冬休みももう終わりに近づいてきた、そんな日。
アルスは自分の部屋で娘のアネットと戯れていた。
「パパー! 私に魔法を教えてー!」
「いいぞー! アネットのためなら何でも教えちゃうぞー!」
「やったー!」
アネットはかわいらしい仕草で、アルスへと魔法の勉強をおねだりすれば、アルスもニコニコで快く引き受ける。
そんなアルスの答えに飛び上がりそうなほどに喜ぶアネットに、その二人のやり取りを見ながら少し離れた場所でお茶を飲みつつ微笑むドネットがいた。
「でも、ここは魔法使いの村ではないのよ? どこで教えるの?」
「暇な時にちょいちょい作ってたダイオラマ魔法球があるんだ。そこで教えようかと」
「まあ、そんなものをいつの間に」
「何かあった時のために、ちょいちょいとな」
が、話を聞いていたドネットは、この場所に魔法を使えるような場所がないことを指摘。
するとアルスはこっそりと作っていたダイオラマ魔法球があることを話し、そこでやればよいと言う。
ドネットは思ったよりすごいものが出てきたのを聞いてそれを言うと、アルスは避難先とか色々使えるから用意したと話した。
「パパすごーい!」
「まあなー! よしよし!」
ダイオラマ魔法球のことを喜び、元気よくアルスを褒めたたえるアネット。
アルスは自分を褒めまくるアネットを滅茶苦茶かわいいと思いながら、頭をそっと撫でてあげた。
「まっ、とりあえず俺の隠れ家に案内しよう」
そして、アルスは別の部屋に用意してあるダイオラマ魔法球へと、家族を案内して移動することにした。
その部屋へと入ると、部屋の隅に人の頭よりも少し大きいガラス瓶が置いてあり、その内部にはミニチュアのコテージやら森やらが入っていた。
「わーっ! すごいすごい!」
「アネットに喜んで貰えてうれしいなあ!」
ダイオラマ魔法球の置いてある台の手前に近寄ると、スイッチの入った音と共に足元に魔法陣出現し、そのガラス瓶の内部へと転移。
魔法球内に入ったアネットは大はしゃぎで喜んで走り回り、アルスはそれを眺めながらほっこりしてだらしない表情を見せていた。
「でもまだ未完成みたいね」
「休みの時にチマチマ作ってたんでなあ。別に誰かに見せる訳でもないし、それでいいかと」
が、周囲を伺っていたドネットは、この魔法球が完成していないことに気が付いて指摘すれば、アルスも暇な時にゆっくり作っているし普段見せないのであればこれでいいと話す。
「さーて、何が知りたいのかな?」
「パパが得意なやつ!」
「得意なやつかー。じゃあ『雷の投擲』だなあ」
「雷の投擲?」
「雷属性の魔法の槍だよ。パパが好んでよく使う魔法なんだよー」
それで魔法を教えてほしいとアネットは言ったが、一体どんな魔法が教えてほしいのかとアルスが問えば、アネットは好きな父親が得意な魔法を教えてほしいとはしゃぐ。
アルスは自分が得意な魔法かー、と少し悩むと、「雷の投擲」という答えが頭に浮かび、それを言葉にする。
雷の投擲、と聞いたアネットは、はてどんな魔法なのかと首をかしげてアルスに聞くと、アルスはその魔法の属性などを説明し、愛用していると話した。
「雷を槍の形にして投擲するんだ。貫通力が高い魔法なんだよ。魔力が多くてコントロールできるなら複数操って大量に投げれたりもできるんだ」
「へー! すごいね!」
さらにアルスは説明を続け、雷の投擲の特性や使用方法も語ると、アネットはワクワクした様子で聞いていた。
「じゃあそれを教えてー!」
「いいぞー! じゃあ張り切っちゃうぞー!」
アネットは説明を聞き終えて、さらに雷の投擲を知りたくなった。なので元気な様子でアルスへおねだりすると、アルスも笑って今から教えると大きな声で言った。
「あなた? 雷の投擲は上等な攻撃呪文でしょう? 今教えてしまうのはマズくないかしら?」
「あっ!? 確かにちょいとマズイか?」
しかし、そこでドネットは待ったをかけた。雷の投擲はそれなりに上級の魔法だ。それを10歳の娘に伝授してしまっていいのか、と止めたのだ。
まあ、”原作”だとネギも使っていた魔法なのだが、普通の10歳が使うには高度な魔法なのも事実だ。
アルスもドネットの言葉に、ちょっと早すぎたか、と思って教えるかどうかを悩み始めた。
「パパ……、教えてくれないの?」
「うっぐっ!?」
が、アネットは今教えてくれると約束した父がやめようとしていることに、悲しいと言う仕草でアルスを見上げれば、アルスは泣きそうになっているアネットの表情を見て、心臓に雷の投擲を突き刺された気分にさせられた。
「しかしねぇ、教えたいのは山々だけど危険な魔法でもあるのだから……」
「えー!? 教えてくれるって言ったじゃん!?」
娘のためとはいえ、自分が言い出したことをやめると言うのは心が痛いアルス。
そこへ追い打ちをかけるかのように、アネットは悲しげな表情でアルスへとさっき言ったことと違うと責める。
「アネット、お父さんが今言った魔法は、とても強力な魔法なのよ。強い力は危険を伴うの。アネットのことを案じて悩んでくれているのだから、そんな風に言わないであげて?」
「…………うん」
そこへドネットはアルスの助け舟として、アネットへとしゃがんで静かに話しかけた。
雷の投擲を教えると言ったのはアルスだが、自分がそれを考え直すように言ったからだ。
ドネットは何故雷の投擲を教えるのを躊躇わせたのかを、アネットにゆっくりと言い聞かせるように説明した。
貫通力の高い雷属性の魔法であり、威力も非常に高く強い。一度放たれれば危険な魔法であり、そんな強い力を制御できなければアネットにも危ないからだと。
アネットも母親の説得に耳を傾け、納得した様子は見せた。
それでも教えてくれると一度言った魔法を、諦めたくないと言う気持ちが強いようで、シュンとして頭を俯く。
「だけど、軽率に雷の投擲を教えるなんて言ったあなたも悪いのよ?」
「あぁ……、そうだな。すまん…………。アネットもごめんよ」
「うん……」
泣き出しそうなのを我慢してるアネットを見たドネットは、今度は立ち上がってアルスを叱る。
そもそもの話、雷の投擲を教えると言ったアルスが悪いのであり、不用意にそんなことを言わなければアネットが悲しむこともなかった。
アルスもドネットの叱咤に、自分の愚かさを悔いて頭を下げ、落ち込んでいるアネットにも小さく謝る。
父親から謝罪されたアネットは、悲しいけれど自分のためだと理解しているので、小さく返事をして理解を示す様子を見せた。
「うーん……、そうだなぁ…………」
だが、自分の得意の魔法をあれほど知りたいとはしゃぎ、教えられないと断った後のがっかりしたアネットの様子を見たアルスは、これじゃかわいそうだなあ、と再び悩みだす。
「とりあえず雷の投擲を教えるけど、みんなには内緒にできるかい?」
「内緒に?」
「強い魔法だからね。無暗に振り回したり見せびらかしたり、何もない時にも使わないって約束できるなら、教えてあげるよ?」
そこでアルスは雷の投擲を条件付きでアネットに教えることにした。
それは雷の投擲を教えるけれど、他の人にはそれを教えてもらったことや使えるようになったことを話さないということだった。
また、使えるようになっても自慢したり必要のない場面で使うことを禁じた。その約束ができるのならば、教えていいとアルスは微笑んでアネットへ言った。
「約束する!」
「よしよし! じゃあ教えてあげようか! パパとの約束だぞ?」
「はーい! パパとの約束!」
その言葉を聞いたアネットは、パーッと花が咲くような笑みを見せた後、約束を誓った。
アルスはそれならばと、笑顔になってアネットの頭を撫で、絶対の約束だと念を押せば、アネットは元気を取り戻して絶対守ると宣言したのだ。
そんな二人のやり取りをドネットは、しょうがない人ね、と苦笑しながらも、微笑ましく眺めていた。
「さてさて、ならば、まずはお手本を。アルバス・アストラ・ステラ・オリエンス。影の地総ぶる者、スカサハの、我が手に授けん、三十の棘をもつ霊しき槍を。”雷の投擲”ッ!!」
で、アルスは早速手本として雷の投擲を
アルスは転生特典で”無詠唱で魔法が使える”ので本来ならば詠唱は不要だが、手本としてアネットに詠唱を聞かせるために、あえて詠唱を用いたのだ。
「おおー! かっこいー!」
「それほどでもないなあ!」
アルスが雷の投擲を岩に突き刺したのを見て、大喜びして拍手するアネット。
アネットに滅茶苦茶称えられたアルスは、少し照れながらニヨニヨとした笑みを見せて笑った。
「あなたの発動キーと詠唱、久々に聞いたわね」
「まあな、最近はめっきり使わなくなっちまってたしな」
そこへドネットがアルスへと、詠唱を久々に聞いたことを微笑んで話す。
昔はアルスも詠唱を用いて魔法を使っていたのだが、今では完全に無詠唱で魔法を使うようになってしまった。
故に、ドネットはアルスの詠唱や発動キーを聞いて、懐かしいと感じたのである。
アルスもここ数年はもう無詠唱でしか魔法を使っておらず、自分も本当久々に詠唱をしたと思いながらそれを語る。
いやあ詠唱しなかったから魔法の呪文忘れてなくてよかった、とさえ思っており、呪文をもう一度覚えなおした方がいいかも、と考え始めていた。
と言うのも、過去のアルスは無詠唱で魔法を使えることを悟らせないため、ずっと詠唱を使って魔法を操っていた。
詠唱しても二つ目の特典の”魔法の完全なコントロール”があるので緻密な魔法の操作は得意であり、それを使ってクレバーかつシビアな魔法操作で戦う魔法使いだった。
が、それを破ったのは10年前、年が明けてるから11年前になるか、裕奈の母親である明石夕子と組んで挑んだ任務の時だった。
本来なら”原作”で夕子が死ぬはずだった任務を切り抜けるために、ほとんどの人に黙っていた無詠唱の魔法を披露し、危機を乗り越えて生き延びた。
それ以降、アルスは詠唱をすることをやめて無詠唱で魔法を使うようになったと言う経緯がある。
「じゃ、アネット、試してみようか? 詠唱は『影の地総ぶる者、スカサハの、わが手に授けん、三十の棘を持つ霊しき槍を』だよ。発動キーは初心者用でも大丈夫だから、ゆっくりとやってみようか」
「うん!」
まあ、そんなことよりもとアルスは、アネットへと雷の投擲の呪文を教え、一応これで使えるはずだと言いながら初心者用の杖をアネットへと渡す。
アネットは元気な声で返事を返し、初心者用の杖を掲げ、よーし! という様子でアルスから教えてもらった呪文を口に出し始めた。
「プラクテ・ビギ・ナル! 影の地すぶる者、スカサハの我が手に授けん、三十のトゲを持つ霊しき槍を! ”雷の投擲”ッ!!」
そして、アネットは教えられた通りの呪文を言い終え、杖から出現した雷の槍を、アルスが雷の投擲をぶつけた岩へと向けて解き放った。
「おー、できてるできてる! 上手上手!」
「やったー! できたー!」
ちゃんと呪文を完成させたアネットへとアルスは近寄り、拍手したのちに頭を撫でて褒めまくる。
アネットはアルスが教えた魔法がちゃんと使えたことに大喜び。飛び跳ねてニコニコと笑った。
「これをどんどん練習して素早く出せるようにしたり、数を出せるようにするんだよ」
「うん! 練習するー!」
だが、使えるようになったと言うのはスタートラインだ。
アルスはこれをうまく使えるようになるために、何度も練習しないとね、とアネットへ言った。
その言葉にアネットはニコっと笑い、どんどん頑張るぞー! という意気込みを見せたのだ。
そんな感じでアルスとアネットの魔法の練習は続き、それを少し離れたところからドネットが微笑んで見守っていたのだった。
…… …… ……
次の日。もう冬休みも残りわずかとなったところ。
ドネットやアネットもそろそろイギリスのウェールズへと帰らなければならなくなる。
故に、そろそろ麻帆良に滞在している最後の日となるだろうと言う時だった。
「アネットおひさー! 元気してたー?」
「ゆーなおひさしぶりー! 元気だったよー! そっちはどうー?」
「私は常に元気だもんね!」
昼前の麻帆良学園教職員宿舎の前に、複数の男女が集まっていた。
アルスとドネットにアネット、それから裕奈がやってきて、アネットへと挨拶。
アネットも笑顔で挨拶を返して裕奈の調子のことを聞けば、裕奈は当然と言う様子で元気な様子を見せた。
「んじゃ、麻帆良を案内するよ」
「よろしくお願いします!」
裕奈がここに来たのには理由がある。別に両親に会いに来た訳ではなく、アネットを連れて麻帆良を案内するためだ。
それを裕奈が言うと、アネットも元気よく返事をして頭をペコリと下げた。
「ごめんなさいね、任せてしまって」
「悪いなゆーな」
「いえいえ! 大丈夫! 問題ないから!」
ドネットとアルスはアネットの面倒を裕奈に見てもらうことに、申し訳なさそうな声を出せば、裕奈は平気と言う顔で快く引き受けた様子を見せた。
「それに久々にアネットとも遊びたかったしね!」
「ほんと? 私もだよ!」
「そっかそっかー!」
また、裕奈はアネットが麻帆良に来ているのなら一緒に遊ぼうと思っていたので、むしろありがたいとさえ思っていた。
アネットも少し年上の裕奈になついており、同じ気持ちだったと話せば、裕奈は笑顔で頷く。
「じゃ、行こうか! アルスさんにドネットさん、アネットを預からせてもらうね!」
「頼んだ!」
「よろしくね!」
「はーい!」
ならばと、裕奈はアネットの手を引いて、麻帆良の街を歩いて見て回ろうと移動を始めた。
と、その前にと言う様子で、裕奈はアルスとドネットへとアネットのことを言えば、二人も裕奈に任せたと笑顔で見送った。
見送られながら裕奈は二人の言葉への返事を元気に返す。
「アネットもゆーなの言う事しっかり聞いて、危ない場所には行っちゃだめだからな!」
「気を付けるのよ?」
「うん! わかった! いってきまーす!」
また、二人はアネットへと街を見て回る際の注意をしっかりすれば、アネットも元気に返事をして裕奈につられて歩いて行った。
裕奈に手を引かれて麻帆良の街並みをキョロキョロしながら伺うアネット。
アネットはウェールズの田舎の村暮らしであり、ちょっとした都会の麻帆良に興味津々だ。
日本とはかけ離れた洋式な建物も見ごたえはあるし、人々の活気にも目が引く。
こんなに人が多い所もあまり行ったことがないアネットは、何もかもが新鮮で楽しくて仕方がない様子を見せていた。
アネットは別に麻帆良に始めて来たと言う訳ではない。何度かやってきて裕奈と顔を合わせており、それで仲良くなったからだ。
とは言え、幼かったアネットは街を自分の足で探索することはできなかったので、今それを初めて行い、ちょっとした冒険をしている気分になっていた。
そんなアネットの手を離さないように裕奈はしっかり握りながら、アネットの楽しそうな様子に裕奈も自然と笑顔がこぼれる。
二人は麻帆良の色々な観光名所や各スポットなどを、のんびりと歩きながら見て回った。
「どう? 麻帆良は?」
「色々新鮮だし自分の足で見て回れるからすごく楽しいよ!」
「それはよかったー!」
そこで休憩としてカフェへと立ち寄った二人。
裕奈はアネットに飲み物を渡しながら麻帆良のことをアネットへ聞くと、いいところだよ! と言う返事が返ってきた。
その言葉に裕奈は、地元住民としても案内役としても冥利に尽きると笑顔になる。
「あれ? ゆーな?」
「本当だ! ゆーなだ!」
と、そんな時、四人の女子がそばを通りかかり、裕奈を見つけた。
アキラ、まき絵、亜子、追加のトリスだった。アキラが裕奈を発見して名前を呼ぶと、まき絵もつられて裕奈を見つけ大きな声を出していた。
「みんな! こんちゃー!」
「こんちわー!」
「こんにちわ!」
「こんにちわー!」
「こんちわ」
裕奈は声が聞こえた方を向けばいつもの友人がいたので、笑顔で挨拶をると、四人もつられて挨拶を返した。
「ゆーなのお友達?」
「そうだよ! 同じクラスの友達!」
それを見ていたアネットはお姉さん四人が裕奈の友人なのかなと思って裕奈に聞くと、肯定の言葉が帰ってきた。
「そうなんだ! こんにちわ!」
「こんちわ!」
「こんにちわー!」
「こんにちわ!」
「こんにちわ」
なのでアネットはにこやかな表情で裕奈の友人たち挨拶すれば、四人も小さく笑って挨拶を返していた。
「その子は?」
「うちの親の友人の……、ほら! 魔法世界で助けてくれたアルス先生の娘さん!」
ただ、ふと挨拶を返したアキラだったが、この女の子は誰なんだろうと思って裕奈に聞くと、裕奈は素直に答えを返した。
「あっ! 思い出した! ネギ君の故郷の村にいた子だ!」
「あー、あの人の子かー!」
「確かアネットちゃんだよね?」
「はい! そうです!」
そこでまき絵がアネットがネギの故郷の村にいた女の子なのを思い出し、ハッとした表情で大きな声を出す。
つられて亜子も思い出した様子で声を上げ、アキラもあの子かと言う感じで名前を思い出して口に出した。
アネットは名前を言い当てられて、かわいく頷いて肯定。
「……ふーん? あの男の娘ねぇ……。中々かわいいじゃない?」
「ほんとかわいいね!」
「年はどのぐらいなん?」
しかし、トリスはネギの故郷の村を知らないので、初めて見るアルスの娘に、へえ、そうなんだ、という様子でアネットを見る。
とは言え、あのアルスの娘と言う要素を差し引いてもアネットがかわいかったので、そのことをついついトリスが褒めれば、まき絵も同意しながらニコニコしていた。
亜子はそこで一つ疑問に思ったことを聞く。アネットの年齢のことだった。
「ネギ君たちと同じぐらいだよね?」
「うん! 9歳だよ!」
「9歳かー」
裕奈は亜子の問いにも普通に答えた。アネットは実はネギやカギより一つ下の9歳であり、アーニャの二つ下だった。
それをアネットが元気な様子で答えれば、まき絵が復唱して頷いていた。
「今この子に麻帆良を案内してるところなんだ」
「なるほど、仲いいんだね!」
そこで裕奈は自分たちが今何をしていたのかを四人に話すと、アキラが納得しながら二人の仲のことを言葉にした。
確かにネギの故郷の村でも随分と親し気な様子だったし、今もこんなに仲が良い感じだから、そう言いたくもなる。
「みんなは?」
「もうすぐ冬休みも終わるし、最後に集まろうって感じかな?」
「ゆーなも今誘おうと思っとったところや」
「なるほどー!」
それはそれとして、裕奈は友人らが何をしているのかを尋ねれば、もう冬休みが終わっちゃうから集まって遊ぼうってことになったとアキラが説明。
亜子もアキラの説明に続いて、この集まりに裕奈も呼ぼうとしていたと話せば、裕奈も頷いて納得の様子を見せた。
「でもゆーなは忙しそうだし、無理っぽい?」
「ごめんね! この子の面倒見る約束だからさ」
「それじゃしょうがないね」
とは言え、裕奈が今言った説明だと、裕奈はアネットを麻帆良内を案内しなければならないようだ。
まき絵がそれを言えば、裕奈もせっかく誘ってくれているのに申し訳ないと両手を合わせて謝ると、アキラもまあ先約があるのなら、と諦めた様子を見せた。
「あのー……、私が邪魔じゃなければみんなと一緒がいいな!」
「え? いいの?」
「うん!」
が、アネットは裕奈と友人の話を聞いて、自分がいてもいいなら一緒に行こうよと逆に誘った。
裕奈はそれを聞いて言葉に甘えていいのかとアネットに聞けば、元気な様子で頷いて見せた。
「どうするん?」
「私は別にそれでもいいよ?」
「うんうん! それにアネットちゃんかわいいしね!」
「私も気にしないわよ」
アネットと裕奈の話に亜子が周りの友人たちに良いのか聞けば、アキラも特に気にしてない様子で答え、まき絵はむしろそれでいいとさえ言ってくれた。
トリスもまあいいんじゃない? という感じで賛同しており、誰も反対しなかった。
「みんなありがとー! じゃあお姉さんたちと一緒に行こっか!」
「はーい! ありがとうございます!」
友人たちがアネットを連れて行ってもいいと言うのを裕奈は喜んで礼をし、アネットへと声をかければ、アネットも自分を受け入れられたことに喜び大きな声で礼を述べた。
その後6人で麻帆良の店やらを日が暮れそうな時間になるまで、ワイワイと会話を弾ませながら見て回ったのだった。
…… …… ……
そして、空が闇に支配されはじめ、赤色が減ってきた時間帯となり、裕奈とアネットは友人たちと別れて帰り道を歩いていた。
「いやー、色々歩き回ったねー! 麻帆良はどうだった?」
「すごく楽しかった! みんな優しいし!」
「それはよかったー!」
教職員寮へと戻りながら裕奈はアネットへ話しかけ、麻帆良のことを聞けば、アネットもよかったと言いながらニコニコしていた。
それを聞いた裕奈も笑いながら安堵と嬉しさを感じた様子だった。
「そう言えばアルスさんの部屋で寝泊まりしてるんだっけ?」
「そうだよ!」
そこで裕奈は、こっちに旅行で来ているアネットたちがアルスの寮の部屋を使っていることを思い出して聞けば、アネットも素直にうんと頷いて答えた。
「ねえねえ! アルスさんの部屋ってどうなの? うちのおとーさんみたいに部屋が汚いとかある?」
「きれーにされてたよ? パパはそういうところ几帳面だから」
「えっ!? そうなの!? 惰性の塊とか自分で言ってるのに!?」
「汚くする方が片付けに時間かかって面倒って言ってたよ?」
「へー!」
それなら聞きたいことがあると言う感じで、裕奈はアネットにそれを聞いた。アルスの部屋の様子だ。
裕奈の父親の明石教授は整理整頓があんまりうまくないので、ほうっておくと部屋が散らかる人だった。
”ここでは”夕子が生きているので、定期的に掃除されてはいるので、ほったらかしになって散らかりっぱなしになることはない様子だが。
が、アルスは別に部屋を汚くしている訳ではないと実の娘のアネットから言われた。
妻と娘が来るのだからそりゃ汚くしておく訳もないのだが、アルスの部屋が綺麗になっているのを聞いて裕奈はむしろ驚いた。
アルスは基本的にはやる気がなく怠けたい性格をしている。
そんな人なのだからさぞ部屋が散らかっているんだろうな、と思っていた裕奈にとって、アネットの今の言葉は驚愕の真実だった。
と言うのも、アルスは普段怠けたい人間なので、むしろ効率を求めるタイプだった。
いつも散らかっている部屋とか片付ける時が超面倒なので、いつも綺麗にしておくことを心掛けていたのである。
それをアネットが言うと、裕奈はなるほどねー、と腕を組みながら納得した様子だった。
「そうだ! このままアルスさんの部屋へ送るついでに、今日は私も両親の部屋で寝ようかな!」
「いつもはどこにいるの?」
「中学校の女子寮があって、そこに住んでるんだ」
と、裕奈はこのままアネットを教職員寮に連れて行くのであれば、自分も同じ建物内にある父と母の部屋で寝泊まりしようと考えた。
夏休みぐらい長期連休なら帰るのだが、冬休みは短いのでそこまで頻繁に帰ってなかった。
それを聞いていたアネットは、両親と住んでない裕奈が普段どこに住んでいるか聞けば、裕奈は寮暮らしだよと話す。
「別々に暮らしてるんだー。大変そーだねー」
「別にそこまで大変じゃないかなー? 色々揃ってるしね」
「便利なんだねー」
「そうだね、すごく便利!」
アネットは裕奈が両親と別々に暮らしていることを知って労うが、裕奈としては気にしたことがない。
別に両親にはすぐ会いに行けるし、学生寮には色々あるし部屋にも何でもあるので、特に困るようなこともないからだ。
故にそれを裕奈が語れば、ニコニコとアネットはすごいねーと話し、裕奈も笑って頷く。
「そう言えばアネットは、向こうの学校はあと一年ぐらい?」
「うん! 来年卒業できそう!」
「そっかー!」
と、ふと裕奈はメルディアナの魔法学校のことを話し始めた。アネットが卒業までの期間のことだった。
魔法学校は7年間通う学校であり、アネットはあと1年で卒業を迎えることになるのだ。
アネットも裕奈にそれを聞かれて明るい表情で大丈夫そうと言えば、裕奈もそれを聞いて安心したのか笑顔をこぼした。
「ゆーなは今年から高校生だっけ?」
「そうなんだよねー。どうなるんだろう?」
自分の学校のことを聞かれたアネットは、逆に裕奈のことを聞いた。
裕奈は今年で中学校を卒業し、エレベーター式に高校生へとなる。それを聞かれた裕奈だが、確かにそうなると思うけど、と言う感じに答えた。
「不安とかあるの?」
「そういうのはないかにゃ~。今の友達とまた同じクラスになれればいいなーって思ってるけど」
「なれるといいね!」
「うん! きっとなれると思う!」
何か歯切れの悪い言い方をする裕奈に、アネットは何か思うことでもあるのかと尋ねるが、そういうのはないと裕奈は話す。
ただ、高校生になっても今の友人たちが同じクラスになるとは限らないので、同じクラスになってほしいと思っていた。
アネットはそれならいいね、と笑顔で言えば、裕奈も賛同してそうなったら嬉しいな、と笑いながら言葉にするのだった。
そして二人は教職員寮のアルスの部屋へと行き、裕奈はアルスとドネットに挨拶したあと、両親の部屋へと歩いて行くのだった。