裕奈は早速ゼクトのもとで修業を始めた。
ゼクトもエヴァンジェリンが持つ「別荘」のようなダイオラマ魔法球を使って修行させる。初風が来た時にアルカディアの皇帝に頼んで取り寄せてもらったものだ。
おかげで元々射撃のセンスがずば抜けていた裕奈は、ゼクトの指導のおかげでメキメキと腕を上げていった。
「調子はどうですか?」
「いつも通り元気ですよー!」
そこへ初風がやってきて裕奈へ声をかければ、裕奈は元気よくニコニコと挨拶をする。
「先生、彼女はどうですか?」
「ふむ、この子は
次に初風は師匠であるゼクトへ声をかけて裕奈のことを聞けば、ゼクトは一番弟子のナギを引き合いに出しながら裕奈のポテンシャルを語った。
「高い身体能力を使って戦闘するスタイルはあいつに近い。まあ、流石にあいつには及ばぬが……、手数を増やせそうなのはよいことじゃな」
「そうですかー」
裕奈は自身の肉体を柔軟に使って戦う戦士タイプに近い戦闘スタイルだ。
それはある意味ナギに近いものがある。ナギも自分のパワーでぶん殴るシンプルな戦闘スタイルだからだ。
ただまあ、ナギは師匠を得ても魔法をあまり習得することがなかった、魔法使いとしてはかなりバカな方だ。
それを最強たらしめるのは馬鹿みたいな魔力量と根性とタフな肉体が合わさってのこと。
ライバルのジャック・ラカンがバグだと言うのなら、こいつもまたバグなのである。
で、つまるところナギのようなすさまじい強さはないが、ポテンシャルは高いので指導する側としては面白いとゼクトは話す。
初風もゼクトの話を聞いて、なるほなるほどと相槌を打った。
「初風もインテリと言うか、頭使って小難しいことを考えてこざかしいことをする魔法使いになってしまったしのう」
「言い方が酷くありませんかね?」
「褒めておるのじゃ」
ナギの次に手掛けた初風は典型的な魔法使いスタイルだったが、神から貰った特典のせいで小手先の技術で何でもできるタイプだった。
それをゼクトはちょっと皮肉めいた言い方をするが、初風はそれに対してつっこむとゼクトは別に馬鹿にしたワケではないと言う。
「まあ、彼女は射撃戦闘主体の魔法戦士みたいなもんじゃから、あいつとは違うところはあるがね」
「ほうほう」
で、ゼクトは裕奈のバトルスタイルは魔法銃での精密な射撃なので、戦い方自体は上位魔法ブッパしながらぶん殴るナギとは違うと言う。
初風はゼクトの説明を聞きながら数回頷き、なるほどなあと思っていた。
「あのー」
「僕になにか?」
そこへ裕奈が初風へと話しかけてきた。
何か話したそうな表情の裕奈に、初風はどうしたんだろうか、と声をかける。
「私と仮契約してほしいんですけどー……」
「仮契約ですか?」
「はい!」
裕奈が初風に話したかったこととは、つまり仮契約のことだ。
初風も従者が欲しいなあ、と思っていたが、末妹と同じ年齢の子がそれを言ってきたのでしれっとした態度で聞き返すと、裕奈は元気な声で返事を返してきた。
「私、アーティファクトが欲しくて……。あれがあればもっと強くなれるんじゃないかなって」
「確かに色々な強化を得ることはできますねぇ」
「ですよね!」
友人のまき絵がアーティファクトを使っているところを見た裕奈は、アーティファクトがとても欲しいと思ったので、それなら仮契約するしかないと思い、初風に頼もうと思ったのだ。
それにアーティファクトがあればもっと強くなれるし、友人たちを守る力にもなると思ったからだ。
初風もアーティファクトがあれば強化になると思った。契約者の魔力を得て防御もあがるし、アーティファクトの効果も得ることができる。
当然裕奈もそれを知っているので、大きく頷いて肯定。
「でも、何故僕に? 先生でもいいと思いますが……」
「いやー、確かにそうですけど。だけど、あの時怪我を治してくれたのは初風さんでしたから!」
「別に恩や借りなんて思ってないから気にしなくていいんですけどねぇ」
「それでも! お願いします!」
ただ、仮契約をするのであれば自分ではなくゼクトでよくないだろうか、と初風は言うと、裕奈も間違いじゃないとは言うものの、怪我を治してくれた恩人たる初風と仮契約をしたいと言う要望があった。
とは言え、初風は別に恩を売りたくてそうした訳じゃないので、ちょっと困った様子で苦笑する。
なので自分にそこまで気にすることはないと初風は言うのだが、裕奈は自分の気持ちを曲げる様子はなく、頭を下げてお願いしてきた。
それに別に裕奈は仮契約者が誰でもいいと思った訳ではない。
師匠であるゼクトでもいいとは思うのだが、それでも傷を癒してくれた初風と仮契約をしたいと思ったのは間違いじゃないのだ。
「うーん、僕かぁ…………」
が、それでも末妹と同じ年齢の子と仮契約するのはなぁ、と言う気持ちが強い初風は、腕を組んで悩みだす。
「初風は従者が欲しかったのではないか? なら、ちょうどよかろうに」
「せっ、先生ぇ!?」
そこへゼクトが初風が従者を探して旅していたことを言い出した。
突然刺された形でつっこまれた初風は、驚いて戸惑った様子を見せる。
「そうなんですか?」
「ええ、まあ……」
で、それを聞いていた裕奈もそれを聞けば、初風は手を後頭部に当てて小さく肯定。
確かに従者が欲しくて色々旅して探していたけど、流石に末妹と同じ年齢の子を、しかも同じ学校で同じ学年の子を従者にするのは抵抗がある様子。
「えっ、つまりそれって……、彼女募集中だったってコトなんですか!?」
「あー、魔法使いの常識的にそう考えちゃいますよねぇ」
が、裕奈は従者が欲しいと言う言葉を深く考えて、恋人が欲しいのかな、と思ってそれを言うが、初風は別にそういう意味で募集していないので違うんだなぁ、と言い出す。
「いやー違うんですよ。僕は結構魔法世界とか旅するのが好きで、でも何かあって一人で戦うのが寂しいなあって思って、そこで仲間がもう一人いればなあって思っただけなんですよ」
「彼女募集とかじゃないんですか!?」
「違います」
初風はあくまで戦いのパートナーとして従者を欲していた。一人で戦うより二人で連携して戦いたい、というかこの連携というものに憧れがあった。
なのでそれを裕奈に説明すれば、裕奈は違うの? とまた聞いてきたので、初風ははっきりと強めに違うと言っておく。
「彼女募集中で従者選びなんてしませんし、それに君が言った理由だとまるで君を彼女にしなきゃいけないみたいじゃないですか」
「あっ!? えっ!? そっ、そうなります!?」
「なっちゃいますねぇ。だから違いますよ」
「そうですかー。いやー、まあ、そうですよねー」
と言うか、恋人として従者を迎えるのであれば、従者にしてほしいと頼んできた裕奈を恋人にしなくちゃいけなくなるけど? と初風は語れば、裕奈ははっとして驚き、確かにそうかと、気が付いて驚く。
そう言う訳でまったく無関係だと初風が言葉にすると、裕奈もようやく納得したのか、何度も頷いて見せた。
「……どうします? ほんとに僕と仮契約します?」
「はい! お願いします!!」
「…………わかりました。しかし、どう仮契約します?」
「あー……」
「色々方法はありますけど、どうします?」
しかし、まだ完全に仮契約すると決めた訳ではない初風は、裕奈にもう一度念を押して確認すると、裕奈は元気強く返事を返してきた。
だから初風は覚悟を決めて裕奈と仮契約することにしたが、次に別の問題として仮契約にも色々と方法があることを語った。
裕奈も仮契約の方法と言われ、そういえば仮契約するなら準備が必要なのかなと思った。
また、初風は仮契約の方法はどうしたいのか、裕奈へと要望を聞く。
「私の担任の先生がオコジョ妖精連れてるんですけど、それでどうでしょう?」
「そうなりますと方法が接吻になりますけど……?」
「あっ、そっか」
と、裕奈はふとカギが連れているオコジョ妖精のカモミール、通称カモくんを思い出した。
彼がいれば簡単に仮契約ができると思った裕奈はそれを言葉にすると、初風はかなーり渋い表情を見せながら、その方法だとキスするけどいいのかと尋ねてきた。
裕奈もそれを聞いて思い出したのか、小さく声を漏らした。
「そう言えば、その方法でも僕の年齢なら、ギリギリ犯罪者にならずにすみますかね……?」
「犯罪者っ!?」
「未成年者へのわいせつ罪ですよー。年齢差が大きいと合意であっても犯罪になるんですよ」
「あーっ!」
それで初風はキスはまずくないかなあ、と本気で思い、年齢差的に犯罪になるかならないかぐらいか? と言い出した。
犯罪者、という言葉に裕奈は大きく反応して飛び上がりそうになったところに、初風がなんでそうなるかを説明しだす。
未成年者へのそういった行為は年齢差があると、合意だろうが関係なく未成年へのわいせつな行為とみなされて犯罪になっちゃうんだよ、と。
その説明に裕奈は大きな声を出して納得し、そんなことがあったんだ、と思った様子だった。
「ですからここは血の契約にしましょう。それなら先生が手伝ってくれればできると思います」
「血での契約ですか?」
「はい。魔法陣の中心に両者の血を垂らして混ぜ合わせることで行える儀式です。指先に針をちょっと刺して血を垂らすんですよ。傷は僕がきっちり治しますし」
「なるほどー!」
と言うことで、そっちは念のためやめておいて他の方法、血を使った方法で行おうと初風が提案。これなら師匠であるゼクトも準備できるだろうと思ったのだ。
その方法を聞いた裕奈は、なんだろうそれ、と尋ねれば、初風はその方法を静かに説明して語り聞かせ、裕奈は理解した様子で元気に声を出す。
「あっ、でも、みんな何か魔法陣が描いてある紙で仮契約してたような?」
「そんな便利なものがあるんですか?」
「はい、あるみたいです」
だが、裕奈はそこでさらに、ネギたちが仮契約を簡単に済ます方法を使っていたのを思い出した。
何やら紙を一枚使う仮契約で、それがあればすぐにできた。
それを聞いた初風はそんなすごいものがあるのかあ、と聞けば、裕奈はしっかり肯定して返事を返す。
ただ、裕奈はそれをちらっと見ただけで使ったこともないので、あまりよくわかってないと言う感じだった。
「そんなものもあったのう」
「先生もご存知で?」
「アルカディア帝国の皇帝が部下に渡したものじゃな。両者の指紋で仮契約する方法じゃ」
「すごいですねぇ」
二人の会話を聞いていたゼクトは、ふむと思い出しながらそれについて話し出した。
初風はゼクトが何か知ってそうな仕草を見せたので聞いてみれば、ゼクトはその仮契約用の紙のことを説明した。
アルカディア帝国の皇帝が簡単に仮契約を済ませられるように用意したもので、それを部下たちに配っていたと。
その説明に初風は少しびっくりと言う態度で、そんなものがあるんだなあ、と思った様子を見せた。
「だけど今あるかはわからないですから、血の方でいいです」
「そうですか。じゃあ先生、頼みます」
「うむうむ」
まあ、裕奈はふと思い出したことを言っただけであり、それが今誰かが持っているかも知らないので、血での方法でよいと言った。
その答えに初風はそれならばと、ゼクトへお願いすれば、ゼクトは頷いたあとにすぐさま魔法陣を用意してくれた。
「では、”
ということで、初風はスッと取り出した針でチクリと人差し指を刺して魔法陣の中心へと血を垂らす。
さらにもう一本針を取り出して裕奈へと渡し、裕奈もそれで恐る恐るゆっくりと人差し指を傷つけて、初風の落とした血と同じ場所へと血を垂らした。
そして、初風が呪文名を口にしすれば、契約が完了されて裕奈の方へと一枚のカードが出現。これこそ仮契約カードである。
「無事完了したようですね。では”治癒”」
「あっ、ありがとーございます!」
「いえいえ」
初風はすぐさま自分と裕奈の傷を魔法で癒せば、裕奈はペコリと頭を下げて礼をした。
そんな裕奈に気にする必要はないよ、と言う感じの態度で微笑みを見せる初風。
「これが仮契約カード……。
そして、裕奈はカードをまじまじと見ながら手で何度か触った後、アーティファクトを起動する。
すると現代的な銃の形をしたアーティファクトが出現。
七色の銃と言って、魔力消失などの効果を持つ特殊な魔法弾を放つことが可能な拳銃型のアーティファクトだ。
「あっ!! これおかーさんと同じの……!!」
「銃ですか。いいんじゃないですかね」
「いいよ! これすごくいい感じ!!」
さらに、このアーティファクトは裕奈の母親である夕子のアーティファクトでもあり、同じものを得たということになる。
それに驚きながらも大きく喜ぶ裕奈は、ニコニコと嬉しそうに銃のグリップを握りしめてマジマジと眺めていた。
また、裕奈はこのアーティファクトが、まるで手に吸い付くような感覚ですごく馴染むことに気が付き、初風の言葉に元気よく笑顔で返した。
「やった! 試し撃ちしてみよーっと!」
「元気でいいですねぇ」
「なに年寄りみたいなことをいっとるんじゃ」
とりあえずアーティファクトが手に入ったのだからと、早速試し撃ちを試みようと走り出す裕奈。
そんな裕奈のはつらつな様子に初風はなんか年季の入った人のようなことを言い出した。
ゼクトは初風の老けた言葉に反応し、若いもんが何言ってんだとつっこむのだった。
その後裕奈のアーティファクトの効果を見ながら、さらなる指導を行うゼクトと初風だった。
…… …… ……
こちらは麻帆良内にある初風の実家。
そこでは三郎が必死になって咸卦法の練習を行っていた。
「左手に『魔力』……、右手に『気』……!」
全神経を集中しながら、左手に魔力を溜め、右手に気を溜める三郎。
そこで魔力と気を合わせようと両手を近づけたが、魔力と気が反発し合って弾けてしまう。
「あちゃー、また失敗かぁ」
かれこれ三郎はもう何度も行ってきた練習だが、一向に成功しない様子。
もはや見飽きるほど何度も失敗しており、またかぁ、とため息を吐く。
「ほら見なさい! 早々にできるワケがない!」
「できる訳がない! って四回言ったらコツ教えてくれる?」
「コツもクソもないんだって! 左手に世界を、右手に自分を、世界と自分を一つにするの! つまり自分を無にできるまで頑張るしかないんだよね」
「無……かぁ……」
近くで指導をしていた双子の妹の四華が、そんなに簡単にうまくいかないと強く訴えれば、三郎はちょっとした冗談を言い出した。
冗談言えるんならまだ余裕だな、と四華は思いつつも、コツとかないから頑張って自分を無にしろと言うだけだ。
とは言え、自分を無にするのは難易度が高いようで、三郎もそこに苦戦している様子だった。
「実演するから見てなサブ兄」
「お願い」
「左手に『魔力』。右手に『気』。合成ッ!!」
で、とりあえずお手本を見せてやると四華は咸卦法を発動。
流石に習得した後なのでするりとあっけなくやってのけて見せた。
「間近で見るとすごいなぁ」
「7年、これができるようになるまで7年かかった! 長かったんだからね!!」
「7年かぁ……」
おお、すごい、気での強化なんて目じゃないぐらいの力を感じた三郎は、四華の咸卦法に少し驚く。
ただ、四華はこれを習得するのに7年の歳月を要しており、努力と根性と根気が必要だったと言う感じで叫ぶ。
三郎も7年と聞いて、随分と長い間修練していたんだなあ、と気の遠くなるような気分を味わっていた。
「無…………無……」
三郎は早々に力を付けたいと言う気持ちもあるが、簡単にはいかないと言うのがわかり、まずは自分を無にすることに集中しようと考えた。
「左手に『魔力』、右手に『気』……!」
そして、もう一度三郎は咸卦法を発動させようと手順通りの動きをするが、やはり魔力と気が混ざり合わずに反発し、弾けて消えてしまう。
「またダメだー」
「根気よくやらないと無理に決まってんじゃん。まあ、がんばんなよ」
「頑張ってみるさ」
自分を無にするのって大変だなあ、と改めてその苦労を理解した三郎に、四華はこれをずっと頑張っていくしかないと言いいつつ応援してくれた。
妹に応援されたんなら、できるようになって見せようと思った三郎は、気長に頑張ると言うのだった。
…… …… ……
とは言え、練習を繰り返してもまったく上手く行かない三郎は、状助と覇王に相談することにした。
「ってことでずっと練習してるんだけど、全くできないんだ」
「咸卦法かぁ……、考えたね」
めっちゃ練習してるんだけど上手く行かなくて困ってるんだ、と三郎が話すと、覇王は咸卦法に目を付けたことを少し感心した素振りを見せる。
「でもよぉ、あれは難易度激ヤバじゃあなかったかぁ?」
「うん、難しいよ。妹も7年頑張ったって」
「7年もかよぉ……」
ただまあ、状助も咸卦法の習得難易度の高さを
当然三郎はその身で味わったのでクソムズイと言いながら、自分の妹も習得に7年かかったと説明。
状助は7年と聞いてそんなに……、と呆けた様子を見せた。
「状助君はアスナさんが使ってるところよく見てるよね? どうなのかな?」
「あいつは雑に使ってるからもう訳がわからねぇぜ」
「そうかー、参考にすらならないレベルかぁ……」
三郎は状助へと、アスナの咸卦法を間近で見ているなら何かないかと尋ねるが、状助はアスナの咸卦法はもう手足のようにと言うか呼吸するかのように行えるレベルなので、参考にはならないと言う。
まさに桁違いなものだと聞いた三郎も、何か掴めるものが聞ければと思っていたが、それが無理なレベルなのを理解して参考にするのを諦めた。
「つってもよぉ、あの高畑先生すら数年かかったって話だぜぇ? 簡単にできる訳がない! だぜぇ」
「だよねぇ。地道に頑張っていくしかないのかな?」
「とりあえず自分を無にできるようにならないとね」
状助は咸卦法の習得は
覇王も咸卦法の決め手となる自分を無にすることを話した。
「覇王君は使えるのかい?」
「やろうと思えばできるんじゃない? 僕にはスキルに透化があって、それが明鏡止水の心得ってやつだからさ?」
「なるほどねぇ」
「なんかすげーズルいぜそれ!」
そういうのなら覇王はどうなんだろうか、と三郎が質問をする。
覇王はなんか何度か転生して修行していると言うのだから、やれるのだろうか、と疑問に思ったのだ。
すると覇王はやったことはないけどって感じで言いながら、できると思うよと言い出した。
何故なら覇王は”Fateのアサシン・佐々木小次郎”の特典を貰っており、そのスキルの一つである透化という気配遮断の代わりになっているスキルが、明鏡止水の心得だからだ。
それを聞いた三郎はへえー、と言う感じで納得するが、状助はスキルで心を無にできるのズルくね? とか言い出した。
「状助のスタンド二つよりはマシだと思ってるけど?」
「うぐっ!?」
「あー、確かにズルだねそっちも」
が、覇王はズルいと言う言葉に反応し、状助がスタンド二つも特典で貰った方がズルじゃん、と言い返す。
流石にそう言われてしまうと何も言えない状助は、図星を指摘されたと言う感じで黙った。
そりゃスタンド能力は一人一つのルールを超えた特典なのだから当然だ。
三郎としてはどっちもズルいので、状助の方もズルいと言っておく。
まあ、三人とも転生して特典を貰っている時点でズルいのは百も承知なのだが。
「じゃあ、とりあえず咸卦法を使う練習して見せてよ」
「全然できないけど、やってみるよ」
それはそれとして、という様子で覇王は三郎へと、なら咸卦法の発動をやってみせてくれと言う。
まだ全然できていないと前置きをした三郎は、覇王にそう言われたのでいつも通りの練習光景を見せた。
「左手に『魔力』、右手に『気』……ッ!」
左手に魔力を溜め、右手に気を溜める三郎。
そこで両手を合わせるかのように二つの力を合成しようと近づけるが、やはり弾けて消えてしまった。
「あらら、また四散してしまった」
「めっちゃ大変そうじゃあねえか……」
「そりゃそうさ。魔力と気は相反する性質を持ってるんだから、それを合成する技法は高難易度にもなるわけだよ」
「ほえー」
こんな感じで難しいと三郎は苦笑しながら言うと、その光景を見ていた状助は思った以上に難しそうだなあ、と感想を言う。
覇王も魔力と気は相反する力であり、それを合成させるんだからそう簡単に行くものか、と説明。
状助はなるほどなあー、とマヌケな声を出して相槌を打った。
「まあ、頑張ってやっていくよ」
「それしかないね」
「応援してるからよぉ」
三郎も難しいのは妹から言われており、こうやってじっくりとやっていくと宣言。
覇王も地道な努力以外はないと言い、状助も見守るぐらいはすると言った。
こうしてとりあえず三郎は咸卦法習得のため、毎日毎日積み重ねるかのように練習して行こうと決意をするのだった。