麻帆良学園の一角で、月の裏の構成員やら召喚魔やらをぶちのめす少女、トリスの姿があった。
トリスは安全地帯となっているどこかの寮から飛び出し、敵が多く集まっている場所を重点的に叩き潰していたのだ。
「全くもって嫌になるわね……、この状況」
のんびり学生しながらここで生活する予定だったトリスは、この状況にかなり嫌気がさしていた。
魔法世界で戦いに明け暮れ、最低な転生者どもに追われたりしたこともあったトリスとしては、この安らぎを得ていた場所で戦うなんてことは本気で気分が悪かった。
「まあ、召喚魔もどんどん減ってきているみたいだし、終わりが見えてきたってことでいいのかしら?」
とは言え、召喚魔の数自体は減ってきているのが見てわかった。
これなら召喚魔が全滅するのも時間の問題だと考えたトリスは、ほんの少し安堵の様子を見せる。
「…………って訳じゃなさそうね」
しかし、そんな気持ちを打ち砕くかのように、敵が追加で戦力を投入してきたではないか。
トリスは本気でげんなりした態度で、内心ふざけるな、と叫びまくっていた。
「ここに来て鬼神兵を大量投入してくるなんてね。本当に嫌になるわね」
また、敵の新戦力は大量の鬼神兵であり、それらが麻帆良の大地へと降り立った。
それを見ていたトリスは、苛立ちを必死で抑えながらも、ならばもう少し頑張らなければと意識を切り替えて、再び戦場へと走るのだった。
…… …… ……
同じように召喚魔と鬼神兵を駆逐している木乃香は、戦いの最中に周囲を見渡していた。
「召喚魔は減ってきとるみたいやけど、今度は巨人がどんどん増えてきおるなぁ」
木乃香も召喚魔がだいぶ倒されていることに気が付くものの、さらに追加戦力で鬼神兵が増えたことに少し驚いた様子だった。
「せやけどウチがはおに代わって何とかしたる!」
ただ、増えたらその分倒せばいいと、木乃香はシンプルな考えで再び動き出す。
覇王から預かった
「はあっ!」
膝に追加で武装した巨大なクローで鬼神兵を貫き破壊し、そのまま別の鬼神兵へと投げつけてぶつける。
「これでッ!」
さらには両腕の翼型の扇を使って舞うようにして鬼神兵を切り裂き、その巨大なボディをバラバラにしていく。
「”鬼火”ッ!」
そして、覇王が黒雛を操っている時の必殺技、鬼火を見よう見真似で再現し、一か所に固めた鬼神兵へと向けて放って焼き尽くした。
「ここに出現しとった巨人はあらかた片付いたみたいやね……!」
少しため息を吐いた後、深呼吸して疲れを取りながら、敵の殲滅を確認する木乃香。
今の木乃香は覇王から
「────ッ!」
だが、今の静寂を突き破って、再び鬼神兵が召喚されて麻帆良の大地へと落ちてきた。
それを見た木乃香は、まだまだ戦いが終わらないことを理解する。
「倒した分だけ増えるっちゅーワケかー」
いやはや、増えた鬼神兵は今倒したばかりの数と大差がないぐらいの数だった。
木乃香は倒しても増える鬼神兵に、少しだけ疲れの感情を見せていた。
「せやけど、ウチは負けへんよッ! はおに任されたみたいなもんやからな! どんどんやるえーッ!!」
しかし、それでも木乃香は止まらない。
覇王から
故に、木乃香は再び戦う。どんなに敵が増えようとも、負ける気はないと張り切って敵を殲滅するのだ。
こうして木乃香も再び戦闘を開始して、増えた分だけの鬼神兵や空から降り注ぐ召喚魔を駆逐していくのだった。
…… …… ……
麻帆良学園中等部女子寮の前でも、当然戦いが繰り広げられていた。
「ホンマ雑魚の癖に数だけはおるで!」
「悪いねコタロー君。僕が防御に専念してしまって」
「気にすんなや! おかげで何も気にせず戦えるんやからな!!」
先陣を切って戦うは犬上小太郎。
小太郎の影の術で月の裏の魔法使いどもを蹴散らし、拳や蹴りで召喚魔を破壊していく。
また、小太郎は魔法世界でラカンに修行を付けてもらっていたのでかなりパワーアップしており、この程度の相手なんぞもはや木っ端に等しい程度の存在でしかなかった。
その後ろでネギが寮全体を囲うように巨大な障壁結界を作り出しており、月の裏の魔法使いや召喚魔を全く寄せ付けずに女子寮の人々を守護していた。
とは言え、ネギは完全に防御に専念してしまっており、攻撃することができない。
そのことを小太郎に謝るが、小太郎は自分が居候として住んでいる部屋の住人たちが完全に安全と言う安心感のおかげで本気で戦えると思っており、ネギへとそれを笑って話した。
「”魔法の射手・光の5矢”ッ!!」
「のどかさんもありがとうございます」
「いっ、いえ! むしろここに召喚して貰ったことの方が助かってますから!」
同じく学生寮の前で守護するのはのどかだった。
のどかも魔法をギガントから教えられ、魔法の射手ぐらいならば使えるようになっていた。
なので魔法の射手で召喚魔を撃ち抜き、小太郎には大きく劣るものの、召喚魔を倒していたのだ。
そんなのどかの雄姿を見ていたネギは、のどかの方にも礼を言う。
本来ならば後ろで控えていたり部屋で待機してくれてもいいのに、自分の従者だからと、ここで戦ってくれているからだ。
が、のどかは夕映と出かけていた時に呼び出してくれたことで、だいぶ危機を免れた。
そのため、この程度のことなんてなんてことないと思っていたのである。
それ以外にも、真名が寮の屋根の上からスナイパーライフルを構えて召喚魔などを撃ち抜いたり、少し離れた場所で古菲と楓も戦闘しながら防衛しており、さらに姉が魔族だとネギたちにバレたザジまで参戦していた。
当然、召喚魔を倒しながらここへとすぐさま飛んできた茶々丸も守護しながら戦闘し、空を飛びながら召喚魔を撃退中だ。
「のどか姉ちゃんも戦いなれてきおったな!」
「私だって何度も危ない目に遭ってきましたしね!」
「俺が言うんも変な話やけど、自慢することやないでそれ……」
小太郎ものどかの戦いぶりを見て、随分と様になってきたと笑って褒めれば、のどかは魔法世界のことを思い出して逞しくなったと笑顔で言う。
が、裏稼業を生業としていた過去がある小太郎としては、女の子にんなもんない方がええんとちゃう? とちょっとつっこみたくなった。
「それにネギ先生の盾が護ってくれてますから!」
「マジであん時の宣言通り、防御を滅茶苦茶固めおったって訳かいな!」
「まあね!」
それにのどかがこうして安全に戦えるのも、ネギの”最果ての光壁”から分離した障壁の盾が守護しているからだ。
小太郎は魔法世界でラカンの隠居場所でネギが言った「まずは守護に力を入れる」という言葉を思い出し、マジでやりやがったと思いそれを口に出す。
別に攻撃に転じることもできるのに、防御は本当に狂った性能になっていたからだ。
「マタムネさんもありがとうございます!」
「礼など不要ですよ。小生は自分の心に従っているだけですので」
その横でネコも、巨大な日本刀を握って戦ってくれていた。それはこの世界の覇王が生み出した
ネギはマタムネにも軽快に礼を言えば、マタムネは自分がしたいからしているだけだと言葉にして微笑んでいた。
そう、マタムネは共について行くとした朝倉和美の守護るために、覇王が守護しているだろう麻帆良を守護るために、こうして戦っているにすぎないのだ。
「とりあえずここはこうやって凌ごう。鬼神兵が出現してきている今が正念場みたいだしね」
「はい! このまま女子寮を守りましょう!」
「俺が行ってもええけど、姉ちゃんたちが心配やしな」
また、ネギは鬼神兵がどんどん追加されていく光景を見て、ここがクライマックスだと判断。
このまま女子寮を守護しきり、なんとか切り抜けたいと考える。
のどかもそれは同じであり、何事もなくクリスマスの夜を迎えられればと気合を入れなおす。
小太郎も本当ならばもっと遠くで鬼神兵やらをぶちのめしたいが、居候している部屋の住人たちが心配故にここで戦っている。
なので、引き続きこの寮の前で、ネギたちと共に戦い続けるのだった。
…… …… ……
カギとアスナはダークフォグに操られたエヴァンジェリンと対峙し、苦戦を強いられていた。
「ちっ、チクショー! 闇の魔法状態の
「本当、すごいわね……! 流石エヴァちゃんよ!」
「褒めてる場合じゃねーんだけどな!」
地上からこの上空まで伸びる凍結フィールド内にて、カギとアスナはその力に圧倒されており、改めてエヴァンジェリンの強さが本物でありとてつもなく恐ろしいことを実感させられていたのだった。
「ぐっ! ぬうぅ……! ”氷槍弾雨”ッ!!」
「はぁぁぁッ!!」
エヴァンジェリンは苦悶の表情を見せながら、背後に無数の巨大な氷の槍を展開。
それを無造作に発射してきたところを、アスナがハマノツルギを連続で振るって、その全てを破壊し尽くして防御する。
「”雷神槍斧”ッ!! ”爆熱陽剣”ッ!! つぁぁーッ!!」
「”断罪の剣”ッ!!」
そこへカギが
エヴァンジェリンも右手の先から白く伸びた魔法の剣を作り出して応戦。二つの魔法の武器が何度も衝突を繰り返した。
「”氷瀑”ッ!! ”闇の吹雪”ッ!!」
「うおおわあぁッ!? 無詠唱無制限で氷魔法ブッパしてくんのおかしいだろ!?」
だが、今のエヴァンジェリンは闇の魔法を使った状態。
すっと左手をカギへと向ければ、二つの魔法をほぼ同時のタイミングで放ってきたのだ。
カギはたまらず瞬時に後方へと下がって二つの魔法を回避するが、距離を開けられると不利だということを理解しており、こうやって距離を取られることに慄くしかなかった。
「動けなくするどころじゃねーよこれじゃ! 勝ち目あんのかこれ!?」
「弱気になっちゃダメよ! こういう時こそ冷静にならなくちゃ!」
「だっ、だけどよぉ!?」
エヴァンジェリンは操られながらも自分をズタボロにしてまで動きを止めろと言った。
しかし、今のエヴァンジェリン相手にそれができるのかさえわからないと、エヴァンジェリンの強さにビビり散らかすカギ。
そんなカギへと叱咤するアスナ。
アスナはメトゥーナトから戦いの極意を学んでおり、こういった場面で取り乱したり怯えては不利だと言うことをよく理解しているのだ。
ただ、そう言われてもマジでキツい戦いなのは変わらねぇと、カギは未だに弱気だ。
「何弱音吐イテヤガル!! ソンナンジャ御主人ヲ助ケラレネーゾッ!!」
「そう言うが!」
なんかビビってる情けないカギへと、頭の上のチャチャゼロもたまらず文句を吐く。
されど、やはりカギはエヴァンジェリンの強さに屈しており、どうすりゃいいんだよと悩んでしまう。
「なあなあ! 抑えてるんならもうちょっと弱くできねぇか?」
「…………これでギリギリ……だぞ……!」
「マジかよー!」
で、困ったカギはエヴァンジェリンに直接もっと弱体化して手加減してと言い始めた。
だが、エヴァンジェリンも必死でダークフォグを強い精神で乗っ取りを抑えており、これ以上手心を加えることは不可能と断じる。
それを聞いたカギは、今までの状態で抑え込んでいたのかよ!? と滅茶苦茶驚きこれはマズイと焦りだす。
「”氷刀輪舞”ッ!!」
「ほわーっ!」
「”無極而太極斬”ッ!!」
そこへエヴァンジェリンは氷の短剣を大量に作りだす魔法をカギへと放ってきた。
カギは驚愕して叫びながら必死にそれを雷神斧槍ではじいたり回避したりし、アスナも咄嗟にそこへ魔法無効化をぶち込んでその魔法を消し去った。
「カギ! 私が盾になるからガンガン攻めて! でないと動きどころか攻撃すら止められないわよ!」
「わーったよ! おっし! やるぞッ!!」
アスナはカギこそが攻撃の要であり決め手となると考え、カギには攻撃に専念してもらい、自分が盾の役をすると宣言。
そのアスナの強気の発言に、カギもそこまで言われちゃやるっきゃねえと気合を入れなおし、雷神斧槍を握りなおして構えた。
「”魔法の射手・収束・氷の1001矢”ッ!!」
「うほっ! すごい数ッ!」
だが、次の瞬間、エヴァンジェリンは無詠唱で魔法の射手を1001発ぶっ放してきた。
カギはその光景にたまらず声を出すが、余裕を取り戻した表情だった。
「そのぐらいッ! これでッ!!」
「うおりゃーッ! ”爆熱陽剣”ッ!!」
「”断罪の剣”ッ!! ”氷槍弾雨”ッ!!」
何故ならアスナがこっちにいるからだ。
アスナも即座に動き魔法の射手をハマノツルギで消滅させていき、カギもその隙に炎の剣でエヴァンジェリンへと肉薄して攻める。
エヴァンジェリンも負けじと断罪の剣でそれを防ぎつつ、背後から再び氷の槍を無数に出現させてカギへと撃ち放った。
「”無極而太極斬”ッ!!」
「おっしゃーッ! ”雷神斧槍”ッ!!」
「……!」
そこへ割り込むようにしてアスナが魔法無効化を飛ばして氷の槍を全て砕き消滅させれば、カギは雷撃の槍をエヴァンジェリンへと向けて突く。
エヴァンジェリンも流石にマズイと判断したのか、少し後方へと下がりカギの攻撃をかわす。
「わりぃな! ”
「ううむっ!!?」
しかし、カギはそのタイミングで
数本の宝具がエヴァンジェリンの体や左腕に突き刺さりダメージを与え、エヴァンジェリンもそのダメージで動きが一瞬鈍った。
「”雷神斧槍”ッ! くらえやー!」
「っ!?」
「解放! ”万雷招来”ッ!!」
「ぬううっ!?」
そこへカギが雷神斧槍をエヴァンジェリンへとぶん投げれば、動きが鈍ったエヴァンジェリンの体の中心に直撃。
体を貫かれたエヴァンジェリンは小さくうめき声を上げながら氷のフィールドに突き刺さった。
さらにカギは雷神斧槍に内包した千の雷を開放し、エヴァンジェリンへとぶつければ、エヴァンジェリンは全身を千の雷に焼かれてダメージを負う。
「エヴァちゃんッ!!」
「があっ!?」
千の雷がやんだ瞬間にアスナがエヴァンジェリンへと接近し、彼女の名前を叫びながらそのままハマノツルギを振り下ろす。
ダメージで硬直したエヴァンジェリンに回避する余裕はなく、ハマノツルギを受けて肩から腹までエヴァンジェリンは斬り裂かれた。
その姿を見たアスナは表情をしかめて辛そうにするが、心を鬼にして必死に耐える。
また、その一撃を受けて苦しみの声を上げたのはエヴァンジェリンではなく、内部のダークフォグだった。
ハマノツルギは気の攻撃すらも消滅させる力を持つ。気で強化した武器さえも関係なく斬り裂ける。
そして、ダークフォグは黒い気の集合体。気で構成された肉体のため、ハマノツルギの効果に触れてダメージを受けたのだ。
そこでダークフォグは最も警戒すべき存在はカギではなく、アスナであると理解すると、先に倒すべき相手としてアスナを標的に定めた。
「”爆熱陽剣”ッ!! 術式解放!! ”日炎陽光斬”ッ!!」
「……”千年氷華”ッ!」
アスナが後ろへと下がったあと、カギがエヴァンジェリンへと炎の剣を開放して巨大な炎の斬撃を放つ。
が、エヴァンジェリンは
「なっ!? なにぃ!? いつの間に詠唱をッ!?」
「マズい! このおぉぉぉッ!!」
まさかわざと自分の攻撃を食らった後にカウンターをしてくるとは思っていなかったカギは、回避行動が遅れてピンチに。
カギへと迫る氷の大魔法を見たアスナは、瞬時にカギの方へと飛んできてハマノツルギを高速で何度も振るい、エヴァンジェリンの氷魔法をなんとか防いだ。
「カギ! 大丈夫!?」
「アスナがかばってくれたおかげで何とかな……」
アスナは後ろのカギへと叫んで無事を聞くと、カギも焦燥した様子ながらもアスナが来たから大丈夫だったと静かに言う。
実際、今の魔法はかなり危なかった。命中していれば氷の中に閉じ込められてしまったかもしれないからだ。
「しっかし、
「流石としか言いようがないわね……。でも、ここで折れてちゃエヴァちゃんを助けられないわよ!」
「わかってるって! やるしかねぇってことをな!!」
さらに、エヴァンジェリンは今のわずかな時間を使い、すでに肉体を再生させていた。
カギはこりゃキツいと頭を悩ませるが、アスナはそれでも何度も攻撃し続けるしかないと激励すれば、カギももう一度やる気を出し、再び雷神斧槍を作り出す。
「……ぐ……!」
「来るッ!」
「ウオラァっ!! ”雷神斧槍”ッ!!」
そして、再びエヴァンジェリンが動き出したのを見たアスナはハマノツルギを構えなおし、カギは前へ出て雷神斧槍をエヴァンジェリンへと向けて突き出した。
「なっ!? 左腕を犠牲に俺をすり抜けていきやがったッ!? 狙いはアスナか!?」
「エヴァちゃんッ!!」
が、エヴァンジェリンはなんと、雷神斧槍を回避せずに左腕に受け、そのままカギを通り抜けていったのだ。
左腕を捨ててでも無視されたカギは、この行動はアスナを先に倒す気だと考えて後ろを振り向きエヴァンジェリンを追う。
また、すでにエヴァンジェリンはアスナへと肉薄しており、アスナはハマノツルギでエヴァンジェリンを攻撃。
「ハアッ!」
「”断罪の剣”ッ!!」
「この程度ッ!」
瞬時に二度ほどハマノツルギを振り下ろすアスナだが、エヴァンジェリンはダメージを無視して断罪の剣を右手に作り、それをアスナへ向けて振るう。
されど、アスナには魔法は通じない。ハマノツルギで断罪の剣を切り裂いで消滅させ、再びエヴァンジェリンへと攻撃するが。
「くっ!? 体術!? あっ!?」
「これマズ!?」
「……避け……ろ…………!!」
「うおオォォォーッ!? アスナ―ッ!?」
エヴァンジェリンは今度は魔法を使わず、合気道の要領でアスナの攻撃をいなし、さらにはアスナの体重移動を利用して逆に態勢を崩したのだ。
そこへ魔法ではない純粋なエヴァンジェリンの鋭い爪がアスナへと迫る。
アスナはこの攻撃は避けきれないと判断してダメージを最小限に抑えようと行動し、エヴァンジェリンもアスナが攻撃を回避してくれることをただただ祈った。
カギもこの状況をスローモーションのように見ており、アスナの危機に間に入ろうと急ぎながら大声で叫ぶ。
「ぐうっ!?」
「えっ!?」
──────だが、突如エヴァンジェリンが横へと弾かれるように吹き飛んだ。
アスナはそれを見て驚き後方へと瞬時に下がれば、そこにはもう一人の少女の姿があった。
「お前は超!」
「大丈夫だったカ? 明日菜サン」
「うん、大丈夫! ありがとう超さん!」
「礼には及ばないネ」
その少女こそ超だった。
超は肘打ちでエヴァンジェリンを吹き飛ばしてアスナを助けたのだ。
間一髪と言うところで何とかなったと思った超はアスナへ声をかけると、アスナは今のことに対して元気よく礼を述べる。
ただ、今の状況は誰だって助けに入ると思っていた超は、気にしなくていいと微笑んで言葉にした。
「して……、あれが操られているエヴァンジェリンサンと言う訳カ……」
「わかってんなら話は早えぇが、そう言うこった」
そのあと、三人は再びエヴァンジェリンの方を見れば、不気味に魔力を溜めて浮かぶ金髪の少女の姿が目に入ってきた。
超はその姿に悲痛な表情を浮かべながらカギへとそれを聞くと、カギも歯噛みして悔しそうな顔をして答えた。
「……私からも……礼を言う……」
「エヴァちゃん……」
「……エヴァンジェリンサン」
だが、そこでエヴァンジェリンが、超の今の行動の礼を言い出した。
エヴァンジェリンとてアスナを傷つけること自体が不本意なことであり、故に無事に済ませてくれた超に感謝していたのだ。
操られながらも礼を言うエヴァンジェリンを見て、アスナも超も悲しい気持ちになった。
さらにこんな風に気を使ってくれている人を無理やり操って攻撃させてくるなど、許し難いとしか思えなかった。
「みなさん!? これは一体!?」
「刹那さん!」
「あの額の黒い奴が
「そういう理由が……」
また、そこへ刹那た白い翼を伸ばしてここへとやってきて、エヴァンジェリンと対峙している状況を驚きつつ尋ねた。
アスナはさらに強力な助っ人の登場に喜び、カギが刹那へと説明を入れる。
刹那もカギの説明ですぐに状況を理解し、苦い表情を見せた。
「私が弐の太刀さえ使えていれば……」
「ないものねだりはなしネ」
「そうよ。それにパパが帰ってくればどうにでもなるはずよ。だからエヴァちゃんも、動きを止めるだけでいいって言ってるワケだろうし……」
「……なるほど、あの剣で…………」
そして、こんな時こそ神鳴流の弐の太刀が役に立つと言うのに、それが使えないことを刹那は大いに悔やんだ。
弐の太刀は対象を選んでダメージを与えることが可能な奥義であり、それならばあの額にある黒い奴だけを選択して攻撃することが可能なはずだからだ。
されど使えないものは使えない。そこに存在しないものを悔やんでも仕方がないと超は言って再び構えを取る。
それにエヴァンジェリンの話を総合すると、今の状況を完全にひっくりかえせる存在がいると言うことに、アスナも気が付いていた。
そう、皇帝の部下で今はアルカディア帝国へ出向いてしまっている、メトゥーナトだ。
メトゥーナトのアーティファクト、宇宙割つ剣はいかなるものでも斬ることが可能だ。さらに斬るものを選ぶこともできる。
つまり、剣それ自体が神鳴流の弐の太刀と同等かそれ以上の性能を発揮するのだ。
刹那はアスナの言葉を聞いて、メトゥーナトのアーティファクトのことを思い出していた。
初めてその性能を見たのは学園祭でビフォアを一度斬った時であり、あの能力であれば確かに何とかなりそうだと考えたのである。
「なら、第二ラウンド始めっかッ!!」
「…………頼むぞ……貴様たち……!」
超と刹那が味方に加わり有利性が増したと考えたカギは、ならば再び戦うしかないとエヴァンジェリンを見る。
エヴァンジェリンも四人であれば自分を止められると考え、その全てを託すことにした。
「ウオオオオオォォォォッ!!」
だが、超がここに来たと言うことは、一緒に来ていたジェネシックガオガイガーも当然来ている訳で。
剛が叫びと共に周囲の召喚魔をブロウクンマグナムで薙ぎ払いながら、巨大なキューブ状の物体へと近づいて行く。
「この巨大な物体を破壊すれば召喚魔の増殖は止まるはずだが……」
豪はこの物体の破壊に乗り出して近寄り、どうやって破壊するかを模索し始める。
「ここでこんなものを破壊すれば、地上にも被害が出てしまう……! どうすれば……!?」
されど、ここでこんな巨大な物体を破壊して麻帆良の街へ堕としてしまったら、それこそ大損害となることを考え、破壊を躊躇ってしまう。
「ッ! そうだ! 宇宙へ持って行って破壊すれば問題ないはずだ! ヨッシャーッ!!」
しかし、この麻帆良の上空で破壊すればそうなるだけならば、それよりも高い場所、つまり宇宙空間で破壊すれば麻帆良に落ちることは亡くなると判断し、ジェネシックガオガイガーで巨大なキューブ状の物体を掴みに飛び掛かった。
”しまった!? あれを破壊されてしまうとこちらがかなり不利になるッ!?”
”ざまを見ろ。麻帆良の戦力を甘く見すぎた貴様らが悪い”
それを見たダークフォグは大いに焦り叫ぶ。
あのフォースクリスタルが砕かれてしまうと、召喚魔の召喚や他の魔力を用いた儀式が不可能になってしまうからだ。
が、そんなダークフォグへとエヴァンジェリンは非難の言葉をぶつけてやる。お前の見通しの甘さがそうさせたのだろうと。
”ええいっ!! いい加減完全に乗っ取られてしまえッ!!”
”嫌なこった。誰が貴様なんぞに私の肉体をくれてやるものか”
であれば、エヴァンジェリンの完全な支配を急ぐダークフォグだが、エヴァンジェリンの強烈な魔力で魂が防御されており、それに触れることが叶わないでいた。
”ならせめてアレの邪魔を……!! ぐうっ!?”
”やらせんぞ? 貴様はここでぼーやたちと戦っていればいいじゃないか?”
”ふっ! ふざけるなぁーッ!! ならば最終兵器を出すだけだッ!”
”まだそんなものがあると言うのか?”
ダークフォグはならばせめてジェネシックガオガイガーの邪魔をしようと肉体を動かそうとするが、エヴァンジェリンが必死にそれを抑えて思ったように動けない。
このままではフォースクリスタルが砕かれてしまうことを恐れたダークフォグは、ならばさらなる隠し玉を呼び出すことにしたのだ。
すると、エヴァンジェリンが右腕を天に掲げれば、周囲に巨大な魔法陣が浮き上がってきたではないか。
「空に巨大な魔法陣が!?」
「何か出てきます!」
「アレは……、鬼神兵カ!?」
「いやでも大きさが数倍以上あるぞ!?」
その巨大な魔法陣から、ゆっくりと降りるようにして出現する鬼神兵。
しかも通常の鬼神兵よりも巨大であり、飛行ユニットが搭載されて武装も強化されたものだったのだ。
巨大な鬼神兵の出現に、アスナも刹那も超もカギも驚き、これはかなりまずいのではないかと緊張が走った。
”我々が鬼神兵を改良して作り出した新型の鬼神兵……、名付けて魔神兵だッ!”
”こんなものまで用意していたとは……”
”この組織を結成してから10年間、この場所を乗っ取るために用意してきたのだッ!!”
この巨大な鬼神兵こそ月の裏の秘密兵器であり、その名を魔神兵と名付けた。
流石のエヴァンジェリンもこれ程のものも用意していたのには驚いた声を精神世界に響かせ、ダークフォグは本気で麻帆良を乗っ取るためにやってきたと豪語。
”そんな下らんことをせずに他のことをして有意義に過ごせばよかったものを……”
”これこそ我々の有意義な時間だったのだ! あのガオガイガーの邪魔をするのだアァッ!!”
しかし、エヴァンジェリンはむしろ本気で呆れ果てた声を出し、時間の無駄だと言ってやれば、ダークフォグはこれが有効的な時間の使い方だと叫び、魔神兵へとジェネシックガオガイガーを攻撃するよう命じたのだ。
「新手かッ!? だが、俺を止めることはできないぜッ!!」
豪はその巨大な鬼神兵の出現に警戒するが、ジェネシックガオガイガーの性能を考えれば、この程度の相手は問題ないと判断する。
「ッ! 一体だけではないと言うことか……! それでもこの俺とジェネシックガオガイガーを倒すには足りないッ!!」
だが、なんと巨大な鬼神兵は一体だけではなく、複数体も出現したのである。
それには少し驚いた豪であったが、それでもジェネシックガオガイガーの有利に変わりはないと強気の態度を見せ、攻撃に備えるのだった。