騒動も完全に一段落した麻帆良。
ようやく誰もがクリスマス気分で遊び歩けるようになり、昼間の状況などなかったかのように、街には活気と賑わいが戻ってきていた。
3-Aのクラスメイトたちもネギ、カギ、それにナギやアリカを招き学生寮の大部屋を借りて、大々的にクリスマスパーティを開いていることだろう。
鳴滝姉妹は不思議な二匹の小動物を拾って絆を深めるだろう。
状助たちもひっそりと友人同士でクリスマスを楽しんでいるだろうし、アマネも夕方には麻帆良に戻ってきて、ここでできた友人たちとクリスマスを楽しんでいることだろう。
アルスも久々の家族と夜を過ごしながら、クリスマスを祝っているのだろう。
そんな感じで暗くなった麻帆良はクリスマスの装飾で不夜城のごとく光り輝き、各々でクリスマスを楽しんでいたのだった。
…… …… ……
だと言うのに、一軒の家では何やらやや重苦しい話し合いな空気が漂っており、クリスマスと言う様子はなかった。
それこそ三郎の家であり、初風の兄妹はとりあえず自分たちのことを説明するため、全員実家へと帰って行った。
最期に会議に出ていた初風が帰ってきたところで、全員リビングへと集まって談合を始めたのである。
「えー、つまり? お前たち全員転生者だったってことか?」
「はい、そうです」
「そうだねぇ」
「そのとおり」
「ですです」
で、とりあえず両親に自分たちが転生者だと言うことをカミングアウトする兄妹たち。
それを聞くのは彼らの父親。短い髪を七三訳にした丸い眼鏡の中年男性。されど太っても痩せてもおらず、いい感じの肉体を保持するこの父の名は限次と言う。
限次はそれをもう一度確かめるかのように質問すれば、四人の兄妹たちは全員頷いて肯定した。
「まぁ、俺らは予想はしていたがな。ガキの時もだが赤ん坊の時すら妙に大人しかったりして手がかからな過ぎたからな」
「そうよねぇ。普通ならもうちょっと手がかかるところなのにねぇ」
「へえー」
とは言え、父も母も息子娘が全員転生者なのは察していた。何故なら、小さいころから子供っぽくなさ過ぎたからだ。
それを限次が言うと、母親の百合恵も同意しながら、手がかからな過ぎたと言うではないか。
すでに40代後半近い母親の百合恵だが、年齢よりは若く見える顔つきで体もだらしない部分が特になく、スッキリしながらも凹凸のある体つきで、家族と同じく黒髪のセミロングの女性だった。
三郎はそれを聞いて、ただただ感心したような声を出すだけだった。
「そんなもんかねぇ?」
「確かにそう言われるとそうだねぇ。子供とかなんて本来ならもう少し泣きわめいたりするもんだものねぇ」
初風はそう言われてもピンとこないのでよくわからんと腕を組んで考え、二葉は元主婦ということもあり子育て経験から両親の言葉に賛同。
「お姉、なんでそんな詳しいの?」
「元々主婦だったからさね」
「へー……、えっ? あれで?」
「一々うるさいよ!」
四華は二葉がなんか知ってるようなことを言い出したので聞けば、前世のことを答えてきた。
が、二葉の前世が主婦だったのを聞いて、二葉のいつもの行動を思い返して噓でしょ? と言い出した四華。
そんな風に言われた二葉は、ちょっとだけ怒った様子で叫んでいた。
「まあ、俺らも”転生者”なんだけどな?」
「隠していてごめんなさいねぇ」
で、そこで限次が突然自分たちも転生者だとカミングアウトしてきて、その横で黙ってたことをしれっと苦笑して謝る百合恵。
「んん!?」
「は?」
「うそ!?」
「えー!?」
兄妹たちは誰もがその暴露に驚き、驚愕の表情を浮かべた。
まさか両親までもが転生者だとは誰も思っていなかったからだ。まあ、ちょっと考えれば兄妹全員転生者と言う時点で、もしかしたら、とも思えなくもないが。
「家族全員転生者だったのか……。はぁ……、最初から知ってれば自分が転生者だってこと思いつめなかったかもしれないなぁ……」
「あー……、サブもちょっと悩んだのかい?」
「最近までね……。でも家族も転生者だって聞いて、さらに気持ちが軽くなったよ」
「それは重畳だねぇ。それに僕だってちょっとぐらい悩んだよ」
「兄貴も悩んだんだな」
「まあ、転生ってズルみたいなもんだし」
三郎は自分の家族が転生者だと知っていれば、もう少し銀髪野郎の言葉に惑わされずに悩むこともなかっただろうと、肩を落としながらつぶやいた。
とは言え、家族が全員自分と同じということを知り、心が軽くなったのも事実だった。
そんな三郎のつぶやきに初風も反応して質問すると、三郎も小さくため息を吐きながら答えた。
また、初風も転生や特典のことを悩んだ時期もあったのでそれを三郎に言うと、三郎も自分だけが悩んだわけじゃないことを知り、ほっとした様子を見せた。
「んで初風は魔法使いだったって?」
「はい。特典に魔法使いとしての力を貰いました」
そこで限次が初風へとそれを聞き、初風も正直に自分の特典のことを話す。
「実はなぁ、母さんも昔は魔法使いだったんだ。で、父さんはその従者だった」
「────はあ?」
すると、限次が自分たちも魔法使いとかやってたよ、と暴露を始めたのである。
なんと母親の百合恵が魔法使いで父親の限次はその従者だったと言うのだ。
それには流石の初風も驚きの声を上げ、ありえねえ! というような様子を見せていた。
「なんて言った?」
「かーさんととーさんは魔法使いと従者だったって。わたしゃ魔法使いってのはわかるけど従者ってのがよーわからんけどね」
「マジかぁ……」
「なんだかなぁ……。自分の中の家族像が砕け散っていく……」
当然原作知識がある四華も驚きすぎて現実逃避し、二葉に今の父親の発言を聞き返すほどだった。
二葉は原作知識がないのでそうなんだー、程度にしか感想がなく、父が言ったことを四華へと復唱してやると、四華は頭を抱えだしたのである。
さらに三郎も明後日の方向を見ながら、かなり困惑気味な様子だった。
「初風が生まれる前は、魔法世界でブイブイ言わせた魔法使いと従者のコンビだったんだ。懐かしいなあ」
「そうですねぇ」
両親である限次と百合恵は元々魔法世界に住んでいた。
初風が生まれる以前は結構名の知れた魔法使いと従者のコンビだったと言う。
それを昔を思い返しながら語る限次と百合恵。いやあーあの時はまだまだ若かったなぁ、と。
「うっ、嘘だろ……? 僕、魔法使いになるのに杖がなくて、困り果てていたのに……」
「それは苦労を掛けたね。でも、お前が生まれるって時に引退して、一般人として転職したから見つからないように隠してしまったんだ」
「当然でしょう? 一般人には魔法使いだってバラす訳にはいかないしねぇ」
「はい……、それはわかってますが……」
初風はそのカミングアウトに一番慌てふためき、狼狽え始めた。
何せ初風は魔法使いの特典を選んだ転生者で、家に杖がなくて数年間困っていたことがあったからだ。
限次も初風の特典を聞いたので悪いねぇと言うのだが、魔法使いは20年前ほどに引退して一般人になったので、見つからないようにしていたと説明。
同じく百合恵もそう説明すると、初風も理解した様子を見せながらも、ちょっと納得いかないと言う顔を見せていた。
「でも魔法使いになれたんじゃないかい?」
「どこかで修行でもしたのかね?」
「まあ、おかげで先生に出会えましたし……」
「それでいいじゃないか。俺らが教えるよりもよっぽどよいかもしれんしねぇ」
が、話によるとすごい魔法使いになってるみたいではないか。
それを限次と百合恵が初風へと言うと、初風は別のところでいい出会いがあったからと話す。
なら、それが一番だったんじゃないかと、限次は頷いて言葉にした。
「で、サブと二葉は一般人だった、と」
「はい。俺は料理がうまくて運動神経がいいだけの人だね。まあ、友達から気の操り方を教えてもらって、毎日復習してるけど」
「私は楽しく人生送れるようにって感じだね。まあ、もう一つは前の家族に会えればいいなって感じだけど」
「なるほどねぇ」
次に話は一般人としての特典を貰った二葉と三郎へと移った。
限次が二人に話しかけると、二人は自分の特典を説明しだす。
三郎の特典は料理の才能と運動神経。
そして、二葉の特典は”楽しい人生”と”前世の家族がもしもこっちに転生してきたならもう一度再会したい”という特典と言うよりも一つの願いであった。
とは言え、こっちに来るってことはつまり、神のミスで死んでしまったことになる。それはそれでかなり嫌だし、強制的にこっちに来させられても嫌なので、会えたらいいなと言うレベルの願いにしてある。
「よつは?」
「私は咸卦法とか……、ブレのない躯体とか……」
「ほほー」
で、百合恵が末っ子にそれを聞くと、四華も素直に静かに答えた。
四華は”咸卦法の才能”と”ブレない躯体”を貰っていた。つまりめっちゃ戦闘力が高くなる特典でもある。
限次はそれを聞いて関心の声を漏らす。
究極技法の咸卦法を得点に選んだと言うことは、戦士タイプなんだろうな、と一瞬で理解したからだ。
「咸卦法を? すごいね四華は」
「すごくなんかないよー! 習得に7年ぐらいかかったしー!!」
「大変だったんだね」
初風は当然咸卦法を知っているので、そんなすごい特典を選んだことを称えるが、四華は習得に7年の歳月を費やしたのでそれはないと言う。
才能を貰ったのに習得に7年って……、難易度高すぎでしょ、と本気で思っていたりしたものだし。
で、そう言う四華を初風は労った。
確かに咸卦法はそう簡単に使えるようになるものではないも、初風は覚えていたからである。
「なあ、その咸卦法っての、俺にも教えてくれない?」
「はあ? なんで? めっちゃ大変だよ?」
「それでもお願いだよ。俺、もっと強くなりたいんだ。気の力だけじゃ全然足りないんだよ」
「なんで? もう平和でしょ? ああ、でも今日みたいなことがあったらアレか」
「そういうこと」
そこへ三郎が咸卦法を学びたいと四華へと頼みだした。
四華は習得するのに頑張ったので、教えたって簡単にはできないと言うが、三郎とてもっと強くなりたいと願っているので、なんでもいいから力を付けたくて頼んでいるのだ。
そんな三郎に四華は”原作的に”もう何もないだろうと思ったが、今日なんかすごいことになったのを思い出し、なるほどなあー、と納得。
三郎も四華の言葉を肯定し、だからこそだと言う。
「サブはねぇ。彼女を一人で護り抜く強さが欲しいんだろう」
「あっ、兄貴!」
「あー! なるなる」
初風は三郎が何故力を求めているのかを、鋭く指摘する。
自分の彼女である亜子を自分の力だけで守りたい、守れるようになりたいと、それを強く想っているからだと。
が、突如として自分の内情を語られた三郎は狼狽えて大きく叫ぶ。
その横で四華は事情を理解して数回頷いていた。確かにそりゃ強くなりたいわ、と納得した様子であった。
「サブ兄の彼女って亜子ちゃんだったっけっかぁ……。隣のクラスだから廊下で見かけるぐらいしか知らんけど」
「うん、そうだよ」
と言うのも、三郎の彼女は”原作キャラの和泉亜子”だ。
それを考えた四華は、今回みたいなことが起こってまた狙われるかもなあ、と言うのも理解したので、三郎が力を欲するの気持ちも察したのである。
まあ、それでも四華は3-Aの隣のクラスに在籍しているので、亜子のことは遠くからしか見たことないし、挨拶もしたことがなかったが。
「とりあえず教えるぐらいはできるけど? 習得できるかはわからないけどね」
「頼むよ」
「別に内容自体は単純なんだけどね。まっ、やってみなきゃわからんし頑張りなよ」
そこまで言うのであれば、教えるのは構わないと四華は言うと、三郎は双子の妹に頭を下げた。
ただ、咸卦法は心を無にすることでようやく完成する技法。これができなければ一生習得などできない。それを踏まえて四華は教えるができるかは三郎次第だと言うのだ。
「お姉ちゃん全然話についていけないんだけど、みんなわかってんの?」
「お姉だけ魔法とかに触れてなかったんだ……。そりゃわからんよね」
「二葉はそのままでいいと思うよ?」
しかし、長女二葉は魔法とかそういうものにまったく触れていないので、家族の会話がまったくもって理解不可能だった。
四華も初風もそりゃそうか、と言う顔をしながら、別に無理して知る必要はないと語る。
「いやー、お姉って魔法生徒さんの友人だよねぇ? あっ、本人がボカしてたの忘れてたわ」
「なんのこっちゃね?」
「あははー! なんでもないない!!」
「ごまかさない!」
だが、四華は二葉が魔法生徒である高音の友人なのを思い出しそれを言ってしまい、ハッとして失言だったと訂正。
されどもう二葉の耳にそれが届いており、聞き出そうと質問を投げてきた。
二葉はそこでごまかそうと苦笑しだすがもう遅い、二葉は怪しんでさらに追及しだしてしまったのだ。
「いやー、でもほら! お父さんが言ってたように魔法使いは一般人に魔法を隠蔽してるからさ! …………あっ!」
「へー、なるほどー、ふーん。つまり、高音も魔法使いだったのね?」
「えっ? あはははは? どうかなあ? あはは?」
そこで四華は魔法使いって隠蔽するのが基本だし、とさらなる失言をかまし、ヤベェ! とハッとしたが、二葉はその言葉で全てを察し、なるほどなー、と腕を組んで納得してしまったのである。
それをはっきりと聞かれた四華は、もう笑ってごまかすしかないと、苦笑いを続けるだけであった。
「バレバレだっつーの!」
「ごっ、ごめんなさいーい! 黙っててお願いお姉ー!!!」
「わかったわかった! わかったから!」
もうごまかしてるのが見え見えの四華に、二葉はもう遅いと突き付ければ、四華は高音が魔法使いなのを隠してることので黙っててほしいと頭を下げた。
なんかもうずっと頭を下げまくってテーブルにおでこをぶつける四華に、二葉も黙ってるからもういいよと叫んだ。
「ありがとうお姉ー!! 最高の姉ー!!」
「褒めてもなんも出ないよ!! あんたも随分現金だよねぇ!」
「私が現金って言ったの根に持ってたんだ……」
黙っててくれると約束してくれた姉に対して四華はめっちゃ嬉しそうに笑って礼を言い出せば、二葉は四華に現金だと言われたのを思い出してそれを言ってやると、四華はそれ言われたの気にしてたのか……、と地味に恨みがましい姉だな、と思ったのだった。
「まあ、今日はクリスマスで家族も集まった訳だし、ちょっとしたパーティでもするかねぇ」
「ケーキもあるぞ!」
「やったね!」
とりあえずある程度話し合いが済んだのと言う様子なので、百合恵がクリスマスなんだし家族パーティでもしようと言えば、限次がさっと1ホールのケーキを取り出す。
四華はケーキを見て大はしゃぎして喜び、下をなめずってニコニコしていた。
「久々だねぇ、家族全員が揃うのなんて」
「そうだね。私ら全員寮暮らしになっちゃったしね」
「でも帰ってきたら自分ちだなあって実感するよ」
初風も家族団らんが久しいことを語れば、二葉もその理由を述べて皿を用意する。
三郎もこここそが自分の実家だと感じながら、リラックスできる場所だと再認識。
そのあとチキンやらなにやらが用意され、家族でクリスマスの夜を楽しく過ごすのであった。