理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ94:まほら武道会に参加する転生者

テンプレ95:入れ替わった選手


麻帆良祭 中盤
五十二話 まほら武道会、開催


 

 

 まほら武道会の予選は難なく終わった。

大抵”原作どおり”に進んだようだ。

 

 木乃香もタカミチの横で楽をしつつ、O.S(オーバーソウル)で攻撃を跳ね除け、敵を撃退して勝ち上がった。

 

 また、その参加者にリーゼントが混じっていることに、アスナは地味に驚いたりしていた。

まさか状助以外にリーゼントが居るとは思っても見なかったのだ。

 

 そんな感じで予選は終了し、次の日の本選へ向けて準備をするだけとなっていた。

 

 

…… …… ……

 

 

 麻帆良祭二日目、まほら武道会本選当日となった。

大会開始と言うだけあり、朝早くからすでに龍宮神社は大勢の人でにぎわっていた。

そしてアスナ、木乃香、刹那とネギ、小太郎が合流して雑談していた。

 

 アスナは千鶴から小太郎のことを聞いていたようだ。

そこでネギが飲み物を買いに出ている間に、アスナは木乃香たちへ、小太郎に両親がいないことを打ち明けていた。

 

 それを聞いた木乃香は小太郎にそれを尋ねると、小太郎が自分の過去をその三人へ打ち明けていたのだ。

 

 

「狗族と人間のハーフってやつで、捨て子やったんや」

 

 

 小太郎は狗族と人間の間に生まれた子で、捨て子だと語る。

そのためどちらの種族にもなじめず、友人すらいなかったと本人は平気な顔で言っていた。

生きるために小さい時から、危険な裏の仕事をしながら生きてきたと。

 

 話を聞いた木乃香は涙を浮かべ、同情した。

こんな小さな少年がそうやって生きてきたことに、悲しみを覚えたからだ。

 

 またアスナは、まるで懐かしいものを語るように、自分の重い過去を話す小太郎に関心していた。

恨みも妬みも感じないような、何てこと無いという表情で小太郎がその過去を語っていたからだ。

 

 普通ならば恨んだり妬んだりするものだが、小太郎はそれがなかった。

だからアスナは、彼は心が強い少年なのかもしれないと感心していたのである。

 

 刹那もその話を聞いて、ある程度自分と小太郎を重ねて見ていた。

そして、自分だったらどうしたのだろうと考えていた。

 

 あの一人だった時、バーサーカーが現れなかったら、長が助けてくれなかったらどうなっていたのだろうかと。

 

 さらに一人で全て自己完結し、今を平然と生きている小太郎に、刹那はとてもすごいと思っていた。

多分自分ならばこうやって生きていけなかっただろうと、強く感じていたからだ。

 

 

 そんな少ししんみりした空気の中、突然大男が現れた。坂田金時(バーサーカー)である。

バーサーカーも武道会のチケットをしっかりゲットしていたが、霊体となっていたので受付をスルーして、渡すのをを忘れていた。

 

 今頃になってそのことを思い出したが後で渡せばいいかと思いつつ、霊体のまま刹那の後ろについてきていたのである。

そこで小太郎の話を聞き話したくなって実体化したのである。

 

 突然大男が現れたことに小太郎は驚いていた。

そりゃ突然でかい男が気配もなく現れれば、驚くのは当然だ。

まあ、アサシンではないので気配遮断などはなく、気を張っていれば存在を察知できたかもしれないが。

 

 

「な、なんやこのでけー兄ちゃんは!?」

 

「よう! オレはバーサーカーってんだ! 以後よろしくな!」

 

「お、おう! 俺は犬上小太郎っつーもんや! よろしゅーたのむわ!」

 

 

 バーサーカーは小太郎に関心していた。

一人で生きるということは相当つらいことだからだ。

だから、この年齢まで小太郎はずっとそうやって生きてきたことに、強い男気を感じたのだ。

 

 また、バーサーカーもハーフという存在であり、その辺りにもシンパシーを感じたのだろう。

小太郎も最初は驚いたが挨拶を交わした時に、この大男がある程度只者ではないことを直感でわかったようだ。

 

 

「ほおー? 兄ちゃん、ただもんじゃなさそうやな。出来るんか?」

 

「まあな! 言っちゃあなんだが、オレはお前よりずっと強いだろうぜ?」

 

「何やて!? なら俺と勝負せんか?」

 

 

 小太郎はバトルジャンキーだ。

だから自分より強いというこのバーサーカーと戦ってみたくなったのだ。

 

 だが、今戦うのは周りにも迷惑だし、何より武道会の開催前だ。

だからバーサーカーは今は戦わないと言っていた。

 

 

「おいおい、焦んなって。今やったら武道会に出場できなくなるかもしれねぇぜ?」

 

「何!? 兄ちゃんそんな強いんか!?」

 

「まーな! まっ、別に今じゃなけりゃいつでも相手になってやるぜ? 暇な時に付き合ってやるよ!」

 

「おお! ほんまか!? おっしゃ、約束やで兄ちゃん!」

 

 

 バーサーカーは今ではなく今度なら戦ってやると小太郎へ言った。

それを聞いた小太郎は、嬉しそうにガッツポーズをとりながら約束だと叫んでいた。

 

 また、バーサーカーはこの元気な小太郎を少し鍛えてやろうと思ったのだ。

そのことに大きな理由は無かった。

 

 単純に元気な子供が好きなのがバーサーカー。

こういう風の子のような小太郎を一目で気に入ったのだ。

 

 

「おう! わかったぜ!」

 

「絶対の絶対やからな! 逃げたらあかんで!!」

 

「ハッ、誰が逃げるかってんだ! オレが逃げる訳ねぇだろ?」

 

 

 さりげなくこの短い時間で小太郎とバーサーカーは友情を得ていた。

何かシンパシーを感じたのだろう。

 

 確かに微妙に性格が似ているこの二人、仲良くならない訳が無いのだ。

と、そこへネギが飲み物を抱えて戻ってきた。

 

 

「ジュースみんなのぶん買って……って増えてるー!?」

 

「よう、ネギのぼーず!」

 

「ば、バーサーカーさん、いつの間に来たんですか!?」

 

 

 バーサーカーは戻ってきたネギへ挨拶していた。

だがネギはいつの間にか増えてるバーサーカーに驚いていた。

 

 なぜかと言うとバーサーカーの分の飲み物がないからだった。

だからとりあえず自分の分をバーサーカーにあげようと思ったのだ。

 

 

「バーサーカーさん、これをどうぞ」

 

「そりゃぼーずの分だろ? 気にすんなって!」

 

「だ、だけど……」

 

「いいんだよ、オレっちは別に必要ねぇ体だしな」

 

 

 ネギは申し訳なさそうに自分の分の飲み物をバーサーカーへ渡そうとするも、バーサーカーは気にするなと言って受け取らなかった。

 

 というのもバーサーカーはサーヴァントなので、飲み食いは趣味でしかないのだ。

だからこそ、必要ないから気にしなくて良いとネギに言っているのである。

 

 

「そうですか?」

 

「おうよ! それより早く別のヤツに分けてやんな」

 

「はい!」

 

 

 そうバーサーカーに言われたネギは、とりあえず四人へ飲み物を配っていた。

それをバーサーカーは遠くから見て微笑んでいた。

 

 そしてとりあえずそれを飲む五人。そこでネギは小太郎に質問した。

 

 

「そういえばトーナメントで敵同士のはずの僕に、何で色々と教えてくれたの?」

 

 

 昨日小太郎はネギに瞬動を見せて教えたようだ。

ネギは魔法剣士ではなく魔法使いタイプを目指しているが、この瞬動をどうにかしなければ自分には勝てないと小太郎が言ったのだ。

 

 なぜ小太郎が自ら不利になるような情報を、自分に教えてくれたのか、ネギにはわからなかったのである。

 

 

「知りたいか?それはな……」

 

「そんなん友達やからやろー?」

 

 

 そこへ言葉を挟んだのは木乃香だった。

木乃香は明らかに、この二人が友達同士だと思ったのだ。だが、小太郎はネギをライバルとも思っているようだ。

 

 小太郎はネギのことを、西洋魔術師でひょろいやつだと最初会った時は思ったのだが、ヘルマンとの戦闘でなかなか骨があるやつだと考えを改めた。

 

 故にそんなネギを認め、ライバルと考えているのである。

なので今の発言を小太郎は訂正していた。

 

 まあ、実際は戦友、友人だとも思っているのだが、気恥ずかしいのでそれだけは言わないのである。

 

 

「俺とネギはライバルや! ラ・イ・バ・ル!!」

 

「ライバルですか……」

 

「それと友達とどう違うん?」

 

「何? ライバル(強敵と書いて友)ですって!?」

 

 

 刹那は好敵手と思っているのかと、そう素直に考え、木乃香はライバルと友達どどう違うのか考えた。

 

 だが、そのライバルと言う言葉に最も反応したのは、あのアスナであった。

このアスナ、小学校の頃からずっと委員長のあやかとライバル同士として切磋琢磨した仲だ。

反応しないはずなかったのである。

 

 

ライバル(強敵と書いて友)はいいものよ。私もライバルとの戦いで常に自分を鍛えてきたからわかるのよ」

 

「な、なんや? 姉ちゃんにもライバルがおるんか!?」

 

「ええ、最高のライバルが居るわ」

 

 

 そこで刹那も木乃香も、そういえばそうだったと思い出していた。

常日頃からアスナとあやかは何かあるごとに勝負をしていた。

 

 とても平和的なゲームでの勝負だったが、二人は常に真剣だった。

何せ必ず大切にしているものを賭けたゲームなのだ、真剣にならないはずがないのである。

 

 それはゲームにはとどまらず、学校での試験ですら競い合っていた。

常に高い点数を出すために、ひたすら二人は努力をしてきたのである。

 

 さらに言えば、ライバルとして絶対に負けたくないと言う強い意志もあった。

だからこそ、アスナはライバルという言葉に強い思い入れがあるのだ。

 

 そしてその光景は、昔1-Aだった頃からの風物詩となっており、どちらが勝つかクラスメイトも賭けるほどのイベントとなっていた。

ネギもそれを思い出し、ライバルってああいうものなのかと考えていた。

 

 

「お互いバカなことをしながらも、常に先を越されないように競い合う仲。それがライバルって言うものよ!」

 

「おう! それや! それこそがライバルや!」

 

「やっぱ友達と変わらへんなー」

 

 

 そのアスナの言葉に同意して元気を出す小太郎。

その横でそれって友達と同じだろうと木乃香は考えていた。

そこで小太郎は、ネギの質問への答えをネギへと言い渡す。

 

 

「俺は強いお前と戦いたいんや。姉ちゃんの言うとおり、それがライバルってもんやろ?」

 

「コタロー君……」

 

 

 二人は互いを見つめ、ニヤリと笑っていた。

これこそがライバル、友情である。

 

 木乃香もアスナもその二人を見て、仲がよい二人だと考え、小さく微笑んでいた。

 

 同じくそのほほえましい光景を刹那とバーサーカーも眺めていた。

やはりこういう出会いとはいいものだと、刹那もバーサーカーも考えていたのだ。

 

 そして小太郎はネギへ絶対に勝ちあがって来いと宣言し、ネギも頑張ると答えていた。

 

 そのネギの答えが小太郎は気に入らなかったらしく、文句を叫んでいた。

そして、ようやく待ちに待ったまほら武道会が開催されたのだった。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 まほら武道会の入場が始まり、さらに人数が増えて来ていた。

そんな人ごみの中にやって来た少女が一人、周りを見ながらチケットを握り締めていた。

 

 それは長谷川千雨であった。

千雨はカズヤにそれを持たされ、渋々とこの大会を見物しに足を運んだしだいであった。

 

 そんな千雨だったが、この大会のことをインターネットを使って色々と調べて来ており、レベルの高い大会らしいという情報を掴んでいた。

まああの、喧嘩バカなカズヤが参加すると言っていたのだ、当然そうでなければおかしいのだ。

 

 ただ、その参加する本人の姿はすでに無く、さっさと参加者用の選手控え室へ入ってしまっていたのだ。

そのことに千雨は苛立ちを覚えながらも、あいつじゃ仕方がないと感じてまほら武道会の会場へと入っていくのだった。

 

 

 また、小太郎を応援しに千鶴と夏美が、ネギを応援しに図書館探検部の三人が、それぞれこの会場へとやって来ていた。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 そこは、まほら武道会の選手控え室。

見渡せばすでにネギ一行以外が集まっていた。

フードをかぶったアルビレオや、タカミチの姿もあった。

 

 それ以外にもあの錬もすでに来ており、隅からその部屋に集まる人たちを眺めていた。

 

 さらに、その部屋で座禅を組んだまま微動だにしない謎の男や、やや紫がかった黒色の髪をオールバックにしたサングラスの男までが存在した。

彼はは一体何者なのだろうか。それは試合が始まらない限りはわからないことだ。

 

 

 そしてその控え室の中で、緊迫した空気が流れていた。

その空気の中心に居たのがカズヤである。だが、その横にもう一人の男が居た。流法だ。流法はカズヤがこの大会に参加すると聞いて、こそこそと出場していたのだ。

 

 理由は簡単、このカズヤが昨日の世界樹パトロールを全部サボったからだ。だからこのカズヤを正式にぶちのめしたくなったのである。

両者とも顔を合わせたとたん、お互いを睨み付け、牽制しあっていたのだ。

 

 

「貴様、昨日はぬけぬけとサボってくれたようだな」

 

「知らねぇな。昨日のことなんざ覚えてねぇよ」

 

 

 一触即発な状態の二人。

だがこれはいつもの光景である。

 

 法がカズヤに昨日のことを問いただすと、カズヤは知らぬと抜かしていた。

というのもカズヤ、本気で昨日のことを半分ぐらい忘れていた。

どうでもいいことはさっさと忘れてしまうのがカズヤである。

 

 そんな答えで納得するはずもない法は、さらにカズヤを鋭く睨みつけていた。

 

 

「貴様のおかげで大変だったんだぞ! それに対する謝罪はないのか!?」

 

「知らねぇって言ってんだろ? 俺は俺のルールに従う。テメェのルールにゃ従わねぇよ」

 

「それは俺のルールではない! 学園のルールだ!」

 

「だからんなもん関係ねぇっつってんだろ?」

 

 

 まるで悪びれた様子すらなく、知らないと言い張るカズヤ。

そのカズヤに、法は本気で殴りかかりそうな勢いになっていた。

 

 と、そこへネギたちが入ってきたようである。

このなんとも言いがたい空気の中、ネギは同じく参加する生徒たちに挨拶をしていた。

しかし、そんなネギたちをよそに、カズヤと法の口論はヒートアップするばかりであった。

 

 

「貴様! ふざけたことを! 毎回そうやって貴様は学園の法律を無視する!」

 

「はっ、知らねぇな」

 

「その考えが、どれほどの人間に迷惑をかけているか、考えたことがあるのか!?」

 

 

 このバカ同士が喧嘩している最中に、ネギはタカミチに挨拶していた。

そこで大会での試合について、会話しているようだ。

そんなネギへ言葉を交わすタカミチを、アスナはジトっとした目で見ていた。

 

 だが、そんなさなか、カズヤと法の喧嘩がさらに悪化していたのだ。

 

 

「はぁ、オタク、オウムか何かか? 何度同じこと言ってんだ? 知らねぇって言ってんだろ?」

 

「き、貴様! カズヤ!!」

 

「へえ、やるってか? いいねぇ。試合前だが、ここでやるのも悪くねぇ!」

 

 

 この今にも喧嘩が本気で起こりかけたその時、試合30分前となり説明が始まったようだ。

そのことにカズヤは萎え、とりあえず試合まで喧嘩を預けることにしたようだ。

法も同じくそうしたようで、互いに背を向け説明を聞いていた。

 

 

 しかし、なぜタカミチがこの大会に出場したのだろうか。

本来”原作”ならば超鈴音が怪しいと睨んで、タカミチはこの大会へ出場したのだ。

 

 だが、ここで超は大会を開いていない。

この大会を開いたのはビフォアなる謎の魔法先生だ。

 

 いや、だからこそタカミチは大会へ参加したのだ。

このビフォアなる魔法先生が、なにやらきな臭いと感じたのである。

 

 

 そこで説明が終わったところに、アルビレオがアスナのところへやって来た。

アルビレオもこの大会に参加していたようだ。

 

 予選では顔を見せようとしなかったアルビレオだが、本選へ進んだアスナを見てやってきたようだった。

また、ネギと小太郎はタカミチと会話しており、刹那と木乃香も二人で話し合っていた。

 

 

「おはよう、アスナさん。まさかあなたも出場するとは思いませんでしたよ」

 

「おはよう、クウネルさん。ちょっと気になることがあるのよ。それで参加したってわけ」

 

 

 アルビレオはやはりクウネルの名を使って参加していたようだ。

アスナもこの前から言われていたクウネルの名で、アルビレオを呼んでいた。

 

 されど、アルビレオは、アスナがこの大会に参加したことに、少し驚いていた様子であった。

なぜならアスナがこのような大会に参加する意味やメリットが考えられなかったからだ。

 

 だが、アスナはあることが気になり、この大会に参加したとそれに答えた。

 

 

「さて、何が気になることやら。しかし、あなたが参加するとなると、私も気が抜けませんね」

 

「ウソばっかり。クウネルさんが負けるなんてありえるのかしら?」

 

「フフフ、随分と私を信用してくれているようですね」

 

 

 アスナはこのアルビレオのことをよく知っている。

魔道書が本体であり、この体は偽りであることを。

そして、その得意魔法のことも知っているのである。

 

 つまり、このアルビレオが半分の力だけでも、優勝は間違えなしということだ。

だが、アスナは魔法を無効化できる力を持つ。つまりアルビレオが最も警戒しなければならないのが、このアスナということになるのだ。

 

 

「信用してる訳じゃないんだけど。クウネルさんはそのズルいボディーで参加してるから負けないって言いたいのよ」

 

「これは手厳しいですね。しかしこの大会で私が最も恐れる相手はアスナさん、あなたなのですよ?」

 

「へえ? 随分と私を信用してくれてるのね」

 

 

 アスナは先ほどのアルビレオの台詞をかぶらせた言葉で、皮肉をこめて使った。

なぜならアスナは確かに強いが、刹那やタカミチを相手にした場合、どうなるか予想がつかないからだ。

 

 さらに木乃香も参加しており、どういう結果になるか、まったくわからないのである。

 

 つまるところ、アスナとアルビレオが戦うことになる場所は、決勝戦となるのだ。

だからこそ、アルビレオへとアスナは皮肉を言ったのだ。

 

 

「信用していますよ、アスナさん。あなたは随分とたくましくなったようですからね。それだけ私があなたに期待しているのです」

 

「変態に期待されててもねぇ…………。でもまあ、決勝戦で会えたら、本気でぶっ飛ばしてあげるわ」

 

「その時こそお手柔らかに。ですが私はネギ君に用があるのです。本当ならカギ君もいてくれればよかったのですが…………」

 

 

 アスナはこのアルビレオを、本気でぶちのめすつもりでいた。

図書館島の地下で隠居して、挨拶もしにこなかった仕返しを今しようと思っているのだ。

 

 また、アルビレオは()()()()()()()()()()()()、ネギと対戦することを望んでいた。

 

 アルビレオとしては、約束にはカギも入っており、そこにカギも居ればよかったと考えたが、どうやらカギはこの大会に参加もしなければ見物にも来ていない様子。

 

 が、アルビレオの事情などは無関係に、アスナは最初から容赦する気などない。

 

 

「だからあなたではなく、ネギ君が決勝戦へと駒を進めてほしいものです」

 

「そう。だけど私はネギと戦うことになっても、手加減は一切しないけど?」

 

「やれやれ、弱いものイジメですか? 小さい子供をイジメるなど、大人げありませんよ?」

 

「それ、人のこと言えるわけ?」

 

 

 このアルビレオも最終的にはネギを倒すことになる。

そういう意味ではアスナと大差がない。だからアルビレオからそう言われても、アスナは気になどしないのだ。

 

 むしろ、人のこと言えないだろとアスナは逆に言い返していた。

いやはやそう冷静に言い返されてしまい、アルビレオも苦笑いをするしかなかったようだ。

 

 

「まあネギ君ではなくアスナさんでも問題ないでしょう。どの道あの約束は近くにネギ君さえ居ればかなうのですからね」

 

「つまり私と戦いたいって訳ね。なら決勝まで勝ち残って来るから首を洗って待ってなさいね」

 

「そうですね。アスナさんがどれほど成長したかも、少し気になるところでもありますから。ですが首を洗って待ってるのは、あなたの方かもしれませんよ?」

 

 

 アルビレオのナギとの約束は、別にネギと戦う必要はない。

だが戦えたほうが一番なのは間違えないのだ。

しかし、それがネギではなくアスナでも十分だろうとも考えた。

 

 そう聞いたアスナはアルビレオへと挑発、それを聞いたアルビレオも、それを返すような言葉を使っていた。

 

 

 試合前に牽制しあう二人だが、両者ともそこそこ嬉しそうに微笑んでいるように見えた。

そして、30分と言う時間があっという間に経ち、いよいよまほら武道会第一試合が行われようとしていたのだった。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 麻帆良祭二日目、ここに一人の青年がいた。熱海数多だ。

彼はまほら武道会に出場こそしなかったが、見物ぐらいしたいと思っていた。

 

 だが、このチケットがいまやプラチナチケットとなり、ほぼ手に入らない状況となっていた。

だからもはやそれを諦めるしかなく、数多は途方にくれて沈んでいた。

 

 しかし、そこへ一人の少女がやってきた。それが数多の義理の妹の焔だったのである。

 

 

「おはよう、兄さん」

 

「お? 焔じゃん、おはようさん」

 

 

 焔は久々に兄である数多と会えて、少し微笑んでいた。

数多も妹と会うのが久しく感じ、笑っていた。とりあえず挨拶した二人だが、この麻帆良祭二日目をどう過ごすか、考え始めていた。

 

 

「兄さんは今日暇なのか?」

 

「暇になっちまったんだよ……」

 

「は? どういうことだ?」

 

 

 そこで焔は数多が暇なのかと聞いたら、暇になったと言ってきたのだ。

この数多はまほら武道会の試合を見に行きたかったが、チケットが手に入らなかったことを嘆いていた。

 

 しかし、そういう理由を言わずにただ暇になったとだけ、数多は焔へと伝えたが、当然それだけではわかるはずがない。

 

 また、暇になったということは、予定が消滅したということだろう。

焔はそれを、ある程度ではあったが察したようである。

 

 とは言え、どういう訳で暇になったのかがわからないので、焔は数多にそれを質問したのだ。

 

 

「ああ、まほら武道会を見に行きたかったんだが、チケットがもう手に入らねーのさ」

 

「ん? これのことか?」

 

「なっ、なにぃ…………!? どうやって手に入れたぁっ!?」

 

 

 なんと数多が喉から手が出るほど欲していた、そのチケットを焔が持っていたのだ。

 

 なぜかと言うと、焔はアスナに『出場するから暇があれば見に来てね』と言われ、このチケットを貰っていたのである。

 

 だが焔は、そういう大会にまったく興味がなかったので、申し訳ないがこのチケット、どうするか考えていたのである。

 

 そこへそれをほしいという数多が現れた。

ならばこれを、数多にあげてしまおうと焔は考えたのだ。

 

 

「兄さん、このチケットがほしいという訳か?」

 

「めっちゃほしい!」

 

「ならばあげよう」

 

 

 数多が目を輝かせてそのチケットを眺めていた。

本気でほしいのが言葉で無くとも態度で丸解りだった。

だから焔は不要なチケットを数多に手渡した。

 

 

「えっ!? なんだってっ!? まっ、まっ、マジか!? マジでくれんのか!?」

 

「私には不要なものだ。持っていても仕方がないからな」

 

「うおおおっ!! ありがてぇーありがてぇー!」

 

 

 チケットを受け取った数多は、なんと情けなくオーバーにも地面にひれ伏し、頭を下げていた。

数多はそれほどまでに、このチケットがほしかったのである。

 

 だが、流石に人の多いこんな場所でそんなことをされれば恥ずかしいものだ。

焔はうわ…………っ、と言いかけたのを飲み込み、数多へ注意する。

 

 

「や、やめろ! 地面に頭をこすりつけてまで礼をするな! こっちが恥ずかしいではないか!!」

 

「おっと、すまねー。ついテンションがあがっちまった」

 

 

 焔は顔を赤くしながら数多に、恥ずかしいからやめろと叫ぶ。

数多もうっかりやっちまったというような態度で、今の行いを謝罪していた。

そして早速まほら武道会の会場である、龍宮神社へと移動しようとした。

 

 

「んじゃ行ってくるぜ!」

 

「存分に楽しんできてくれ」

 

 

 が、しかし、数多は何を考えたのか、そこで動きを止めたのだ。

そして再び焔の方へと、数多は駆け寄ってきた。

その焔は何事かと思い、首をかしげていた。

 

 

「どうしたんだ? 何か忘れ物か?」

 

「いやなぁ…………。なんつーか久々に会ったっつーのに、一緒にいられねーってのもなぁ、と思ってよ」

 

「そんなことか。別に気にする必要などあるのか? その大会は昼には終わるはずだし、明日もあるではないか」

 

 

 数多は久々に会った焔との別れを惜しんだようだ。

何せ本当に久々で、兄としてあまり接してやれていなかったからだ。

こういう日ぐらい、焔と一緒に過ごしたいと考えたのだ。

 

 とはいうが、焔は特に気にはしなかった。

その大会は昼には終わるし、明日もあるのだから後ででも十分だと思ったのだ。

 

 

「だがよー、そうやって先送りにするのは好きじゃねーんだ」

 

「だがチケットはそれしかない。つまりどの道、兄さん一人で行かなければならないんだぞ?」

 

「そうなんだよなー、どうすっかなー」

 

 

 チケットは一つしかない。

つまり入場出来るのは一人だけである。

だから数多はどうするか考えていた。

大会を取るか妹を取るか、少し悩んでいた。

 

 そう考えながら腕を組む数多を見て、ちょっとだけ嬉しく思う焔であった。

と、そこへ一人の男性がやって来た。そしてその二人へ声をかけたのである。

 

 

「焔と数多か。久しいな、元気だったか?」

 

「おっちゃん! 久しぶりだなあー!」

 

「どうも、お久しぶりです。来史渡おじさん」

 

 

 それは銀河来史渡、真の名はメトゥーナトであった。

このメトゥーナトはアスナの約束のため、この麻帆良祭二日目を開けておいたのだ。

そして、メトゥーナトは数多が握るチケットを見て、懐から一枚の紙を取り出した。

 

 

「ふむ、もしかしてこれがほしいのかな?」

 

「なっ!? 何でおっちゃんも持ってるんだ!?」

 

「少し気になることがあってな。それで用意したんだ」

 

 

 なんとメトゥーナトもまほら武道会のチケットを持っていたのだ。

そしてメトゥーナトは、それを握りながら焔の前までやってきて、それを焔へ渡したのだ。

その突然のことに、焔もかなり驚いていた。

 

 

「これで二人とも武道会を見に行けると言う訳だな」

 

「え? で、でもそれでは……」

 

「おっちゃん! 嬉しーけどよ、そしたらおっちゃんが見に行けねーじゃねーかよ!」

 

「何、気にすることはない」

 

 

 このチケットを焔に渡したら、メトゥーナトが大会に入場できない。

そう考えて、そのチケットを貰うことを焔は躊躇していた。

それは数多も同じだったようで、そのことをメトゥーナトに言っていた。

 

 だが、メトゥーナトはお得意の言葉と共に、もう一枚のチケットを取り出していたのだ。

 

 

「フフフ、君たちは運がいい。今日は特別でね、もう一枚持っているんだ」

 

「なんで二枚も持ってんだよ! おっちゃーん!!」

 

「そんなこともあろうかと、と言うものだ」

 

 

 実はこのメトゥーナト、チケットがダブったのである。

 

 何故かと言うと、メトゥーナトはこのまほら武道会を見るために、チケットを購入したが、その後アスナからそのチケットを渡された。

 

 しかし購入したチケットを、すでに持っていることをアスナに言うことができず、そのまま貰ってしまったのだ。

 

 そんな感じで、チケットがあまっていたのである。

そこへチケット不足で喘いでいる二人を見て、それをあげたのだ。

 

 

「ありがとうございます、来史渡おじさん」

 

「これで兄妹二人で見に行けるな」

 

「おう、おっちゃんも一緒に行こうぜ!!」

 

 

 メトゥーナトのそんな事情はいざ知らず、礼を言う二人であった。

そして三人はまほら武道会を観戦するべく、龍宮神社へと足を運ぶのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 数多御一行が龍宮神社へと移動を開始した時には、すでにまほら武道会の第一試合が始まろうとしていた。

その記念すべき第一試合は、大友という謎の男と小太郎の戦いだった。

 

 だが”原作”では魔法生徒である佐倉愛衣との戦いだったはずだ。

どうして彼女が小太郎の対戦相手ではないかと言うと、その主である魔法生徒の高音・D・グッドマンがネギに恨みを覚えていないからだ。

 

 ”原作”だとネギが世界樹の魔力によりキス・ターミネーターとなって、それを止めようとした高音と愛衣を脱がしてしまう。

されど、ここではネギが時間逆行などを行っておらず、のどかとのデートも問題なく完遂したので恨まれることがなかったのだ。

 

 なので高音がこの大会に参加することが無くなったため、連鎖的に愛衣の参加もなくなったという訳だ。

そして、第一試合が始ろうとしていたのである。

 

 

「さあ待ちに待った第一試合! この少年、犬上小太郎選手と謎の男、大友選手が今、衝突する時がきました! 記念すべき第一試合を飾る戦いをしてくれるでしょうかああ――――ッ!!」

 

 

 なんというテンションの高い司会である。

やはり司会はあの和美ではなく、グラサンの逆毛の男であった。

 

 そこで小太郎はそんな司会の解説をスルーし、対戦相手を見ていた。

相手は筋肉質の男だ。しかし、リングで待機するやいなや、突然座禅を組みだしたのである。

 

 大会のリングは神社の能舞台を利用したものである。

その周りは池となっており、場外となっても池に落ちるだけとなっているようだ。

 

 また、観客席も神社の池の上にある廊下を利用しており、そこから見物客が試合を覗く形となっていた。

 

 この謎の行動に小太郎は疑問を感じたが、気にする必要などない、さっさと終わらせてしまおうと考えた。

そう小太郎が考えている間に、司会は解説を続けていたようだ。

 

 そして、試合開始は目の前に迫っていたのだ――――。

 

 

「第一試合! 犬上小太郎選手VS大友選手! レディ――――――ッ!」

 

 

 司会が第一試合の開始の合図を叫びだした。

それを聞いて小太郎は戦いの構えを取った。

そして司会が試合のゴング代わりとなる魂の叫びをあげたのだ!

 

 

「――――――ファイッ!!」

 

「ほな、遠慮なく行くで!」

 

 

 試合開始と同時に瞬動を使い、大友の懐まで小太郎は移動していた。

また、大友は試合開始寸前にて、目を光らせ立ち上がり、横においてあった木刀を拾い構えていたのである。

 

 この大友、実はロボである。

されど、ロボの癖に人間と同じように動く謎のロボットだった。

 

 いや、外見もほとんど人間そっくりなロボなのである。

だが、そんなロボなど居るはずがないと考えるのが普通なので、誰もが人間だと思っているのだ。

 

 そこでスムーズに手足を動かし、大友は握った木刀で懐に入った小太郎へと横なぎに振るったのだ。

しかし、それを小太郎はしゃがむ動作だけで、いともたやすくかわたのだ。

 

 そして、木刀を振り上げて硬直した大友へと、必殺技を叩き込んだのだ。

 

 

「我流・犬上流”狼牙双掌打”!!」

 

 

 狼牙双掌打とは両手を構えて気を放つ技である。

それを至近距離から受けた大友は、吹き飛ばされてリング外の池へと落下していった。

 

 そしてカウントが10を切り、あっけなく第一試合が終了してしまったのだ。

小太郎はこのあっけなさに、技など使わなければよかっとさえ思っていた。

 

 

「圧ッ!圧勝――――ッ!! 早くも第一試合が終わってしまった――――ッ!!」

 

 

 もう終わってしまった第一試合。

なんともつまらないものだった。その試合を終わらせ、さっさとネギの居る観客席へと小太郎は戻って来ていた。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 続いて第二試合、対戦するは甲賀忍者の楓と、あのアルビレオであった。

そして対戦が始まるやいなや、楓は高密度の影分身を使い、あのアルビレオを圧倒していた。

 

 しかし、アルビレオは本体ではなく幻影、いくら攻撃を受けても傷一つつかないのだ。

それに楓は気がついたようで、その幻影を消すほどの気の力を使うことにしたようだ。

 

 そこで楓はさらに分身を増やし、アルビレオへと攻めた。

だが、その猛攻に対抗するべく、アルビレオはアーティファクト”イノチノシヘン”を使い、影分身で攻撃する楓をなぎ払い、空中でその楓の首を掴んでいたのだ。

 

 その光景を見たネギは、あの村が悪魔に襲われた時に助けに駆けつけた父親を連想したようだ。

そして、まさかあの人が、アルビレオがあの時助けに来たのかと、そこで考えていたのである。

 

 また。空中で捕まえた楓を、アルビレオはその高さから落下しリングの床へと叩きつければ、もはや楓は動けなくなりダウン。そのまま敗北してしまったのだ。

 

 そんなアルビレオを、アスナは目を細めて眺めていた。

いやはや、とんでもないチート。そのチートめいた体で、勝ち進む気なのだろうと考えていたのだった。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 壊れたリングが修理し終わったようで、第三試合が始まろうとしていた。

今度の対戦する選手は真名だった。それに対するは中村達也という胴着を着た逆毛の男性であった。

 

 そして試合は早々に開始され、そこで達也は気を飛ばす技である”烈空掌”を使ったのだ。

それを見た観客は、やはり遠当てという技術があったのかと騒いでいた。

 

 ただ、その程度の気弾など真名には脅威となりえない。

真名はそれを難なくかわせば、逆に遠距離から500円玉を飛ばし、一撃で達也を倒したのである。

これは”羅漢銭”というものであり、コインを飛ばして相手を攻撃する技であった。

 

 それを見たアスナは、やはりあの状助を思い出していた。

状助はジョジョの原作でクレイジー・ダイヤモンドが使っていた、ベアリング弾を飛ばす訓練を遊びでやっていたことがある。

 

 アスナはスタンドを見ることは出来ないが、状助がそう説明して実際それをやってのけていたのだ。

それを思い出したアスナは、原理はあれと同じかと考えていた。

 

 そこでカウントは10を切り、真名の勝利で第三試合は終了。

なんとあっけない試合だったことか。しかし前の試合が過激すぎただけなのだ。

 

 

 

…… …… ……

 

 

 

 そして第四試合は、あの古菲が出場するようだ。

だが、対戦相手は名の知らぬ男だった。

 

 ――――その男の名は坂越上人(さかごえ かみと)

 

 やや紫がかった黒の髪をオールバックにし、大きめなサングラスをした二十代中半ほどの男だ。

服装は黒のスーツに白い手袋で、全身黒ずくめであった。

 

 また、その雰囲気は不気味で、何を考えているのかわからない、そんな男だったのだ。

 

 

「何者かは知らないが、できるアルネ……」

 

「…………あなたでは私には勝てません。潔く降参することをお勧めしますよ?」

 

 

 また、古菲もこの男からただならぬ力を感じ取ったようで、緊張した表情をしていた。

そこでこの上人は、古菲へ降参するよう言い渡していた。

だが、古菲はそれを許すような人間ではない。

 

 

「我只要和強者闘! 降参なんてしないアル!」

 

「おや、そうですか。私は別にあなたに用はないので、苦痛を感じずに負けてもらえたらと思ったのですがねぇ……」

 

 

 上人は何者かに用があるようだ。

そして、古菲には用がないので、痛い目を見たくなければ、このまま負けてくれるとありがたかったようである。

しかし、古菲はこの上人が強者だと考え、不適に笑っていたのだ。

 

 

「痛いのは怖くないアルヨ。戦わずに負けるほうが怖いアル!」

 

「そうですか、残念です。ならば、苦痛と共に敗北を味わっていただきましょう……!」

 

 

 そこで司会から試合開始の合図が叫ばれた。

 

 その瞬間古菲は上人の懐へ入り拳を直線に叩き込むも、そこで古菲は妙な手ごたえを感じたのだ。

それはまるで、空気を殴ったかのような、そんな感覚だったのだ。

 

 それもそのはず、古菲の拳は上人に命中せず、上人の体からそれていたのだ。

この現象に古菲は、目を見開いて驚いていた。

何が起こったのかわからなかったのである。

 

 

「所詮あなたは一般人、この程度ではお話になりませんよ?」

 

「!? まっ、まだまだアル!!」

 

 

 そこで古菲は次に平手を上人へと打ち出した。

だが、それも上人には命中せず、それてしまうのだ。

 

 この謎の現象の正体がわからない古菲は、一瞬考え込んでしまった。

それが隙となり、上人の拳が古菲の腹部へと命中する。

 

すると古菲はその一撃で、リングの端まで吹き飛ばされ、柵に衝突して停止したのだ。

その現象に観客や古菲のファンが、完全に絶句していた。

 

 

「だから言ったではないですか。降参した方が傷が浅く済んだと……」

 

「――――ま、…………まだ終わりじゃないアルヨ…………」

 

「ほおー、まだ動けると? ですがあなたの体は限界寸前、もう立って居るのがやっとのはず」

 

 

 その吹き飛ばされた古菲に、上人は冷ややかな視線を送りっていた。

さらには、最初に降参していればこうならずに済んだものをと、ポツリとこぼしたのだ。

 

 だが、なんと古菲は今の攻撃を耐え、口から血を流しながらも立ち上がったのだ。

その痛々しい古菲の姿に、観客は心配の声を上げていた。

それでも、ここで立ち止まる訳にはいかないのだ。

 

 

「まだ体が動くアル…………。やれるアルヨ……!」

 

「ふぅー。何度やっても同じこと、無意味なことはよしなさい」

 

「……無意味かどうかは、やってみなければわからないアル!!」

 

 

 古菲は叫んだ瞬間、活歩を使い上人の背後へと回った。

そこで背中についていた布を使い、槍のように動かしたのだ。

 

 そのすさまじい布槍術にて、上人へと攻め込む古菲。

しかし、その攻撃すらも、上人へは届いていなかったのだ。

 

 

「バカですねぇ~、無意味だと言ったはずですが?」

 

 

 上人がその一言を述べた直後、古菲は何かに弾き飛ばされた。

それが何なのか、誰にもわからなかったが、古菲はその弾き飛ばされた衝撃で数メートル吹き飛んだのだ。

 

 とは言え、その程度では古菲を止めることはできない。

そこで古菲は踏ん張り、そこからも布を使って反撃の一手を繰り出す。

 

だが、その攻撃に使用していた布が突如硬直し、空中で停止したのだ。

そこでそれを動かそうと、古菲は必死に腕を引っ張っていた。

 

 

「ど、どうなってるアル……!?」

 

「だから無意味だと言ったというのに…………」

 

 

 古菲は布が停止したことで焦り、何とかしようともがいていた。

何故なら、停止いた布を引っ張ってもまったく動かず、どうにもできなくなってしまっていたからだ。

 

 上人は古菲の行動を無意味と吐き捨てれば、ゆっくりと歩きながら古菲へと近づいていった。

それに気づいた古菲は微動だにしない布を捨てて上人を迎え撃つも、古菲自身すらも突然停止して動けなくなったのである。

 

 

「うっ!?」

 

「一般人のあなたには、この私に触れることすらかなわないのですよ? ホラッ」

 

 

 そして上人は、動けない古菲の右肩を少し触れると、とてつもない力により古菲を空中へと吹き飛ばしたのだ。

その謎の力により、古菲の衣装の右肩の辺りが破れ、その肩も重傷を負っていた。

 

 だが古菲は、空中に吹き飛ばされ、右腕が動かなくなってしまったにも関わらず、落下と同時に上人に攻めようとしたのである。

 

 が、古菲渾身の反撃すらも悲しいかな、停止により防がれ古菲は空中で身動きが取れなくなってしまったのだ。

 

 

「もう勝敗はついているはずですが? これでもまだやると言うのですか?」

 

「そう……ネ……。まだ私は倒れていないアル……!」

 

「なんと愚かな、愚か過ぎて吐き気がする。ならば、引導を渡してあげましょう」

 

 

 絶体絶命な状況となっても、古菲の闘志は消えてはいなかった。

倒れるまでは絶対に諦めないと、強い意志で戦っているのだ。

 

 そんな古菲をあざ笑うかのごとく、上人はトドメといわんばかりに古菲を攻撃したのだ。

その攻撃とは左肩をやさしく触れるだけであったが、古菲を倒すにはそれだけで十分だったのだ。

 

 たったそれだけの行動なはずが、恐ろしいことに古菲の左肩も右肩のように破壊され、今度は床へとめり込んだのである。

 

 もはや決着がついたのは一目瞭然であった。

古菲はリングの床へと沈み気を失い、動かなくなっていたからだ。

 

 上人は床にめり込み動かない古菲を、つまらなそうな表情で眺めるだけ。

また、観客も司会もその光景に、ずっと黙ったままだった。

誰も何も発言できぬほど、ひどい光景だったのである。

 

 

「司会、さっさと勝利宣言を……」

 

「し、勝者! 坂越上人選手!!」

 

 

 司会は精一杯声を上げ、勝利宣言を上人へと言い渡した。

だが、観客は誰も声をあげなかった。

 

 そこへ手当てが終わった楓と真名がやって来て、古菲を救護室へと運んで行き、その三人の姿を上人は鋭い視線で眺めていた。

そして、この第四試合は上人の勝利で幕を下ろしたのであった。

 

 

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