理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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九十話 ロボ軍団

 麻帆良祭も終わりに近づき、辺りは少しずつ暗くなり、夕日が沈み始めていた。

そんな中、イベント参加者やヒーローユニットの大半が、強制時間跳躍弾の攻撃で消えてしまった。

 

 この状況は非常に不利。この先どうなってしまうか、誰もが不安を感じ始めていた。

 

 

「さあ大変なことになってまいりました!」

 

 

 この絶望的な状況でさえ、元気に実況する和美。

大きな声でハキハキと、この状況を解説していた。

しかし、和美はこの戦いの敗北の意味を教えられているため、内面では若干の焦りを感じてはいるのだが。

 

 

「敵の圧倒的な火力差を前に、世界樹前広場が敵の手に落ちようとしています!」

 

 

 敵の数は未だに減らず、増える一方だ。

逆に戦闘員であるイベント参加者は数を減らす一方だった。

 

 このままでは広場を選挙され、敗北してしまうだろう。

ただ、イベント参加者の敗北とは、賞金などが手に入らないというところが心配であり。特に敗北を気にすることはない。

 

 それでも負けず嫌いの麻帆良の生徒や住人は、敗北など許すはずも無かったのだ。

 

 

「さあどうする、学園防衛魔法騎士団!?」

 

 

 今叫んだことは、自分が一番疑問に感じていることなのだろうと、そう和美は考えた。

和美はこの状況、参加者がどう動くのか気になった。

 

 このままでは敗北は免れない。非常に危険な状況だ。

この状況を打破する一手は、何なのか。誰もが考えることだった。

 

 

「お前ら! 味方が随分減らされたぞ!!」

 

「……おのれ強制時間跳躍弾め!」

 

「わかっていただろうに……」

 

 

 この状況をはっきり理解するものがいた。それはやはり転生者たちだ。

 

 転生者たちは、こうなることをあらかじめ知っている”原作知識”持ちが存在する。

そういった彼らは、強制時間跳躍弾での蹂躙が行われることを知っていたのだ。

 

 とは言え、知っていたからと言って、対処できるとは限らない。

倒せど倒せど減らぬロボ軍団に手間取り、強制時間跳躍弾を防ぐことや、対処することが出来なかったのである。

 

 

「しかし、消えてしまった人はどこへ行ったんだ?」

 

「このままじゃジリ貧だぜ……」

 

「あぁ……。何とかしなきゃならねぇ」

 

 

 そんな中、消えた参加者がどこへ言ったか知らない一般人は、困惑の色を見せていた。

消えてしまってどこへ行ったのかもわからない上に、随分人数を減らされてしまった。

このままではゲームオーバーになってしまうと、焦りを感じていたのである。

 

 

「くそったれー! ならば俺が本気でかたをつけてやる!」

 

「待て、ここでアレを使えば麻帆良が吹っ飛ぶぞ!?」

 

「問題はない、手加減はしてやる! 食らえ!!」

 

 

 ならばこの状況、打破してやろう。

そう豪語する転生者が現れた。この転生者はすさまじい特典を持っているらしく、本気を出せば麻帆良を吹き飛ばすことも出来るらしい。

 

 しかし、そんなことをすれば、こっちも無事ではすまない。

と言うか、護るべき麻帆良を破壊しては元も子もないだろう。

そう窘める別の転生者が、彼を抑えようと話していた。

 

 それなら火力を抑えて戦えばいい。

そう考えたこの転生者は、特典を発動しようとしたのだった。

 

 

「ここで突然ですが、一部ルール改変のお知らせをいたします!」

 

「何!?」

 

 

 が、しかし、そこに和美のアナウンスが流れた。

転生者は出鼻をくじかれ、特典の発動を停止。

そこで他の転生者が取り押さえ、なんとか特典を使わせんと彼を押さえつけていたのだった。

 

 

「えー、今までの状況を考え、魔法騎士団側が有利となっておりました」

 

 

 また、和美のこのアナウンスは、新ルールの提案だった。

そもそも強制時間跳躍弾で消えた人間が、どこへ行くのか、どうなっているのか説明がなかった。

 

 それは非常に不安を呼ぶ要素だ。

参加者には安心して戦ってもらう必要がある。

 

 でなければ実力が発揮できないからだ。

だから、ここで戦闘に投入された強制時間跳躍弾も、このゲームのルールの一つとすることにしたのだ。

 

 

「なので、先ほどの弾に命中すると、その場で失格とさせていただきます!」

 

 

 このことは最初から予定されていたことだった。

あのビフォアが強制時間跳躍弾を使用することは、すでにわかったことだったからだ。

 

 そのためアスナたちは、その攻撃が始まったならば、麻帆良の住人に説明するように和美に話しておいたのだ。

 

 

「また、先ほどの弾が命中したものは、特殊な部屋にて強制送還され、待機となりますので、充分ご注意ください!」

 

「なんだー、新しいルールかー」

 

「おいおい、こりゃきついぞ!?」

 

 

 さらに、その攻撃を受けた相手は特殊な部屋で待機することになると、和美は説明した。

 

 だが、本当は違うのだ。

実際は3時間後に飛ばされており、そう言った部屋は存在しないのだ。

それでもそう説明したのは、攻撃で死ぬことはないと言うことを伝え、安心させるためだ。

 

 案の定説明を聞いた参加者たちは、安堵の声を漏らしていた。

ただのルール増加なら、危険が無いとわかったからだ。

 

 ただ、この現状はあまりよろしくない。むしろ危険な状況だった。

だから厳しいという声も、ちらほら見て取れた。

 

 

「んん!? なんか違うぞ!?」

 

「お前もそう思うか……」

 

 

 しかし、転生者たちはこの解説に戸惑いを感じていた。

何せ本来ならば、こういう形で説明されなかいからだ。

そのため転生者たちは、別の意味で不安げに感じ、どうなってしまうのかを悩むものもいたようだ。

 

 

「まあ、敵がいることには変わりねぇ!」

 

「やるだけやるしかねぇぜ!!」

 

「よし、花火の中へ突っ込むぞ!!」

 

 

 だが、すでに”原作知識”などあまり役に立たないと感じた転生者たちは、あまり気にしていない様子だった。

むしろ敵を全滅させることの方が重要だと思い、戦うことに燃えていた。

 

 ロボ軍団を殲滅するのはこの俺だ! そう叫びながら、転生者たちはロボの海へと突撃して言ったのである。

 

 

…… …… ……

 

 

 ネギたちは敵を殲滅しつつ、広場の方へと急いでいたが、その敵の数は圧倒的に多く、流石のカギですらタジタジだった。

 

 と、言うのもカギ自身、力をセーブして戦うことに慣れてない。

そのため、力を抑えるのに苦労しているのである。

 

 ただ、やはり敵の数が多いのが、一番苦労している部分だ。

 

 

「チクショウ! 敵が多すぎるぜ!」

 

「工場で生産されているみたいですから……!」

 

 

 敵の数が多いのは、地下の工場で生産されているからだ。

それは直一が持ち帰った情報により、わかっていたことである。

 

 それを何とかしたいところでもあるが、その場所へたどり着くには時間がかかりすぎるのだ。

だから、広場の守りを固めようと、必死に戦っているという訳だ。

 

 

「この手際のよさ、明らかにまだ見ぬ協力者が居て間違えないネ……!」

 

「本当多すぎでしょ!! うわっ! また来た!!」

 

 

 このロボ軍団を開発した協力者が居ると、超は考えていた。

あのビフォアがこれを全て、自分だけでやったとは到底思えなかったからだ。

 

 時間をかければかけるほど、どんどん増えるロボ軍団に、いい加減多すぎると叫ぶハルナだった。

そんな叫んでいるところに、またしても増えるロボ軍団。

 

 そこへ、さらに巨大ロボまで飛んできたのだった。

 

 

「巨大ロボまで!!」

 

「巨大ロボなど相手になるかぁ!! ”王の(ゲートオブ)……”!!」

 

 

 巨大ロボは確かにほんの少し未来の世界で見ていた。

しかし、それが複数も飛んでくると、やはり違って見えるようだ。

ハルナはロボ軍団の数と複数の巨大ロボを見て、驚くことしか出来なかった。

 

 そこでカギは、巨大ロボを相手にしようと、自慢の特典(ほうぐ)を使おうと考えたが、それは突如現れた別のものに阻まれたのだった。

 

 

「援護に参りました」

 

「先に行ってください」

 

「ファッ!?」

 

「お前たち!」

 

 

 そこに駆けつけたのは茶々丸の姉妹機であった。

彼女たちもまた、この戦いに身を投じるために参上したのである。

そして姉妹機たちは超に挨拶すると、そのまま敵のロボ軍団を攻撃し始めたのだ。

 

 姉妹機たちは握ったライフルなどを使い、巨大ロボを殲滅する。

たとえ巨大ロボとて関節などの貧弱な部分は存在する。そこを狙って攻撃し、巨大ロボを破壊して見せたのだ。

 

 また、巨大ロボを倒したならば、次は普通のサイズのロボ軍団だ。

姉妹機たちは目標をそちらへと変更すると、ライフルやミサイルを一斉発射したのである。

 

 みるみる破壊されるロボ軍団だったが、やはりなかなか数が減らない。

倒される数と同じぐらい、増援が駆けつけてくるからだ。

 

 さらに、またしても巨大ロボが複数飛んで来て、ネギたちを阻むのだった。

 

 

「まだまだ巨大ロボが増えてきてるー!?」

 

「敵も必死みたいですね……」

 

 

 増えるロボに驚くばかりのハルナ。

増えるロボの数に呆れるネギだった。

 

 なんという数だろうかロボ軍団だけでなく、巨大ロボまで増えてきたのだ。

これほどまでに戦力を投入してくるとは、敵も本気なのだとネギは思っていた。

 

 

「システムチェーンジ!!」「システムチェーンジ!!」

 

 

 だが、そこへ更なる味方の増援が登場した。

それは赤いはしご車に、青いクレーン車だった。

 

 すさまじい速度で走ってきたその二台の車は、突如として車体が持ち上がり、人型へと姿を変えたのである。

そう、それはまさしくビーグルロボである氷竜と炎竜だったのだ。

 

 

「オラァ!」

 

「みなさんご無事で!!」

 

「な、なんでこいつらが居んだよ!?」

 

「麻帆良を守護する赤いロボに青いロボ!?」

 

 

 炎竜は巨大ロボを殴り飛ばし、氷竜はフリージングガンを使用することで、周りのロボ軍団を氷付けにしたのだ。

 

 その姿を見たカギは、なぜこの二体のロボが存在するのかと、度肝を抜かれていた。

まさかネギまの世界で、ガオガイガーのビーグルロボを見るなど思ってなかったからだ。

 

 ハルナはその青と赤のロボを見て、麻帆良を防衛していると噂される二体のロボだと考えたようだ。

 

 

「すまないネ、氷竜に炎竜!」

 

「この麻帆良を防衛するのが私たちの使命!」

 

「こんな奴らの好き勝手されてたまるかってんだ!!」

 

 

 超は二体へ申し訳ないと話すと、二体はこれこそが自分たちの使命だと強く言い放った。

氷竜も炎竜も麻帆良の防衛用として作られた経歴があり、まさにこの場面で戦えることは名誉なのである。

 

 さらに、炎竜は他のロボなんぞに負けたくないという気持ちが強いようで、巨大ロボを次々に攻撃していた。

 

 

「先に進んでください! ここは私たちにお任せを!」

 

「僕たちの力を見せてやるぜ!」

 

「助かるヨ。なら、ここは任せたネ!」

 

 

 超たちへと、ここを任せて先に進むよう冷静に話す氷竜。

自分たちがいかに強いかを、見せてやると力強く唸る炎竜。

 

 この二体を頼もしく感じつつ、超はそれなら任せようと考えた。

そして二体に感謝しつつ、さらに先へと進むのだった。

 

 

「なんか俺の出番が無くなってるんだが大丈夫か?」

 

「兄さん、もしものために力を温存しておきましょうよ」

 

「それが一番ヨ!」

 

「お、おう……」

 

 

 だが、カギは微妙に不満げだった。

自分の最強の能力を、まったく見せる機会が無かったからだ。

 

 まあ、力が温存できるに越したことは無い。

ネギはそれをカギへ言って窘めていた。同じく超も、それが一番重要だと言葉にしていたのだった。

 

 そう二人から言われてしまったカギは、何も言えずに返事を返すことしか出来なかったようである。

 

 

「だが敵が多すぎる! ここまで多いとは思ってなかったぜ……!」

 

「僕もこれほどとは思ってませんでした……」

 

「またくヨ。ここまで用意されていたとはネ……」

 

 

 そうのんきに考えるカギだったが、先に進むごとに敵がまたしても増える現状に、予想以上だと思っていた。

 

 ネギも同じ意見だったらしく、額に汗を流しながらもロボ軍団を倒しながら、敵の数に圧倒されていた。

これほどの数のロボを用意し、生産し続けるビフォアには、あきれるばかりだと超も思っていたようだ。

 

 しかし、そこへ別の場所から新たなロボが出現した。

 

 

「なっ!? 死角から……!」

 

「ネギ?! クソ! 敵数が多すぎる!!!」

 

「ネギ坊主!!?」

 

 

 なんとそのロボは建物の上から強制時間跳躍弾を放ってきたのだ。

なんということか、それは丁度ネギの死角だったのだ。

 

 それに気づいた時には遅かった。もはや逃れられぬ状態だったのである。

 

 それを見たカギは敵の殲滅に追われ、ネギを助けることが出来ずにいた。

また、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)は宝庫から武器を取り出す動作が必要だ。

 

 その時間がない状態では、武器を発射することが出来ないのだ。

 

 また、超もとっさの事で判断が遅れてしまったようだ。

大勢のロボと相手している現状では、ネギを助けるために動くことすらかなわなかった。

だから焦った表情で、ネギの名を叫ぶことしか出来なかったのである。

 

 

「ネギ君!」

 

「うわっ! ハルナさん!?」

 

「はるなサン……!?」

 

 

 しかし、そこで動いたのはなんとハルナだった。

ハルナはネギへと体当たりし、ネギを庇ったのである。

 

 なんということだろうか、そのおかげでネギは助かったが、ハルナは強制時間跳躍弾の餌食になってしまったのだ。

 

 

「へっへ、まるで私がヒロインみたいじゃない!?」

 

「言ってる場合かー!?」

 

「ハルナさん! 今助けますから……!」

 

「……いや、こうなてはもうどうしようもないネ……!」

 

 

 黒い渦に呑み込まれながらも、ハルナは笑っていた。

さらに今の行動はまるで物語のヒロインだと、言葉にしていたのだ。

 

 そこへすかさずツッコミをいれるカギ。

なかなかノリが良いようだ。

 

 そんなカギとは逆に、助けようと必死になるネギ。

だが、この状況ではもはや救出は不可能だ。

それを超は知っていたので、手の施しようが無いと残念そうな表情でこぼしていた。

 

 

「フッ! 助太刀無用! どうせ私じゃあんまり役に立たないんだから、せめてこのぐらいはね!」

 

「は、ハルナさん……!?」

 

 

 さらに、ハルナ自身も腕を伸ばして手を開いた、待ったのポーズでネギの救助を拒んだ。

 

 何せ自分には、他のメンバーと比べて何も出来ない。

ならば、せめてこのぐらいの手助けが出来なければと、ハルナは考えていたのである。

 

 ネギはそういわれたら、何も出来なくなってしまったようだ。

 

 

「んでもって、バッチリ解決よろしく!」

 

「あっ……」

 

 

 そして最後にハルナは、この事件をしっかりと解決してくれと、握り拳に親指を立てたグッドサインをしながら、元気よく消えていった。

ネギは消えていったハルナが居た、その場所を見て固まってしまっていた。

 

 

「ハルナのヤツ、カッコつけやがって……!」

 

「ハルナさん……」

 

 

 カギもそれを見ていたようで、顔をうつむいて拳を握り締めていた。

まあハッキリ言えば、ハルナは3時間後に飛ばされただけで、特に命に別状はないのだが。

 

 それでも仲間の脱落と言うのもは、悔しいものなのだ。

ネギも同じくうつむき、暗い表情となっていた。

 

 

「行くヨ、ネギ坊主」

 

「超さん……」

 

「……そうだな、行くしかねぇな……!」

 

「兄さん……」

 

 

 だが、ここで立ち止まっている訳には行かない。

敵を殲滅し、先に進まなければならないのだ。

 

 超はネギとカギに背を向けたまま、先に進むと話し出した。

そして、ゆっくりと前へ歩き出したのだ。

 

 それにつられてカギも、行くしかないと言い、超と同じ方向へと歩き出した。

ネギはそんな二人を見て、同じく前へと歩き出したのである。

 

 

「はるなサンは別に死んだわけではないネ。それなら、私たちがはるなサンの分まで麻帆良を護ればいいだけネ」

 

「ああ、そのとおりだ……! だからまずやるべきことをやろうぜ!」

 

「……そうですね……!」

 

 

 そう、ハルナは死んだわけではない。

ならば彼女の分まで、この麻帆良を防衛すればよい。

 

 超はそう暗い表情から普段の表情へと戻し、言いきった。

ここで暗くなっていても意味などない。カギも同じ意見だった。

だからまずは、麻帆良を防衛し、ビフォアをぶっ倒すことだけを考えようと思ったようだ。

 

 ネギもその二人にそう言われ、再び元気を取り戻した。

そしてより一層、この麻帆良を護ってみせると、強く誓うのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 外でネギたちが奮闘する中、アジト内でも別の戦いが繰り広げられていた。

それはビフォア側から麻帆良へのサイバー攻撃、それを防ぐべく葉加瀬たちが防衛網を開いていたのだった。

 

 

「いまだに学園へのサイバー攻撃が続いています!」

 

「なんと言うしつこさだ! このままでは復旧すらかなわんぞ!?」

 

「結構ハードな状況だな」

 

 

 この状況、かなり厳しいものだった。

立て続けに何度も続く波状攻撃。これでは麻帆良の結界の復旧など不可能だった。

そのことに対して苦虫を噛んだ表情で、苦言するエリックがいた。

 

 また、千雨もここで葉加瀬とエリックの手伝いをしていた。

ノートパソコンならいざ知らず、このアジトにあるスーパーコンピュータならば、ある程度のことが可能だからだ。

それでもこの状況、かなりヤバイと感じるほどだった。

 

 

「なら俺らの出番だな!」

 

「おう! 行くぞ!!」

 

「ワシもサポートするかのう」

 

 

 そんな最中、モニターを睨みつけながらキーボードをたたく三人の後ろから、男性の声が聞こえた。

 

 その声の主はあの音岩昭夫と獅子帝豪、そしてジョゼフ・ジョーテスだったのだ。

 

 

「アンタらに何が出来るんだ!?」

 

「まぁ見てなって! レッド・ホット・チリ・ペッパー!!」

 

「ハーミットパープル!!」

 

「エヴォリュダーの力、見せてやる!!」

 

 

 千雨はそれに気がつき振り向くと、その三人が機械の方へと近づいてきていた。

この三人、一体何をするのだろうと考え、何が出来るかを尋ねたのだ。

 

 ハッキリ言えばチャラい男とおじいさん、特に昭夫とジョゼフは機械が得意そうには見えなかったのだ。

 

 そこで昭夫は余裕の笑みを浮かべながら、ならば見ていろとスタンドを繰り出した。

同じくジョゼフもスタンドを腕から生やし、機械へと進入させたのだ。

加えて豪もすさまじい叫びとともに、機械に手を乗せ念じ始めたのである。

 

 この三人の行動、普通の人間から見ればただの奇行でしかない。

実際千雨は意味がわからないという表情で、ポカンとしていたのだった。

 

 しかし、転生者であるエリックは、その行動の意味にすぐさま気がついた。

 

 

「そうか! チリペッパーは電気となってネット内部に潜入出来るのか! そしてハーミットパープルは遠隔からの機械操作が可能という訳だな!!」

 

「そういうことだ!!」

 

「そして俺のエヴォリュダーの力で、機械の制御が可能だ!!」

 

 

 そう、昭夫の特典(スタンド)はレッド・ホット・チリ・ペッパー。

その能力は電線にももぐることが出来るものだ。ならば電気が通った機械の中に進入するなど、たやすいことだ。

さらに、それを通じてネット回線へ進入できると昭夫は考えたのである。

 

 加えて同じくジョゼフの特典(スタンド)はハーミットパープルだ。

基本的な能力は念写だが、その茨状のスタンドを使ってゲーム機に仕掛けがないかを探るぐらいは可能だった。

 

 また、その応用でゲームのコントローラを手を使わずに操ることが出来た。

それを応用すれば、多少なら機械操作が出来るだろうと、ジョゼフは考えたのだ。

 

 それがわかったエリックは、なるほどと納得し、それならいけるかもしれないと思った。

 

 さらに豪が、エリックの説明がなかったので自分から説明を始めてた。

 

 豪の能力はエヴォリュダー獅子王凱の能力だ。

エヴォリュダーの能力のひとつに、機械へのハッキングを有していた。

 

 手で触れただけで、機械にアクセスし、自分の体のように操れるのだ。

それを用いれば、敵に乗っ取られた麻帆良の管理システムも、奪還出来ると考えたのである。

 

 

「なんだかさらに訳がわからねーことを……」

 

「まあ、魔法があるんですから別に驚くことではないでしょうけどね」

 

「そ、そうか!? そう言う問題か!?」

 

 

 そんな説明を聞いた千雨は、またしても意味がわからないことだと頭痛を感じていた。

確かに魔法というものが存在したし、あのカズヤと法も不思議な力を持っていた。

それでもさらに増える謎の力に、頭がおかしくなりそうだと頭を抱えていたのだった。

 

 そう落ち込む千雨に葉加瀬は、魔法が存在するなら驚くこともないだろうと話した。

葉加瀬もあの三人の不思議な力には、多少なりに驚かされた。

ただ、魔法がこの世界にあるんだから、そう言うのもあるのだろうと納得したのである。

 

 しかし、そう言う問題なのだろうかと、千雨は考えた。

千雨は普通を好む人間だ。魔法があったのなら仕方ないと考えていたが、さらに別の異常が近づいてきたのだ。

悩まないはずがないのである。

 

 

「よっしゃぁ! ネット内への進入に成功!!」

 

「ヴィジュアル的に海が広がっているな。電子の海とはよく言ったものだぜ」

 

「そうのんきにはしてられんようだぞ……!?」

 

 

 そうこうしている内に、三人はネット内への進入に成功した様子だった。

豪は意識をネット内へと進入させ、残りの二人はスタンドを侵入させたのだ。

 

 そのネット内の様子はまるで海で、昭夫が電子の海だと語っていた。

だが、そんなところに黒い影が、その近くに現れたのである。

 

 

「ようこそ、ようこそ。クックックッ! ようやく来てくれたなぁ! 俺の独壇場、電子の海中へ!!」

 

「テメェがサイバー攻撃している張本人か!?」

 

「ヤツもネット世界にダイブ出来るのか!!」

 

 

 そのネットの海の中で、胡坐をかいて腕を組む一人の男。

全身黒の鎧を身にまとい、顔は隠れて見えなかった。

 

 男はまるで三人が、ここへやってくるのを待ちかねていたかのような、かなり余裕の態度を取っていたのである。

 

 昭夫はその男を見て、こいつがサイバー攻撃している敵だとわかったようで、意識的に警戒していた。

豪はこの男もネットへ進入できる力を持っていることに、多少驚きを感じていた。

 

 

「そのとおりよ! 俺はネット世界に意識をダイブさせ、その内部を支配できるのだ!! くたばれ!!」

 

「ちぃ! 何だこの攻撃は!!?」

 

 

 この男が言うには、ネットへ進入でき、さらに内部を操ることが出来るらしい。

そう説明を終えた男は、突如として背後から空間を開き、ポリゴンで形作られた生物を放出し始めたのだ。

 

 一体なんだというのか、その攻撃の意図を昭夫は考えた。

 

 

「ブレイン博士! 今度はウィルス攻撃が始まったようです!!?」

 

「何!? まさか学園の結界を落とすだけでなく、システムそのものまで破壊するつもりか!!?」

 

 

 男が放ったポリゴンの生物、それはウィルスだった。

麻帆良のシステムをウィルスで完全に破壊しようと、男が攻撃してきたのだ。

まさかそこまでするとはと、エリックも焦りを感じていたのだった。

 

 原作では結界を落とすことだけを目的としており、麻帆良への直接的な破壊行動は存在しなかった。

 

 されど、ビフォアは違う。

ビフォアは麻帆良の乗っ取りが目的でり、その障害を破壊することに躊躇いが存在しない。

一度破壊して、再び自分好みに改造した方が楽だと、ビフォアは考えているからだ。

 

 

「ウィルス攻撃だと!?」

 

「そうさ! 別に結界を落したままにしておく必要はない! システムを一度ぶっ壊し、俺が新たに作り直せばよかろうなのだ!!」

 

「そう言うことか!! だがそうはさせねぇぜ!! チリペッパー!!!」

 

 

 ウィルス攻撃だと聞かされた昭夫たちは、これはまずいと考えた。

システムをウィルスに犯されれば、完全に破壊されて復旧すら出来なくなるからである。

 

 さらに、修復には時間がかかり、それでは麻帆良の結界の再構築にも時間がかかってしまうだろう。

そうなれば麻帆良を危険にさらすことになる。それはあってはならないことだと、豪も焦りながらも考えていた。

 

 しかしビフォア側は違う。

結界などの麻帆良のシステムなど、ビフォアには不要なのだ。

 

 また、破壊してしまえば復旧など絶対に出来ない。

そうすればビフォアは大きく有利になれるのである。

 

 それを全て担うのが、このネットへ進入できる男だ。

男はネット内に進入し、麻帆良のシステムにハッキングを仕掛け、攻撃したのだ。

 

 だが、そうはいかない。そうはさせない。

昭夫はレッド・ホット・チリ・ペッパーをたくみに操り、そのウィルスへと攻撃を開始したのだった。

 

 

 

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