覇王はキルバーンそっくりな敵と、麻帆良の建物の上で対峙していた。
「厄介だな本当に……!」
「フフフ。中々攻められないようだねぇ? まあ、当然と言えば当然か」
目の前の漆黒の敵相手に、覇王は攻めあぐねいていた。
何せ巫力を全て出し尽くして黒の
なので気と長刀だけで戦わざるを得ない状況にされてしまい、目の前の相手の大鎌とつばぜり合うしかなかった。
「こいつの体内には魔界のマグマと同じ成分が流れていると言うのなら、切断しただけで僕の剣はお陀仏だ。本当に嫌になるよこういうの」
「君の攻撃は封じられている。気で強化しようとも、この僕を攻撃することはできない」
「そう言ってられるのも今のうちだぞ」
「フフフフフ、未だに強気なのがすごいね。普通は折れててもおかしくない状況なのにねぇ」
だが、それだけが理由ではない。
目の前の”キルバーン”が、ダイの大冒険のキルバーンと同等だとすれば、内部には魔界のマグマと同じ成分の血液が流れていることになる。
その液体はオリハルコンでできた真魔剛竜剣すらも刃こぼれさせるほどのものであり、長年愛用してきた長刀とは言え、そんなものに触れさせたらひとたまりもないからだ。
こんなやつ相手に愛刀を壊されるのは癪であり、よって思い切って切り込むことができないのが覇王の現状だ。
それを知っているからこそ、目の前の”キルバーン”は笑って余裕の態度を見せる。覇王が今、超絶的に不利な状況なのをわかっている。
されど、覇王の剣技はすさまじく強く、この”キルバーン”すらも、余裕を見せながらも攻め切れていないのが現状だった。
とは言え、多くの手数を失った覇王は、この状況を打破する方法を模索するしかない。
”キルバーン”もこれ程不利にされても未だに戦う意思を失わない覇王に、驚きを隠せないでいた。
「この覇王を折るのなら、神を超えた存在でも呼ぶんだね」
「神を超えた……か。随分と大きく出たじゃないか。なら、頑張って見せてくれよ?」
「言われなくとも」
しかし、覇王はこの程度の逆境で折れるなんてありえない。この程度で折れるなら、何度もこの世界に転生なんてしていない。
だから覇王は強気の態度で豪語する。神を超えた力を見せなければ、そんなことなど不可能だぞと。
”キルバーン”も覇王の言葉に、強烈な気迫を感じながらも、それを笑って流していた。
また、だったらその言葉通り、折れずに戦い切ってくれと嘲笑えば、覇王は当然だとニヤリと笑う。
「そういえば自己紹介がまだだったねぇ。ボクは番外の海・蛇の海のキル。ただのキル」
「わざわざご丁寧にどうもっ!」
「マナーがなってないねぇ。まあ、それはボクもだけど」
すると”キルバーン”は大鎌を建物の屋根に突き刺して、両手を広げて自己紹介を始めた。
幹部ではない別の称号、蛇の海の名を持つキルと。後ろには何もつかない、キルのみであると。
そんなキルへと、むしろ隙ありと判断した覇王は、一瞬にしてキルへと肉薄して刀でキルの頭へと突きを繰り出せば、キルは自己紹介中の攻撃とか卑劣だなあ、と笑いながら首を動かしてそれをかわし、大鎌を右手に握って覇王を振り払った。
そのあと、両者とも刀と大鎌を何度も衝突させ、火花と金属音が周囲に鳴り響く。
奏でられる音は次第に大きくなり、両者の衝突は激しさを増していくばかりだ。
「やるねぇ……。ボクの攻撃を全部かわすなんて」
「その程度なのか?」
「フフフ、ならばもう一つ奥の手を使おうか」
そして、すさまじい衝突と共に爆発的な音が響いた後、両者は距離を取って再び麻帆良の建物の屋根の上へと降り立った。
キルは覇王の剣の実力に、予想以上だと戦慄する。
はっきり言って正面からの戦闘も鍛えてきたキルは、覇王が自分の攻撃を全てかわしてくるとは思っていなかった。
が、覇王とてこの程度の相手など、ごまんと相手にしてきた。
これしきのことで覇王が倒せるなどと思っては困ると、余裕の様子で笑って見せた。
ではそれならと、キルは次の手を繰り出す。
「”フェントムレイザー”ッ!!」
その技の名前をキルが叫べば、頭部から13本の透明な刃が出現し、覇王の周囲へと配置される。
これぞキルバーンの奥の手のトラップ、不可視の刃を空間に配置する罠であるファントムレイザーだ。
「見えない刃……ってやつか」
「ボクにしか位置がわからないこの見えざる13本の刀身、どうやって切り抜けるかね?」
「この程度の小細工で、この僕を止められると? 笑わせてくれる」
「でも、さらにこれならどうかな?」
覇王もこの技は知っていたので、周囲を見渡してみるもやはり刃は見えない。
この見えない刃の配置がどこにあるかも全てキルにしかわからないものであり、故にトラップなのである。
ただ、覇王とてこの程度の罠で止まるような男ではない。
キルもそう言うと思ったと言う様子で、さらに次の一手を繰り出してきたのだ。
「────ッ!」
なんと、今度はキルの姿が目の前から消えたと思ったら、一瞬にして覇王の背後に現れて大鎌を首にかけて振ってきたのだ。
「ふん」
「なに?」
されど、覇王はそれを瞬く間もなくしゃがみ回避し、瞬時に背後を向いてキルへの顔面へと刀の突きで攻撃。
キルはその覇王の行動に少し動揺しながらも、すぐさま後退して覇王から距離を取り、刀をかわした。
「この覇王をなめては困る。そんなもの、すでにお見通しだ」
「フッフッフッ、一度回避しただけで調子に乗らないでほしいねえ」
はっきり言って覇王はこの程度の攻撃など、簡単にわかるというものだ。
消えた瞬間、相手がどう動くかを予測して、先読みの行動を行うことなど、覇王にとっては朝飯前だ。
だが、それでもキルの余裕は崩れない。
たった一度回避しただけで、全ての攻撃を回避できると言う保証はどこにもないからだ。
故に、もう一度姿を消して覇王へと攻撃する。
「そこかッ!」
今度は真横からキルが襲い掛かり、大鎌を真上から振り下ろしてきた。
覇王はその攻撃を瞬時に察知して、一歩横にずれて回避して刀をキルの顔面へと向けて突く。
「君の周囲にはファントムレイザーが配置されているのをお忘れなく」
「調子に乗っているのはそっちじゃないかい? この覇王を甘く見たことを後悔させてやるぞ」
しかし、キルは距離を取り覇王の攻撃を再び回避しながら、見えざる刃の存在を思い出させるかのようにしゃべってくる。
が、覇王もそれがわかっているから刀を大振りにせず突きだけで攻撃しており、舐めすぎだと豪語した。
「術具融合、──────”神殺し”」
それに何故なら、この状況を打破する準備が完了したからだ。
そう、覇王も当然のように術具融合を操れるのである。
愛刀に氷魔法、凍てつく氷柩を付与して作り出された術具融合だが、それを悟られぬよう神殺しと覇王は呼んだ。
また、形状も普段使っている
「ほう? 魔力はまだ残っていたのか」
「そういうことだ。これでお前に対して攻撃できる」
「そうでなくてはねえ。ただ棒立ちのカカシを切り刻んでも面白くない」
キルは覇王が術具融合を使ったのを見て、巫力は空になったが魔力はまだあったことに少し驚き感心する。
何せ覇王は巫力も膨大な量を持っているが魔力も生まれつき膨大な量を持っており、普段は使わないのでただの魔力タンクでしかなかった。
とは言え、黒の
そして、術具融合ならば愛刀を犠牲にする必要もなくなるので、キルを躊躇なく攻撃することが可能となった。
それを覇王がはっきり告げてやるが、キルは肩をすくめてまだまだ余裕があると言う態度を見せるだけだった。
「だけどまあ、攻撃に転じることができるようになったからと言って、動けるかどうかは別だけどねぇ?」
「────ッ!!」
さらに言えば自分を攻撃できるようになったからと言って、ファントムレイザーに囲まれたこの状況でどう動くのかとキルは笑い再び姿を消せば、覇王の懐へと入って大鎌を振り払う。
覇王はそれをすぐさま体を小さくそらして回避し、神殺しをキルの心臓部へと目がけて突き出して反撃するが、キルは瞬時に後退してそれを回避してニヤニヤしており、覇王はそんなキルを睨みつけた。
覇王が最小限の動きで攻撃を回避しているのは、当然周囲にファントムレイザーがあることを警戒しているからだ。
「突然背後や真横へ現れるその挙動……。瞬間移動しているのか?」
「御明察。ボクのもう一つの能力こそ、”空間転移”なのでね」
そこで覇王は今のキルのモーションを見て、特典の一つが転移か何かではないかと考察しそれを語れば、キルはフフフと笑って間違ってないと肯定。
このキルの特典は”キルバーンの能力”と”空間転移”だったのだ。
「簡単にばらしてしまってもよかったのかい?」
「空間転移は対処の難易度が高い。そのぐらいの情報は与えても問題ないのさ」
「随分と余裕だな」
「そうかな? 余裕ではないかもしれないよ?」
「まあ、どっちでもいいけどね」
案外あっさりと自分の特典を掲示したキルを訝しむ覇王。
されどキルとしては別に問題のないことだと、クツクツ笑うだけだ。
そのキルの姿に覇王は、自分を前にしてかなり余裕があるものだと言えば、キルはそれはわからないとおちょくるようなことを言い出す。
ただまあ、覇王としてはキルに余裕があろうかなかろうがどっちでもいい。どうせ勝つのは自分なのだから。
「そして何故、空間転移の対処の難易度が高いかと言うとだね……」
「またかッ!!」
また、空間転移と言う能力がバレても問題ない理由を、キルは笑いながら実践してきた。
またしても覇王の目の前からキルが消え、今度は覇王の真上から大鎌を振ってきたのである。
当然覇王はそれを察して神殺しを振るい上げ、防御。
金属音が鳴り響いたと思えば、今度は覇王がすでに斬りかかる構えを取っていた。
「フッ!!」
「こうやって軌道も見えず、光以上の速さで動けるからなんだよねぇ?」
そして、次の瞬間、覇王は神殺しをキルへと振って反撃を試みた。
キルは覇王の攻撃を大鎌で受け止めて飛び上がり、覇王から距離を取る。
しかしまあ、この空間転移をこうもあっさり見破って対処してくる覇王に、キルはかなり慄いていた。
何せ転移での距離の移動速度は光の速さを超える。光でも数分かかる場所からですら、転移ならば一瞬で飛べるからだ。
実際、火星にある魔法世界までの距離を瞬間的に転移できるのだから、光の速さなどとうに超えているのである。
「だが、その程度なら防げるぞ?」
「本当に規格外だよ。普通の相手ならこれでもう四回は死んでいるはずなんだがねぇ?」
「”普通の相手”とこの僕を同列にしないでほしいね」
「最初からしてないさ。だから最初に特大の罠を使ったんだから」
覇王とて”Fate/stay nightに出てくるアサシンのサーヴァント・佐々木小次郎の能力”を貰った転生者。
その能力内にあるスキルの一つ、心眼(偽)による予感的な危機察知と、幾多にも及ぶ戦いで磨いてきた相手の行動の先読みで、転移に対処可能だ。
キルはと言うと、こうも何度も転移からの不意打ちをを全て楽々にいなされて、肩をすくめて恐ろしいと笑う。
この転移からの不意打ちはモーションに入ってから転移することで、完全に隙を無くして攻撃できるため、ほぼ必勝かつ必殺のパターンだ。
なのに覇王には全く通じず、むしろ反撃までしてくる始末だ。
並みの相手ならばこの時点で4回殺しているし、数なら4人死んでいるはずだと、キルは言葉にする。
それに今の覇王は巫力を使い果たした状態だ。
万全な状態ならば自分はあっけなく破壊され敗北しているのだろうとキルは考え、覇王が想像を絶する存在なのを再度確認するのだった。
が、覇王としては並みの相手がどれくらいの想定かは知らないが、並みだと思わないでほしいと笑っていた。
どんな状況であろうとも戦えるように鍛えてきた覇王が、並みの相手と比べられるなど、ありえないことなのだから。
「しかーし、むやみに動くと見えざる刃が君を襲うよ? せいぜい頑張ってくれたまえ」
「その程度、この僕には通じない」
されど、キルのアドバンテージはまだ健在だ。それこそ見えざる刃ファントムレイザーが、未だに空間に浮いていることである。
そんな余裕なキルは、次の瞬間再び驚愕することになる。
なんと覇王はその場で一瞬にして神殺しを数十回も振り上げれば、周囲のファントムレイザーは切り刻まれて砕かれたのだ。
「ほほう? ファントムレイザーが全て切り刻まれてしまうとは……。ファントムレイザーよりもそちらの術具融合の方が上なのか。それは失念していた」
「これでもう僕を縛るものはない。今度はお前が苦しむ番だ」
「フッフッフッ、これだよ、これだから君は恐ろしい。だからこそ、…………最大の難関としてボクが出向いた訳だからねぇ」
まさかファントムレイザーを破壊してくるとは、と驚いた後に感心した様子を見せるキル。
覇王はこれで自由に動けると淡々と語りながら、キルへと目標を定める。
キルはそれでもまだ余裕な様子であり、覇王の実力を考えれば当然と言いつつも、故に脅威であり一番消えてもらいたい相手だと静かに語った。
「だけど君は今考えていることは、ボクのことをどう倒すかではないはずだ」
ただ、キルは覇王が自分を倒したい、と考えているとは思っていないと笑いながら言い出した。
「何せ君はボクの本当の正体を知っているはずだからねぇ」
「へえ? お前には本当の正体があるって訳か?」
「ごまかそうとしてもダメさ。”転生者”なのだから、今、君とつばぜり合っているこのボクが、ただの人形だと言うことは知っているだろう?」
「まあね」
キルは覇王も転生者であり、
しかし、覇王は知らぬ存ぜんを決め込みだしたが、その程度で騙されるようなキルではなく、自分の正体を知っているだろと自らの正体を暴露する。
そう、”キルバーンの能力”というのはつまり、目の前の漆黒の死神は本物ではなく操り人形であり、実際は別の存在がキルと言うことになる、ということだ。
故に、本体を倒さない限りは死ぬことはなく、何度でも蘇ることすら可能なのだから。
覇王もそう聞かれれば、知ってると言っておいてやる。
どうせもうバレている訳だし、相手だって承知で戦っているのがわかったからだ。
「そう、だからつまり、君が今考えていることは、その本体がどこにいるか、どうやってそいつを仕留めるか、それだけを考えているはずさ」
「さあねえ? それはわからないよ?」
ということは、とキルは解説するかのように説明。
この戦闘として前に出ている人形ではなく、本体、一つ目ピエロと言う魔物の姿の本物のキルをどうやって見つけて倒すかどうか、それを覇王が考えているのではないかと。
が、覇王は馬鹿正直にそれを言うはずもなく、しれっとした態度で疑念を誘う。
「嘘は言わない方がいい。それと残念ながら君の前に本体が出てくることなど、そうそうないってことさ」
「ならば、お前をバラバラにして動かなくした後、本体をあぶりだすだけだ」
「フッフッフッ、そう簡単に行けばいいけど、うまくはいかないんじゃなかなあ?」
それでもキルの目はごまかせない。
だから、本体を探そうとも覇王の前に簡単には現れないと、はっきりと言ってやるキル。
であれば、本体が出てこなければならないような状況を作ってやればいいだけだと覇王は言う。
目の前の人形がやられてしまえば、出てこざるを得ないだろうと。
そんな挑発的な覇王の言葉に、キルは愉快に笑うだけ。
覇王は確かに強敵だが、今は完全な状態で戦っている訳ではないのだから。
そう言いながら、再び転移にて姿を消すキル。
「お前ごときに後れを取る訳がないだろ?」
「転移して攻撃しているのに、なんという反応速度。本当に脅威だ。ここで倒されてもらわないと本当に困る」
「倒されるのはお前だろ?」
しかし、その転移攻撃も覇王には通じず。
今度は右の真横へと飛び大鎌を振るったキルだったが、覇王はそれをちょっと足を動かしただけで回避して見せたのだ。
はっきり言って覇王レベルとなれば、この程度の攻撃など回避するなど容易い。
いやはや、困ったものだとキルは距離を取って大鎌の柄を撫でながら覇王の姿を眺めていた。
覇王はだったらさっさと負けてくれと言わんばかりに、攻撃に転じて瞬間的にキルへと肉薄。
「ぬぅ……、流石、といったところか……」
「お前をさっさと始末して、次に行かなきゃいけないもんでね」
「そう言わずにもう少し遊んでくれたまえ。このボクのためにねぇ」
その後、数度の衝突が起こり、空気を揺さぶり衝撃波が発生する。
覇王の神殺しとキルの大鎌がぶつかった衝撃であり、その数は瞬間的ながら50を超えていた。
キルは覇王が
が、覇王としては当然のことであり、さらに攻撃速度を増していく。
どんどんキルが押されているように見えるが、覇王の攻撃を必死で防御している割には依然としてキルには余裕があるようだった。
「それはできない相談────なッ!?」
「フッフッフッ、どうしたのかね?」
「ちぃっ!?」
完全に覇王がキルを押しているこの状況だったが、覇王がキルの首へと神殺しを振るった瞬間、覇王の左肩を何かが貫いたのである。
覇王はその攻撃を受けた瞬間に後方へと飛んでキルとの距離を置き、左肩を貫いた得物の正体を理解した。
それを見ていたキルは、ただただ笑いながら覇王を眺めながら挑発する。
今までの威勢はどっかに飛んでってしまったのかなあ? と言いたげだ。
「ボクの言葉を信用してしまったのかい? 死神の言葉を信用するなんて、一番やってはいけないことだよ?」
「破壊したはずの見えない刃…………、まさかッ!」
さらにキルは自分が先ほど言った
確かに全部で13本の見えざる刃が出せるし、全部出したのは間違っていない。でなければ頭の黄色い部分の光でバレてしまうからだ。
が、全部出したとてそれが全部破壊されていたとは限らなかった、という訳だ。
覇王はキルの言葉を聞いて、ふと一度目にキルが転移してきた時のことを思い出してハッとした。
「そう、君が破壊したファントムレイザーは全てじゃない。残念ならが数本、ボクが位置をずらしておいたのだよ」
「転移で背後から攻撃してきた時に、ひっそり回収していたか」
「フッフッフッ、その通り。本当に頭がよく回る」
キルは覇王が理解したのを見て、種明かしとしてしゃべりだした。
一度目の空間転移の際に数本のファントムレイザーを手で回収し、別の場所に設置しなおしたのだと。
覇王も全部理解しておりそれを語れば、正解だよと笑ってキルは褒めたたえる。
「それでこっそり狙った場所に、配置しなおした。それだけのことだよ」
「だが、この程度のダメージ程度で僕が倒せるはずがないだろ?」
「わかっているさ。だから、どうやってその命を奪い切るか、考えているところさ」
その後覇王が攻めてくるであろう場所に配置しなおしたファントムレイザーは、予想通りに覇王へと突き刺さった、という訳さ。と笑いながら説明し終えるキル。
とは言え、ちょいと肩を傷つけた程度で覇王は倒せない。
未だに強気の姿勢を崩さず、それでもまだ隠しているファントムレイザーを警戒しながらキルを睨む。
キルとてこんな雑な攻撃で覇王が死ぬとは思っていない。
先ほどのファントムレイザーだって本当なら首を狙っていたと言うのに、心眼(偽)の効果でちょいとずれて肩に受けたのだから、簡単には死なないのは見てわかっていることだ。
故に、覇王を殺すのであればもう少し足りない、と考えるのがキル。
さてさて、どこまでやれば覇王が死ぬのか、試さなくてはならないと次の攻撃を模索する。
「僕の命を奪う? 面白い冗談だよ。だったらやってみせなよ」
「ああ、そうするとも…………、だからもう一つ、奥の手を使う」
今、なんて言ったかな? と耳を疑う素振りを見せて挑発し返す覇王へと、キルは次の手を出してやると不気味に笑っていた。
「”術具融合、影の死神”」
「術具融合か」
キルが次に出してきた手は、術具融合だった。
影の魔法を全身に纏わせて、触手のように伸びる影の槍が鎧のようにキルへと巻き付いて行く。
この状態をキルは”影の死神”と呼び、大鎌も影の闇を纏って巨大化し、刃の大きさも自由に動くようになっていた。
その姿を見た覇王は、僕が今使っているのと同じ術か、と思うだけだ。
魔法を武装すると言う点においては脅威だが、自分の武装に自信がない訳ではないからだ。
また、覇王はそれ以上に別のことを考えていた。
目の前の黒い死神は”人形”であり、魔法を使うのであれば本体が出てこなければならないはずだと。
であれば、今、術具融合を行った時は本体が人形の近くにいたはずであり、どこからそこへ移動して、どうやって消えたのかを思考していた。
いや、奴の特典は空間転移だ。人形だけでなく当然本体にも作用するのであれば、本体が空間転移して人形の背後へと飛び、術を付与したのであれば可能だとすでに結論付けていた。
「君が使えてボクが使えないはずがない。それにボク自身はただの人形。ボク自身に魔法を付与することは簡単にできるということだ」
「へえ、考えたね。でもその程度じゃ、僕は倒せない」
だが、覇王はその思考を悟られぬようしれっとした表情でキルを睨めば、キルは自分が人形なのだから魔法で武装することなど難しくないと語る。
ただ、その程度で倒せるほど覇王は甘くないと、覇王も豪語して笑ってやる。
「大した自信だ。故にその自信、壊し甲斐がある」
「壊れるのはお前の方だ」
「それはどうかな?」
その覇王に、笑いながらそういう自信たっぷりな奴ほど、その自信を砕いて絶望させるのが面白いとキルは言う。
そんなキルへと覇王は、それはそっちだろとはっきり告げてやれば、キルは笑いながら姿を消す。
そして、両者は再び姿が見えぬほどの速度で幾度となく衝突し、さらに苛烈で白熱した戦いを繰り広げるのだった。