麻帆良を覆い尽くす召喚魔を、ただひたすら倒すものの姿があった。
「うおおおおおぉぉぉぉッ!!」
「ハアアァァァァァァッ!!!」
カズヤと法だ。
最終形態は破壊規模を考えると麻帆良で使うのは危険だと判断し、第二形態と真・絶影で戦っていた。
「ちぃ! 倒して倒してもきりがねぇ!」
「あの巨大な物体を破壊しなければ止まらんだろう」
とはいえ、この状態でも召喚魔程度ならば簡単に倒せのだが、いかんせん数が多すぎて全く減ってないのが現状だ。
この状況を打破するためにはやはり召喚魔を増やし続けている、空に浮かぶキューブ状の物体を叩かなければならないと、法は空を睨みつける。
「だったらぁ!! ぶっ壊してやるだけだあぁぁッ!!」
「両断するだけだあぁぁッ!!」
そう言う事なら話は速い方がいいと、二人はキューブ状の物体へと突撃する準備を始めた。
だが、その時、ふと黒いローブの何者かが、二人の背後に現れたのだ。
「なっ、なんだテメェはっ!?」
「!? 何者だっ!?」
カズヤと法は咄嗟に敵だと思われる相手の方を向くが、むしろそれがその相手の罠だった。
「お前たちは脅威だな。だが、魔法使いじゃない。少しの間、寝ていろ」
「なんだっ!? なんだってんだっ!?」
「なっ!? これはっ!?」
黒いローブの男はその瞬間を狙って、カズヤと法の精神を
二人は驚きながら精神が精神世界へと引き込まれていく。魔法使いではない二人の弱点は、魔法をよく知らぬが故に魔法への対処が不可能な部分にあった。
「
二人の精神が
残されたのは精神が閉じ込められて動かなくなった、二人の体だけであった。
…… …… ……
同じように麻帆良の空で、魔法と宝具をぶっぱして戦うカギの姿があった。
「チクショー! 召喚魔だけじゃなく下っ端どもまで出てきやがったッ!!」
そのカギの前に召喚魔だけでなく、今度は”月の裏”の構成員が登場して魔法をぶつけてきたのだ。
カギはこいつらの実力と灰色に統一されたローブを纏っていることから捨て駒か下っ端だと推測するが、召喚魔と同時攻撃してくるので普通に鬱陶しく感じてイラつく。
「邪魔だーっ!! どけーッ!!」
それにこんな連中を相手にしている暇も余裕もない。
目指すは召喚魔を無限に発生させ続けているキューブ状の塊だからだ。
これさえ破壊すればある程度事態は治めることができるはずだと踏んだカギは、そこを目指して飛んでいた訳だが、当然妨害される訳で。
もはや連中の妨害に苛立ちを感じたカギは、魔法をぶっぱしながら叫ぶ。
「ちぃ! 下っ端のくせにやたら練度だけはありやがる……!」
だが、下っ端とは言えそれなりに熟練の魔法使いであり、連携でカギをじりじりと追い詰めていく。
焦りに彩られたカギの心境をさらに追い詰める敵の行動に、カギは一旦冷静になるべきだと考え、足を止めて状況を客観的に見る。
「召喚魔の数も減ってねぇ……、なんか鬼神兵まで出てきやがったし……。こりゃいよいよマズイよなぁ……」
すると、倒した分だけの召喚魔がすでに補充されていて、未だに麻帆良の空は召喚魔の姿でいっぱいだ。
さらには上空から召喚陣が出現すれば、そこから巨人の兵士が登場したではないか。
これは魔法世界で使われている兵器であり、名を鬼神兵と言う。
「そういや、ゆえたちは大丈夫なんだろうか……? 聞いてみりゃいいか……! って向こうからかかってきたじゃん!」
そこでカギは自分の従者である夕映やその友人たちのことが心配になり、仮契約カードでの念話をしようと考えたが、その時、ハルナの仮契約カードから声が聞こえてきたのだ。
カギは周囲の召喚魔を
『おーい! ハルナー! 大丈夫かー!?』
『こっちはネギ君のおかげで大丈夫だよ!』
そしてカギはハルナとの仮契約カードを額に当てて念話を送り、そちらが無事かを尋ねれば、ハルナも元気そうな声で無事を伝える。
『ハルナ、そっちはどうだ? ネギが来て説明してくれただろ?』
『うん、説明されたよ。でもとりあえずネギ君が寮全体に障壁を張ってくれてるみたいだから、待機ってことになってるよ!』
『あいつそんな大規模な障壁張れるようになったのかよ……。まっ、つまり俺の指示は的確だったってこったな!』
カギはネギに生徒たちへの説明と指示を任せていたので、ハルナへネギが来たはずだと言えば、ハルナもそれを肯定。
先ほどネギが飛んでやってきて、寮にいた3-Aの生徒たちにも説明したので、ハルナも現状を理解していた。
さらにネギが女子寮全体に巨大な障壁を張り巡らせ、結界を構築して防御を行った。
これで寮の安全はだいぶ確保されており、生徒たちは自室で待機と言うことになったと、ハルナがカギへと説明。
それを聞いたカギは、ネギの防御力パねぇな……、と驚きながらも、俺の判断は間違ってなかったな、と自画自賛しだした。
また、会話には出てこないが、夏美たちの部屋で居候している小太郎も女子寮の守護に回っており、召喚魔などを蹴散らしてくれていたりする。
『んじゃあ、ゆえも大丈夫だな!』
『あー……、ゆえとのどかは二人で出かけてるんだよ』
『ああぁぁ!? 嘘だろ!? やべーじゃん!!』
だったらもう夕映も安全だろ、とカギは安堵したのだが、ハルナは夕映とのどかは寮にいないと、おずおずと言い出したのだ。
それを聞いたカギは外ってこの状況だぞ!? と驚き慌てて叫び、かなりテンパって頭を抱えだした。
『だからネギ君ものどかを召喚してみるって言ってたから、カギ君もゆえを召喚してあげて!』
『任せとけって! んじゃ、呼び出してみるわ』
『よろしくねー!』
ただ、外にいようが近くにいるなら、仮契約カードで召喚が可能だ。
ネギはすでにそれを行おうと準備しているようで、ハルナがそれをカギへと伝えれば、カギもそれを思い出して冷静さを取り戻す。
で、召喚しなきゃならんからと、カギは念話を切ることにして、ハルナも夕映を頼むと残して会話を終わらせた。
「って、今度はゆえから来たか」
と、その直後に今度は夕映の仮契約カードから声が聞こえてきた。
『大丈夫か!?』
『今は何とか……。風の障壁を張り巡らせて防御してるところです』
そこですぐさまカギは、夕映の仮契約カードを額に当てて念話をして無事を確認しようと声を出せば、夕映もとりあえず会話のために防御をしていると説明。
夕映はのどかと出かけている最中にこの状況に出くわし、こっそり魔法で撃退しつつ難を逃れていた。
それでも敵の数は一向に減らないので囲まれてしまい、風花旋風・風障壁にて周囲から身を守りつつ、カギに連絡したのである。
『やるじゃん! んで、のどかも一緒か?』
『はい。のどかもネギ先生に召喚してもらおうとしてるんですけど、そうすると私一人が残ってしまうので……』
『二人いっぺんに召喚されたいっつーことか。わかったぜ! んじゃ、タイミングはそっちで頼むわ!』
『はい! 少し待っててほしいです』
カギは夕映の魔法使いとしての腕を喜びながら褒め、ならのどかもいるのかと聞けば、夕映はのどかもすぐ横で召喚してもらうために、ネギと連絡を取り合っていると話した。
ただ、このまま片方だけが召喚された場合、一人だけ取り残される形になってしまうのが不安だと夕映は言葉にすると、カギはその意図を理解してこの場にいないネギと合わせて召喚すると答え、ネギと念話しているのどかと話し合ってタイミングを決めてくれと言う。
夕映はカギの言葉にしっかり返事をしたのち、のどかとの会話のために少しだけ念話を切った。
『大丈夫です。今、召喚してください!』
『よっしゃーッ!!』
その数秒後に夕映から念話で召喚を頼んできたので、カギはすぐさま大きな声で返事をして仮契約カードを掲げる。
「”召喚! カギの従者、綾瀬夕映”!!」
そして、カギは召喚の呪文を唱えれば、カギの前に発生していた召喚陣から、夕映が光と共に出現したのである。
「助かりました。ありがとうございます」
「従者を助けるのは魔法使いの務めだぜ!」
夕映はカギの方を向いて、ペコリと頭を下げてお礼を言うが、カギはそれも当然のことだと笑って豪語。
「あっ、もう一人まき絵が俺の従者だったわ。ちょいっと連絡させてくれや」
「わかりました。召喚魔がちらりと近くに見えるので、とりあえず風の障壁を用意しておきますが、数分しか持たないので手短にお願いするです」
「頼りになるなぁ! ちょっと待っててくれよん!」
と、そこでカギは最後にもう一人従者がいたことを思い出した。
それは総督府でハルナから言われて、渋々仮契約をした相手のまき絵だ。
別にまき絵がどうこうと言う理由で渋々仮契約をした訳ではなく、そうしろとハルナに言われたから仮契約自体が渋々だっただけだ。
まき絵も従者になったのだからとりあえず安否の確認しとかなきゃな、と思ったのである。
それをカギは夕映へと伝えると、ならもう一度同じ風障壁を使うから連絡は早めに終わらせてほしいと言い、夕映は呪文を唱えて障壁を展開。
カギと夕映を中心にした周囲に強風の竜巻が発生し、障壁が二人を守る。
これで安心して連絡できるぜ、とカギはすぐさままき絵の仮契約カードで念話をすると、まき絵は驚いた様子で応答。
まき絵は仮契約カードの説明でアーティファクトが出せるとはカギから教えてもらっていたが、念話機能があるよ、と教えられてなかったので驚いたのだ。
それとまき絵は先ほどまでずっとアーティファクトとして使っていたので、念話ができなかった。
なのでカードに戻した途端にカギから念話が飛んできたことに、大層驚いたというのもあった。
で、まき絵はそこで安全地帯へ逃れることはできたが、裕奈が酷い怪我をしてしまったと、カギへ泣きそうになりながら説明。
まき絵は裕奈とアキラとともにクラッシュで転移し、安全な場所へと移動した後のタイミングでの念話だった。
カギもまき絵の慌てぶりから深刻だと考え、まずは敵よりも生徒の怪我を見なければと、そちらへ向かうことにすると、夕映も話を聞いてそれがいいと同意。
そしてカギと夕映の二人は、まき絵に教えてもらった安全地帯へと即座に移動を始めたのだった。
…… …… ……
同じく、刹那も白い翼を生やして上空で召喚魔を刀を使ってぶった切り、避難する一般人のサポートを行っていた。
「なんとういう敵の数だ……!」
斬っても斬っても減らぬ召喚魔。
その数に流石の刹那も圧倒され、少々の焦りを感じていた。
「一体何が起こっているんだ……?」
また、何故こんなことになってしまったのかもわからない刹那は、ただただ上空に浮かぶキューブ状の物体を睨む。
「だが、それならばただ切り捨てていくのみ! 神鳴流奥義”斬魔剣”っ!!」
されど、やることは変わらない。
迫りくる召喚魔を、斬って斬って斬りまくる。刹那は奥義を使い叩き斬りながら、避難の邪魔になる召喚魔たちを切り刻み続ける。
「大丈夫か!?
「バーサーカーさん! こっちは大丈夫です!」
そこへ召喚魔をぶった切りながら
「まったく派手にやってくれるぜ……っ!」
「本当にそうですね……」
バーサーカーも現状を見て、歯ぎしりして苛立ちを見せる。
平和だったこの麻帆良でこんな馬鹿げたことをやらかす奴がいると言うことに、かなりご立腹な様子だ。
その気持ちは刹那も同じであり、表情こそあまり変わらないが、内面では怒りを燃やしているほどであった。
「覇王さんも苦戦しているようです」
「あぁ……、得意の技を封じられてるみてぇだな」
「だからですか」
また、覇王は地上に降りてからもずっと一人の敵と戦い続けていた。
覇王に決定打が存在しないのか、ずっと攻防を繰り返しているだけだったのだ。
刹那は召喚魔を減らしながらそれを見ると、バーサーカーは覇王が普段使っている
「だが、アイツはんなもんなくたって強ぇ。そうだろ刹那?」
「そうですね……!」
とは言え、覇王は
戦い続けてはいる覇王だが未だに傷一つ見られない。確かに膠着状態に見える状況だが、それでも遠目からならまだまだ問題のない様子だった。
バーサーカーがそれを言ってニヤリと笑えば、刹那も静かに肯定して微笑んで見せた。
この二人も覇王の強さを理解しているので、覇王のことを高く信頼しているのだ。
木乃香は現状の覇王を見て取り乱してしまったが、刹那は特に大きく焦る様子を見せなかった。
それは刹那は木乃香とは違い、覇王と剣を交えたことがあるからだ。
木乃香はシャーマンとしての指導を受けてはいたが、模擬戦などはしたことがなかった。
刹那は剣術指南を多少なりにしてもらったこと程度だが、何度も手合わせをしたことがあった。
その違いがあったので、刹那は覇王が剣一本でもクソ強いのをしっかり理解しているのである。
「とりあえず、今はまだ避難している一般人の防衛が先決だな!」
「行きましょう!!」
ただ、未だに一般人の避難は完全に終わった訳ではない。
避難が終われば攻勢に出れるが、まだその時ではないとバーサーカーは考え、まずは一般人の対応からだと行動し、刹那もバーサーカーに続くのだった。
…… …… ……
アスナと別行動で召喚魔を撃退するため、上空で戦う木乃香。
さよと
その名は白烏・覇光。
今回特別に編み出された
されど、胸の部分には
さらに足には巫女服の袴のような武装が追加されており、展開することで伸縮自在な鳥の足のようなクローとなる。
それと前と変わらず、両腕の扇のように折りたためる翼で敵を切り裂く。
「召喚魔の数が減らへん……。増え続けとるからなんかな……?」
ただ、召喚魔をいくら倒してもキリがないことに、木乃香は困ったと言う表情を見せる。
思いのほか倒しているはずなのだが、減ったようには見えなかったからだ。
それもそのはず、未だにキューブ状の魔力塊の周囲から召喚魔があふれ出ている状態であり、それを何とかしないか魔力がなくならない限り召喚魔が今も増え続けているせいだ。
「っ!? 巨人!? そないなものまでっ!?」
それだけではなく、突如上空から魔法陣が出現したかと思えば、そこから巨人が出現して麻帆良の地上へと落ちてきたのである。鬼神兵だ。
「せやけど、ウチやってその程度ならっ!!」
だが、巨大な敵が現れようとも、木乃香は怯むことなく果敢に挑む。
「”鬼火”っ!!」
そして、木乃香の
木乃香は何度も覇王が使っていた鬼火を見て、自分も真似できるかもしれないと思ったのだ。
「流石にはおのようには行かへんなぁ……」
だが、真似はできても巫力の差は絶大だ。
覇王は”麻倉ハオ”の能力を貰い圧倒的な巫力を得て、さらにこの世界で二度も転生する際にあの世で修行し続けた。
そのおかげで馬鹿みたいな巫力を得ており、その数値の暴力でぶん殴ることが可能だった。
されど木乃香にはそんな巫力はない。
シャーマンとして覇王の下で修行してきたからには中途半端な数値ではないが、それでもその差は月とすっぽん。
まあ、地獄などのようなあの世で修行していないのだから仕方がないのだ。
故に、威力は木乃香が思っていたよりも威力が出なかった。
まあ、それでも鬼神兵一体を一撃で吹っ飛ばすぐらいは、余裕の火力が出ているのだが。
「おっしゃっ! まだまだ行くえーっ!」
とりあえず敵が倒せることがわかった木乃香は、殲滅速度を上げてどんどん召喚魔や鬼神兵を破壊していくのだった。
…… …… ……
同じように召喚魔をぶん殴って炎で焼き尽くす数多。
「チクショウ!! なんだってこんなことになってやがんだ!?」
数多とて麻帆良の惨状には驚きを隠しきれない様子であり、正直頭を抱えたくて仕方がないのが現状だ。
それでも一般人を庇いつつ召喚魔を減らさなければと、拳を振るって戦い続ける。
「昨日から来史渡のおっちゃんがいないってのによ!!」
また、数多もメトゥーナトが不在なのを知っており、いればこんな事件瞬殺なのになあ、と愚痴る。
いない時を狙ってきたのか、たまたまいなかったのかは数多にもわからないが、とにかくいないものはあてにできないと、気を引き締める。
「焔のやつも今は戦えねえだろうし、俺がその分頑張るしかねぇな!!」
それに数多は義妹となった焔が、この旧世界では力が発揮できないのを考え、自分がとにかくやるしかないと意気込む。
皇帝の指輪で旧世界へ入った魔法世界人は、世界樹が発光したりして魔力が滾らない限り、全力を出せないからだ。
なので、数多は焔の分まで敵を減らそうと、さらに炎を爆発させて召喚魔を燃やし尽くすのだった。
…… …… ……
そして、裕奈たちが去った後のトリスとドーラックとの戦いは、完全にトリスが優勢で進んでいた。
「グギャアアァアァァッ!?!?」
「遅いわよ」
トリスの戦法は超高速移動からのヒットアンドウェイ。
対してドーラックは傀儡魔法での漆黒騎士アビスガードを作り出して戦わせる戦闘方法。
アビスガードを作りだす際、ほんのわずかだが時間がかかる。
その隙にトリスはドーラックへと蹴りをぶち込み、槍のような足の具足でドーラックを串刺しにしていく。
はっきり言おう。トリス相手にドーラックは力不足だ。
アビスガードを何度も作り出したところで、その瞬間に破壊されて消滅させられていくだけであり、その作り出すわずかな時間でドーラックへと攻撃してくるのだから勝ち目などあるはずがない。
「なんだこいつは!? なんだというのだぁ!?」
「今はただの、貴方が狙ってたゆーなのお友達よ」
「ほざくなっ!!」
ドーラックは突然現れたトリスに、ただただ戸惑い串刺しにされていくだけだった。
しかもご丁寧にドーラックが刺された場所は、裕奈が攻撃された場所と同じ場所だったのだ。
それだけトリスは裕奈を傷つけたこの野郎に激怒している証拠であり、どうやってぶちのめしてやろうか考えながらボコボコにしているのである。
もはやズタボロになっていくだけのドーラックは焦りながら、この女は誰だよと叫べば、トリスは冷徹な声で淡々と答えてやった。
されど、答えられたと言うのにドーラックは、むしろ怒りをあらわにして叫ぶ。
この女の存在のせいで、自分の計画が台無しになったからだ。
「口調が乱れてるわよ? 追いつめられて素が出てきたのかしら? 最後までキャラは作っておかないと情けないわよ?」
「ふざけているのも今の内だッ!!」
トリスは内心怒りがマグマのようにぐつぐつと煮えたぎっている状態だ。
それでも技は冴えて乱れず、声を荒げることもなく思考も研ぎ澄まされており、的確にドーラックを狙い撃ちにする。
逆にドーラックは怒りで余裕がなくなってきており、作っていたキャラが崩れて荒々しい声を張り上げる始末。
トリスはそんなドーラックを見て煽るようにそれを指摘すれば、ドーラックはさらに怒り狂って魔法陣を足元に展開して叫ぶ。
「漆黒騎士! 最大召喚ッ!!」
「ふうん? 結構な数ねえ」
すると、周囲にも魔法陣が大量に出現し、そこから漆黒騎士が大量に出現したのである。
この大量の漆黒騎士精製はドーラックが作り出せる限界の数であり、もはやなりふり構わないと言う態度の表れだった。
が、トリスはそんな数の漆黒騎士を見たところで、別に、という態度だ。
はっきり言ってこの程度じゃ脅威たりえない上に、つまらないものが増えただけとしか思ってないからだ。
「お前の蹴りなどシールドアビスガードが束になれば……、────ガアアアッ!?!?」
そこでドーラックは自らの力を過信し、盾を持ったアビスガードを並べて防御を行う。
されど、トリスはその盾ごとアビスガードを全て貫き、楽々とドーラックを蹴り飛ばして串刺しにして見せた。
ドーラックはあり得ないと言う表情をしながら、苦悶の声を叫ぶ。
「束になれば? 防御できると思ってたわけ?」
本当に、本当につまらないものを破壊したと言う様子で、トリスはドーラックを見下す。
とは言え、怒りに燃えていると言うのにトリスには慢心など存在しない。あるのは完膚なきまでにこの男を叩き潰して、二度と立ち上がれない程再起不能にしてやると言う意志だけだ。
「ううぅぅぅ……。馬鹿な…………。伍海の”豊かの海”を賜ったこの僕が……、何故こんな女ごときに……」
「女ごときですって? よくない発言ね。今どき流行らないのよそういうの」
今の一撃で脇腹に穴をあけられたドーラックはと言うと、ゆっくりと震えながら立ち上がりつつ、こんなことは悪夢だと言うような言葉を言い出した。
目の前のこの女ごときに負けるはずがない。月の裏の幹部となった自分の魔法が、まるで歯が立たないなどとあろうはずがないのだと。
が”女ごとき”などと言われたトリスは、その女にズタボロにされている癖によく言う、思いながら、”女ごとき”なんて言う単語を使う時代は、もう終わりを迎え始めていると言ってやる。
「ぐあっ!? ぐっうぅぅ!! アビスガード! 全員攻撃ッ!!」
「波状攻撃されても当たらないわよ? ナメないでほしいわね」
んで、そんなことを言いつつトリスは、何度も何度もドーラックを超高速で蹴り飛ばし続ける。
ドーラックはこのままではマズイと考え、漆黒騎士へと命じて接近攻撃と遠距離攻撃を交互に行い畳みかけた。
だが、トリスはその全てを超高速で移動して回避し、漆黒騎士を破壊しまくる。
「この槍貰うわよ!」
「ランスアビスガードの槍をっ!?」
さらには槍を持ったランスアビスガードの槍を奪い去り、そのまま斬り裂いて破壊。
トリスが槍を奪ったのを見たドーラックは驚きながらも警戒するが、その次の瞬間────。
「久々だけど、見よう見真似の”ハーケンディストール”ッ!!」
「ギイヤアアアアァァァッ!?!?」
超高速で動き回りながら、槍をすさまじい速度で振り回したトリスは、一直線に漆黒騎士が固まってる場所へと突撃し、その技名を言葉にする。
それは墓守り人の宮殿での戦いでバロンの弟子ハルートが操り、それを食らったトリスが真似してバロンへと向けて使った必殺の技、ハーケンディストールだ。
その一撃で漆黒騎士の全ては真っ二つに斬り裂かれて消失し、ドーラックも衝撃波で吹き飛ばされて壁に激突してそのまま倒れた。
「馬鹿な……。今ので全滅だと……!? ありえん……、ありえんぞっ!?」
限界の数まで作り出したアビスガードが全て破壊されたのを見て、ドーラックは戦慄して絶望した。
たった一撃の技だけでこうも簡単に自分の手札を全て失うなど、もはや悪夢以外何ものでもない。
「現実を見なさい? そして、とどめは私の最強の攻撃で刺してあげるわ。────文字通りに」
さらにトリスはその加速をつけたまま、渦巻く魔力を全身に乗せて、立ち上がったドーラックへと一直線に飛んでいく。
まさに投擲された槍のごとき直進と、放たれた弾丸などがスローに見えるほどの速度だった。
「”
「グガアアアァァァッッッ!?!?!?!」
そして、トリスはその宝具の名を呼べば、ドーラックの体へと足の具足が深々と突き刺さった。
ドーラックは串刺しになった痛みと衝撃で大きな叫び声をあげれば、そのまま背後に吹っ飛んで壁にめり込みピクリとも動かなくなったのだった。
「私を怒らせたあなたが悪いのよ」
トリスは動かなくなったドーラックを見おろしながら、ドーラックの敗因をぽつりと口に出す。
それは友人である裕奈たちを傷つけ、自分の怒りを買ったからだと。まあ、怒ってなくても負けてないけど、と本気でトリスは思っているが。
「まずは、ゆーなたちが無事かを確認しに行かないと……」
残心を残しつつドーラックの状態を見て、完全に動かない様子に大丈夫だと思ったトリスは、次に裕奈たちの姿を確認しに行くことにした。
あの水を移動する力、
安全な場所へ移動したと思われるが、そこが本当に安全なのかはわからない。
故に、空の召喚魔を蹴散らしながら、彼女たちの安否を確認しようと、トリスは再び行動を開始したのだった。