなことでこんな無茶苦茶を!?」

 

「そういうのがいるんだよ、世の中にはな! 銀髪クソヤローもそうだったしよ!!」

 

「そんなことが……」

 

 

 と言っても、カギとてそんなイカれた連中の心情まではわからんと声を荒げる。

されど、こういう場合大抵が八つ当たりだとカギが言えば、ネギは信じられないと言う様子で驚き大声を出す。

 

 ただ、カギはこういうことをその程度でやらかす銀髪イケメンオッドアイの野郎を見ているので、ありえると力説。

そう言われたネギは悩む様子を見せ、世の中の闇とやらを垣間見た気分を味わっていた。

 

 

「兄貴!? こりゃ一体!?」

 

「カモ! お前はここで大人しくしてな!!」

 

「だ、だけどよ!?」

 

「マジでこりゃアブネーぜ……。今のとこでけぇ被害はねぇみたいだが……」

 

 

 さらにカモミールも気がついて空を見て、ギャーッ! と叫びそうになるのを堪えてカギに聞くが、もうカギはその問いに答えず指示を出すだけだった。

もうこんな状況になってしまっているので、時間がないと考えたからだ。

 

 が、カモミールはここで待機と言われてたがついて行くと言う意気込みだけは見せるも、カギはこの危機的状況を考えてやめとけと言う。

また、まだ麻帆良の都市には被害らしき被害がなさそうなのが救いだと、カギは思ったのである。

 

 

「っ! 学園長からの電話だ! はい、ネギです。はい、はい……」

 

「集まって会議してる余裕もねぇって感じか……」

 

 

 そこへネギの携帯へと学園長から連絡が入り、そのまま説明を受けるネギ。

カギはその対応を見て、魔法使いが集まって集会すらできない程、状況が切迫していることを察した。

 

 

「とりあえずは生徒たちに状況について、学園祭と夏のイベントの続きとして説明をして避難誘導してほしい、と頼まれました」

 

「なるほどなぁ……。で、それはネギ、お前がしてこい」

 

 

 ネギは学園長から自分たちの生徒の安全の確保に努めながら、イベントの続きだと説明しておくようにと指示を受けた。

その説明にカギも腕を組み、とりあえずはそれしかないか、と納得した様子を見せた後、学園長ん指示はネギに任せると言葉にした。

 

 

「えっ!? でも!?」

 

「俺はとにかく、まずは召喚魔を減らせるだけ減らしておくぜ。分担作業ってやつよ。その方が効率いいだろ?」

 

「……そうだね。わかった、そっちは頼んだよ」

 

「そっちもな! おっしゃ行くぜぇ!!」

 

「兄貴ー! 言われた通り俺っちはここで応援してるぜー!!」

 

 

 ネギは二人でやらないのかと驚くが、カギは片方が生徒の支援守護をやり、片方が敵を蹴散らした方がいいと力説。

そのカギの言葉にネギも納得した様子を見せ、だったらしっかりやってくれと言うではないか。

 

 ネギは守護なら自分の方が上だと言う自信があり、火力ならカギの方が上だと言う理解があっての判断だった。

 

 ならば即座に行動だと、カギはネギへと声をかけたのちに、そのまま杖をスケボーのように乗って上空へと舞い上がった。

ネギも自分の生徒たちがいるだろう女子寮へと走り出し、カモミールはそんな二人を見送りながら無事を祈るのだった。

 

 

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