ここはエヴァンジェリンの”別荘”内。
年が明けた冬休みの間、いつもの白き翼のメンバーが修行などに明け暮れていた。
「ん? なんで委員長がここにいんだ!?」
「あっ、本当だ」
ふと、休憩中のカギが周囲を見渡すと、今しがたやってきたアスナの隣に何故かあやかがいたのだ。
同じく休憩中のネギも気が付き、カギの言葉をその眼で確かめて理解した。
「こんにちわ、ネギ先生にカギ先生」
「二人とも元気?」
「こんにちわ」
「よぉ! 無駄に元気だぜ」
あやかとアスナはネギとカギの方へとやってきて挨拶してきたので、ネギとカギも軽快に挨拶を返す。
「どうしたん? こんなところに来て」
「お二人にお話しをしようと思いまして、どこにいるのかとアスナさんに聞いたところ、ここにいると言うので連れてきてもらいましたわ」
「僕たちにどのような話を?」
カギはあやかがこのエヴァンジェリンの別荘へ来るなんて、普段を考えたらありえないと思いそれを言うと、あやかはネギとカギに用事があってやってきたと言うではないか。
ネギはその用事とやらが何なのか気になり、あやかへと話しかける。
「お二人のご両親が魔法世界のために宇宙開発を進めていると聞きまして、我が雪広コンツェルンはスピードワゴン財団を通じて他の企業や財閥と宇宙開発の協力を行うことになりましたので」
「あー、んなことしてたんだったな」
「委員長さんのところも協力してくれるんですね」
「はい! そのとおりですわ!」
あやかは自分の家のコンツェルンがネギたちの両親、つまりナギとアリカが推進する宇宙開発事業に協力することになったと二人へ説明。
そのあやかの話に、カギは両親との連絡でそのようは話が出ていたことを思い出して言葉をこぼし、ネギはあやかの家が事業に参加したことに喜びの声を出すと、あやかは輝く程の笑顔で肯定した。
「それで私もこのアーティファクトを役立たせようと思った次第です」
「僕との仮契約のカードですね」
「なんだっけ? アポなしでどんな人にでも会えるっつーの?」
「そうです。それを最も役立たせることが可能な状況こそ、このアーティファクトによって普段会うことが叶わないような権力者や官僚、はたまた国家主席などとの交渉の場を設けることだと思った次第です」
「確かにそんな効果だったわね」
そしてあやかは、自分の家が事業に協力するのであれば、自分も積極的に協力しようと思ったと話しながら、仮契約カードを取り出して三人に見せた。
あやかの仮契約で得たアーティファクト、「白薔薇の先触れ」の効果とは、どんな人物であろうとも許可も約束もせずに面会できると言う効果だ。
物騒なことに使おうと思えば使えなくもない効果だが、それをネギたちの両親の活動に役立たせることにしたとあやかは言う。
カギは
その説明を聞いたアスナは、墓守り人の宮殿であやかがアーティファクトを使ったのを聞いており、それを思い出した様子だった。
「そこで少し前から、お二人のご両親の活動に協力させていただいておりますわ」
「いつの間にっ!?」
「マジかよ!」
「初耳なんだけど……」
また、ナギたちが去年にこの麻帆良にやってきたあたりで、すでにあやかが二人に協力し始めていたと語れば、ネギもカギもアスナも驚いた様子を見せた。
そりゃ、知らぬ間にナギたちが行っている魔法世界救済のための活動に、少し前まで一般人だったあやかが参加しているのだから驚くのも当然だ。
「私個人としても是非とお願いしたところ、このアーティファクトの有用性を理解していただいて、それで協力してほしいと言われました」
「ふーん。まあ、確かにいいんちょのアーティファクトはそう言うことに使うのがいいかもしれないわね」
「でしょう?」
あやかはナギとアリカへと、自分のアーティファクトを役立たせたいと自ら率先して相談し、認めてもらって協力することになったと言う。
そんなあやかの説明に、アスナも肯定的な意見を述べれば、あやかはふふんと言うような得意顔を見せた。
「それにネギ先生やカギ先生の故郷の一つでもある魔法世界を救うことこそ、お二人のためにもなると思い、こうしてネギ先生らのご両親に協力することにしましたのです!」
「な、なるほどねぇ…………」
「大体ネギのためじゃねーか!」
「まあ、端的に言うとそうなりますわね?」
ただ、あやかを突き動かす動機はネギにあった。
ネギの第二の故郷とも呼べる魔法世界を何とかするために、自分も何かできることはないかと考えた末の行動だった。
なんかすごい重い愛をまき散らすあやかに、アスナも少し引きながら納得した仕草を見せるが、カギはネギばっかりかよ! みたいなことを叫んだ。
が、あやかはカギの文句に、しれっとした態度でYESと言うだけ。最初からネギに脳を焼かれていた女だ面構えが違う。
「ありがとうございます委員長さん!」
「いえっ! これは私が勝手にしていることですので、礼には及びませんわ!!」
あやかの話にネギはいたく感激し、頭を下げて礼を述べると、あやかは当然のことであり自分が好きでやったことなので礼は不要と笑顔で応えた。
「ところで、みなさんはいつもこちらで何をしているのでしょう?」
「修行だよ!」
「この前のようなこともあったので、やはり気を抜くことはできないと思いまして」
「なるほど、素晴らしい向上心ですわ! 流石ネギ先生! とカギ先生!」
まあ、あやかは自分の話したいことを言い終えたので、今度はネギたちが何をしているのか気になりそれを尋ねた。
それに対してカギが修行と答えれば、ネギもクリスマスの時期に発生した事件を考慮して、もっと自分を鍛えなければとやる気を出した様子を見せた。
二人の話にあやかは、晴れやかな笑みを見せながら二人を褒めたたえるのだが、カギのことが微妙におまけみたいな言い方になっていた。
「なんでネギと差があんだよ!?」
「ごめんなさいカギ先生。私、カギ先生よりネギ先生の方が好みなものでして……」
カギは自分だけ取って付けたような扱いだったことに不満を感じて文句を言い出すと、あやかはその理由を正直に話した。
つまるところ自分の好みはネギであり、カギではないと言う事だったのだ。ただ、差別はよくないと思っているので、カギのことも素晴らしいとは思っているのも事実だったりする。
「顔は同じですよ!?」
「性格の方での好みですわ!」
「そ、そうか……。別に気にしねーけど」
そこですかさずネギが好みって言われても顔は同じじゃないですか、とつっこむが、あやかは顔ではなく中身の違いを指摘。
カギもそれを言われちゃ仕方ねぇな……、と納得しながら、ネギと差を付けられた部分に何か思うこともないと言った。
「まあ、いいんちょはヤンチャでナマイキなガキンチョは好みじゃないのよ」
「あー。俺ってそんなに生意気?」
「…………それなりに?」
「あー……」
で、アスナがあやかの好みとやらを説明。
あやかはネギみたいないい子のショタが好きなのであって、小太郎やカギみたいなヤンチャで生意気なショタは好みではないのだ。
アスナの説明にカギがふと、自分って生意気系キャラだっけ? と聞くと、アスナも少し考えたあとに多分、程度には生意気だと言った。
カギはアスナの首をひねって出した答えに、思い当たる部分が微妙にあったのを理解して納得した様子を見せる。
考えてみりゃ、自分ってなんか一々文句ばっかりだし、言われてもしゃーねーな、とカギは思ったのだ。
「アスナさんも同じく修行を?」
「そうよ! 私もまだまだだからね」
「あれほどの強さを持っているのに、まだまだとは……」
「全然まだまだよ! この前だって油断してやられちゃったし」
まあ、自分の好みは置いといて、と話を変えたあやかは、アスナへと質問すると、アスナは素直に答えて頑張ってると言うではないか。
とは言え、あやかはアスナの強さを魔法世界で見ているので、結構強いのにもっと強くなる気なのかと少し呆れれば、アスナは当然と言う様子で意気込みを語った。
「大丈夫でしたの!?」
「かなり危なかったわね……。状助が助けに来なかったらどんな目に遭わされていたかわからないわ…………」
「本当にあなたは無茶ばかりしますわね……」
「しょうがなかったのよ。あんな状況だったワケだし」
と、今アスナがクリスマスの時の事件でやられたと言い出したのを聞いたあやかは、その時無事だったのかと驚きながら問い詰める。
アスナもヒヤヒヤしたと言う態度で、敵の魔法使いに攻撃され身動きが取れなくなったのを思い出しながら、その時の状況を正直にその時のことを話した。
危ない目に遭った、と言うアスナにあやかは、ほっとした仕草をしながらもやや呆れ気味なことを言う。
そんなあやかにアスナも、あの場面では戦いに出てみんなを守らなきゃならなかったから、と言う様子で語った。
「アスナがピンチになるってどんな状況だよ……。意味がわからねぇ……」
「本当にそうだね……」
しかし、カギはアスナが危険な状況に陥ったと言うのを聞いて、嘘だろ? と言う心境に陥った。
何せカギはアスナと模擬戦をしており、その強さを身をもって理解しているからだ。そんなアスナが危機になるとか考えたくねぇ、と思うのも当たり前であった。
ネギもアスナの実力を知っているので、カギの言葉を肯定して驚いていた。
「んーっとね。私の魔法無効化を貫通してくる魔法使いが敵だったのよ」
「んな
「それでもアスナさんを追い詰める相手ってかなりの手練れですよね……?」
「そうね。確かに上位の魔法を何度も使ってきたわ」
カギとネギの驚愕を見たアスナは、とりあえず戦った相手の情報を説明した。
魔法使いではあったが自分の魔法無効化を無視して魔法を当ててきたと。
その説明を聞いたカギは、相手の魔法使いが転生者でありそういう特典を貰った存在だと言うことを理解して、そんなのがいるんだ、と少し驚いた様子で感想を述べる。
また、ネギもその能力を踏まえても、アスナの動きに対応してきたことに驚き、相手にした魔法使いは結構強かったのではないか、と驚いた態度を見せた。
アスナはその二人の表情を見ながら、相手の魔法使いの実力は確かに結構高かったんじゃないかな、と話す。
魔装兵具である
「僕のところにそういう相手が来なくてよかった、と思うべきなのか……」
「そう思った方がいいかもしれねぇな……。俺も操られた
その話を聞いたネギは、自分が守護っていた中等部女子寮にそんな敵が現れなかったことに安堵した様子を浮かべた。
強敵なんて来なくていいよ! と言ったのはネギの本音であり、そのような相手が来たのであれば、完全に守護れたかわからなかったからだ。
カギもそのネギの意見に同意し、自分もエヴァンジェリンと戦って苦戦したからわかる、と言い出した。
「えっ!? そんな話聞いてないけど!?」
「あー、面倒なことって説明したっけ? それだな」
今のカギの話はネギにとって初耳であり、嘘でしょ!? と言う様子で驚いて困惑。
が、カギはあの時雑に説明したのを思い出し、あれだと言うだけであった。
「今更でもそれを言われたら普通に驚くって!」
「まあ、そうよねぇ……。私とカギの二人がかりだと押し切れなかったしね」
「かなり危なかったって言うのはすごく伝わりました……」
ネギとしてはエヴァンジェリンと戦ったと言う情報に戸惑い、今までずっとカギが黙っていたことに少し怒った様子を見せる。
そりゃまあ、操られたエヴァンジェリンと言うパワーワードと、それと戦ったと言うのだから無理もないことだろう。
アスナもカギと共にエヴァンジェリンに挑んだ身としては、かなりの大苦戦を強いられたと苦笑しながら話すではないか。
そんなアスナの言葉に、ネギもその時の戦いがとてつもなくすさまじかったことを悟った様子であった。
「あっ! ごめんね! いいんちょにはわからないことばかりだったわね!」
「別に気にしてませんよ?」
が、そこでアスナはハッとして、自分たちの会話に置いてきぼりになっているだろうあやかへと謝った。
ただ、あやかはその程度のことなんて気にしていないので、特に何とも思っていないと微笑んで言うだけ。
「それに、なんとなくですがわかりますので」
「そうなんだ」
また、あやかも聡明であり、今の話の内容をある程度察することができていた。
何せあやかもアスナと魔法世界を旅したし、魔法というものをその眼で見てきたので、大体のことは予想できるのだ。
なので、それをしれっとした顔で言うあやかに、アスナはふーん、という態度で眺めていた。
「……まあ、この前みたいなことは二度と起こらないでほしいわね」
「そうですわね……」
とは言えだ、クリスマスの時のような事件なんか、もうなくて良いとアスナは少しため息を吐いて言葉にすれば、あやかも同意して苦笑。
とまあ、そんな感じでのんびり話をして、おしゃべりを楽しむのであった。
…… …… ……
同じくエヴァンジェリンの別荘の中で、小さな少女が一人でぽつんと座り込み、何やら戦闘しているところを眺めていた。
「あれ、アマネちゃん一人? カルナさんはどうしたの?」
「あっちで戦ってるよ?」
「あら、本当」
その少女は転生者のアマネ。魔法世界崩壊の危機の時、アスナの代わりに魔法無効化を利用された少女。
特典で召喚したサーヴァントである
アスナも気が付けば別荘に来るようになったアマネを気にかけており、アマネが普段一緒にいるカルナが隣にいないことに気が付いて、彼女へと話しかけたのだ。
ただ、アマネは別に一人置いて行かれている訳ではなく、少し離れた場所でカルナは刹那や楓、そして古菲の相手として模擬戦を行っていた。
それをこの場所から静かに眺めていただけで、特に寂しくしている訳ではなかったので、そっちの方を指さすアマネ。
そのアマネの指の先で三対一でさえもまったく押し切れてない模擬戦を見たアスナは、カルナの所在を知って納得の声を出す。
「こんなところで一人じゃつまらないんじゃない?」
「そうでもないよ? みんな色々やってるのを見てるだけで面白いもん」
「そう…………」
されど、こんなところに一人でいるのは寂しそうだな、と思ったアスナがそれをアマネへ聞くが、アマネはカルナたちの戦いをまじまじと観戦し、十分楽しんでいると言う。
アマネにとってこのような場所を見ているだけでも十分刺激的なことであり、目に映るものが大抵新鮮なのである。
そんな感じのアマネの答えに、アスナも静かに納得するだけだった。
とは言え、もうちょっと子供らしく遊んでもいいんじゃないかなあ、とも思わなくもなかった。
「それでね、私もカルナばっかりに頼らないで、自分で何とかできる力が欲しいなあって!」
「アマネちゃんはまだ小さいんだから、気にしなくてもいいのよ?」
「でもでも!」
また、アマネは自分にも力があればなあ、と思うようになったとアスナへ笑顔で語り始めた。
が、アスナとしてはアマネは守護るべき幼子であり、そういうことは不要だと微笑んで話すのだが、アマネは納得しなかった。
「だって、気とか魔力とか、そういうのもよく知らないでしょ?」
「そうでもないよ! カルナもそうだけど、おじさんも聞けば教えてくれるし!」
「パパが?」
アスナはアマネが戦うような性格じゃないのもわかっており、それに戦いに必要な知識もないんじゃないかと言うと、アマネはカルナとメトゥーナトから色々聞いたと言い出した。
は? とちょっと思ったアスナは、まさかメトゥーナトがそんなことを教えているとは思ってなかったので、少しだけ驚いた表情を見せる。
と言うのも、カルナはマスターであるアマネから色々聞かれたら当然のように答える施しの英雄だし、メトゥーナトは親代わりとして正直に教えてしまう癖があった。
別に隠すことでもないし力を持っても使うのは本人次第であり、ずっと使わないと言う選択も存在するし、そもそも使わせてしまうような状況にしないのであれば問題ないと考えている。
なので、アマネの力が欲しいと言う願いをカルナもメトゥーナトも叶えるかのように、その力の出し方と使い方を教えたのである。
「ほら、こうやって……。左手に『魔力』、右手に『気』……、”合成”!」
「っ!! これって咸卦法!?」
そして、メトゥーナトが教えた力こそ、アスナもよく戦闘で用いる咸卦法だった。
アマネはそれを実践し、成功させてニコリと笑って見せれば、突然アマネが咸卦法を使ったのを見て、アスナは目を疑った。
「ね! できたでしょ?」
「いつの間に……、って言うか、もうできちゃってるの!?」
「心を無にするって、おやすみって寝る時みたいな状態と同じでしょ? 最初は眠くなったーって時にやるとできたけど、今は普通にできるようになったよ!」
「…………すごいわね。タカミチが見たら泣いちゃうわねこれ……」
ね? とニコニコするアマネを前に、もうすでに咸卦法をマスターしていることに対しても驚きを隠せないアスナ。
咸卦法の習得難易度が高いのは高畑を見ればわかることだ。
それをこうも容易く幼子のアマネが使うのだから、驚愕するのも仕方のないことだった。
驚いている本人は、ちょっと教えてもらったらすぐに完成させたと言うのにだ。
すると、アマネは咸卦法を成功させるコツみたいなのを話し始めた。
アマネは心を無にすること、つまり明鏡止水や無我の境地と言うのがどういうものか、実際はよくわかっていない。
わかっていないけれども心が無になる瞬間があることだけはわかっていた。それが寝る前のすごく眠たい状況だ。
睡眠に入る前、瞼が重くて仕方のない睡魔に襲われている時は、何も考えない。いや、眠すぎて何も考えられなくなる。
寝てしまえば心も何もない、それこそ無だ。その時にこれをこうすれば、とアマネは考えてそれを実践し、咸卦法を習得した。
アスナは得意げな笑顔で語るアマネを見ながら、こうも簡単に咸卦法を習得したことに対して感心していた。
で、数年も修行してようやく習得した高畑を思い出し、聞いたらショックを受けるだろうな、と考えちょっと苦笑したりしていた。
まあ、それ以外にも三郎の妹の四華も、特典で才能を貰ったのにも関わらず7年かけて習得しており、聞いたら泣きわめくだろうが……。
「あっ、そういえば状助のやつが友人も咸卦法の練習始めたって言ってたっけ……? そのコツみたいなの、教えてあげればいいのかな?」
さらに、状助の友人で自分のクラスメイトの亜子の彼氏が、何やら咸卦法を練習していると状助から聞いたのを思い出し、アマネが習得した方法を教えればよいのではないか、とふと思いつく。
「どうしたの?」
「なんでもない! でも、本当にすごいわね! こんな短期間で咸卦法できるようになっちゃうなんて!」
「おじさんの教え方が上手かったんだよ!」
「そうなのねー」
ただ、アマネはそういうのを知らないので、何かひらめいて独り言を言うアスナに、首を傾けて疑問に思うだけ。
そんなアマネに、アスナは気にしないでと言った後、咸卦法を習得したことを褒めながら笑顔を見せれば、アマネはメトゥーナトが教えてくれたからだと微笑みながら話した。
その話を聞いてアスナは、なるほどー、と思いながら納得した。
「でもね、アマネちゃんは無理しなくてもいいのよ?」
「カルナやおじさんにも言われたよ? だけど、私のせいで迷惑かけたくないの……」
「そっか……」
とは言え、咸卦法を使えるようになったからと言って、すぐに戦えるようになる訳ではない。
それにアスナは、当然アマネを戦わせたいとも思わないので、別に強くなろうとしなくてもいいと言う。
だが、アマネとしては自分が人質になってカルナを困らせたことを理解しており、そうならないための方法が欲しいと思っただけだった。
そんなアマネの言葉に、アスナはふと自分も同じ気持ちを抱えていることを考え、アマネも自分と同じなんだと言うことを理解した。
アスナも魔法世界消滅のために生贄とされ、メトゥーナトに助け出されたあと、紅き翼の人達などの足を引っ張りたくないと思い、強くなろうと決心したからだ。
だからアスナはアマネへ特に何も言えず、ただただアマネの言葉を受け止め、納得するだけであった。
「それでも、何かあったら私たちが護るから!」
「うん。ありがとーお姉ちゃん!」
「よしよし」
「えへへ」
だけど、それはそれとしてアスナはアマネを戦わせたくはないと思う。この子が歩む日常の平穏と安寧を願う。
なので、アマネが戦わないといけないようなことにならないように、アスナはアマネの頭を優しくなでながら、この子を守って行こうと改めて決心する。
また、頭を撫でてくれながら優し気に微笑むアスナに、アマネも晴れ晴れとした笑みを見せてお礼を言う。
目の前の人が姉になってくれて嬉しいと。本当に感謝しかないと思う。
そんな二人のやり取りを横目に少女三人とカルナの模擬戦の決着が付いていた。
少女たちは疲れて膝をつき、逆にカルナは特に疲れもなく、堂々と立ち槍を地面に突き刺していたのだった。