理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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六十二話 千雨と魔法

 超とエリックはまほら武道会が終わると、即座にアジトへと戻った。

そして今回流出した映像の検証と、ビフォアが雇ったと思われる敵の分析を開始していた。

 

 そう、あのビフォアが雇った可能性のある、坂越上人のことだ。

 

 

「あの男はやかいネ……」

 

「ああ、厄介だ。私もあれの力に触れてよくわかったよ」

 

 

 上人の能力(とくてん)は超能力。

つまり触れずして物体を操る力である。

さらにテレポートなども駆使できるようで、戦いとなればかなり厳しい相手だった。

 

 また、その上人と戦った真名は、その厄介さをその身で味わったので、特に厳しい表情をしていた。

 

 

「しかし我々の戦力が不足していると言うのも大きな問題だ」

 

「あの男以外にも仲間が居るとすれば相当危険なことヨ……」

 

 

 そうだ、あの上人以外にも、ビフォアに仲間が居るとすれば、完全に超たちは戦力不足ということになる。

 

 確かに超にはエヴァンジェリンと言う大きな切り札がある。

だがそれを上人に当てても、他の敵が同じぐらいの強さだと考えると、明らかにこちらの不利だと超は考えていたのだ。

 

 さらに、それは重要で大きな問題だった。

あのビフォアを捕まえるには、まず上人を倒さなければならないからだ。

 

 そうエリックと超が話す中、真名はビフォアの目的の感想を述べていた。

 

 

「だが、世界に魔法を知らしめると言うのは、私個人の考えだが悪いこととは思わない」

 

「龍宮サンはそう思うかもしれないネ。だがビフォアのやろうとしていることは、そういうことではないヨ」

 

「それはただの副産物であって、ヤツの仕出かそうとしていることは、ただの侵略なのだよ」

 

 

 真名は立派な魔法使いの従者で、幾多の戦場を歩き回ってきた。

そこで魔法が使えないもどかしさも、多く実感してきたのである。

そういう意味では、魔法を世界にバラすことは、悪いことではないと考えて居るのだ。

 

 しかし、ビフォアのやろうとしている事は、そういう世界平和のためではない。私利私欲のためなのだ。

 

 それはただの副産物、つまりオマケ程度のものでしかない。

それをエリックが、真名へと話していた。

 

 

「わかっているよ……。それに、遠い未来では魔法が表世界でも共通の技術となっているんだろう?」

 

「ああそうだとも。遠い未来の話だがね」

 

「ふ、その話を聞けただけで満足だよ。私は……」

 

 

 だが、真名もそれをわかった上で発言していた。

それに、遠い未来では魔法は世界中に知らされ、普通に使われる技術となっている。

 

 それを真名は聞いたらしく、遠い未来だとしても、そうなるのなら満足だと感じていた。

そこで超は、ビフォア対策をどうするかを悩んで居る様子だった。

 

 

「まあ、とにかくどうするかを考えなければならないネ……」

 

「……そういえば猫山はどこへ行った? 先ほどから姿を見ないが……」

 

 

 また、真名は同じく超に雇われているはずの直一が、この場にいないことを疑問に思ったようだ。

しかし、直一はすでにビフォア監視のため、下水道の奥へと足を運んでいた。

それを超は、真名へと説明したのである。

 

 

「彼はビフォアの監視のために、敵地へと行ったヨ。ただ、危険と判断したら、すぐに戻ってくるように言ってあるネ」

 

「それが妥当だろう。何せあの坂越という男が存在するのだからな」

 

 

 その説明に納得した真名は、腕を組んでうなずいていた。

あの上人は相当危険な存在だ。それ以外にも敵が居るのなら、無理をせずに退却するのは当然だと考えたようだ。

 

 また、超も直一は切り札の一つであり、ここで失う訳には行かないと考えていた。

だから、無理をするなと忠告してあると言ったのだ。

 

 

「しかしだ、このままではどうしようもないぞ、超よ」

 

「完全に後手に回ってしまっているネ。それに、最終的にどうやって世界に魔法をバラすのかもわからないのが大きいヨ」

 

 

 そこでエリックは、頭を悩ませて考えていた。

どう考えてもビフォアを止める手立てがなかなか見つからないのだ。

それだけビフォア自身もそうだが、上人という存在は大きいのである。

 

 さらに超は、この状態が後手に回ってしまっており、起こった現象の対策しか行っていないことに悩んでいたようだ。

 

 超は天才で入念な計画を立てることを得意としている。

だがこうも後手にまわされてしまうと、なかなかうまくいかないようだ。

 

 そして、世界に魔法をバラすのなら、もっと規模が大きな現象が必要だと超は考えていた。

ただ、その方法がまったく検討もつかないのだ。

 

 

「うーむ、待てよ? 確かそういえば、猫山君がこのようなものを置いていったぞ」

 

「それはフロッピーか?」

 

「とりあえず中身を確認してみるネ」

 

 

 そんな悩む超へ、エリックは思い出したことを話し出した。

それは直一が敵地へと侵入する前に、このアジトにおいていったフロッピーディスクのことだった。

 

 その中身をとりあえず確認することにした三人は、早速機械にそれを投入し、中身を拝見したのである。

すると、その中には恐るべきことが、つづられていたのである。

 

 

「こ、これは……」

 

「マサカ……。いや、確かに理論的には出来なくはないガ……」

 

「そうだとすれば、さらに警戒が必要だな……」

 

 

 そう、その中には直一の”原作知識”が書き込まれていた。

それは世界樹の魔力を用いた強制認識魔法や、時間跳躍弾のデータなどであった。

 

 だが、それは本来”超鈴音”が行おうとしたことであり、ビフォアが行おうとしていることではないのだが。

 

 しかし、ビフォアが転生者だというのなら、ある程度似せた方法を取ると直一は考えていたのだ。

だから、自分の原作知識をデータとして記録し、超たちへと見せようと思ったのである。

 

 そして、それを見た超たちは、さらに警戒をする必要があると考えた。

時間跳躍弾を遠距離から使われては、打つ手が無いからである。

また、そうなればネギたちにも被害が及ぶと、超は考えた。

 

 

「とりあえずネギ坊主たちにも、警戒してもらう必要がありそうだネ」

 

 

 そこで超は、とりあえずネギやアスナへ、その攻撃に警戒するよう呼びかけようと思ったのだ。

また、エリックもそのデータから、同じ弾が作れないかを考え始めていた。

 

 もはや戦局は一秒すらも無駄に出来ないほどに、切迫してきたようだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 ネギは3-Aのクラスの人たちと野点を楽しんでいた。

しかし”原作”とは違い、ここのネギと茶々丸はすごく親しいという訳ではない。

 

 ある程度生徒と教師と言う関係では良好ではあるが、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 

 だがネギは日本の文化にある程度興味を示したようで、ネギの元へ集まった生徒たちを呼びかけ、その野点を見学しに行ったのだ。

 

 また茶々丸も自分の生徒なので、どのような活動をしているかも、ネギは興味があったのである。

 

 茶々丸の方も、ビフォア対策の作業ばかりでは大変だろうとまほら武道会が終わった後、自由時間を葉加瀬と超からもらったのある。

そういう訳で、茶々丸は自分の部活である茶道部にて、その催しものの作業を行っていたのだ。

 

 しかしなぜ、茶々丸が茶道部に居るのだろうか。

 

 エヴァンジェリンは中学生をしていない。当然部活動すら行っていないので、当然茶道部には入っていない。

だから茶々丸が茶道部に入る必要性がほとんど無いのだ。

 

 だが、茶々丸はエヴァンジェリンの従者でもある。

つまりエヴァンジェリンが、自分の趣味を茶々丸に教えこみ、自分好みに染めてしまったと言うことだったのだ。

 

 

 そうしてやってきた野点でネギは、なぜか父親のことをクラスの子たちに聞かれたのである。

一体どこでその話が漏れたのかわからなかったネギは、かなり驚き慌てた。

 

 そこでネギは、その質問にある程度ウソを交えて教えたのだ。

するとクラスの子から、応援の声が送られたではないか。

その応援を聞いたネギは嬉しく思い、礼の言葉を述べたのである。

 

 

 しかし、なぜ3-Aのクラスが、それを知ることが出来たのだろうか。

ある程度、試合終盤となって見に来た子もいたのだが、ネギは試合が終わっていて戦っていない。

というか、アスナが超人だったのを知ったぐらいだろう。

まあ、大半はトリックとかドッキリの類だと思って居るようではあるが。

 

 だが、その答えは簡単だった。

何者かがネギのプロフィールを、インターネット上に載せたのである。

それを武道会の試合映像とともに見たクラスの子たちが、そのことを知ったという訳である。

 

 しかし、それを載せたのはビフォアという男ではないようだ。

なぜならビフォアに、そのようなことをするメリットがないからだ。

 

 では、一体誰なのだろうか。

それはまだ、誰にもわからないのであった。

 

 

 そんな時、追って来たマスコミから、ネギは逃げることになってしまった。

しかしまあ、そのネギを追う理由が子供先生というものが大きいようだ。

何せまほら武道会では、すぐに敗退してしまったからである。

 

 そこで、なぜか一緒に逃げるものがいた。

それはあの、千雨だったのである。

 

 

 千雨はネギに聞きたいことがあったので、ネギについていった形となったのだ。

本来なら最も派手にバトっていたアスナに聞きたかったが、今はいないので仕方なく、ネギで我慢しようと思ったようである。

 

 だがネギは、千雨がどんな用でついてきているかわからなかった。

それでも、何か話がしたいようか感じなのはわかったようだ。

 

 そういうことで、ネギと千雨はとりあえず、寛げる場所を探していた。

そしてとりあえず、屋上喫茶へと足を運んだのだ。

 

 

「あの、ネギ先生。質問があるのですが」

 

「長谷川さん? 一体なんでしょうか?」

 

 

 千雨は魔法使いが居るかもしれないと、あの大会を見て考えていた。

そして、ネギもなにやら不思議な力を使っているのを見てしまったのだ。

そこで千雨は、ネギへとそのことを質問したのである。

 

 

「私もあの大会を見物していたのですが、なにやら不思議な力を使ってましたよね」

 

「え!? そ、そうでしたっけ……!?」

 

 

 また、その質問を聞いたネギは、手を振り回しながら驚いていた。

しかし、とぼけるように覚えがないと、千雨へと発言したのだ。

 

 だが、千雨はそんなネギへ追い討ちをかけるように、ノートパソコンの画面をネギへと見せたのだ。

 

 

「それに、この映像と掲示板に書き込まれた魔法使いと言う単語の数々……」

 

「うわ!? どうして大会の様子が!?」

 

 

 そこでネギが見たのは、まほら武道会での試合の様子だった。

そう、インターネット上にアップされた、試合映像だったのである。

 

 さらに、掲示板に書き込まれた魔法使いと言う単語。それも一つや二つではなく、大量にそれが書き込まれていたのだ。

それを見たネギは、さらに慌てだしていた。

 

 

「誰かが故意に流したのでしょう。で、本題に入りますよ?」

 

「は、はい」

 

 

 千雨はこの映像を誰が流したかはわからないので、そこはどうでもよいと切り捨てたようだ。

 

 そんな慌てるネギを千雨は、冷静な態度を崩さずじっと見ていた。

それはまるで何かを探るような、そんな視線であった。

 

 そして、千雨は思い切り踏み込んだ質問を始めたのである。

 

 

「……御伽噺だと笑われてしまうかもしれませんが、ネギ先生は魔法使いですか?」

 

「え?」

 

 

 その質問は、ダイレクトなものであった。

とてもシンプルなものだった。他の人間が聞けばバカだと思われるような、そんな質問だったのだ。

 

 そう、それはネギが魔法使いかどうかというものだったのである。

 

 そこでネギが、バッカじゃねーのー!? と笑って済ませば、千雨も現実的に考えてくれただろう。

しかし、ネギはそこで完全に停止してしまったのだ。

 

 まるで、自分が魔法使いでーすと、言っているような、そんな態度だったのだ。

 

 

「違いますか?」

 

「え、えええええ!?」

 

「……その態度でわかりました。ネギ先生は魔法使いなんですね?」

 

 

 そこで固まったネギへ、千雨はさらに追撃をしたのだ。

するとネギはテンパってしまい、わけがわからなくなってしまったようだ。

 

 その態度で、あーやっぱり、と千雨は思い、魔法使いだと確信してしまったのである。

 

 

「ち、ち、違いますよ!? そ、その……」

 

「いやもう、態度でバレバレだ……」

 

 

 そこでようやくネギは、違うという言葉を口に出来たようだ。

しかし、だがしかし、すでに遅い、遅すぎる。

 

 千雨は完全に悟ってしまい、ネギが魔法使いだと確証を得てしまったのだ。

そしてバレバレだと千雨が言うと、ネギはバレたらオコジョにされることを、千雨へと話してしまったのである。

 

 

「そ、そんな!? 僕が魔法使いだってバレると、オコジョにされてしまうんです!!」

 

「頭がパーにされるとか、そんなルールが魔法使いにもあんのか……」

 

 

 そのオコジョにされる話を聞いた千雨は、魔法使いも大変なんだなと思ったようだ。

そこでネギは、今の言葉が失言だったと思ったらしく、さらに慌てて涙目となっていた。

 

 そんなところへ、一人の少女がやってきた。それは金髪で白衣の少女だった。

 

 

「おやおやネギ少年。その娘に魔法使いとバレてしまった訳かな?」

 

「あ、エヴァンジェリンさん……!?」

 

 

 なんとそこに現れたのはエヴァンジェリンだった。

エヴァンジェリンはネギが千雨に魔法バレしたのを見て、ネギたちへと話しかけてきたようだ。

 

 そしてエヴァンジェリンは、その二人が座り席の余った椅子に座り、千雨の方を興味津々に眺めていた。

そこで千雨は、話の流れからこの金髪少女も魔法使いだと考えたようだ。

 

 また、千雨はこのエヴァンジェリンから、ただならぬ雰囲気を感じ取ったようである。

何か見た目と年齢があってない、そんな不思議な感覚を受けたのだ。

 

 だからなのか、千雨は少しエヴァンジェリンに対して恐縮してしまったようである。

 

 

「あ、あなたも魔法使いなので?」

 

「フフフ、そう見えるか? あと、普段どおりに話してもらって結構。堅苦しいのは苦手なものでな」

 

 

 そこで千雨はエヴァンジェリンにも、魔法使いなのかと質問した。

しかし、エヴァンジェリンはそこで少しはぐらかす言い方をしたのである。

 

 また、千雨が無理をして敬語を使っていることを悟ったエヴァンジェリンは、普段通りの態度で接してくれと頼んでいた。

 

 それを聞いた千雨は、早速元の口調へと戻し、再びエヴァンジェリンへと質問したのである。

まあ、エヴァンジェリンは見た目が少女なので、千雨はそんなエヴァンジェリンに、堅苦しい敬語を使いたくないというのもあったのだが。

 

 

「ならお言葉に甘えて。つまり、魔法使いだってことでいいって訳だな?」

 

「そうだよ。そしてそこのネギ少年も、また魔法使いってわけさ」

 

「え、エヴァンジェリンさん!?」

 

 

 だが、エヴァンジェリンが敬語を使うなと言われたことで、千雨は普段の態度へと戻っていた。

それは単純にエヴァンジェリンのかもし出す雰囲気に慣れただけなのだろう。

さらに言えば、少女の姿のエヴァンジェリンが、どんな存在であれ、悪いやつには見えなかったからである。

 

 また、その二度目の質問に、エヴァンジェリンは正直に答えた。

自分が魔法使いであると、そう千雨に話したのだ。

 

 それを聞いたネギは、かなり驚いていた。

魔法使いとは隠蔽するもので、自分から名乗ることなどしないからである。

 

 そんなネギを見たエヴァンジェリンは、バレたものは仕方が無いと、ネギへ言っていた。

 

 

「ネギ少年、どうせバレてしまったんだ。この際話してしまってもいいだろう?」

 

「で、ですが魔法使いのことを知った一般人は記憶を消さないと……」

 

「何!? そんなことまでされんのか!?」

 

 

 また、ネギは魔法を知った一般人の処置をエヴァンジェリンへと持ちかけていた。

それを聞いた千雨は、流石に驚き叫び声をあげていた。

 

 なにせ記憶を消されるのだ、当然の驚きだった。

しかし、その千雨の叫びをスルーし、エヴァンジェリンはその程度なら自分でやると、そうネギへと答えていた。

 

 

「その程度なら私がするさ」

 

「そ、そうですか……」

 

「おい!今の話本当なのかよ!!?」

 

 

 そのエヴァンジェリンの答えを聞いたネギは、少し安心したようだ。

だが、逆にさらに千雨は不安になっていた。

 

 まさか記憶を消されるなんて、思っても見なかったからだ。

そして、その真偽を確かめるべく、叫びながらエヴァンジェリンへと問いただしていた。

 

 

「まーな。それよりも、どうして魔法使いが居るとわかった?」

 

「チッ、質問の答えにでは記憶を消そうか消すまいか決める気かよ」

 

「なんだ、なかなか察しがいいじゃないか。で、どうなんだ?」

 

 

 しかしエヴァンジェリンは、質問に適当にYESと答えた。

エヴァンジェリンは、そんなことよりも、どうして千雨が魔法使いのことを知ったのかが気になったからだ。

 

 また、千雨も今のエヴァンジェリンの態度と質問に、その答えで自分の運命を決める気かとエヴァンジェリンへとグチをこぼした。

 

 それを聞いたエヴァンジェリンは、愉快な笑みを浮かべ、その千雨の察しのよさに、関心していたのだ。

 

 

「ネギ選手はどこだ!?」

 

「確かこっちの方に来たとの情報があったのだが……」

 

「うわ! あの人たちは……!」

 

 

 と、そこへマスコミがネギを探しにやってきたようだ。

それを見たネギは、見つかったらヤバイと思い、どうしようかと慌てていた。

 

 

「おい、ネギ先生はあいつらに追われてんだ! どうすんだ!?」

 

「気にするな。ヤツらじゃ私たちに気がつけないさ」

 

 

 千雨もまた、追われているのを知っていたので、エヴァンジェリンにどうするかを聞いたのである。

 

 しかし、エヴァンジェリンは余裕の態度でのんびり構えていた。

別に気にする必要などないと、優雅な姿勢で座ったまま微動だにしなかった。

 

 

「まさかエヴァンジェリンさん、強力な認識阻害を……!?」

 

「……それも魔法ってやつか」

 

 

 エヴァンジェリンはすでに認識阻害を使っていた。

そしてマスコミはネギたちに気づかず、その場を立ち去って行ったのだ。

 

 ネギはエヴァンジェリンの用意周到さに驚きながらも、これで一安心だと考えていた。

また、それを見た千雨は、これも魔法かと改めて思い知らされていたのだ。

 

 

「そーいうことだ。さて、質問に答えてもらおうか?」

 

「……そうだな、この映像と掲示板の魔法使いと言う単語もそうだが。あのバカどもが原因だな……」

 

「バカども?」

 

 

 ようやく落ち着けるようになったところで、エヴァンジェリンは先ほどの質問の答えを千雨に聞いていた。

そこで千雨は、その理由を語り始めた。

 

 だが、最も原因となった部分を、少しあきれた表情で話していたのだ。

と言うのも、その最大の原因はあのバカ二人。つまり、法とカズヤだったのである。

 

 

「あー、私が勝手に喋っていいものか……」

 

「何、私はこう見えても口は堅い方だ」

 

「まあ、あんたも魔法使いみたいだし、いいか……」

 

 

 だが、バカ二人の能力は魔法とは異なるものだ。

それを知っている千雨は、それを勝手に話してよいものかと考えた。

 

 そこでエヴァンジェリンは、他言無用とすると約束していた。

千雨はヴァンジェリンの今の言葉を聞いた後、ネギの方へと視線をやる。

するとネギも、そこでうなずいたのである。

 

 それを見た千雨は、二人が魔法使いなら、話してもいいかと考え、態度を崩して話し出したのだ。

 

 

「バカどもって言うのはだな。私の小学生の頃からの知り合いの二人で、不思議な力を持ってやがんだ」

 

「不思議な力? 魔法ではないんですか?」

 

 

 千雨はあの二人の能力を、不思議な力と言葉にした。

それを聞いたネギは、それが魔法とは違うのかと千雨へと質問したのだ。

 

 そこで千雨は、ネギも大会にいたので見ただろうと、ネギへとそれを教えた。

そう、まほら武道会第五試合のバカ同士の喧嘩の様だ。

 

 

「ネギ先生もあの大会に居たなら見てたのでは? 第五試合のバカ二人の喧嘩を……」

 

「あ、あの二人ですか?」

 

「そう。あのバカどもが不思議な力があるもんだから、魔法使いも居るかもなって思った訳ですよ……」

 

 

 その答えにネギは少し納得したようだった。

あの力は確かに魔法ではなかったからだ。しかし、魔法とは違う謎の現象ということで、ネギはどんな力なのかを考えて始めたようである。

 

 また、エヴァンジェリンは二人のことを知っていたので、千雨がその二人の知り合いだったことに少しだけ驚いていた。

 

 

「ほー、あの二人の知り合いだったのか。それじゃ魔法使いが居ると思っても不思議じゃないな」

 

「何だよ。あんたもバカどもの知り合いだったのかよ」

 

「知っているだけで、あまり関わったことはないがな」

 

 

 エヴァンジェリンは法とカズヤを知っている。

一応夜の警備で見かけることがあったからだ。

 

 だが、別に親しい訳ではない。

はっきり言って二人は別に魔法を使う訳でもないので、そういうものを教えることもないからである。

 

 そしてエヴァンジェリンが、二人をある程度知っていることに、千雨はため息をついていた。

なぜならはじめから二人の能力を、エヴァンジェリンが知っていたからである。

 

 

「はあ。なんだ、取り越し苦労だったっつー訳か……」

 

「で、その二人から不思議な力について聞いたことはあるか?」

 

 

 そこでエヴァンジェリンは、千雨に二人の能力について質問をした。

ある程度あの二人と親しい千雨なら、何か聞いているかもしれないと考えたからだ。

 

 だが、千雨も能力の名前や簡単な説明しか受けていなかったので、さほど答えられなかったようだ。

 

 

「最初に見た時、それを質問したよ。んで、精神感応性物質変換能力、簡単に言えばアルター能力とか言ってたな」

 

「アレはそういう名前だったのか」

 

 

 エヴァンジェリンは千雨の話を聞いて、ようやくその能力の名称を知ったらしい。

まあ、名前などどうでもよいのだが、それでも新たな知識として、取り込んでいくのだ。

 

 また、ネギも一体それはどんな力なのかと、千雨に聞いていた。

魔法じゃない力というのに、少し興味を示したからだ。

 

 

「それって一体どういうものなんです?」

 

「あー、何か周りの物質を別のものにするとか言ってました……。詳しいことは私も教えてもらってないもので……」

 

 

 千雨は法から聞いたことを、さらに砕いてネギへと説明した。

実際は物質を一度粒子へと変換し、自らの意思により別の物体へと変質させる力なのだが。

 

 それを聞いたネギは、その性質から魔法というよりも錬金術の類なのかと思考をくめぐらせていた。

 

 

「魔法よりも錬金術とかそう言うものに近いんでしょうか……」

 

「見てのとおりって訳だろうな」

 

 

 また、エヴァンジェリンも見たままの能力だと考えていた。

というのもエヴァンジェリン自身、すでにアルター能力の特性をある程度理解していたからだ。

 

 一度粒子へと物質を砕き、再び自らの武器へと変化させる、そういう能力なのだとわかっていたのだ。

 

 そこでエヴァンジェリンは千雨の名前を呼ぼうと思った。

しかし、まだ自己紹介すらせずに話していたことを思い出し、とりあえず名乗ったのである。

 

 

「おっと、そういえば自己紹介をしていなかったな。私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと言うものさ」

 

「お、そうだったな。私は長谷川千雨だ」

 

 

 それに吊られて千雨もエヴァンジェリンへと名乗り上げた。

そしてエヴァンジェリンは、そこで千雨に二つの選択を迫ったのである。

 

 

「ふむ、長谷川千雨。貴様には二つほど選択がある」

 

「選択?」

 

 

 千雨はこのエヴァンジェリンの選択に、疑問を感じたようだ。

というのも、どういう意味での選択なのか、わからなかったのである。

まあ、ある程度予想はつくのだが、それは予想の範囲に過ぎない。

 

 そう考えて難しい顔をする千雨に、エヴァンジェリンは一般人の千雨にもわかるように、どういうことなのかを説明し始めた。

 

 

「魔法使いを、ひいては魔法を知ることは、裏を知ることと同じとも言えるのでな」

 

「裏? 何か不穏な響きだな……」

 

「魔法使いの日常は、ある程度命がかかったりもする部分があるからな。そう言われていることもある」

 

 

 魔法を知ることは、現実から非現実へと移動すること。

千雨はその程度の認識であった。だが、そんな単純なことではないのだ。

 

 魔法とは未知なる力であるが、同時に危険を伴うものである。

表というのは一般人のことであり、裏というのは魔法使いのことだ。

 

 それは魔法使いが隠れて行動しているという意味も含まれるのだろう。しかし、それだけではない。

魔法使いは魔法で戦うことだってある。

つまり、そういう意味では命の危険があるということなのだ。

 

 

「命? 命がけだと!? 本当なのかネギ先生!?」

 

「は、はい……。確かに危険なことも無くは無いです……」

 

 

 その話を聞いた千雨は、驚愕していた。

そして目を見開き、ネギへと本当かどうかを問いただしていた。

 

 そこでネギも、それは本当のことだと言うしかなかった。

なぜならネギでさえ、何度も命の危機を乗り越えてきたからである。

 

 それを聞いた千雨は、心のそこから叫んでいた。

まさかこんな馬鹿げたことになるとは、思っても見なかったからだ。

 

 

「ウソだろ!? 冗談じゃねーぞ!!」

 

「そういうことだ。だから今聞いたことや魔法使いのことを忘れて、日常に戻らせてやるよ」

 

 

 だからこそ、そういったことを考えずに済むように、記憶を消して元に戻すとエヴァンジェリンは提案したのだ。

 

 だが、やはり記憶を消すというのに、千雨は引っかかりを覚えてしかたがない。

実際記憶を消されるのは、あまりよい気分ではないだろう。

だから、記憶を消すことに、どうしても消極的な態度を見せてしまうのだ。

 

 

「……つまり、記憶を消すってことか」

 

「そうだ。そしてもう一つは、知った上であえて普通に過ごすと言うのも手だ」

 

「なんだそりゃ!? さっきとどう違うんだよ!?」

 

 

 そんな千雨の態度を見て、エヴァンジェリンは二つ目の選択を千雨に提示した。

それは魔法を知った上で、普通に暮らすというものだった。

 

 それを聞いた千雨は、またしても大声を出してしまっていた。

それは認識阻害が無ければ、注目の的になるほどの声であった。

 

 まあ、どちらも普通に暮らすというものだったので、一つ目の選択とどう違うのかわからなかったようだ。

 

 そこでエヴァンジェリンは、簡単にその違いを千雨へと説明したのだ。

 

 

「全然違うさ。不思議な現象に出会った時、魔法だとわかっていれば、逃げようと思えるだろう?」

 

「どういうことだ?」

 

「火が危険だとわかれば飛び込まない。そういうことだ」

 

「なるほど、確かにそうかもしれねーな」

 

 

 火は熱い。それを知っていれば触ることは無い。

だが、知らないで触れば、当然やけどをする。つまり、知っていればその危険に触らずに、逃げることも出来るとエヴァンジェリンは説明したのだ。

 

 それを聞いた千雨も、今の説明がわかりやすかったようで、腕を組みながらうんうんとうなずき納得していた。

 

 しかし、ネギはやはり千雨が魔法を知っているのは危険だと、そうエヴァンジェリンへと切り出した。

 

 

「でも、一般人の長谷川さんが魔法を知っているのは、やはり危険なのでは?」

 

「確かにそうだ。しかし、この長谷川千雨はあの二人の知り合いだからな。知っていても損はなかろう」

 

 

 そのネギの言葉に、エヴァンジェリンはそう答えた。

あの法とカズヤの知り合いなのだから、千雨も魔法ぐらい知っていても悪くはないと、エヴァンジェリンはそう考えていた。

 

 またそこで千雨は、訳がわからなくなっていた。

なぜあの二人と魔法使いが結びつくのか、わからないからだ。

 

 

「ん? あのバカどもと魔法使いと、どう関係があんだよ?」

 

「あの二人は魔法使いと、この学園都市の警備をしているからな。つながりがあるんだよ」

 

 

 そこでエヴァンジェリンは、あの二人がこの麻帆良の警備をしていることを、千雨に話したのだ。

さらに二人は魔法使いのことを知っており、その魔法使いと共同で警備をしていることを説明したのである。

 

 そのことを二人から聞かされていなかった千雨は、流石に驚きすぎて椅子からこけそうになっていた。

 

 

「は? 初耳だぞそれ!?」

 

「当たり前だろう?そんなこと、一般人に教える訳が無いんだからな」

 

「確かにそうだが……」

 

 

 しかし、当然そんなことを話せる訳が無いと、エヴァンジェリンは千雨に言った。

そりゃ魔法使いと組んで街を守ってますなんて言われても、頭がどうかしちまってるとしか思わないだろう。

 

 そういう意味でなくとも、普通に考えれば一般人代表の千雨に、二人がそのことを言う訳がないのだ。

そのエヴァンジェリンの言葉で、千雨は確かにと考えた。

だが、あの二人のことをあまり知らなかったんだなとも、考えたようだ。

 

 

「つまりエヴァンジェリンさんは、長谷川さんがあの二人の知り合いだからこそ、魔法を知っておくべきだと思っているんですね?」

 

「そうだ。まあ、魔法が使いたいのであれば、私が直接教えてやってもいいぞ?」

 

 

 そこでネギは、エヴァンジェリンの意図を察したようで、それを口に出していた。

あの法とカズヤの知り合いで、何かあるかもしれない。

だから魔法をあえて知っておけば、後々何か役に立つかもしれないと、ネギはそう考えたようだ。

 

 だが、それは正解であり間違えでもある。

エヴァンジェリンはあの二人が転生者なのだろうと推測していた。

そして、転生者という存在は、他の転生者と戦う可能性があると考えている。

 

 つまり、あの二人と一緒にいれば、とばっちりを食う可能性が高いと、エヴァンジェリンは考えていたのだ。

 

 さらに言えば、千雨は転生者に狙われやすい存在だとも思っていた。

”原作キャラ”ということをある程度アルカディアの皇帝から教えられていたエヴァンジェリンは、この千雨がそういった存在であることもわかっていたのだ。

 

 まあ、自分もそのせいで、色々散々な目にあったので、その危険性も十分理解しているのである。

 

 そこであの法とカズヤがついているのだ。

何かあっても不思議ではないだろう。

 

 しかし、あの法とカズヤという転生者は、あまり裏表の無い人間のようだった。

だからこそ、千雨もある程度心を許す存在なのだ。

 

 そういう意味では、エヴァンジェリンはこの千雨が運のいい人間だと思っていたりもするのである。

また、エヴァンジェリンはそのためか、千雨に魔法を教えようと思い、それを千雨に伝えていた。

 

 だが、千雨は普通の生活こそが全てだと考えているので、それだけはNOと断ったのである。

 

 

「そういうのはゴメンだね。私は普通が好きなんだよ」

 

「なんだ、面白くない。知りたいのならきっちり教えてやるんだがな」

 

 

 その千雨の回答に面白くないと言うエヴァンジェリン。

というのも、誰もがトリックだなんだ言っていたあの大会で、魔法の存在を提示した千雨を、エヴァンジェリンは高く買っていたのだ。

 

 あの法とカズヤの能力を知った上でのことなのだろうが、それでも面白いヤツだと思ったのである。

 

 と、そこで千雨は命の危険ということを思い出し、ネギへそれを聞いていた。

ネギ自身も、そういう危険と隣りあわせなのか、少し気になったからだ。

 

 

「……つーか、思ったんですがネギ先生も、命の危険に晒されてるんですか?」

 

「……本当です。だから長谷川さんには、あまり魔法を知ってほしくないんです」

 

「ウソだろ!? お前みたいなガキが……!? ……それが本当だとしたら、アブネーってことじゃねーか……」

 

 

 ネギも6年前、悪魔に村を襲われた。

そしてこの麻帆良でも、その6年前襲った悪魔と、再び戦ったのだ。

 

 そういうことがあったので、ネギ自身もかなり危険な目にあっていると言えよう。

だからこそ、ネギは千雨に魔法にかかわってほしくないと思っているのだ。

 

 また、そのネギの言葉を聞いた千雨は、本気で驚き戸惑っていた。

こんな小さいガキでさえ、命の危険があると聞かされたのだ。

 

 それは相当危ないものなのではないかと、千雨はそう思い始め顔を青くしていた。

さらに、要らぬ質問などネギにしなければよかったと、いまさらながらに後悔を始めていた。

 

 

「そうさ、魔法はとてもすばらしいものだ。だが裏を返せば危険なものなんだよ」

 

「はい、癒す魔法もあれば、人を怪我させる魔法もありますから……」

 

「マジか……」

 

 

 そこでエヴァンジェリンが言ったのは、魔法の本質である。

魔法はよいことに使えば人を喜ばせることが出来る。しかし、裏を返して悪いことに使えば、たちまち他者を危険に貶める。

まあ、ようは使う人間しだいということなのではあるが。

 

 そこでネギも、そういった魔法があることを、千雨に話したのだ。

 

 その二人の言葉を聞いた千雨は、完全に愕然としていた。

自分がとんでもないものに、ひざぐらいまで浸かってしまったと考えているのだ。

 

 

「脅しすぎたが魔法は決して悪いものではないよ」

 

「だが、私は普通がいいんだよ……。魔法なんて覚えたら普通どころじゃねーだろ!?」

 

「確かにそうだな。だがあの二人の能力を知りながらも、知人として接している時点で”普通”ではない気もしなくはないがな」

 

 

 そう考えて青くしている千雨だったが、やはり魔法は覚えたくなかった。

それを覚えれば普通ではなくなると考えているからだ。

 

 だがそこへエヴァンジェリンは、カズヤや法の力を知っていて、それでも知り合いとして接している時点で、普通とは少し違うと千雨に話したのだ。

 

 

「な、何でそうなるんだよ……!?」

 

「本当に普通が好きで普通でないものが嫌いなら、あの二人なんかとはとっくに縁を切っているはずだろう?」

 

 

 千雨はエヴァンジェリンの話を聞いて、あの二人と関わっていることが、なぜ普通じゃないのかと、少し驚いた様子でたずねていた。

そんな千雨にエヴァンジェリンは、その理由を千雨へと語ったのである。

 

 

「そうは言ってもよ。あいつらは悪いやつじゃねーし。別に能力以外はバカだけど普通だ……普通……?」

 

「なんだ、気がついたか。何を根拠に普通とするかは、人それぞれさ。そして今貴様はあの二人を普通と言った。それは能力や力ではなく、人間性のことを指しただろう? 違うか?」

 

「うっ、そ、そうだよ……。アイツらはバカだけど私の前じゃ基本的に普通だった……」

 

 

 法もカズヤも基本的に千雨の前では普通の人間だった。

まあ法はルールバカで、校内の規則を違反するものには容赦しないし、カズヤは喧嘩バカで、毎度毎度飽きずに喧嘩ばかりしている。

 

 だが、それを除けば見ればただの学生。

能力を使わなければただの人でしかなかったのである。

 

 

「そういうことだ。魔法を覚えようが覚えまいが、普通なんだよ」

 

「でもやはり魔法なんか普通だとは思えねーよ……」

 

 

 しかしやはり、千雨は魔法が普通ではないと思っている。

そんなものを覚えてしまえば、自分が普通でいられないと、本気で考えているからだ。

 

 そう叫ぶ千雨に、エヴァンジェリンは別のことを話し出した。

それはあのカズヤと法のことだった。

 

 

「ならあの二人もおかしいかもな? 何せ変な力を持ってるんだからな」

 

「そこで何でアイツらが出て来んだよ!?」

 

 

 だが千雨はどうしてあの二人が引き合いに出るのかまったくわからなかった。

あの二人は確かに能力だけを見れば普通じゃないが、人間としてはまだまだ普通の領域だと思っていたからだ。

 

 まあ、カズヤの喧嘩バカっぷりを普通だと考えられる千雨は、やはり随分と毒されているようではあるが。

 

 そこでエヴァンジェリンは、小さな笑みをこぼしながらその理由を千雨へと語った。

 

 

「何でだと? あの二人は魔法使いから見ても”普通じゃない”異質な存在だからだよ」

 

「ま、魔法使いから見ても”普通じゃない”だと……!?」

 

「そーだよ。あの二人は魔法使いじゃない。だがそれと同等かそれ以上の力を持っている。これが異常では無くてなんだと言うんだ?」

 

「……そうですね、魔力すら使わずにあのようなことが出来るのは、魔法使いから見ても驚くべきことです……」

 

 

 あのアルター能力と言うものは、魔法使いから見ても異質であった。

明らかに魔力を使わずに、そこにある物質を変質させ、別のものへと変えてしまう能力は、魔法使いにとっても恐ろしいものなのだ。

 

 だが、それで特に彼らは魔法使いともめることは無く、むしろ関係は良好な方ではあるのだが。

 

 さらにネギもエヴァンジェリンの話に便乗し、あの能力はとてつもないものだと千雨に言ったのだ。

 

 

「そういうことだ。魔法使いにも”普通”の基準があるんだよ。だから貴様が魔法を覚えたからと言って、突然”異常”になることはないのさ。……まあ、貴様が魔法と言う力に酔いしれなければだが……」

 

「そ、そうだったのか……」

 

 

 そのエヴァンジェリンの話を聞いて、千雨はとてもショックを受けていた。

あの二人は魔法使いからも普通ではないと思われていたのだから。

 

 ただし、エヴァンジェリンも異常にはならないと言ったものの、話の最後に魔法におぼれなければと付け加えていた。

とは言ったものの、自分が千雨に魔法を教えるならば、そのようなことにはさせないと言う自信を、エヴァンジェリンは持っていた。

 

 そしてその話で、千雨は魔法を覚えるか否かを考え始めていた。

されど、まだ一歩踏み出せずに居た。それを覚えたときのメリットとデメリットがわからないからだ。

 

 

「……なあ、魔法を覚えたら、どうなっちまうんだ? 命に関わるんだろ?」

 

「別にすぐさま命を狙われるとかそんな話はないさ。ただ魔法使いだとバレたら面倒に巻き込まれる可能性があるというだけだよ」

 

 

 千雨はエヴァンジェリンに、魔法を覚えたら危険に会うのかと聞いてみた。

するとエヴァンジェリンは、魔法が使えることがバレると危険はあるかもしれないと答えていた。

 

 それを聞いた千雨は、可能性はゼロではないのだろうと考えていた。

また、千雨のそんな様子を見たエヴァンジェリンは、もう一押しかと考え、魔法を覚えるメリットを語り始めたのだ。

 

 

「何、そういう場面に出くわした時、魔法を使えばいいんだよ。別に戦えなどとは言わん。逃げるために魔法を使えばいいし、魔法で防御すればいい。まあ、そういう目に遭わないのが一番だがな」

 

「……つまりさっきも聞いたが、中途半端に魔法を知ってるよりも、魔法を覚えた方が安全ってことか?」

 

 

 魔法を覚えた時のメリットを聞いた千雨は、先ほどの魔法を知っているという状況の話を思い出していた。

それは何かあった時、魔法だとわかれば逃げれるというものだった。

また、そこで魔法を覚えていれば、より確実に逃げれるのではないかと考えたのだ。

 

 

「そういうことだよ。まあ、私が貴様に魔法を教えるなら、治癒と逃亡の魔法だろうがな」

 

「攻撃とかは要らないっつーのか?」

 

 

 そこでエヴァンジェリンは、千雨に対して覚えさせたい魔法を話した。

それはやはり、治癒と逃亡であった。

 

 また、千雨はそのチョイスを聞いて、攻撃魔法は必要ないのかと聞いていた。

 

 

「いきなり拳銃を握らされて、撃てと言われて撃てるか?」

 

「……無理だ」

 

「そうだろう? だから攻撃魔法など教えんよ。私が得意な治癒と、どんな時でも逃げれる魔法さえ覚えていれば、攻撃など不要というものだ。……最悪私に頼めば解決してやるさ」

 

 

 その千雨の質問に、エヴァンジェリンはわかりやすく説明した。

すると千雨はすぐさま納得した上に、理解してしまったので青かった顔をさらに青くしていた。

 

 だからこそ、攻撃魔法は教えないとエヴァンジェリンは強く言葉にしていた。

それに自分のところへ逃げてくれば、危険から守ってやるとエヴァンジェリンは千雨に話したのである。

 

 

「まあ、強制はしないし、今決められないなら連絡先を教えておくが、どうする?」

 

「う……、ちょ、ちょっと待ってくれ……」

 

 

 千雨は今のエヴァンジェリンとの会話で、少しだけ心が揺らいだようである。

だが、やはり千雨は踏ん切りがつかないようで、少し考える時間がほしいと、エヴァンジェリンへと言っていた。

 

 そして千雨は腕を組み、顔を下げて悩み始めたのだ。

また、微妙ながらに震え、本気でどうするかを迷っている様子だった。

 

 そんな千雨を見たネギは、エヴァンジェリンへ話だした。千雨に本当に魔法を教えるのかどうか、それを聞いていたのだ。

 

 

「あ、あの、エヴァンジェリンさん。本当に長谷川さんに魔法を教えようと思ってるんですか?」

 

「ああ、本気だよ。こういう面白い逸材は、育て甲斐がありそうだしな」

 

 

 だが、やはりエヴァンジェリンは本気で千雨に魔法を教えたいと思っていた。

ここまで話を聞いて、なお普通でいようとするこの千雨を、とても面白い娘だと思っているのだ。

 

 だからこそ、こういう娘を育てて、魔法使いにしてやりたいとも考えているのである。

 

 それに、エヴァンジェリンが魔法を教えるといっても、何も攻撃魔法を教えようと言う訳でもなかった。

自分が知っているありとあらゆる治癒の魔法や逃亡・防御などの魔法を、徹底的に叩き込もうと考えていたのである。

まあ、治癒魔法さえ覚えていれば、あのバカな二人が喧嘩で負傷しても、治療してやれるだろうと言う、おせっかいな考えもなくはないようだが。

 

 また、そんな風に話すエヴァンジェリンを、ネギは心配そうに見ていた。

やはり一般人が魔法使いになることを、あまり快く思っていないのだ。

そして、魔法をバラしてしまったのが、間接的とはいえ自分なのだから、その罪の意識もあるのだ。

 

 

「ネギ少年が心配することはないさ。教えるのであれば、魔法使いとしての規則や、魔法の危険性もしっかり教えるつもりだ」

 

「で、ですが……」

 

「この件については私が責任を持つ。ネギ少年は気にする必要はないさ」

 

 

 そう心配するネギに、エヴァンジェリンは心配ないと普段と変わらぬトーンで言葉にしていた。

そして、全ての責任を自分が取ると言い出したのだ。

 

 そこで、エヴァンジェリンは教えるなら学園長にも話して、しっかりと許可を得るつもりでもあった。

それに加え、この千雨を中途半端な状態で放置して、何かあっても困ると考えていたのである。

 

 

「何、教えるなら教えるで、学園長のジジイに話をつけるつもりだ。それにあの二人の知り合いなら、厄介ごとに巻き込まれる可能性が大きいだろう」

 

「そうですか……」

 

 

 そのエヴァンジェリンの話を聞いたネギは、不安げな表情をしながら、ある程度納得はしたようだった。

しかし、やはり自分がバラしてしまったのを、他人に助けてもらうことを、少し気分悪く感じていたのである。

 

 そこへエヴァンジェリンは千雨へと話しかけた。

ある程度時間を与えたので、答えが出たかを聞いていたのだ。

 

 

「で、答えは決まったか? 長谷川千雨」

 

「あ、ああ……。とりあえず少し時間がほしい。今すぐに決めるのは無理だ」

 

 

 しかしやはり千雨は、答えが見つからなかったようだ。

だからもう少し時間がほしいとエヴァンジェリンに頼んでいた。

 

 そしてエヴァンジェリンも、そうだろうと予想していた。

この千雨は普通で居たいと思う気持ちと、これから何が起こるかわからない不安が入り混じっているのだ。

すぐに答えなど出るはずがないと、そう考えていたのである。

 

 だからエヴァンジェリンは、連絡先を千雨に教えておこうと思ったのである。

 

 

「だろうな。なら連絡先を教えておこう」

 

「頼む……」

 

 

 そのエヴァンジェリンの言葉に、申し訳なさそうにする千雨。

だが、エヴァンジェリンはそのことを気にはしていなかった。

 

 そこでエヴァンジェリンは、すでに用意しておいた連絡先が記載された紙を、千雨へと渡したのだ。

 

 

「これが私の連絡先だ。まあ、貴様のクラスには茶々丸がいるだろう? あいつに話を通してくれてもかまわん」

 

「あのロボに?」

 

「そうだ。あいつは私の従者だからな」

 

 

 また、エヴァンジェリンは別口で従者である茶々丸へと話をつければ、問題ないと千雨に伝えた。

すると千雨はそれを聞いて、あのロボのことかと考えたようだ。

 

 そして、それがエヴァンジェリンの従者だということを千雨に伝えると、頭を抱えてもだえだしていた。

 

 

「何かまた妙な単語が出てきやがった……。まあわかったよ……」

 

「では、良い返事を期待しているよ。ネギ少年も元気でな」

 

「は、はい」

 

 

 まあ、従者なる意味深な単語のことはほっといて、千雨はとりあえずそういう形で今回の話を閉めたようだ。

また、エヴァンジェリンも、よい返事を期待すると言って、千雨へと笑みを見せていた。

実際、本当に魔法を教えてくれと頼んでくるのを、楽しみにしているのである。

 

 そこでネギにも別れの挨拶をして、その喫茶を出ようと、エヴァンジェリンは歩き出していた。

だが、そこでエヴァンジェリンは立ち止まり、もう一度ネギに近づいてきたのだ。

 

 

「ふむ、そうだな。ネギ少年にこれを渡しておこう」

 

「これは?」

 

「ちょっとした認識阻害がかかる指輪さ。それをしていれば、あのような連中に追われることもないだろう」

 

 

 それは認識阻害が自動でかかる指輪だった。

それをネギへと複数渡したのだ。というのもあのマスコミ集団が、またネギを追ってくるかもしれないと、エヴァンジェリンは考えたからだ。

そうなれば麻帆良祭を回るのにも、弊害が生じてしまうだろうと。

 

 そして、それではせっかくの麻帆良祭も楽しめないだろう、それではネギがかわいそうだと思い、それを渡したのだ。

また、それを貰ったネギは、驚きながらも笑って御礼を言っていた。

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

「この指輪は指にはめないと効果が発生しない。あと認識されると効果を失うので、気をつけて使うんだぞ?」

 

「あ、わかりました」

 

 

 エヴァンジェリンはその指輪をネギへと渡すと、指輪の扱いについて説明をした。

この認識阻害の指輪は、指にはめることで効果が発揮されるというものだった。

そして、一度見破られると、その見破った人物には効果を失うというものでもあった。

 

 その説明を聞いたネギは、しっかり理解したようで、はっきりとわかったことをエヴァンジェリンへと伝えていた。

 

 というのも、この指輪はエヴァンジェリンが、転生者や自分のファンから身を隠すために作ったものなのである。

賞金首だ何だ言われてはいるが、魔法世界では名誉教授であり、とても人気者だったのだ。

 

 だから、熱狂的なファンや転生者をだますために、こういうものを複数所持していたりするのである。

 

 

「あと、同じようにあの連中に追われてそうなヤツにも渡してやれ」

 

「はい!」

 

「ではまたな」

 

 

 そして複数渡した意味をネギへ伝え、別れの言葉を述べると、再び席から立ち去っていった。

 

 ネギは元気よく返事をした後、立ち去るエヴァンジェリンの後姿を眺め、改めてよい人だと思っていたのだ。

 

 だが、そこで独り言を愚痴る千雨が、その席でうつぶせになっていたのである。

 

 

「なんかあのバカどものせいで、さらに厄介なことになってきやがった……」

 

 

 いやはやあのバカがここまで厄介だったとは、千雨は思っていなかった。

そこで千雨は、あいつらにとりあえず意見を煽って、今後のことを決めようと考えたのだった。

 

 

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