テンプレ99:クロス元でのオリジナル武装
カギはこのまほら武道会にやってきていない。だが見ていない訳ではなかった。
ではどこでそれを見ているのだろうか。
その答えは麻帆良の上空にあったのである。
麻帆良の空に、杖を使って空を飛ぶものがいた。それこそがカギだったのだ。
一応認識阻害を使っており、誰の目にもつかないようにしているようだ。
そして、カモミールと共に双眼鏡を使って、まほら武道会の試合を眺めていたのだ。
なんというズルいやつである。
「ひえー、まさかネギのやつ負けちまったのかよ……」
「いやいや、旦那が負けちまうのも無理ねーっスよー。なんせあの高畑とかいう男は、魔法世界でも相当有名みてーだからなあ」
カギはネギがタカミチに敗北したのを驚きながら見ていたのだ。
何せ原作ではタカミチはネギに敗北するからだ。
しかし、ここのネギは元々中国武術を使っていないので、仕方ない部分もあったのである。
そこでカモミールは、タカミチは魔法世界で有名な人であり、AAAクラスの実力者だと調べてわかっていたようだ。
「まあなあ。だがネギのやつ、いつの間に重力魔法なんか覚えたんだよ……」
「ほへー、旦那は本当の意味での魔法使いになるつもりかー」
だが、カギがさらに驚いたことは、ネギが重力魔法らしき魔法を使っていたことだった。
重力魔法といえば、あのアルビレオが操るチート魔法である。
つまり、ネギはいつのまにかアルビレオと接触した可能性があると、カギは考えていたのだ。
そのカギの言葉を聞いたカモミールは、ネギが後衛としての魔法使いを選んだのだろうと考えたのである。
「しっかし、次の試合は誰だぁ? なんか俺の知らねぇ大会になってらぁ……」
「兄貴はこの大会知ってたってのかい!?」
カギは”原作知識”でこの大会を知っていたのだが、それとはまったく別の流れになっていることに、驚きが隠せなかったのだ。
つーかあのグラサンの男だれだよ。
古菲ボコして笑ってんじゃねーよ、クソ野郎! と思ったようだ。
さらに一回戦目で楓とアルビレオがバトっているのを見て、どうなってんだこれぇ!? と叫んだりしていたのである。
カモミールは、そんなカギの言葉に疑問を持ったので、それを質問していたのだ。
「いや、記憶の奥底に眠る謎の記憶が、俺にそう告げるのさ……」
「兄貴ぃ、そいつはちとアブナイ人ですぜ……」
流石に今のカギの言い訳はヤバイ人だった。
完全に厨二病であった。そんな台詞を聞いたカモミールも、少しカギに引きながら、止めた方がいいと遠まわしに言っていたのだ。
とまあ、そういう感じに、カギは再び武道会へと目を移すのであった。
…… …… ……
アスナがネギと話している間に、刹那は木乃香と話していた。
その場所は更衣室で、木乃香は次の試合の準備をしている間に、刹那と会話していたのである。
また、次の試合に木乃香が出場するということで、刹那は大層心配していた。
なにせ第四試合にて、残虐ファイトが行われたのだ、心配しない方が無理である。
「このちゃん、本当に大丈夫なんですか?」
「それはわからへんよ。でもウチが決めたことや。心配せんでええんよ」
しかし、この戦いは木乃香自身が参加すると決めたこと。
覇王に並ぶため、この道を選んだのだ。その決意は瞳にも見てとれるほどだった。
そんな木乃香を見て、はやり不安そうにする刹那であった。
「しかし、このちゃんに万が一何かあったらと思うと……」
「せっちゃん、心配してくれるんはうれしーんやけどな? ここは応援してくれた方が、もっと嬉しいんやよ」
そこで心配性な刹那に、木乃香は心配するならむしろ応援してほしいと頼むのだが、木乃香とて次の試合に不安を感じているのも事実だった。
それでもだ。それでも、その不安を押し殺し、刹那へ笑顔でそう答えているのだ。
また、その木乃香の言葉を聞いた刹那は、心配しつつも応援しようと考えたようだ。
「……そうですね。ならこのちゃん、次の試合、精一杯頑張ってください」
「うん、それでええんよ。それにせっちゃんに応援してもろたら、少し力が湧いて来たえ!」
そこで木乃香へとエールを送る刹那。それはありきたりな言葉だった。
だが、刹那からの応援なら、力が湧くと木乃香は笑顔で言っていた。
その言葉に刹那はとても嬉しく感じ、照れながら微笑んでいた。
と、そこへアスナがやってきたのである。
「このか、次の試合頑張ってね」
「アスナ、ありがとな! ウチ、試合に勝って見せるえ!」
「はい、このちゃんの勝利を祈っています」
そしてアスナも微笑を浮かべながら、木乃香を応援し、木乃香も次の試合、絶対に勝つという意気込みを見せる。
そんな木乃香に、刹那は笑顔を見せて勝利を祈ると言っていた。
しかし、そんな時にアスナは、木乃香が勝った後の話をしだした。
「でもこのかが勝ったら、私と刹那さん、どちらかが相手にするってことよね?」
「あ! そうでした…………」
「別にアスナもせっちゃんも気にせんでええよ? ウチも全力で行くだけやからね」
第八試合は刹那とアスナの試合となる。
つまり、木乃香が次の試合に勝てば、どちらかが木乃香を相手にするということになるので、そのことをアスナが指摘したのである。
そう考えると刹那はどうしようかと頭を悩ませ、そんな刹那へと木乃香は、その時も全力で相手にすると言ったのである。
「このかの言うとおりよ、刹那さん。私もこのかと当たっても、手を抜くなんて真似はしないわよ?」
「そうやよせっちゃん! ウチと戦ーても、本気で挑んでほしーわ」
「そ、そうですか……? しかし……」
アスナはたとえ相手が木乃香であっても、手を抜かないと宣言。
木乃香はそのアスナの言葉を聞いて、刹那にも本気で戦ってほしいと言っていた。
だがやはり刹那は迷うのだ。
なぜなら木乃香は護衛対象、守る相手であって戦う相手ではないからだ。
「でもまあ、次の試合でこのかが勝てばの話だけどね」
「で、ですね……」
「そうやね。でも負ける気はせへんよ!」
この話は木乃香が次の試合で勝てばの話だ。
とは言え、木乃香は当然、勝つ気で試合に臨むのだ。
最初から負けに行くようなことは、誰もしないのである。
そこで気合を再び入れた木乃香は、仕度を終えて会場へと移動していった。
また、アスナも刹那も木乃香の後ろを歩き、一緒に会場へと戻っていくのだった。
…… …… ……
ネギは会場に戻ってきた木乃香に応援の一言を伝えたようだ。
そして、アスナたちとわかれた後、小太郎と話していた。
そんな小太郎は、ネギがタカミチに負けたのを見て、とりあえず何も言わないようにしていたのだ。
だが、アスナに慰められ、元気になったネギを見て、一言ぐらい何か言っておこうと思ったのである。
「ネギ、何負けとるんや! もっと根性ださなあかんやろ!」
「コタロー君!?」
もう少しで勝てそうだったあの試合、小太郎は本気で惜しいと思っていた。
あと少し、ネギに根性があれば、勝てたと考えたのだ。
ただ、負けた直後にそれを言いに来なかったのは、小太郎の優しさだったのだろう。
「なんで根性ださんかったんや!!?」
「…………あの時、もう少し頑張れば勝てたかもしれないのは…………、僕もわかってるんだ」
「じゃあなんでや!?」
だが、そんなことはネギもわかっていることだ。
わかっていながら、あえて負けを認めたのがネギなのだから。
だからネギは、小太郎にその理由をゆっくりと、先ほどの試合を思い出すように語りだした。
「僕はあの試合に全てを賭けれなかった。でも、それは今日と明日と続く学園祭のことを考えたからなんだ」
「何言うとるんや! 男ならその一瞬に全てを賭けなあかんやろ!」
しかし、小太郎はその勝負に全てを賭けるべきだと言っていた。
勝負根性、バトルジャンキーとしては当然の答えである。
されど、ネギはバトルジャンキーではなく、教師なのである。
それでも納得しない小太郎に、ネギはもう一つの理由を語った。
「それにどの道タカミチさんは、あの試合で本気を出してくれなかったと思う。だから、どう頑張ってもあの時点では負けかなって」
「むっ……確かにそうかもしれへんな。けどな、どんな理由でも負けは負けやで!」
「そうだね。だから悔しかったし、次こそ負けないと本気で思ったんだ」
あの試合で、タカミチはどの道全力を出すことはなかっただろう。
ネギは、それならここで必死にタカミチに勝利する意味がないと考え、負けを認めたのだ。
しかし、小太郎はそれでも負けは負けだと言っていた。
それ故ネギは、次こそは負けないように頑張ろうと決心したのだ。
そのネギの決意の言葉を聞いた小太郎は、とりあえず納得したらしい。
「その意気や! んなら俺がネギの仇をとったる!!」
「え!? コタロー君も!?」
「も? もってなんや!?」
そこで小太郎は、それなら自分がタカミチを倒してネギの仇をとると言い出した。
ネギはその言葉をさっき、アスナから聞いていた。
だから、デジャブを感じたのである。
そこでそのネギの言葉に、自分以外にも仇をとると言った人物がいたのかと、小太郎はネギに質問していた。
「さっきアスナさんにも、仇をとるって言われたんだ」
「あの姉ちゃんか!? そいや第八試合はあの姉ちゃんの試合やったな……」
「うん、どんな戦いをするんだろうね」
ネギはアスナにも同じことを言われたと、小太郎の質問に答えていた。
その言葉を聞いた小太郎は、第八試合はアスナの試合だったことを思い出したようだ。
そしてネギも、アスナがどう刹那と戦うのか、少し気になったようだ。
「やけど次の試合に勝たんと、あの姉ちゃんがネギの仇なんてとれんわな」
「だから絶対に勝つって言ってたよ」
ネギは仇をとると言った時のアスナの表情を思い出していた。
必ず勝利を収めると言う、とても強い意志が篭った目をした表情だった。
また小太郎は、それならその試合を見なければと、さっさと観客席へと移動していた。
「そんなら姉ちゃんたちの試合を見にいかんとな。はよ行くで!ネギ!」
「え!? ちょっと待ってよ!コタロー君!」
そして二人は観客席へ走っていった。またネギは、そんな急ぐ小太郎を、追うので精一杯だった。
そこで遅れたネギは、図書館探検部の三人見つかり、モミクチャにされるのであった。
…… …… ……
そしていよいよ始まった第七試合。
出場するのは木乃香、対するはあの錬と呼ばれた少年である。
どちらもシャーマン、まさにシャーマンファイトとなったのだ。
たま、今の木乃香の姿は制服や、占い研究会の催し用の魔法使いっぽい格好ではなく、なんと巫女服であった。
そんな姿の木乃香に何も言わず、ただ優しく見守る覇王の姿があった。
その覇王に木乃香は気づき、強気の表情でただ一度だけ、うなずくだけであった。
もはやそこに言葉は不要ということだ。
またアスナと刹那も、覇王の横で木乃香を見ており、二人とも緊張した顔をしていた。
あの木乃香が戦おうというのだ。当然二人は心配なのである。
あれだけのことを言っていたアスナも、実は少し心配だったのだ。
さらに、元々戦うような性格ではない木乃香がどう戦うのか、まるで見当がつかないからでもある。
また、木乃香の対戦相手である錬は、覇王の弟子たる木乃香を警戒していた。
姿は一見ただの少女、持霊らしき幽霊も少女。本当に戦えるのか疑わしいものであった。
それでも、あの覇王が鍛えたシャーマン。
見た目にだまされていると痛い目を見るだろうと、錬は考えて居るのだ。
そして木乃香と錬はリングへと入り、規定の位置で合図を待っていた。
そこへさよが木乃香に話しかけていた。
「一緒に頑張りましょうね、このかさん!」
「うん、さよも頼りにしとるよ!」
「はい!」
さよは木乃香を勇気付けていた。
そして木乃香もさよを頼りにしていると言葉にしていた。
それを見ていた錬は、持霊との間柄も良好だな、と考えていた。
そこへ司会が、開始の合図前の解説を叫んでいた。
「さて、一回戦最終試合、第七試合を行いたいと思います!!」
それを聞き流しながら、錬は木乃香を睨んでいた。
いや、元々目つきが悪いので、睨んでないかもしれないが。
そんな錬を、木乃香はニコニコと見つめていた。
なんとも気が抜けた表情である。
錬はそんな気が抜けた相手だからこそ、さらに警戒しなければならないと感じていた。
だが、試合が開始されるという直前に、錬は司会へと叫んで話しかけたのだ。
「そこの司会、この試合は刃物禁止だったな」
「ああ、そうだぜ?それが一体どうしたんだ?」
「この剣は刃を収納できる。刃を出さなければ問題ないなら、使ってもよいか?」
この試合は刃物禁止である。
つまり錬の媒介である馬孫刀も宝雷剣も使えないということだ。
宝雷剣は刃を縮めて収納できる。
つまり、刃の部分を出さない代わりに、使ってもよいかを司会に聞いているのだ。
その質問を受けた司会は、腕を組んで少し考えたのち、その答えを錬へと言い渡した。
「まあ刃が出てなければ問題ねぇが……。つか刃出さない剣なんて使えんのか?」
「そんなことはキサマにはどうでもよいだろう? それよりも、いいのか悪いのかはっきりしろ」
「ああ、それなら許可しよう。だが、刃を出したなら、即退場だぜ!?」
司会は刃の無い剣なんてどうやって使うのか悩んだようだ。
そんなくだらない質問を受けた錬は、少しイラついた声で許可が出来るかを聞きなおしていた。
まあ、別に刃が出てなければいいかと考え、司会はそれを許可を出したようだ。
「そうか、それは助かるな」
「意味わからねぇが、とりあえず試合開始するぜ!」
この宝雷剣が使えるのと使えないのでは、シャーマンとして大きな差となる。
これが無ければ
まあ、実際憑依合体でも、十分強いはずなのだが。
しかし、錬はやはりシャーマン相手ならば、
そして、とうとう第七試合のゴングが司会の声により鳴らされたのだ。
「
「
両者とも開始の合図で
そして錬は間髪入れずに木乃香へと切り込んで行った。
――――この世界には瞬動術が存在する。
それを錬は用いて、瞬間的に木乃香の手前へと突撃したのだ。
「もらったぞ!」
「後鬼、防御!」
そこで木乃香は一旦後鬼の
前鬼・後鬼の媒介は紙で出来た人形であり、それを木乃香は複数所有している。
普通なら
だが、複数の媒介を所有しているならば、ある程度自由に操ることが出来る。
その突発的な再
「そうでなくては面白くない!」
「そう簡単には負けへん!」
木乃香は後鬼を防御に回し、数歩後ろへ下がるが、そこへ錬の斬撃が後鬼を襲う。
だが、後鬼は防御用の盾を持っており、それでその攻撃を防御したのだ。
しかし、錬の
普通の
その錬の一撃により、後鬼は盾ごと二つに引き裂かれてしまったのだ。
こうして白熱しているシャーマン同士の戦いなのだが、他の観客には何をしているのかがまったくわからないでいた。
そもそも
つまり、一般人の観客には、刃の無い剣を振るうマヌケな少年と、それを避けるそぶりをしている変な少女にしか映らないのだ。
刃物禁止であるこの大会で、前鬼の大鎌が使えるのも、このためなのである。
「この程度か?」
そこで錬は挑発的にその言葉を木乃香へと送った時、すでにその時点で前鬼が錬へ大鎌を振るっていたのだ。
それに気がつき、錬は即座に武神魚翅でそれを防御、やはり普通の
そこで錬は、先ほどから気になっていたことを木乃香へと話した。
「キサマの持霊はこれだけではないだろう! もう一体の持霊も出せ!」
「そやな、その
錬は未だに戦いに参加していない、もう一人の持霊がいることを木乃香へと指摘。
木乃香も前鬼と後鬼だけでは錬に勝てないと考え、そこでさよを
ならばと、錬は前鬼の大鎌を武神魚翅で防御したまま、木乃香の次の
その表情はワクワクした、期待した様子であり、そのまだ見ぬ
「さよ! やるえ!」
「はいっ!!」
「
そして木乃香は錬に言われたとおり、さよを
その媒介はあの覇王から貰った、大切な二つの青銅の扇子だった。
「それがキサマの
「そーや、これがウチの新型
それは白い翼であった。
二枚の扇子を媒介に、背中から一対の巨大な翼が生えていた。
それはしなやかさを持ちながらも、鉄のような強固な翼だった。
また、その翼は木乃香の体ほど大きく、身に纏うように折りたたまれ、体全体を覆っていたのである。
この
これこそが木乃香が考え出した、新型の
そこで、その木乃香の新型
それでこそ覇王の弟子、それでこそ強敵だと思っているのだ。
そんな錬を見ながら、そこで木乃香はこの
「
「攻撃以上に防御に重点を置いた
木乃香はこの
それはまさに、刹那の翼のことであった。
そう、この白烏は親友である刹那の白い翼を参考に、師である覇王の技術を使った木乃香らしい
さらに言えば、木乃香は扇子の開閉の動作を翼に見立て、その
白烏という存在は吉兆を意味し、中程度の吉兆だとされている。
さらに太陽の精とされており、霊格の高い存在でもある。
あの八咫烏には程遠いものの、吉祥を持つとされているのだ。
だからこそ、木乃香は新型
そして木乃香が開発したこの白烏は、攻撃以上に防御を優先した
なにせ木乃香は刹那のように剣を振る訳でもないし、アスナのような特殊な力も無い。
さらに言えば気を操る訳でもないので、攻撃するなら防御をした方がよいと木乃香は判断したのだ。
そのため、巨大な一対の翼を使い体を覆うことで、防御を最大まで高めているのだ。
木乃香の試合を観戦していた覇王も、その
この前よりもさらに成長した木乃香を、その
その横に居た刹那も驚いていた。まさか自分の翼をモチーフに
しかし、驚きつつも、心の奥ではとても嬉しく感じていたのである。
そこで木乃香の新型
久々のシャーマンとしての強敵、楽しくて仕方が無いのである。
だからこそ、錬もこの場で本気を出すのだ。
「面白い。やはりそうでなくてはな!」
「ウチやて負けられへんのや!」
木乃香にも意地がある。
この試合に勝利して、自分の成長を覇王に認めてもらいたいのだ。それ故、この試合は絶対に勝利したいのである。
その強い意志こそ、シャーマンとしても重要な力となるのだ。
そして錬は、防御して止めていた前鬼を切り裂き消滅させると、木乃香へとターゲットを変えた。
その瞬間、またもや錬は瞬動にて木乃香の前へ現れ、武神魚翅を横に振り上げた。
木乃香はその攻撃を命中する一歩手前でかわしていたが、錬の攻撃はそれで終わらない。
さらにそこへ錬は縦に武神魚翅を振り下ろすも、木乃香はまたしてもスレスレで、ひらりとかわしたのである。
「あたらへんよ?」
「キサマ、まさか……!」
錬はこの回避方法に心当たりがあった。
それは巫門遁甲だ。巫門遁甲は巫力を察知することによる、行動の先読みだ。
その先読みにより、
この技術を木乃香はしっかりと習得しており、錬の武神魚翅での攻撃を回避していたのである。
その回避行動は、まさに舞を踊るかのようであった。
「だが避けてばかりでは勝ち目はないぞ!」
「そやな。ならこうやね!」
そこで木乃香は近接戦闘を挑む錬へと、右腕と同時に
すると錬が振り上げて追撃しようとした武神魚翅を、かき消してしまったのである。
錬はその
その一瞬の隙を木乃香はつき、くるりと回転しながら腕に装着してある白烏の一対の翼で錬を攻撃したのだ。
錬はその木乃香の攻撃を何とかかわし数メートル後退した後、再び
「無無明亦無……」
無無明亦無とは、シャーマンキングの主人公、麻倉葉が生み出した巫力無効化の技である。
その攻撃を受ければ、どんな
今木乃香が使った技がそれと同じ効果を発揮しており、これは覇王がもともと操れる巫力無効化の技術の応用で、本来の無無明亦無という技ではない。
「そんな名前やったっけ?」
「そうか、キサマもそれに類似した技を持っていたということか……」
その名前を聞いた木乃香は、やはりのんきなことを口走っていた。
されど、錬はその技を木乃香が使うことに戦慄していた。
いや、あの覇王の弟子なのだから、このぐらい出来て当然だと考えるべきであった。
そう、錬はやはり木乃香の見た目に惑わされ、そのことを失念していたのである。
だが、それならさらに力を出せばよい。錬はそう考え、最大の技を使うことにしたのだ。
「ならばそれでも防げん、自然の力で倒すのみ! 受けて見よ! 我が最超奥義を!」
「あ、アカンなこれ」
それなら打ち消せない自然の力を使用した攻撃をすればよい。
錬はあの雷の技を木乃香に使うことにしたのだ。
その叫ぶ錬を見て、流石にのんきな木乃香も、ちょっとやばいと感じ、冷や汗を流していた。
そこで錬は瞬動にて木乃香へ近づき、武神魚翅にて突きを繰り出し、木乃香はそえrを回避すると、さらに錬は高速で武神魚翅を振り回したのだ。
錬のその猛攻に木乃香も避けきれず、白烏の一対の羽で防御するしかなかった。
その防御で一瞬だが木乃香がひるみ、その隙に錬は最超奥義を発動したのだ。
「”九天応元雷声普化天尊”!!!」
「きゃああっ!!」
その技は巫力を用いた巨大な雷を落とす奥義だ。
錬は本気で木乃香を倒しに掛かったのである。
それが木乃香に命中すると、すさまじい轟音と衝撃がリングを揺らした。
それを見ていた観客は驚き叫ぶほどの光景だったようで、周りが騒がしくなっていた。
まあ、刃の無い剣を振り回していたと思えば、突然雷を発生させたのだから、驚かない方がおかしいのだが。
その技を見た刹那も、シャーマンにも雷を操る技があることに驚いていた。
なにせ神鳴流にも雷を操る奥義があるのだ。当然その技を思い出すだろう。
そしてその技を受け、
その技で、痛ましいほどのやけどを負った木乃香の体からは、うっすらと煙が立ち込めていた。
そこで錬はその倒れた木乃香を見て、その場で静かにたたずんでいた。
また、木乃香の様子を見た司会はこれで錬の勝利だと考え、カウントを数え始めた。だが、そこで錬は、独り言をこぼし始めていた。
「まだ終わりでないはずだ……。確かに今の技はキサマを完全に動けぬほどにする威力だったが……」
突然独り言を話し出した錬に、司会は驚きカウント数歩下がった。
そこで司会は木乃香の方へ目を向けると、なんと木乃香が痛みで涙目になりながらも、その場に立ち上がっていたのだ。
つまり今の攻撃で、木乃香がやられなかったということ。
それを見た司会は、カウントを数えるのをやめ、リングの端へと移動していった。
それを見た錬は、やはりという感じに思い、不適に笑っていたのだ。
「ククク、そうだ。そうでなければな……」
「……い、いたた……。雷に打たれるんは初めてやわ……」
全身を雷で焦がされたというのに、まだのんきな台詞を口から出す木乃香が、そこに立っていた。
とは言え木乃香自身も、なぜ自分が立ち上がれるのか、あまりわかっていなかった。
確かに今の攻撃は、木乃香が立ち上がれ無くなるほどのものだったのである。
そこで木乃香はO.Sの媒介である、二つの扇子に目をやった。
それは青銅という金属で出来た扇子だ。まさにその扇子が雷を流し、木乃香はダメージをある程度抑えることが出来たようである。
錬もその扇子を見て、何故木乃香が立ち上がれたかがわかったようだった。
しかし、それだけではない。
木乃香の白烏は防御に特化した
その防御力の高さのおかげで、かなりのダメージを軽減していたのだ。
そんな立ち上がるのも精一杯な状態の木乃香に、錬を倒すことなどできるはずがないだろう。
「だが、今のキサマでは俺は倒せん」
「……そーやな。今の状態やと倒せへんかな」
そう木乃香が言うと、巫力による治療を自らに施した。
それは巫力を用いたイメージでの回復で、負傷した肉体へ元の肉体をイメージし、治癒を施す。
木乃香が平然と回復するのは、ネギとの戦う理由の差だ。
ネギはタカミチとの試合で、自分が回復するのを卑怯と判断したが、木乃香にはそれがない。
何故なら、全てを出し尽くして目の前の錬を倒すことこそ、覇王に見てもらいたい”自分”だからだ。
自分が今できる全てをもって戦う姿を見せることで、木乃香の”今”を覇王に見てもらいたいから、できることを全て注ぐのだ。
それを見ていた錬は、予想通り回復もこなすのかと関心し、木乃香に回復の時間を与えて、まだまだ戦いを終わらせまいと考えた。
なんというバトルジャンキーか。
しかし、そう簡単には全快してなるものかと、錬はそれとは別にこうも考え、錬は瞬動を用いて、木乃香へと再度近づき攻撃したのである。
「全快にはさせんぞ!」
「前鬼! 後鬼!」
錬はさらに失念していた。
木乃香の
木乃香が白烏を使ってから、一度も動かさなかった前鬼と後鬼だ。
もう使わないのだろうと錯覚してしまっていたのである。
そこへ後鬼が木乃香を守るように立ちふさがり、それを錬は切り裂こうと武神魚翅を振り下ろした。
しかし、その後鬼の盾で、それを完全に防がれたのだ。
「何!?」
「巫力を多めにつこーとるんよ!」
この前鬼と後鬼は最初に作り出したものよりも、多く巫力を使用して生み出されていた。
それだけではなく甲縛式と同じ要領で構築したため、先ほどのよりも強固なものとなっていたのだ。
木乃香が最初からそれを行わなかったのは、相手を油断させるためであった。
なんとまあ恐ろしい娘だろうか。
そして攻撃を後鬼に防がれたことで、一瞬の隙を作った錬に、前鬼の大鎌が迫ってきたのだ。
「クッ! まさかこれほどとは……!」
「ウチやてそー簡単にやられへん!」
錬は即座に判断し、その前鬼の攻撃を武神魚翅で受け止めた。
だが、そこに後鬼の強烈なツッコミが錬を襲ったのだ。
それを錬は受けて吹き飛ばされ、数メートル先で着地するも、前鬼が錬を追撃に突進してきたのである。
「クッ、やはりあの男が鍛えただけはあるということか……!」
そうこぼす錬だったが、やはり楽しそうに笑っていた。
これほどの強敵は、本当に久々だったからだ。あの覇王の弟が弱すぎたので、退屈していたのだ。
そこへ覇王の弟子である木乃香を、ある程度は期待していた。
そんな木乃香は、錬が期待していたい以上の強敵だったのだ。
錬にはそれが嬉しくてたまらないのである。
とはいえ、一見錬が不利に見えるこの試合、実は木乃香は少し焦っていた。
今ので随分と巫力を使ってしまい、疲労してきていたからだ。
巫力による治療も、ある程度巫力を使用する上に、前鬼も後鬼を何度も破壊され、白烏すらも一度砕かれたのだ。
その消費巫力量は、かなりのもののはずなのである。
だからこそ、木乃香は早期決着を望みたいと考えていたが、シャーマンファイトにて焦りは禁物。
木乃香はその焦りを押し殺すように、必死に錬へ攻撃していたのだ。
「ならばもう一度受けて見よ! ”九天応元雷声普化天尊”!!」
「キャッ!?」
今回二度目の最超奥義発動。
しかし二度目と言うことで、木乃香もある程度対処法を考えていた。
それは前鬼・後鬼を盾にすることだった。
二つの式神が木乃香の頭上へと飛び上がり、その技を受け止める。
が、受け止めきれるような技ではなく、当然前鬼も後鬼もその一撃で破壊されてしまった。
そしてその余波は木乃香へと降り注ぎ、ダメージを受けていた。
さらにはその余波ですら、木乃香のO.Sは砕くほどのものであったのだ。
その隙を錬が逃すはずもなく、すかさず木乃香へ攻撃を繰り出してきた。
「まさか式神を盾にするとはな。だがこれで終わりだ!」
「ま、まだ終わらへんよ……!」
木乃香はまだ諦めていなかった。
再び白烏を
「――――後ろからか!」
「そうやないで!」
それに一瞬気を取られた錬は、後ろに目を向けてしまった。
そこへ木乃香は巫力無効化を使ったのだ。
「な、何ィ……!!?」
「今や! 前鬼! 後鬼!! ”ダブルツッコミ”!!」
その木乃香の命令により、前鬼と後鬼は錬に対して同時に片腕をぶつけ、ツッコミを入れたのだ。
その攻撃はただのツッコミだが、威力だけなら常人は耐えられないほどのものである。
それを受けた錬は、流石に表情をゆがませていた。
直撃での想像以上のダメージと、激痛を受けたからだ。
今の攻撃を受けた錬は、何とか態勢を立て直そうと考え、再び
なんと木乃香の白烏が背中から分離して二の腕へと装備され、両腕が白い巨大な翼となったのだ。
「受けてみいな、ウチの白烏を!」
「な、グッ!?!」
そしてその翼を使い、木乃香は空中へと飛び立った。
そこで吹き飛ばされて来た錬を、上から白烏を使い床へとたたきつけた。
すでに錬は武神魚翅を構築しており、その白烏をなんとか防御できたが、床に叩きつけられた衝撃だけは防御できずに、それをモロに食らってしまったのだ。
「クッ! なめるな!! ”雷法”!!」
「あうっ……!」
だが錬はそこで、落雷を発生させる雷法を使った。
それが木乃香に命中すると、しびれて動きが鈍くなり、地面へと落下。
されどそこへ、前鬼の大鎌が錬を襲っていた。
それを武神魚翅で受け止め振り払う錬だったが、振り払われた前鬼は再び攻撃を開始し、錬へと飛び掛る。
さらには、錬の背後からも後鬼が襲ってきたのだ。
「挟み撃ちか! だが!!」
錬はその二つの鬼からの挟み撃ちを、即座に横に移動し避けたてみれば、そして錬はそこへ雷を発生させ、後鬼を破壊してみせたのだ。
またそこへその錬の頭上へと、木乃香が落下して来たのである。
これこそ絶好の好機と見た錬は、そこでその木乃香を追撃しようと、武神魚翅にて突きを繰り出したのだ。
「トドメだ!!」
「ま、まだやよ……」
だが、木乃香は襲い掛かる武神魚翅を、巫力無効化で消滅させる。
それを見た錬は、まだそのような力が木乃香に残っていたことを驚いていた。
そしてその直後に錬は、後鬼の盾を使った突進に直撃してしまっていたのだ。
さらに木乃香は
「ガッ!? 甘かったということか!!」
その猪にでも衝突したかのような衝撃を受け、数メートル吹き飛ばされた錬だが、吹き飛ばされながらも後鬼へと落雷を発生させ、それを破壊したのである。
「だがもう迷わん! ”九天応元雷声普化天尊”!!」
その後、錬はすぐさま着地して態勢を立て直すと、再び木乃香へと再び九天応元雷声普化天尊を使用。
巫力無効化がある木乃香に、物理攻撃は受け付けないと判断しての行動だった。
「――――――あかん!?」
その地上を焦がす巨大な落雷に襲われた木乃香は、すでに巫力をほとんど消費してしまっており、イメージによる治療すら儘ならなかった。
つまり、木乃香にはその落雷を防ぐ手がないのである。
そんな弱りきった木乃香に、その激しい稲妻が雷鳴と共に襲い掛かったのだ。
それでもダメージを最小限に食い止めるべく、白烏を防御形態へと戻し、再び後鬼を最後の力を振り絞って
「くっああああっ……!」
しかし、やはり全てを防ぎきることは出来なかった。
何とか落雷に耐えていた後鬼も破壊され、その余波の雷を受けて白烏すらも砕かれ、木乃香はその場に倒れこんだ。
その倒れた木乃香を見て、錬はようやく勝負が決まったと感じたようだ。
そこへ司会が木乃香へと近づき、カウントを取り始めていた。
そのカウントを聞いた木乃香だが、もはや指一つ動かすことすらかなわないほどのダメージを受けており、ピクリとも動こうとしなかった。
そのため、そのカウントが増え続けるのを、ただ静かに倒れながら、聞いていることしかできなかったのだ。
「…………久々に強敵と戦えたことに感謝するぞ……。……近衛木乃香」
そこへ錬が一言残した。
久々の強敵との戦いに、感謝と敬意を見せていたのだ。
――――その後に、カウントが10を切り、木乃香の敗北が決定したのだ。
もはや動けない木乃香だったが、負けたことに悔しさを覚え、瞳から一筋の涙を溢していた。
そして錬の勝利が確定したところで、司会は錬へ近づき片腕を持ち上げ天に掲げていた。
だが、錬も三度
そこで錬も、試合の放棄を司会へと言い渡していた。
「司会、俺は次の試合を棄権する」
「は、はぁ!? 何を言ってるんだ!!?」
その錬の言葉に、司会は混乱していた。
せっかく勝利したというのに、次からの試合を棄権するなどありえないことだからだ。
されど、錬はそれでも棄権を表明していた。
それは巫力の消費もあるが、木乃香との戦いでの負傷も軽いものではなかったからだ。
二つの鬼からの攻撃は、錬に想像以上のダメージを与えていた。
それに錬は、木乃香との戦いで十分満足してしまったのだ。
何せ強力なシャーマンとの戦いだったため、これ以上の試合はもうないと考えたからだ。
「まあ、本人がそういうなら次からは棄権扱いにするが、本当にいいのかよ!?」
「くどいぞ。俺はもう満足したのだ。次の試合に興味はない……」
そう言うと錬は、倒れ伏せている木乃香の方を見た。
そこにはすでに、アスナと刹那がやって来ており、二人で木乃香を抱えて救護室へと運ぼうとしていたのだ。
木乃香も刹那の胸を借りて、静かにこの試合で勝てなかったことへの悔しさの涙を流す。
そんな弱りきった木乃香を、刹那は優しく抱きしめていた。
また、アスナも木乃香の背中をさすり、刹那と一緒になだめていたのだった。
実戦経験の有無は地味に大きい
というか、普通に雷を操るという部分は強すぎると思います