みんな大好きちうタン
結論から言えば、最終課題をクリアしたネギとカギ。
原作どおり、学年トップの成績を残した。
しかしこの数日間、カギは極楽に過ごしたのに対し、ネギは大変だった。行方不明のメンバーを心配するクラスメイト纏め上げ、必死に勉強に力を入れてもらえるようにしたのだから。
アスナや木乃香、そして委員長であるあやかが協力してくれなかったら、さらに大変だっただろう。
だが、それも経験だと思い頑張ったネギであった。
「いやあ、最終課題は強敵でしたね」
「兄さん、図書館島へ行ってたんですね……」
「かわいー生徒を、見捨てるわけないだろう!!」
「だったら兄さんも、止めてくれればよかったのに」
「何を言う! 生徒の意見を尊重するのも教師の役目だぞ!!!」
「は、はい……」
ネギの正論にも耳を貸さず、むしろ俺が正しいとカギは言ってのけていた。
またカギは桃源郷を見れて喜び、テンションMAXだった。
さて、次のイベントはパーティーだ。
カギは次に起こることを考えていた。
その次に起こることとは、長谷川千雨がふてくされてパーティー参加を拒否するのを、ネギが連れてくるというものだ。
しかしカギは、今のネギがそこまでするとは思えなかった。
だから、自分でするしかないと思い、意気込んでいたのだ。
だが、そのカギの予想を裏切る結果となった。
長谷川千雨が普通にパーティーに参加したのだ。
カギは衝撃を受けた。
平穏や普通を好む千雨が、こんなデタラメなクラスのパーティーに普通に参加する訳が無いからだ。
原作でも、クラスを普通ではないと考え、半分拒絶していたのだ。
なぜ、こうなったかというと、やはり転生者が関わっていた――――。
…… …… ……
これは数年前、かれこれ8年ほど前の出来事であった。
千雨がまだ小学生の頃のことだ。
――――そこには二人のバカがいた。
バカだったが、悪いやつではなかった。
その男、バカだった。その男、クズだった。
一途で、愚直で、真っ直ぐだった。
だが、その男を抑えようとする男もいた。
それもまた一途だった、愚直だった。
同じ学校へ通いながらも、男はバカな男を従わせようとしたのだ。
いや、男というより、まだ彼らは少年だった。
「今日は真面目に掃除をやってもらうぞ」
「ヘッ、何言ってやがんだ? 俺はそんなもん知らねぇな!」
「貴様、それがクラスの法を乱していることになぜ気がつかない!!」
「知らねぇなっつってんだろ? じゃーな!」
「貴様!! 待て!!!」
濃い緑色の髪のきっちり制服を着た少年と、黒茶色の髪の制服をだらしなく着ている少年。
その二人が、掃除当番のことで、もめていたのだ。
毎日この光景を長谷川千雨は見ていた。こいつら何なんだと。
確かに掃除をサボると誰かがやらなければならないか、人数が減って面倒になる。
だがそこまで大層なことでもないのに、この委員長はそれを許さなかった。
バカな少年は逃げ出し、別の少年はそれを追って出て行ってしまった。
そんなことなど関係なしに千雨は帰るため、ひっそりと教室から出て行った。
その帰宅中に道を歩いていると、二人の少年の声が聞こえてきたのだ。
そこを千雨が覗いて見ると道を少しだけ外れた林の奥で、二人の少年が戦っていた。
しかしその戦いは、その二人の少年の常識はずれの戦いだった。
「貴様を裁く! ”絶影”!!」
「はっ! やれるもんならやってみろぉ!! ”シェルブリット”オオオォォォッ!!」
「な、なんだこれ!?」
二人の少年が声を上げると、地面が抉られ、虹色の粒子となった。
その粒子が一点に集中し、なにやら形を形成しはじめたのである。
また、バカな少年の髪は逆立ち、右腕には腕全体を覆うように、黄色のプロテクターのようなものが装着され、背中に三つの鋭い赤い羽が生えた。
そして委員長の少年は、その目の前に十字の輝きと共に、白と青色の人形のようなものを作り出していた。
――――スクライドで有名なアルター能力。
その物語の主人公たちが操るアルター”シェルブリット”と、”絶影”だ。
この二人は転生者で、いつもこのような小競り合いを繰り返していたのだ。
「俺は俺のルールに従う。てめぇのルールには従がわねぇ!」
「俺のルールではない! 学校のルールだ!」
「そんなんかわりゃしねーよ! じゃあ行くぜ! ”衝撃のファーストブリット”オオォォォー!!」
「チッ”絶影”!!」
バカな少年が叫ぶと背中の羽が一枚砕け、虹色の粒子を噴出し加速した。
委員長の少年はその人形を操り、人形の首から触手状の剣を伸ばし、バカな少年へと向けていた。
その直後、激しく衝突。
絶影の触手とシェルブリットがぶつかり、火花を散らしたのだ。
しかし、シェルブリットをそのまま押さえ、バカな少年は投げ飛ばされてしまったのだ。
「ぐあぁ!?」
「バカなやつだ。毎回同じ手が通用すると思ったら間違いだ! 行け”絶影”!!」
投げ飛ばされ、空中で身動きが取れないバカな少年。
その隙にさきほどの剣を、バカな少年へと突き立てたのだ。
それがバカな少年の腹部へと直撃し、吹き飛ばされ倒れる。
だが、委員長の少年は、これで終わったとは思っていない。
こいつはバカだが、執念深く、そして諦めが悪いことを知っているからだ。
「へへ……。痛ぇじゃねぇか……えぇ? だが、まだ終わらねぇ。終われねぇよなぁ!!」
「やはりまだ立つか……。だが、次で終わりだ!! ”絶影”!!」
「”撃滅のセカンドブリット”……!!!」
バカとバカと壮絶な争いであった。
この勝負、今回は委員長の少年が勝利したらしい。
しかしバカな少年は、敗北したのにも関わらず、さっさと逃げていったのだ。
完全に逃げられ、あきれている委員長の少年が取り残されていたのだった。そこへ、千雨がやってきて、何をしていたのか聞いたのだ。
「おい、委員長! 何をしていたんだ!?」
「っ!? …………長谷川か……。見られてたのか。失敗したな」
「ああ、しっかり見ていたぞ。何をしてたんだよ?!」
だが、そこへ千雨が現れ、今の出来事を驚いた様子で聞いてきたのだ。
委員長の少年は多少なりに焦ったが、すぐさま冷静さを取り戻して失敗したと言葉にしていた。
この戦いはあまり人に見せれたものではなく、こっそりと行っていたからだ。
そこで委員長の少年は適当に千雨をあしらおうと思った。
今の戦いのことを話しても、”普通の人間”には理解し得ないと思ったからだ。
「戦いだ。バカが掃除をサボらせないために、戦っただけだ」
「いや、それはわかるんだが、その変な力のことだ」
「……ふむ……、仕方が無いか……。掃除が終わったら話そう」
そこで、掃除をサボらんとするバカな少年をとっちめるために、戦いを行ったと委員長の少年は言った。
それは嘘や偽りなどなく、事実しか述べてはいない。
しかし、それを聞いた千雨は、聞きたかったのはそこではないと、変な力と言う部分を強調して言葉にした。
そうだ、千雨が本当に知りたかったのは、戦っていたことではなく、二人の少年が使っていた謎の力のことだったのだ。
委員長の少年はそこで、さらに失敗したと思った。
まさかそこまで見られていたとは思ってなかったのだ。
まあ、それでも見られたのなら仕方が無い。
委員長の少年は冷静に分析し、考え込むような様子を見せた。
そして委員長の少年は、とりあえず千雨にその謎の力のことを話そうと考えた。
ただ、その話の前に、バカな少年の穴埋めとなり、掃除をすることになったのであるが。
「あれは”アルター能力”だ。正式名称は”精神感応性物質変換能力”と言う」
掃除が終わり誰もが帰宅し、ガランとした教室の中、委員長の少年と千雨だけがそこへ残っていた。
もう夕方となっており、夕日だけが教室を明るく照らしていた。
そんなところで、委員長の少年は静かに口を開いた。
あの戦い、喧嘩で見せた能力の名、それはアルター能力と言うと。
――――――アルター能力。
正式名称、精神感応性物質変換能力。
スクライドと言うアニメに登場した特異能力。
その能力の特徴は、周囲の物質をアルター粒子なるものへ変換し、操る人間のエゴを具現化、再構築するというものだ。
ただ、バカな少年と委員長の少年は”特典”として能力をもらっているので、”自分のエゴ”を具現化しているのではなく、”貰った
「は? いや待てよ、意味がわかんねーぞ?」
「意味がわからなくて当然だ。それが”普通”だからだ」
「”普通”!!」
千雨は最初、その能力のことを聞いて驚いていた。
そんなおかしな能力がこの世に存在するなど思っていなかったからだ。
だがその次に”普通”という言葉に大きく反応した。
千雨は普通という言葉に敏感だ。
麻帆良には普通じゃないものが多すぎた。
だからどうという訳ではないが、千雨は普通の学校生活に憧れていたのだ。
「俺たちの能力は、”普通ではない”」
「ちょっと待て! その能力って何なんだ!?」
「俺たちの能力は、周りの物質を変化させ、自らの意思で力として具現化する。簡単に言えばそういう能力だ」
委員長の少年は、自らを”普通ではない”と断言した。
こんな能力を持っている自分が普通なはずがないと、委員長の少年は思っていたからだ。
そこへ一体どういうことなのだと、慌てながら叫ぶ千雨の姿があった。
どんな能力なのか疑問に感じたからだ。
そのことを委員長の少年は、少しずつ話し出した。
自分やバカな少年の能力は、そういう能力だということを、千雨に説明したのだ。
「なんでそんな力を持ってるんだ!?」
「それは最初から”普通”ではないからだ」
「最初から……!?」
千雨は次に、どうしてそんな能力を持っているのかが気になった。
それを問い詰めるように委員長の少年へ尋ねると、その少年はそのことにも答えてくれた。
と言うよりも、その能力は生まれたときから持っていたものだ。
委員長の少年は、転生者だ。
転生神から特典をもらい、転生させられた。
その時貰った能力が、スクライドの”劉鳳の能力”だった。
そして、自分は元々普通ではない、転生して力をもらった異端者だと思っているのだ。
さらに言えば、そもそもスクライドのアルター能力者自体が異端者であり、他者から存在を否定されるほどなのである。
それを踏まえての”普通ではない”という言葉だった。
「そうだ。さらに俺は5歳の時、その力に目覚めた」
「そ、そうだったのかよ……」
「そして、あのバカも、カズヤもその一人だ」
「あいつもか!?」
また、特典は年齢が5歳になった時に初めて発現するというルールだった。
委員長の少年もそのルールどおり、5歳の時にアルター能力が開花したのだ。
さらに、あのバカな少年も同じ能力を持っていると、千雨へバラした。
なお、バカな少年はカズヤという名前らしい。
千雨はあのカズヤという少年も同じようなことをしていたことを思い出しながらも、そんな力を持った人間が近くに二人もいたという事実に、驚きを隠せなかった。
「別に悪いことに使ってはいない。あのバカも、そこは弁えているようだ。先ほどの戦いも、特に何かを壊していない。まあ、能力上、地面が抉れてしまうのだが……」
「そーなのかよ……。まあ、そこは心配してねーけど」
ただ、その能力を使って悪事を行おうということは、委員長の少年は考えたことも無かった。
あのカズヤという少年が同じ力を持っていたからこそ、喧嘩に使っている程度だったのだ。
それはあのカズヤという少年も同じことだった。
まあ、それでも地面などを粒子へ変換し、自分の能力に再構築する必要がある。
その弊害で地面などを抉ってしまうと、少し後ろめたさを感じた様子で、委員長の少年はその説明に付け加えた。
故に、そういった心配は無いと委員長の少年は千雨へ話したのだ。
千雨もその辺りは特に嘘をついているとは思わなかったので、素直にそれを信じたようだ。
そんな能力で暴れれば、何かしら影響が出るし、新聞にも載るだろうと思ったからだ。
「聞きたいことはそれだけか? ならば早く帰るべきだな。そろそろ下校時間が過ぎる」
「いや、待て! もう少し聞きたい!」
「まだ何かあるのか? 答えられる範囲でなら答えよう」
とりあえず委員長の少年は、全ての説明を終えたと千雨へ話した。
また、委員長の少年は冷静ながら多少なりに驚いていた。
ハッキリ言えば嘘だとかバカだとか言われても不思議ではない話だったのを、目の前の千雨は真剣に聞き入れ受け止め、信じてくれていたからだ。
しかし、千雨にはもっと聞きたいことがあった。
こいつらの能力は目で見てしまったがゆえに、信じざるを得ないと思った千雨だったが、そんなことよりも聞いておきたことがあったのだ。
千雨は普通ではないことが嫌いだった。
この麻帆良はそれの集合体だった。この委員長の少年はそんな能力を持つ自らを”普通ではない”と答えたのだ。何か教えてくれるかもしれないと考えたのだ。
「この麻帆良の学園、”普通”じゃないことだらけだと思わないか?」
「ふむ、その”普通”が、どの”普通”なのかがわからなければ、答えようが無いな」
千雨はこの麻帆良が普通じゃないことだらけではないかと、委員長の少年へ尋ねてみた。この麻帆良は何かおかしい。
世界樹はおかしなぐらいデカイし、科学力だって周囲に比べおかしなぐらい発展している。
周りの人たちの身体能力やテンションの高さも普通とはかけ離れた存在だった。
そのことを委員長の少年が、どう思っているのかを知りたかったのだ。
ただ、委員長の少年は、千雨の質問が漠然としたことだったので、一体どんなことが普通じゃないことなのか、千雨へ尋ね返したのだ。
「うっ……、たっ、たとえばあのデカイ木とか!」
「あの木か、確かにデカイ。だが、それがどうしたんだ?」
「デカすぎだろ! ”普通”じゃ考えらんねー!!」
「しかし、存在しているのなら”普通”なのでは?」
「な、に!?」
ならば、一番わかりやすい例えとして、世界樹のことを千雨は話した。
あの木はでかすぎる、普通じゃないと思っていたからだ。
さらに、でかいだけでなく、光ったりもするのだ。
それなのに誰もが気にせず暮らしているのに、千雨は不満だったのだ。
だが、委員長の少年の答えは千雨が思っていたものとは違っていた。
それが普通でなくて、どうなのだという答えが返ってきたのだ。
ただ、委員長の少年は、別に存在するなら”普通”だと考えていた。
自分の貰った能力は本来存在しない”特別”だということを踏まえての答えなのだ。
委員長ならあれを”普通ではない”と答えてくれると思っていた千雨は、今の少年の言葉はショックだった。
まるで好きだった相手に振られたような、そんな衝撃を千雨は受けていたのだ。
そして、千雨は裏切られた気分になり、顔を下に向けてしまった。
「そ、そうだよな……。”普通”だよな」
「……デカイからと言って勝手に決め付けるのは、よくないということが言いたかったのだが」
「……どういうことだ?」
委員長の少年は、千雨が変な誤解で暗い気持ちになったのを察していた。
だから、答えを解くように説明をしていった。何が普通なのか、どれが特別なのかを。
「俺の”能力”は”普通”ではない、それは他人が使えない”特別”だからだ」
「あ、あぁ」
「だが、あの木は誰もがデカイとは思っている。この麻帆良ではありふれた存在だ。だからこそ、”普通”だと思っている」
「た、確かに……」
そうだ、自分の能力は神から賜った特典だ。
そんなものはこの世に使えるやつなどほとんどいないだろう。
だからこそ自身を普通ではない異常だと、委員長の少年は思っていた。
しかし、あの世界樹はこの麻帆良ではありふれた存在だ。
誰もがデカイと思っているし、なんか知らないが光る事だって知っている。
故に、誰もが気に留めずに普通だと思っているのではないかと、委員長の少年は千雨へ優しく説明したのだ。
千雨はその少年の説明に、ほんの少しだが納得していた。
周りがあれを騒がないのは、近くにありすぎるからだったかだと、少しだけ理解したからだ。
そう、ネズミの王国が近くにあったら、その近くの住人は特に珍しいものだと思わない。
珍しいと思ってやってくるのは、遠い場所から来る人だ。
あの木もそういうものなのかもしれないと、千雨はそこで考えたのだ。
「確かに俺も
「なっ何だってっ?!」
「……ありとあらゆるものが自分の常識とはかけ離れ、どうしたものかと思ったこともあった」
また、この委員長の少年も、麻帆良には驚いたと千雨へ話したのだ。
ここへ来た頃とはつまり、転生してやってきて、物心ついた時のことだ。
千雨はその委員長の少年の言葉に意外だと感じた。
自分が普通ではないと話す委員長の少年も、最初はこの麻帆良が普通じゃないと思っていたことに驚いたのだ。
と言うのも、委員長の少年とて転生者。
普通の暮らしからこの麻帆良に来れば、カルチャーショックの一つや二つぐらい受けるのも当然だったのだ。
「ただ、数年もここにいれば、この麻帆良が
「そ、そうなのか……。私は未だになれねーんだけど……」
「ふむ……」
まあ、ショックだったのは最初だけ。
何年も過ごすうちに、慣れてしまったと少年は言った。
ただ、千雨は何年も暮らしているが、未だにこの麻帆良の空気に慣れないでいた。
それを少年へ話すと、少年は腕を組んで少し何かを考えた様子を見せたのだ。
「長谷川は少し、周りを気にしすぎているのではないか?」
「そ、そうか?」
委員長の少年は考え込んだ後、静かに口を開いた。
千雨は周りを気にしすぎていると。何せ周りが普通じゃないと思うのは、周りをよく見ているからなのではないかと、少年は思ったのだ。
だからそれを千雨へ言うと、千雨はあまりわかっていない感じでキョトンとしながら、どうだろうかと思っていた。
「確かに麻帆良はとんでもない場所だった。俺も最初はそう思った」
「いや、現行でもとんでもねーから……」
「だが、それで不自由を感じたことがあったか?」
「は?」
委員長の少年は、確かに最初は麻帆良をすごい場所だと思った。違和感だらけだった。
千雨はそれを聞いて、過去形ではなく現在進行形でおかしい場所だと呆れた様子で言っていた。
ただ、委員長の少年の言葉は終わってなかった。
そこへ少年は、それで生活が不自由だったかどうかを、千雨へ聞いたのだ。
千雨はその突然の質問に、一瞬ポカンとした様子を見せていた。
一体どうしてそんなことを聞いてきたのか、理解できていなかったのだ。
「この麻帆良で数年生きてきたが、特に不自由を感じたことはなかった」
「そりゃ、そうだろ……」
「なら、別にそれでいいんじゃないか?」
「どっ、どーいうことだよ?」
委員長の少年は、短い間だったが麻帆良で生きてきて、何か不自由を感じたということはなかったと話した。
と言うのも、この麻帆良が異常だと感じてはいたが、そう言った部分で苦労を感じなかったが故に、少年はこの麻帆良に慣れたのだろうと思ったのだ。
まあ、麻帆良といえど日本である。
生前も日本人だった少年から見ても、突然生活が変わる訳ではなかったし、法律も変わる訳でもなかったのだ。
だから少年は気がつけば、麻帆良に慣れてしまったのである。
それを千雨に話すと、当然だろうと言う表情をしていた。
このご時勢、何か不自由があってたまるかと、そんなことを言いたそうな表情だった。
少年はそんな千雨へ、ならば普通でなくても問題ないのではないかと言葉にした。
千雨はそのことに体を震わせて、どういうことなんだと、声を張り上げて口に出していたのだった。
「長谷川がそのせいで何かに苦しんで、不自由な暮らしを強いられているのならそう言うのもわかる」
「っ、確かに暮らしだけで言えば苦労はしてねーが……」
「なら、あれこれ考えても疲れるだけだろう」
少年はこの麻帆良の異常さで、千雨の生活が抜き差しならない状況となっているのなら、普通がいいというのもわかると話した。
千雨は何か言いたそうな感じだったが、それを抑えて生活の部分で言えば苦労したことはないと正直に言った。
だったらそれでいいじゃないか。
少年は普通に生活できているなら、あれこれ考えても疲れるだけだと、千雨へ静かに語ったのだ。
「だっ、だけどよ!」
「それに、”普通じゃない”ことで悪いことでもあったのか?」
「私の精神的に悪いわ!」
しかし、千雨はそれで納得しない。
こんな普通じゃないことだらけでは、普通の生活などできないと思っているからだ。
自分の平穏は存在しないと考えているからだ。
ならばと少年は千雨へ、普通ではないことで何か大きな被害にあったのかと、質問してみたのだ。
すると千雨は顔を赤くし、怒りの叫びをあげたのだ。
そのせいでいつもイライラしているし、気が晴れたことがないと。
精神的に追い詰められていると叫んだのだ。
「……それだけか?」
「っ! ……あぁ……」
確かにそれはきついことだ。
ただ、それ以外に何かあったのかどうかを少年が聞けば、それだけだと千雨は答えた。
そう、千雨は少年に言われたとおり、確かに気にしすぎで毎日イライラしているだけなのではないかと、少しだけ気がついたのである。
「ならば俺が愚痴ぐらい聞いてやる。だから少し落ち着いてみたらどうだ?」
「お前が?」
「人間溜め込むから疲れたりイライラする。そのはけ口があれば、少しぐらい楽になると思うんだ」
「まっ、まぁそうかもしれねーけど……」
少年はそれを聞いて、精神的に楽になる方法を説明した。それはグチることだ。
一人でイライラすることを抱えているから疲れるのだ。
ならば、それを吐き出せばいい。そのはけ口になってやると、少年は提案したのだ。
千雨はその少年の説明に、確かにグチれば少しぐらい楽になるかもしれないと思った。
自分だけが普通じゃないと思って抱え込むより、ある程度理解のある少年に話せば楽になるかもしれないと考えたのだ。
「俺も一度は異常だと思ったことだ。多少なりに長谷川の気持ちがわかると思う」
「……本当か……?」
「あぁ」
少年もそこで、千雨と同じように麻帆良を異常と思ったことがあった。
だから千雨の気持ちは少しぐらいわかるかもしれないと、千雨へ話したのだ。
千雨はそのことに本当にわかってくれるのかと、少しだけ希望を感じた表情で聞いたのだ。
きっと千雨はそれを理解してくれる仲間が欲しかった。
ただそれだけだったのかもしれない。
そして、少年はその千雨の問いに、さわやかな笑顔でYesと答えた。
少しぐらいだろうが、わかってやれる部分があるかもしれない。
それをグチってくれても構わないと、そう言ったのだ。
「……お前、本当はいくつだ? なんか年上と話している気がするんだが……」
「それはこっちの台詞だ、長谷川。その齢で周りが異常だと言うのは、少し精神的に老けすぎなんじゃないのか?」
「なっ、何言ってやがんだ! このヤロー!!」
ただ、千雨はさわやかな笑顔の少年を見て、何か違和感を感じていた。 同じ年の男の子と会話しているはずなのに、なぜか年上の青年と、いや、大人の男性と会話しているような錯覚を覚えたのだ。
まあ、この委員長の少年は転生者。
多少なりにそう千雨が感じるのは当然と言えば当然だった。
しかし、委員長の少年も同じ気分だった。
まだ小学生だと言うのに周りのことに気を取られ、ストレスを感じている。
本当に小学生なのだろうかと感じたのだ。
それを千雨へ言うが、その言葉が致命的に悪かった。
少女といえど女の人へ、老けているなどとう言葉を使ってしまったのだ。
千雨はそれに激怒した。
老けているという言葉もそうだが、まるで自分が普通じゃないと言われているように聞こえたからだ。
だから千雨は怒り、右腕を握って少年に殴りかかったのである。
「待て! いきなり何をするんだ!?」
「私が老けてるだと!? 普通じゃねーだと!?」
「いや、そこまでは言ってないはずだが……!?」
「私にはそう聞こえたんだよ!」
少年は千雨のパンチを軽々かわしながら、突然どうしたと叫んでいた。 そこで千雨は先ほど感じたことを、怒りと共に叫びながら、再び少年へ襲い掛かったのだ。
少年は普通じゃないとまでは言ってないと弁解するが、千雨にはそう聞こえたのだから仕方がない。
千雨は自分にはそう聞こえたと怒気を含んだ声を出しながら、今度は左手で少年へ殴りかかった。
「それなら謝ろう。すまなかった。だからその手を下ろしてほしい」
「ウルセー! 一発殴らせろ!!」
「くっ……、やはり少女とは言え、女性に老けてるなど言うものではなかったか……」
「わかってんならわざわざ言うんじゃねー!!」
少年はまたもや千雨の拳を軽やかにかわしたが、千雨はまたもや右腕を振り上げていた。
少年は流石に自分が悪かったと感じ、すぐさま謝っていた。
が、もう遅い。
謝ったところで千雨の怒りは消えはしない。
一発ぐらい殴り飛ばさないと気が済まなくなっていたのだ。
少年はそんな千雨を見て、自分の先ほどの言葉を思い出して後悔していた。
いやはや、やはり老けているなどと女の人に使うものではなかったと、そう悔いていたのだった。
千雨はそれを聞いてさらに怒りのボルテージを上昇させた。
理解していたのなら、そんな言葉を最初から使うなと。
そして、とりあえず殴らせろと思ったのだ。
そんな千雨から少年は逃げてひたすら謝る姿と、逃げ惑う少年を追いかけて殴ろうとする千雨の姿だけが、その教室にあった。
その姿ははたから見れば、小学生そのものだった。
その後、千雨はカズヤという少年にも同じようなことを質問した。
だが返って来た答えは『どうであろうと、そんなもん俺には関係ねぇ』だった。
カズヤは周りのことなど、どうでもよいのだ。
ただ、自分の信じたことだけに、真っ直ぐなやつなのだ。
――――まあ、このようなことが千雨の過去にあった。
そんなことがあったので、騒がしい連中である2年A組のパーティーに、妥協して”普通”に参加していたのだった。
だが、しかし――――。
…… …… ……
「おい! 10歳の教師とかありえねーだろ!! しかも二人だぞ!? どうなってやがんだ!?」
「なんというか、突然だな……。まあ確かにそうだな、何かおかしい……」
「なんだよ、えらく簡単に認めたな」
「それは”普通”ではないと思ったからな。明らかに”異常”だ」
「はあ……。流が言うなら、そうなんだろうな……」
その後、ネギとカギが正式な教員となり、それを流と呼ばれた元委員長に、千雨は相談したのだ。
流もそれはおかしいと感じたので率直に千雨へそれを言うと、千雨はため息を吐きながら、流が言うんじゃやっぱりおかしなことなのだと、普通ではない何かを実感していたのだった。
「まあ、そうなってはしかたあるまい。もう少し付き合ってやるから今のうちに吐き出しておけ」
「ああ、この機会だから遠慮なく言わせて貰うぞ」
「というか、中等部にあがった時や前の担任の時も、ずいぶん荒れていた気がするんだが……」
中等部にあがった際、ちっこいのやでっかいのがいたり、ロボまでいたので、千雨はかなり騒いでいた。
また前の担任、高畑・T・タカミチにもずいぶん文句があったようだ。
ガトウが生きているので、”原作”よりも出張が少ないが、それでもよく出張していた。
そんなことがあったので、それらに頭にきた千雨が流に相談していたのだ。
千雨のグチを聞くと約束した流は、毎回千雨のグチに付き合っていたのだった。
…… …… ……
転生者名:
種族:人間
性別:男性
原作知識:なし
前世:30代鉄工所作業員
能力:アルター、シェルブリット
特典:スクライドのカズマの能力
適度に面白い人生
転生者名:
種族:人間
性別:男性
原作知識:なし
前世:30代警察官
能力:アルター、絶影
特典:スクライドの劉鳳の能力
適度に裕福な人生
無自覚リア充なら特に何も無く文句を言いながら生きていたんじゃないかなー
メガネは心の壁や色眼鏡なのかもしれない