理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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デスメガネVSエンジェルメガネ


五十九話 裏の顔

 決勝戦前、前の準決勝の試合にてリングはほぼ壊滅してしまっていた。

その突貫作業が現在急ピッチで進められている状況だった。

 

 そんな最中、アスナは救護室でしっかりと手当てを受けて休息を取っていた。

なにせあのタカミチとガチバトルをして、全身ボロボロだったからだ。

 

 

 そんな状態では、はっきり言ってあのアルビレオには勝てないだろう。

いや、たとえ全快だとしても、あのチートボディーとアーティファクトに勝てるか微妙である。

 

 しかし、アスナはそれでもアルビレオに一撃入れたいと考えていた。

それに、あのアルビレオもなにやら目的があって、この試合に出ているようだった。

その目的も知りたいと、アスナは大会が始まった時から、ずっと考えていたのだ。

 

 そして、救護室のベッドでアスナは寝かされており、その周りに木乃香、刹那、さよが集まっていたのだ。

三人とも、今のアスナの怪我の状態を心配し、救護室に残り話をしていたのである。

 

 

「アスナ、その体で次の試合でるん?」

 

「そうよ、絶対に止まらないわ」

 

「しかし、そんな状態ではあのクウネルさんに勝つのは厳しいかと……」

 

「そんな体で戦ったら、次は私みたいになってしまいますよう……」

 

 

 また、木乃香も刹那も、さらにさよも、そんな状態のアスナが次の試合へ出るのに反対だった。

なんせ全力でないにせよ、あのタカミチの大技を幾度と無くその身に受けたのだ。

かなり身体的に厳しいはずである。

 

 しかし、その三人の心配をよそに、アスナは絶対に出場すると頑なになっていたのだ。

 

 

「これは勝ち負けの問題じゃないの。私の意志の問題だから」

 

「……そうですか……。では私からはもう何も言いません。次の試合、気をつけてください」

 

「せ、刹那さん……?」

 

「せっちゃん、ホンマにええんか?」

 

 

 その決意の固さに、刹那は説得することを諦めた。

そして、アスナに対して次の試合のエールを送っていた。

 

 その言葉にさよは驚き、刹那の方を見たのである。

横の木乃香は、その刹那に止めなくても大丈夫なのかと言っていたのだ。

 

 

「このちゃんも試合で戦ったからわかっているはずですよ。ここで退くことなど出来ないと言う気持ちが」

 

「……そうやな。ここで止めたら友達やないわな……。せやからアスナ、気つけるんやえ!」

 

「私は反対したいんですが、お二人がそう言うのであれば、もう何も言えません」

 

「ふふ、ありがとう刹那さんとこのか、それにさよちゃんも。大丈夫、何とか頑張ってみるわ」

 

 

 刹那は心配する木乃香に、必死に戦ったなら今のアスナの気持ちがわかっているのではないかと話した。

そう刹那に言われた木乃香も、確かにそうだと考えた。

 

 そこでアスナを止めてしまったら、友人として最低だと思った。

だから、もうアスナを止めるのをやめ、逆に応援することにしたのだ。

 

 そして、二人から応援を受けたアスナは、より一層あのアルビレオに一矢報いてやろうと決意をさらに固めるのだった。

 

 しかし、やはりさよは、自分のように幽霊になってほしくない気持ちが強いので、アスナが次の試合に出るのには反対のようであった。

そんな三人の前に、あのアルビレオがやってきたのである。

 

 

「やあ、みなさん。お元気そうで何よりです」

 

「クウネルさん……?」

 

 

 そこですぐに反応したのは刹那だった。

まったく気配のないフードの男が、突然救護室に出現したのだ。

 

 一瞬敵だと考え刹那は構えてしまったが、それがアルビレオだとわかると、すぐさまその構えを解いたのである。

 

 

「くーねるはん、突然出たり消えたりするんは驚くんやけど……」

 

「こ、このかさん……。それは私にも言えることなんじゃ……」

 

 

 そして木乃香も、突然出現したアルビレオに、気配も無く出たり消えたりすると驚くと言っていた。

 

 しかし、それはさよにも言えることなので、さよは自分にもそう言われているんじゃないかと思い、木乃香のほうを涙目ながらに見ていた。

 

 そこでアルビレオは三人を普段通りの笑みを浮かべながら眺めた後、アスナへと近寄ったのである。

 

 

「何よヘンタイ、これのどこが元気だって言うのよ……」

 

「いえ、次の試合は私とアスナさんの試合だと思ったもので、少し心配して見舞いに来たのですよ」

 

 

 アスナは傷だらけの自分へと近づくアルビレオを、顔を向けずに横目で見ていた。

だが、こんな弱りきった自分に何かするほど、アルビレオは腐ってはいないのも知っている。

 

 だからとりあえず、何をしにここへ来たのか、様子を見ることにしたのだ。

そこでアスナへと近づいたアルビレオが、見舞いに来たと言うと、アスナへと治療魔法を使ったのだ。

 

 

「これでアスナさんの怪我は治ったはずですよ?」

 

「なっ……?! 一体何のつもり?」

 

 

 それを見てアスナは驚き、一体何の真似だと言葉にした。

次の試合の相手である自分を治療するなど、敵に塩を送るのと同じだからである。

 

 しかし、アルビレオはその行動に悪びれることも無く、笑みを浮かべながらその質問に答えたのだ。

 

 

「いえ、次の試合はとても大切なものになります。ですから、アスナさんには万全の状態で望んでほしいのですよ」

 

「意味がわかんないけど、何かやるってことね……」

 

「ええ、ネギ君にもあなたにも、きっと心に残る出来事になりますからね」

 

 

 アルビレオのその答えに、アスナは本気で何かするのだろうと考えた。

とは言え、考えたって何をするかはまったく検討がつかないので、次の試合で確認するしかないと思ったのだ。

 

 まあ、変なことではないだろうとアスナは考え、ベッドにもたれかかっていた。

 

 

…… ……

 

 

 敗北したタカミチはメトゥーナトから魔法薬を貰って回復し、次の行動に移っていた。

このまほら武道会の主催者である、ビフォアなる人物の調査をするのがタカミチの真の狙いである。

 

 あのビフォアという人物は、謎だらけの人物だった。

はっきり言えばビフォアという男は仕事熱心で、人柄もよく、気のきく男である。

そのため他の魔法使いからは、絶大な信頼を受けているのだ。

 

 しかし、タカミチや学園長はそうは思っていなかった。

何か裏があるかもしれないと勘ぐっていたのだ。なぜなら、この麻帆良に来る前の情報が、一切存在しないからだ。

 

 あの超鈴音も同じことが言えるのだが、そういう意味では信用におけるか判断しがたい存在だった。

故に、このような大会を開いた必要性やその裏を取るために、タカミチは行動しようと考えたのである。

 

 そこで下水道の入り口へと、タカミチはやって来ていた。

そこへもう一人、男性が立っていた。

 

 それはあの転生者である、アルス・ホールドであった。

アルスはこの近くで、タカミチと待ち合わせをしていたのである。

 

 

「やあアルス、待たせてすまない」

 

「気にしませんよ。待っている間、のんびりさせてもらいましたからね。しかしなぜ、俺なんかを呼んだのです?」

 

「何、君は魔法世界でも有名人だし、実績もある。それに……、いや、なんでもない」

 

 

 アルスはタカミチと合流し、そこでなぜ自分が相方にされたのかを、タカミチに質問する。

 

 確かに実力は高く実績もある。それに強力な力を有している。

とは言え、それなら自分以外にも大勢いるので、そう疑問に感じたのだ。

 

 そこでタカミチは、アルスは魔法使いでは有名で、さらに実績もあるから呼んだと説明した。

しかしタカミチはその説明の続きを言おうとして、あえて止めたのだ。

 

 それがどういうものだったのかは、タカミチにしかわからないことだろう。

 

 その説明にアルスは静かに頷き、納得したようだった。

だが、最後のタカミチの言葉を疑問に感じたようで、首をひねっていた。

 

 また、そこへ小さな式神が現れた。それは京都で出番を失ったちびせつなであった。

 

 

「お二人とも、私が見つけた怪しい施設へ今から案内しますね」

 

「おっと、そっちも待たせてしまったね。すまなかった」

 

「いえいえ、私も入念に会場を調べられましたから、気にしてないですよ」

 

 

 刹那はさりげなく、ビフォアを調べるためにちびせつなを作り出し、会場を調べていたようだ。

というのも刹那にとっても、魔法先生のビフォアはなんだか胡散臭い存在だった。

 

 人柄がよく、気がきく気さくな男だが、それがどうしても本心とは思えなかったのだ。

だから、何かあるかを調べて、何もなければそれでいいと考えたのだ。

 

 そして、ちびせつなの案内で、その下水道の奥深くへと、タカミチとアルスは移動していった。

ちびせつなは、この会場を入念に調べ、この下水道の脇をそれた地下深くに、巨大な格納庫などを発見したようだった。

 

 それが何なのかを突き止めるため、タカミチとアルスは足を急ぐ。

しかし、その奥へ移動している時に、その男は現れた。それはやはりビフォアと言う男だった。

 

 

「いやいや、お二人さん。どうもこんにちは」

 

「ビフォアか、ここで何をしているんだい?」

 

「ただ、まほら武道会を開催しているだけでしょう? 見てわかりませんかね?」

 

 

 タカミチはビフォアを対面したところで、すでに両手をポケットに入れていた。

つまり、何かあれば攻撃をするという意味であった。

 

 そこでビフォアはタカミチの質問に、丁寧だが棘のある言い方で、何をしているのかを語りだす。

だが、それは真実ではない。

 

 そして、そこへ出口をふさぐように、別の男が立っていた。

それはあの白いメガネの男、マルクだったのである。

 

 

「悪しき麻帆良の魔法使いどもの質問なんぞに答える必要はありませんよ、ビフォア様」

 

「君は報告にあった男……!? これは一体……!?!」

 

 

 タカミチはマルクと言う男の報告を受けていた。

何せネギが狙われたのだ、当然その情報を得ていたのである。

 

 そこでこのマルクとビフォアが、なぜつながりを持っているのか、疑問に感じてビフォアへ質問したのだ。

だが、そこでビフォアから、驚くべき言葉が出されたのだ。

 

 

「フフフフフ、君たち二人には少しの間寝ていてもらおうと思ってね。永眠するかもしれないがな」

 

「何言ってやがる……! まて、タカミチ、囲まれているぞ!?」

 

「これはひじょーにまずいです!」

 

 

 そしてアルスは、その言葉に反応し叫びをあげた。

が、しかし、すでに敵に取り囲まれていることを察したのだ。

 

 また、ちびせつなもそれを見て、これは危険な状況だと判断したようだ。

そう、すでに大友というロボ軍団に、彼らは囲まれていたのだ。

 

 

「甘いんですよ、甘い。私はこの時をずっと待っていたのだ。入念に準備をしてね……」

 

「一体何を考えている、ビフォア!?」

 

 

 ビフォアはずっと待っていたのだ、この時が来るのを。

そして、この一世一代のチャンスのために、虎視眈々と準備をしてきたのだ。

 

 されど、タカミチはビフォアの考えがまったくわからない。

なぜこのような真似をするのか、さっぱりなのである。

 

 そこで、それをビフォアへと質問すると、なんとマルクが突然怒りだし機械天使を招来させたのだ。 

 

 

「貴様! ビフォア様に汚い言葉を使うでない! そのような貴様には消えてもらうぞ! 行け! ミカエル!!」

 

「おいおい、ありゃ機動天使ミカエル様じゃないですか……!!」

 

「仕方がない、戦うしかないようだね……」

 

 

 そこでアルスはその天使が、シャーマンキングに出てくるO.S(オーバーソウル)ミカエルであることを見抜いた。

そして、その行動にタカミチも、渋い顔をしながらも戦うことを決めたようだ。

 

 その瞬間、大友の群れが刀を握って攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

 

「”千条閃鏃無音拳”!!!」

 

「”白き雷”!!」

 

 

 とは言え、大友の群れなどタカミチやアルスの前では鉄くず同然。

簡単に砕かれ下水へと沈んでいく。

 

 そこへマルクのミカエルがタカミチへ襲い掛かったのだ。そしてアルスは、ビフォアを相手にするべく、攻撃をそちらへと向けたのだ。

 

 

「やれ! ミカエル! その悪しき魔法使いどもに審判を下すのだぁ!!」

 

「僕らが何か悪いことでもしたと言うのかい?」

 

「貴様ら麻帆良の魔法使いは存在自体が悪なのだ! このまま裁きを受けて消えるがいい!!」

 

 

 まったく話を聞こうともしないマルクは、そのミカエルの剣でタカミチへと攻撃するが、大振りのミカエルの剣は当然タカミチに通用しない。

 

 また、広い下水道といえど、所詮は下水道である。

密閉された空間では、巨大なミカエルは動きが鈍るというもの。

そこへタカミチは、ミカエルへと攻撃を仕掛けたのだ。

 

 

「”豪殺居合い拳”!!!」

 

「な、ミカエルが悪しき魔法使いごときに!?」

 

 

 だが、タカミチの大技、豪殺居合い拳の一撃で、ミカエルは分解処分されてしまった。

 

 それを見たマルクは、驚きながらもさらに怒りを増していた。

そこでさらに、巫力を上乗せしたミカエルを再びO.S(オーバーソウル)したのだ。

 

 

「だが、この程度で終わる私ではない! 行け、ミカエルよ!!」

 

「これは本体を叩かないといけないパターンかな?」

 

 

 タカミチはそれを見て、マルク本人を倒す必要があると考えた。

だからタカミチは、なんとかミカエルの隙をつき、マルク本人へと近づき攻撃したいと考えたのだ。

 

 

 タカミチの方は特に問題なく戦っており、善戦しているようだった。

だが、ビフォアを相手取るアルスは、なぜか苦戦を強いられていた。

 

 ビフォアは高性能パワードスーツに身を固め、すさまじい怪力と速度を有してはいるが、所詮はその程度で、魔法も魔法の射手ぐらいしか使っていないのだ。

 

 それなのになぜか、なぜか無詠唱で魔法を操るアルスが苦戦していたのである。

 

 

「何なんだコイツは……! 雷の投擲×20! ”なんちゃってゲートオブバビロン”!!」

 

「無駄なことだよ。()()攻撃は私には届かないのだからね」

 

 

 アルスは雷の投擲を20も作り出し、ビフォアに向けて放つのだが、それは全てビフォアに命中せず、あらぬ方向へと飛んで行ったのだ。

この謎の現象のせいで、アルスはビフォアに苦戦していたのである。

 

 また、そこへ大友以外のロボがやって来た。

すごいメカメカしい外見、肩にロケットランチャーなどを装備した二足歩行の大型のロボだった。

そして、そのロボは突然ロケットランチャーをタカミチへ向けてぶっ放したのだ。

 

 

「……何!?」

 

「今の隙をつけ! ミカエルよ!!」

 

 

 そのロケットランチャーをタカミチは無音拳の拳圧で破壊したが、そこにミカエルの剣が迫ったのだ。

それを何とかかわし、再びミカエルへと攻撃するタカミチだった。

 

 だが、今のロケットランチャーの爆発で、下水道は煙に包まれてしまったのだ。

 

 

「しまった……! これでは周りが見えない」

 

「けほけほ、みなさんどこですかー!?」

 

 

 そこで焦りの声を出すタカミチと、煙たそうにしながらも、視界がさえぎられて焦るちびせつなが居た。

しかし、ロボは特に問題などない。なぜなら高性能な光学センサーを搭載しているからである。

 

 サーモグラフィーに変更し、ターゲットを見失わないようにしているのだ。

さらに、煙の中からミカエルが、タカミチへと突貫してきた。

 

 

「見えぬなら辺りを破壊すればよいのだ!」

 

「無茶をする……!」

 

 

 ミカエルは剣を適当に振り回し、見えないタカミチを無茶苦茶に攻撃していた。

その攻撃は味方である大友軍団にも命中し、多数の大友が爆散していく。

 

 その爆発で、さらに下水道内の煙の密度が増し、視界がどんどん悪くなっていく一方だった。

しかしそこで、アルスが暴風を起こす魔法を使ったのだ。

 

 

「煙を飛ばす! 踏ん張れよ!!」

 

「アルスか!!?」

 

「わっ!? わっ!? 風が!!」

 

 

 その嵐のような暴風は、下水道の外に出るように向けて放たれた。

そこでタカミチは足腰でしっかりと地面を踏みしめ、吹き飛ばされないように耐えていた。ま

 

 た、ちびせつなもタカミチの肩に捕まり、飛ばされないように必死にしがみついていたのだ。

そして、それが煙を全て吹き払い、視界を取りも出したのである。

 

 だがその瞬間、ビフォアがアルスへと接近したのである。

さらに、ミカエルがタカミチへと剣を振るっていた。

 

 

「貰ったぞ!」

 

「くれるかよ!!」

 

 

 そこでビフォアはアルスへと殴りかかった。

だが、アルスにその程度の攻撃など当たるわけもない。

その攻撃を回避したアルスは、至近距離から”雷の斧”を放ったのだ。

 

 

「むしろこっちが貰ったぜ! ”雷の斧”!!」

 

 

 しかし、なぜかその魔法もあらぬ方向へと飛び無関係な場所に命中した。

 

 雷の斧は落雷を自分の近くへ放つ魔法だ。

この距離で発動した魔法が、外れるはずがないのである。

だが、現実にはずれたのだ。

 

 その外れた雷の斧は、ビフォアの近くに待機していたロケットランチャーを放ったロボへと命中し、それを破壊したのである。

なんという怪我の功名だろうか。

 

 しかし、ビフォアにはまったく命中しなかったことに、アルスは焦っていた。

これにはアルスも混乱し、どうすればいいかわからなくなっていたのである。

 

 

「先ほどの言葉を忘れたのかね?」

 

「バカな!? 至近距離だぞ!! はずすはずが……!」

 

 

 そこでアルスを小馬鹿にした表情で、ビフォアはそう言い放つ。

もはやこれでは手の打ちようがないと、アルスは考え始めていた。

 

 だが、アルスはこのビフォアの能力が何なのか、少しずつ察し始めていた。

そこでアルスは、実験をするように魔法を連続で打ち出した。

 

 

「”雷の投擲”! ”白き雷”! ええい、もうやけだ! ”奈落の業火”!!」

 

 

 アルスは出来る限り、下水道を破壊しない程度の魔法を選んで使っていた。

だが、それを止めて、とうとう奈落の業火を放ったのである。

 

 そして、その爆発するほどの火炎が下水道を包み込んだのだ。

アルスは自分の後ろに居る、タカミチやちびせつなに被害が行かないよう、最大障壁を出して炎を押さえ込んでいた。

 

 しかし、その炎がやんだ後に見た光景は、アルスがさらに驚愕するものだったのだ。

 

 

「だから私には当たらんと言ったはずだよ?」

 

「命中重視ではなく、広範囲に渡る魔法を使ったはず……。どういうことだ……?」

 

 

 ビフォアの周りに居た大友軍団は燃え尽き、完全に機能を停止していた。

だが、ビフォアの周りには炎が通った後がなく、ビフォア自体にも傷一つついていなかったのだ。

 

 ここでアルスは、このビフォアは重力か空間を操る力を持つのだろうと考えた。

 

 しかし、それならば魔法があらぬ方向へ行き過ぎることに気がついたようだ。

ならば、この能力は一体何なのか。

 

 アルスはそれを考えながらも、ビフォアの攻撃を回避するしかなかったのである。

 

 また、タカミチも大友を破壊しつつ、ミカエルを迎え撃っていた。

 

 もう何度目だろうか。

タカミチはミカエルを幾度と無く破壊したのだが、ミカエルは何度も何度も復活するばかりで、一向に倒される気配がない。

 

 そこでやはり、あのメガネの男を倒さなければならないと考え、タカミチはそれを実行したのだ。

 

 

「”千条閃鏃無音拳”!!」

 

「何!?」

 

 

 タカミチは超高速連打で無音拳を放つ技、千条閃鏃無音拳を使った。

そこでなぜ、大型主砲ほどの貫通力と範囲のある七条大槍無音拳を選ばなかったのか。

 

 それは射程内にすでに、マルクが入っていたことと、ミカエルや大友軍団を牽制するためであった。

また、七条大槍無音拳を下手に使って、下水道を倒壊させてしまうことや、マルクが死亡してしまうことを恐れたのだ。

 

 その技が自分へと向かってくることを知ったマルクは、すぐさまミカエルで防御をした。

だが、それ自体が罠だったのである。

 

 ミカエルがその攻撃で、一瞬身動きが取れなくなった隙をつき、タカミチはマルクの背後へと移動したのだ。

 

 

「終わりにさせてもらうよ!!」

 

「し、しまった……!! まずい!?」

 

 

 そこでタカミチは豪殺居合い拳を放とうと、腕を動かそうとしたのだ。

しかし、その瞬間、右肩が弾丸に打ち抜かれたのである。

 

 その傷からはおびただしい量の鮮血が噴出し、タカミチはその激痛で顔をゆがませたのだ。

さらに、今の銃撃でタカミチは、攻撃を不発に終わらせてしまったのだ。

 

 

「い、一体何が……!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「フハハハ! 今だミカエル!!」

 

 

 突然タカミチが撃たれたことで、ちびせつなも驚き戸惑っていた。

また、タカミチが肩を打ちぬかれた隙をつき、マルクがミカエルの剣をタカミチへと振り下ろさせたのだ。

 

 タカミチは右肩を打ち抜かれたことに意識を奪われており、その剣に気づくのが遅れてしまった。

そして、避けきれぬと考えたタカミチは、ダメージを抑えるために左腕で無音拳を打ち込んだのだ。

 

 

「くっ、これでも駄目か……!?」

 

「高畑先生、頑張ってくださーい!!」

 

 

 それでもミカエルの剣の勢いは殺しきれない。

ちびせつなも、ただ応援しか出来ないことに、心苦しく感じていた。

 

 しかし、そこでタカミチはアルスの方へと視線を送ると、無音拳のターゲットをマルクへと変更したのだ。

 

 

「ちびせつな君、どうやらなんとかなりそうだよ」

 

「え!?」

 

 

 タカミチはちびせつなに、普段通りの笑みを浮かべ、何とかなると言っていた。

それを聞いたちびせつなは、ポカンとしたアホっぽい表情で一瞬固まったようである。

 

 そして、マルクはその無音拳を受け、数メートル吹き飛ばされたのである。

さらに、ミカエルが莫大な雷の力により、全身ヒビだらけとなり動かなくなったのだ。

 

 

「くっ、アルス! 敵はまだ居るようだ……!」

 

「のようだな。その怪我は大丈夫か?」

 

「少し厳しいかな。とりあえず一旦引こう」

 

 

 アルスはビフォアの攻撃を避けながらも、タカミチの援護をしたのである。

タカミチを助けるために使った魔法が”千の雷”だったのだ。

 

 だが、その魔法はとても魔力の消費が激しいので、アルスの魔力はかなり消耗してしまったようだった。

 

 さらに、新たな敵の出現により、戦闘続行は不可能と二人はすぐさま判断した。

また、その弾丸を発射したと思われる人物はまったく見当たらなかった。

 

 それゆえに、不気味だと感じたので、撤退することにしたのである。

しかし、ビフォアも逃がす訳が無く、しつこく攻撃を仕掛けてくるのだ。

そこでアルスは、自ら囮となる作戦を、タカミチへと伝えたのだ。

 

 

「タカミチ、ちびせつな、お前たちだけ逃げろ」

 

「え!? アルスさん、いきなり何を!?」

 

「何? アルス、君はどうするつもりなんだい!?」

 

「俺は囮になる。お前が逃げて説明したほうが、信用されるだろうしな!」

 

 

 その言葉を聞いたちびせつなは、アルスが何を言っているのか、一瞬理解できなかったようだ。

 

 またタカミチも、アルスが囮になる気なのをわかりながらも、あえて何をするか質問したのだ。

そこで案の定、アルスは自ら囮になると言ったのだ。

 

 なぜアルスが囮になると言い出したかというと、タカミチは右肩を撃たれ、かなり出血していた。

それ以外にも、自分が他の魔法先生へ事情を話すよりも、タカミチが話した方が信用されると、アルスは考えたのだ。

 

 だからこそ、アルスはタカミチを逃がす判断をしたのである。

そこでタカミチも、アルスの意図を察し、小さくうなずき後退していった。

 

 

「逃がすと思うか!! ミカエルゥゥ!!!」

 

「お前の相手も俺だ……!」

 

 

 しかし、後退するタカミチへマルクとミカエルが阻んでいた。

だがそこへ、アルスが特攻を仕掛けたのである。

 

 なんとアルスは右腕に魔法の射手を纏わせ、ミカエルを殴り飛ばしたのだ。

それに一瞬驚いたマルクは、そのアルスの行動に逆上し、アルスへと目標を変更したようだ。

 

 その隙にタカミチとちびせつなは、下水道から脱出できた。

ただし、アルスはミカエルとビフォアに囲まれた状態となってしまったのだった。

 

 

「もう逃げられんな? 観念するべきだよ」

 

「貴様のような悪しき魔法使いは、この私が滅ぼしてくれる!!」

 

「ハッ、こりゃ逃げれそうにねーな……」

 

 

 そこで観念したのか、アルスは両手を上にあげ、降参を示したのだ。

だが、マルクの怒りはそれで収まらないようで、ミカエルへと攻撃の指示をしたのだ。

 

 そこでアルスは、自分が殺されるなら、冥土の土産に質問させてくれと言いだしたのである。

 

 

「なあ、ここで処刑されるんだ。二つほど質問いいか?」

 

「何かね? 下らんことなら答えんよ?」

 

「貴様!! ビフォア様になんたる無礼な言葉を!!」

 

 

 ビフォアは最後なのだから質問ぐらい答えてやろうと思ったようだ。

また、アルスの質問の口調が気に入らなかったのか、マルクはさらに怒りを増していた。

そして、アルスはビフォアへと質問したのだ。

 

 

「まず一つ、お前ら、()()()だな?」

 

「そうだ、お前もそうなのだろう? お互い様ってやつだな」

 

「ああ、だが次の質問が本題だ」

 

 

 それはまず、転生者かどうかの質問だった。

その質問にビフォアはYESと答えたのだ。

 

 だが、アルスもそうなのだろうと、ビフォアは付け足して言葉にしていた。

しかし、アルスの本題は、次の質問だったのだ。

 

 

「お前の特典……、もしや…………」

 

 

 それはビフォアの特典に対する質問だった。

アルスの今の質問は、ビフォアの確信をつくものの一つだったようだ。

 

 その質問の時、アルスは声を小さくしたのか、下水道の音でかき消され、マルクには聞こえなかった。

 

 また、それを聞いたビフォアの表情が険しくなるが、すぐに元に戻っていった。

そして、ビフォアはそれに対してもYESと言ったのだ。

 

 

「そうだ、私の特典はそれであっているよ。しかし知られても痛くはないのが、死んでもらうか」

 

「最初から殺す予定だった癖に、何を言うのやら」

 

「では判決を言い渡す! 死刑!!」

 

 

 そしてアルスへとミカエルの剣が振り下ろされ、左肩から右わき腹までを割かれ、二つに分断されてしまったのだ。

 

 なんということだろうか。アルスはこの場で()()されてしまったのである。

 

 それを終了したマルクは、とても歪んだ表情でほくそ笑み、ビフォアも喜びの表情をしていたのだ。

 

 そして、破壊されたロボを別のロボへと回収させ、ビフォアとマルクは下水道の奥へと戻っていくのだった。

 

 

 




いまさらですが、大友の元ネタはロボコップ3のアイツです
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