理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ101:原作キャラを圧倒する転生者


五十七話 危険人物

 まほら武道会第八試合も終わり、第九試合を控えるばかりであった。

そんな中、救護室へとやって来た刹那は治療を受けており、その横でアスナも控えていて、少し心配そうに刹那を見ていた。

 

 そこへ第八試合で破壊されたリングの修復中と言うことで、木乃香が刹那に会いに来たようだ。

 

 

「せっちゃん! 大丈夫なんか!?」

 

「こ、このちゃん!?」

 

「あ、このか」

 

 

 木乃香は先ほどの試合で怪我をした刹那を心配し、救護室までやってきたようだ。

そして木乃香が刹那を見ると、右肩を重点的に包帯が巻かれていた。

 

 それは随分と痛々しい姿であった。

その刹那の姿を見た木乃香は、少し怒った表情で二人を窘めた。

 

 

「アスナもせっちゃんも無茶しすぎや」

 

「ほんとゴメン。ついつい熱くなっちゃって」

 

「でもそれはお互い様ですので……」

 

 

 お互い互角であり、一瞬の隙が命取りとなる勝負だった。

だからこそ両者とも、ある程度の怪我は想定して戦っていた。

 

 また、なかなか決着がつかない試合だったので、ついついどちらも本気で技を使ってしまったのである。

 

 まあ、それでもこの程度で済んでいるのなら、まだいい方だろう。

そんな二人を怒る木乃香も先ほどの戦いにて、そういうことがある程度わかったので、本気で怒ってはいないようだ。

 

 

「んー、巫力はもうあらへんけど、魔力でなら少しぐらい治療できるかもしれへん」

 

「魔力…………、魔法でですか?」

 

 

 木乃香は前の試合で巫力を使いきってしまったので、もう空っぽだが、魔力はノータッチなので有り余っていた。

 

 実は木乃香、簡単な治癒ぐらいなら覇王から教えてもらっているのだ。

膨大な魔力を持つ木乃香が、巫力のみに頼るのはもったいないと言う覇王の判断だ。

 

 

「はおから軽い治癒魔法なら教わっとるんよ」

 

「そういえばこのちゃんはとてつもない魔力を持っていましたね」

 

 

 それを木乃香が話すと、刹那も木乃香の魔力の量を思い出したようだ。

 

 

「応急処置ぐらいやけど、とりあえず治療するわー」

 

「ありがとうございます……………、このちゃん」

 

 

 すっと木乃香が覇王から貰った青銅の鉄扇を出せば、静かに治癒の魔法を刹那へと唱える。

とは言え、木乃香は魔法の修行自体はそこまでやってないので、重傷の傷を完全に治すことはできない。

 

 それでも刹那は治癒をしてくれている木乃香へと感謝し、嬉しそうに小さく笑っていた。

 

 

「まあ、本格的な治療なら覇王さんにしてもらえばいいんじゃない? さっき木乃香だって覇王さんから、治療してもらったんでしょ?」

 

「それもそうやねー」

 

「そうでした。覇王さんがいるんでした」

 

 

 そこでふとアスナが、覇王に治療してもらえばよと思って話す。

 

 何せ木乃香の師匠は覇王だ。

その巫力治療ですらも、覇王が教えたのだから当然である。

 

 アスナから言われた木乃香も、先ほど治療を受けたばかりなのを思い出し、確かに、と頷き、刹那も覇王の存在を思い出し、そうだったとこぼしていた。

 

 

「なら、試合を見に戻った方がええなー」

 

「そうですね。ですが覇王さんが治療してくれても、包帯はこのままの方がよいでしょう」

 

「そうね。このかもそうしている訳だし」

 

 

 木乃香も前の試合で覇王から治療を受けたが、何か不審に思われないように、あえて包帯などは巻いたままにしてあった。

だから刹那も、木乃香と同じようにしておこうと思ったのだ。

 

 そして、木乃香とアスナは刹那を抱えながら、観客席へと移動していくのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 リングの修復が終わり、すでに第九試合が行われていた。

だが、その試合はあまりにもあっけない決着で幕を閉じていた。

 

 というのも、対戦していた選手はやはり小太郎とアルビレオだったのだ。

やはりと言うべきか、勝者はあのクウネル・サンダースであった。

 

 まあ、あれは一種のチートを使っている状態なので、勝てる相手などまず居ない。

あの楓ですら、あっけなく敗北するような相手なのだ。

仕方のないことである。

 

 そして、小太郎は治療を終えて目覚めた後、悔しさのあまり、やはり外へ出てってしまったのだ。

 

 というのも、あれほど簡単に敗北してしまった訳で、流石にショックだったのだ。

そんな小太郎を追ったのは、なんとあのバーサーカーであった。

 

 

「よう、突然飛び出してどうしたよ?」

 

「……なんや、バーサーカーの兄ちゃんか」

 

 

 小太郎は体育座りをしたままバーサーカーに背を向け、そのまま話し出した。

バーサーカーはそれを気にせず、普段通り気楽な態度で小太郎に接していた。

 

 

「俺、弱いんかなぁ……」

 

 

 小太郎はそう言うと、過去の敗北を思い出していた。

最初に敗北したのはいつだろうか。

 

 そうだ、あのアーチャーとか言うやつに負けたのがはじまりだ。

その次に悪魔、そして天使を操るメガネの男だ。

さらに今回のフードの男に負けてしまった。

 

 最近連敗で一勝もしていないじゃないか。

小太郎はそう考えて、さらに気分を暗くさせていた。

 

 そこで今の小太郎の言葉に、バーサーカーは答えたようだ。

 

 

「ああ弱ぇー。たまらなく弱ぇーぜ」

 

「そうやろな……。俺は、弱い……」

 

 

 バーサーカーは弱いとはっきり答えた。

それを聞いた小太郎は、さらに気分を暗くし、縮こまってしまったのだ。

だが、そこでバーサーカーは、その言葉の続きを話し出した。

 

 

「そんな気持ちじゃ誰にも勝てねぇ。強くなりたきゃ心も強くしねぇと駄目だぜ?」

 

「…………どういうことや?」

 

 

 ふと、そのバーサーカーの言葉に疑問を浮かべた小太郎は、顔を上げてバーサーカーの方を向いていた。

 

 そこで見たバーサーカーは、最初に会った時のように、威風堂々とした態度だった。

そして、不敵な笑みを浮かべながら、小太郎をサングラスごしに見ていたのだ。

 

 

「な~に、強い奴ってのはな、最後まで気持ちが折れないもんさ。だからウジウジしてるようなやつに、勝利は手にはいらねぇってことよ」

 

「俺は……。確かにさっきの戦い、気持ちが折れていたのかもしれへんな……」

 

 

 小太郎は先ほどの試合にて、アルビレオに一撃目を防がれた時から、気持ち的に勝ち目がないと感じていた。

いや、それ以前にあの楓とアルビレオの試合を見た時から、うっすらとそんな気がしていたのだろう。

 

 だが、それを必死に押し殺してでも、何とか勝ちたかった。

なぜなら、ネギに仇をとると約束したからだ。

 

 しかし、それはかなわなかった。

あれだけ豪語しておいて、あっさり敗北したのが悔しかったのである。

 

 また、ネギでさえあのタカミチ相手に食らいつき、勝利目前まで頑張ったのだ。

ネギのライバルだと公言した手前、自分は相手に傷一つ与えられなかったことにも許せなかったのだ。

 

 そこでバーサーカーは、励ましの言葉を小太郎へと送った。

 

 

「何度黒星貰おうとも、生きてりゃそれ以上の白星を稼げるってもんよ。悔しいなら立ち上がって、強くなればいいのさ」

 

「……そうやな、こんなんで落ち込むなんて、俺らしくないで……!」

 

「そうそう、それでこそだ! それにオレっちと戦うって約束しただろう? だったら、さらにお前さんを強くしてやるよ、このオレがな!」

 

 

 生きていれば負けた分以上に勝つことも出来る。バーサーカーはそう言っていた。

それはバーサーカーが今は死んだ人間だということも意味していた。

 

 また、その言葉で小太郎は元気を取り戻したようだ。

負けっぱなしは性に合わない、このままへこたれてるのは自分らしくないと、奮い立たせたのだ。

 

 そこでバーサーカーは、小太郎と勝負することを思い出し、それと同時に鍛えてやると言ったのである。

 

 

「兄ちゃんがどんだけ強いかわからんが、そんなら兄ちゃんにも勝つだけやで!」

 

「ハッハッハッ! その威勢が出せりゃもう大丈夫だろう。早く会場へ戻ろうぜ! 次の試合を見逃しちまうぜ?」

 

 

 そして調子を取り戻した小太郎は、いつものようにバーサーカーへ宣戦布告を叫んでいた。

 

 そう豪語する小太郎を見たバーサーカーは、もう大丈夫だろうと思ったようだ。

そこで次の試合のことを考えて、帰ることにしたのである。

 

 また小太郎は、飛び回って試合会場へと戻るバーサーカーを追うことにした。

その最中に、この男がどのぐらい強いかわからないが、たとえ強くても追い越してみせると考えながら、バーサーカーの後を追うのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 そして、アスナたちが観客席へ戻ってきた時に、第十試合が行われようとしていた。

それは第四試合にて古菲に残虐ファイトを繰り広げた、あの坂越上人と真名の試合だった。

両者とも睨み合い、試合開始を待っていた。

 

 

「さっきは私の友人を随分と痛めつけてくれたな」

 

「ああ、あの拳法家の娘ですか。いやあ……、私としても、あのようなうら若き娘を痛めつけるのは心が痛みましたよ」

 

 

 真名は古菲を、あれほどまでに痛めつけた上人に、多少なりに怒りを感じていた。

 

 確かにこれは試合で、怪我などは避けられないだろう。

自分も古菲と戦えば、骨の一本ぐらいは折っただろうと考えていた。

 

 しかし、両肩をあれほどの怪我を負わせ、全身を床へと打ち付けて追い討ちをかけはしないとも考えた。

 

 元々古菲は一般人で、気などを操れない。

だから防御力などを上げることができないのだ。

 

 つまり、あれほどまでに痛めつける必要性は、どこにもなかったのである。

だが、あろうことか上人は、戯言とも取れる冗談を口にしていたのだ。

 

 

「…………冗談ならもう少しマシなことを言うんだな」

 

「本当のことなんですがねぇ。まあ、いいでしょう……」

 

 

 そして、真名は上人へそう挑発していた。

上人はそれでも冗談ではないと言っていたが、本心はそうは思っていないだろう。

 

 そんな真名であるが、内心焦りを感じていた。

何せあの謎の力を解明しなければ、上人には勝てないと考えたからだ。

 

 また、古菲と上人の試合にて、ためしに魔眼を使ったのだが、その謎の力を捉えることはできても、どんな力かまではわからなかったのだ。

 

 そんな最中、ついに司会の叫びで試合が開始されたのだ。

 

 

「それに、あなたはあの娘と同じ運命をたどるのですからねぇ」

 

「そううまく行くかな?」

 

 

 そう言うと真名は、500円玉を上人目掛け連射した。

しかし、やはり上人には命中せず、その横を通り抜けるばかり。

 

 何度も500円玉を指で撃ちだす真名を、上人は鋭い視線で眺めていた。

なにせ上人がターゲットとしていたのは、この真名だったからだ。

 

 

「無駄ですよ。あなたの現在の力では、私に届くことはないでしょう」

 

「ッ、そうは言うがな……!」

 

 

 しかし真名は諦めず、羅漢銭にて500円玉を連射する。

いや、それしか今は出来ないのである。

 

 この大会にて武器を持ち込めれば何とかなった可能性はあるだろうが、それが出来ないのだから、これしか手がないのだ。

 

 ただ、この攻撃では上人を倒すことは到底かなわないだろう。

現に上人は何もせずに立っているだけだというのに、無傷なのだから。

 

 

「もういいでしょう、そろそろあなたには飽きました」

 

「そう言わずに、もう少し付き合ってもらうよ」

 

 

 真名はそう言った瞬間、突然真名の背後に上人が現れた。

今のは明らかに瞬動などの超高速移動ではなかった。

一体何が起きたのだろうか。そして上人は真名の背後から、一言残した。

 

 

「いえ、もう終わりですよ」

 

「なっに!?」

 

 

 そこで真名はとっさに振り向こうとしたが、その瞬間に謎の力により吹き飛ばされたのである。

そして、リングの上を数メートル吹き飛ばされ、何とか体勢を立て直した真名だが、周りを見渡すとおぞましい光景が写っていたのだ。

 

 

「こ、これは……!!?」

 

「あなたがばら撒いた、その安いコインで身を滅ぼしなさい」

 

 

 なんと真名が打ち込んだ500円玉が宙を舞い、横に回転していたのである。

まるで円盤のように回転し、空中で停止している500円玉の群れに、真名は驚愕していたのだ。

 

 そこで上人が腕を上げ、人差し指を下に下げると、その500円玉が真名へと襲い掛かったのである。

 

 

「グッ!?」

 

「どうです? 自分の巻いた種の味は?」

 

「…………鉄の味だね……」

 

 

 そう皮肉を言う真名であったが、すでに全身に500円玉を打ち付けられ、ボロボロとなっていた。

 

 この500円玉は円盤のように横に高速で回転しており、その軌道で体にぶつけられていた。

ただの撃つだけではなく、そういう回転でのダメージの上昇もあるため、真名が撃つ羅漢銭よりも威力がでかいのだ。

 

 しかし、そのおかげで真名は、この上人の能力の正体を大体察することができたようだ。

 

 

「……お前の能力、それは念動力か何かだな?」

 

「ほぉー、当たらずとも遠からずと言っておきますか。ですが、それがわかったところで勝ち目はないのですよ?」

 

「クッ、それもそうだ……」

 

 

 真名はこの男の能力が判明したからそれでよいと考えた。

だから試合をギブアップしようと考えたのだ。

 

 だが、その考えを上人は読み、そうはさせまいと真名の喉を攻撃したのだ。

 

 

「ガッ……!?」

 

「途中退場など、私に失礼だと思いませんか? だから、そうはいかないのです」

 

 

 喉を痛め声が出ない真名の右側へと、上人は瞬間的に移動してきたのだ。

それに気がついた真名は、とっさに左側へと移動し、上人との距離を取った。

 

 だが、その時点ですでに、上人が真名の背後へと移動していたのだ。

そこで真名の背後で、上人は自分の目的を真名へとこっそり話したのだ。

 

 

「私の目的はあなたを再起不能へと追いやることです。これは依頼主からの任務ですので、申し訳ありませんがここで瀕死になってもらいますよ?」

 

「……くっ……」

 

 

 すると上人は腕をアーチを描くように振り回した。

それにつられて真名も、その軌道で振り回されたのだ。

 

 そしてリングの床に何度も打ち付けられ、その衝突で何度も激痛を味わっていた。

さらには、その真名が衝突した床には、いくつものくぼみが出来ており、その衝突した衝撃の威力の想像は難しくなかった。

 

 それを何度も何度も繰り替えし、それを眺めながらほくそ笑む上人が居たのである。

 

 

「グッアッ!?」

 

「もういいでしょう、ではさようなら」

 

 

 そう上人が言うと、真名は神社の本殿の方へと投げ捨てられた。

そして観客席へと真名は突っ込み、完全に動かなくなっていたのだ。

幸い観客に怪我はなく、吹き飛ばされた真名を驚きの眼で見ていただけで済んだ。

 

 それを確認した上人は任務を達成したことで、その達成感に浸りニタリと笑う。

 

 司会はこりゃヤバイと焦ったのか、笑う上人を勝利者と断定し、すぐさまタンカを呼ぶ。

 

 今回の試合でも、観客は誰もしゃべらなくなっていた。

それほどまでにおぞましい光景だったのだ。

 

 しかし、ネギたちはそれに怒りを感じていた。

クラスの生徒や、クラスメイトである真名をこれほどまでに痛めつけたのだ。

怒らない方がおかしいのである。

 

 

「そう睨まないでほしいものですね。子供先生とその生徒がた……」

 

 

 そのネギたちの視線を感じたのか、上人はネギたちへ聞こえる声でそう言ったのだ。

 

 楓はすでに真名の下へと駆けつけ声をかければ、問題ないと答えが返ってきた。

真名は一応魔族とのハーフであり、体が丈夫であった。

だから何とか意識をそこで取り戻し、楓の応答になんとか応えられたのだ。

 

 しかし、それを聞いた上人は、そこへやって来て真名へとトドメをささんと行動したのだ。

 

 

「まだ動けるのですか? ならばしっかりと、トドメをさして差し上げましょう」

 

「御仁、一体何の真似でござるか!? もう試合は終了しているのでござるよ!?」

 

 

 その行動に楓は驚き質問していた。

いや、質問以前にすでに戦闘態勢となっていたのだ。

何せ謎の能力を操る男が瀕死の真名を襲ってきたのだ。

警戒しないはずがない。

 

 

「私の任務はそこの娘を”再起不能”へと追いやることです。ですから邪魔をしなければあなたは見逃してさしあげましょう」

 

「そういうことでござるか! しかし、真名を見捨てるという選択は、拙者にはござらん!」

 

「ならばあなたも、そこの娘のようにしてさしあげるだけです」

 

 

 そして上人は楓に向けて謎の能力を使おうとした。

楓は影分身を作り出し、それに応戦する構えを取っていた。

 

 しかし、そこで上人は突然楓への攻撃をやめたのだ。

なんとそこにはアルビレオがやってきており、重力魔法を上人へと使ったのである。

 

 

「むっ……、これはまさか……?」

 

「その辺にしておいてほしいものですね。彼女たちは美しくて若いのですから、傷物にしてしまうにはおしいでしょう」

 

 

 そう冗談めいたことを言うアルビレオであったが、表情に笑みがなく、無表情であった。

それほどまでに上人を警戒し、本気で潰そうと考えていたのだ。

 

 そんなアルビレオの表情すらも、上人はどうでもよさそうにしていた。

また、その上人の後ろにはタカミチも立っており、すでに両手をポケットへと入れていたのだ。

 

 さらに、覇王もやって来ており、すでにS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を操っていた。

 

 

「それ以上、僕の元生徒を傷つけるなら、こちらも本気で行かせてもらうよ……?」

 

「残念だけど、そこまでだ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()ですか……」

 

 

 そこにネギたちやメトゥーナト、さらにはエヴァンジェリンもやって来て、完全に上人は包囲された形となっていた。

 

 誰もが上人を逃がさんとしているのが、みんなの表情を見ればすぐにわかるほどであった。

だが、そんな状況下でさえ、上人はほくそ笑んでいたのだ。

なんという余裕の態度か。

 

 

「それ以外にも多数に無勢、まあいいでしょう。私の目的の半分はすでに達成しました」

 

 

 そして上人はそう言うと、徐々に空中へと浮かんでいった。

それを追うようにアルビレオも魔法を使う。

 

 また、タカミチも無音拳を使い、上人を追撃せんと攻撃したのだ。

さらに、覇王もS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)の腕で串刺しにせんと襲い掛かっていた。

 

 

「では、みなさん。またの機会にお会いましょう」

 

 

 しかし、それらが命中する前に、上人はそういい残すと瞬間的に消えていった。

それはやはり浮遊術や虚空瞬動のような、移動の類ではなかったのである。

 

 とは言え、上人が消えたことで、周りはとりあえず安堵のため息をするのだった。

あの上人の能力は、まだ真名ぐらいしか解明していなかったからである。

 

 いや、もう一人あの上人の能力を割り出したものがいた。

それはやはりアルビレオであった。

 

 

「ふむ、あの男の力はおそらく念動力、いや超能力と言った方がよいでしょうね……」

 

「そうだね、あの男の”能力(とくてん)”は”超能力を操る”のようだ……」

 

 

 覇王には転生者の特典を見抜く力を持つ。

つまり、あの上人は転生者だったらしい。

 

 そして、覇王はその能力で上人の特典を見抜いたのだ。

それが”超能力を操る”というものだったのである。

 

 超能力とは色々あり、読心、念動力、テレポート、未来予知などさまざまだ。

だが、あの上人の特典は、そう言ったものを全てまとめた能力の総称であった。

 

 さすればその能力は、想像以上の強さを持つことになるだろう。

この覇王とて、簡単に倒せる相手ではないと考えていた。

 

 そして上人が消えたことで、とりあえずネギたちは真名を救護室へとつれて行ったのだ。

大人数で救護室へと担ぎこまれる真名は、流石にその状況が恥ずかしいようであった。

当たり前である。

 

 また、エヴァンジェリンがそれに同行し、真名の怪我をこっそり治療魔法で回復していたようだ。

 

 

 ……とりあえず第十試合は終了となり、勝者である上人も消えたことで失格とされたようだ。

しかし、次の試合もなかなかハードなものだろう。

 

 なぜならタカミチとアスナの試合となるからである。

 

 

…… …… ……

 

 

 真名はエヴァンジェリンに回復してもらったが、とりあえず安静のために救護室で休むことにした。

 

 先ほどまでは心配して駆けつけてくれた、ネギや多数のクラスメイトがこの救護室に集まっていたが、今はすでに解散したようで、救護室には真名しかいなかった。

 

 そこへ一人の少女がやってきた。

それはあの、超鈴音だったのだ。

 

 

「手ひどくやられたネ、龍宮サン」

 

「む、超か……」

 

 

 超は雇い主として、そして友人として真名を見舞いに来た。

表情は普段通りの不敵な笑みであったが、超は内心かなり焦っていたのだ。

 

 なにせあの真名を一方的に痛めつける敵が現れたからだ。

さらに、あれほど痛めつけられた真名が大丈夫か、心配だったのである。

 

 

「体の方は大丈夫カナ?」

 

「ああ、そっちは平気さ。何せ謎の魔法使いが治療してくれたからな」

 

「フム、それはありがたいネ」

 

 

 謎の魔法使いとは、あのエヴァンジェリンのことである。

一応真名とエヴァンジェリンは顔見知りであり、ある程度知った仲なのだ。

 

 それと、一応超に、エヴァンジェリンは協力している形なので、真名の仲間とも言えるだろう。

そしてそのエヴァンジェリンが、さりげなく真名を治療したことを聞いた超は、安堵の表情を浮かべていた。

 

 

「しかし、あの力は厄介ネ……」

 

「そうだな。それに奴は何者かに雇われ、私を狙ってきたようだ。そして、雇ったのはあのビフォアと見て間違えないだろう……」

 

 

 超は上人の能力が、想像以上に厄介だと考えていた。

何せ物理的な攻撃が一切通らなかったのだ。そう考えて、ではあの力をどうすれば抜けれるかを、超は試合後に深く深く考えていた。

 

 また、あの上人と言う男は、何者かに雇われて真名を襲ったと言っていた。

なぜか上人は、真名へとしゃべったのである。

それを聞いた真名は、その雇い主がビフォアだと考察していた。

 

 また真名は、あの上人は自分が治療されることを、すでにわかっていたのだろうと考えていた。

 

 上人はあの時、目的の半分は達成されたと言っていた。

つまり、真名を再起不能にするという目的が、あの時点は達成されていないと言うことでもあった。

 

 だからこそ、トドメをささずに消えたのだろうと、真名は上人の行動を考察していたのだ。

だが、その別の半分の目的が何なのかまでは、真名も予想がつかないでいたのである。

 

 

「私もそう思うヨ……」

 

「それよりどうした? 私のところなど来て。アフターサービスって言うやつかい?」

 

 

 そこで真名は超を見ながら、どうしてここへやってきたかを質問していた。

一応雇い主の超だが、こうしてやってくる必要を真名は感じてなかった。

 

 何せ雇われているのは自分である。

そこで何が起ころうとも、全ては自己の責任だと思っているからだ。

だが、そんな真名へ、超は驚くことを話し始めた。

 

 

「……龍宮サン、契約を解除するなら今のうちヨ」

 

「……何?」

 

 

 なんと超は雇っている真名に、抜けても良いと言っていたのだ。

超はあの試合でビフォアが自分が思っていたものよりも、危険な存在だと考えた。

 

 そして、あの上人と言う人物も、相当危険な存在だった。

だから、このまま自分と共にビフォアと戦えば、最悪真名が命を落とす可能性があると、思ったのである。

 

 

「ハキシ言えば、このままでは龍宮サンの命が危ないネ。だからこの戦いから身を引くなら、今しかないヨ……」

 

「……何の冗談かは知らないが、一度受けた仕事を抜けるのは私のプライドが許さないね」

 

 

 しかし、真名はここで契約破棄などする気はまったくなかった。

傭兵としての意地があるのだ。一度請けた仕事なのだ、完遂させなければならないと思っているのである。

 

 その真名の言葉に超は、信じられないと言った驚きの顔をしていた。

あれほどの相手に一方的に攻撃されて、なおも戦おうと言うのだから当然だ。

 

 

「冗談ではないヨ! 私の目算が甘すぎたネ。これは雇い主である私の責任ヨ」

 

「しかし、相手の実力を把握しておきながら、それに対応できなかったのは私のミスだ」

 

 

 超は自分の考えが甘すぎたことを悔いていた。

だからこそ、真名があれほどの攻撃を受けたことに責任を感じていたのだ。

 

 逆に真名も、先ほどの戦いでの負傷は自分のミスだと断言した。

それは相手の能力がわかったというのに、後手に回ってしまったからだ。

 

 あの時すぐさまギブアップ出来ていれば、あれほどまでに痛めつけられることなど無かったと、そう考えてたのだ。

 

 

「そういう訳だから、これからもよろしく頼むよ」

 

「……本当にいいのカ?」

 

「ああ、当然だ」

 

 

 そして真名は、止める気は無いという旨趣を言葉にしていた。

それを聞いた超は、最後の確認を真名へと送る。

本当に自分たちの仲間として、あのビフォアや上人と戦うのかと。

しかし、そこで真名は少ない言葉で、戦う意思を示したのだ。

 

 

「そうカ……。わかたヨ、これからもよろしく頼むネ」

 

「それでいいのさ。……おっと、そんな危険となったこの仕事の報酬は、今の3倍ぐらい増やしてくれるんだろう?」

 

 

 二人の契約は再び強固に結ばれた。

だがそこで真名は、この仕事の報酬を増やしてくれるよう、超へと交渉していたのだ。

 

 それを聞いた超は多少引きつったが、命に関わることなので、快くそれを承諾したのだ。

 

 

「ム、そうネ……。そのぐらいお安い御用ヨ」

 

「ふふふ、話がわかってくれて助かる」

 

 

 その超の了解を聞いた真名は、普段以上にニヒルな笑みを見せていた。

また、超はなかなか商売上手だと、真名のことに感服していた。

 

 いやはや、この状況ですら、報酬のことを考えられるのだから、肝が据わっているのだろう。

まあ、実際真名は、幾度と無く命と隣り合わせな状況となっているはずなので、このぐらいなんとも無いのである。

 

 そして、超は手を振りながら、救護室を後にした。

それを真名は眺めながら、とりあえず傷が癒えているならこの会場を見回ろうと考え、準備を始めていたのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:坂越上人(さかごえ かみと)

種族:人間

性別:男性

前世:30代教師

原作知識:あり

能力:超能力での攻撃や防御

特典:超能力を操る

   自分の力に振り回されない

 

 

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