テンプレ61:原作遵守を奮闘する転生者
テンプレ62:ネギの兄弟にカモがつく
二十四話 吸血鬼と吸血鬼 オコジョ妖精
*吸血鬼と吸血鬼*
さて、麻帆良学園本校女子中等部、2年A組は3年A組となった。
基本的に”原作どおり”進んだようだ。そして、”原作”ならば、ここで桜通りの吸血鬼事件が始まる。
しかし、その吸血鬼は吸血する理由がない。
だから本来は起こるはずの無い
だが、それは何故か起こった。
だから主人公のネギと転生者のカギは、それを追う事にした。
普段持ち歩かない杖も、今回だけは持ち歩くことにネギはしたのだ。
「血はいらねぇって言った癖に、やっぱり吸うのかよ」
「兄さん、エヴァンジェリンンさんが犯人と決め付けるのはよくないよ?」
「はっ、普通に考えたらアイツが犯人以外ありねぇんだよ!」
カギは”原作知識”で当てはめ、犯人を特定していた。
ネギはそんな兄に対して、決め付けるのはよくないと言っているのだ。
そして、原作どおり、宮崎のどかが襲われているところを目撃し、ネギとカギは突撃するのだ。
しかしカギはうっかりしていた。
なぜなら本当にエヴァンジェリンが犯人だとすれば、契約によりまったく攻撃できないはずだからだ。
これではここに来た意味が無い。
そう、カギはうっかりしていたのだ。
「待てー! 僕の生徒に何をするんですかー!」
「ほう、お前があのサウザンドマスターの息子か……」
「あ、あなたはエヴァンジェリンさん? そんな!?」
「おうテメェ、早く武装解除飛ばしやがれ!」
「う、うん? まぁいい、世の中にはいい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだよ」
そこには黒一色のエヴァンジェリンがいたのだ。
ネギは嘘だろという驚きの表情をしていた。
また、このカギはスケベ根性で動いている。
武装解除してくれればのぞかが脱げるので、それを催促しているのだ。
そして、流石にその要求に戸惑う悪い魔法使いであった。
がしかし、ここにさらに来客が来訪したのだった。
「おい、私の真似をする愚か者はこいつか?」
「な、何!?」
「あ、エヴァンジェリンさんが二人に!?」
「……なんだその格好は。昔の自分を見るようで、痛々しいじゃないか!」
「はぁあ?」
突然やってきた二人目のエヴァンジェリン。
いつもどおり白い白衣、白いシャツ、赤いネクタイ、黒いタイトスカートである。
そんな中、一人目のエヴァンジェリンは黒、黒い魔法使いっぽいローブであった。
二人目のエヴァンジェリンがその姿を見て、黒歴史をえぐられる気分を味わっているようだった。
ネギとカギはこの状況に大混乱。
何故なら目の前にエヴァンジェリンが二人いるからだ。
「貴様、どうしてくれようか。しかし、ここで戦えば被害が出る……」
「クソ! まさか、もう一人の私が来るとはな!!」
「ど、どうなってるんです!?」
「わからねぇ、どうしてこうなってるんだよ!?」
二人目のエヴァンジェリンは、どこで戦えばいいか考えていた。
一人目のエヴァンジェリンは二人目が来てかなりあせっており、それが表情にも出ていた。
ネギとカギは、何がなにやらわからない様子であった。
「ふん、なら面白い結界を張ればいいか。ほら」
「な、これはまさか!?」
すると二人のエヴァンジェリンはネギたちの前から消えていった。
ネギはどこへ消えたのかわからず焦っていた。
だが、カギは二人目のエヴァンジェリンの持っていた杖に驚いていた。
「二人のエヴァンジェリンさんが消えた!?」
「あ、あの杖はまさか……。あ、ありえねぇ……」
とり残された二人、そこへアスナと木乃香が駆けつけた。
そしてのどかを保護して、とりあえずネギもカギも帰ることにしたのだった。
…… …… ……
ここは先ほどと同じ場所。
二人のエヴァンジェリンも普通にそこにいた。
だが、周りの色合いがやや灰色に近い形で、多少暗くなっていた。
また、一人目のエヴァンジェリンは驚愕しており、その二人目のエヴァンジェリンの手に持つ杖を凝視していた。
それを持つ二人目のエヴァンジェリンは、その杖を面白いものだと笑っていた。
何をしたかというと単純に二人目のエヴァンジェリンは、なにやら機械的な杖を出し、結界を張ったのだ。
その杖を見て、一人目のエヴァンジェリンが驚愕していたのだ。
普通ではありえないからだ。
――――これはリリカルなのはに出てきた結界で、その結果意内ならば戦いで建築物を破壊されても、結界の外では破壊されていないことなる便利な結界なのだ。
カギとネギは魔力を持っているので結界に普通は入れる。
だが、あえて二人目のエヴァンジェリンが追い出したのだ。
「いつ見ても面白い結界だな。”幻想空間”を使わんでもよいのは、楽だし本当に便利だ」
「ど、どうしてそれを持っている!? それはデバイスではないか!?」
「知ってたのか。なに、私は研究者でな? こういうものを集めるのも趣味なのさ」
「う、嘘だろう!? 冗談ではないぞ!!」
「そうさ、嘘でも冗談でもない。本当のことだ」
二人目のエヴァンジェリンが持つこのデバイスは、S2Uというものだ。
リリカルなのはにおいて、ストレージデバイスと呼ばれたものである。
会話もできないし、自動的に魔法を使ってくれるわけでもない。
だが、処理能力が高いということが挙げられる。
一応魔法が登録されており、結界魔法もその一つのようだ。
この杖は二人目のエヴァンジェリンを襲ってきた転生者が、持っていたものを奪ったものである。
「さて、これで安心して戦えるな。チャチャゼロ!」
「アイサー御主人!」
「ば、馬鹿な!? なぜチャチャゼロが動いている!?」
「貴様は何を言っているんだ? 私が魔力で動かしているんだ。当然だろう?」
一人目のエヴァンジェリンは動くチャチャゼロを見て驚いていた。
どうしてかはわからないが、とにかく驚き戸惑っていた。
だが、それが普通な二人目のエヴァンジェリンは、さも当然のように答えたのだ。
「ほら、どうした? はやく私の魔法を使ってみてくれ。とても楽しみなんだがな」
「チッ! ならばお望みどおりに! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック、来れ氷精、来れ闇の精、闇を従え吹雪け、常闇の氷雪! ”闇の吹雪”!!」
「なんだ、それか。あまりがっかりさせてくれるなよ、
一人目のエヴァンジェリンが放った魔法は闇の吹雪だ。
黒い竜巻を勢いよく相手へと飛ばす、雷の暴風に似た魔法だ。
だが、その魔法をなんだ程度で済ませる二人目のエヴァンジェリンがいた。
「チャチャゼロ、受け止めろ」
「ヒデーナ御主人。モースコシ労ッテクレヨー」
「あの程度、お前なら余裕だろうが! 汚れたら綺麗にしてやるから!」
「ショーガネーナー」
二人目のエヴァンジェリンは、それをチャチャゼロに受け止めるように命じたのだ。普通に考えれば無謀である。
チャチャゼロのほうが持たないだろう。一人目のエヴァンジェリンもそう考えていた。
「従者に死ねとはひどいやつだな」
「何を言っている? 結果を見てからそういうことは言うんだな」
「見なくたって、わかるだろうが!」
「甘ク見ラレタモノダナ!」
闇の吹雪がチャチャゼロに衝突し、黒い風が裂かれる。
その衝撃で、すさまじい魔力が吹き荒れていた。すさまじい魔法の衝突に、一人目のエヴァンジェリンは笑っていた。
「アハハハハ! どうだ、これでもそんなことが言えるのか?」
「いや、それはこっちの台詞だよ、
闇の吹雪も、永遠に続くわけではない。
そして、それがおさまると、チャチャゼロは無傷でその場にたたずんでいた。
一人目のエヴァンジェリンはそれを見て、またしても口をあけて驚いていた。
「ば、馬鹿な!?」
「だから言っただろう。まあタネ明かしぐらいしてやろう。これが私が開発した新魔法、”術具融合”だよ」
「術具、融合……!?」
「なんだ、
「ケケケケー! 魔力ガ漲ル、溢ルゼー!」
「い、一体どういうことだ!?」
二人目のエヴァンジェリンが開発したこの魔法。
超・占事略決の知識により完成させた、高い汎用性の魔法だった。
その新魔法により、チャチャゼロは無傷で闇の吹雪を耐えたのだ。
「術式を”固定”したまま”掌握”せずに、武器などにそれを”合体”させる魔法、それが”術具融合”さ」
「なんだと!? まるで
「そのとおりさ、それをヒントに完成させたのだから、似ていて当然だろう?」
「な、なんということだ……」
そしてこの術具融合は、魔法の術式を武器と合体させ、魔力によって操るのだ。
基本は
さらに、その一撃は内包された魔法と同等の威力であり、単純に攻撃するだけで、高い火力が持てるのだ。
またこの術具融合、術者のイメージどおりに形状を構築し、操ることもできる。
その辺りも
だからこそ、武器と合体させることにより、ある程度イメージを固めやすくしているという部分もあるのだ。
最終的には武器ではなく、固定された魔法と合体させることさえも可能であり、”原作”にてネギが作り出したオリジナル術式である術式統合”雷神槍巨神ころし”に近いものとなる。
エヴァンジェリンが最初に開発した闇の魔法は”固定”した術式を、自らに飲み込む”掌握”が必要である。
しかし、それを行うことは、魂を食わせ、闇の眷属へと堕ちる行為でもあるのだ。
だからこそ、他人には使えず、不死の魔法使いたるエヴァンジェリン専用の魔法だった。
だが、この方法ならば、自らに取り込むことを必要としないまま、高い攻撃力と防御力を持つことができるのだ。
「私はチャチャゼロに、”こおるせかい”を合体させてある。見た目こそ差はほとんどないが、よく見ろ。背中に氷の翼が生えているだろう?」
「ば、馬鹿な……」
「テメー頭脳ガマナヌケカー!?」
「さて、反撃してやれ、チャチャゼロ。お前の自慢の剣、”氷河刃”でな」
「ヨーヤクコノ剣ノ試シ切リガ出来ルゼー!!」
「う、ウソだそんなこと……」
今のチャチャゼロには”こおるせかい”が内包されており、普段より水色っぽく、背中からは氷の翼が生えていた。
そう、術具融合を究極まで進化させたのが、この”チャチャゼロインこおるせかい”なのだ。
甲縛式
さらに、チャチャゼロが手に持つその剣も、氷でできていたのだ。
それはチャチャゼロ自身が魔法として作り出した氷の刃。
そう、チャチャゼロもまた、術具融合を自らの手で操り、操作することができるのである。
そのチャチャゼロのすさまじい魔力を見て、もはや完全に意味がわからず、立ち尽くしている一人目のエヴァンジェリン。
だが、そんな立ち尽くす一人目のエヴァンジェリンへと、チャチャゼロは楽しそうに氷河刃を超音速で振り回し、容赦なく切り刻んでいた。
「サー大人シク切リ裂カレロー!」
「が、がぁあ!?」
「おいおい、弱すぎるぞ、
「楽シーゼー! ナンタッテ御主人ヲ思ウ存分切リ刻メルンダカラナー!!」
「うーむ……。そう言われると、自分が切り刻まれてる姿を見ているのだと実感できるな」
切り刻まれ、凍らされ、ボロボロにされていく一人目のエヴァンジェリン。
二人目のエヴァンジェリンは、それを涼しい顔で眺めていた。
チャチャゼロは御主人を、切り裂けるまたとないチャンスなので、張り切って切り刻んでいたのだ。
この斬撃、さりげなく一撃一撃がこおるせかいと同じ威力なのだ。
そんなものを連続で叩きつけられれば、普通に死ねるというものだ。
しかし、吸血鬼の能力で自動再生して、死ぬことはできない。
もはや凍らされる苦しさと切り刻まれる痛みから、一人目のエヴァンジェリンは完全に戦意を喪失していたのだ。
「うぎぎー……。た、助けてくれ!」
「なさけないぞ、
「コリャ御主人ジャネーヤ。ガッカリダゼー」
「まあいい、とりあえず術具融合の
二人目のエヴァンジェリンは鉄扇を取り出すと、そこに”こおる大地”を合体させる。
そして、そこから数十本の糸が伸び、それで一人目のエヴァンジェリンを縛り上げたのだ。
エヴァンジェリンという人物は人形使いである。この程度の動作は、朝飯前なのだ。
これで完全に動きが取れなくなった、一人目のエヴァンジェリン。
だが、もはや動く気力すらないようであった。
それを見て自分と自分とで、最高の戦いができると思っていた二人目のエヴァンジェリンは、心底がっかりしていた。
「ふん、とりあえず貴様の魔法を解こうか」
「好きにしろ……」
「ああ、思う存分させてもらうよ」
二人目のエヴァンジェリンは一人目のエヴァンジェリンへ、魔法解除を使った。
すると一人目のエヴァンジェリンの姿が変化した。
黒い髪を逆毛にし、青い服を着た青年となったのだ。
この青年は転生者だったのだ。
さて、この転生者たる青年は、なぜこのような回りくどいバカな真似したのだろうか。
それは”原作どおり”エヴァンジェリンが吸血をしていないこと、この青年がに悩んでいたからだ。
――――ならば、何故悩んだのだろうか。
その理由は簡単だった。”原作”として考えれば、この桜通りの吸血鬼事件にて主人公のネギが成長するだけでなく、従者を増やすという重要なイベントである。
この事件が起こらなければ、ネギの従者が増えない。
そこに青年が焦りを感じたのだ。
だが何故、焦りを感じたのか。
それは、この青年が原作メンバーよりも年上というところにある。
すなわち原作メンバーがいる3-Aの情報が入ってこないのだ。
それに何故原作が乖離しているかが、まったくわからないというのも大きかった。
原因がわからないから、こういった行動に出るしかなかったのだ。
さらに言えば、自分が知っている”原作どおり”に事を進めたかった。
”原作どおり”物語が進むのであれば、自分の”原作知識”を活用して行動できるからだ。
だからこそ、学園中に噂を流し、自分がそれを真似しようと考え行動していたのだ。
そして、自分の姿から青年へと変わったのを見て、二人目、いや、本物のエヴァンジェリンは驚いた。幻術よりも高い技術で変身していたからだ。
だが、そのすさまじい魔法を知ったエヴァンジェリンは、研究者の目をしながら、高笑いを始めた。
「アハハハハハ! すさまじい魔法だな! 私と同じ能力にまで化けれるとはすばらしいぞ!」
「ああ、そうだ! 俺がお前に成りすましていたのだ!」
「アハハハ、面白い! なら貴様の頭の中を、少し覗かせてもらおうか」
「な、何をする―――ー!?」
この青年の面白い魔法を知るために、エヴァンジェリンはこの青年の記憶を見たのだ。
他者の記憶を封印できるエヴァンジェリンだ。このぐらいできて当たり前であった。
そして、その青年の記憶を読み取ったエヴァンジェリンは、さらに大きな笑い声を上げたのだ。
「アハハハハハハ、ハハハハハ! こいつは傑作だ! 私がほしかったものばかりじゃないか!」
「な、何だよ急に!?」
「いいものを見せてやろうか、”メラゾーマ”!」
「ば、バカな!?」
エヴァンジェリンは青年の記憶を覗き終えると、ドラクエで有名な魔法”メラゾーマ”を使ったのだ。
つまりエヴァンジェリンに変身していた魔法はあの”モシャス”ということになるだろう。
この青年はエヴァンジェリンの姿を目撃しており、その時に変身したのだ。
そして青年はそれを見て驚き、青ざめていた。
まず普通ではありえないからだ。しかし、そんなことはありえなくはないと、エヴァンジェリンは説明する。
「なにを驚いている?
「ぐっ!? だが!?」
「フフフ……。貴様が見たいものも見せてやろう。”カイザーフェニックス”!」
「あ? あああ!?」
エヴァンジェリンは”メラゾーマ”を”カイザーフェニックス”へと昇華させた。
カイザーフェニックスとは、ダイの大冒険に出てくる大魔王バーンの得意魔法である。
膨大な魔力を使用したメラゾーマが、火の鳥となった魔法なのだ。
それをいともたやすく操るエヴァンジェリンに、青年は怯えるしかなかったのだ。
「何を怯えている? 貴様の楽しい記憶から再現してやってるんだぞ? 面白がって見るものじゃないのか? まあ、これはその劣化でしかないがな」
「あああ、ありえねぇ……。そんなバカな……」
「怯えるな、むしろ貴様に感謝しているのだからな。貴様のおかげで”ベホマズン”なるすばらしい治癒魔法を知れたよ。ありがとう」
「うああああああ!?」
「ふむ、騒がしいやつだ。”ラリホーマ”」
劣化であってもカイザーフェニックスを使うエヴァンジェリンに、完全に恐怖してしまった青年。叫び声以外、あげれないほどに怯えていたのだ。
そしてうるさくてかなわないと、エヴァンジェリンはラリホーマを青年に使ったのだ。
ラリホーマとは広範囲での睡眠魔法である。
相手を眠らせてしまうものだが、上級の相手には効果が出にくい。
しかし、この青年はいともたやすく眠らされてしまったようだ。
うるさい悲鳴から開放され、笑っているエヴァンジェリン。
そして、エヴァンジェリンは青年の”前世の記憶”をそのまま封印したのだった。
「やれやれ、私がこうも手を下さんとならんとはな。チャチャゼロ、帰るぞ。茶々丸が待ってるからな」
「アイサー御主人!」
青年の拘束と結界を解除し、自宅のログハウスへと飛行しながら戻るエヴァンジェリン。
闇に支配された桜通りに取り残されたのは、過去を忘れ、深い眠りについている青年の姿だけだった。
――― ――― ――― ――― ―――
*オコジョ妖精*
アルベール・カモミール。通称カモ君。
由緒正しいオコジョ妖精。しかし下着泥棒にて刑務所へと送られた最強格の変態だ。
その罪状、なんと下着2000枚を盗むというとんでもないものなのだ。
そんな彼は脱獄し、ある人の下へと走っていた。
それはネギではなく、転生者であるカギ・スプリングフィールドである。
ネギはギガントの弟子として、毎日ギガントの魔法薬店へと通っていたので、カモミールを助ける時間などなかった。
そこでカギがカモミールの罠をはずし、兄貴となったのだった。
…… …… ……
エヴァンジェリンは研究好きだ。
基本的に毎日研究をしている。だが研究ばかりでは体がなまる。
だから今日はある程度運動するため、ログハウスの外で合気柔術の形の稽古をしていた。
そこへ学園の結界に進入したものを感知したのだ。
だが、それが小さいため捨て置いていた。
「何か結界を破って進入したようだな……。まあいいか、あの騎士にでも任せておこう」
エヴァンジェリンは積極的に、侵入者を何とかしようということはない。
完全に他人行事だった。
頼まれてもいない仕事なんぞする必要などないのだ。
それに、そういうことを調べているはずの皇帝の部下、メトゥーナトがその役目を負ってるはずだ。
ならばそっちに丸投げしてしまえと思ったのだ。
そしてそのメトゥーナトも気がついた。
当然である。彼は転生者の進入を気にしているからだ。
「む? 結界に侵入者……? いや、この気配はオコジョ妖精か……。なら問題ないだろう」
しかし、メトゥーナトはそれを気配で理解した。
小さい一匹のオコジョ妖精だ。オコジョ妖精ならば、特に害はないはずだ。
そう考えたメトゥーナトは、その小さな存在をスルーしたのである。
ただ、メトゥーナトはそれを完全に無視した訳ではなかった。
場所は移動せずに水晶で、そのオコジョ妖精を監視することにした。その後に起こる、彼の所業や悲惨な目にあうのも、しっかり見ていたのである。
…… …… ……
アルベール・カモミールは女性の下着が大好きだ。
下着があるところカモミールありと呼ぶほどだ。
”原作”でも勝手に下着を盗み、布団にするほどの変態ぶりだった。
そして、このカモミール、カギの居場所がわからなかった。
だから多分、いるであろう女子寮へと忍び込んだのだ。
「天国じゃー! ここは天国じゃー!」
こう言いながら下着をあさるこの変態オコジョ、ではなくオコジョ妖精。
本当に妖精なのか疑わしい。ここを天国と称し、犯罪に手を染めるこのオコジョ。
いくつもの部屋へ侵入しつつ、下着をあさっていた。
しかし、一つの部屋におかしな気配があった。
「な、なんじゃこりゃーーー!?」
その気配とは、前鬼、後鬼であった。
カモミールは驚き恐怖した。すさまじい力を持つ鬼たちが突然襲って来たからだ。
実際は襲っているのではない。
鬼たちは侵入者を発見し、捕獲しにかかっただけなのだ。
これは恐ろしい、勝てる相手ではない。
カモミールはそれをすぐ悟り、逃げだしたのだ。
「こ、こんなヤツらがいるなんて、聞いてねーぞおおお!!」
逃げるしかなかった。
だから即座に出口へ向かった。必死に逃げた。
もうすぐ出口だ、脱出できると安心し始めたカモミール。
だがそこに待ち受けていたのは、それ以上に恐ろしい相手だった。
それは少女だった。
橙色の髪をツインテールにした、少女だった。
カモミールは逃げるついでに、彼女の下着も頂こうと考えた。
しかし、それが最悪の一手となろうとは予想していなかった。
「ひゃあ――――! 我慢できねーぜ!」
「ヘンタイは死すべし、慈悲は無い」
「プロ!?」
なんということだ、飛び込んだと思ったら、いつの間にか掴まれていた。まるでエヴァンゲリオンに握られたカオル君のような状況となってしまったのだ。
カモミールはその事実に驚愕するしかなかった。
こうも簡単に捕まるなど、普通ありえないからだ。
さらに握る力がどんどん強くなり、中身が出そうになるほどであった。
「ひー! でちまう! でちまうぅ! 身がでちまうぅぅぅー!」
「このまま握りつぶそうか? それとも釜茹でにでもしてやろうかしら…………」
「ひぃぃー!? おっ、鬼だ! あっちの鬼より鬼がいるぅぅぅ!?」
「鬼ですって? ひどいことを言うのね……。ならもう容赦しないわ」
「ぴー!?」
少女の正体はアスナだった。
まるで養豚場のブタを見るような目で、冷たく睨みつけていた。
というのも中等部1年の時、下着泥棒が出たことでかなりそういうものに敏感だった。
次にあったらぶっ殺すと意気込むほどだった。
そして、変態に容赦はしない、これこそアスナの信条でもあった。
だからこういう輩は掃除するに限ると思っているのだ。
このまま握りつぶされる、そう恐怖に悶えるカモミール。
もはや意識は朦朧としており、瀕死であった。
そこへ一人の少年が来た。救いのヒーローだった。
「お、おめぇはカモ! うわああああ死にかけてるううううう!?」
「ピクピク……」
「このヘンタイ小動物の知り合いなの? カギ先生」
「おう! 一応! だ、だから離してやってくれ!!」
「あ、そう? んじゃ、ほら」
「ひでぶ!?」
「ああああ――――!?」
その救いのヒーローはカギだった。
カギはそろそろカモミールが女子寮へやってくることを思い出し、迎えに来たのだ。
そして、アスナはカギに離せと言われてカモミールをその場で離したのだ。
しかしその位置は、アスナの身長と同じぐらいの高さからだった。
カモミールは全身を地面に打ちつけ、さらに瀕死になっていた。
そのせいで完全に気を失ってしまったのだ。
カギはそれを連れ去り、治療しに出て行った。
それを見ていたアスナは、次にあったら確実に絞め殺そうと考えていた。
いや、まあ半分は本気で、半分はきっと冗談だろう。た、たぶん。
「オコジョのクセに下着泥棒とは本当にオコジョなのかしら……」
「アスナー、どーしたん?」
「またヘンタイ、下着泥棒が出たのよ。今回は懲らしめておいたわ」
「アスナ、それ一年の時も十分懲らしめとった気がするんやけどー……」
「別人、いや、別動物だったから大丈夫よ」
「そーかー、へんたいの多い学校やなー」
「次会ったら確実にトドメをさすわ」
アスナがあのオコジョはなんだったのかと、ぼそっと独り言を言っているところへ、同じ部屋に住む木乃香がやってきた。
だから事情を説明したのだ。
その後二人は部屋へと戻り、自分の下着が大丈夫か確認し、大丈夫だったことに安堵した。
木乃香はその後、前鬼、後鬼にお礼を言っていた。
アスナも同じくお礼をしたのだった。
…… …… ……
さて、カギとカモミールはというと。
カギは適当な林へと入り、適当な治療魔法をカモミールにかけていた。
しかし、なかなか効かないので、
なんという無駄使いか。こういう時に使うものではなかろう。
もっと別の場所で使うべきである。
「兄貴ぃー、俺っちはもうダメッス……。いろいろ中身でちまったぁ……」
「大丈夫だ! 俺が治した! ほら起きろ!」
「お、おう! 本当だ! ありがてぇー! 兄貴ィィー!!」
「会いたかったぜ、愛しのカモぉー!」
オコジョと少年の感動の再会であった。
そしてカモミールは、あの鬼やら鬼のような少女が何なのかを訪ねたのだ。
「女子寮の鬼と、あの鬼少女はなんなんだぁぁ!? マジ死にかけたッスけどー!?」
「あれ、前鬼、後鬼だと思うんだがわからねぇ。あと鬼少女は俺の生徒で銀河明日菜だ」
「前鬼、後鬼って、わからねぇーけどいやぁーな感じの響き言葉だぜぇ……。つーか! あの鬼の姉貴は兄貴の生徒だったってかー!?」
「お、おう。ありゃ相手にしねぇ方がいいぜ、殺される」
「こ、殺されるぅぅ!?」
このカギは先ほどのアスナを見て、確実にカモミールを殺りにきていると悟っていた。
そのカモミールはアスナを相手にすると殺されると言われ、ショックを受けていた。
いや本気で殺しにかかっていたのだ。
その言葉を素直に納得したカモミールだった。
そしてカモミールはカギのためにやってきて、パートナーでも探そうと言ったのだ。
半分はカモミール自身のためでもある。仮契約に成功させたオコジョ妖精に、金が入るからだ。
「兄貴! パートナーを探そうや! より取り見取りですぜー!」
「なら俺より弟のパートナーを探してくれ」
「兄貴の弟さんっスかぁ!?」
「ああ、このままではいけないからなあ。あいつにパートナーを見つけてほしいんだ」
「な、なんて弟思いなんだ兄貴は! よっしゃ任せておいてくれぇ! きっと兄貴の弟のパートナー、見つけまっせ!」
カギは原作どおり進めたくて、ネギにパートナーを見つけさせたいのだ。
カモミールはそれを、弟思いと勘違いした。さて、とりあえずそのために、弟のネギへ挨拶しに行くカモミールだった。
…… …… ……
ネギはタカミチの部屋で、のんびり過ごしていた。
しかしそこに、カギとカモミールが現れた。突然のことで、ネギは少し驚いていた。
「俺っち、アルベール・カモミールでさー。カギ兄貴のペットってことでよろしく!」
「兄さん、いつのまにペットなんかを……。タカミチさんに許可を取らないと……」
「でーじょーぶだ、問題ない。こいつオコジョ妖精で、パートナー探してくれるってよ!」
「オコジョ妖精なんですか。はじめまして、ネギです」
「しゃっ! じゃあ早速パートナーでも探そうぜー!」
「おう、その意気だぜ!!」
「え? パートナー?」
ネギは突然パートナー探しといわれ、焦った。
別に今すぐほしいと思っていないからだ。もっと大きくなった時でも、十分だと考えているからだ。
だが、今すぐパートナーを選ぼうと、カモミールが考えはしゃいでいた。
「パートナー探しなんて、今すぐしませんよー!」
「なんだよ、パートナーは魔法使いとしては当たり前だろうが!」
「そうですぜー兄貴の弟さん、いや旦那ぁー! さらに旦那のクラスより取り見取りじゃないっスかー! 選び放題だぜー!」
「えー!? 生徒たちから選ぶなんて絶対ダメだよ!!」
「いいーじゃないっスかー!」
「まあまて、カモよ。今すぐはいい。いずれチャンスが来る!」
「おや、兄貴いいんですかい? しかし兄貴がそう言うなら、チャンスを待つしかねぇかー」
カギはあえて今すぐじゃなくてもよいと言った。
なぜなら京都のイベントで、のどかがネギの従者になるからだ。
実際どうなるかはまったくわからないというのに、謎の自信がカギにそう思わせているのだ。
カモミールもそのチャンスが来るといわれて、それを信じることにした。
またネギはとりあえず、今はよいといわれて安堵していたのだった。
そして、地味にアスナとネギの仮契約を、カギは半分諦めていた。
どうせエヴァンジェリンは吸血しないのだ、すぐにする必要がないと思っていた。
さらに言えば、カモミールが完全にアスナに恐怖してしまって、こりゃ厳しいと思ったのである。
「しかし、女子寮で下着あさりてぇーなー、しかしあの鬼の姉貴が怖すぎる! や、やめといたほうがよいッスかね?」
「やめておけ、次は確実にくびり殺されるぞ!」
「ひ、ひいいい!? それは恐ろしすぎる! 諦めるしかねぇってのか! くそおおお!!」
カモミールは女子寮進入を諦めた。
次にアスナに捕まれば、確実に殺されるからだ。
さすがに死地へ赴くほど愚かではないカモミールは、恐怖を感じながら、あの下着たちのぬくもりを忘れられずに涙するのだった。
…… …… ……
転生者名:不明、逆毛青年
種族:人間
性別:男性
原作知識:あり
前世:30代アルバイト
能力:ドラクエの魔法、職業は勇者
特典:ドラクエの魔法全部
ドラクエの勇者の能力
ドールマスターならドールマスターらしい戦い方をしよう
茶々丸さんはお留守番担当
闇の魔法は”掌握”するから危険なのだろうという設定
”固定”だけなら魔法の操作だろうから、頑張ればできなくはなさそう
まあ、それを見ただけでできるネギ君は、やっぱりおかしい
そして、待望のオコジョ妖精惨状、ではなく参上