理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ84:正義厨の転生者


四十話 機動天使

 ――――大天使ミカエル。

シャーマンキングにおいて、九十九神が憑いた自動車に天使の思念を与えた機械精霊である。

そしてそれこそが、機動天使ミカエルという存在なのだ。

 

 また、その天使を持霊とし、操っている男こそが、転生者のマルクという男だ。

そのマルクはネギを悪と断定し、攻撃を開始したのだ。

 

 

「悪として滅ぶがいい!ネギ・スプリングフィールド!」

 

「うわっ……!」

 

 

 ネギはとっさに横に跳ね、ミカエルの剣を避けた。ギリギリであった。

だが、ネギは今のが精一杯であり、次に同じ動きが出来るかどうか、わからかったのだ。

 

 それを見たマルクは、恐ろしい形相でメガネを吊り上げる。

そして、さらに追撃を繰り出したのである。

 

 

「それを避けただけでは、勝ち目などなあるまい! 今度こそ消えるがいい!!」

 

「う、う……」

 

 

 ミカエルの剣がネギをしとめんと襲い掛かった。

あのネギですら、半分諦めかけていた。これは避けようがない。

もはや目の前まで、ミカエルの剣が振り下ろされていた。

 

 しかしそこに、小太郎がやってきてネギを助けたのだ。

間一髪ネギは小太郎に抱えられ助かったのである。

そしてネギと小太郎はミカエルから距離を取り、出方を伺おうと考えたのだ。

 

 

「大丈夫かネギ!? クソ、ありゃ一体何なんや……!」

 

「こ、小太郎君!?」

 

「ち、犬っころめ。貴様も悪の仲間となるか!!」

 

 

 だが、その小太郎の行動に、怒りを滾らすマルク。

もはやマルクは小太郎すら悪と断定し、攻撃目標としたのである。

 

 このなりふり構わぬマルクの行動を、許せないものが居た。那波千鶴である。

彼女は子供が好きであり、少年たちにこのようなことを行う、このマルクが許せなかったのだ。

 

 そしてマルクへと近づき、千鶴は平手打ちをマルクの顔面にぶつけたのだ。

 

 

「あなた、どうしてこのようなことを?」

 

「――――貴様、何をした!? 彼らは悪だ。だからこの場で倒さねばならないのだよ!」

 

「悪ですって? 私には、弱いものいじめをしているあなたこそ、悪に見えますが……?」

 

「なっ、何っ!? 私が悪だと!?」

 

 

 客観的に見ればそうなるだろう。

なんせ巨大ロボを操り少年を殺さんと動くこの男が、悪に見えるのは当然だ。

 

 実際千鶴はO.S(オーバーソウル)が見えていないので、拳銃を二人に向けている姿にしか見えないのであるが。

 

 だが、その自分こそが悪と言う言葉に、マルクはさらに怒りを燃やした。

なぜなら自らが正義であり、あの二人が悪だと断じているからである。

 

 そこでマルクは恐ろしい形相となり、拳銃をネギから千鶴へと向けたのだ。

 

 

「私こそが正義だ! 何も知らぬ小娘が、知った風な口を利くな!!」

 

「あなたが正義? そのようなものが正義だとは思えませんが?」

 

「こ、ここっ、この小娘! 痛い目を見なければわからんか! ミカエル!!」

 

 

 マルクは千鶴の言葉が相当許せなかったようで、数歩後ろへと下がりミカエルに千鶴を攻撃するよう命じたのだ。

 

 するとミカエルは追っていた小太郎とネギから遠ざかり、千鶴へと剣を振り上げたのだ。

 

 と、その行動に小太郎もネギも驚き焦った。

何も関係のない千鶴が、あの騎士のロボに攻撃されそうになっていたからだ。

 

 

「ちづる姉ちゃん!?」

 

「あ、危ない! 千鶴さん!」

 

 

 このままでは間に合わない。

いや間に合っても防ぐ手すらない。

だが、そんなことなど気にすることなく、ネギも小太郎も急いで反転し、千鶴のほうへと移動した。

 

 しかしこのままでは間に合わない、明らかに間に合わない。

そしてミカエルの剣は千鶴へと振り下ろされ、地面に突き刺さったのだ。

 

 

「千鶴さん!?」

 

「な、外れたんか!?」

 

 その剣は千鶴の手前の地面に刺さっていた。

ミカエルの攻撃が千鶴には命中しなかったのである。

 

 それを見てネギも小太郎も気休め程度だが安心したようだ。

そしてさらに加速し、千鶴を守ろうとする二人だった。

 

 しかし、なぜ攻撃が外れたのだろうか。

今の攻撃を千鶴が避けた訳ではない。あえてマルクが一撃目をはずすように攻撃したのだ。

 

 だが、そこには突如地面が抉れたにも関わらず、千鶴は堂々と立っていた。

何が起こったのかもわからず、ただ立ち尽くしていた訳ではない。

強い意志のもと、この場所に立っていたのだ。

 

 

「……何をしたのでしょうか?」

 

「貴様にはO.S(オーバーソウル)は見えんか。だが、今度は当てるぞ? ミカエル!!」

 

 

 今のは脅しだった。

この謎の現象に怯え、今の言葉を謝罪するなら、助けてやったとマルクは思った。

 

 だが今の現象を見ても堂々としてた千鶴へ、再度攻撃を仕掛けたのだ。

もはや千鶴がネギに変わり絶体絶命となっていた。

 

 その光景にネギも小太郎も焦り、叫びながら何とかしようともがくことしか出来なかった。

 

 ――――しかしその時、剣を振り上げたミカエルの腕が止まったのだ。完全に動かなくなっていたのだ。

 

 

「何!? ミカエルどうしたというのだ!? なっ、こいつは!!?」

 

「こ、この紅き巨人はまさか……!?」

 

「お、おい、まさかこいつは!?」

 

 

 ミカエルの腕を押さえる、もう一つの腕。

それは紅き腕であった。そして、その紅き腕が力をこめると、ミカエルの右腕がへしゃげ、引きちぎれたのである。

 

 一体何が起こったというのか。

ネギも小太郎もそれに驚いたが、千鶴が無事だったことに安心し、ようやく千鶴の下へと駆けつけたようだ。

 

 また、いつの間にやらステージの後部座席の上に、一人の少年が立っていた。

それは黒く長い髪、星のアクセサリーを多く身につけた少年だった。

 

 そこでその少年は、一言ポツリと漏らす。

 

 

「ちっちぇえな」

 

 

 その少年は赤蔵覇王だった。

彼もまた悪魔の力を感じ、ここへやってきたものの一人だったのだ。

 

 そしてそこへ駆けつけて見れば、無関係な人を巻き込み、暴れる天使が居るではないか。

その暴挙を許すほど、覇王は甘くはない。

 

 即座にS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)をミカエルの後ろにO.S(オーバーソウル)し、その腕を掴んで砕いたのだ。

マルクはこの光景に絶句しており、まさかこのようなことになるとは思っていなかったようだ。

 

 

「……!? は、ハオだと!? ば、バカな……!!? 私のミカエルがこうもあっさりと……!?!」

 

「一般人を巻き込み、攻撃するなどあってはならぬことを。お前は一体何がしたい?」

 

「き、貴様がハオなら悪だということだ! 貴様もやつらと共に、滅ぼしてやろう!!」

 

「悪か。だが明らかにお前のほうが悪だろ?」

 

 

 はやり客観的に見て、このマルクが悪であった。

と言うのも、激怒したぐらいで一般人たる千鶴に攻撃を加えるなど、普通に悪である。

 

 その言葉にマルクはさらに怒り、完全に理性を失っていた。

キレまくっていた。さらに、このマルクは覇王を”ハオ”だと思い込み、勝手に悪に仕立て上げ、攻撃しようと考えていた。

 

 そんなマルクを覇王は涼しい顔で眺めながら、ゆっくりとステージへと近づいていった。

 

 

「ハオ! 貴様が悪なのだ! そして私が正義なのだ!!ミカエルゥゥーーーッ!!!」

 

「そうか、なら僕は悪でもかまわん。だが、滅ぶのはお前だ」

 

 

 覇王がそう言うと、S.O.F(スピリット・オ・ファイア)が瞬間的にミカエルの前にO.S(オーバーソウル)し、ミカエルの上半身と下半身を分断したのである。

瞬殺、もはやそうとしか言えない状況であった。

 

 そしてネギと小太郎はボロボロだと言うのに、守るようにして千鶴の前に立つ。

 

 この状況に、マルクはどうしてこうなったか考えていた。

また、覇王はすでにステージ最前列の座席までやって来ており、その場所に立っていたのだ。

 

 

「な、何だと……! 一瞬で我がミカエルが……!?」

 

「なんだ、その程度か」

 

 

 一瞬にして破壊されたミカエルを見て、マルクは驚愕していた。

だが覇王はそれが当然だといわんばかりの表情で、マルクを睨みつけていた。

 

 されどマルクは、もう一度ミカエルをO.S(オーバーソウル)したのである。

膨大な巫力をそのミカエルに注ぎ込み、先ほどのO.S(オーバーソウル)よりも高い力を持つO.S(オーバーソウル)を構築したのだ。

 

 

「だが相手がハオだとしても、私には神から与えられし特典にて巫力は十分にある! 貴様ぐらいのな!!」

 

「ふん、そうか。じゃあこっちも別のO.S(オーバーソウル)を使おう」

 

「何を!?」

 

 

 覇王は京都にてリョウメンスクナを持霊にしていた。

つまり、それをO.S(オーバーソウル)させることができる。

 

 そしてその媒介は、覇王がこの世界にて転生した時から存在し、特典のオマケとして所有してきた最高の刀。

Fateの佐々木小次郎が振るった長刀、物干し竿であった。

 

 それにリョウメンスクナをO.S(オーバーソウル)させたのである。

 

 

「我が剣術を生かし、さらにシャーマンとして生かす。この剣こそ、我がO.S(オーバーソウル)にふさわしい」

 

「な、何だその巨大な剣は……!? スピリット・オブ・ソードだとでも言うのか!?」

 

 

 かれこれ1000年に渡って覇王と共に歩んできたこの物干し竿は、その長い年月により霊験あらたかな存在となっていた。

そして、その覇王の新たなO.S(オーバーソウル)は巨大な刀であった。

 

 その巨大な刀は、マタムネが操る鬼殺しと、麻倉葉のスピリット・オブ・ソードを足して二で割ったような姿だった。

だがしかし、甲縛式O.S(オーバーソウル)として、物質に近い形状となっていたのである。

それがこの覇王の新O.S(オーバーソウル)……。

 

 

「―――― O.S(オーバーソウル)、”神殺し”」

 

「か、神殺しだと……!!」

 

 

 神殺し。そう名づけられた覇王のO.S(オーバーソウル)

転生神の子たる転生者を切り裂くために生み出されたO.S(オーバーソウル)。ゆえに神殺し。

 

 そこで、その巨大な刀のO.S(オーバーソウル)を用いて、静かにあの構えを取る覇王がそこに居た。

 

 ようやく使える。初めて真価が発揮できる。

この技を使うことを長年待ち望んでいた。そしてその技を、今見せる時が来たのだ。

 

 

「ふん、だがその程度の剣では、私のミカエルは倒せん!! 滅びろ、邪悪なるハオ!!」

 

「来なよ。ようやくあの技が使えるんだ。さっさと向かわせて来い」

 

「減らず口を!! ミカエル!!!」

 

 

 マルクはミカエルに命令し、再度剣を覇王に向けた。

そこでその覇王はS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)をネギたちの近くに配置し、守るように腕を回していた。

 

 だが、肝心の覇王はO.S(オーバーソウル)を構えたまま、微動だにしていなかった。

そして、ミカエルが剣を振り下ろし、覇王に命中する手前で、覇王は奥義を使用した。

 

 

「秘剣、――――”燕返し”」

 

 

 ――――燕返し。

Fateの佐々木小次郎が生涯かけて編み出した究極の剣技。

 

 同時に繰り出される三つの斬撃は、もはや魔法の領域とされるほど、研ぎ澄まされた剣技だった。

この覇王は常日頃からこれを練習し、使う機会を伺っていたのだ。

 

 1000年前、生涯かけて完成させたこの技だ、使う日を待ち望んでいたのだ。

 

 その瞬間に秘剣が開放され、まったくの時間差すら無く発せられた完全な三連撃を同時に受け、ミカエルは三等分され砕け散った。

もはやS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)など必要とせず、簡単にミカエルを破壊したのだ。

 

 

「ば、バカな!? ……何だというのだ!!?」

 

「何を驚いているんだ? これが僕の特典だということだろ?」

 

「……き、貴様一体……!?」

 

「赤蔵覇王、お前と同じ存在だよ。やれ、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)

 

 

 そう覇王が言い残すと、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)がマルクの目の前に出現し、鋭い爪を突き立てた。

マルクは今のO.S(オーバーソウル)に力を使いすぎたため、ダメージのフィードバックが大きかった。

そのためすでに肩から息をしており、立っているのがやっとな状況だったのだ。

 

 これで完全にマルクはS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)にとらわれたも同然で、後は貫かれ、燃やされ、特典を引き抜かれるだけとなっていた。

 

 

「おや…………?」

 

 

 だが覇王の攻撃がなぜか外れたのだ。

予想した光景が見れなかったと言う感じの声が、覇王の口から漏れていた。

 

 なんとS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)が攻撃したその瞬間、マルクが突然地面へと沈んだのだ。

 

 いや、地面ではなかった。

そのマルクの下にあった、水溜りの中にマルクが沈んだのである。

それは水の転移魔法(ゲート)という魔法であった。

 

 そして何者かがマルクをそのまま連れ去ったらしい。

つまり、今の魔法を見るに、明らかに高位魔法使いの仕業であった。

 

 覇王はマルクを取り逃がしたことを、残念に覚えながらも、仕方なくそれを眺めていることしか出来なかった。

これは覇王が始めて敵を取り逃したということであった。

 

 

「……まだ敵がいたというのか……。この覇王を出し抜くとは、やるじゃないか」

 

 

 覇王はこの雨の振る闇の空を眺め、そうポツリと言い残した。

今世にて、初めての屈辱。敗北ではないが、ある種の敗北であった。

 

 この敗北感を雨と共に感じながら、覇王は次に会った時は、確実にしとめることを決意したのである。

 

 また、ネギと小太郎はマルクが消えたことで、安堵していた。

あのまま戦っていれば、危なかったからだ。

 

 そして千鶴も、今何が起こっていたのかわかっていなかったが、なんとなく危険だったことはわかったようであった。

そして覇王はとりあえず、三人へと近づき無事を確認した。

 

 

「そちらの三人、大丈夫だったかい?」

 

「あ、ありがとうございます、覇王さん」

 

「お、お前赤蔵の兄ちゃんか!?」

 

「何が起こっていたのか、よくわかりませんでしたが、何か危機を助けていただいたみたいで。ありがとうございます」

 

 

 覇王を知っているネギは、普通にお礼を言っていた。

しかし覇王の強さに戦慄を覚えていた小太郎は、少しビビッていた。

 

 千鶴はこの戦いのことをよくわかっていなかったが、なんとなく危険を助けてもらったことを察して、覇王に礼を述べていた。

だが、その覇王を見て千鶴は、何かを思い出したようであった。

 

 

「あら? あなたは確か……」

 

 

 千鶴は覇王のことを、微妙に知っているらしい。

だが覇王は千鶴のことをまったく知らない様子であった。

すると千鶴は覇王へ普段の笑顔で近寄った。

 

 

「あなた、赤蔵さんね?」

 

「ん? 君と会うのは初めてなはずだけど?」

 

「覚えてらっしゃらないみたいね。私はあなたと一度だけお会いしていると思いますけど?」

 

 

 そこで千鶴に会った事があると言われ、どこでだろうと覇王は首をかしげた。

だが覇王は何とか思い出そうそして、ふとその記憶が頭によぎった。

 

 それは休日に木乃香に誘われて島に行ったことだった。

そこで、そういえば確かに居た気がしたなあと、考えていた。

 

 ネギと小太郎は覇王が居るなら安全だと思い、とりあえず休憩がてらその二人の会話を眺めることにしたらしい。

 

 

「ああ、あの島でか」

 

「思い出してくれたかしら? 私は那波千鶴と言うわ、よろしくね?」

 

「そういえばそうだったね。そして僕の名前は知っているようだけど、一応名乗らせてもらおう。僕の名は赤蔵覇王、以後お見知りおきを」

 

 

 そこでとりあえず挨拶を交わす千鶴と覇王。

千鶴は覇王を島で見ていたし、木乃香の彼氏と言う噂も聞いていたので、ある程度は知っていた。

 

 しかし、覇王は思い出すまでまったくわからなかったのだ。

一応顔ぐらいは見たはずなのだが、思い出せない程度だったようである。

 

 そんな覇王に千鶴は、前から疑問に思っていたことを質問したのだ。

 

 

「あなた、このかさんの彼氏なのでしょう?」

 

 

 千鶴はあの雪広のリゾート島で、木乃香と戯れる覇王を見ていた。

だから覇王が木乃香の彼氏か恋人だと考えていたのだ。

 

 確かにそう思われても不思議ではない、むしろそう思ったほうが自然な状況だった。

だが、覇王の答えは否、断じて否であった。

 

 

「ん? 違うけど?」

 

「あら? 最近よく仲良くしているのを見かけたから、そうなのかと思いましたわ」

 

 

 この覇王、まったく表情を変えずに違うと言い出した。

その理由は木乃香との約束にある。

 

 それは木乃香が強くなり、自分の側に立つならそう名乗ってもよいが、今はそうではない。

だからまだ、覇王もそれを認めるわけにはいかないのである。

 

 

「仲良くしているが、旧友どまりさ」

 

「本当かしら? あれほどこのかさんに抱きつかれてて旧友だなんて、普通に考えておかしいと思いますけど?」

 

「ああ、木乃香は昔からあんな感じだよ。さほど気にはしていないさ」

 

 

 覇王は自分は友人だと思ってる。

そしてあの木乃香の行動は昔からだから気にしていないと覇王は言ったのだ。

だから別にそう言う関係じゃないから、気にしないでくれよ、ということだ。

 

 だが、この程度の答えであの木乃香の行動に納得するかといえば、そうではないだろう。

何せ随分と積極的なアプローチを仕掛けていたのだ。

 

 旧友などで納得できる訳が無い。

さらに、あれだけ抱きつかれて無反応ではあったが、邪険にしないのも奇妙だと千鶴は思っていたのだ。

 

 

「ですが、あのようなことをされても特に邪険に扱わないのは、やはりそういう関係なのでは?」

 

「僕が彼女の扱いに慣れているだけさ。いつものことだよ」

 

 

 まったくYESと言わない覇王。覇王には意地があるのだ。

ここでYESを言えば、あれだけ木乃香に豪語したことが、台無しになってしまうからである。

そういった理由で、絶対にNOを貫いているのだ。

 

 しかしこのまま押されてしまうと面倒だと覇王は考え、逃げることにした。

そこで覇王はネギと小太郎へと、話しかけたのだ。

 

 

「君たちはボロボロだ、とりあえず傷を癒すんだね」

 

「あら、逃げてしまわれるので?」

 

「そう取ってもらって結構。どう思われようが、僕には関係ない」

 

 

 そう言うと覇王はそのまま千鶴の横を通り過てた。

千鶴は覇王を追うように体を動かしながら眺めていた。

そして覇王は、ネギと小太郎の真ん中を歩いて通り抜けた。

 

 その瞬間、こっそり巫力での治療をその二人に行ったのだ。

そこで突然傷が癒えて痛みが消えたことに、ネギも小太郎も驚いていた。

 

 治癒の魔法にも詠唱があるのだ。

突然傷が癒えるなど、考えられないのである。

 

 

「あれ? 傷が……」

 

「ど、どこも痛くあらへんぞ!?」

 

 

 

 その二人の言葉を聞いて、治療が完了したことを覇王は確認した。

治療されたネギと小太郎は、いまだになぜ傷が癒されたのかまったく解らず、その場で混乱していた。

 

 そんな二人に覇王は説明もせずにそのまま歩きながら、振り向きもせずに別れの言葉を発していた。

 

 

「雨が強い、それに夜だ。早く帰って寝たほうがいいぞ? じゃあね」

 

 

 その発言の後、さっさと走って覇王は寮へと帰っていった。

まあ、後でS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)に乗って帰るのだが。

乗り残された三人は、とりあえず千鶴の部屋へと行くことにしたのだ。

 

 

「不思議な人ね、赤蔵さんという人は」

 

「そうですね……」

 

「いや、ありゃ化けモンやで!?」

 

 

 退散して行った覇王を眺めながら、千鶴はそう考えていた。

奇妙な少年だが、決して悪いやつではない。むしろ木乃香に好かれるほどには、いい人なのだろうと思っていた。

 

 そこでネギもそれに同意した。京都では色々と助けてもらったからだ。

だが、同じく京都でリョウメンスクナを一撃した覇王を見ていた小太郎は、やはり恐ろしい何かという感想しかでなかった。

 

 あの光景、地味に小太郎のトラウマであった。

あの巨大な化け物を、一撃する化け物、それが覇王だと刷り込まれてしまったのだ。

 

 その後、ネギは千鶴を部屋へ送ると、自室にしているタカミチの部屋へと戻っていった。

そして、とりあえず小太郎は千鶴の部屋に泊まることになったようであった。

 

 

 ……ちなみにバーサーカーは、アーチャーを追っていたのでその場に居なかった。

そしてバーサーカーに追われるアーチャーは、何とか必死に逃げ切ったらしい。

なんとも詰めが甘いアーチャーである。

 




いやあ、メガネは強敵でしたね

そしてようやく燕返しが使えるように
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